説明

シフトレバー装置

【課題】小型のマグネットを利用可能として省コスト、小型化を実現したシフトレバー装置を提供すること。
【解決手段】シフトレバー21と一体的に回動するレバーブロック2と、シフト軸20を介してレバーブロック2を支持するベースブロック3と、レバーブロック2の回動動作の中心軸12の回りを回動するようにレバーブロック2に保持されたマグネット230と、マグネット230の磁気の作用方向を検出可能な磁気センサ11と、磁気センサ11が検出した磁気の作用方向に応じてシフトレバー21の操作位置を表す信号を出力する信号出力部と、を備えたシフトレバー装置1では、強磁性材料よりなるレバーシャフト211の端面211Nがマグネット230に当接し、両者が磁気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレンジを選択するための装置であって、シフトレバーの操作位置に応じた電気信号を出力する車両用のシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシフトレバー装置には、機械的なリンク機構を採用したシフトチェンジ手段が用いられてきた。近年、車載機器の電子化の要請に対応できるよう、シフトレバーの操作を電気的に検出するシフトレバー装置が提案されている。このシフトレバー装置は、検出したシフトレバーの操作を電気信号に変換して出力する。
【0003】
このようなシフトレバー装置は、その出力信号に応じてアクチュエータを駆動してシフトチェンジを実現する、いわゆるバイワイヤ式のシフトレバー装置と呼ばれている。バイワイヤ式のシフトレバー装置では、トランスミッションとの間に複雑なリンク機構を配設する必要がなく、電気配線を取り回しするだけで良い。このようなシフトレバー装置を採用すれば、車両におけるシフト操作機構の設計自由度や設置自由度等を格段に向上できる。
【0004】
バイワイヤ式のシフトレバー装置としては、シフトレバーの回動動作の中心軸を超えて反対側に延設され、その先端にマグネットを保持するガイドロッドと、そのマグネットと対面するように配置された磁気センサと、を備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このシフトレバー装置では、ガイドロッドの変位を磁気的に検知することでシフトレバーの操作を検出している。
【0005】
しかしながら、前記従来のシフトレバー装置では、次のような問題がある。すなわち、磁気センサで確実性高く磁気を検出するためにはマグネットの磁力を確保しておく必要があり、そのためには比較的大きなマグネットが必要になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、小型のマグネットを利用可能として省コスト、小型化を実現したシフトレバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含む車両用のシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、操作に応じてシフトレバーと一体的に回動するレバーブロックと、
所定のシフト方向の操作に応じて前記レバーブロックが回動可能なようにシフト軸を介して前記レバーブロックを支持するベースブロックと、
前記シフト方向の操作に応じた前記レバーブロックの回動動作の中心軸に磁極方向が向かう状態を維持しながら該中心軸の回りを回動するように前記レバーブロックに保持されたマグネットと、
前記マグネットが発生する磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに保持された磁気センサと、
該磁気センサが検出した磁気の作用方向に応じてシフトレバーの操作位置を表す信号を出力する信号出力部と、を備え、
前記レバーブロックは、前記マグネットの磁極方向に沿って延設されていると共に該マグネットと磁気的に接続された強磁性材料よりなる磁性部材を備えているシフトレバー装置にある(請求項1)。
【0009】
本発明のシフトレバー装置が備えるマグネットは、前記磁極方向に沿うように延設された前記磁性部材の端面に当接し、磁気的に接続されている。このようにマグネットの磁極面に前記磁性部材を当接させれば、前記マグネットの磁極方向の寸法の拡大に似通った磁気的な作用効果を獲得できる。すなわち、前記マグネットの磁極方向の寸法が十分でないときに生じ得るN極からS極への磁気的な回り込みを抑制でき、前記マグネットから前記磁気センサに作用する磁力を大きくできる。さらに、前記マグネットに対して前記磁性部材を当接させれば、その磁性部材を磁化でき、前記マグネットから前記磁気センサに作用する磁力をさらに大きくできる。
【0010】
本発明のシフトレバー装置では、上記のごとくマグネットと前記磁性部材とを磁気的に接続し、これにより、磁極方向に長いマグネットを採用したことと似通った磁気的な作用効果を実現している。これにより、前記磁気センサによるロバストな検出に必要な磁気的な強度に相対して、前記マグネット単体に要求される磁気的な強度や前記磁極方向の寸法等を抑制できる。これにより、比較的小さなマグネットを採用できるようになり省コスト、小型化を実現できる。
