説明

シャンプー

【課題】 毛髪の低湿度環境下における水分量と高湿度環境下における水分量との差を小さくし得るシャンプーを提供する。
【解決手段】 アシルアミノ酸またはその塩、多価アルコール、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン、カチオン化ポリマーおよび水が配合されており、上記多価アルコールの配合量が、10〜30質量%であるシャンプーにより、上記課題を解決する。上記アシルアミノ酸またはその塩には、アシルアスパラギン酸またはその塩と、アシルグルタミン酸またはその塩とが併用されていることが好ましく、また、本発明のシャンプーには、ショ糖脂肪酸エステルが更に配合されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の低湿度環境下における水分量と高湿度環境下における水分量との差を小さくし得るシャンプーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャンプーには、一般に、両性界面活性剤やアニオン性界面活性剤などが主剤として配合されているが、例えば、アニオン性界面活性剤の一種であるアシルアミノ酸やその塩は、比較的低刺激で安全性が高く、また、洗浄後の毛髪の感触を良好にし得る成分であり、これを用いたシャンプーの検討が多くなされている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−140000号公報
【特許文献2】特表2003−521570号公報
【特許文献3】特開2010−138075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪においては、くせ毛のうねりによる広がりのために所望のヘアスタイルを形成することが困難な場合があることから、こうした毛髪の広がりを抑える技術のニーズがある。
【0005】
毛髪の広がりなどの状態は、毛髪の水分量の変動によって変化する。よって、毛髪の広がりを抑制するには、毛髪を好ましい水分量に調整することが考えられる。ところが、毛髪の水分量は、周辺環境の湿度に応じて容易に変動してしまうため、ある場所では毛髪の広がりが良好に抑えられていても、湿度の異なる場所に移動することで毛髪が広がってしまい、ヘアスタイルが崩れてしまうことが起こり得る。
【0006】
このようなことから、周辺環境の湿度が変化しても、毛髪の水分量の変動を抑制する技術の開発が求められる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、毛髪の低湿度環境下における水分量と高湿度環境下における水分量との差を小さくし得るシャンプーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明のシャンプーは、アシルアミノ酸またはその塩、多価アルコール、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン、カチオン化ポリマーおよび水が配合されており、上記多価アルコールの配合量が、10〜30質量%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、毛髪の低湿度環境下における水分量と高湿度環境下における水分量との差を小さくし得るシャンプーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
毛髪は、通常、低湿度環境下では水分を放出するため水分量が低下し、その一方で、高湿度環境下では水分を吸収するため水分量が多くなる。このように、毛髪は環境の湿度によって、その水分量が大きく影響を受け、ヘアスタイルを整えた環境の湿度下では毛髪の広がりが良好に抑えられていても、その後湿度の異なる環境下に身を置くと、毛髪の水分量が変動して、その状態も変化し広がりを生じたりする。
【0011】
本発明のシャンプーは、アシルアミノ酸またはその塩、多価アルコール、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン、カチオン化ポリマーおよび水が配合されたものであり、特にアシルアミノ酸またはその塩と、多価アルコールと、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインとを組み合わせ、かつ多価アルコールを高配合量で使用することで、毛髪の低湿度環境下における水分量と高湿度環境下における水分量との差を小さくすることを可能としている。よって、本発明のシャンプーを用いて洗浄した毛髪は、環境の湿度が変わっても水分量の変動が小さく、状態が変化し難いため、広がりを良好に抑えることができる。
【0012】
また、本発明のシャンプーであれば、洗髪時の毛髪のきしみを抑えることができ、かつ洗浄後の毛髪(シャンプーでの洗浄後、トリートメント剤やコンディショナーによって処理した毛髪)のすべりを良好にすることができる。
【0013】
アシルアミノ酸またはその塩としては、例えば、ラウロイル−L−アスパラギン酸、ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸、ラウロイル−L−グルタミン酸、ミリストイル−L−グルタミン酸、ステアロイル−L−グルタミン酸、ヤシ油脂肪酸メチルアラニン、ラウロイルメチルアラニン、ミリストイルメチルアラニン、ヤシ油脂肪酸アシルグリシン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン、ラウロイルメチルタウリン、ヤシ油脂肪酸サルコシン、ラウロイルサルコシン、および、これらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩など)などが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記のアシルアミノ酸またはその塩の中でも、アシル酸性アミノ酸(ラウロイル−L−アスパラギン酸などのアシルアスパラギン酸;ヤシ油脂肪酸−L−グルタミン酸、ラウロイル−L−グルタミン酸、ミリストイル−L−グルタミン酸、ステアロイル−L−グルタミン酸などのアシルグルタミン酸;)やその塩がより好ましく、アシルアスパラギン酸またはその塩と、アシルグルタミン酸またはその塩とを組み合わせて使用することが更に好ましい。
【0015】
アシルアスパラギン酸またはその塩と、アシルグルタミン酸またはその塩とを併用する場合には、洗浄後の毛髪において、くせ毛のおさまりをより良好としたり感触をより高めたりし得ることから、シャンプーにおけるアシルアスパラギン酸またはその塩とアシルグルタミン酸またはその塩との配合比率を、1:5〜1:1とすることが好ましい。
【0016】
シャンプーにおけるアシルアミノ酸またはその塩の配合量は、高配合量の多価アルコールと、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインとの組み合わせによる上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
【0017】
