シフト装置
【課題】意図しない変速操作をより確実に抑制することができるシフト装置を提供する。
【解決手段】軸部材31の外周面にはノブの回転操作位置に対応する3つの嵌合凹部51r,51n,51dを形成した。ハウジング21の挿通穴32の内周面には各嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aを形成した。ノブが各回転操作位置に回転操作されたときに、各嵌合凹部51r,51n,51dは第1の嵌合突部52aに対向するようにした。ノブの操作を通じて自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブの側方へのスライド操作が許容される。すなわち、自動変速機の変速位置を切り替える際には、ノブの回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要となる。
【解決手段】軸部材31の外周面にはノブの回転操作位置に対応する3つの嵌合凹部51r,51n,51dを形成した。ハウジング21の挿通穴32の内周面には各嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aを形成した。ノブが各回転操作位置に回転操作されたときに、各嵌合凹部51r,51n,51dは第1の嵌合突部52aに対向するようにした。ノブの操作を通じて自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブの側方へのスライド操作が許容される。すなわち、自動変速機の変速位置を切り替える際には、ノブの回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速位置を切り替えるシフト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動変速機とシフト装置とを機械的に分離した、いわゆるバイワイヤ方式のシフト装置が普及しつつある。当該シフト装置にあっては、自動変速機の変速位置(接続状態)を切り換える際にユーザにより操作されるシフト操作手段としてのシフトレバーの操作位置を電気信号として検出して当該検出信号に基づき自動変速機の変速位置を電子的に切り換えることから、リンク機構等の機械的な構成が不要となる。このため、シフト装置の配設位置の制限が緩和されるとともに小型化が容易となるといった利点がある。
【0003】
近年では、車室内スペースの確保又はシフト装置の設置スペースの節約等の観点から、シフト装置のいっそうの小型化が要求されている。こうした要望を受けて、例えば特許文献1に示されるように、前述したシフトレバーに代えて、設置対象に対して回転操作可能に設けられるロータリ式のシフトノブを前記シフト操作手段として採用することが検討されている。当該ノブは、単一の軸を中心として回転操作されるのみであることから、前述のシフトレバーを採用する場合に比べて、シフト装置の設置スペースを節約することができる。すなわち、シフトレバーを採用する場合には、当該レバーを所定の操作方向へ案内するシフトゲートを設ける必要があるのに対して、ロータリ式のシフトノブを採用する場合にはそのような案内手段は不要となる。
【特許文献1】特開2002−254946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記文献1のシフト装置には、シフトノブの誤操作を防止する誤操作防止装置としてシフトノブの回転操作を規制するロック装置が設けられている。このロック装置は、ソレノイドのプランジャの進退動作に連動して、シフトノブに設けられた被係合部位に係合する係合位置と当該被係合部位に対する係合が解除される解除位置との間を変位する係合部材を備えてなる。係合部材が前記係合位置に保持されている状態にあっては、係合部材が被係合部位に係合することによりシフトノブの回転操作が規制される。また、係合部材が前記解除位置に保持されている状態にあっては、係合部材の被係合部位に対する係合が解除されることによりシフトノブの回転操作が許容される。
【0005】
前記シフトノブが例えばパーキング位置に保持された状態においては、係合部材が係合位置に保持されることにより、シフトノブはその回転操作が規制された状態に保たれている。そして、車両を走行させる際には、次のようにしてシフトノブの回転操作の規制が解除される。すなわち、エンジンが始動された状態で、ブレーキペダルの踏み込み操作が検出されたことをもってソレノイドが駆動し、係合部材は係合位置から解除位置へ変位する。この後、シフトノブの回転操作を通じて、当該ノブの操作位置が切り換えられることにより、自動変速機の変速位置が当該ノブの操作位置に対応する位置に切り換えられる。
【0006】
ところが、当該文献1のシフト装置においては、次のような問題が懸念されていた。すなわち、当該文献1のシフト装置にあっては、シフトノブを単に操作しただけでは当該ノブの回転操作の規制が解除されることはないものの、例えば不用意にブレーキペダルの踏み込み操作がなされて、意図せずシフトノブが回転操作されることが想定される。また、ソレノイドの不具合等、何らかの原因によりシフトノブの回転の規制ができなくなった場合にも意図しないシフトノブの回転操作がなされるおそれがある。このように、前記文献1のシフト装置においては、依然としてシフトノブの誤操作のおそれがあった。そしてこの点において、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、意図しない変速操作をより確実に抑制することができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の自動変速機の変速位置を切り替え操作するバイワイヤ方式のシフト装置において、車両側の取り付け対象に固定されるハウジングの外部に一部が露出するとともに当該ハウジングに対して回転操作可能かつ自身の回転中心軸に対し交わる方向である側方へスライド操作可能に設けられた軸状のシフト操作部材と、前記シフト操作部材と前記ハウジングとの間に設けられて当該シフト操作部材が前記自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該シフト操作部材の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段と、前記シフト操作部材が特定の回転操作位置へ回転操作された状態で側方へスライド操作されたことを検出しその検出信号を出力する検出手段と、前記シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段と、前記シフト操作部材に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段と、前記検出手段からの検出信号に基づき当該特定の回転操作位置に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号を生成して前記自動変速機へ出力する制御手段と、を備えてなることをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、自動変速機の変速位置を切り替える際には、シフト操作部材の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作を好適に抑制することができる。また、シフト操作部材に対する操作力が解除された際には、スライド復帰手段及び回転復帰手段により、当該シフト操作部材はスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシフト装置において、前記制御手段からの作動制御信号に基づく駆動手段の作動を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の回転操作を規制する回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の回転操作を許容する回転許容位置との間を変位する係止部材を備えてなる回転規制手段をさらに備え、前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態を車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出したとき、前記係止部材を回転許容位置から回転規制位置へ変位させるべく前記作動制御信号を前記回転規制手段へ出力することをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態が車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出されたときには、係止部材は駆動手段の作動によりシフト操作部材の一部に係合する回転規制位置へ変位する。シフト操作部材の回転操作が機械的に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記作動制御信号に基づく駆動手段の動作を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の正方向への回転操作を規制する第1の回転規制位置と、前記シフト操作部材の他の一部に係合して当該シフト操作部材の逆方向への回転操作を規制する第2の回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の正逆方向への回転操作を許容する回転許容位置との間を変位することをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、シフト操作部材の正逆回転が好適に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をいっそう確実に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の回転操作位置として、前記自動変速機の3つの変速位置に対応する前進位置及び中立位置及び後進位置、並びに車両の前進中に作動される特定の車両機能に対応する手動操作位置を設定するとともに、当該中立位置を前記シフト操作部材の回転操作方向における原位置とし、前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置が前記中立位置に保持されているときにのみ、前記手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる操作として当該シフト操作部材の前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作方向とは異なる他の方向へのスライド操作を許容し、前記制御手段は、前記シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた旨示す前記検出手段からの検出信号が入力された後に、前記他の側方へスライド操作された旨示す前記検出手段からの検出信号に基づき、前記手動操作位置に対応する車両機能を作動させることをその要旨とする。
【0014】
前述したように、シフト操作部材に対する操作力が解除された際には、スライド復帰手段及び回転復帰手段により、当該シフト操作部材はスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。そして、本発明によれば、シフト操作部材の回転操作方向における原位置とされる中立位置に当該シフト操作部材が保持されているときにのみ、手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向へのスライド操作が共に許容される。したがって、手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向へのスライド操作を簡単に行うことができる。なお、実際には、シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた後に、前記他の側方へスライド操作されることにより、前記手動操作位置に対応する車両機能が作動する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の外周面にその周方向に所定間隔をおいて形成されるとともに前記ハウジングの内部に突出して設けられる嵌合部材に嵌合可能とされた、前記シフト操作部材の回転操作位置と同数の嵌合凹部を含み、各嵌合凹部は、前記シフト操作部材が各回転操作位置にあるときにのみ前記嵌合部材に対して嵌合可能に対応するように設けたことをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、シフト操作部材にはその各回転操作位置に対応する嵌合凹部を、またハウジング側にはシフト操作部材の嵌合凹部に嵌合する嵌合突部を設けるといった簡単な構成により、シフト操作部材のスライド操作を好適に規制することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材にはその周方向へ延びる溝を形成し、また、前記検出手段は前記シフト操作部材の溝の回転軌跡に対応して配設される複数個のマイクロスイッチを備えるとともに、各マイクロスイッチは、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じて、前記シフト操作部材の外周面に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されてオンする状態、及び前記シフト操作部材の溝に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されることなくオフに保たれる状態の2つの状態をとるように配設し、前記制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断することをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材の各回転操作位置のうちいずれが確定されたのかを判断すればよいので、シフト操作部材の操作位置を検出するに際して、複雑な信号処理を行う必要がない。したがって、制御手段の演算負荷が抑制される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の近傍に配設されて前記シフト操作部材の回転操作方向及びスライド操作方向を示すとともに前記制御手段により点灯制御される複数のインジケータを備え、前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯制御することをその要旨とする。
【0020】
本発明によれば、ユーザは、シフト操作部材の操作可能方向を視覚的に認識することができる。そして、点灯していないインジケータにより示される方向へシフト操作部材が無駄に操作されることが抑制される。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の外周面には、前記ハウジングの一部に係合することにより前記シフト操作部材の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段を設け、当該シフト操作部材の各回転操作位置は、前記回転角度範囲内において設定されてなることをその要旨とする。
【0022】
本発明によれば、シフト操作部材の回転操作範囲を越える操作を簡単な構成により規制することができる。また、シフト操作部材の回しすぎが規制されることにより、当該シフト操作部材の操作性も確保される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係るバイワイヤ方式のシフト装置を、エンジン及びモータを走行用の駆動源とするハイブリッド車両に適用した第1の実施の形態を図1〜図13(a)〜(e)に基づいて説明する。まず、シフト装置の操作概要を説明する。
【0025】
<シフト装置の操作概要>
図1に示すように、車室内の例えばインストルメントパネル10において、運転席の左前方に位置する部位には、ユーザの操作を通じて自動変速機の変速位置(ギヤ段)を切り替えるシフト装置11が設けられている。図2に示すように、シフト装置11は、取付け対象であるインストルメントパネル10に開口して形成された取り付け部位としての収容部10aに装着される直方体状のハウジング21、及び当該ハウジング21の収容部10aから露出する1つの側面である意匠面21aに設けられた円柱状のノブ22を備えてなる。
【0026】
図3に示されるように、ノブ22は、意匠面21aに対して回転中心軸Oを中心として回転可能に、且つ当該回転中心軸Oに交わる2つの方向へスライド可能に設けられている。本実施の形態では、ノブ22は、図3に矢印X,Yで示されるように、互いに直交する2つの方向へ変位可能とされている。
【0027】
ノブ22には、自動変速機の変速位置に対応する複数の回転操作位置として、後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」が、また車両の特定の機能(ここでは、モータによる回生ブレーキ)に対応する回転操作位置として手動操作位置「B」が設定されている。そして、ノブ22の表面には、当該ノブ22の回転操作位置として設定される後進位置「R」、中立位置「N」、前進位置「D」、及び手動操作位置「B」を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bが設けられている。これらインジケータ22r,22n,22d,22bは、アルファベッド「R」、「N」,「D」,「B」の形状に形成されている。
【0028】
中立位置「N」を示すインジケータ22nは、ノブ22をその回転中心軸O側から見たとき、同回転中心軸Oに直交し且つノブ22の水平方向に延びる中心軸On上に設けられている。同じく後進位置「R」を示すインジケータ22rは、前記中心軸Onに対してノブ22の左回転方向において所定角度θ1をなす中心軸Or上に設けられている。同じく前進位置「D」を示すインジケータ22dは、前記中心軸Onに対してノブ22の右回転方向において所定角度θ2をなす中心軸Od上に設けられている。同じく手動操作位置「B」を示すインジケータ22bは、前記中心軸Odに対してノブ22の右回転方向において所定角度θ3をなし、且つ前記中心軸Onに直交して垂直方向へ延びる中心軸Op上に設けられている。
【0029】
ハウジング21の意匠面21aにおいて、ノブ22の近傍には、当該ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23b、及び当該ノブ22のスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bが設けられている。インジケータ23aはノブ22の右回転方向を示す矢印形状に、インジケータ23bはノブ22の左回転方向を示す矢印形状に形成されている。また、インジケータ24aはノブ22のスライド操作方向として矢印X方向(図3の右方)を示す矢印形状に、インジケータ24bはノブ22のスライド操作方向として矢印Y方向(図3の下方)を示す矢印形状に形成されている。各インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bは、ノブ22がこれらの示す方向への操作が可能な状態であるときに点灯する。
【0030】
ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23bは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、水平方向へ延びる中心軸Onを間に挟んで互いに対向するように配設されている。また、ノブ22の右方へのスライド操作方向を示すインジケータ24aは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、水平方向へ延びる中心軸Or上に位置するように配設されている。さらに、ノブ22の下方へのスライド操作方向を示すインジケータ24bは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、垂直方向へ延びる中心軸Op上に位置するように配設されている。
【0031】
ユーザは自動変速機の変速位置を切り替える際には、ノブ22を所望の変速位置(ギヤ段)に対応する特定の回転操作位置へ回転操作し、当該回転操作位置を保持した状態で当該ノブ22を図3に矢印Xで示される側方へスライド操作する。これにより、自動変速機において所望の変速位置への切り替えが実行される。本実施の形態では、ノブ22は、車両を前進させる際には前進位置「D」に、車両の駆動源の動力伝達を遮断する際には中立位置「N」に、車両を後進させる際には後進位置「R」に切り替えられる。すなわち、各回転操作位置を示す各インジケータ22r,22n,22dが、水平方向へ延びる中心軸On上に位置するようにノブ22を回転させ、その位置において当該ノブ22を矢印X方向へスライドさせる。
【0032】
ここで、前述したように、中立位置「N」を示すインジケータ22nが水平方向へ延びる中心軸On上にあって矢印X方向を示すインジケータ24aに対応する位置にあるときには、手動操作位置「B」を示すインジケータ22bは垂直方向へ延びる中心軸Op上にあって矢印Y方向を示すインジケータ24bに対応する位置にある。そして、この位置においてのみノブ22は矢印Y方向へスライド操作可能とされている。ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されると、手動操作位置「B」に対応する車両の機能が作動する。本実施の形態では、車両の走行用の駆動源を構成するモータによる回生ブレーキがかかる。
【0033】
<シフト装置の詳細構成>
次に、前述のようなノブ22の操作が許容されるシフト装置の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4(a)に示すように、ノブ22のハウジング21側の側面には、ノブ22の回転中心軸Oに沿う方向へ延びる円柱状の軸部材31が同軸状に設けられている。軸部材31の外径はノブ22の外径よりも小さく設定されている。この軸部材31はノブ22とともに本発明のシフト操作部材を構成する。
【0035】
図4(b)に示すように、ハウジング21において、ノブ22の取り付け部位である意匠面21aには、軸部材31を挿通可能とした横断面円形状の挿通穴32が開口して形成されている。挿通穴32の内径は軸部材31の外径よりも大きく且つノブ22の外径よりも小さく設定されている。当該挿通穴32には軸部材31が外方から挿通されている。そして、軸部材31は、ハウジング21に対して、回転可能、且つ軸部材31の外周面と挿通穴32の内周面との隙間の分だけ当該軸部材31の径方向へスライド可能に保持されている。さらに軸部材31は、ノブ22の回転操作方向への操作力及びスライド操作方向への操作力が解除された際には、後述する復帰機構40を通じて、ノブ22が図3に実線で示される回転操作方向及びスライド操作方向における原位置へ自動的に復帰するように保持されている。
【0036】
<復帰機構>
次に、復帰機構40について説明する。図5に示すように、軸部材31の先端側における外周面には、矢印X方向へ突出する係合部材41が設けられている。係合部材41は、軸部材31の外周面に矢印X方向へ突出するように設けられた平板状の腕部材41a及び当該腕部材41aのノブ22側の側面に設けられた円柱状の係止突部41bを備えてなる。また、軸部材31には、捻りコイルばね42が挿通されている。この捻りコイルばね42は係合部材41を構成する腕部材41aのノブ22側に位置している。図6(a)に示されるように、軸部材31をノブ22側且つその軸方向から見たとき、捻りコイルばね42の両端部42a,42bは互いに交差するとともに、矢印X方向へ開口するU字状をなるように湾曲して形成されている。捻りコイルばね42の両端部42a,42bの基端部間には、前述した係合部材41の係止突部41bが介在されている。
【0037】
<外側スライド部材>
一方、図6(a),(b)に併せて示すように、ハウジング21の内部において、軸部材31の係合部材41に対応する部位には、直方体状のスライド部材収容部43が挿通穴32と連通して形成されている。このスライド部材収容部43には、四角枠状の外側スライド部材44が矢印Y方向へスライド可能に収容されている。すなわち、外側スライド部材44の下面とスライド部材収容部43の内底面との間には隙間dyが形成されている。この隙間dyにおいて、外側スライド部材44の下面とスライド部材収容部43の内底面との間には圧縮コイルばね45が介在されている。外側スライド部材44は圧縮コイルばね45の弾性力により上方(矢印Yで示されるスライド操作方向と反対側)へ常時付勢されている。この外側スライド部材44の上方への変位は、当該外側スライド部材44の上面がスライド部材収容部43の内頂面に当接することにより規制される。したがって、外側スライド部材44に矢印Y方向への力が作用した際には、当該外側スライド部材44は圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ変位する。この際、外側スライド部材44の矢印X方向において互いに反対側に位置する2つの側面は、スライド部材収容部43の矢印X方向において互いに対向する2つの内側面に摺動し案内される。すなわち、外側スライド部材44の矢印X方向及び矢印Xと反対方向へのスライドは、当該外側スライド部材44の矢印X側及び矢印Xと反対側の側面が、スライド部材収容部43の矢印X側の内側面及び矢印Xと反対側の内側面に当接することにより規制されている。
【0038】
なお、外側スライド部材44の内周面において、上下方向において互いに対向する2つの内側面には、それぞれ案内部材44a,44bが矢印X方向における全長にわたって形成されている。図6(b)に示されるように、案内部材44a,44bのノブ22側の側面と外側スライド部材44のノブ22側の側面との間には、段差d1が形成されている。
【0039】
<内側スライド部材>
そして、前述のように構成された外側スライド部材44の内側には、四角板状の内側スライド部材46が矢印X方向へスライド可能に設けられている。すなわち、内側スライド部材46の厚みは前述した外側スライド部材44の厚みとほぼ同じに設定されている。また、内側スライド部材46の外周面において互いに反対側に位置する2つの側面には、突条46a,46bが矢印X方向における全長にわたって形成されている。図6(b)に示されるように、突条46a,46bのノブ22と反対側の側面と内側スライド部材46のノブ22と反対側の側面との間には、段差d2が形成されている。この段差d2は前述した段差d1とほぼ同じとされている。そして、内側スライド部材46は、その突条46a,46bのノブ22と反対側の側面が、外側スライド部材44における案内部材44a,44bのノブ22側の側面に密接するように重ね合わせられている。内側スライド部材46のノブ22側の側面は、外側スライド部材44のノブ22側の側面と面一となっている。
【0040】
また、内側スライド部材46の矢印X側の外側面とスライド部材収容部43の矢印X側の内側面との間には、隙間dxが形成されている。この隙間dxにおいて、内側スライド部材46の矢印X側の側面とスライド部材収容部43の矢印X側の内側面との間には圧縮コイルばね47が介在されている。内側スライド部材46は圧縮コイルばね47の弾性力により左方(矢印Xで示されるスライド操作方向と反対側)へ常時付勢されている。この内側スライド部材46の左方への変位は、当該内側スライド部材46の左側の外側面が外側スライド部材44の左側の内側面に当接することにより規制される。したがって、内側スライド部材46に矢印X方向への力が作用した際には、当該内側スライド部材46は圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。この際、内側スライド部材46における突条46a,46bのノブ22と反対側の側面は、外側スライド部材44における案内部材44a,44bのノブ22側の側面に摺動し案内される。
【0041】
さらに、内側スライド部材46には、軸部材31を挿通可能とした円形の挿通孔46cが形成されるとともに、当該挿通孔46cの矢印X側の内側部には扇状の逃げ孔46dが連通して形成されている。この逃げ孔46dには前述した係止突部41bがノブ22と反対側から挿入されるとともに、当該係止突部41bは前述したように捻りコイルばね42の両端部42a,42bの基端部間に介在されている。また、内側スライド部材46のノブ22側の側面において、逃げ孔46dの挿通孔46cと反対側の側縁部の中央には、直方体状のばね受け突部48が設けられている。このばね受け突部48は、捻りコイルばね42の両端部42a,42bの先端部の間に介在されている。
【0042】
ノブ22の回転操作が行われない通常時においては、係止突部41bは図6(a)に実線で示されるように、逃げ孔46dの中央に保持される。そして、ノブ22の回転操作に伴い係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、逃げ孔46dの左回転側の内側面に係合する上方位置と、同じく右回転側の内側面に係合する下方位置との間を変位する。すなわち、ノブ22が中立位置「N」から後退位置「R」へ回転操作されたときには、係止突部41bは、捻りコイルばね42の弾性力に抗して、図6(a)に実線で示す中央位置から同図に二点鎖線で示される下方位置へ変位する。ノブ22が中立位置「N」から前進位置「R」へ回転操作されたときには、係止突部41bは、捻りコイルばね42の弾性力に抗して、図6(a)に実線で示す中央位置から同図に二点鎖線で示される上方位置へ変位する。ノブ22に対する回転操作力が解除されたときには、係止突部41bは捻りコイルばね42の弾性力により図6(a)に実線で示される中央位置に復帰する。これに伴い、ノブ22の回転操作位置も中立位置へ復帰する。
【0043】
また、ノブ22の矢印X方向へのスライド操作を通じて、軸部材31が矢印X方向へ変位した場合には、内側スライド部材46は、圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。このとき、外側スライド部材44が矢印X方向へ変位することはない。これは、前述したように、外側スライド部材44の右側の外側面がスライド部材収容部43の右側の内側面に当接することにより、当該外側スライド部材44の矢印X方向への変位が規制されるからである。そしてノブ22の矢印X方向への操作力が解除されると、内側スライド部材46は、圧縮コイルばね47の弾性力により矢印Xと反対方向へ変位し、当該内側スライド部材46の左側の外側面が外側スライド部材44の左側の内側面に当接する原位置へ復帰する。
【0044】
また、ノブ22の矢印Y方向へのスライド操作を通じて、軸部材31が矢印Y方向へ変位した場合には、内側スライド部材46及び外側スライド部材44は、圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ一体的に変位する。そしてノブ22の矢印Y方向への操作力が解除されると、内側スライド部材46及び外側スライド部材44は、圧縮コイルばね45の弾性力により矢印Yと反対方向へ一体的に変位し、外側スライド部材44の上側の側面がスライド部材収容部43の内頂面に当接する原位置へ復帰する。
【0045】
このように、復帰機構40は、ノブ22に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該ノブ22を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段として機能する。また、復帰機構40は、ノブ22に対する矢印X,Yで示されるスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該ノブ22を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段として機能する。そして、軸部材31は、内側スライド部材46の左側の外側面が圧縮コイルばね47の弾性力によりスライド部材収容部43の左側の内側面に押し付けられることにより、挿通穴32の内部における水平方向における位置決めがなされる。また、軸部材31は、外側スライド部材44の上側の外側面が圧縮コイルばね45の弾性力によりスライド部材収容部43の内頂面に押し付けられることにより、挿通穴32の内部における垂直方向における位置決めがなされる。このようにして、軸部材31は、挿通穴32の内部に保持されている。
【0046】
<スライド規制手段>
また、軸部材31には、ノブ22が前述した複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブ22の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段として次のような構成が設けられている。すなわち、図5に示されるように、軸部材31の外周面において係合部材41よりもノブ22側の部位には、当該ノブ22の回転操作位置と同数(ここでは、4つ)の嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成されている。なお、図5では、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのみが示されている。
【0047】
図7に示すように、4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51bは、前述したノブ22の回転操作位置である後進位置「R」、中立位置「N」、前進位置「D」及び手動操作位置「B」に対応して形成されている。
【0048】
中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nは、軸部材31をその軸方向から見たとき、当該軸部材31の水平方向へ延びる中心軸On上であって且つ矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作側の部位(図7中、右側部)に設けられている。後進位置「R」に対応する嵌合凹部51rは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに対して軸部材31の左回転方向において所定角度θ1をなす中心軸Or上に嵌合凹部51nと隣り合うように設けられている。前進位置「D」に対応する嵌合凹部51dは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに対して軸部材31の右回転方向において所定角度θ2をなす中心軸Od上に嵌合凹部51nと隣り合うように設けられている。手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに直交する中心軸Op上に嵌合凹部51dと隣り合うように設けられている。
【0049】
一方、挿通穴32の内周面において、軸部材31をその軸方向から見たとき、水平方向へ延びる中心軸On上であって図7に矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作側の部位(図7中、右内側部)には、3つの嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aが形成されている。また、挿通穴32の内周面において、軸部材31をその軸方向から見たとき、垂直方向へ延びる中心軸Op上であって図7に矢印Yで示されるノブ22の垂直方向におけるスライド操作側の部位(図7中、下内側部)には、嵌合凹部51bに嵌合する第2の嵌合突部52bが形成されている。