【0011】
本発明における中心軸とは、前記シフト方向にシフトレバーが操作されたときの前記レバーブロックの回動動作の中心をなす仮想軸である。前記マグネットの磁極方向がこの中心軸に向かっているとは、軸方向の長さに制限のない仮想的な前記中心軸に対して前記磁極方向が交わることを意味している。前記マグネットは、前記シフトレバーを構成する棒状のレバーシャフトの軸方向に磁極方向が一致するようにその軸上に配置しても良いし、その軸からオフセットして配置しても良い。
【0012】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置における磁性部材は、鉄等の強磁性材料により形成できる。
前記磁性部材と前記マグネットとを磁気的に接続する方法としては、両者を当接させて物理的に接触させても良いが、磁気的には接続される一方、物理的には離間させても良いし、他の部材を介在しても良い。
さらに、前記マグネットの磁力を利用して前記磁性部材側に前記マグネットを吸着させて固定することも良い。
【0013】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置におけるシフトレバーは、先端側に操作部が設けられる棒状のレバーシャフトを含み、前記磁性部材が前記レバーシャフトである(請求項2)。
この場合には、前記レバーシャフトを前記磁性部材として活用することで、部品点数を増加させることなく本発明の作用効果を効率良く実現できる。
【0014】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置におけるベースブロックは、前記中心軸よりも前記マグネットに近接して前記磁気センサを保持する基台と、
前記シフト軸を介して前記レバーブロックを支持すると共に、前記シフト軸と直交するセレクト軸を介して回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記シフト軸は、少なくとも一部が強磁性材料により形成されていると共に、同様に少なくとも一部が強磁性材料により形成されたレバーブロックを介して前記磁性部材と磁気的に接続され、
前記磁気センサに対しては、前記シフト軸と前記マグネットとの間に生じた磁界が作用している(請求項3)。
【0015】
本発明における好適な一態様のシフトレバー装置におけるベースブロックは、前記磁気センサを保持する基台と、
前記シフト軸を介して前記レバーブロックを支持すると共に、前記シフト軸と直交するセレクト軸を介して回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記ベースブロックは、少なくとも一部が強磁性材料により形成されていると共に、同様に少なくとも一部が強磁性材料により形成されたレバーブロック及び揺動部材を介して前記磁性部材と磁気的に接続され、
前記磁気センサに対しては、前記ベースブロックと前記マグネットとの間に生じた磁界が作用している(請求項4)。
【0016】
これらの場合には、前記シフト軸あるいは前記ベースブロックと、前記マグネットとの間に形成された磁界を前記磁気センサに作用できる。このような磁界は、磁気的な外乱が前記シフトレバー装置に作用したときにも比較的安定している。安定した磁界を前記磁気センサに作用すれば、前記シフトレバーの操作に応じた前記磁気の作用方向の変化を精度高く検出でき、外乱に対する検出ロバスト性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、シフトレバー装置を示す斜視図。
【図2】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図(シフト軸に沿う断面)。
【図3】実施例1における、シフトレバー装置の構造を示す断面図(シフト軸に沿う断面)。
【図4】実施例1における、磁気センサの検出原理を説明する説明図。
【図5】実施例1における、X軸(Y軸)方向の磁気成分が磁気センサに作用する様子を示す説明図。
【図6】実施例1における、XZ平面内のセンサ検出角θshを説明する説明図。
【図7】実施例1における、YZ平面内のセンサ検出角θslを説明する説明図。
【図8】実施例2における、シフトレバーの構造を示す断面図。
【図9】実施例2における、その他のシフトレバーの構造を示す断面図。
【図10】実施例3における、シフトレバーの構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、シフトレンジを選択するために操作されるシフトレバー21を備えた車両用のシフトレバー装置1に関する例である。この内容について、図1〜図7を用いて説明する。
【0019】