なお、アシルアミノ酸またはその塩は、アニオン性界面活性剤の一種であるが、本発明のシャンプーにはアニオン性界面活性剤としてアシルアミノ酸またはその塩のみを使用してもよく、必要に応じて、アシルアミノ酸またはその塩と、それ以外のアニオン性界面活性剤を併用してもよい。ただし、シャンプーにおけるアニオン界面活性剤の量が多すぎると、強い脱脂力によって毛髪にきしみを感じる傾向が強くなることから、シャンプーにおけるアニオン性界面活性剤の配合量(シャンプーに配合されるアニオン性界面活性剤がアシルアミノ酸またはその塩のみである場合には、その配合量)は、30%質量以下であることが好ましく、25%質量以下であることがより好ましい。
【0018】
シャンプーに使用する多価アルコールとしては、吸湿性が良好である点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンなどが好ましいものとして例示できる。
【0019】
シャンプーにおける多価アルコールの配合量は、アシルアミノ酸またはその塩と、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインとの組み合わせによる上記の効果を良好に確保する観点から、10質量%以上であり、15質量%以上であることが好ましい。
【0020】
なお、通常は、多価アルコールの配合量をこのように高めたシャンプーを使用して毛髪を洗浄し、その後に毛髪にトリートメント剤やコンディショナーを塗布しても、仕上がり後の毛髪が硬くなりやすい。これは、多価アルコールを高配合量としたシャンプーで毛髪を洗浄すると、毛髪の親水性の度合いが高まって、その後にトリートメント剤やコンディショナーを塗布しても、トリートメント剤やコンディショナーに配合された疎水性の高い成分が、毛髪に良好に付着しにくいためであると考えられる。しかし、本発明のシャンプーでは、理由は定かではないが、上記のように多価アルコールを高配合量としているにも関わらず、トリートメント剤やコンディショナーの成分による作用が有効に発揮され、例えば毛髪の感触が硬くなることが抑制される。
【0021】
ただし、シャンプーにおける多価アルコールの量が多すぎると、仕上がり時の毛髪に硬さを生じる傾向があることから、シャンプーにおける多価アルコールの配合量は、30質量%以下であり、25質量%以下であることが好ましい。
【0022】
シャンプーに使用する分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、例えば、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、複数種を用いてもよい。
【0023】
シャンプーにおける分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインの配合量は、アシルアミノ酸またはその塩と、高配合量の多価アルコールとの組み合わせによる上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、シャンプーにおける分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインの量が多すぎると、毛髪に過度に残存して仕上がり時に硬さがでたり、泡立ちが低下する虞があることから、シャンプーにおける分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインの配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
また、本発明のシャンプーにはカチオン化ポリマーを使用する。これにより、シャンプーで洗浄した後の毛髪の感触を高めることができる。カチオン化ポリマーとしては、例えば、カチオン化セルロース(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなど)、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体などが挙げられる。
【0025】
シャンプーにおけるカチオン化ポリマーの配合量は、カチオン化ポリマーの使用による上記の効果を良好に確保する観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。ただし、シャンプーにおけるカチオン化ポリマーの量が多すぎると、シャンプーによる洗浄時にカチオン化ポリマーが毛髪に残留し、これがシャンプーの連続使用によって蓄積し、毛髪がごわつく傾向がある。よって、シャンプーにおけるカチオン化ポリマーの配合量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明のシャンプーは、通常のシャンプーと同様に水を溶媒として使用する。シャンプーにおける水の配合量は、例えば、50〜90質量%であることが好ましい。
【0027】
また、本発明のシャンプーには、ショ糖脂肪酸エステルを配合することが好ましい。ショ糖脂肪酸エステルをシャンプーに配合することで、洗浄後の毛髪のすべりをより良好にすることができる。
【0028】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルなどが挙げられる。
【0029】
シャンプーにおけるショ糖脂肪酸エステルの配合量は、ショ糖脂肪酸エステルの使用による上記の効果を良好に確保する観点から、0.1質量%以上であることが好ましい。ただし、シャンプーにおけるショ糖脂肪酸エステルの量が多すぎると、トリートメント剤やコンディショナーの成分が毛髪に吸着し難くなることから、シャンプーにおけるショ糖脂肪酸エステルの配合量は、3質量%以下であることが好ましい。
【0030】
更に、本発明のシャンプーには、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料で用いられている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、アシルアミノ酸またはその塩以外のアニオン性界面活性剤、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン以外の両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン化ポリマー以外のポリマー、1価のアルコール、油脂、エステル、炭化水素、脂肪酸、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0031】
アシルアミノ酸またはその塩以外のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ココイルイセチオン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、イソステアリン酸加水分解シルクAMP(イソステアリン酸と加水分解シルクとの縮合物の、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩)、ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム、ココイル加水分解コラーゲンの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などが挙げられる。
