説明

シャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド

【課題】本発明は,直動案内ユニットを利用してシャフトをガタなく,高精度に直線案内し,支持体のスペースに光学式エンコーダを配設して軸方向の全長を小さく構成したシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドを提供する。
【解決手段】本発明の実装ヘッド1は,リング状に巻回され且つ中空の直線状に隣接して配列され本体部4,5に配設されたコイル27,27’を有するステータと,コイルの中空部に挿入されて直線運動に駆動されるシャフト2から構成されている。シャフト2は,軸方向にマグネット20が同極を突き合わせて固着されている。支持体15の開口側のスペース55には,光学式リニアスケール11がシャフト2の軸方向に固着され,光学式センサ10がステータの本体部5に固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体製造装置,組立装置などの各種の装置に組み込んで使用されるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,シャフト形リニアモータを備えた実装ヘッド(マウント)は,半導体製造装置,組立装置,測定装置等の各種の装置に組み込んで機器,部品等を往復移動させ取り付けるのに使用されるようになった。それに伴って,実装ヘッドは,コンパクトで高応答性等の各種の性能を持つように求められているのが現状である。
【0003】
ところで,図14に示すように,ボールスプライン形式の直動案内ユニット41は,スプライン軸であるシャフト2及びそれに跨架するスライダ機能を持つ支持体15から構成されている。機器,部材,部品,ベース,フレーム等の物体(図示せず)に固着された支持体15は,シャフト2に対して隙間がなく,ガタが発生することなく,シャフト2上を相対摺動し,高精度に直線案内できるものになっている。上記物体は,支持体15の取付け基準面50及び取付け基準側面51を基準として,支持体15に取付け用ねじ穴52にねじ(図示せず)をねじ込んで固定することによって,支持体15に簡単に装着することができ,高機能な実装ヘッドが構成される。シャフト2は,長手方向に通し孔14が形成され,その外面に対向した位置に一対の軌道溝16が形成されている。支持体15は,シャフト2を跨架するために凹部48が形成され,リターン路49及び軌道溝16に対向した軌道溝16Cが形成されたケーシング42,ケーシング42の両端面に固定された一対のエンドキャップ43,エンドキャップ43の端面に固定されたエンドシール44,及び軌道溝16と軌道溝16Cとの間の軌道路53を転走するボール45を有している。また,支持体15には,潤滑剤を供給するためのグリースニップル47が設けられ,ボール45を保持する保持バンド46が設けられている。
【0004】
従来,多軸リニアモータ及び該多軸リニアモータを利用する実装ヘッドが知られている。該実装ヘッドは,駆動シャフト用シャフトを備えており,駆動シャフト用シャフトと同軸にスプラインシャフトに並設し,軸受のさらに下方に一対の位置検出用センサユニットが配置されたものになっており,長尺で重厚に構成されている。上記実装ヘッドは,永久磁石又はコイルを直線状に配列した固定子,固定子に対向するコイル又は永久磁石を直線状に配列した可動部を備え,コイルに駆動電流を通電することによって固定子に対して可動部を移動させるシャフト形リニアモータを複数備えた多軸リニアモータを有し,該多軸リニアモータは隣接するリニアモータ同士の間に隣接リニアモータ相互における磁力障害を抑制する磁力遮蔽手段を備えている。また,リニアモータは,可動部を構成する駆動用シャフトに設けられた駆動用永久磁石の磁界の強さを検出することにより,駆動用シャフトの移動位置を検出する位置検出用センサユニットを備えている(例えば,特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−180645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,従来の実装ヘッドは,半導体製造装置,組立装置などの各種の装置に組み込んで使用されており,可動部材の位置を検出する位置センサは外付けタイプであってコンパクト化には問題があった。また,従来の実装ヘッドでは,可動部材を軽量化し,高応答性,高精度等の高機能が要求されており,更に,装置そのものがコンパクトであって装置への組み込みが容易であり,シャフト等の可動部材の往復移動の駆動において,可動部材に吸着又は把持された機器や部品の位置決めが高速で高応答に,しかも高精度に駆動されることが求められている。