【0050】
さらに、挿通穴32の内周面において、軸部材31の軸方向における中央部に対応する部位には、第1及び第2の突部53a,53bが周方向において所定間隔をおいて形成されている。第1及び第2の突部53a,53bは、軸部材31の軸方向へ所定の長さをもって形成されている。挿通穴32をその軸方向から見たとき、第1の突部53aは、挿通穴32の内周面において、水平方向へ延びる中心軸On上であって且つ図7に矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作方向と反対側の部位に形成されている。同じく第2の突部53bは、挿通穴32の内周面において、垂直方向へ延びる中心軸Op上であって且つ図7に矢印Yで示されるノブ22の垂直方向におけるスライド操作方向と反対側の部位に形成されている。
【0051】
ここで、外側スライド部材44の上面がスライド部材収容部43の内頂面に、また内側スライド部材46の左側の側面がスライド部材収容部43の左側の内側面に当接した図6に示される通常状態において、前述した第1及び第2の突部53a,53bの先端部は、軸部材31の外周面に摺動可能に当接している。そして、前述した第1及び第2の嵌合突部52a,52bの挿通穴32の内周面からの突出高さは、軸部材31の外周面が第1及び第2の突部53a,53bの先端部に当接した状態における当該軸部材31の外周面と挿通穴32の内周面との距離よりも小さく設定されている。
【0052】
したがって、ノブ22の回転操作を通じて、前述した3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一が第1の嵌合突部52aに対向する位置まで回転したときに、当該軸部材31は水平方向へ延びる中心軸Onに沿って矢印Xで示される方向(図7中、右側)へスライド操作可能となる。すなわち、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一が第1の嵌合突部52aに対向した状態において、ノブ22が矢印X方向へスライド操作された場合には、軸部材31は前述した復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。このとき、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一には第1の嵌合突部52aが嵌合することにより、軸部材31の右側への変位が許容される。3つの嵌合凹部51r,51n,51dのいずれも第1の嵌合突部52aに対応しない状態においては、軸部材31の外周面に第1の嵌合突部52aの先端部が当接することにより、当該軸部材31の矢印X方向への変位が規制される。ノブ22に対する矢印X方向へのスライド操作力が解除されたときには、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力により、当該軸部材31の外周面が第1の突部53aの先端部に当接する水平方向における原位置に復帰する。
【0053】
また、中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nが第1の嵌合突部52aに対向した状態において、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作された場合には、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ変位する。このとき、嵌合凹部51dには第2の嵌合突部52bが嵌合することにより、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bが第2の嵌合突部52bに対応しない状態において軸部材31が矢印Y方向へ変位した場合には、当該軸部材31の外周面に第2の嵌合突部52bの先端部が当接することにより、当該軸部材31の矢印Y方向への変位が規制される。ノブ22に対する矢印Y方向へのスライド操作力が解除されたときには、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力により、当該軸部材31の外周面が第2の突部53bの先端部に当接する垂直方向における原位置に復帰する。
【0054】
ノブ22の操作が行われない通常時において、ノブ22は中立位置「N」に対応するインジケータ22nが矢印X方向を示すインジケータ24aに対応する位置に保持される。またこのとき、軸部材31は中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nが第1の嵌合突部52aに、手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bが第2の嵌合突部52bに対向する中立状態に保持される。そして、この中立状態において、ノブ22の右回転操作を通じて軸部材31が所定角度θ1だけ右方向へ回転されることにより、後進位置「R」に対応する嵌合凹部51rは第1の嵌合突部52aに対向する。また、前述の中立状態において、軸部材31が左方向へ所定角度θ2だけ回転されることにより、前進位置「D」に対応する嵌合凹部51dは第1の嵌合突部52aに対向する。
【0055】
このように、ノブ22が、複数の回転操作位置「R」,「N」,「D」のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ当該ノブ22の矢印X方向へのスライド操作が、またノブ22が回転操作位置「N」に回転操作されたときには矢印Y方向へのスライド操作が併せて許容される。
【0056】
<ストッパ手段>
ここで、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51rの左回転側の開口端縁には第1の当接壁54aが、また嵌合凹部51dの右回転側の開口端縁には第2の当接壁54bが、当該軸部材31の径方向へ突設されている。第1の当接壁54aの嵌合凹部51r側の側面は当該嵌合凹部51rの内側面と面一とされている。第2の当接壁54bの嵌合凹部51d側の側面は当該嵌合凹部51dの内側面と面一とされている。第1及び第2の当接壁54a,54bの軸部材31の外周面からの突出高さは、軸部材31の外周面が前述した第1及び第2の突部53a,53bの先端部に当接した状態における当該軸部材31の外周面と第1及び第2の嵌合突部52a,52bの先端面との距離よりも大きく設定されている。
【0057】
したがって、軸部材31の右方向への回転は、第1の当接壁54aの嵌合凹部51r側の側面が第1の嵌合突部52aに当接することにより規制される。また軸部材31の左方向への回転は、第2の当接壁54bの嵌合凹部51d側の側面が第1の嵌合突部52aに当接することにより規制される。すなわち、軸部材31は、第1の当接壁54aが第1の嵌合突部52aに当接する位置と、第2の当接壁54bが第1の嵌合突部52aに当接する位置との間において回転可能とされている。このように、第1及び第2の当接壁54a,54bは、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として機能する。
【0058】
なお、第1の当接壁54aが第1の嵌合突部52aに当接する位置にあるとき、前述した係合部材41の係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、内側スライド部材46における逃げ孔46dの左回転側の内側面に係合する上方位置にある。また、第2の当接壁54bが第1の嵌合突部52aに当接する位置にあるとき、係合部材41の係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、右回転側の内側面に係合する下方位置にある。このように、係合部材41の係止突部41bは、前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと協働して、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段としても機能する。
【0059】
<回転規制手段>
また、図5に示されるように、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位よりもさらにノブ22側の部位には、第1及び第2の係合凹部61,62が形成されている。
【0060】
詳述すると、図8に示すように、第1の係合凹部61は、軸部材31をその軸方向から見たときに、矢印X方向へ延びる中心軸Onよりも上側に、且つ矢印Y方向へ延びる中心軸Opよりも右側に設けられている。第1の係合凹部61の内底面は、中心軸Onに平行をなす係止面61aとされている。第1の係合凹部61の矢印Xと反対側の内側面は中心軸Opに平行をなす垂直面61bとされている。
【0061】
また、第2の係合凹部62は、軸部材31をその軸方向から見たときに、矢印X方向へ延びる中心軸Onよりも上側に、且つ矢印Y方向へ延びる中心軸Opよりも左側に設けられている。第2の係合凹部62の内底面は、中心軸Onに平行をなす係止面62aとされている。第2の係合凹部62の矢印X側の内側面は、上部に向かうにつれて矢印X側へ湾曲して前述した第1の係合凹部61側へ延びる曲面62bとされている。曲面62bは、軸部材31、すなわちノブ22の回転中心軸Oを中心とし且つ軸部材31より小径の円弧面とされている。
【0062】
さらに、軸部材31をその軸方向から見たときに、中心軸Onよりも下側には2つの凹部63a,63bが中心軸Opを間に挟んで左右対称に形成されることにより、係止壁64が形成されている。なお、前述した2つの係止面61a,62aは同一の仮想平面上にある。
【0063】
一方、図8に示すように、ハウジング21の内部において、軸部材31の第1及び第2の係合凹部61,62に対応する部位には、直方体状の係止部材収容部65が挿通穴32と連通して形成されている。この係止部材収容部65には、四角枠状の係止部材66が、軸部材31が挿通された状態で矢印Y方向へスライド可能に収容されている。すなわち、係止部材66の矢印Xと反対側の側面と係止部材収容部65の左側の内側面との間には隙間dx1が、同じく矢印X側の側面と係止部材収容部65の右側の内側面との間には隙間dx2が形成されている。また、係止部材66の上面は係止部材収容部65の内頂面に対して、同じく下面は係止部材収容部65の内底面に対して矢印X方向へ摺動可能に密接している。係止部材66において、軸部材31の軸方向において互いに反対側に位置する2つの側面は、係止部材収容部65において、軸部材31の軸方向において互いに対向する2つの内側面に摺動し案内される。
【0064】
また、図8に示すように、係止部材66を軸部材31の軸方向から見たとき、係止部材66の四角枠状の内側面において、右上の内角には四角形状の第1の係止片67が、同じく左上の内角には四角形状の第2の係止片68が形成されている。第1及び第2の係止片67,68の下面(矢印Y側の側面)は、軸部材31に形成された第1及び第2の係合凹部61,62の係止面61a,62aと同一の仮想平面上にある。
【0065】
したがって、係止部材66に対して矢印Xと反対方向への力が作用した場合には、当該係止部材66は矢印Xと反対側へ変位する。この係止部材66の矢印Xと反対方向への変位は、第1の係止片67が第1の係合凹部61の内部に進入することにより許容される。このとき、第1の係止片67の下面は、第1の係合凹部61の内底面である係止面61a上を摺動する。また、このとき第1の係合凹部61の内底面が第1の係止片67の下面に係止されることにより軸部材31の左回転、ひいてはノブ22のインジケータ23bで示される方向への回転操作が規制される。
【0066】
係止部材66に対して矢印X方向への力が作用した場合には、当該係止部材66は矢印X側へ変位する。この係止部材66の矢印X方向への変位は、第2の係止片68が第2の係合凹部62の内部に進入することにより許容される。このとき、第2の係止片68の下面は、第2の係合凹部62の内底面である係止面62a上を摺動する。また、このとき第2の係合凹部62の内底面が第2の係止片68の下面に係止されることにより軸部材31の右回転、ひいてはノブ22のインジケータ23aで示される方向への回転操作が規制される。
【0067】
また、係止部材66の内底面において、左下の内角寄りの部位には、矢印Y方向へ延びる切欠69が形成されている。この切欠69の矢印X方向における幅は、前述した軸部材31の係止壁64の矢印X方向における幅よりも若干大きく設定されている。このため、係止部材66が矢印X方向へ変位して切欠69が係止壁64に対応した状態で、軸部材31が矢印Y方向へ変位した際には、軸部材31の係止壁64は切欠69に進入する。これにより、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。
【0068】
さらに、係止部材66の右側の外側面には、係合孔70が矢印X側へ開放して形成されている。この係合孔70は、係止部材66の矢印X側に開口する開放孔70aと、開放孔70aに連通して上下方向へ延びる係合孔70bとから、アルファベット「T」を左に90°だけ回転させた形状とされている。
【0069】
<ソレノイド機構>
また、図8に示すように、ハウジング21の内部において、係止部材収容部65に対応する部位には、ソレノイド収容部71が係止部材収容部65に連通して形成されている。ソレノイド収容部71には、係止部材66を矢印X方向においてスライドさせるソレノイド機構72が収容されている。ソレノイド機構72は、ソレノイド収容部71に収容される励磁コイル73、及び当該励磁コイル73の励磁状態に基づき当該励磁コイル73に対する矢印X方向における突出量が変化するプランジャ74を備えてなる。
【0070】
プランジャ74の先端部には矢印Y方向において互いに反対側に位置する2つの平面74a,74bが形成されるとともに、これら平面74a,74bに直交するように係合ピン75が上下に貫通した状態で固定されている。プランジャ74は係止部材収容部65の内部に突出している。プランジャ74の先端部は開放孔70aを通じて係合孔70b内に挿入されるとともに、当該プランジャ74の先端面は係合孔70bの左側(矢印Xと反対側)の内側面に当接した状態に保たれている。係合ピン75は、係合孔70bの内部に保持されるとともに、当該係合孔70bの右側(矢印X側)の内側面に係合可能とされている。
【0071】
本実施の形態において、プランジャ74は、図8に示される中間位置、図9に示される突出位置、及び図10に示される引込位置の3つの位置間を変位する。プランジャ74は、励磁コイル73が通電されてないときには図8に示される中間位置に保持される。このとき、軸部材31は係止部材66の内側面のどの部位にも係合していないことから、軸部材31の回転は許容されている。すなわち、係止部材66は、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作を許容する回転許容位置(回転許容状態)に保持される。
【0072】
また、プランジャ74は、励磁コイル73に正の極性を有する励磁電流が供給されたときには、矢印X方向と反対方向へ変位して前記中間位置から図9に示される突出位置へ至る。このとき、プランジャ74の先端面により係合孔70bの左側の内側面が矢印X方向と反対方向へ押圧されることにより、係止部材66はプランジャ74と共に矢印X方向と反対方向へスライドする。そして、図9に示されるように、プランジャ74が前記突出位置に至った状態においては、係止部材66の第1の係止片67は、軸部材31の第1の係合凹部61の内部に進入した状態に保たれる。そして、第1の係合凹部61の内底面が第1の係止片67の下面に係止されることにより軸部材31の左回転、ひいてはノブ22のインジケータ23bで示される方向への回転操作が規制される。すなわち、ノブ22のドライブ位置「D」への回転操作が規制される。
【0073】
このように、励磁コイル73が正の極性をもって通電されることにより、係止部材66は、図8に示される回転許容位置から、軸部材31、ひいてはノブ22の左回転操作を規制する図9に示される左回転規制位置(回転規制状態)へ変位する。これにより、ノブ22の回転操作位置が保持される。また係止部材66が図9に示される左回転規制位置にあるとき、切欠69は軸部材31の係止壁64に対応していない。このため、係止壁64の先端面が係止部材66の下側の内側面に当接することにより、軸部材31の矢印Y方向への変位は規制される。
【0074】
また、プランジャ74は、励磁コイル73に負の極性を有する励磁電流が供給されたときには、矢印X方向へ変位して前記中間位置から図10に示される引込位置へ至る。このとき、係合ピン75が係合孔70bの右側の内側面に係合することにより、係止部材66はプランジャ74と共に矢印X方向へスライドする。そして、図10に示されるように、プランジャ74が前記引込位置に至った状態においては、係止部材66の第2の係止片68は、軸部材31の第2の係合凹部62の内部に進入した状態に保たれる。そして、第2の係合凹部62の内底面が第2の係止片68の下面に係止されることにより軸部材31の右回転、ひいてはノブ22のインジケータ23aで示される方向への回転操作が規制される。すなわち、ノブ22の後進位置「R」への回転操作が規制される。
【0075】
このように、励磁コイル73が負の極性をもって通電されることにより、係止部材66は、図8に示される回転許容位置から、軸部材31、ひいてはノブ22の右回転操作を規制する図10に示される右回転規制位置(回転規制状態)へ変位する。これにより、ノブ22の回転操作位置が保持される。また係止部材66が図10に示される右回転規制位置にあるとき、切欠69は軸部材31の係止壁64に対して相対的に進入可能に対応していることから、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。
【0076】
<検出手段>
さらに、図5に示されるように、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位と係合部材41との間には、当該軸部材31の周方向へ延びる長溝81が矢印Xで示されるスライド操作方向において開口するように形成されている。この長溝81の軸部材31の周方向における長さは、前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと第1の嵌合突部52aとの係合関係に基づき決定される軸部材31の回転操作範囲に対応して設定されている。また、図11(a)に示されるように、長溝81は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」とされているとき、水平方向へ延びる中心軸Onが当該長溝81の延びる方向における中心を通るように形成されている。
【0077】
そして、ハウジング21の内部、正確には挿通穴32の内周面に開口して形成された図示しないスイッチ収容部には、軸部材31、ひいてはノブ22の各回転操作位置への回転操作及び各回転操作位置における矢印X、Y方向へのスライド操作を検出する手段として、第1〜第3のマイクロスイッチ82a,82b,82cが配設されている。これら第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは、前述の長溝81内に進入可能な程度の大きさとされている。
【0078】
第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、図11(a)に示されるように、矢印Xで示されるノブ22のスライド操作側に設けられている。また、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、ノブ22が中立位置「N」にある状態においては、長溝81の延びる方向において互いに対向する2つの内側面と軸部材31の外周面との境界部位に形成される2つの角部83a,83bに対応するように設けられている。したがって、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、ノブ22が中立位置「N」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、前述した2つの角部83a,83bにより押圧されてオン動作する。
【0079】
また、図11(b)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」から後進位置「R」へ回転操作された場合には、長溝81は第1のマイクロスイッチ82aから外れ、且つ第2のマイクロスイッチ82bに対応する位置に保持される。したがって、ノブ22が後進位置「R」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、第1のマイクロスイッチ82aは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。第2のマイクロスイッチ82bは長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなく、オフ状態に保たれる。
【0080】
また、図11(c)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」から前進位置「D」へ回転操作された場合には、長溝81は第1のマイクロスイッチ82aに対応し、且つ第2のマイクロスイッチ82bから外れた位置に保持される。したがって、ノブ22が前進位置「D」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、第1のマイクロスイッチ82aは長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなく、オフ状態に保たれる。第2のマイクロスイッチ82bは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。
【0081】
なお、第3のマイクロスイッチ82cは、垂直方向へ延びる中心軸Op上にあって、且つ矢印Yで示されるスライド操作側において軸部材31の外周面に対向して設けられている。前述したように、ノブ22は中立位置「N」にあるときにのみ矢印Yで示される方向へのスライド操作が可能となる(正確には、係止部材66が図10に示される右回転規制位置にあることも併せて必要となる。)。そして、図11(c)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」に保持されている状態で、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、第3のマイクロスイッチ82cは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。
【0082】
<電気的な構成>
次に、前述のように構成されたシフト装置の電気的な構成について説明する。
図12に示すように、シフト装置11の電子制御装置91には、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82c、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22b、2つの矢印型のインジケータ24a,24b、並びにソレノイド機構72が接続されている。また、電子制御装置91には、車速センサ92及び自動変速機93が接続されている。車速センサ92は車両の走行速度を検出し、その検出信号として車速信号を出力する。
【0083】
電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断したときには、励磁コイル73への励磁電流を遮断する旨示す作動制御信号をソレノイド機構72へ出力する。この結果、励磁コイル73への励磁電流の供給が遮断されて、係止部材66は図8に示される回転許容位置に保持される。一方、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73へ励磁電流を供給する旨示す作動制御信号をソレノイド機構72へ出力する。この結果、励磁コイル73へ正又は負の極性を有する励磁電流が供給されて、係止部材66は図9に示される左回転規制位置又は図10に示される右回転規制位置に保持される。なお、所定の速度判定閾値は、例えば時速0km〜時速10km程度のいわゆる低速域の値に設定される。本実施の形態では、速度判定閾値は時速10kmに設定されている。
【0084】
また、電子制御装置91は、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cからの検出信号であるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、ノブ22の回転操作位置を判定する。すなわち、電子制御装置91は、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方からオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」にあって、且つ当該中立位置「N」に対応する変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、励磁コイル73を非励磁状態に保つことにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置に保持する。
【0085】
また、電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオン信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオフ信号が入力された場合には、ノブ22が後進位置「R」にあって、且つ当該後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、車速センサ92を通じて車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73に正の極性を有する励磁電流を供給することにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置から図9に示される左回転規制位置へ変位させる。
【0086】
また、電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオフ信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオン信号が入力された場合には、ノブ22が前進位置「D」にあって、且つ当該前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、車速センサ92を通じて車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73に負の極性を有する励磁電流を供給することにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置から図10に示される右回転規制位置へ変位させる。
【0087】
また、電子制御装置91は、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」、すなわち手動操作位置「B」にあって、且つ当該手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、手動操作位置「B」に対応する車両機能を作動させる。本実施の形態では、電子制御装置91は、回生ブレーキをかけるべく車両の走行用の駆動源を構成するモータを制御する。
【0088】
なお、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動は、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作である矢印X方向へのスライド操作が検出されていることが前提となる。すなわち、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた後でなければ、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作が行われたとしても、当該手動操作位置「B」に対応する車両機能は作動されない。この場合には、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。ちなみに、手動操作位置「B」に対応する車両機能が作動している状態で、前進位置「D」に対応する変速位置への切換を確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた場合には、電子制御装置91は、中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。
【0089】
さらに、電子制御装置91は、図示しない始動スイッチの操作により車両の電源が投入された場合には、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bを点灯させる。また、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作方向を示す矢印形のインジケータ23a,23b、及びノブ22のスライド操作方向を示す矢印形のインジケータ24a,24bの点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作位置及び車両の状態に応じて、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのうち操作可能である方向を示すインジケータのみを点灯させる。これにより、ノブ22の操作可能な方向をユーザの視覚に訴えて示唆することが可能となる。
【0090】
具体的には、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断した場合には、図13(a)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aを点灯させて、ノブ22の矢印Y方向を示すインジケータ24bは消灯状態に保つ。
【0091】
また、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達している旨判断した場合には、図13(b)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのすべてを消灯させる。
【0092】
また、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断した場合には、図13(c)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、ノブ22の矢印X方向を示すインジケータ24aのみを点灯させて、残りのインジケータ23a,23b及びインジケータ24bは消灯させる。
【0093】
また、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達している旨判断した場合には、図13(d)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、矢印Y方向を示すインジケータ24bのみを点灯させて、残りのインジケータ23a,23b並びにインジケータ24aは消灯させる。
【0094】
また、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断した場合には、図13(e)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、矢印X方向を示すインジケータ24a及び矢印Y方向を示すインジケータ24bを点灯させて、残りのインジケータ23a,23bは消灯させる。
【0095】
なお、前述したように、ノブ22は、その回転操作方向及びスライド操作方向への操作力が解除されたときには、復帰機構40を構成する捻りコイルばね42並びに圧縮コイルばね45,47の弾性力により、当該回転操作方向及びスライド操作方向における原位置に弾性復帰される。このため、図13(a)〜図13(e)においては、ノブ22の回転操作位置はすべて中立位置「N」に保持された状態で示されている。
【0096】
<実施の形態の作用>
次に、前述のように構成されたシフト装置11の動作について説明する。ここで、駐車状態の車両においては、走行用の駆動源は停止状態であるとともに、自動変速機93の変速位置は駐車位置に保持されている。この駐車状態において、シフト装置11は、その初期状態として、次のような状態に保持されている。すなわち、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持されている。また、ソレノイド機構72への励磁電流の供給は遮断された状態であって係止部材66は図8に示される回転許容位置に保持されている。
【0097】
<駆動源始動>
さて、駐車状態の車両を走行させる場合、ユーザはまずブレーキペダルを踏み込み操作した状態で車両の走行用の駆動源を始動させるべく図示しない始動スイッチを操作する。車両の電源が投入されると、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bを点灯させる。また、電子制御装置91は、図13(a)に示されるように、ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23b、及びノブ22のスライド操作方向を示すインジケータ24aを点灯させる。ここでは、係止部材66が図8に示される回転許容位置にあってノブ22の下方へのスライド操作が規制されていることから、電子制御装置91はインジケータ24bを消灯状態に保つ。そして、ユーザは、ノブ22の操作を通じて自動変速機93の変速位置を所望の変速位置に切り替える。
【0098】
<後進時>
ここではまず車両を後進させる場合について説明する。この場合、ユーザはノブ22を中立位置「N」から後進位置「R」へ回転操作する。これにより、軸部材31の嵌合凹部51rはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向し、軸部材31は当該第1の嵌合突部52a側へ変位可能となる。このとき、図11(b)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1のマイクロスイッチ82aから外れ、且つ第2のマイクロスイッチ82bに対応する位置に保持される。
【0099】
そして、ユーザにより、後進位置「R」に対応する自動変速機93の変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1のマイクロスイッチ82aは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作してオン信号を出力する。第2のマイクロスイッチ82bは、長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなくオフ状態に保たれてオフ信号を出力する。