シフトレバー装置1は、図1に示すごとく、運転者がシフトレバー21を操作可能なように、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される装置である。本例のシフトレバー装置1は、互いに略直交するシフト方向(X軸方向)及びセレクト方向(Y軸方向)にシフトレバー21を操作可能なゲート式のシフトレバー装置である。シフト方向は、車両の前後方向に当たる操作方向であり、セレクト方向は、車両の左右方向に当たる操作方向である。
【0020】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、シフト方向の操作方向が3列設定されており、セレクト方向にシフトレバー21を操作することでシフト方向の列を切り換え可能である。本例のシフトレバー装置1では、ゲート150が十字に交差する中央位置がホームポジション151(Hポジション)となっている。シフトレバー21は、Hポジション151に向けて付勢されている。
【0021】
例えば、Hポジション151に位置するシフトレバー21(図2参照。)を右側(セレクト方向)に操作した後に手前(シフト方向)に引くように操作すればDポジジョンに操作できDレンジを選択できる(図3参照)。その後、運転者がシフトレバー21から手を離すと、Dレンジの選択状態が維持されたまま、シフトレバー21がHポジション151に復帰する。また、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を手前に引けば−ポジションに操作できギアを一段下げることができる。さらに、例えば、Dレンジが選択されているときに、Hポジション151のシフトレバー21を左側に倒してNポジションに操作すればNレンジを選択できる。一方、Hポジションに復帰させることなくNポジションからさらに奥側に押し込んでRポジションに操作すればRレンジを選択できる。なお、シフトレバー21のシフトパターンは、本例には限定されない。本例のシフトレバー装置1における操作位置の検出方法を採用すれば、前後左右あらゆる方向の操作に対応可能である。
【0022】
シフトレバー装置1は、図1及び図2に示すごとく、シフトレバー21の基部をなすレバーブロック2と、シフト方向に回動可能な状態でレバーブロック2を軸支するベースブロック3と、を、保護カバー15に収めた装置である。ベースブロック3は、装置の底面をなす基台31と、セレクト軸30を介して基台31に軸支された揺動台32と、よりなる。レバーブロック2は、シフト軸20を介して揺動台32に軸支されている。保護カバー15の上面には、シフトレバー21の移動経路をなすゲート150が設けられている。各シフト位置には、シフトレンジを表すD、Rなどの記号が表示されている。
【0023】
基台31は、図1及び図2に示すごとく、装置の底部をなす部分である。矩形状を呈する底面の中央部分には、高さ方向に突出する台座部312が設けられている。台座部312の上面には、磁気センサ11が実装されたセンサ基板10が固定されている。基台31の4隅には、保護カバー15を取り付けるためのビス孔318が穿孔されている。基台31の外周部には、台座部312を介して互いに対面する一対の支持片311が立設されている。一対の支持片311には、それぞれ、セレクト軸30を貫通配置させるための軸孔が穿孔されている。
【0024】
揺動台32は、図1及び図2に示すごとく、略矩形環状を呈する部材である。互いに反対側に面する2組の側面のうち、基台31の支持片311に対面する1組の側面には、外側に突出する座部321がそれぞれ設けられている。座部321の端面は、支持片311の軸孔に貫通配置されたセレクト軸30が立設固定される面である。他方の1組の側面には、シフト軸20が立設されている。シフト軸20及びセレクト軸30は、揺動台32の厚さ方向におけるほぼ同じ位置に立設されている。これにより、本例のシフトレバー装置1では、シフト軸20及びセレクト軸30の軸方向が同一平面内に属している。
【0025】
図1〜図3に示すごとく、揺動台32の内周空間に当たるセンサ空間100を取り囲む4辺のうち、シフト軸20の一方が立設される側面を含む1辺は、他の3辺よりも幅広に形成されている。その幅広の上面には、プランジャ322を進退可能な状態で保持する円筒状のピン保持部323が立設されている。プランジャ322は、ピン保持部323の内部に収容されたスプリング324の付勢力により突出方向に付勢されている。プランジャ322は、レバーブロック2に保持された節度部材325(図1)に当接して突出方向の位置が規制されている。節度部材325におけるプランジャ322の当接面には、シフト方向に配列された各シフト位置に対応して凹状の窪みが設けられている。この節度部材325とプランジャ322との組合せにより、シフト方向のシフトレバー21の操作に節度感(クリック感)が付与される。
【0026】
レバーブロック2は、強磁性材料である鉄製の棒状のレバーシャフト211をインサートして樹脂成形されたインサート成形品である。シフトレバー21は、レバーシャフト211の先端にシフトノブ(操作部)212を螺入して形成されている。レバーブロック2は、レバーシャフト211が内挿されたマグネットホルダ23と、マグネットホルダ23を介して対向する一対のアーム部22と、を備えている。アーム部22の先端には、それぞれ、シフト軸20を貫通配置するための軸孔が穿孔されている。レバーブロック2は、アーム部22の軸孔に貫通配置されたシフト軸20を介して揺動台32に連結されている。