【0006】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,本出願人が開発した,ボールスプライン形式の直動案内ユニットを用いてシャフト形リニアモータを内蔵した構造に構成したものであり,第1に,軸受として機能する支持体にボールスプライン軸であるシャフトをガタ即ち隙間なく配設して高精度に直線往復運動できる構造に構成し,支持体を本体部の取付面にねじ固定することによって簡単に配設することができ,支持体に対するシャフトの往復移動に高機能な性能を持たせることができ,第2に,支持体の開口側の領域に形成可能なスペースに光学式センサを且つシャフトの軸方向に光学式リニアスケールを配置して装置自体の軸方向の全長を短く形成し,マグネットを装着したシャフトで構成される可動部材を軽量化構造に形成できると共に装置全体をコンパクトに構成され,第3に,装置そのものの組立構成を簡潔にして信頼性の高いものに構成し,しかも,シャフトの単軸構造のみでなく多軸構造にも構成することができるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は,リング状に巻回され且つ中空の直線状に隣接して配列され複数の本体部に配設された複数のコイルを有するステータと,前記コイルの中空部に挿入されて直線運動に往復駆動されるシャフトを有する可動部材とを備えたシャフト形リニアモータが内蔵された実装ヘッドにおいて,
前記シャフトは,断面円形状で軸方向外面に沿って一対の軌道溝が形成され,前記本体部に固着された支持体に転動体を介して相対摺動自在に案内され,前記シャフトの外周には軸方向に沿って複数のマグネットが同極を突き合わせて配設され,前記マグネットが生じさせる磁束と前記コイルに流れる電流との電磁相互作用によって,前記シャフトが前記ステータに対してスライド自在に位置決め駆動されることを特徴とするシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドに関する。
【0008】
また,この実装ヘッドは,前記支持体には前記シャフトに跨架するための凹部が形成され,前記支持体の前記凹部に対向する開口側領域に形成されたスペースには,前記本体部に配置された光学式センサと前記シャフトの軸方向に固着された光学式リニアスケールとで光学式エンコーダが構成されている。更に,前記光学式リニアスケールは前記シャフトに支持板を介して取り付けられ,前記支持板の前記シャフト側には,前記シャフト側からの潤滑剤が前記光学式リニアスケールに流入して汚染しないように,前記支持体の軸方向両側に沿って凹溝が形成されている。
【0009】
また,この実装ヘッドは,前記シャフトには,部品吸着用のエア吸引孔として機能する通し孔が形成されている。従って,前記シャフトの先端面には,吸引エアによって各種のワーク,チップ,組立部品等の物体を吸着して該物体を容易に且つ正確に搬送したり,位置決めしたりすることができる。
【0010】
また,この実装ヘッドは,前記本体部には前記コイルの外周を包み込む円筒状のコイルヨークが配設され,前記コイルヨークは,前記軸方向に半分に分割された一対のヨーク半体に形成され,一方の前記ヨーク半体にはコイル基板を固着するための支持フランジが外周側に突出して形成されている。更に,前記コイルヨークには,各個の前記コイルから導出した端子を集中配線する前記コイル基板が設けられている。また,前記コイルは各個毎にコイルボビンに巻回され,前記コイルボビンには前記コイルヨークに対して位置決めのための凸部がそれぞれ形成されている。
【0011】
また,この実装ヘッドは,前記シャフトと前記マグネットとの間には,非磁性のスリーブが介在されている。
【0012】
また,この実装ヘッドは,前記本体部を構成するフレームには,4本の前記シャフトがマトリックスに配設された多軸構造に構成されている。更に,前記フレームは,前記シャフトを2本毎に配設したフレーム半体を合体して構成されている。また,前記フレーム半体を合体した合体面の中央部には,軸方向に延びる重力均衡用ばねが挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0013】
また,この実装ヘッドは,前記シャフトと前記本体部にはフックがそれぞれ設けられ,前記シャフトを立軸で使用する場合には,前記フック間に重力の影響を均等化するためのばねを配設することができる。
【0014】
また,この実装ヘッドにおいて,前記支持体は,前記シャフトの前記軌道溝に対向した軌道溝と前記軌道溝間の軌道路に平行なリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,及び前記軌道路と前記リターン路と一対の前記方向転換路とで構成される循環路を転走する複数の前記転動体を有している。
【発明の効果】
【0015】
この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドは,上記のように,支持体の開口側に存在するスペースを活用して光学式リニアスケールと光学式センサからなる光学式エンコーダを配設し,また可動部材を構成するシャフトに永久磁石であるマグネットを設けたリニアモータに構成したので,軸方向の全長を小さくでき可動部材を軽量化してコンパクトに構成され,可動部材の慣性モーメントを小さくして高レスポンス即ち高応答性を実現すると共に,実装ヘッドの組立が容易で簡潔に構成され,高精度で信頼性が高いものに構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドは,軸方向に短く構成でき,コンパクトに構成されたシャフト形リニアモータが内蔵された実装ヘッドでなり,シャフト側の可動部が軽量になり,高応答,高速に対応でき,シャフトの摺動がガタも無く滑らかで,光リニアスケールを配設して高精度な位置決めが可能になっている。また,この実装ヘッドは,簡単な組立構成になっているので,信頼性が高い装置になっている。以下,図面を参照して,この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドの実施例について説明する。