【0100】
電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオン信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオフ信号が入力された場合には、ノブ22が後進位置「R」に切り替えられて、且つ当該後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。
【0101】
この後、ユーザは、図示しないパーキングブレーキスイッチの操作を通じてパーキングブレーキを解除して、図示しないアクセルペダルを踏み込むことにより、車両を後進させることができる。
【0102】
なお、ノブ22の回転操作位置が後進位置「R」に保持された状態でインジケータ24aにより示される側方へスライド操作された後に当該ノブ22に対する操作力が解除された場合、軸部材31は、復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力により、インジケータ24aにより示される方向と反対方向へ変位してスライド操作方向における原位置へ復帰する。また、軸部材31は捻りコイルばね42の弾性力によりインジケータ23aで示される方向と反対方向へ回転して回転操作方向における原位置へ復帰する。すなわち、軸部材31は、図7に示されるように、第1及び第2の突部53a,53bの先端が当該軸部材31の外周面に当接するとともに、嵌合凹部51rが第1の嵌合突部52aに対応する位置に保持される。これに伴って、ノブ22はインジケータ24aにより示される方向と反対方向へ変位して、図3に実線で示される水平方向及び垂直方向における原位置に復帰する。車両の後進中において、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0103】
車両の後進中において、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達していない旨判断した場合は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断状態に保ち、係止部材66を図8に示される回転許容状態に保持する。また、電子制御装置91は、図13(c)に示されるように、矢印X方向を示すインジケータ24aのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24aが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。
【0104】
そして、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、励磁コイル73へ正の極性を有する励磁電流を供給するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図8に示される中間位置から図9に示される突出位置へ変位し、係止部材66はその第1の係止片67が軸部材31の第1の係合凹部61に係合する左回転規制位置(第1の回転規制位置)へ変位する。この結果、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の左回転操作が規制される。これにより、車両の後進中において、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」から前進位置「D」へ切り替えられることが規制され、ひいてはユーザの意図しない変速操作が抑制される。
【0105】
また、電子制御装置91は、車両の走行速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、図13(b)に示されるように、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのすべてを消灯させる。ユーザは、これらインジケータが示すいずれの方向へもノブ22を操作することができない旨視覚を通じて認識することが可能となる。このため、車両の後進中にノブ22が無駄に操作されることが抑制される。
【0106】
ブレーキペダルの踏み込み操作が行われて車両が停止された場合、正確には車両の走行速度が所定の速度判定閾値を下回った場合には、電子制御装置91は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図9に示される突出位置から図8に示される中間位置へ変位し、係止部材66は図9に示される左回転規制位置から図8に示される回転許容位置(アンロック位置)へ変位する。この結果、軸部材31の回転、すなわちノブ22の回転操作が許容される。この後、ユーザは車両の駆動源を停止して降車するか、ノブ22の操作を通じて自動変速機93の変速位置を切り替えて再び車両を走行させるかする。
【0107】
<前進時>
次に、前述した車両の後進後に車両を前進させる場合について説明する。この場合には、ユーザはノブ22を中立位置「N」から前進位置「D」へ回転操作する。これにより、軸部材31の嵌合凹部51dはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向し、軸部材31は当該第1の嵌合突部52a側へ変位可能となる。このとき、図11(c)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1のマイクロスイッチ82aに対応し、且つ第2のマイクロスイッチ82bから外れた位置に保持される。
【0108】
そして、ユーザにより、前進位置「D」に対応する自動変速機93の変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1のマイクロスイッチ82aは、長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなくオフ状態に保たれてオフ信号を出力する。第2のマイクロスイッチ82bは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作してオン信号を出力する。
【0109】
電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオフ信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオン信号が入力された場合には、ノブ22が前進位置「D」に切り替えられて、且つ当該前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。この後、ユーザは、前記パーキングブレーキスイッチの操作を通じてパーキングブレーキを解除し、前記アクセルペダルを踏み込むことにより車両を前進させることができる。
【0110】
なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、前述した車両の後進時と同様に、ノブ22は、図3に実線で示される水平方向及び垂直方向における原位置に復帰する。また、車両の前進中において、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0111】
車両の前進中において、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達していない旨判断した場合は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断状態に保ち、係止部材66を図8に示される回転許容状態に保持する。また、電子制御装置91は、図13(e)に示されるように、矢印X方向を示すインジケータ24a及び矢印Y方向を示すインジケータ24bのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24a,24bが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。
【0112】
そして、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、励磁コイル73へ負の極性を有する励磁電流を供給するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図8に示される中間位置から図10に示される引込位置へ変位し、係止部材66はその第2の係止片68が軸部材31の第2の係合凹部62に係合する右回転規制位置(第2の回転規制位置)へ変位する。この結果、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の右回転操作が規制される。これにより、車両の前進中において、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」から後進位置「R」へ切り替えられることが規制され、ひいてはユーザの意図しない変速操作が抑制される。またこのとき、軸部材31の係止壁64は係止部材66の切欠69に対応していることから、軸部材31、ひいてはノブ22の下方への変位のみ許容される。電子制御装置91は、図13(d)に示されるように、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aを消灯させて、インジケータ24bのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24bが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。このため、車両の後進中にノブ22が無駄に操作されることが抑制される。
【0113】
車両の前進中において、ノブ22がインジケータ24bで示される側方へスライド操作された場合、第3のマイクロスイッチ82cは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作し、この旨示すオン信号を出力する。なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、ノブ22は、復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力により、図3に実線で示される垂直方向における原位置に復帰する。ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0114】
電子制御装置91は、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力された場合には、ノブ22が手動操作位置「B」に対応する車両機能の実行を確定させる操作としてインジケータ24bで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。なお、当該判断は、前述したように、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた後に、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力されたことが前提となる。そして本実施の形態では、手動操作位置「B」に対応する機能として、車両の走行用の駆動源を構成するモータの発電動作による回生ブレーキを作動させるスイッチ機能が割り当てられている。このため、ノブ22のインジケータ24bで示される側方へのスライド操作により回生ブレーキがかかる。
【0115】
前記ブレーキペダルの踏み込み操作が行われて車両が停止された場合、正確には車両の走行速度が所定の速度判定閾値を下回った場合には、電子制御装置91はこれを車速センサ92からの車速信号に基づき認識し、ソレノイド機構72への励磁電流の供給を遮断する。この結果、係止部材66は図10に示される右回転規制位置から図8に示される回転許容位置へ変位する。ノブ22の回転操作が許容されることにより、ユーザはノブ22を任意の回転操作位置に切り替え可能となる。
【0116】
<中立状態>
次に、自動変速機93を中立状態とする場合について説明する。この変速操作、すなわちノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持された状態における矢印X方向へのスライド操作は、前述したように、駐車状態で車両の駆動源を始動させたとき、並びに車両の後進時及び前進時において走行速度が所定の速度判定閾値を下回ったときに許容される。
【0117】
このとき、係止部材66は、図8に示される回転許容位置に保持されている。また、軸部材31の嵌合凹部51nはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向しており、当該軸部材31の第1の嵌合突部52a側への変位が許容されている。さらに、図11(a)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方から外れた位置に保持される。すなわち、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、長溝81の延びる方向において互いに対向する2つの内側面と軸部材31の外周面との境界部位に形成される2つの角部83a,83bに対応する。
【0118】
この状態で、ユーザにより、中立位置「N」に対応する自動変速機93の変速位置への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、前述した2つの角部83a,83bに押圧されることによりオン動作してオン信号を出力する。
【0119】
電子制御装置91は、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方からオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」に保持された状態で、且つ当該中立位置「N」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。これにより、自動変速機93は、車両の走行用の駆動源の動力伝達を遮断する状態となる。
【0120】
なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、前述した車両の後進時及び前進時と同様に、ノブ22は、復帰機構40の圧縮コイルばね47の弾性力により、図3に実線で示される水平方向における原位置に復帰する。また、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aは点灯状態に、インジケータ24bは消灯状態に保たれる。
【0121】
<実施の形態の効果>
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作位置に対応する3つの嵌合凹部51r,51n,51dを形成した。また、ハウジング21の挿通穴32の内周面には各嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aを形成した。そして、ノブ22が各回転操作位置に回転操作されたときに、各嵌合凹部51r,51n,51dは第1の嵌合突部52aに対向するようにした。このため、ノブ22の操作を通じて自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブ22の側方へのスライド操作が許容される。すなわち、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作(シフト装置11の誤操作)を好適に抑制することができる。
【0122】
(2)また、前述したように、軸部材31の各嵌合凹部51r,51n,51dと挿通穴32の内周面に設けられた第1の嵌合突部52aとの対応関係により、ノブ22のスライド操作を規制するようにした。このため、軸部材31にはノブ22の各回転操作位置に対応する嵌合凹部51r,51n,51dを、また挿通穴32には第1の嵌合突部52aを設けるといった簡単な構成により、ノブ22のスライド操作を好適に規制することができる。
【0123】
(3)また、軸部材31の一部として第1及び第2の係合凹部61,62に係合して前記一の回転操作位置にあるノブ22の他の回転操作位置への回転操作を規制する回転規制手段として係止部材66を設けた。当該係止部材66によりノブ22の回転操作が機械的に規制されることにより、意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。ここで、当該係止部材66を変位させる駆動手段として採用されるソレノイド機構72の不具合等により、軸部材31の回転の規制が好適に行われない状況も想定されるところ、このような場合であれ、前述したように、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、シフト装置11の誤操作を抑制することができる。
【0124】
(4)さらに、係止部材66を変位させる駆動手段としてソレノイド機構72を採用した。そして、当該ソレノイド機構72の励磁コイル73の励磁状態に基づき、係止部材66は軸部材31の回転を規制する回転規制位置(右回転規制位置及び左回転規制位置)と、同じく回転を許容する回転許容位置との間を変位するようにした。このため、軸部材31の正逆回転が好適に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をいっそう確実に抑制することができる。また、電子制御装置91は、励磁コイル73に対する通電のオン及びオフを制御するだけでよいことから、ノブ22の回転を規制するに際して複雑な制御は不要である。すなわち、簡単な制御により、ノブ22の回転を好適に規制することができる。電子制御装置91の演算負荷の増大も抑制される。
【0125】
(5)係止部材66には軸部材31を挿通した状態に保持した。そして、係止部材66が前記回転規制位置にあるときには、当該係止部材66の内周面の一部である第1及び第2の係止片67,68が、軸部材31の一部である第1及び第2の係合凹部61,62に係合することにより、軸部材31の回転が規制されるようにした。このように、係止部材66は軸部材31が挿通されてなることから、当該係止部材66を軸部材31の外方から係合させるようにした場合と異なり、軸部材31の径方向における大型化が抑制される。
【0126】
(6)ノブ22の回転操作位置として、自動変速機93の各変速位置に対応する前進位置「D」、中立位置「N」及び後進位置「R」、並びに車両の前進走行中に行われる特定の機能に対応する手動操作位置「B」を設定するとともに、中立位置「N」をノブ22の回転操作方向における原位置とした。そして、軸部材31の外周面には、手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bを、また挿通穴32の内周面には当該嵌合凹部51bに嵌合する第2の嵌合突部52bを設けた。そしてさらに、ノブ22が中立位置「N」に保持されているときにのみ嵌合凹部51bは第2の嵌合突部52bに対向するようにした。
【0127】
前述したように、ノブ22に対する操作力が解除された際には、ノブ22は復帰機構40によりスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。そして、ノブ22の回転操作方向における原位置とされる中立位置「N」にノブ22が保持されているときにのみ、手動操作位置「B」に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向(矢印Y方向)へのスライド操作が共に許容される。したがって、手動操作位置「B」に対応する特定の車両機能の作動を確定させる矢印Y方向へのスライド操作を簡単に行うことができる。なお、本実施の形態においては、矢印Y方向へのスライド操作が許容される状態として、係止部材66が図10に示される右回転規制位置に保持されていることが併せて必要である。
【0128】
(7)軸部材31の外周面にはその周方向へ延びる長溝81を形成した。また、ノブ22の各回転操作位置への回転操作及び各回転操作位置における側方へのスライド操作を検出する検出手段として、長溝81の回転軌跡に対応して配設される第1〜第3のマイクロスイッチ82a,82b,82cを採用した。各第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは、ノブ22の回転操作位置に応じて、軸部材31に対する相対位置が、軸部材31の外周面に対応する位置と軸部材31の長溝81に対応する位置との間を変位する。第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cが軸部材31の外周面に対応する位置にある場合に、ノブ22がスライド操作されたときには、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは軸部材31の外周面に押圧されることによりオン状態となる。第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cが軸部材31の長溝81に対応する位置にある場合に、ノブ22がスライド操作されたときには、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは長溝81の内部に進入することにより軸部材31の外周面に押圧されることはなく、オフ状態に保持される。そして、電子制御装置91は、各第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、ノブ22が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断するようにした。このため、電子制御装置91は、ノブ22の操作位置を検出するに際して、複雑な信号処理を行う必要がない。したがって、電子制御装置91の演算負荷が抑制される。
【0129】
(8)ノブ22をそのスライド操作方向における原位置に復帰させるスライド復帰手段として、次のような構成を採用した。すなわち、スライド復帰手段は、スライド部材収容部43の内部において軸部材31に対して相対的に回転可能に挿通されるとともに当該軸部材31と一体的に側方(矢印X方向)への変位が許容された内側スライド部材46を備えてなる。また、当該スライド復帰手段は、内側スライド部材46とスライド部材収容部43の内面(正確には、外側スライド部材44の内周面)との間に配設されて前記内側スライド部材46を軸部材31のスライド方向と反対側へ常時付勢する付勢部材として圧縮コイルばね47を備えてなる。このため、圧縮コイルばね47の弾性力により、軸部材31,ひいてはノブ22をそのスライド操作方向における原位置へ容易に復帰させることができる。また、圧縮コイルばね47の弾性力は、内側スライド部材46を介して軸部材31に作用させるようにしたことにより、圧縮コイルばね47が回転する軸部材31に干渉する不具合が回避される。
【0130】
(9)ノブ22をその回転操作方向における原位置に復帰させる回転復帰手段として、軸部材31に装着された捻りコイルばね42を採用した。そして、捻りコイルばね42の両端部42a,42bは互いに交差するように形成するとともに、これら両端部42a,42b間には軸部材31の外周面に設けられた係止突部41b、及び内側スライド部材46に設けられたばね受け突部48を介在させるようにした。このため、軸部材31の回転に伴い係止突部41bが捻りコイルばね42の一方の端部に係合する。このとき、捻りコイルばね42の他方の端部は、ばね受け突部48に当接することにより捻りコイルばね42の回転が規制される。したがって、軸部材31の回転に伴い係止突部41bは捻りコイルばね42の一方の端部に係合した状態で当該軸部材31と同じ方向へ回転する。これにより、捻りコイルばね42には当該軸部材31の回転方向と反対方向への弾性力が蓄えられる。そして、ノブ22への回転操作力が解除された際には、捻りコイルばね42の弾性力により、軸部材31は回転操作方向における原位置に復帰する。このように、簡単な構成により、ノブ22をその回転操作方向における原位置へ復帰させることができる。
【0131】
(10)ハウジング21の意匠面21aにおけるノブ22の近傍には、ノブ22の回転操作方向を点灯表示する2つのインジケータ23a,24b、及びノブ22のスライド操作方向を点灯表示する2つのインジケータ24a,24bを設けた。これらインジケータ23a,24b、及びインジケータ24a,24bは、電子制御装置91による点灯制御を通じて、ノブ22の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみが点灯される。このため、ユーザは、ノブ22の操作可能方向を視覚的に認識することができる。そして、点灯していないインジケータにより示される方向へノブ22が無駄に操作されることを抑制することができる。
【0132】
(11)軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として、第1及び第2の当接壁54a,54bを設けた。そして、この回転角度範囲内において、ノブ22の回転操作位置が設定されてなる。このため、ノブ22の回転操作範囲を越える操作を簡単な構成により規制することができる。また、ノブ22の回しすぎが規制されることにより、ノブ22の操作性も確保される。
【0133】
(12)4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51b、ソレノイド機構72、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82c、及び電子制御装置91はすべてハウジング21の内部に配設することによりシフト装置11を単一のユニットとし、当該ユニットをインストルメントパネル10の収容部10aに装着するようにした。このように、シフト装置11がユニット化されることにより、その配設対象の外での組み立てが可能となる。そして、外部で予め組み立てられたユニットを配設対象の取付け部位(ここでは、インストルメントパネル10の収容部10a)に装着するだけで、シフト装置11の配設対象に対する取付けは完了となる。このため、シフト装置11の組み立て作業時において、シフト装置11の構成部品を配設対象に個々に組み付けていくようにした場合と異なり、シフト装置11の配設対象に対する取付け作業が簡単になる。なお、これは、シフト装置11の組み立て作業時において、シフト装置11の構成部品を配設対象であるインストルメントパネル10に個々に組み付けていくことを除外するものではない。このような組み立て方法を採用することも可能である。
【0134】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ノブ22の回転操作を規制する回転規制手段の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0135】
図14に示すように、ハウジング21の係止部材収容部65の内部において、軸部材31には円環板状の係止部材101が摺動回転可能に挿通されている。係止部材101の内周面における矢印X側の部位には、当該係止部材101の周方向へ延びる規制切欠102が形成されている。この規制切欠102の係止部材101の周方向における長さは、図7に示される前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと第1の嵌合突部52aとの係合関係に基づき決定される軸部材31の回転操作範囲に対応して設定されている。また、図14に示されるように、規制切欠102は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持されているとき、水平方向へ延びる中心軸Onが当該規制切欠102の延びる方向における中心を通るように形成されている。
【0136】
規制切欠102の内部には軸部材31の外周面に形成された規制突部103が位置している。規制突部103は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持されているとき、水平方向へ延びる中心軸On上に位置するように形成されている。このとき、ノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」、又は中立位置から前進位置「D」への回転操作に伴う軸部材31の回転は、規制突部103が規制切欠102の内部を変位することにより許容される。通常、係止部材101は、ノブ22の回転操作に伴う軸部材31の回転を許容する回転許容位置に保持される。
【0137】
また、係止部材101は、前記中心軸On上に保持された規制突部103が規制切欠102の上側の内側面102aに係合する左回転規制位置と、同じく規制突部103が規制切欠102の下側の内側面102bに係合する右回転規制位置との間を回転変位する。係止部材101が左回転規制位置に保持されている場合には、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から前進位置「D」への回転操作が規制される。係止部材101が右回転規制位置に保持されている場合には、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」への回転操作が規制される。なお、図14においては、係止部材101が右回転規制位置及び左回転規制位置にあるときの内側面102a,102bの位置を二点鎖線で示す。
【0138】
また、係止部材101の外周面において、規制切欠102の右回転側には係合切欠104が所定間隔をおいて形成されている。この係合切欠104は、規制切欠102の内側面102bが規制突部103に係合する右回転規制位置に係止部材101があるときに、係止部材収容部65の内底面に形成された係合突部105に対応するように配設されている。係合突部105は係合切欠104に係合可能とされるとともに、軸部材31の軸方向から見たときに、前記中心軸Op上に位置するように設けられている。
【0139】
また、係止部材101の外周面において、規制切欠102と反対側の部位には、多数の歯106が所定角度範囲にわたって形成されている。歯106は、その歯すじが係止部材101の回転中心軸(ノブ22の回転中心軸Oと一致)に対してつる巻き状に斜めになるように形成されている。これら歯106には、モータ107の出力軸107aの回転に伴い前記中心軸Opに平行な軸を中心として回転するウォーム108が噛合している。すなわち、係止部材101(正確には、歯106の形成部位)とウォーム108とによりウォーム機構が構成されている。したがって、モータ107の回転力は、ウォーム108を通じて係止部材101の回転力に変換される。モータ107が正回転したときには係止部材101は右回転し、モータ107が逆回転したときには係止部材101は左回転する。
【0140】
なお、前述した係止部材101、モータ107及びウォーム108は、図示しない支持機構を介して矢印X,Y方向へ一体的に変位可能とされている。
さて、車両の前進時において、電子制御装置91は、当該車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断した場合には、モータ107を逆回転させることにより、係止部材101を前述した右回転規制位置へ回転変位させる。規制切欠102の内側面102bが規制突部103に係合することにより、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」への回転操作が規制される。
【0141】
また、車両の後進時において、電子制御装置91は、当該車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断した場合には、モータ107を正回転させることにより、係止部材101を前述した左回転規制位置へ回転変位させる。規制切欠102の内側面102aが規制突部103に係合することにより、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から前進位置「D」への回転操作が規制される。
【0142】
したがって、本実施の形態によれば、モータ107の作動を通じて、軸部材31の回転が好適に規制される。このため、前記第1の実施の形態と同様に、ユーザの意図しない変速操作を抑制することができる。
【0143】
なお、本実施の形態は、次のように変更することも可能である。すなわち、歯106の歯すじは、ノブ22の回転中心軸Oと同じ方向へ延びるように形成されている。そして、図15に示すように、各歯106にはモータ107の駆動に伴いノブ22の回転中心軸Oに平行な軸を中心として回転する平歯車109が噛合している。したがって、モータ107の回転力は、平歯車109を通じて係止部材101の回転力に変換される。そして、モータ107が正回転したときには係止部材101は右回転して前記左回転規制位置に至る。また、モータ107が逆回転したときには係止部材101は左回転して前記右回転規制位置に至る。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0144】
また、本実施の形態において、係止部材101を回転させる回転アクチュエータとして、モータ107以外にも、例えば3つの回転位置を取るロータリソレノイドを採用することも可能である。
【0145】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図13に示されるシフト装置と同様の構成とされており、ノブ22のスライド操作方向への操作力が解除された際に、当該ノブ22をスライド操作方向における原位置へ復帰させる復帰手段の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態は、前記第2の実施の形態に適用することも可能である。
【0146】
図16(a)に示すように、軸部材31の内端面には、ばね収容穴111が形成されている。このばね収容穴111には、圧縮コイルばね112を介して円柱状の摺動部材113が抜け止め状態で収容されている。摺動部材113の先端部は球面状に形成されるとともに、軸部材31の内端面から突出している。摺動部材113は、圧縮コイルばね112の弾性力に抗して、ばね収容穴111の内方へ変位可能に設けられている。
【0147】
一方、ハウジング21の内面、正確には挿通穴32の内底面において、軸部材31の先端面に対向する部位には、矢印X,Yで示されるノブ22の2つのスライド操作方向へ延びる第1及び第2の案内溝114,115が形成されている。図16(b)に示されるように、これら第1及び第2の案内溝114,115はそれぞれの一端部において重なるように形成されている。そして、図16(c)に示されるように、矢印Xで示される方向へ延びる第1の案内溝114の内底面には、同じく矢印X方向へ向かうにつれてハウジング21の内方(軸部材31の先端面に近接する方向)へ傾斜する斜面114aが形成されている。同様に、矢印Yで示される方向へ延びる第2の案内溝115の内底面は、同じく矢印Y方向へ向かうにつれてハウジング21の内方(軸部材31の先端面に近接する方向)へ傾斜する斜面115aが形成されている。