【0027】
マグネットホルダ23は、断面略矩形状を呈し、その先端にはマグネット230を収容するための凹部232が形成されている。その凹部232の底面には、レバーシャフト211の端面211Nが露出している。マグネット230は、直径10mm、高さ7.5mmの背の低い円柱状をなし、その両端面に磁極面231が形成されている。このマグネット230は、S極面231Sを奥側にして凹部232に収容された状態で自分の磁力によりレバーシャフト211の端面211Nに固定される。マグネット230の磁極方向は、レバーシャフト211の軸方向(延設方向)に一致している。
【0028】
なお、本例では、マグネット230として、フェライト磁石よりなるマグネットを採用している。これに代えて、アルニコ磁石、ネオジム磁石等よりなるマグネットを採用することも良い。さらに、磁性粉を樹脂にバインドしたプラスチックマグネットを採用することも良い。また、永久磁石よりなるマグネットに代えて、電磁式のマグネットを採用することもできる。さらに、本例では、磁気センサ11にN極面231Nを対面させているが、S極面231Sを対面させても良い。
【0029】
センサ基板10は、図1〜図4に示すごとく、図示しないCPU、ROM、RAM等のほか、1チップの磁気センサ11を実装した基板である。CPUは、磁気センサ11の検出結果に基づいてデータ処理を実行するデータ処理部、シフトレバー21の操作を反映した電気信号を出力する信号出力部としての機能を備えている。ROMには、CPUで実行するソフトウェアプログラム等が格納されている。
【0030】
磁気センサ11は、図4及び図5に示すごとく、鉛直方向に作用する磁気成分を検出する磁気検出素子111〜114を内蔵したICチップである。磁気センサ11では、強磁性体材料よりなる円板状の磁性板115の外周4カ所に同じ仕様の磁気検出素子111〜114が配置されている。そして、磁性板115及び磁気検出素子111〜114が配置された円形領域が磁気検知部110となっている。シフト方向に当たるX軸方向に沿って磁気検出素子111、112が対向配置されており、セレクト方向に当たるY軸方向に沿って磁気検出素子113、114が対向配置されている。なお、本例では、マグネット230の直径約10mmのN極面231Nに対して、磁気検知部110の大きさが直径0.5〜2.0mm程度に設定されている。
【0031】
X軸、Y軸、Z軸に沿う磁気成分Bx、By、Bzよりなる磁気ベクトルBが磁気センサ11に作用した場合について、図4及び図5を用いて説明する。磁気成分のうち鉛直方向に作用するBzは、全ての磁気検出素子111〜114に対してほぼ均等に作用する。一方、X軸に沿う磁気成分Bxが磁気センサ11に作用すると、図5に示すごとく、磁性体である磁性板115に磁気誘導されて磁力線の湾曲が生じる。そうすると、X軸方向に配列された磁気検出素子111、112に対して、鉛直方向逆向きの磁力αBx(αは定数)が作用することになる。X軸方向と同じ仕様でY軸方向に配列された磁気検出素子113、114に対しても同様に、Y軸に沿う磁気成分Byに起因して鉛直方向逆向きの磁力αByが作用する。
【0032】
このとき、各磁気検出素子111〜114に作用する磁力B1〜B4は、次式のようになる。
B1= αBx+Bz
B2=−αBx+Bz
B3= αBy+Bz
B4=−αBy+Bz
【0033】
Bx、By、Bzは、上記の連立式に基づいて以下のように算出される。
Bx=(B1−B2)/2α
By=(B3−B4)/2α
Bz=(B1+B2+B3+B4)/4
このように、磁気センサ11によれば、磁気検知部110に作用する磁気について、3次元的な任意の作用方向を検出可能である。
【0034】
以上のように構成された本例のシフトレバー装置1では、図1及び図2に示すごとく、揺動台32の内周空間がセンサ空間100を形成している。このセンサ空間100には、センサ基板10が固定された基台31の台座部312が突出している。本例では、センサ基板10に実装された磁気センサ11の磁気検知部110と、シフト軸20と同軸をなす中心軸12との距離L1が10mm(図2参照。)に設定されている。
【0035】
Hポジション151にシフトレバー21が位置するとき(図2参照。)、マグネット230と磁気センサ11とがシフトレバー21の軸方向に沿って一直線上に並ぶ基準位置となる。この基準位置では、マグネット230の先端面と中心軸12との距離L2が11.5mmとなると共に、磁気検知部110とマグネット230のN極面231Nとのギャップが1.5mmとなる。さらに、この基準位置では、前記軸方向に沿ってマグネット230のN極面231N(直径10mm)に磁気検知部110を射影したときの射影形状が、マグネット230のN極面231Nの内側中央に位置するようになっている。
【0036】