【0017】
図1〜図8に示すように,この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド(以下,実装ヘッド1という)は,概して,リング状に巻回され且つ中空の直線状に隣接して配列され複数(実施例では2個)の本体部4,5に配設された複数のコイル27,27’を有するステータと,コイル27,27’の中空部に挿入されて直線運動に駆動されるシャフト2を有する可動部材とを備えており,単軸の断面円形状で長尺状のシャフト2が支持体15によって直動往復自在に支持されて配設され,支持体15とシャフト2との間に位置決め制御するシャフト形リニアモータ30が組み込まれている。即ち,この実装ヘッド1は,特に,シャフト2には断面円形状で長手方向に沿って軌道溝16が形成され,シャフト2が両端部を一方の本体部5に固着された支持体15に転動体のボール45を介して相対摺動自在に支持され,シャフト2の外周には,軸方向に沿って複数のマグネット20が同極(即ち,N極同士及びS極同士)を突き合わせて固着され,マグネット20が生じさせる磁束とコイル27,27’に流れる電流との電磁相互作用によりシャフト2がステータに対してスライド自在に位置決め駆動されることを特徴としている。シャフト形リニアモータ30は,支持体15が両端に固着され,断面矩形枠体で長手状に箱状になるカバーを兼用したカバー本体3で外装して保護されており,カバー本体3の両端面の中心からシャフト2の両端がそれぞれ突出するように構成されている。カバー本体3は,軽量で非磁性のアルミ製材料で作製されており,図3に示すように,断面L字状の大きな枠体でなる本体部4と,本体部4のL字状内に合体して断面鍵状になる本体部5との2つの部材から構成され,シャフト形リニアモータ30を簡単に外装できる構造に構成されている。シャフト2は,両端部の支持体15によって摺動自在に支持され,支持体15に対して直線往復運動して案内されるように構成されている。
【0018】
図1〜図6に示す支持体15は,図14に示されるように,スプライン軸であるシャフト2に対して相対摺動するスライダとしても機能する支持体15と同様に構成されているので,同一符号で示している。支持体15は,矩形ブロック状でなり,シャフト2に跨架する凹部48が形成され,凹部48の背面側が取付け基準平面50(取付け平面)に形成され,また,取付け基準平面50に直交した側面が取付け基準側面51に形成されている。本体部5は,本体部4の端部に形成されているL字状の内側L部の取付け2平面の取付面26に固着されている。本体部5には,軽量化のため肉盗み54が形成され,一方の肉盗み54に対応する領域にセンサ基板17が配設されている。
【0019】
図2に示すように,支持体15の凹部48に対向する空きスペース55になる開口側には,位置決め検出のための光学式エンコーダが設置されている。光学式エンコーダは,光学式リニアスケール11と光学式センサ10とから構成され,光学式リニアスケール11は,支持体15の凹部48の開口側のシャフト2の軸方向に沿って支持板7を介してシャフト2に固着され,光学式リニアスケール11に対向して僅かな隙間56を有して光学式センサ10は,支持体15の凹部48の開口側領域に形成されたスペース55に配置されてカバー本体3を構成する本体部5にセンサ基板17を介して固着されている。また,シャフト2側になる支持板7の背面の両側には軸方向に沿って凹溝18が形成され,シャフト2側からの潤滑剤等の流動物が光学式リニアスケール11に回り込んで汚染しないように逃がし溝が形成されている。実装ヘッド1は,上記のように,支持体15に空きスペース55が形成され,支持体15の位置に光学式エンコーダが配設できたことにより,シャフト2の全長が小さく抑えられ,全体がコンパクトに形成され,マグネット20を装着した可動部材のシャフト2も重量が軽量化され,相乗的な効果を伴って高応答性,高速摺動性,高精度,及び軽量化になる構造に構成されている。支持板7は,軽量で非磁性なアルミ製材料で作製されている。図1に示すように,シャフト2の後端部9側にフック13が固着され,カバー本体3の先端部8側にフック12が固着されており,実装ヘッド1を立軸で使用する場合に,重力の影響を均等化するために,フック12とフック13との間にばね(図示せず)が配設される。
【0020】
図4〜図8に示すように,組み立てられたシャフト形リニアモータ30は,カバー本体3の半体である本体部4にそのまま設置して支持体15をねじ固着すれば,簡単に取り付けられる。シャフト形リニアモータ30の電機子コイルを構成するコイル27は,固定側であるカバー本体3に固設され,図示では本体部4に固設されている。コイル27は,リング状にコイルボビン31に巻回された一つのコイル27を長手方向に沿って重ね合わせ配列して円筒状になる複数のコイル27から構成されている。コイル27は,三相通電方式でU相,V相,及びW相(以下,U,V,Wという)の各相に電流が供給される3つのコイル27が一組として構成され,図5に示すように,8組で24個のコイル27で構成されている。また,一組のコイル27(U,V,W)に隣接するもう一組のコイル27は,逆向き巻回されたコイル27’(U’,V’,W’)でなり,コイル27とコイル27’とが交互に配列されている。