【0148】
図16(c)に示されるように、ノブ22に対して矢印X,Y方向への操作力が付与されていない状態において、摺動部材113の球面状の先端部は、第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に係合する。このとき、摺動部材113の先端部は圧縮コイルばね112の弾性力により第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に押し付けられた状態に保持されている。この状態で、ノブ22に矢印X方向への操作力が付与されると、図16(c)に二点鎖線で示されるように、摺動部材113は圧縮コイルばね112の弾性力に抗してばね収容穴111に対する没入方向へ変位しながら、斜面114aを登るように摺動する。そして、ノブ22に対する矢印X方向への操作力が解除されたときには、摺動部材113は圧縮コイルばね112の弾性力によりばね収容穴111に対する突出方向へ付勢されつつ斜面114aを下るように摺動し、第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に至る。ノブ22に対して矢印Y方向への操作力が付与された場合も同様である。
【0149】
したがって、本実施の形態による場合であれ、ノブ22に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、当該スライド方向における原位置へ復帰させることができる。そしてこの場合には、第1の実施形態における復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45,47並びに外側スライド部材44及び内側スライド部材46は省略可能となる。軸部材31の回転復帰は前記第1の実施形態と同様に捻りコイルばね42により行うことから、ばね受け突部48に相当する構成をハウジング21の内部に設ける。
【0150】
なお、図16(d)に示されるように、斜面114a,115aは、摺動部材113の先端部が案内される方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に直交する仮想平面での断面形状が軸部材31の先端部に対する離間方向に凸となる曲面として形成することも可能である。この場合には、摺動部材113の先端部はより安定して案内される。
【0151】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図13に示されるシフト装置と同様の構成とされており、ノブの各回転操作位置を磁気センサにより検出するようにした点で前記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態では、軸部材31の長溝81は省略される。また、本実施の形態は、前記第2及び第3の実施の形態に適用することも可能である。
【0152】
図17(a)に示すように、軸部材31の先端面(ノブ22と反対側の端面)における外周寄りの部位には、磁石121が固定されている。一方、ハウジング21の内部、正確には挿通穴32の内底面には、軸部材31の先端面に対向するように基板122が配設されている。この基板122の軸部材31側の側面には3つのホールセンサ123r,123n,123dが設けられている。図17(b)に示されるように、これらホールセンサ123r,123n,123dは、軸部材31の回転に伴う磁石121の移動軌跡に対応するとともに、ノブ22が後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」に回転操作されたときに磁石121に対向するように配設されている。これらホールセンサ123r,123n,123dは、ホール素子及びその信号処理回路が単一のICチップとして集積回路化されたものであり、磁界強度に応じた検出信号を出力する。そして、ホールセンサ123r,123n,123dは、自身に対向する磁石121から生じる磁界を検出してノブ22の回転操作位置を示す検出信号として電子制御装置91へ出力する。
【0153】
図17(c)に示されるように、軸部材31の矢印X,Y側には、2つのマイクロスイッチ124a,124bが対向して配設されている。ノブ22が矢印X方向へスライド操作されたときには、当該矢印X側に配設されたマイクロスイッチ124aが軸部材31の外周面により押圧されることによりオン動作する。また、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、当該矢印Y側に配設されたマイクロスイッチ124bが軸部材31の外周面により押圧されることによりオン動作する。すなわち、ノブ22の矢印X方向及び矢印Y方向へのスライド操作は、2つのマイクロスイッチ124a,124bにより検出される。
【0154】
電子制御装置91は、各ホールセンサ123r,123n,123dからの検出信号及び両マイクロスイッチ124a,124bからの検出信号に基づき、ノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを自動変速機93へ出力する。したがって、本実施の形態によれば、ノブ22の回転操作位置を各ホールセンサ123r,123n,123dにより非接触で検出するようにしたことにより、繰り返しの検出による劣化等がなく、ノブ22の回転操作位置の検出信頼性が高められる。なお、ホールセンサ123r,123n,123dは、それぞれMRセンサに置換することも可能である。MRセンサは、磁気抵抗効果素子及びその信号処理回路が単一のICチップとして集積回路化されたものであり、磁界方向に応じた検出信号を出力する。
【0155】
また、ノブ22の回転操作位置は、次のようにして求めることも可能である。すなわち、軸部材31の先端面には、例えば図示しない円板状の磁石を設けるとともに、当該磁石に対向するように図示しない単一のMRセンサを配設する。このMRセンサは軸部材31の回転に伴う磁石から発せられる磁束方向の変化に応じた検出信号を出力する。このため、電子制御装置91はMRセンサからの検出信号に基づきノブ22の回転角度、すなわち回転操作位置を検出することができる。ノブ22のスライド操作については、前述と同様に、マイクロスイッチ124a,124bにより検出する。
【0156】
さらに、本実施の形態において、ノブ22のスライド操作を前述したホールセンサ及びMRセンサ等の磁気センサを使用して検出することも可能である。この場合には、図17(c)に示されるマイクロスイッチ124a,124bを磁気センサに置き換える。すなわち、図17(d)に示されるように、軸部材31の矢印X,Y側には2つの磁気センサ125a,125bが対向して配設されている。また、軸部材31の外周面において、磁気センサ125a,125bに対応する部位には、周方向において多極着磁された環状の磁石126が外嵌されている。磁気センサ125a,125bはノブ22の矢印X,Y方向へのスライド操作に伴い磁石126が近接したときに、オン信号を出力する。電子制御装置91は磁気センサ125a,125bからのオン信号に基づきノブ22がスライド操作された旨検出し、このスライド操作されたときのノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。このように、ノブ22のスライド操作をも磁気センサ125a,125bにより非接触で検出するようにしたことにより、スライド操作の繰り返しの検出による劣化等がなく、ノブ22のスライド操作の検出信頼性が高められる。なお、本実施の形態では、環状の磁石126を使用したが、ノブ22が各回転操作位置に回転操作された際に磁気センサ125a,125bに対向すればよく、その形状は適宜変更してもよい。
【0157】
加えて、本実施の形態は、次のような構成を採用することも可能である。すなわち、図17(e)に示すように、基板122の軸部材31側の側面に設けられる3つのホールセンサ123r,123n,123dは、ノブ22(軸部材31)が後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」に回転操作された状態で、矢印X方向又は矢印Y方向へスライド操作されたときに磁石121に対向するように配設されている。そして、ホールセンサ123r,123n,123dは自身に対向する磁石121から生じる磁界を検出し、この磁界検出信号をノブ22がどの回転操作位置に保持された状態でスライド操作がなされたのかを示す検出信号として電子制御装置91へ出力する。電子制御装置91は、各ホールセンサ123r,123n,123dからの検出信号に基づき、ノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを自動変速機93へ出力する。
【0158】
この構成によれば、ノブ22がどの回転操作位置でスライド操作されたのかを3つのホールセンサ123r,123n,123dのみで非接触で検出することができる。したがって、図17(a),(b),(d)に示されるように、ノブ22の回転操作位置の検出用及びスライド操作の検出用の2つの目的毎に磁気センサを設けるようにした場合と異なり、必要とされる磁気センサの個数を低減させることができる。
【0159】
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・各実施の形態では、ノブ22の回転操作位置として手動操作位置「B」を設定するようにしたが、これを省略することも可能である。また、手動操作位置「B」に割り当てられた車両機能をパドルスイッチ及びステアリングスイッチ等の他のスイッチにより操作するようにしてもよい。
【0160】
・また、手動操作位置「B」に、自動変速機93の変速位置を手動で切り替えるいわゆるシーケンシャルシフト機能を割り当てるようにしてもよい。この場合、ノブ22は、矢印Y方向へのスライド操作に加え、反矢印Y方向へのスライド操作も許容されるように構成する。そして、例えばノブ22が前進位置「D」に切り替えられている状態で、ノブ22が矢印Y方向(下方)へスライド操作されたときにはシフトダウン、またノブ22が反矢印Y方向(上方)へスライド操作されたときにはシフトアップするように構成する。
【0161】
・さらに、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作がなされた後に、もう一度矢印Y方向へのスライド操作がなされたときには、当該手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動が解除されるように構成してもよい。例えば本実施の形態では、前記車両機能として回生ブレーキがかかった状態で、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、自動変速機93は前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えられる。このようにすれば、手動操作位置「B」に対応する車両機能を作動させた状態から、例えば前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを行う作業が簡単になる。
【0162】
すなわち、本実施の形態において、シフト装置11は、いわゆるモーメンタリ型(自動復帰型)のノブ22を備える構成とされている。このため、ノブ22への操作力が解除された際には、ノブ22は、スライド操作方向及び回転操作方向における原位置へ自動復帰する。したがって、回生ブレーキの作動を解除して自動変速機93の変速位置を前進位置「D」に対応する位置に切り替える際には、ノブ22を回転操作して、さらに矢印X方向へスライド操作する必要がある。前述した変形例によれば、矢印Y方向へのスライド操作を行うだけでよい。
【0163】
・各実施の形態において、ノブ22に押しボタンを組み込み、当該押しボタンに特定の車載機器の作動機能を持たせるようにしてもよい。例えば、押圧操作により車両の駆動源を始動させる始動スイッチをノブ22に組み込むことも可能である。また、自動変速機93の変速位置を駐車位置に切り替えるパーキングスイッチをノブ22に組み込むようにしてもよい。このようにすれば、各種スイッチの統合化が図られ、各種スイッチの設置スペースが節約される。
【0164】
・各実施の形態では、ノブ22のスライド操作方向への操作力が解除された際に、当該ノブ22を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させる復帰機構40を1組だけ設けるようにしたが、複数組の復帰機構40を設けるようにしてもよい。この場合、複数組の復帰機構40は、軸部材31の延びる方向において所定間隔をおいて配設する。このようにすれば、軸部材31が複数箇所においてスライド操作方向と反対側へ付勢されることから、軸部材31をそのスライド操作方向における原位置へ安定して復帰させることができる。また、軸部材31を挿通穴32の内部においてより安定して支持することもできる。
【0165】
・各実施の形態では、軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として、第1及び第2の当接壁54a,54bを設けるようにしたが、これらを省略することも可能である。
【0166】
・各実施の形態においては、ノブ22の回転操作方向を示すインジケータ23a,23b及び同じくスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bを設けたが、これらを省略してもよい。
【0167】
・各実施の形態においては、ノブ22の回転操作方向を示すインジケータ23a,23b及び同じくスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bについて、ノブ22の回転操作位置等に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯するようにしたが、このような表示制御を行わないようにすることも可能である。
【0168】
・各実施の形態では、ノブ22は互いに直交する2つの方向へスライド操作可能としたが、必ずしも直交される必要はない。2つのスライド操作方向がノブ22の回転中心軸に直交し、且つ2つのスライド操作方向が互いに異なる方向であればスライド操作方向を適宜変更して設けることも可能である。
【0169】
・各実施の形態において、復帰機構40、4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51b、係止部材66、並びに第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cの軸部材31の軸方向における配設位置は適宜変更することも可能である。この際、第1及び第2の嵌合突部52a,52b、ソレノイド機構72、並びに長溝81の配設位置も対応して変更する。
【0170】
・各実施の形態では、単一の軸部材31にすべての構成を設けたが、軸部材31をその軸方向において複数の分割体に分割し、これら分割体を組み合わせることにより一の軸部材31を構成することも可能である。例えば図18(a),(b)に示されるように、軸部材31を4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位を境として、ノブ22が連結される第1の分割体131、及び各嵌合凹部51r,51n,51d,51b等が形成される第2の分割体132に分割し、これら第1及び第2の分割体131,132を連結することにより単一の軸部材31とする。第1の分割体131の先端部には、円柱状の小径部133aと、当該小径部133aの外周面に形成された複数の突条133bとからなる嵌合部133が設けられている。突条133bは小径部133aの外周面において、その周方向に所定の間隔をおいて、且つ軸方向へ延びるように形成されている。また、第2の分割体132において、第1の分割体131に対する連結側の側面には、嵌合部133の外形形状に対応する嵌合凹部134が形成されている。そして、嵌合部133を嵌合凹部134に嵌合することにより、第1及び第2の分割体131,132は連結される。ノブ22の回転操作力は、第1の分割体131の突条133bを介して第2の分割体132に伝達される。このため、第1及び第2の分割体131,132は一体的に回転する。なお、嵌合部133を第2の分割体132側に、嵌合凹部134を第1の分割体131側に形成してもよい。また、軸部材31は、3つ、4つ又はそれ以上に分割することも可能である。
【0171】
・各実施の形態では、四角枠状の係止部材66に軸部材31を挿通し、これらの係合関係に基づき軸部材31の回転を規制するようにしたが、次のようにしてもよい。例えば図19に示すように、係止部材66を、第1の係止片67及び切欠69を有してなる第1の係止部材66a、並びに第2の係止片68を有してなる第2の係止部材66bに分割する。そして、第1の係止部材66aの矢印X側の側面には第1のソレノイド機構73aのプランジャを、また第2の係止部材66bの矢印Xと反対側の側面には第2のソレノイド機構73bのプランジャを連結する。そして、軸部材31の左回転を規制する際には、第1のソレノイド機構73aの作動を通じて、第1の係止部材66aの第1の係止片67を軸部材31の第1の係合凹部61に外方から係合させる。また、軸部材31の右回転を規制する際には、第2のソレノイド機構73bの作動を通じて、第2の係止部材66bの第2の係止片68を軸部材31の第2の係合凹部62に外方から係合させる。このように、係止部材を軸部材31の外方から係合させるようにした場合であれ、軸部材31の回転を規制することができる。なお、第1及び第2のソレノイド機構73a,73bのプランジャは、突出位置及び引込位置の2位置をとる。
【0172】
・各実施の形態では、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作を規制する回転規制手段として係止部材66を設けたが、これを省略して構成することも可能である。このようにした場合であれ、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作(シフト装置11の誤操作)を好適に抑制することができる。なお、この場合には、ソレノイド機構72、並びに第1及び第2の係合凹部61,62、並びに2つの凹部63a,63bは省略可能となる。
【0173】
・各実施の形態では、エンジン及びモータを走行用の駆動源とするハイブリッド車両にシフト装置11を適用したが、エンジンのみを走行用の駆動源とする車両又はモータのみを走行用の駆動源とする電気自動車等に適用することも可能である。
【0174】
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)請求項3に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記軸部材に対してその回転中心軸に交わる直線方向において相対的に変位可能に設け、前記駆動手段として、前記制御手段からの作動制御信号に基づき励磁されるソレノイドと、前記係止部材に連結されて前記ソレノイドの励磁状態に基づき当該係止部材の変位方向において進退移動するプランジャとを備えてなる直動アクチュエータを採用したシフト装置。
【0175】
この構成によれば、ソレノイドへの通電制御を行うだけでよいので、シフト操作部材の回転を規制するに際して複雑な演算を行う必要がない。したがって、制御手段の演算負荷が抑制される。
【0176】
(ロ)請求項3に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記軸部材に対してその回転中心軸を中心として相対的に回転可能に設け、前記駆動手段として、前記制御手段からの作動制御信号に基づき回転する出力軸と、当該出力軸の回転力を前記係止部材の回転力に変換して伝達する伝達機構とを備えてなる回転アクチュエータを採用したシフト装置。
【0177】
この構成によれば、回転アクチュエータの作動を通じて、シフト操作部材の回転を好適に規制することができる。
(ハ)請求項2、請求項3、前記(イ)項及び前記(ロ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記係止部材には前記シフト操作部材が挿通されるとともに、当該係止部材が前記回転規制位置にあるときには当該係止部材の内周面の一部が前記シフト操作部材の一部に係合することにより軸部材の回転が規制されるシフト装置。
【0178】
この構成によれば、係止部材はシフト操作部材が挿通されてなることから、係止部材をシフト操作部材の外方から係合させるようにした場合と異なり、当該シフト操作部材の径方向における大型化が抑制される。
【0179】
(ニ)請求項1〜請求項8及び前記(イ)〜(ハ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の内端面には磁石を設け、前記検出手段は、前記ハウジングの内部において前記磁石の移動軌跡に、且つシフト操作部材の各回転操作位置に対応して配設されるとともに、前記シフト操作部材の回転に伴う前記磁石から発せられる磁界の変化に応じた検出信号を出力する複数の磁気センサを含むシフト装置。
【0180】
この構成によれば、少なくともシフト操作部材の回転操作位置が磁気センサを通じて非接触状態で検出される。このため、繰り返しの検出による劣化等がなく、シフト操作部材の少なくとも回転操作位置の検出信頼性が高められる。
【0181】
(ホ)請求項1〜請求項10及び前記(イ)〜(ニ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記ハウジングにおける前記軸部材の先端面に対向する部位には、前記シフト操作部材のスライド操作方向へ延びるとともに、当該スライド操作方向へ向かうにつれて前記軸部材の先端面に近接する方向へ傾斜する斜面を有してなる案内溝を形成し、前記スライド復帰手段は、前記軸部材の先端面に対して突出する方向及び没入する方向へ変位可能に設けられるとともに前記シフト操作部材のスライド操作に伴い前記案内溝に係合した状態で案内される被案内部材と、当該被案内部材を前記軸部材の先端面から突出する方向へ常時付勢するばね部材と、を備えてなるシフト装置。
【0182】
この構成によれば、シフト操作部材にスライド操作方向への操作力が付与されると、被案内部材はばね部材の弾性力に抗してシフト操作部材の先端面に対する没入方向へ変位しながら、斜面を登るように摺動する。そして、シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、被案内部材は、ばね部材の弾性力によりシフト操作部材の先端面に対する突出方向へ付勢されつつ斜面を下るように摺動して、原位置に至る。すなわち、シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、当該スライド方向における原位置へ復帰させることができる。
【0183】
(ヘ)請求項1〜請求項10及び前記(イ)〜(ホ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド復帰手段は、前記ハウジングの内部において前記軸部材に対して相対的に回転可能に挿通されるとともに前記軸部材と一体的に側方への変位が許容されたスライド部材と、前記スライド部材の外側面と前記ハウジングの内側面との間に配設されて前記スライド部材を前記軸部材のスライド方向と反対側へ常時付勢する付勢部材とを備えてなるシフト装置。
【0184】
この構成によれば、付勢部材の付勢力により、シフト操作部材をそのスライド操作方向における原位置へ容易に復帰させることができる。また、付勢部材の付勢力は、スライド部材を介してシフト操作部材に作用させるようにしたことにより、付勢部材が回転するシフト操作部材に干渉する不具合が回避される。
【0185】
(ト)前記(ヘ)項に記載のシフト装置において、前記回転復帰手段は、前記軸部材に装着された捻りコイルばねであって、当該捻りコイルばねの両端部は互いに交差するように形成するとともに、これら両端部間には前記軸部材の外周面に設けられる係止突部及び前記スライド部材に設けられるばね受け突部を介在させるようにしたシフト装置。
【0186】
この構成によれば、シフト操作部材の回転に伴い係止突部が捻りコイルばねの一端部に係合する。このとき、捻りコイルばねの他端部は、ばね受け突部に当接することにより捻りコイルばねの回転が規制される。したがって、シフト操作部材の回転に伴い係止突部は捻りコイルばねの一端に係合した状態で当該シフト操作部材と同じ方向へ回転する。これにより、捻りコイルばねには当該シフト操作部材の回転操作方向と反対方向への付勢力が蓄えられる。当該シフト操作部材への回転操作力が解除された際には、捻りコイルばねの弾性力により、シフト操作部材は回転操作方向における原位置に復帰する。このように、簡単な構成により、シフト操作部材をその回転操作方向における原位置へ復帰させることができる。
【0187】
(チ)請求項1〜請求項8及び前記(イ)〜(ヘ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド規制手段及び前記検出手段及び前記制御手段を含むシフト装置の構成要素のすべてを前記ハウジングに組み付けることにより単一のユニットとして構成し、当該ユニットを前記取り付け対象に設けられる取り付け部位に装着するようにしたシフト装置。
【0188】
この構成によれば、シフト装置がユニット化されることにより、その配設対象の外での組み立てが可能となる。そして、外部で予め組み立てられたユニットを配設対象の取付け部位に装着するだけで、シフト装置の配設対象に対する取付けは完了となる。このため、シフト装置の組み立て作業時において、シフト装置の構成部品を配設対象に個々に組み付けていくようにした場合に比べて、シフト装置の配設対象に対する取付け作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】第1の実施の形態において、シフト装置の配設態様を示す車室内の概略斜視図。
【図2】同じくシフト装置の取り付けの態様を示す斜視図。
【図3】同じくノブの操作位置を示す正面図。
【図4】(a)は、同じくノブ及び軸部材のハウジングに対する取り付けの態様を示す分解斜視図、(b)は、軸部材とハウジングの挿通穴との隙間を示す図5(a)の1−1線断面図。
【図5】同じくシフト装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図6】(a)は、同じく図5の2−2線断面図、(b)は、図6(a)の8−8線断面図。
【図7】同じく図5の3−3線断面図。
【図8】同じく係止部材の回転許容位置を示す図5の4−4線断面図。
【図9】同じく係止部材の左回転規制位置を示す図5の4−4線断面図。
【図10】同じく係止部材の右回転規制位置を示す図5の4−4線断面図。
【図11】(a),(b),(c)は、同じく図5の5−5線断面図。
【図12】同じくシフト装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図13】(a)は、同じく自動変速機が中立状態にある場合の各種インジケータの点灯状態を示す正面図、(b),(c)は、同じく車両の後進時における各種インジケータの点灯状態を示す正面図、(d),(e)は、同じく車両の前進時における各種インジケータの点灯状態を示す正面図。
【図14】第2の実施の形態における係止部材を示す図5の4−4線断面図。
【図15】第2の実施の形態の変形例を示す図5の4−4線断面図。
【図16】(a)は、第3の実施の形態における軸部材の先端部の構成を示す分解斜視図、(b)は、軸部材の先端部に設けられた摺動部材が摺動可能に係合する第1及び第2の案内溝が形成された基板の正面図、(c)は、軸部材の先端部の摺動部材と第1及び第2の案内溝との係合状態を示す図16(b)の6−6線断面図、(d)は、図16(b)の7−7線断面図。
【図17】(a)は、第4の実施の形態における軸部材の先端部の構成を示す斜視図、(b)は、同じく軸部材の磁石の回転軌跡に対応して設けられる磁気センサの配設態様を示す基板の正面図、(c)は、同じくノブのスライド操作を検出するマイクロスイッチの配設態様を示す断面図、(d)は、第4の実施の形態の変形例における磁石及び磁気センサの配設態様を示す断面図、(e)は、同じく磁気センサの他の配設態様を示す基板の正面図。
【図18】(a)は、他の実施の形態における軸部材を分割した状態を示す要部斜視図、(b)は分割体の連結部における横断面図。
【図19】他の実施の形態における係止部材を示す図5の4−4線断面図。
【符号の説明】
【0190】
10…インストルメントパネル(取り付け対象)、11…シフト装置、21…ハウジング、22…シフト操作部材を構成するノブ、23a,23b,24a,24b…インジケータ、31…シフト操作部材を構成する軸部材、41b…係止突部、48…ばね受け突部、42…回転復帰手段を構成する捻りコイルばね、42a,42b…捻りコイルばねの端部、44…外側スライド部材、45,47…スライド復帰手段を構成する圧縮コイルばね(付勢部材)、46…スライド復帰手段を構成する内側スライド部材(スライド部材)、51r,51n,51d,51b…嵌合凹部(スライド規制手段)、52a,52b…第1及び第2の嵌合突部(嵌合部材)、54a,54b…ストッパ手段を構成する第1及び第2の当接壁、66…回転規制手段を構成する係止部材、72…ソレノイド機構(直動アクチュエータ)、73…ソレノイド(駆動手段)、81…長溝(溝)、82a,82b,82c…検出手段を構成する第1〜第3のマイクロスイッチ、91…電子制御装置(制御手段)、92…車速センサ(状態検出手段)、93…自動変速機、107…モータ(回転アクチュエータ)、107a…出力軸、108…伝達機構を構成するウォーム、112…スライド復帰手段を構成する圧縮コイルばね、113…スライド復帰手段を構成する摺動部材(被案内部材)、114,115…第1及び第2の案内溝、114a,115a…斜面、121,126…磁石、124a,124b…検出手段を構成するマイクロスイッチ、123r,123n,123d…検出手段及び磁気センサを構成するホールセンサ、125a,125b…検出手段を構成する磁気センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速位置を切り替えるシフト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動変速機とシフト装置とを機械的に分離した、いわゆるバイワイヤ方式のシフト装置が普及しつつある。当該シフト装置にあっては、自動変速機の変速位置(接続状態)を切り換える際にユーザにより操作されるシフト操作手段としてのシフトレバーの操作位置を電気信号として検出して当該検出信号に基づき自動変速機の変速位置を電子的に切り換えることから、リンク機構等の機械的な構成が不要となる。このため、シフト装置の配設位置の制限が緩和されるとともに小型化が容易となるといった利点がある。
【0003】
近年では、車室内スペースの確保又はシフト装置の設置スペースの節約等の観点から、シフト装置のいっそうの小型化が要求されている。こうした要望を受けて、例えば特許文献1に示されるように、前述したシフトレバーに代えて、設置対象に対して回転操作可能に設けられるロータリ式のシフトノブを前記シフト操作手段として採用することが検討されている。当該ノブは、単一の軸を中心として回転操作されるのみであることから、前述のシフトレバーを採用する場合に比べて、シフト装置の設置スペースを節約することができる。すなわち、シフトレバーを採用する場合には、当該レバーを所定の操作方向へ案内するシフトゲートを設ける必要があるのに対して、ロータリ式のシフトノブを採用する場合にはそのような案内手段は不要となる。
【特許文献1】特開2002−254946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記文献1のシフト装置には、シフトノブの誤操作を防止する誤操作防止装置としてシフトノブの回転操作を規制するロック装置が設けられている。このロック装置は、ソレノイドのプランジャの進退動作に連動して、シフトノブに設けられた被係合部位に係合する係合位置と当該被係合部位に対する係合が解除される解除位置との間を変位する係合部材を備えてなる。係合部材が前記係合位置に保持されている状態にあっては、係合部材が被係合部位に係合することによりシフトノブの回転操作が規制される。また、係合部材が前記解除位置に保持されている状態にあっては、係合部材の被係合部位に対する係合が解除されることによりシフトノブの回転操作が許容される。
【0005】
前記シフトノブが例えばパーキング位置に保持された状態においては、係合部材が係合位置に保持されることにより、シフトノブはその回転操作が規制された状態に保たれている。そして、車両を走行させる際には、次のようにしてシフトノブの回転操作の規制が解除される。すなわち、エンジンが始動された状態で、ブレーキペダルの踏み込み操作が検出されたことをもってソレノイドが駆動し、係合部材は係合位置から解除位置へ変位する。この後、シフトノブの回転操作を通じて、当該ノブの操作位置が切り換えられることにより、自動変速機の変速位置が当該ノブの操作位置に対応する位置に切り換えられる。
【0006】
ところが、当該文献1のシフト装置においては、次のような問題が懸念されていた。すなわち、当該文献1のシフト装置にあっては、シフトノブを単に操作しただけでは当該ノブの回転操作の規制が解除されることはないものの、例えば不用意にブレーキペダルの踏み込み操作がなされて、意図せずシフトノブが回転操作されることが想定される。また、ソレノイドの不具合等、何らかの原因によりシフトノブの回転の規制ができなくなった場合にも意図しないシフトノブの回転操作がなされるおそれがある。このように、前記文献1のシフト装置においては、依然としてシフトノブの誤操作のおそれがあった。そしてこの点において、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、意図しない変速操作をより確実に抑制することができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車両の自動変速機の変速位置を切り替え操作するバイワイヤ方式のシフト装置において、車両側の取り付け対象に固定されるハウジングの外部に一部が露出するとともに当該ハウジングに対して回転操作可能かつ自身の回転中心軸に対し交わる方向である側方へスライド操作可能に設けられた軸状のシフト操作部材と、前記シフト操作部材と前記ハウジングとの間に設けられて当該シフト操作部材が前記自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該シフト操作部材の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段と、前記シフト操作部材が特定の回転操作位置へ回転操作された状態で側方へスライド操作されたことを検出しその検出信号を出力する検出手段と、前記シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段と、前記シフト操作部材に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段と、前記検出手段からの検出信号に基づき当該特定の回転操作位置に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号を生成して前記自動変速機へ出力する制御手段と、を備えてなることをその要旨とする。