シフトレバー装置1では、図1に示すごとく、シフト方向(X軸方向)のシフトレバー21の操作に応じて、磁気センサ11の外周側をマグネット230が回動する。このとき、磁気検知部110への磁気の作用方向が変化することになる。磁気センサ11により検出されるX軸に沿う磁気成分Bx、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図6に示すごとくY軸に直交する平面内の磁気ベクトル(磁気の作用方向)の傾きθshをセンサ検出角として算出できる。
【0037】
この磁気ベクトルの傾きθshに基づけば、マグネット230の回動角、すなわちシフトレバー21の操作角であるレバー角を知ることができる。そのレバー角を利用すれば、シフトレバー21のシフト方向の操作位置を検出可能である。セレクト方向(Y軸方向)の操作についても、上記と同様に操作に応じて磁気検知部110に作用する磁気の作用方向が変化する。Y軸に沿う磁気成分By、及びZ軸に沿う磁気成分Bzによれば、図7に示すごとく、X軸に直交する平面内の磁気ベクトルの傾きθslをセンサ検出角として算出でき、これによりY軸方向のシフトレバー21の操作位置を検出可能である。
【0038】
特に、本例のシフトレバー装置1では、強磁性材料よりなるレバーシャフト(磁性部材)211の端面がマグネット230のS極面(磁極面)231Sに当接し、両者が磁気的に接続されている。これにより、マグネット230の磁極方向の寸法を拡大したのと同様の磁気的な作用効果が実現されている。第1の作用効果は、マグネット230のN極からS極に短絡して回り込む磁束が抑制され、磁気センサ11に作用する磁力が大きくなるという作用効果である。第2の作用効果は、マグネット230の磁力により強磁性材料よりなるレバーシャフト211を磁化でき、これによりマグネット230から磁気センサ11に作用する磁力を大きくできるという作用効果である。
【0039】
このような磁気的な作用効果が実現されている本例のシフトレバー装置1では、磁気センサ11でロバストな検出性能を実現するために必要とされる磁気的な強度に相対して、小型、薄型のマグネット230を採用できる。小型のマグネット230を採用すれば、シフトレバー装置1の小型化を実現し易くなると共に、部品コストを抑制して製品コストを低減可能である。
なお、磁気センサとしては、本例に代えて、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿って配設された3基の磁気検出素子を内蔵した1チップICを採用することもできる。
【0040】
(実施例2)
本例は、実施例1を基にして、レバーブロック2及びシフト軸20の構成を変更した例である。この内容について、図8及び図9を参照して説明する。
本例のレバーブロック2は、図8に示すごとく、一対のアーム部22を有する略コの字状の強磁性材料よりなる部品213に対して実施例1と同様のレバーシャフト211を圧入して固定したうえ、レバーシャフト211の突出部分に樹脂製のマグネットホルダ23を外挿した部品である。このレバーブロック2は、実施例1のレバーブロックと同様の外形状を呈している。このレバーブロック2では、部品213に対するレバーシャフト211の圧入により両者が磁気的に接続されている。
レバーブロック2の支持軸であるシフト軸20は、強磁性材料により形成されている。本例のシフト軸20は、その先端面が台座部312の側面に近接するように延長されている。
【0041】
本例のシフトレバー装置1では、マグネット230からレバーブロック2を経由してシフト軸20に至る仮想的な磁石が実現されている。この仮想磁石では、マグネット230のN極面231Nに近接するシフト軸20の先端面がS極となり、マグネット230とシフト軸20との間に生じた磁界が磁気センサ11に作用している。このように磁石の一方の磁極から他方の磁極の間に形成される磁界は比較的安定であり、磁気的な外乱が外部から作用したときにも影響を受けるおそれが少ない。本例のシフトレバー装置1では、このように安定した磁界が磁気センサ11に作用しているため、外乱に強く磁気センサ11による検出精度が向上している。
【0042】
なお、本例に代えて、図9に示すごとく、台座部312に貫通孔312Hを設けると共に、貫通軸であるシフト軸20を台座部312に貫通配置することも良い。この場合には、シフト軸20の外周面のうち、マグネット230に近接する部分が磁極面となる。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0043】
(実施例3)
本例は、実施例1を基にして、レバーブロック2、揺動台32、ベースブロック3、シフト軸20、セレクト軸30等の構成を変更した例である。この内容について、図1及び図10を参照して説明する。
【0044】
本例のレバーブロック2は、実施例2のレバーブロックと同じ仕様である。
揺動台32は、強磁性材料よりなる本体部320に対して、樹脂材料よりなるねじ込み式のピン保持部323を取り付けることにより、実施例1の揺動台と同形状に形成された部品である。この揺動台32は、強磁性材料よりなるシフト軸20を介してレバーブロック2を軸支している。
【0045】