【0021】
この発明による実装ヘッド1におけるコイル27,27’の構成では,コイル基板6による各コイル27,27’からの集中配線方式に構成されており,そのために,コイル27,27’の外装は,通常,円筒状のコイルヨーク22で覆われるものであり,図7及び図8に示すように,コイルヨーク22は,2分割したヨーク半体23とヨーク半体23に対向整合するヨーク半体25とから成り,ヨーク半体25には,コイル基板6を取付面34に固設できる支持フランジ33が一体に形成されている。即ち,ヨーク半体25に設けた支持フランジ33には,その取付面34にコイル基板6を固着して取り付けることができる。ヨーク半体23,25は,磁性材でなる鉄板状にして,長手状の円筒を軸方向に2分割した樋状に形成され,一方のヨーク半体25は,軸方向に沿って一方の縁から外周に突出して延びてコイル基板6を固設できる取付平面を有した支持フランジ33が形成された構造に構成されている。また,コイルヨーク22は,分割体であるヨーク半体25とヨーク半体23とが軸方向に僅かな隙間56を有して固設され,各コイル27,27’からの端子が隙間56を通してコイル基板6に配線できるものになっている。また,各コイル27,27’は,合成樹脂製でなるコイルボビン31に巻回されたもので,コイルボビン31には,隙間56に位置決め可能な凸部32が形成され,各コイル27,27’からの導入線,導出線の端子を取り出し易い形状に形成されている。実装ヘッド1は,コイル基板6を外装して集中配線方式にしたので,配線し易いと共に信頼性の高い電源配線に構成されている。
【0022】
図5に示すように,コイル27,27’の両端には,各コイル27,27’を密接し,分割したコイルヨーク22を僅かな隙間56を開けて固設するための固定ブラケット24が配設されている。固定ブラケット24は,軽量で非磁性なアルミ製になっている。図6には,マグネット20の設置状態を示す説明図になっている。シャフト形リニアモータ30の界磁マグネットを構成するマグネット20は,シャフト2に装着されてコイル27,27’の中空部に挿入され,コイル27,27’と僅かな隙間19を介して,コイル27,27’に対向した所定の位置のシャフト2の所定位置に固着されている。シャフト2は,両端部の支持体15と直動案内ユニット41を構成するスプライン軸に構成され,断面円形状で軸方向即ち長手方向に沿って外面に一対の軌道溝16が形成され,支持体15に転動体のボール45(図14)を介して嵌合して摺動自在に案内される構成になっており,ガタも無く,滑らかに往復摺動案内される。また,シャフト2には,通し孔14が形成されており,通し孔14は,機素,エレメント等の部品をシャフト2に吸着するため,エアを吸引する吸着用エアー孔に構成されている。
【0023】
スプライン軸であるシャフト2の所定部分に非磁性であるアルミ製の円筒状のスリーブ28を介して円筒状になる複数のマグネット20を固着している。非磁性のスリーブ28を介入させることによってスプライン軸のシャフト2への磁束の回り込みを小さくしている。マグネット20は,軸方向に一端部がN極で,他端部がS極でなるマグネット20を,同極同士を連結して配列(図示)したものであり,6個のマグネット20からなっている。また,軸方向に反発する同士のマグネット20は,フランジ21付きスリーブ28と他端の固定フランジ29で密接に固着される。マグネット20は,希土類のネオジウム系の永久磁石で構成されている。
【0024】
次に,図9〜図13を参照して,この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドを多軸構造に構成した別の実施例であるマトリックスヘッド1Aを説明する。図9〜図13において,図1〜図8に示す実施例における部材と同一又は同様のものには同一番号に添字Aを付して示し,重複する説明は省略している。図1〜図8に示すシャフト形リニアモータ30は,コンパクトに軽量化されて構成できるので,図9〜図13に示す多軸構造のシャフト形リニアモータ30に構成したものもコンパクトで軽量化されたものになっている。
【0025】
多軸構造に実装ヘッド即ちマトリックスヘッド1Aは,上記シャフト形リニアモータ30が4つでなる4軸をマトリックス(縦横)に配列した構造に構成され,縦横のシャフト2A間ピッチが同寸法に構成されている。マトリックスヘッド1Aは,4つのシャフト形リニアモータ30を本体であるフレーム35に配設され,カバー本体3Aで外装したものになっている。マトリックスヘッド1Aは,全体的に,断面略正方形で長手状の箱状になっており,両端面から4つのシャフト2Aが各軸独立して摺動自在に突出したものになっている。カバー本体3Aは,ステンレス板でなり,図示では4つの孔36を有し,孔36はシャフト形リニアモータ30を冷却するためのエアーの注入口及び排出口に形成され,また,コイル27,27’及び位置エンコーダへの配線の導入口として利用されるものになっている。図10に示すように,マトリックスに配列された4つのシャフト2Aを直線方向に摺動自在に案内する4つの支持体15Aは,一対で開口側が互いに向かい合うように,矩形状になるフレーム35内に固着されている。