【0009】
本発明によれば、自動変速機の変速位置を切り替える際には、シフト操作部材の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作を好適に抑制することができる。また、シフト操作部材に対する操作力が解除された際には、スライド復帰手段及び回転復帰手段により、当該シフト操作部材はスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシフト装置において、前記制御手段からの作動制御信号に基づく駆動手段の作動を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の回転操作を規制する回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の回転操作を許容する回転許容位置との間を変位する係止部材を備えてなる回転規制手段をさらに備え、前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態を車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出したとき、前記係止部材を回転許容位置から回転規制位置へ変位させるべく前記作動制御信号を前記回転規制手段へ出力することをその要旨とする。
【0011】
本発明によれば、シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態が車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出されたときには、係止部材は駆動手段の作動によりシフト操作部材の一部に係合する回転規制位置へ変位する。シフト操作部材の回転操作が機械的に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記作動制御信号に基づく駆動手段の動作を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の正方向への回転操作を規制する第1の回転規制位置と、前記シフト操作部材の他の一部に係合して当該シフト操作部材の逆方向への回転操作を規制する第2の回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の正逆方向への回転操作を許容する回転許容位置との間を変位することをその要旨とする。
【0013】
本発明によれば、シフト操作部材の正逆回転が好適に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をいっそう確実に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の回転操作位置として、前記自動変速機の3つの変速位置に対応する前進位置及び中立位置及び後進位置、並びに車両の前進中に作動される特定の車両機能に対応する手動操作位置を設定するとともに、当該中立位置を前記シフト操作部材の回転操作方向における原位置とし、前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置が前記中立位置に保持されているときにのみ、前記手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる操作として当該シフト操作部材の前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作方向とは異なる他の方向へのスライド操作を許容し、前記制御手段は、前記シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた旨示す前記検出手段からの検出信号が入力された後に、前記他の側方へスライド操作された旨示す前記検出手段からの検出信号に基づき、前記手動操作位置に対応する車両機能を作動させることをその要旨とする。
【0014】
前述したように、シフト操作部材に対する操作力が解除された際には、スライド復帰手段及び回転復帰手段により、当該シフト操作部材はスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。そして、本発明によれば、シフト操作部材の回転操作方向における原位置とされる中立位置に当該シフト操作部材が保持されているときにのみ、手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向へのスライド操作が共に許容される。したがって、手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向へのスライド操作を簡単に行うことができる。なお、実際には、シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた後に、前記他の側方へスライド操作されることにより、前記手動操作位置に対応する車両機能が作動する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の外周面にその周方向に所定間隔をおいて形成されるとともに前記ハウジングの内部に突出して設けられる嵌合部材に嵌合可能とされた、前記シフト操作部材の回転操作位置と同数の嵌合凹部を含み、各嵌合凹部は、前記シフト操作部材が各回転操作位置にあるときにのみ前記嵌合部材に対して嵌合可能に対応するように設けたことをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、シフト操作部材にはその各回転操作位置に対応する嵌合凹部を、またハウジング側にはシフト操作部材の嵌合凹部に嵌合する嵌合突部を設けるといった簡単な構成により、シフト操作部材のスライド操作を好適に規制することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材にはその周方向へ延びる溝を形成し、また、前記検出手段は前記シフト操作部材の溝の回転軌跡に対応して配設される複数個のマイクロスイッチを備えるとともに、各マイクロスイッチは、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じて、前記シフト操作部材の外周面に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されてオンする状態、及び前記シフト操作部材の溝に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されることなくオフに保たれる状態の2つの状態をとるように配設し、前記制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断することをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材の各回転操作位置のうちいずれが確定されたのかを判断すればよいので、シフト操作部材の操作位置を検出するに際して、複雑な信号処理を行う必要がない。したがって、制御手段の演算負荷が抑制される。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の近傍に配設されて前記シフト操作部材の回転操作方向及びスライド操作方向を示すとともに前記制御手段により点灯制御される複数のインジケータを備え、前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯制御することをその要旨とする。
【0020】
本発明によれば、ユーザは、シフト操作部材の操作可能方向を視覚的に認識することができる。そして、点灯していないインジケータにより示される方向へシフト操作部材が無駄に操作されることが抑制される。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の外周面には、前記ハウジングの一部に係合することにより前記シフト操作部材の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段を設け、当該シフト操作部材の各回転操作位置は、前記回転角度範囲内において設定されてなることをその要旨とする。
【0022】
本発明によれば、シフト操作部材の回転操作範囲を越える操作を簡単な構成により規制することができる。また、シフト操作部材の回しすぎが規制されることにより、当該シフト操作部材の操作性も確保される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係るバイワイヤ方式のシフト装置を、エンジン及びモータを走行用の駆動源とするハイブリッド車両に適用した第1の実施の形態を図1〜図13(a)〜(e)に基づいて説明する。まず、シフト装置の操作概要を説明する。
【0025】
<シフト装置の操作概要>
図1に示すように、車室内の例えばインストルメントパネル10において、運転席の左前方に位置する部位には、ユーザの操作を通じて自動変速機の変速位置(ギヤ段)を切り替えるシフト装置11が設けられている。図2に示すように、シフト装置11は、取付け対象であるインストルメントパネル10に開口して形成された取り付け部位としての収容部10aに装着される直方体状のハウジング21、及び当該ハウジング21の収容部10aから露出する1つの側面である意匠面21aに設けられた円柱状のノブ22を備えてなる。
【0026】
図3に示されるように、ノブ22は、意匠面21aに対して回転中心軸Oを中心として回転可能に、且つ当該回転中心軸Oに交わる2つの方向へスライド可能に設けられている。本実施の形態では、ノブ22は、図3に矢印X,Yで示されるように、互いに直交する2つの方向へ変位可能とされている。
【0027】
ノブ22には、自動変速機の変速位置に対応する複数の回転操作位置として、後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」が、また車両の特定の機能(ここでは、モータによる回生ブレーキ)に対応する回転操作位置として手動操作位置「B」が設定されている。そして、ノブ22の表面には、当該ノブ22の回転操作位置として設定される後進位置「R」、中立位置「N」、前進位置「D」、及び手動操作位置「B」を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bが設けられている。これらインジケータ22r,22n,22d,22bは、アルファベッド「R」、「N」,「D」,「B」の形状に形成されている。
【0028】
中立位置「N」を示すインジケータ22nは、ノブ22をその回転中心軸O側から見たとき、同回転中心軸Oに直交し且つノブ22の水平方向に延びる中心軸On上に設けられている。同じく後進位置「R」を示すインジケータ22rは、前記中心軸Onに対してノブ22の左回転方向において所定角度θ1をなす中心軸Or上に設けられている。同じく前進位置「D」を示すインジケータ22dは、前記中心軸Onに対してノブ22の右回転方向において所定角度θ2をなす中心軸Od上に設けられている。同じく手動操作位置「B」を示すインジケータ22bは、前記中心軸Odに対してノブ22の右回転方向において所定角度θ3をなし、且つ前記中心軸Onに直交して垂直方向へ延びる中心軸Op上に設けられている。
【0029】
ハウジング21の意匠面21aにおいて、ノブ22の近傍には、当該ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23b、及び当該ノブ22のスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bが設けられている。インジケータ23aはノブ22の右回転方向を示す矢印形状に、インジケータ23bはノブ22の左回転方向を示す矢印形状に形成されている。また、インジケータ24aはノブ22のスライド操作方向として矢印X方向(図3の右方)を示す矢印形状に、インジケータ24bはノブ22のスライド操作方向として矢印Y方向(図3の下方)を示す矢印形状に形成されている。各インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bは、ノブ22がこれらの示す方向への操作が可能な状態であるときに点灯する。
【0030】
ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23bは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、水平方向へ延びる中心軸Onを間に挟んで互いに対向するように配設されている。また、ノブ22の右方へのスライド操作方向を示すインジケータ24aは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、水平方向へ延びる中心軸Or上に位置するように配設されている。さらに、ノブ22の下方へのスライド操作方向を示すインジケータ24bは、シフト装置11をノブ22側から見たときに、垂直方向へ延びる中心軸Op上に位置するように配設されている。
【0031】
ユーザは自動変速機の変速位置を切り替える際には、ノブ22を所望の変速位置(ギヤ段)に対応する特定の回転操作位置へ回転操作し、当該回転操作位置を保持した状態で当該ノブ22を図3に矢印Xで示される側方へスライド操作する。これにより、自動変速機において所望の変速位置への切り替えが実行される。本実施の形態では、ノブ22は、車両を前進させる際には前進位置「D」に、車両の駆動源の動力伝達を遮断する際には中立位置「N」に、車両を後進させる際には後進位置「R」に切り替えられる。すなわち、各回転操作位置を示す各インジケータ22r,22n,22dが、水平方向へ延びる中心軸On上に位置するようにノブ22を回転させ、その位置において当該ノブ22を矢印X方向へスライドさせる。
【0032】
ここで、前述したように、中立位置「N」を示すインジケータ22nが水平方向へ延びる中心軸On上にあって矢印X方向を示すインジケータ24aに対応する位置にあるときには、手動操作位置「B」を示すインジケータ22bは垂直方向へ延びる中心軸Op上にあって矢印Y方向を示すインジケータ24bに対応する位置にある。そして、この位置においてのみノブ22は矢印Y方向へスライド操作可能とされている。ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されると、手動操作位置「B」に対応する車両の機能が作動する。本実施の形態では、車両の走行用の駆動源を構成するモータによる回生ブレーキがかかる。
【0033】
<シフト装置の詳細構成>
次に、前述のようなノブ22の操作が許容されるシフト装置の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4(a)に示すように、ノブ22のハウジング21側の側面には、ノブ22の回転中心軸Oに沿う方向へ延びる円柱状の軸部材31が同軸状に設けられている。軸部材31の外径はノブ22の外径よりも小さく設定されている。この軸部材31はノブ22とともに本発明のシフト操作部材を構成する。
【0035】
図4(b)に示すように、ハウジング21において、ノブ22の取り付け部位である意匠面21aには、軸部材31を挿通可能とした横断面円形状の挿通穴32が開口して形成されている。挿通穴32の内径は軸部材31の外径よりも大きく且つノブ22の外径よりも小さく設定されている。当該挿通穴32には軸部材31が外方から挿通されている。そして、軸部材31は、ハウジング21に対して、回転可能、且つ軸部材31の外周面と挿通穴32の内周面との隙間の分だけ当該軸部材31の径方向へスライド可能に保持されている。さらに軸部材31は、ノブ22の回転操作方向への操作力及びスライド操作方向への操作力が解除された際には、後述する復帰機構40を通じて、ノブ22が図3に実線で示される回転操作方向及びスライド操作方向における原位置へ自動的に復帰するように保持されている。
【0036】
<復帰機構>
次に、復帰機構40について説明する。図5に示すように、軸部材31の先端側における外周面には、矢印X方向へ突出する係合部材41が設けられている。係合部材41は、軸部材31の外周面に矢印X方向へ突出するように設けられた平板状の腕部材41a及び当該腕部材41aのノブ22側の側面に設けられた円柱状の係止突部41bを備えてなる。また、軸部材31には、捻りコイルばね42が挿通されている。この捻りコイルばね42は係合部材41を構成する腕部材41aのノブ22側に位置している。図6(a)に示されるように、軸部材31をノブ22側且つその軸方向から見たとき、捻りコイルばね42の両端部42a,42bは互いに交差するとともに、矢印X方向へ開口するU字状をなるように湾曲して形成されている。捻りコイルばね42の両端部42a,42bの基端部間には、前述した係合部材41の係止突部41bが介在されている。
【0037】
<外側スライド部材>
一方、図6(a),(b)に併せて示すように、ハウジング21の内部において、軸部材31の係合部材41に対応する部位には、直方体状のスライド部材収容部43が挿通穴32と連通して形成されている。このスライド部材収容部43には、四角枠状の外側スライド部材44が矢印Y方向へスライド可能に収容されている。すなわち、外側スライド部材44の下面とスライド部材収容部43の内底面との間には隙間dyが形成されている。この隙間dyにおいて、外側スライド部材44の下面とスライド部材収容部43の内底面との間には圧縮コイルばね45が介在されている。外側スライド部材44は圧縮コイルばね45の弾性力により上方(矢印Yで示されるスライド操作方向と反対側)へ常時付勢されている。この外側スライド部材44の上方への変位は、当該外側スライド部材44の上面がスライド部材収容部43の内頂面に当接することにより規制される。したがって、外側スライド部材44に矢印Y方向への力が作用した際には、当該外側スライド部材44は圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ変位する。この際、外側スライド部材44の矢印X方向において互いに反対側に位置する2つの側面は、スライド部材収容部43の矢印X方向において互いに対向する2つの内側面に摺動し案内される。すなわち、外側スライド部材44の矢印X方向及び矢印Xと反対方向へのスライドは、当該外側スライド部材44の矢印X側及び矢印Xと反対側の側面が、スライド部材収容部43の矢印X側の内側面及び矢印Xと反対側の内側面に当接することにより規制されている。
【0038】
なお、外側スライド部材44の内周面において、上下方向において互いに対向する2つの内側面には、それぞれ案内部材44a,44bが矢印X方向における全長にわたって形成されている。図6(b)に示されるように、案内部材44a,44bのノブ22側の側面と外側スライド部材44のノブ22側の側面との間には、段差d1が形成されている。
【0039】
<内側スライド部材>
そして、前述のように構成された外側スライド部材44の内側には、四角板状の内側スライド部材46が矢印X方向へスライド可能に設けられている。すなわち、内側スライド部材46の厚みは前述した外側スライド部材44の厚みとほぼ同じに設定されている。また、内側スライド部材46の外周面において互いに反対側に位置する2つの側面には、突条46a,46bが矢印X方向における全長にわたって形成されている。図6(b)に示されるように、突条46a,46bのノブ22と反対側の側面と内側スライド部材46のノブ22と反対側の側面との間には、段差d2が形成されている。この段差d2は前述した段差d1とほぼ同じとされている。そして、内側スライド部材46は、その突条46a,46bのノブ22と反対側の側面が、外側スライド部材44における案内部材44a,44bのノブ22側の側面に密接するように重ね合わせられている。内側スライド部材46のノブ22側の側面は、外側スライド部材44のノブ22側の側面と面一となっている。
【0040】
また、内側スライド部材46の矢印X側の外側面とスライド部材収容部43の矢印X側の内側面との間には、隙間dxが形成されている。この隙間dxにおいて、内側スライド部材46の矢印X側の側面とスライド部材収容部43の矢印X側の内側面との間には圧縮コイルばね47が介在されている。内側スライド部材46は圧縮コイルばね47の弾性力により左方(矢印Xで示されるスライド操作方向と反対側)へ常時付勢されている。この内側スライド部材46の左方への変位は、当該内側スライド部材46の左側の外側面が外側スライド部材44の左側の内側面に当接することにより規制される。したがって、内側スライド部材46に矢印X方向への力が作用した際には、当該内側スライド部材46は圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。この際、内側スライド部材46における突条46a,46bのノブ22と反対側の側面は、外側スライド部材44における案内部材44a,44bのノブ22側の側面に摺動し案内される。
【0041】
さらに、内側スライド部材46には、軸部材31を挿通可能とした円形の挿通孔46cが形成されるとともに、当該挿通孔46cの矢印X側の内側部には扇状の逃げ孔46dが連通して形成されている。この逃げ孔46dには前述した係止突部41bがノブ22と反対側から挿入されるとともに、当該係止突部41bは前述したように捻りコイルばね42の両端部42a,42bの基端部間に介在されている。また、内側スライド部材46のノブ22側の側面において、逃げ孔46dの挿通孔46cと反対側の側縁部の中央には、直方体状のばね受け突部48が設けられている。このばね受け突部48は、捻りコイルばね42の両端部42a,42bの先端部の間に介在されている。
【0042】
ノブ22の回転操作が行われない通常時においては、係止突部41bは図6(a)に実線で示されるように、逃げ孔46dの中央に保持される。そして、ノブ22の回転操作に伴い係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、逃げ孔46dの左回転側の内側面に係合する上方位置と、同じく右回転側の内側面に係合する下方位置との間を変位する。すなわち、ノブ22が中立位置「N」から後退位置「R」へ回転操作されたときには、係止突部41bは、捻りコイルばね42の弾性力に抗して、図6(a)に実線で示す中央位置から同図に二点鎖線で示される下方位置へ変位する。ノブ22が中立位置「N」から前進位置「R」へ回転操作されたときには、係止突部41bは、捻りコイルばね42の弾性力に抗して、図6(a)に実線で示す中央位置から同図に二点鎖線で示される上方位置へ変位する。ノブ22に対する回転操作力が解除されたときには、係止突部41bは捻りコイルばね42の弾性力により図6(a)に実線で示される中央位置に復帰する。これに伴い、ノブ22の回転操作位置も中立位置へ復帰する。
【0043】
また、ノブ22の矢印X方向へのスライド操作を通じて、軸部材31が矢印X方向へ変位した場合には、内側スライド部材46は、圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。このとき、外側スライド部材44が矢印X方向へ変位することはない。これは、前述したように、外側スライド部材44の右側の外側面がスライド部材収容部43の右側の内側面に当接することにより、当該外側スライド部材44の矢印X方向への変位が規制されるからである。そしてノブ22の矢印X方向への操作力が解除されると、内側スライド部材46は、圧縮コイルばね47の弾性力により矢印Xと反対方向へ変位し、当該内側スライド部材46の左側の外側面が外側スライド部材44の左側の内側面に当接する原位置へ復帰する。
【0044】
また、ノブ22の矢印Y方向へのスライド操作を通じて、軸部材31が矢印Y方向へ変位した場合には、内側スライド部材46及び外側スライド部材44は、圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ一体的に変位する。そしてノブ22の矢印Y方向への操作力が解除されると、内側スライド部材46及び外側スライド部材44は、圧縮コイルばね45の弾性力により矢印Yと反対方向へ一体的に変位し、外側スライド部材44の上側の側面がスライド部材収容部43の内頂面に当接する原位置へ復帰する。
【0045】
このように、復帰機構40は、ノブ22に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該ノブ22を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段として機能する。また、復帰機構40は、ノブ22に対する矢印X,Yで示されるスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該ノブ22を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段として機能する。そして、軸部材31は、内側スライド部材46の左側の外側面が圧縮コイルばね47の弾性力によりスライド部材収容部43の左側の内側面に押し付けられることにより、挿通穴32の内部における水平方向における位置決めがなされる。また、軸部材31は、外側スライド部材44の上側の外側面が圧縮コイルばね45の弾性力によりスライド部材収容部43の内頂面に押し付けられることにより、挿通穴32の内部における垂直方向における位置決めがなされる。このようにして、軸部材31は、挿通穴32の内部に保持されている。
【0046】
<スライド規制手段>
また、軸部材31には、ノブ22が前述した複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブ22の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段として次のような構成が設けられている。すなわち、図5に示されるように、軸部材31の外周面において係合部材41よりもノブ22側の部位には、当該ノブ22の回転操作位置と同数(ここでは、4つ)の嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成されている。なお、図5では、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのみが示されている。
【0047】
図7に示すように、4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51bは、前述したノブ22の回転操作位置である後進位置「R」、中立位置「N」、前進位置「D」及び手動操作位置「B」に対応して形成されている。
【0048】
中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nは、軸部材31をその軸方向から見たとき、当該軸部材31の水平方向へ延びる中心軸On上であって且つ矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作側の部位(図7中、右側部)に設けられている。後進位置「R」に対応する嵌合凹部51rは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに対して軸部材31の左回転方向において所定角度θ1をなす中心軸Or上に嵌合凹部51nと隣り合うように設けられている。前進位置「D」に対応する嵌合凹部51dは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに対して軸部材31の右回転方向において所定角度θ2をなす中心軸Od上に嵌合凹部51nと隣り合うように設けられている。手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bは、軸部材31をその軸方向から見たとき、前記中心軸Onに直交する中心軸Op上に嵌合凹部51dと隣り合うように設けられている。
【0049】
一方、挿通穴32の内周面において、軸部材31をその軸方向から見たとき、水平方向へ延びる中心軸On上であって図7に矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作側の部位(図7中、右内側部)には、3つの嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aが形成されている。また、挿通穴32の内周面において、軸部材31をその軸方向から見たとき、垂直方向へ延びる中心軸Op上であって図7に矢印Yで示されるノブ22の垂直方向におけるスライド操作側の部位(図7中、下内側部)には、嵌合凹部51bに嵌合する第2の嵌合突部52bが形成されている。
【0050】
さらに、挿通穴32の内周面において、軸部材31の軸方向における中央部に対応する部位には、第1及び第2の突部53a,53bが周方向において所定間隔をおいて形成されている。第1及び第2の突部53a,53bは、軸部材31の軸方向へ所定の長さをもって形成されている。挿通穴32をその軸方向から見たとき、第1の突部53aは、挿通穴32の内周面において、水平方向へ延びる中心軸On上であって且つ図7に矢印Xで示されるノブ22の水平方向におけるスライド操作方向と反対側の部位に形成されている。同じく第2の突部53bは、挿通穴32の内周面において、垂直方向へ延びる中心軸Op上であって且つ図7に矢印Yで示されるノブ22の垂直方向におけるスライド操作方向と反対側の部位に形成されている。
【0051】
ここで、外側スライド部材44の上面がスライド部材収容部43の内頂面に、また内側スライド部材46の左側の側面がスライド部材収容部43の左側の内側面に当接した図6に示される通常状態において、前述した第1及び第2の突部53a,53bの先端部は、軸部材31の外周面に摺動可能に当接している。そして、前述した第1及び第2の嵌合突部52a,52bの挿通穴32の内周面からの突出高さは、軸部材31の外周面が第1及び第2の突部53a,53bの先端部に当接した状態における当該軸部材31の外周面と挿通穴32の内周面との距離よりも小さく設定されている。
【0052】
したがって、ノブ22の回転操作を通じて、前述した3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一が第1の嵌合突部52aに対向する位置まで回転したときに、当該軸部材31は水平方向へ延びる中心軸Onに沿って矢印Xで示される方向(図7中、右側)へスライド操作可能となる。すなわち、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一が第1の嵌合突部52aに対向した状態において、ノブ22が矢印X方向へスライド操作された場合には、軸部材31は前述した復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力に抗して矢印X方向へ変位する。このとき、3つの嵌合凹部51r,51n,51dのうちいずれか一には第1の嵌合突部52aが嵌合することにより、軸部材31の右側への変位が許容される。3つの嵌合凹部51r,51n,51dのいずれも第1の嵌合突部52aに対応しない状態においては、軸部材31の外周面に第1の嵌合突部52aの先端部が当接することにより、当該軸部材31の矢印X方向への変位が規制される。ノブ22に対する矢印X方向へのスライド操作力が解除されたときには、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力により、当該軸部材31の外周面が第1の突部53aの先端部に当接する水平方向における原位置に復帰する。
【0053】
また、中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nが第1の嵌合突部52aに対向した状態において、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作された場合には、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力に抗して矢印Y方向へ変位する。このとき、嵌合凹部51dには第2の嵌合突部52bが嵌合することにより、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bが第2の嵌合突部52bに対応しない状態において軸部材31が矢印Y方向へ変位した場合には、当該軸部材31の外周面に第2の嵌合突部52bの先端部が当接することにより、当該軸部材31の矢印Y方向への変位が規制される。ノブ22に対する矢印Y方向へのスライド操作力が解除されたときには、軸部材31は復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力により、当該軸部材31の外周面が第2の突部53bの先端部に当接する垂直方向における原位置に復帰する。
【0054】
ノブ22の操作が行われない通常時において、ノブ22は中立位置「N」に対応するインジケータ22nが矢印X方向を示すインジケータ24aに対応する位置に保持される。またこのとき、軸部材31は中立位置「N」に対応する嵌合凹部51nが第1の嵌合突部52aに、手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bが第2の嵌合突部52bに対向する中立状態に保持される。そして、この中立状態において、ノブ22の右回転操作を通じて軸部材31が所定角度θ1だけ右方向へ回転されることにより、後進位置「R」に対応する嵌合凹部51rは第1の嵌合突部52aに対向する。また、前述の中立状態において、軸部材31が左方向へ所定角度θ2だけ回転されることにより、前進位置「D」に対応する嵌合凹部51dは第1の嵌合突部52aに対向する。
【0055】
このように、ノブ22が、複数の回転操作位置「R」,「N」,「D」のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ当該ノブ22の矢印X方向へのスライド操作が、またノブ22が回転操作位置「N」に回転操作されたときには矢印Y方向へのスライド操作が併せて許容される。
【0056】
<ストッパ手段>
ここで、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51rの左回転側の開口端縁には第1の当接壁54aが、また嵌合凹部51dの右回転側の開口端縁には第2の当接壁54bが、当該軸部材31の径方向へ突設されている。第1の当接壁54aの嵌合凹部51r側の側面は当該嵌合凹部51rの内側面と面一とされている。第2の当接壁54bの嵌合凹部51d側の側面は当該嵌合凹部51dの内側面と面一とされている。第1及び第2の当接壁54a,54bの軸部材31の外周面からの突出高さは、軸部材31の外周面が前述した第1及び第2の突部53a,53bの先端部に当接した状態における当該軸部材31の外周面と第1及び第2の嵌合突部52a,52bの先端面との距離よりも大きく設定されている。
【0057】