ベースブロック3は、実施例1のベースブロックの台座部(図2参照。)に代えてひと回り小さい凸部312Aを備えた本体部300と、凸部312Aに被せる樹脂材料よりなるキャップ312Bと、により構成されている。このベースブロック3では、凸部312Aにキャップ312Bを被せることにより実施例1と同形状の台座部312が形成されている。さらに、ベースブロック3は、強磁性材料よりなるセレクト軸(図1中の符号30の部品)を介して揺動台32と磁気的に接続されている。
【0046】
本例のシフトレバー装置1では、マグネット230からレバーブロック2及び揺動台32等を経由してベースブロック3に至る仮想的な磁石が実現されている。この仮想磁石では、マグネット230のN極面231Nに対面する凸部312AがS極となり、マグネット230とベースブロック3との間に生じた磁界が磁気センサ11に作用している。本例のシフトレバー装置1では、実施例2と同様、安定した磁界が磁気センサ11に作用しているため、磁気センサ11による検出精度が向上している。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0047】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0048】
1 シフトレバー装置
10 センサ基板
100 センサ空間
11 磁気センサ
110 磁気検知部
111〜114 磁気検出素子
115 磁性板
12 中心軸
15 保護カバー
150 ゲート
151 Hポジション
2 レバーブロック
20 シフト軸
21 シフトレバー
211 レバーシャフト(磁性部材)
211N 端面
212 シフトノブ(操作部)
230 マグネット
231N N極面(磁極面)
231S S極面(磁極面)
3 ベースブロック
30 セレクト軸
31 基台
312 台座部
32 揺動台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレンジを選択するために操作されるシフトレバーを含む車両用のシフトレバー装置であって、
前記シフトレバーの基部をなし、操作に応じてシフトレバーと一体的に回動するレバーブロックと、
所定のシフト方向の操作に応じて前記レバーブロックが回動可能なようにシフト軸を介して前記レバーブロックを支持するベースブロックと、
前記シフト方向の操作に応じた前記レバーブロックの回動動作の中心軸に磁極方向が向かう状態を維持しながら該中心軸の回りを回動するように前記レバーブロックに保持されたマグネットと、
前記マグネットが発生する磁気の作用方向を検出可能なように前記ベースブロックに保持された磁気センサと、
該磁気センサが検出した磁気の作用方向に応じてシフトレバーの操作位置を表す信号を出力する信号出力部と、を備え、
前記レバーブロックは、前記マグネットの磁極方向に沿って延設されていると共に該マグネットと磁気的に接続された強磁性材料よりなる磁性部材を備えているシフトレバー装置。
【請求項2】
請求項1において、前記シフトレバーは、先端側に操作部が設けられる棒状のレバーシャフトを含み、前記磁性部材が前記レバーシャフトであるシフトレバー装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ベースブロックは、前記中心軸よりも前記マグネットに近接して前記磁気センサを保持する基台と、
前記シフト軸を介して前記レバーブロックを支持すると共に、前記シフト軸と直交するセレクト軸を介して回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記シフト軸は、少なくとも一部が強磁性材料により形成されていると共に、同様に少なくとも一部が強磁性材料により形成されたレバーブロックを介して前記磁性部材と磁気的に接続され、
前記磁気センサに対しては、前記シフト軸と前記マグネットとの間に生じた磁界が作用しているシフトレバー装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記ベースブロックは、前記磁気センサを保持する基台と、
前記シフト軸を介して前記レバーブロックを支持すると共に、前記シフト軸と直交するセレクト軸を介して回動可能な状態で前記基台に支持された揺動台と、を有し、
前記ベースブロックは、少なくとも一部が強磁性材料により形成されていると共に、同様に少なくとも一部が強磁性材料により形成されたレバーブロック及び揺動部材を介して前記磁性部材と磁気的に接続され、
前記磁気センサに対しては、前記ベースブロックと前記マグネットとの間に生じた磁界が作用しているシフトレバー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−99985(P2013−99985A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243772(P2011−243772)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】