【0026】
図12及び図13に示すように,フレーム35を2分割したフレーム半体38に2本のシャフト形リニアモータ30を並設した構造に構成し,組み立てたフレーム半体38同士を合体面37で合体してマトリックスヘッド1Aが構成されている。従って,マトリックスヘッド1Aは,その組立が容易に構成される。フレーム半体38の先端部38A側には,センサ支持板40が取り付けられ,センサ支持板40には光学式センサ10Aが支持されている。フレーム半体38は,非磁性で軽量なアルミ製材料で構成されている。カバー本体3Aは,フレーム半体38の外周部分を外装するように分割された構造に構成されている。シャフト2Aの後端部9Aには,フック13Aが固着され,フレーム35の先端部側には別のフック(図示せず)が固着され,両フック間には,重力均衡用ばね(図示せず)を配設するように構成されている。重力均衡用ばねは,マトリックスヘッド1Aを立軸で使用する場合に,シャフト2A側である可動部の重力の影響を均等化するためのものであり,マトリックスヘッド1Aの中央部の貫通孔39に各軸の前記ばねが配設できる構造に構成されている。
【0027】
図14に示すように,シャフト形リニアモータ30のシャフト2Aを構成するスプライン軸は,断面円形状で長手方向に沿って軌道溝16Aが形成され,両端部が転動体のボール45を介して摺動自在に案内される支持体15Aに嵌合された構造に構成されている。支持体15Aは,シャフト2Aの軌道溝16Aに対向して軌道溝16Cが形成され且つ軌道溝16A,16C間に形成される軌道路53に平行なリターン路49が形成されたケーシング42,ケーシング42の両端面に取り付けられ且つ軌道路53とリターン路49とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ43,及び軌道路53とリターン路49と一対の方向転換路とで構成される循環路を転走する複数のボール45を有して構成されている。支持体15Aは,スプライン軸のシャフト2Aを跨架するように凹部48が形成され,凹部48の背面側は取付け基準平面50即ち取付け基準面に形成され,取付け基準平面50に直交する一方の側面が平面の取付け基準側面51に形成され,全体として矩形ブロック状に形成されている。また,支持体15の取付け基準平面50には,取付け用ねじ穴52が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドは,例えば,半導体製造装置,組立装置,検査装置,精密チップ等の搬送装置等の各種の装置に適用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドの一実施例であって実装ヘッドの単軸タイプを示す斜視図である。
【図2】図1の実装ヘッドにおける先端部側を示す側面図である。
【図3】図1の実装ヘッドにおける後端部側を示す側面図である。
【図4】図1の実装ヘッドからカバー本体の一部分を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す実装ヘッドからコイルヨークの一部分を取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示す実装ヘッドからコイル構成体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】図4に示す実装ヘッドにおけるコイル構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示すコイルヨークにおいて,一方のヨーク半体を示す斜視図である。
【図9】この発明によるシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッドの別の実施例であって図1の実装ヘッドを4軸用いて構成した多軸タイプを示す斜視図である。
【図10】図9の実装ヘッドにおける先端側を示す側面図である。
【図11】図9の実装ヘッドにおける後端側を示す側面図である。
【図12】図9の実装ヘッドからカバーを取り外した2軸でなる分割体の合体面側を示す斜視図である。
【図13】図12に示す分割体の反対側を示す斜視図である。
【図14】図1及び図9の実装ヘッドに組み込まれた直動案内ユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 実装ヘッド
1A マトリックスヘッド
2,2A シャフト(スプライン軸)
3,3A カバー本体
4,5 本体部
6,6A コイル基板
7,7A 支持板
10,10A 光学式センサ
11,11A 光学式リニアスケール
12,13,13A フック
14,14A 通し孔
15,15A 支持体
16,16A,16C 軌道溝
17,17A センサ基板
18,18A 凹溝
20,20A マグネット
21 フランジ
22,22A コイルヨーク
23,23A ヨーク半体
25,25A ヨーク半体
27,27’ コイル(電機子コイル)
28 スリーブ
30 シャフト形リニアモータ
31 コイルボビン
32,32A 凸部(コイルボビン)
35 フレーム
37 合体面
38 フレーム半体
39 貫通孔
41 直動案内ユニット
42 ケーシング