したがって、軸部材31の右方向への回転は、第1の当接壁54aの嵌合凹部51r側の側面が第1の嵌合突部52aに当接することにより規制される。また軸部材31の左方向への回転は、第2の当接壁54bの嵌合凹部51d側の側面が第1の嵌合突部52aに当接することにより規制される。すなわち、軸部材31は、第1の当接壁54aが第1の嵌合突部52aに当接する位置と、第2の当接壁54bが第1の嵌合突部52aに当接する位置との間において回転可能とされている。このように、第1及び第2の当接壁54a,54bは、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として機能する。
【0058】
なお、第1の当接壁54aが第1の嵌合突部52aに当接する位置にあるとき、前述した係合部材41の係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、内側スライド部材46における逃げ孔46dの左回転側の内側面に係合する上方位置にある。また、第2の当接壁54bが第1の嵌合突部52aに当接する位置にあるとき、係合部材41の係止突部41bは、図6(a)に二点鎖線で示されるように、右回転側の内側面に係合する下方位置にある。このように、係合部材41の係止突部41bは、前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと協働して、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段としても機能する。
【0059】
<回転規制手段>
また、図5に示されるように、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位よりもさらにノブ22側の部位には、第1及び第2の係合凹部61,62が形成されている。
【0060】
詳述すると、図8に示すように、第1の係合凹部61は、軸部材31をその軸方向から見たときに、矢印X方向へ延びる中心軸Onよりも上側に、且つ矢印Y方向へ延びる中心軸Opよりも右側に設けられている。第1の係合凹部61の内底面は、中心軸Onに平行をなす係止面61aとされている。第1の係合凹部61の矢印Xと反対側の内側面は中心軸Opに平行をなす垂直面61bとされている。
【0061】
また、第2の係合凹部62は、軸部材31をその軸方向から見たときに、矢印X方向へ延びる中心軸Onよりも上側に、且つ矢印Y方向へ延びる中心軸Opよりも左側に設けられている。第2の係合凹部62の内底面は、中心軸Onに平行をなす係止面62aとされている。第2の係合凹部62の矢印X側の内側面は、上部に向かうにつれて矢印X側へ湾曲して前述した第1の係合凹部61側へ延びる曲面62bとされている。曲面62bは、軸部材31、すなわちノブ22の回転中心軸Oを中心とし且つ軸部材31より小径の円弧面とされている。
【0062】
さらに、軸部材31をその軸方向から見たときに、中心軸Onよりも下側には2つの凹部63a,63bが中心軸Opを間に挟んで左右対称に形成されることにより、係止壁64が形成されている。なお、前述した2つの係止面61a,62aは同一の仮想平面上にある。
【0063】
一方、図8に示すように、ハウジング21の内部において、軸部材31の第1及び第2の係合凹部61,62に対応する部位には、直方体状の係止部材収容部65が挿通穴32と連通して形成されている。この係止部材収容部65には、四角枠状の係止部材66が、軸部材31が挿通された状態で矢印Y方向へスライド可能に収容されている。すなわち、係止部材66の矢印Xと反対側の側面と係止部材収容部65の左側の内側面との間には隙間dx1が、同じく矢印X側の側面と係止部材収容部65の右側の内側面との間には隙間dx2が形成されている。また、係止部材66の上面は係止部材収容部65の内頂面に対して、同じく下面は係止部材収容部65の内底面に対して矢印X方向へ摺動可能に密接している。係止部材66において、軸部材31の軸方向において互いに反対側に位置する2つの側面は、係止部材収容部65において、軸部材31の軸方向において互いに対向する2つの内側面に摺動し案内される。
【0064】
また、図8に示すように、係止部材66を軸部材31の軸方向から見たとき、係止部材66の四角枠状の内側面において、右上の内角には四角形状の第1の係止片67が、同じく左上の内角には四角形状の第2の係止片68が形成されている。第1及び第2の係止片67,68の下面(矢印Y側の側面)は、軸部材31に形成された第1及び第2の係合凹部61,62の係止面61a,62aと同一の仮想平面上にある。
【0065】
したがって、係止部材66に対して矢印Xと反対方向への力が作用した場合には、当該係止部材66は矢印Xと反対側へ変位する。この係止部材66の矢印Xと反対方向への変位は、第1の係止片67が第1の係合凹部61の内部に進入することにより許容される。このとき、第1の係止片67の下面は、第1の係合凹部61の内底面である係止面61a上を摺動する。また、このとき第1の係合凹部61の内底面が第1の係止片67の下面に係止されることにより軸部材31の左回転、ひいてはノブ22のインジケータ23bで示される方向への回転操作が規制される。
【0066】
係止部材66に対して矢印X方向への力が作用した場合には、当該係止部材66は矢印X側へ変位する。この係止部材66の矢印X方向への変位は、第2の係止片68が第2の係合凹部62の内部に進入することにより許容される。このとき、第2の係止片68の下面は、第2の係合凹部62の内底面である係止面62a上を摺動する。また、このとき第2の係合凹部62の内底面が第2の係止片68の下面に係止されることにより軸部材31の右回転、ひいてはノブ22のインジケータ23aで示される方向への回転操作が規制される。
【0067】
また、係止部材66の内底面において、左下の内角寄りの部位には、矢印Y方向へ延びる切欠69が形成されている。この切欠69の矢印X方向における幅は、前述した軸部材31の係止壁64の矢印X方向における幅よりも若干大きく設定されている。このため、係止部材66が矢印X方向へ変位して切欠69が係止壁64に対応した状態で、軸部材31が矢印Y方向へ変位した際には、軸部材31の係止壁64は切欠69に進入する。これにより、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。
【0068】
さらに、係止部材66の右側の外側面には、係合孔70が矢印X側へ開放して形成されている。この係合孔70は、係止部材66の矢印X側に開口する開放孔70aと、開放孔70aに連通して上下方向へ延びる係合孔70bとから、アルファベット「T」を左に90°だけ回転させた形状とされている。
【0069】
<ソレノイド機構>
また、図8に示すように、ハウジング21の内部において、係止部材収容部65に対応する部位には、ソレノイド収容部71が係止部材収容部65に連通して形成されている。ソレノイド収容部71には、係止部材66を矢印X方向においてスライドさせるソレノイド機構72が収容されている。ソレノイド機構72は、ソレノイド収容部71に収容される励磁コイル73、及び当該励磁コイル73の励磁状態に基づき当該励磁コイル73に対する矢印X方向における突出量が変化するプランジャ74を備えてなる。
【0070】
プランジャ74の先端部には矢印Y方向において互いに反対側に位置する2つの平面74a,74bが形成されるとともに、これら平面74a,74bに直交するように係合ピン75が上下に貫通した状態で固定されている。プランジャ74は係止部材収容部65の内部に突出している。プランジャ74の先端部は開放孔70aを通じて係合孔70b内に挿入されるとともに、当該プランジャ74の先端面は係合孔70bの左側(矢印Xと反対側)の内側面に当接した状態に保たれている。係合ピン75は、係合孔70bの内部に保持されるとともに、当該係合孔70bの右側(矢印X側)の内側面に係合可能とされている。
【0071】
本実施の形態において、プランジャ74は、図8に示される中間位置、図9に示される突出位置、及び図10に示される引込位置の3つの位置間を変位する。プランジャ74は、励磁コイル73が通電されてないときには図8に示される中間位置に保持される。このとき、軸部材31は係止部材66の内側面のどの部位にも係合していないことから、軸部材31の回転は許容されている。すなわち、係止部材66は、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作を許容する回転許容位置(回転許容状態)に保持される。
【0072】
また、プランジャ74は、励磁コイル73に正の極性を有する励磁電流が供給されたときには、矢印X方向と反対方向へ変位して前記中間位置から図9に示される突出位置へ至る。このとき、プランジャ74の先端面により係合孔70bの左側の内側面が矢印X方向と反対方向へ押圧されることにより、係止部材66はプランジャ74と共に矢印X方向と反対方向へスライドする。そして、図9に示されるように、プランジャ74が前記突出位置に至った状態においては、係止部材66の第1の係止片67は、軸部材31の第1の係合凹部61の内部に進入した状態に保たれる。そして、第1の係合凹部61の内底面が第1の係止片67の下面に係止されることにより軸部材31の左回転、ひいてはノブ22のインジケータ23bで示される方向への回転操作が規制される。すなわち、ノブ22のドライブ位置「D」への回転操作が規制される。
【0073】
このように、励磁コイル73が正の極性をもって通電されることにより、係止部材66は、図8に示される回転許容位置から、軸部材31、ひいてはノブ22の左回転操作を規制する図9に示される左回転規制位置(回転規制状態)へ変位する。これにより、ノブ22の回転操作位置が保持される。また係止部材66が図9に示される左回転規制位置にあるとき、切欠69は軸部材31の係止壁64に対応していない。このため、係止壁64の先端面が係止部材66の下側の内側面に当接することにより、軸部材31の矢印Y方向への変位は規制される。
【0074】
また、プランジャ74は、励磁コイル73に負の極性を有する励磁電流が供給されたときには、矢印X方向へ変位して前記中間位置から図10に示される引込位置へ至る。このとき、係合ピン75が係合孔70bの右側の内側面に係合することにより、係止部材66はプランジャ74と共に矢印X方向へスライドする。そして、図10に示されるように、プランジャ74が前記引込位置に至った状態においては、係止部材66の第2の係止片68は、軸部材31の第2の係合凹部62の内部に進入した状態に保たれる。そして、第2の係合凹部62の内底面が第2の係止片68の下面に係止されることにより軸部材31の右回転、ひいてはノブ22のインジケータ23aで示される方向への回転操作が規制される。すなわち、ノブ22の後進位置「R」への回転操作が規制される。
【0075】
このように、励磁コイル73が負の極性をもって通電されることにより、係止部材66は、図8に示される回転許容位置から、軸部材31、ひいてはノブ22の右回転操作を規制する図10に示される右回転規制位置(回転規制状態)へ変位する。これにより、ノブ22の回転操作位置が保持される。また係止部材66が図10に示される右回転規制位置にあるとき、切欠69は軸部材31の係止壁64に対して相対的に進入可能に対応していることから、軸部材31の矢印Y方向への変位が許容される。
【0076】
<検出手段>
さらに、図5に示されるように、軸部材31の外周面において、嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位と係合部材41との間には、当該軸部材31の周方向へ延びる長溝81が矢印Xで示されるスライド操作方向において開口するように形成されている。この長溝81の軸部材31の周方向における長さは、前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと第1の嵌合突部52aとの係合関係に基づき決定される軸部材31の回転操作範囲に対応して設定されている。また、図11(a)に示されるように、長溝81は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」とされているとき、水平方向へ延びる中心軸Onが当該長溝81の延びる方向における中心を通るように形成されている。
【0077】
そして、ハウジング21の内部、正確には挿通穴32の内周面に開口して形成された図示しないスイッチ収容部には、軸部材31、ひいてはノブ22の各回転操作位置への回転操作及び各回転操作位置における矢印X、Y方向へのスライド操作を検出する手段として、第1〜第3のマイクロスイッチ82a,82b,82cが配設されている。これら第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは、前述の長溝81内に進入可能な程度の大きさとされている。
【0078】
第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、図11(a)に示されるように、矢印Xで示されるノブ22のスライド操作側に設けられている。また、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、ノブ22が中立位置「N」にある状態においては、長溝81の延びる方向において互いに対向する2つの内側面と軸部材31の外周面との境界部位に形成される2つの角部83a,83bに対応するように設けられている。したがって、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、ノブ22が中立位置「N」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、前述した2つの角部83a,83bにより押圧されてオン動作する。
【0079】
また、図11(b)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」から後進位置「R」へ回転操作された場合には、長溝81は第1のマイクロスイッチ82aから外れ、且つ第2のマイクロスイッチ82bに対応する位置に保持される。したがって、ノブ22が後進位置「R」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、第1のマイクロスイッチ82aは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。第2のマイクロスイッチ82bは長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなく、オフ状態に保たれる。
【0080】
また、図11(c)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」から前進位置「D」へ回転操作された場合には、長溝81は第1のマイクロスイッチ82aに対応し、且つ第2のマイクロスイッチ82bから外れた位置に保持される。したがって、ノブ22が前進位置「D」に保持された状態で矢印X方向へスライド操作されたときには、第1のマイクロスイッチ82aは長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなく、オフ状態に保たれる。第2のマイクロスイッチ82bは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。
【0081】
なお、第3のマイクロスイッチ82cは、垂直方向へ延びる中心軸Op上にあって、且つ矢印Yで示されるスライド操作側において軸部材31の外周面に対向して設けられている。前述したように、ノブ22は中立位置「N」にあるときにのみ矢印Yで示される方向へのスライド操作が可能となる(正確には、係止部材66が図10に示される右回転規制位置にあることも併せて必要となる。)。そして、図11(c)に示されるように、ノブ22が中立位置「N」に保持されている状態で、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、第3のマイクロスイッチ82cは軸部材31の外周面により押圧されてオン動作する。
【0082】
<電気的な構成>
次に、前述のように構成されたシフト装置の電気的な構成について説明する。
図12に示すように、シフト装置11の電子制御装置91には、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82c、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22b、2つの矢印型のインジケータ24a,24b、並びにソレノイド機構72が接続されている。また、電子制御装置91には、車速センサ92及び自動変速機93が接続されている。車速センサ92は車両の走行速度を検出し、その検出信号として車速信号を出力する。
【0083】
電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断したときには、励磁コイル73への励磁電流を遮断する旨示す作動制御信号をソレノイド機構72へ出力する。この結果、励磁コイル73への励磁電流の供給が遮断されて、係止部材66は図8に示される回転許容位置に保持される。一方、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73へ励磁電流を供給する旨示す作動制御信号をソレノイド機構72へ出力する。この結果、励磁コイル73へ正又は負の極性を有する励磁電流が供給されて、係止部材66は図9に示される左回転規制位置又は図10に示される右回転規制位置に保持される。なお、所定の速度判定閾値は、例えば時速0km〜時速10km程度のいわゆる低速域の値に設定される。本実施の形態では、速度判定閾値は時速10kmに設定されている。
【0084】
また、電子制御装置91は、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cからの検出信号であるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、ノブ22の回転操作位置を判定する。すなわち、電子制御装置91は、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方からオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」にあって、且つ当該中立位置「N」に対応する変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、励磁コイル73を非励磁状態に保つことにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置に保持する。
【0085】
また、電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオン信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオフ信号が入力された場合には、ノブ22が後進位置「R」にあって、且つ当該後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、車速センサ92を通じて車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73に正の極性を有する励磁電流を供給することにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置から図9に示される左回転規制位置へ変位させる。
【0086】
また、電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオフ信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオン信号が入力された場合には、ノブ22が前進位置「D」にあって、且つ当該前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。またこの場合、電子制御装置91は、車速センサ92を通じて車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断したときには、励磁コイル73に負の極性を有する励磁電流を供給することにより、係止部材66を図8に示される回転許容位置から図10に示される右回転規制位置へ変位させる。
【0087】
また、電子制御装置91は、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」、すなわち手動操作位置「B」にあって、且つ当該手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、手動操作位置「B」に対応する車両機能を作動させる。本実施の形態では、電子制御装置91は、回生ブレーキをかけるべく車両の走行用の駆動源を構成するモータを制御する。
【0088】
なお、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動は、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作である矢印X方向へのスライド操作が検出されていることが前提となる。すなわち、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた後でなければ、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作が行われたとしても、当該手動操作位置「B」に対応する車両機能は作動されない。この場合には、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。ちなみに、手動操作位置「B」に対応する車両機能が作動している状態で、前進位置「D」に対応する変速位置への切換を確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた場合には、電子制御装置91は、中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。
【0089】
さらに、電子制御装置91は、図示しない始動スイッチの操作により車両の電源が投入された場合には、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bを点灯させる。また、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作方向を示す矢印形のインジケータ23a,23b、及びノブ22のスライド操作方向を示す矢印形のインジケータ24a,24bの点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作位置及び車両の状態に応じて、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのうち操作可能である方向を示すインジケータのみを点灯させる。これにより、ノブ22の操作可能な方向をユーザの視覚に訴えて示唆することが可能となる。
【0090】
具体的には、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨判断した場合には、図13(a)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aを点灯させて、ノブ22の矢印Y方向を示すインジケータ24bは消灯状態に保つ。
【0091】
また、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達している旨判断した場合には、図13(b)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのすべてを消灯させる。
【0092】
また、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断した場合には、図13(c)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、ノブ22の矢印X方向を示すインジケータ24aのみを点灯させて、残りのインジケータ23a,23b及びインジケータ24bは消灯させる。
【0093】
また、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達している旨判断した場合には、図13(d)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、矢印Y方向を示すインジケータ24bのみを点灯させて、残りのインジケータ23a,23b並びにインジケータ24aは消灯させる。
【0094】
また、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作がなされた旨、及び車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達していない旨判断した場合には、図13(e)に示されるような点灯制御を行う。すなわち、電子制御装置91は、矢印X方向を示すインジケータ24a及び矢印Y方向を示すインジケータ24bを点灯させて、残りのインジケータ23a,23bは消灯させる。
【0095】
なお、前述したように、ノブ22は、その回転操作方向及びスライド操作方向への操作力が解除されたときには、復帰機構40を構成する捻りコイルばね42並びに圧縮コイルばね45,47の弾性力により、当該回転操作方向及びスライド操作方向における原位置に弾性復帰される。このため、図13(a)〜図13(e)においては、ノブ22の回転操作位置はすべて中立位置「N」に保持された状態で示されている。
【0096】
<実施の形態の作用>
次に、前述のように構成されたシフト装置11の動作について説明する。ここで、駐車状態の車両においては、走行用の駆動源は停止状態であるとともに、自動変速機93の変速位置は駐車位置に保持されている。この駐車状態において、シフト装置11は、その初期状態として、次のような状態に保持されている。すなわち、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持されている。また、ソレノイド機構72への励磁電流の供給は遮断された状態であって係止部材66は図8に示される回転許容位置に保持されている。
【0097】
<駆動源始動>
さて、駐車状態の車両を走行させる場合、ユーザはまずブレーキペダルを踏み込み操作した状態で車両の走行用の駆動源を始動させるべく図示しない始動スイッチを操作する。車両の電源が投入されると、電子制御装置91は、ノブ22の回転操作位置を示す4つのインジケータ22r,22n,22d,22bを点灯させる。また、電子制御装置91は、図13(a)に示されるように、ノブ22の回転操作方向を示す2つのインジケータ23a,23b、及びノブ22のスライド操作方向を示すインジケータ24aを点灯させる。ここでは、係止部材66が図8に示される回転許容位置にあってノブ22の下方へのスライド操作が規制されていることから、電子制御装置91はインジケータ24bを消灯状態に保つ。そして、ユーザは、ノブ22の操作を通じて自動変速機93の変速位置を所望の変速位置に切り替える。
【0098】
<後進時>
ここではまず車両を後進させる場合について説明する。この場合、ユーザはノブ22を中立位置「N」から後進位置「R」へ回転操作する。これにより、軸部材31の嵌合凹部51rはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向し、軸部材31は当該第1の嵌合突部52a側へ変位可能となる。このとき、図11(b)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1のマイクロスイッチ82aから外れ、且つ第2のマイクロスイッチ82bに対応する位置に保持される。
【0099】
そして、ユーザにより、後進位置「R」に対応する自動変速機93の変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1のマイクロスイッチ82aは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作してオン信号を出力する。第2のマイクロスイッチ82bは、長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなくオフ状態に保たれてオフ信号を出力する。
【0100】
電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオン信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオフ信号が入力された場合には、ノブ22が後進位置「R」に切り替えられて、且つ当該後進位置「R」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の後進位置「R」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。
【0101】
この後、ユーザは、図示しないパーキングブレーキスイッチの操作を通じてパーキングブレーキを解除して、図示しないアクセルペダルを踏み込むことにより、車両を後進させることができる。
【0102】
なお、ノブ22の回転操作位置が後進位置「R」に保持された状態でインジケータ24aにより示される側方へスライド操作された後に当該ノブ22に対する操作力が解除された場合、軸部材31は、復帰機構40を構成する圧縮コイルばね47の弾性力により、インジケータ24aにより示される方向と反対方向へ変位してスライド操作方向における原位置へ復帰する。また、軸部材31は捻りコイルばね42の弾性力によりインジケータ23aで示される方向と反対方向へ回転して回転操作方向における原位置へ復帰する。すなわち、軸部材31は、図7に示されるように、第1及び第2の突部53a,53bの先端が当該軸部材31の外周面に当接するとともに、嵌合凹部51rが第1の嵌合突部52aに対応する位置に保持される。これに伴って、ノブ22はインジケータ24aにより示される方向と反対方向へ変位して、図3に実線で示される水平方向及び垂直方向における原位置に復帰する。車両の後進中において、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0103】
車両の後進中において、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達していない旨判断した場合は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断状態に保ち、係止部材66を図8に示される回転許容状態に保持する。また、電子制御装置91は、図13(c)に示されるように、矢印X方向を示すインジケータ24aのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24aが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。
【0104】
そして、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、励磁コイル73へ正の極性を有する励磁電流を供給するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図8に示される中間位置から図9に示される突出位置へ変位し、係止部材66はその第1の係止片67が軸部材31の第1の係合凹部61に係合する左回転規制位置(第1の回転規制位置)へ変位する。この結果、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の左回転操作が規制される。これにより、車両の後進中において、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」から前進位置「D」へ切り替えられることが規制され、ひいてはユーザの意図しない変速操作が抑制される。
【0105】
また、電子制御装置91は、車両の走行速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、図13(b)に示されるように、インジケータ23a,23b及びインジケータ24a,24bのすべてを消灯させる。ユーザは、これらインジケータが示すいずれの方向へもノブ22を操作することができない旨視覚を通じて認識することが可能となる。このため、車両の後進中にノブ22が無駄に操作されることが抑制される。
【0106】
ブレーキペダルの踏み込み操作が行われて車両が停止された場合、正確には車両の走行速度が所定の速度判定閾値を下回った場合には、電子制御装置91は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図9に示される突出位置から図8に示される中間位置へ変位し、係止部材66は図9に示される左回転規制位置から図8に示される回転許容位置(アンロック位置)へ変位する。この結果、軸部材31の回転、すなわちノブ22の回転操作が許容される。この後、ユーザは車両の駆動源を停止して降車するか、ノブ22の操作を通じて自動変速機93の変速位置を切り替えて再び車両を走行させるかする。
【0107】
<前進時>
次に、前述した車両の後進後に車両を前進させる場合について説明する。この場合には、ユーザはノブ22を中立位置「N」から前進位置「D」へ回転操作する。これにより、軸部材31の嵌合凹部51dはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向し、軸部材31は当該第1の嵌合突部52a側へ変位可能となる。このとき、図11(c)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1のマイクロスイッチ82aに対応し、且つ第2のマイクロスイッチ82bから外れた位置に保持される。
【0108】
そして、ユーザにより、前進位置「D」に対応する自動変速機93の変速位置(ギヤ段)への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1のマイクロスイッチ82aは、長溝81に対して相対的に進入することにより押圧されることはなくオフ状態に保たれてオフ信号を出力する。第2のマイクロスイッチ82bは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作してオン信号を出力する。
【0109】
電子制御装置91は、第1のマイクロスイッチ82aからオフ信号が、第2のマイクロスイッチ82bからオン信号が入力された場合には、ノブ22が前進位置「D」に切り替えられて、且つ当該前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。この後、ユーザは、前記パーキングブレーキスイッチの操作を通じてパーキングブレーキを解除し、前記アクセルペダルを踏み込むことにより車両を前進させることができる。
【0110】
なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、前述した車両の後進時と同様に、ノブ22は、図3に実線で示される水平方向及び垂直方向における原位置に復帰する。また、車両の前進中において、ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0111】