43 エンドキャップ
45 ボール(転動体)
48 凹部
49 リターン路
53 軌道路
55,55A スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に巻回され且つ中空の直線状に隣接して配列され複数の本体部に配設された複数のコイルを有するステータと,前記コイルの中空部に挿入されて直線運動に往復駆動されるシャフトを有する可動部材とを備えたシャフト形リニアモータが内蔵された実装ヘッドにおいて,
前記シャフトは,断面円形状で軸方向外面に沿って一対の軌道溝が形成され,前記本体部に固着された支持体に転動体を介して相対摺動自在に案内され,前記シャフトの外周には軸方向に沿って複数のマグネットが同極を突き合わせて配設され,前記マグネットが生じさせる磁束と前記コイルに流れる電流との電磁相互作用によって,前記シャフトが前記ステータに対してスライド自在に位置決め駆動されることを特徴とするシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項2】
前記支持体には前記シャフトに跨架するための凹部が形成され,前記支持体の前記凹部に対向する開口側領域に形成されたスペースには,前記本体部に配置された光学式センサと前記シャフトの軸方向に固着された光学式リニアスケールとで光学式エンコーダが構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項3】
前記光学式リニアスケールは前記シャフトに支持板を介して取り付けられ,前記支持板の前記シャフト側には,前記シャフト側からの潤滑剤が前記光学式リニアスケールに流入しないように前記支持体の軸方向両側に沿って凹溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項4】
前記シャフトには,部品吸着用のエア吸引孔として機能する通し孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項5】
前記本体部には前記コイルの外周を包み込む円筒状のコイルヨークが配設され,前記コイルヨークは,前記軸方向に半分に分割された一対のヨーク半体に形成され,一方の前記ヨーク半体にはコイル基板を固着するための支持フランジが外周側に突出して形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項6】
前記コイルヨークには,各個の前記コイルから導出した端子を集中配線する前記コイル基板が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項7】
前記コイルは各個毎にコイルボビンに巻回され,前記コイルボビンには前記コイルヨークに対して位置決めのための凸部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項8】
前記シャフトと前記マグネットとの間には,非磁性のスリーブが介在されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項9】
前記本体部を構成するフレームには,4本の前記シャフトがマトリックスに配設された多軸構造に構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項10】
前記フレームは,前記シャフトを2本毎に配設したフレーム半体を合体して構成されていることを特徴とする請求項9に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項11】
前記フレーム半体を合体した合体面の中央部に軸方向に延びる重力均衡用ばねが挿通可能な貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項10に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項12】
前記シャフトと前記本体部にはフックがそれぞれ設けられ,前記シャフトを立軸で使用する場合には,前記フック間に重力の影響を均等化するためのばねを配設することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。
【請求項13】
前記支持体は,前記シャフトの前記軌道溝に対向した軌道溝と前記軌道溝間の軌道路に平行なリターン路が形成されたケーシング,前記ケーシングの両端面に取り付けられ且つ前記軌道路と前記リターン路とを連通する方向転換路が形成されたエンドキャップ,及び前記軌道路と前記リターン路と一対の前記方向転換路とで構成される循環路を転走する複数の前記転動体を有していることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のシャフト形リニアモータを内蔵した実装ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−100617(P2009−100617A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272218(P2007−272218)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】