車両の前進中において、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達していない旨判断した場合は、励磁コイル73への励磁電流の供給を遮断状態に保ち、係止部材66を図8に示される回転許容状態に保持する。また、電子制御装置91は、図13(e)に示されるように、矢印X方向を示すインジケータ24a及び矢印Y方向を示すインジケータ24bのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24a,24bが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。
【0112】
そして、電子制御装置91は、車速センサ92からの車速信号に基づき車両の走行速度を認識し、当該速度が定められた速度判定閾値に達した旨判断した場合には、励磁コイル73へ負の極性を有する励磁電流を供給するべくソレノイド機構72へ作動制御信号を出力する。すると、ソレノイド機構72のプランジャ74は、図8に示される中間位置から図10に示される引込位置へ変位し、係止部材66はその第2の係止片68が軸部材31の第2の係合凹部62に係合する右回転規制位置(第2の回転規制位置)へ変位する。この結果、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の右回転操作が規制される。これにより、車両の前進中において、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」から後進位置「R」へ切り替えられることが規制され、ひいてはユーザの意図しない変速操作が抑制される。またこのとき、軸部材31の係止壁64は係止部材66の切欠69に対応していることから、軸部材31、ひいてはノブ22の下方への変位のみ許容される。電子制御装置91は、図13(d)に示されるように、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aを消灯させて、インジケータ24bのみを点灯させる。ユーザは、インジケータ24bが示す方向へのみノブ22を操作することができる旨視覚を通じて認識することが可能となる。このため、車両の後進中にノブ22が無駄に操作されることが抑制される。
【0113】
車両の前進中において、ノブ22がインジケータ24bで示される側方へスライド操作された場合、第3のマイクロスイッチ82cは、軸部材31の外周面により押圧されてオン動作し、この旨示すオン信号を出力する。なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、ノブ22は、復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45の弾性力により、図3に実線で示される垂直方向における原位置に復帰する。ノブ22の回転操作位置は中立位置「N」に保持される。
【0114】
電子制御装置91は、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力された場合には、ノブ22が手動操作位置「B」に対応する車両機能の実行を確定させる操作としてインジケータ24bで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。なお、当該判断は、前述したように、前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として矢印X方向へのスライド操作が行われた後に、第3のマイクロスイッチ82cからオン信号が入力されたことが前提となる。そして本実施の形態では、手動操作位置「B」に対応する機能として、車両の走行用の駆動源を構成するモータの発電動作による回生ブレーキを作動させるスイッチ機能が割り当てられている。このため、ノブ22のインジケータ24bで示される側方へのスライド操作により回生ブレーキがかかる。
【0115】
前記ブレーキペダルの踏み込み操作が行われて車両が停止された場合、正確には車両の走行速度が所定の速度判定閾値を下回った場合には、電子制御装置91はこれを車速センサ92からの車速信号に基づき認識し、ソレノイド機構72への励磁電流の供給を遮断する。この結果、係止部材66は図10に示される右回転規制位置から図8に示される回転許容位置へ変位する。ノブ22の回転操作が許容されることにより、ユーザはノブ22を任意の回転操作位置に切り替え可能となる。
【0116】
<中立状態>
次に、自動変速機93を中立状態とする場合について説明する。この変速操作、すなわちノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持された状態における矢印X方向へのスライド操作は、前述したように、駐車状態で車両の駆動源を始動させたとき、並びに車両の後進時及び前進時において走行速度が所定の速度判定閾値を下回ったときに許容される。
【0117】
このとき、係止部材66は、図8に示される回転許容位置に保持されている。また、軸部材31の嵌合凹部51nはハウジング21側の第1の嵌合突部52aに対向しており、当該軸部材31の第1の嵌合突部52a側への変位が許容されている。さらに、図11(a)に示されるように、軸部材31の長溝81は第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方から外れた位置に保持される。すなわち、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、長溝81の延びる方向において互いに対向する2つの内側面と軸部材31の外周面との境界部位に形成される2つの角部83a,83bに対応する。
【0118】
この状態で、ユーザにより、中立位置「N」に対応する自動変速機93の変速位置への切り替えを確定させるべくノブ22がインジケータ24aで示される側方へスライド操作されると、これが第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bにより検出される。すなわち、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bは、前述した2つの角部83a,83bに押圧されることによりオン動作してオン信号を出力する。
【0119】
電子制御装置91は、第1及び第2のマイクロスイッチ82a,82bの双方からオン信号が入力された場合には、ノブ22が中立位置「N」に保持された状態で、且つ当該中立位置「N」に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作としてインジケータ24aで示される側方へのスライド操作がなされた旨判断する。そして、電子制御装置91は、ノブ22の中立位置「N」に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。これにより、自動変速機93は、車両の走行用の駆動源の動力伝達を遮断する状態となる。
【0120】
なお、ノブ22に対する操作力が解除された場合には、前述した車両の後進時及び前進時と同様に、ノブ22は、復帰機構40の圧縮コイルばね47の弾性力により、図3に実線で示される水平方向における原位置に復帰する。また、インジケータ23a,23b及びインジケータ24aは点灯状態に、インジケータ24bは消灯状態に保たれる。
【0121】
<実施の形態の効果>
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作位置に対応する3つの嵌合凹部51r,51n,51dを形成した。また、ハウジング21の挿通穴32の内周面には各嵌合凹部51r,51n,51dに嵌合する第1の嵌合突部52aを形成した。そして、ノブ22が各回転操作位置に回転操作されたときに、各嵌合凹部51r,51n,51dは第1の嵌合突部52aに対向するようにした。このため、ノブ22の操作を通じて自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該ノブ22の側方へのスライド操作が許容される。すなわち、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作(シフト装置11の誤操作)を好適に抑制することができる。
【0122】
(2)また、前述したように、軸部材31の各嵌合凹部51r,51n,51dと挿通穴32の内周面に設けられた第1の嵌合突部52aとの対応関係により、ノブ22のスライド操作を規制するようにした。このため、軸部材31にはノブ22の各回転操作位置に対応する嵌合凹部51r,51n,51dを、また挿通穴32には第1の嵌合突部52aを設けるといった簡単な構成により、ノブ22のスライド操作を好適に規制することができる。
【0123】
(3)また、軸部材31の一部として第1及び第2の係合凹部61,62に係合して前記一の回転操作位置にあるノブ22の他の回転操作位置への回転操作を規制する回転規制手段として係止部材66を設けた。当該係止部材66によりノブ22の回転操作が機械的に規制されることにより、意図しない変速操作をより確実に抑制することができる。ここで、当該係止部材66を変位させる駆動手段として採用されるソレノイド機構72の不具合等により、軸部材31の回転の規制が好適に行われない状況も想定されるところ、このような場合であれ、前述したように、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、シフト装置11の誤操作を抑制することができる。
【0124】
(4)さらに、係止部材66を変位させる駆動手段としてソレノイド機構72を採用した。そして、当該ソレノイド機構72の励磁コイル73の励磁状態に基づき、係止部材66は軸部材31の回転を規制する回転規制位置(右回転規制位置及び左回転規制位置)と、同じく回転を許容する回転許容位置との間を変位するようにした。このため、軸部材31の正逆回転が好適に規制されることにより、ユーザの意図しない変速操作をいっそう確実に抑制することができる。また、電子制御装置91は、励磁コイル73に対する通電のオン及びオフを制御するだけでよいことから、ノブ22の回転を規制するに際して複雑な制御は不要である。すなわち、簡単な制御により、ノブ22の回転を好適に規制することができる。電子制御装置91の演算負荷の増大も抑制される。
【0125】
(5)係止部材66には軸部材31を挿通した状態に保持した。そして、係止部材66が前記回転規制位置にあるときには、当該係止部材66の内周面の一部である第1及び第2の係止片67,68が、軸部材31の一部である第1及び第2の係合凹部61,62に係合することにより、軸部材31の回転が規制されるようにした。このように、係止部材66は軸部材31が挿通されてなることから、当該係止部材66を軸部材31の外方から係合させるようにした場合と異なり、軸部材31の径方向における大型化が抑制される。
【0126】
(6)ノブ22の回転操作位置として、自動変速機93の各変速位置に対応する前進位置「D」、中立位置「N」及び後進位置「R」、並びに車両の前進走行中に行われる特定の機能に対応する手動操作位置「B」を設定するとともに、中立位置「N」をノブ22の回転操作方向における原位置とした。そして、軸部材31の外周面には、手動操作位置「B」に対応する嵌合凹部51bを、また挿通穴32の内周面には当該嵌合凹部51bに嵌合する第2の嵌合突部52bを設けた。そしてさらに、ノブ22が中立位置「N」に保持されているときにのみ嵌合凹部51bは第2の嵌合突部52bに対向するようにした。
【0127】
前述したように、ノブ22に対する操作力が解除された際には、ノブ22は復帰機構40によりスライド操作方向における原位置及び回転操作方向における原位置へ復帰される。そして、ノブ22の回転操作方向における原位置とされる中立位置「N」にノブ22が保持されているときにのみ、手動操作位置「B」に対応する特定の車両機能の作動を確定させる他の方向(矢印Y方向)へのスライド操作が共に許容される。したがって、手動操作位置「B」に対応する特定の車両機能の作動を確定させる矢印Y方向へのスライド操作を簡単に行うことができる。なお、本実施の形態においては、矢印Y方向へのスライド操作が許容される状態として、係止部材66が図10に示される右回転規制位置に保持されていることが併せて必要である。
【0128】
(7)軸部材31の外周面にはその周方向へ延びる長溝81を形成した。また、ノブ22の各回転操作位置への回転操作及び各回転操作位置における側方へのスライド操作を検出する検出手段として、長溝81の回転軌跡に対応して配設される第1〜第3のマイクロスイッチ82a,82b,82cを採用した。各第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは、ノブ22の回転操作位置に応じて、軸部材31に対する相対位置が、軸部材31の外周面に対応する位置と軸部材31の長溝81に対応する位置との間を変位する。第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cが軸部材31の外周面に対応する位置にある場合に、ノブ22がスライド操作されたときには、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは軸部材31の外周面に押圧されることによりオン状態となる。第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cが軸部材31の長溝81に対応する位置にある場合に、ノブ22がスライド操作されたときには、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cは長溝81の内部に進入することにより軸部材31の外周面に押圧されることはなく、オフ状態に保持される。そして、電子制御装置91は、各第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、ノブ22が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断するようにした。このため、電子制御装置91は、ノブ22の操作位置を検出するに際して、複雑な信号処理を行う必要がない。したがって、電子制御装置91の演算負荷が抑制される。
【0129】
(8)ノブ22をそのスライド操作方向における原位置に復帰させるスライド復帰手段として、次のような構成を採用した。すなわち、スライド復帰手段は、スライド部材収容部43の内部において軸部材31に対して相対的に回転可能に挿通されるとともに当該軸部材31と一体的に側方(矢印X方向)への変位が許容された内側スライド部材46を備えてなる。また、当該スライド復帰手段は、内側スライド部材46とスライド部材収容部43の内面(正確には、外側スライド部材44の内周面)との間に配設されて前記内側スライド部材46を軸部材31のスライド方向と反対側へ常時付勢する付勢部材として圧縮コイルばね47を備えてなる。このため、圧縮コイルばね47の弾性力により、軸部材31,ひいてはノブ22をそのスライド操作方向における原位置へ容易に復帰させることができる。また、圧縮コイルばね47の弾性力は、内側スライド部材46を介して軸部材31に作用させるようにしたことにより、圧縮コイルばね47が回転する軸部材31に干渉する不具合が回避される。
【0130】
(9)ノブ22をその回転操作方向における原位置に復帰させる回転復帰手段として、軸部材31に装着された捻りコイルばね42を採用した。そして、捻りコイルばね42の両端部42a,42bは互いに交差するように形成するとともに、これら両端部42a,42b間には軸部材31の外周面に設けられた係止突部41b、及び内側スライド部材46に設けられたばね受け突部48を介在させるようにした。このため、軸部材31の回転に伴い係止突部41bが捻りコイルばね42の一方の端部に係合する。このとき、捻りコイルばね42の他方の端部は、ばね受け突部48に当接することにより捻りコイルばね42の回転が規制される。したがって、軸部材31の回転に伴い係止突部41bは捻りコイルばね42の一方の端部に係合した状態で当該軸部材31と同じ方向へ回転する。これにより、捻りコイルばね42には当該軸部材31の回転方向と反対方向への弾性力が蓄えられる。そして、ノブ22への回転操作力が解除された際には、捻りコイルばね42の弾性力により、軸部材31は回転操作方向における原位置に復帰する。このように、簡単な構成により、ノブ22をその回転操作方向における原位置へ復帰させることができる。
【0131】
(10)ハウジング21の意匠面21aにおけるノブ22の近傍には、ノブ22の回転操作方向を点灯表示する2つのインジケータ23a,24b、及びノブ22のスライド操作方向を点灯表示する2つのインジケータ24a,24bを設けた。これらインジケータ23a,24b、及びインジケータ24a,24bは、電子制御装置91による点灯制御を通じて、ノブ22の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみが点灯される。このため、ユーザは、ノブ22の操作可能方向を視覚的に認識することができる。そして、点灯していないインジケータにより示される方向へノブ22が無駄に操作されることを抑制することができる。
【0132】
(11)軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として、第1及び第2の当接壁54a,54bを設けた。そして、この回転角度範囲内において、ノブ22の回転操作位置が設定されてなる。このため、ノブ22の回転操作範囲を越える操作を簡単な構成により規制することができる。また、ノブ22の回しすぎが規制されることにより、ノブ22の操作性も確保される。
【0133】
(12)4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51b、ソレノイド機構72、第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82c、及び電子制御装置91はすべてハウジング21の内部に配設することによりシフト装置11を単一のユニットとし、当該ユニットをインストルメントパネル10の収容部10aに装着するようにした。このように、シフト装置11がユニット化されることにより、その配設対象の外での組み立てが可能となる。そして、外部で予め組み立てられたユニットを配設対象の取付け部位(ここでは、インストルメントパネル10の収容部10a)に装着するだけで、シフト装置11の配設対象に対する取付けは完了となる。このため、シフト装置11の組み立て作業時において、シフト装置11の構成部品を配設対象に個々に組み付けていくようにした場合と異なり、シフト装置11の配設対象に対する取付け作業が簡単になる。なお、これは、シフト装置11の組み立て作業時において、シフト装置11の構成部品を配設対象であるインストルメントパネル10に個々に組み付けていくことを除外するものではない。このような組み立て方法を採用することも可能である。
【0134】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ノブ22の回転操作を規制する回転規制手段の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0135】
図14に示すように、ハウジング21の係止部材収容部65の内部において、軸部材31には円環板状の係止部材101が摺動回転可能に挿通されている。係止部材101の内周面における矢印X側の部位には、当該係止部材101の周方向へ延びる規制切欠102が形成されている。この規制切欠102の係止部材101の周方向における長さは、図7に示される前述した第1及び第2の当接壁54a,54bと第1の嵌合突部52aとの係合関係に基づき決定される軸部材31の回転操作範囲に対応して設定されている。また、図14に示されるように、規制切欠102は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持されているとき、水平方向へ延びる中心軸Onが当該規制切欠102の延びる方向における中心を通るように形成されている。
【0136】
規制切欠102の内部には軸部材31の外周面に形成された規制突部103が位置している。規制突部103は、ノブ22の回転操作位置が中立位置「N」に保持されているとき、水平方向へ延びる中心軸On上に位置するように形成されている。このとき、ノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」、又は中立位置から前進位置「D」への回転操作に伴う軸部材31の回転は、規制突部103が規制切欠102の内部を変位することにより許容される。通常、係止部材101は、ノブ22の回転操作に伴う軸部材31の回転を許容する回転許容位置に保持される。
【0137】
また、係止部材101は、前記中心軸On上に保持された規制突部103が規制切欠102の上側の内側面102aに係合する左回転規制位置と、同じく規制突部103が規制切欠102の下側の内側面102bに係合する右回転規制位置との間を回転変位する。係止部材101が左回転規制位置に保持されている場合には、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から前進位置「D」への回転操作が規制される。係止部材101が右回転規制位置に保持されている場合には、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」への回転操作が規制される。なお、図14においては、係止部材101が右回転規制位置及び左回転規制位置にあるときの内側面102a,102bの位置を二点鎖線で示す。
【0138】
また、係止部材101の外周面において、規制切欠102の右回転側には係合切欠104が所定間隔をおいて形成されている。この係合切欠104は、規制切欠102の内側面102bが規制突部103に係合する右回転規制位置に係止部材101があるときに、係止部材収容部65の内底面に形成された係合突部105に対応するように配設されている。係合突部105は係合切欠104に係合可能とされるとともに、軸部材31の軸方向から見たときに、前記中心軸Op上に位置するように設けられている。
【0139】
また、係止部材101の外周面において、規制切欠102と反対側の部位には、多数の歯106が所定角度範囲にわたって形成されている。歯106は、その歯すじが係止部材101の回転中心軸(ノブ22の回転中心軸Oと一致)に対してつる巻き状に斜めになるように形成されている。これら歯106には、モータ107の出力軸107aの回転に伴い前記中心軸Opに平行な軸を中心として回転するウォーム108が噛合している。すなわち、係止部材101(正確には、歯106の形成部位)とウォーム108とによりウォーム機構が構成されている。したがって、モータ107の回転力は、ウォーム108を通じて係止部材101の回転力に変換される。モータ107が正回転したときには係止部材101は右回転し、モータ107が逆回転したときには係止部材101は左回転する。
【0140】
なお、前述した係止部材101、モータ107及びウォーム108は、図示しない支持機構を介して矢印X,Y方向へ一体的に変位可能とされている。
さて、車両の前進時において、電子制御装置91は、当該車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断した場合には、モータ107を逆回転させることにより、係止部材101を前述した右回転規制位置へ回転変位させる。規制切欠102の内側面102bが規制突部103に係合することにより、軸部材31の右回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から後進位置「R」への回転操作が規制される。
【0141】
また、車両の後進時において、電子制御装置91は、当該車両の走行速度が所定の速度判定閾値に達した旨判断した場合には、モータ107を正回転させることにより、係止部材101を前述した左回転規制位置へ回転変位させる。規制切欠102の内側面102aが規制突部103に係合することにより、軸部材31の左回転、すなわちノブ22の中立位置「N」から前進位置「D」への回転操作が規制される。
【0142】
したがって、本実施の形態によれば、モータ107の作動を通じて、軸部材31の回転が好適に規制される。このため、前記第1の実施の形態と同様に、ユーザの意図しない変速操作を抑制することができる。
【0143】
なお、本実施の形態は、次のように変更することも可能である。すなわち、歯106の歯すじは、ノブ22の回転中心軸Oと同じ方向へ延びるように形成されている。そして、図15に示すように、各歯106にはモータ107の駆動に伴いノブ22の回転中心軸Oに平行な軸を中心として回転する平歯車109が噛合している。したがって、モータ107の回転力は、平歯車109を通じて係止部材101の回転力に変換される。そして、モータ107が正回転したときには係止部材101は右回転して前記左回転規制位置に至る。また、モータ107が逆回転したときには係止部材101は左回転して前記右回転規制位置に至る。このようにしても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0144】
また、本実施の形態において、係止部材101を回転させる回転アクチュエータとして、モータ107以外にも、例えば3つの回転位置を取るロータリソレノイドを採用することも可能である。
【0145】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図13に示されるシフト装置と同様の構成とされており、ノブ22のスライド操作方向への操作力が解除された際に、当該ノブ22をスライド操作方向における原位置へ復帰させる復帰手段の構成の点で前記第1の実施の形態と異なる。したがって、前記第1の実施の形態と同一の部材構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、本実施の形態は、前記第2の実施の形態に適用することも可能である。
【0146】
図16(a)に示すように、軸部材31の内端面には、ばね収容穴111が形成されている。このばね収容穴111には、圧縮コイルばね112を介して円柱状の摺動部材113が抜け止め状態で収容されている。摺動部材113の先端部は球面状に形成されるとともに、軸部材31の内端面から突出している。摺動部材113は、圧縮コイルばね112の弾性力に抗して、ばね収容穴111の内方へ変位可能に設けられている。
【0147】
一方、ハウジング21の内面、正確には挿通穴32の内底面において、軸部材31の先端面に対向する部位には、矢印X,Yで示されるノブ22の2つのスライド操作方向へ延びる第1及び第2の案内溝114,115が形成されている。図16(b)に示されるように、これら第1及び第2の案内溝114,115はそれぞれの一端部において重なるように形成されている。そして、図16(c)に示されるように、矢印Xで示される方向へ延びる第1の案内溝114の内底面には、同じく矢印X方向へ向かうにつれてハウジング21の内方(軸部材31の先端面に近接する方向)へ傾斜する斜面114aが形成されている。同様に、矢印Yで示される方向へ延びる第2の案内溝115の内底面は、同じく矢印Y方向へ向かうにつれてハウジング21の内方(軸部材31の先端面に近接する方向)へ傾斜する斜面115aが形成されている。
【0148】
図16(c)に示されるように、ノブ22に対して矢印X,Y方向への操作力が付与されていない状態において、摺動部材113の球面状の先端部は、第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に係合する。このとき、摺動部材113の先端部は圧縮コイルばね112の弾性力により第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に押し付けられた状態に保持されている。この状態で、ノブ22に矢印X方向への操作力が付与されると、図16(c)に二点鎖線で示されるように、摺動部材113は圧縮コイルばね112の弾性力に抗してばね収容穴111に対する没入方向へ変位しながら、斜面114aを登るように摺動する。そして、ノブ22に対する矢印X方向への操作力が解除されたときには、摺動部材113は圧縮コイルばね112の弾性力によりばね収容穴111に対する突出方向へ付勢されつつ斜面114aを下るように摺動し、第1及び第2の案内溝114,115の重なる部位に至る。ノブ22に対して矢印Y方向への操作力が付与された場合も同様である。
【0149】
したがって、本実施の形態による場合であれ、ノブ22に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、当該スライド方向における原位置へ復帰させることができる。そしてこの場合には、第1の実施形態における復帰機構40を構成する圧縮コイルばね45,47並びに外側スライド部材44及び内側スライド部材46は省略可能となる。軸部材31の回転復帰は前記第1の実施形態と同様に捻りコイルばね42により行うことから、ばね受け突部48に相当する構成をハウジング21の内部に設ける。
【0150】
なお、図16(d)に示されるように、斜面114a,115aは、摺動部材113の先端部が案内される方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に直交する仮想平面での断面形状が軸部材31の先端部に対する離間方向に凸となる曲面として形成することも可能である。この場合には、摺動部材113の先端部はより安定して案内される。
【0151】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には先の図1〜図13に示されるシフト装置と同様の構成とされており、ノブの各回転操作位置を磁気センサにより検出するようにした点で前記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態では、軸部材31の長溝81は省略される。また、本実施の形態は、前記第2及び第3の実施の形態に適用することも可能である。
【0152】
図17(a)に示すように、軸部材31の先端面(ノブ22と反対側の端面)における外周寄りの部位には、磁石121が固定されている。一方、ハウジング21の内部、正確には挿通穴32の内底面には、軸部材31の先端面に対向するように基板122が配設されている。この基板122の軸部材31側の側面には3つのホールセンサ123r,123n,123dが設けられている。図17(b)に示されるように、これらホールセンサ123r,123n,123dは、軸部材31の回転に伴う磁石121の移動軌跡に対応するとともに、ノブ22が後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」に回転操作されたときに磁石121に対向するように配設されている。これらホールセンサ123r,123n,123dは、ホール素子及びその信号処理回路が単一のICチップとして集積回路化されたものであり、磁界強度に応じた検出信号を出力する。そして、ホールセンサ123r,123n,123dは、自身に対向する磁石121から生じる磁界を検出してノブ22の回転操作位置を示す検出信号として電子制御装置91へ出力する。
【0153】
図17(c)に示されるように、軸部材31の矢印X,Y側には、2つのマイクロスイッチ124a,124bが対向して配設されている。ノブ22が矢印X方向へスライド操作されたときには、当該矢印X側に配設されたマイクロスイッチ124aが軸部材31の外周面により押圧されることによりオン動作する。また、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、当該矢印Y側に配設されたマイクロスイッチ124bが軸部材31の外周面により押圧されることによりオン動作する。すなわち、ノブ22の矢印X方向及び矢印Y方向へのスライド操作は、2つのマイクロスイッチ124a,124bにより検出される。
【0154】
電子制御装置91は、各ホールセンサ123r,123n,123dからの検出信号及び両マイクロスイッチ124a,124bからの検出信号に基づき、ノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを自動変速機93へ出力する。したがって、本実施の形態によれば、ノブ22の回転操作位置を各ホールセンサ123r,123n,123dにより非接触で検出するようにしたことにより、繰り返しの検出による劣化等がなく、ノブ22の回転操作位置の検出信頼性が高められる。なお、ホールセンサ123r,123n,123dは、それぞれMRセンサに置換することも可能である。MRセンサは、磁気抵抗効果素子及びその信号処理回路が単一のICチップとして集積回路化されたものであり、磁界方向に応じた検出信号を出力する。
【0155】
また、ノブ22の回転操作位置は、次のようにして求めることも可能である。すなわち、軸部材31の先端面には、例えば図示しない円板状の磁石を設けるとともに、当該磁石に対向するように図示しない単一のMRセンサを配設する。このMRセンサは軸部材31の回転に伴う磁石から発せられる磁束方向の変化に応じた検出信号を出力する。このため、電子制御装置91はMRセンサからの検出信号に基づきノブ22の回転角度、すなわち回転操作位置を検出することができる。ノブ22のスライド操作については、前述と同様に、マイクロスイッチ124a,124bにより検出する。
【0156】
さらに、本実施の形態において、ノブ22のスライド操作を前述したホールセンサ及びMRセンサ等の磁気センサを使用して検出することも可能である。この場合には、図17(c)に示されるマイクロスイッチ124a,124bを磁気センサに置き換える。すなわち、図17(d)に示されるように、軸部材31の矢印X,Y側には2つの磁気センサ125a,125bが対向して配設されている。また、軸部材31の外周面において、磁気センサ125a,125bに対応する部位には、周方向において多極着磁された環状の磁石126が外嵌されている。磁気センサ125a,125bはノブ22の矢印X,Y方向へのスライド操作に伴い磁石126が近接したときに、オン信号を出力する。電子制御装置91は磁気センサ125a,125bからのオン信号に基づきノブ22がスライド操作された旨検出し、このスライド操作されたときのノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを生成して自動変速機93へ出力する。このように、ノブ22のスライド操作をも磁気センサ125a,125bにより非接触で検出するようにしたことにより、スライド操作の繰り返しの検出による劣化等がなく、ノブ22のスライド操作の検出信頼性が高められる。なお、本実施の形態では、環状の磁石126を使用したが、ノブ22が各回転操作位置に回転操作された際に磁気センサ125a,125bに対向すればよく、その形状は適宜変更してもよい。
【0157】
加えて、本実施の形態は、次のような構成を採用することも可能である。すなわち、図17(e)に示すように、基板122の軸部材31側の側面に設けられる3つのホールセンサ123r,123n,123dは、ノブ22(軸部材31)が後進位置「R」、中立位置「N」及び前進位置「D」に回転操作された状態で、矢印X方向又は矢印Y方向へスライド操作されたときに磁石121に対向するように配設されている。そして、ホールセンサ123r,123n,123dは自身に対向する磁石121から生じる磁界を検出し、この磁界検出信号をノブ22がどの回転操作位置に保持された状態でスライド操作がなされたのかを示す検出信号として電子制御装置91へ出力する。電子制御装置91は、各ホールセンサ123r,123n,123dからの検出信号に基づき、ノブ22の回転操作位置に対応する変速位置に切り替えるための変速制御信号Scを自動変速機93へ出力する。
【0158】
この構成によれば、ノブ22がどの回転操作位置でスライド操作されたのかを3つのホールセンサ123r,123n,123dのみで非接触で検出することができる。したがって、図17(a),(b),(d)に示されるように、ノブ22の回転操作位置の検出用及びスライド操作の検出用の2つの目的毎に磁気センサを設けるようにした場合と異なり、必要とされる磁気センサの個数を低減させることができる。
【0159】
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
・各実施の形態では、ノブ22の回転操作位置として手動操作位置「B」を設定するようにしたが、これを省略することも可能である。また、手動操作位置「B」に割り当てられた車両機能をパドルスイッチ及びステアリングスイッチ等の他のスイッチにより操作するようにしてもよい。
【0160】
・また、手動操作位置「B」に、自動変速機93の変速位置を手動で切り替えるいわゆるシーケンシャルシフト機能を割り当てるようにしてもよい。この場合、ノブ22は、矢印Y方向へのスライド操作に加え、反矢印Y方向へのスライド操作も許容されるように構成する。そして、例えばノブ22が前進位置「D」に切り替えられている状態で、ノブ22が矢印Y方向(下方)へスライド操作されたときにはシフトダウン、またノブ22が反矢印Y方向(上方)へスライド操作されたときにはシフトアップするように構成する。
【0161】
・さらに、手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動を確定させる操作として矢印Y方向へのスライド操作がなされた後に、もう一度矢印Y方向へのスライド操作がなされたときには、当該手動操作位置「B」に対応する車両機能の作動が解除されるように構成してもよい。例えば本実施の形態では、前記車両機能として回生ブレーキがかかった状態で、ノブ22が矢印Y方向へスライド操作されたときには、自動変速機93は前進位置「D」に対応する変速位置へ切り替えられる。このようにすれば、手動操作位置「B」に対応する車両機能を作動させた状態から、例えば前進位置「D」に対応する変速位置への切り替えを行う作業が簡単になる。
【0162】
すなわち、本実施の形態において、シフト装置11は、いわゆるモーメンタリ型(自動復帰型)のノブ22を備える構成とされている。このため、ノブ22への操作力が解除された際には、ノブ22は、スライド操作方向及び回転操作方向における原位置へ自動復帰する。したがって、回生ブレーキの作動を解除して自動変速機93の変速位置を前進位置「D」に対応する位置に切り替える際には、ノブ22を回転操作して、さらに矢印X方向へスライド操作する必要がある。前述した変形例によれば、矢印Y方向へのスライド操作を行うだけでよい。
【0163】
・各実施の形態において、ノブ22に押しボタンを組み込み、当該押しボタンに特定の車載機器の作動機能を持たせるようにしてもよい。例えば、押圧操作により車両の駆動源を始動させる始動スイッチをノブ22に組み込むことも可能である。また、自動変速機93の変速位置を駐車位置に切り替えるパーキングスイッチをノブ22に組み込むようにしてもよい。このようにすれば、各種スイッチの統合化が図られ、各種スイッチの設置スペースが節約される。
【0164】
・各実施の形態では、ノブ22のスライド操作方向への操作力が解除された際に、当該ノブ22を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させる復帰機構40を1組だけ設けるようにしたが、複数組の復帰機構40を設けるようにしてもよい。この場合、複数組の復帰機構40は、軸部材31の延びる方向において所定間隔をおいて配設する。このようにすれば、軸部材31が複数箇所においてスライド操作方向と反対側へ付勢されることから、軸部材31をそのスライド操作方向における原位置へ安定して復帰させることができる。また、軸部材31を挿通穴32の内部においてより安定して支持することもできる。
【0165】
・各実施の形態では、軸部材31の外周面には、ノブ22の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段として、第1及び第2の当接壁54a,54bを設けるようにしたが、これらを省略することも可能である。
【0166】
・各実施の形態においては、ノブ22の回転操作方向を示すインジケータ23a,23b及び同じくスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bを設けたが、これらを省略してもよい。
【0167】
・各実施の形態においては、ノブ22の回転操作方向を示すインジケータ23a,23b及び同じくスライド操作方向を示すインジケータ24a,24bについて、ノブ22の回転操作位置等に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯するようにしたが、このような表示制御を行わないようにすることも可能である。
【0168】
・各実施の形態では、ノブ22は互いに直交する2つの方向へスライド操作可能としたが、必ずしも直交される必要はない。2つのスライド操作方向がノブ22の回転中心軸に直交し、且つ2つのスライド操作方向が互いに異なる方向であればスライド操作方向を適宜変更して設けることも可能である。
【0169】
・各実施の形態において、復帰機構40、4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51b、係止部材66、並びに第1〜第3のマイクロスイッチ82a〜82cの軸部材31の軸方向における配設位置は適宜変更することも可能である。この際、第1及び第2の嵌合突部52a,52b、ソレノイド機構72、並びに長溝81の配設位置も対応して変更する。
【0170】
・各実施の形態では、単一の軸部材31にすべての構成を設けたが、軸部材31をその軸方向において複数の分割体に分割し、これら分割体を組み合わせることにより一の軸部材31を構成することも可能である。例えば図18(a),(b)に示されるように、軸部材31を4つの嵌合凹部51r,51n,51d,51bが形成された部位を境として、ノブ22が連結される第1の分割体131、及び各嵌合凹部51r,51n,51d,51b等が形成される第2の分割体132に分割し、これら第1及び第2の分割体131,132を連結することにより単一の軸部材31とする。第1の分割体131の先端部には、円柱状の小径部133aと、当該小径部133aの外周面に形成された複数の突条133bとからなる嵌合部133が設けられている。突条133bは小径部133aの外周面において、その周方向に所定の間隔をおいて、且つ軸方向へ延びるように形成されている。また、第2の分割体132において、第1の分割体131に対する連結側の側面には、嵌合部133の外形形状に対応する嵌合凹部134が形成されている。そして、嵌合部133を嵌合凹部134に嵌合することにより、第1及び第2の分割体131,132は連結される。ノブ22の回転操作力は、第1の分割体131の突条133bを介して第2の分割体132に伝達される。このため、第1及び第2の分割体131,132は一体的に回転する。なお、嵌合部133を第2の分割体132側に、嵌合凹部134を第1の分割体131側に形成してもよい。また、軸部材31は、3つ、4つ又はそれ以上に分割することも可能である。
【0171】
・各実施の形態では、四角枠状の係止部材66に軸部材31を挿通し、これらの係合関係に基づき軸部材31の回転を規制するようにしたが、次のようにしてもよい。例えば図19に示すように、係止部材66を、第1の係止片67及び切欠69を有してなる第1の係止部材66a、並びに第2の係止片68を有してなる第2の係止部材66bに分割する。そして、第1の係止部材66aの矢印X側の側面には第1のソレノイド機構73aのプランジャを、また第2の係止部材66bの矢印Xと反対側の側面には第2のソレノイド機構73bのプランジャを連結する。そして、軸部材31の左回転を規制する際には、第1のソレノイド機構73aの作動を通じて、第1の係止部材66aの第1の係止片67を軸部材31の第1の係合凹部61に外方から係合させる。また、軸部材31の右回転を規制する際には、第2のソレノイド機構73bの作動を通じて、第2の係止部材66bの第2の係止片68を軸部材31の第2の係合凹部62に外方から係合させる。このように、係止部材を軸部材31の外方から係合させるようにした場合であれ、軸部材31の回転を規制することができる。なお、第1及び第2のソレノイド機構73a,73bのプランジャは、突出位置及び引込位置の2位置をとる。
【0172】
・各実施の形態では、軸部材31、ひいてはノブ22の回転操作を規制する回転規制手段として係止部材66を設けたが、これを省略して構成することも可能である。このようにした場合であれ、自動変速機93の変速位置を切り替える際には、ノブ22の回転操作及び側方へのスライド操作の2つの異なる方向への操作が必要であることから、ユーザの意図しない変速操作(シフト装置11の誤操作)を好適に抑制することができる。なお、この場合には、ソレノイド機構72、並びに第1及び第2の係合凹部61,62、並びに2つの凹部63a,63bは省略可能となる。
【0173】
・各実施の形態では、エンジン及びモータを走行用の駆動源とするハイブリッド車両にシフト装置11を適用したが、エンジンのみを走行用の駆動源とする車両又はモータのみを走行用の駆動源とする電気自動車等に適用することも可能である。
【0174】
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)請求項3に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記軸部材に対してその回転中心軸に交わる直線方向において相対的に変位可能に設け、前記駆動手段として、前記制御手段からの作動制御信号に基づき励磁されるソレノイドと、前記係止部材に連結されて前記ソレノイドの励磁状態に基づき当該係止部材の変位方向において進退移動するプランジャとを備えてなる直動アクチュエータを採用したシフト装置。
【0175】
この構成によれば、ソレノイドへの通電制御を行うだけでよいので、シフト操作部材の回転を規制するに際して複雑な演算を行う必要がない。したがって、制御手段の演算負荷が抑制される。
【0176】
(ロ)請求項3に記載のシフト装置において、前記係止部材は、前記軸部材に対してその回転中心軸を中心として相対的に回転可能に設け、前記駆動手段として、前記制御手段からの作動制御信号に基づき回転する出力軸と、当該出力軸の回転力を前記係止部材の回転力に変換して伝達する伝達機構とを備えてなる回転アクチュエータを採用したシフト装置。
【0177】
この構成によれば、回転アクチュエータの作動を通じて、シフト操作部材の回転を好適に規制することができる。
(ハ)請求項2、請求項3、前記(イ)項及び前記(ロ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記係止部材には前記シフト操作部材が挿通されるとともに、当該係止部材が前記回転規制位置にあるときには当該係止部材の内周面の一部が前記シフト操作部材の一部に係合することにより軸部材の回転が規制されるシフト装置。
【0178】
この構成によれば、係止部材はシフト操作部材が挿通されてなることから、係止部材をシフト操作部材の外方から係合させるようにした場合と異なり、当該シフト操作部材の径方向における大型化が抑制される。
【0179】
(ニ)請求項1〜請求項8及び前記(イ)〜(ハ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記シフト操作部材の内端面には磁石を設け、前記検出手段は、前記ハウジングの内部において前記磁石の移動軌跡に、且つシフト操作部材の各回転操作位置に対応して配設されるとともに、前記シフト操作部材の回転に伴う前記磁石から発せられる磁界の変化に応じた検出信号を出力する複数の磁気センサを含むシフト装置。
【0180】
この構成によれば、少なくともシフト操作部材の回転操作位置が磁気センサを通じて非接触状態で検出される。このため、繰り返しの検出による劣化等がなく、シフト操作部材の少なくとも回転操作位置の検出信頼性が高められる。
【0181】
(ホ)請求項1〜請求項10及び前記(イ)〜(ニ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記ハウジングにおける前記軸部材の先端面に対向する部位には、前記シフト操作部材のスライド操作方向へ延びるとともに、当該スライド操作方向へ向かうにつれて前記軸部材の先端面に近接する方向へ傾斜する斜面を有してなる案内溝を形成し、前記スライド復帰手段は、前記軸部材の先端面に対して突出する方向及び没入する方向へ変位可能に設けられるとともに前記シフト操作部材のスライド操作に伴い前記案内溝に係合した状態で案内される被案内部材と、当該被案内部材を前記軸部材の先端面から突出する方向へ常時付勢するばね部材と、を備えてなるシフト装置。
【0182】
この構成によれば、シフト操作部材にスライド操作方向への操作力が付与されると、被案内部材はばね部材の弾性力に抗してシフト操作部材の先端面に対する没入方向へ変位しながら、斜面を登るように摺動する。そして、シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、被案内部材は、ばね部材の弾性力によりシフト操作部材の先端面に対する突出方向へ付勢されつつ斜面を下るように摺動して、原位置に至る。すなわち、シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときには、当該スライド方向における原位置へ復帰させることができる。
【0183】
(ヘ)請求項1〜請求項10及び前記(イ)〜(ホ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド復帰手段は、前記ハウジングの内部において前記軸部材に対して相対的に回転可能に挿通されるとともに前記軸部材と一体的に側方への変位が許容されたスライド部材と、前記スライド部材の外側面と前記ハウジングの内側面との間に配設されて前記スライド部材を前記軸部材のスライド方向と反対側へ常時付勢する付勢部材とを備えてなるシフト装置。
【0184】
この構成によれば、付勢部材の付勢力により、シフト操作部材をそのスライド操作方向における原位置へ容易に復帰させることができる。また、付勢部材の付勢力は、スライド部材を介してシフト操作部材に作用させるようにしたことにより、付勢部材が回転するシフト操作部材に干渉する不具合が回避される。
【0185】
(ト)前記(ヘ)項に記載のシフト装置において、前記回転復帰手段は、前記軸部材に装着された捻りコイルばねであって、当該捻りコイルばねの両端部は互いに交差するように形成するとともに、これら両端部間には前記軸部材の外周面に設けられる係止突部及び前記スライド部材に設けられるばね受け突部を介在させるようにしたシフト装置。
【0186】
この構成によれば、シフト操作部材の回転に伴い係止突部が捻りコイルばねの一端部に係合する。このとき、捻りコイルばねの他端部は、ばね受け突部に当接することにより捻りコイルばねの回転が規制される。したがって、シフト操作部材の回転に伴い係止突部は捻りコイルばねの一端に係合した状態で当該シフト操作部材と同じ方向へ回転する。これにより、捻りコイルばねには当該シフト操作部材の回転操作方向と反対方向への付勢力が蓄えられる。当該シフト操作部材への回転操作力が解除された際には、捻りコイルばねの弾性力により、シフト操作部材は回転操作方向における原位置に復帰する。このように、簡単な構成により、シフト操作部材をその回転操作方向における原位置へ復帰させることができる。
【0187】
(チ)請求項1〜請求項8及び前記(イ)〜(ヘ)項のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、前記スライド規制手段及び前記検出手段及び前記制御手段を含むシフト装置の構成要素のすべてを前記ハウジングに組み付けることにより単一のユニットとして構成し、当該ユニットを前記取り付け対象に設けられる取り付け部位に装着するようにしたシフト装置。
【0188】
この構成によれば、シフト装置がユニット化されることにより、その配設対象の外での組み立てが可能となる。そして、外部で予め組み立てられたユニットを配設対象の取付け部位に装着するだけで、シフト装置の配設対象に対する取付けは完了となる。このため、シフト装置の組み立て作業時において、シフト装置の構成部品を配設対象に個々に組み付けていくようにした場合に比べて、シフト装置の配設対象に対する取付け作業が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】第1の実施の形態において、シフト装置の配設態様を示す車室内の概略斜視図。
【図2】同じくシフト装置の取り付けの態様を示す斜視図。
【図3】同じくノブの操作位置を示す正面図。
【図4】(a)は、同じくノブ及び軸部材のハウジングに対する取り付けの態様を示す分解斜視図、(b)は、軸部材とハウジングの挿通穴との隙間を示す図5(a)の1−1線断面図。
【図5】同じくシフト装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図6】(a)は、同じく図5の2−2線断面図、(b)は、図6(a)の8−8線断面図。
【図7】同じく図5の3−3線断面図。
【図8】同じく係止部材の回転許容位置を示す図5の4−4線断面図。
【図9】同じく係止部材の左回転規制位置を示す図5の4−4線断面図。
【図10】同じく係止部材の右回転規制位置を示す図5の4−4線断面図。
【図11】(a),(b),(c)は、同じく図5の5−5線断面図。
【図12】同じくシフト装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図13】(a)は、同じく自動変速機が中立状態にある場合の各種インジケータの点灯状態を示す正面図、(b),(c)は、同じく車両の後進時における各種インジケータの点灯状態を示す正面図、(d),(e)は、同じく車両の前進時における各種インジケータの点灯状態を示す正面図。
【図14】第2の実施の形態における係止部材を示す図5の4−4線断面図。
【図15】第2の実施の形態の変形例を示す図5の4−4線断面図。
【図16】(a)は、第3の実施の形態における軸部材の先端部の構成を示す分解斜視図、(b)は、軸部材の先端部に設けられた摺動部材が摺動可能に係合する第1及び第2の案内溝が形成された基板の正面図、(c)は、軸部材の先端部の摺動部材と第1及び第2の案内溝との係合状態を示す図16(b)の6−6線断面図、(d)は、図16(b)の7−7線断面図。
【図17】(a)は、第4の実施の形態における軸部材の先端部の構成を示す斜視図、(b)は、同じく軸部材の磁石の回転軌跡に対応して設けられる磁気センサの配設態様を示す基板の正面図、(c)は、同じくノブのスライド操作を検出するマイクロスイッチの配設態様を示す断面図、(d)は、第4の実施の形態の変形例における磁石及び磁気センサの配設態様を示す断面図、(e)は、同じく磁気センサの他の配設態様を示す基板の正面図。
【図18】(a)は、他の実施の形態における軸部材を分割した状態を示す要部斜視図、(b)は分割体の連結部における横断面図。
【図19】他の実施の形態における係止部材を示す図5の4−4線断面図。
【符号の説明】
【0190】
10…インストルメントパネル(取り付け対象)、11…シフト装置、21…ハウジング、22…シフト操作部材を構成するノブ、23a,23b,24a,24b…インジケータ、31…シフト操作部材を構成する軸部材、41b…係止突部、48…ばね受け突部、42…回転復帰手段を構成する捻りコイルばね、42a,42b…捻りコイルばねの端部、44…外側スライド部材、45,47…スライド復帰手段を構成する圧縮コイルばね(付勢部材)、46…スライド復帰手段を構成する内側スライド部材(スライド部材)、51r,51n,51d,51b…嵌合凹部(スライド規制手段)、52a,52b…第1及び第2の嵌合突部(嵌合部材)、54a,54b…ストッパ手段を構成する第1及び第2の当接壁、66…回転規制手段を構成する係止部材、72…ソレノイド機構(直動アクチュエータ)、73…ソレノイド(駆動手段)、81…長溝(溝)、82a,82b,82c…検出手段を構成する第1〜第3のマイクロスイッチ、91…電子制御装置(制御手段)、92…車速センサ(状態検出手段)、93…自動変速機、107…モータ(回転アクチュエータ)、107a…出力軸、108…伝達機構を構成するウォーム、112…スライド復帰手段を構成する圧縮コイルばね、113…スライド復帰手段を構成する摺動部材(被案内部材)、114,115…第1及び第2の案内溝、114a,115a…斜面、121,126…磁石、124a,124b…検出手段を構成するマイクロスイッチ、123r,123n,123d…検出手段及び磁気センサを構成するホールセンサ、125a,125b…検出手段を構成する磁気センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動変速機の変速位置を切り替え操作するバイワイヤ方式のシフト装置において、
車両側の取り付け対象に固定されるハウジングの外部に一部が露出するとともに当該ハウジングに対して回転操作可能かつ自身の回転中心軸に対し交わる方向である側方へスライド操作可能に設けられた軸状のシフト操作部材と、
前記シフト操作部材と前記ハウジングとの間に設けられて当該シフト操作部材が前記自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該シフト操作部材の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段と、
前記シフト操作部材が特定の回転操作位置へ回転操作された状態で側方へスライド操作されたことを検出しその検出信号を出力する検出手段と、
前記シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段と、
前記シフト操作部材に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段と、
前記検出手段からの検出信号に基づき当該特定の回転操作位置に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号を生成して前記自動変速機へ出力する制御手段と、を備えてなるシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記制御手段からの作動制御信号に基づく駆動手段の作動を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の回転操作を規制する回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の回転操作を許容する回転許容位置との間を変位する係止部材を備えてなる回転規制手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態を車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出したとき、前記係止部材を回転許容位置から回転規制位置へ変位させるべく前記作動制御信号を前記回転規制手段へ出力するシフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフト装置において、
前記係止部材は、前記作動制御信号に基づく駆動手段の動作を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の正方向への回転操作を規制する第1の回転規制位置と、前記シフト操作部材の他の一部に係合して当該シフト操作部材の逆方向への回転操作を規制する第2の回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の正逆方向への回転操作を許容する回転許容位置との間を変位するシフト装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の回転操作位置として、前記自動変速機の3つの変速位置に対応する前進位置及び中立位置及び後進位置、並びに車両の前進中に作動される特定の車両機能に対応する手動操作位置を設定するとともに、当該中立位置を前記シフト操作部材の回転操作方向における原位置とし、
前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置が前記中立位置に保持されているときにのみ、前記手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる操作として当該シフト操作部材の前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作方向とは異なる他の方向へのスライド操作を許容し、
前記制御手段は、前記シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた旨示す前記検出手段からの検出信号が入力された後に、前記他の側方へスライド操作された旨示す前記検出手段からの検出信号に基づき、前記手動操作位置に対応する車両機能を作動させるシフト装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の外周面にその周方向に所定間隔をおいて形成されるとともに前記ハウジングの内部に突出して設けられる嵌合部材に嵌合可能とされた、前記シフト操作部材の回転操作位置と同数の嵌合凹部を含み、
各嵌合凹部は、前記シフト操作部材が各回転操作位置にあるときにのみ前記嵌合部材に対して嵌合可能に対応するように設けたシフト装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材にはその周方向へ延びる溝を形成し、また、前記検出手段は前記シフト操作部材の溝の回転軌跡に対応して配設される複数個のマイクロスイッチを備えるとともに、各マイクロスイッチは、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じて、前記シフト操作部材の外周面に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されてオンする状態、及び前記シフト操作部材の溝に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されることなくオフに保たれる状態の2つの状態をとるように配設し、
前記制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断するシフト装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の近傍に配設されて前記シフト操作部材の回転操作方向及びスライド操作方向を示すとともに前記制御手段により点灯制御される複数のインジケータを備え、
前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯制御するシフト装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の外周面には、前記ハウジングの一部に係合することにより前記シフト操作部材の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段を設け、当該シフト操作部材の各回転操作位置は、前記回転角度範囲内において設定されてなるシフト装置。
【請求項1】
車両の自動変速機の変速位置を切り替え操作するバイワイヤ方式のシフト装置において、
車両側の取り付け対象に固定されるハウジングの外部に一部が露出するとともに当該ハウジングに対して回転操作可能かつ自身の回転中心軸に対し交わる方向である側方へスライド操作可能に設けられた軸状のシフト操作部材と、
前記シフト操作部材と前記ハウジングとの間に設けられて当該シフト操作部材が前記自動変速機の変速位置に対応して設定される複数の回転操作位置のうちいずれか一へ回転操作されたときにのみ、当該一の回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定させる操作として当該シフト操作部材の側方へのスライド操作を許容するスライド規制手段と、
前記シフト操作部材が特定の回転操作位置へ回転操作された状態で側方へスライド操作されたことを検出しその検出信号を出力する検出手段と、
前記シフト操作部材に対するスライド操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該スライド操作方向における原位置へ復帰させるスライド復帰手段と、
前記シフト操作部材に対する回転操作方向への操作力が解除されたときに当該シフト操作部材を当該回転操作方向における原位置へ復帰させる回転復帰手段と、
前記検出手段からの検出信号に基づき当該特定の回転操作位置に対応する変速位置へ切り替えるための変速制御信号を生成して前記自動変速機へ出力する制御手段と、を備えてなるシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記制御手段からの作動制御信号に基づく駆動手段の作動を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の回転操作を規制する回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の回転操作を許容する回転許容位置との間を変位する係止部材を備えてなる回転規制手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作を規制するべきであるとして定められた車両状態を車両側に設けられる状態検出手段を通じて検出したとき、前記係止部材を回転許容位置から回転規制位置へ変位させるべく前記作動制御信号を前記回転規制手段へ出力するシフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフト装置において、
前記係止部材は、前記作動制御信号に基づく駆動手段の動作を通じて、前記シフト操作部材の一部に係合して当該シフト操作部材の正方向への回転操作を規制する第1の回転規制位置と、前記シフト操作部材の他の一部に係合して当該シフト操作部材の逆方向への回転操作を規制する第2の回転規制位置と、前記シフト操作部材に対する係合が解除されて当該シフト操作部材の正逆方向への回転操作を許容する回転許容位置との間を変位するシフト装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の回転操作位置として、前記自動変速機の3つの変速位置に対応する前進位置及び中立位置及び後進位置、並びに車両の前進中に作動される特定の車両機能に対応する手動操作位置を設定するとともに、当該中立位置を前記シフト操作部材の回転操作方向における原位置とし、
前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置が前記中立位置に保持されているときにのみ、前記手動操作位置に対応する特定の車両機能の作動を確定させる操作として当該シフト操作部材の前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作方向とは異なる他の方向へのスライド操作を許容し、
前記制御手段は、前記シフト操作部材が前進位置へ回転操作された状態で当該前進位置に対応する変速位置への切り替えを確定させるスライド操作が行われた旨示す前記検出手段からの検出信号が入力された後に、前記他の側方へスライド操作された旨示す前記検出手段からの検出信号に基づき、前記手動操作位置に対応する車両機能を作動させるシフト装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記スライド規制手段は、前記シフト操作部材の外周面にその周方向に所定間隔をおいて形成されるとともに前記ハウジングの内部に突出して設けられる嵌合部材に嵌合可能とされた、前記シフト操作部材の回転操作位置と同数の嵌合凹部を含み、
各嵌合凹部は、前記シフト操作部材が各回転操作位置にあるときにのみ前記嵌合部材に対して嵌合可能に対応するように設けたシフト装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材にはその周方向へ延びる溝を形成し、また、前記検出手段は前記シフト操作部材の溝の回転軌跡に対応して配設される複数個のマイクロスイッチを備えるとともに、各マイクロスイッチは、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じて、前記シフト操作部材の外周面に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されてオンする状態、及び前記シフト操作部材の溝に対応して前記シフト操作部材がスライド操作されたときに前記シフト操作部材の外周面に押圧されることなくオフに保たれる状態の2つの状態をとるように配設し、
前記制御手段は、各マイクロスイッチから入力されるオン信号及びオフ信号の組み合わせに基づき、シフト操作部材が各回転操作位置のいずれの状態で当該回転操作位置に対応する変速位置への切り替えを確定する操作であるスライド操作が行われたのかを判断するシフト装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の近傍に配設されて前記シフト操作部材の回転操作方向及びスライド操作方向を示すとともに前記制御手段により点灯制御される複数のインジケータを備え、
前記制御手段は、前記シフト操作部材の回転操作位置に応じてその時々における操作可能な方向を示すインジケータのみを点灯制御するシフト装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
前記シフト操作部材の外周面には、前記ハウジングの一部に係合することにより前記シフト操作部材の回転操作範囲を定められた回転角度範囲に規制するストッパ手段を設け、当該シフト操作部材の各回転操作位置は、前記回転角度範囲内において設定されてなるシフト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−107559(P2009−107559A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284056(P2007−284056)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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