【0032】
分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン以外の両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、リノレイン酸アミドプロピル、パーム油脂酸アミドプロピルベタイン、ウンデシル−N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸ナトリウム、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、N−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸ナトリウム、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
【0033】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどのアルキルアルカノール型非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0034】
カチオン化ポリマー以外のポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、グアーガム、ヒアルロン酸、キトサン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。1価のアルコールとしては、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどの低級アルコール;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
【0035】
油脂としては、例えば、シア脂、小麦胚芽油、コメヌカ油、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、卵黄油などが挙げられる。エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸イソステアリル、オレイン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸ヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、コハク酸ジオクチル、イソステアリン酸フィトステリルなどが挙げられる。
【0036】
炭化水素としては、例えば、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウ、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、セレシン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリンなどが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。
【0037】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸またはその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸またはその塩などが挙げられる。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、dl−α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、エリソルビン酸、無水亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの酸;アンモニア、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アルギニンなどのアルカリ剤;が挙げられる。
【0038】
本発明のシャンプーは、上記の各成分を、媒体である水に溶解または分散させることで調製することができる。本発明のシャンプーは、液状、ジェル状、乳液状のいずれであっても構わない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、以下の表1および表2ではシャンプー全体で100%となるように、また、表3ではコンディショナー全体で100%となるように、各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、表1〜表3中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。更に、本実施例で表1〜表3以外で用いる%も、特に断らない限り、質量%を意味している。
【0040】
実施例1〜6および比較例1〜6
実施例1〜6および比較例1〜6のシャンプー組成物を、表1および表2に示す組成で調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
なお、実施例および比較例のシャンプーの調製に使用した原材料の一部は、表に記載の成分以外の成分(溶媒など)を含んでいるもののあるが、表1および表2では、このような原材料に含まれる表に記載の成分のみの量を配合量として示している。そして、表1および表2において、水の欄の「計100とする」とは、シャンプーを構成する水以外の各成分の合計量(表に記載の成分以外の成分も含む原材料における「表に記載の成分以外の成分」の量も含めた合計量)に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、表1および表2の「POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム」における「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、POEの後の括弧内の数値は、オキシエチレンユニットの平均付加モル数である。更に、表1および表2における「ヒアルロン酸ナトリウム水溶液」は、ヒアルロン酸ナトリウムの濃度が0.25%のものである。また、表1および表2におけるクエン酸の欄の「適量」は、シャンプーのpHが6となる量で使用したことを意味している。
【0044】
更に、表1および表2に記載の原材料は、以下の通りである。
カチオン化セルロース:塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチオアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、Amerchol社製「UCARE Polymer JR−30M(商品名)」。
イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン:東邦化学工業社製「オバゾリン ISAB(商品名)」(イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン:31%、ジプロピレングリコール:33%、水:32%などを含有)。
防腐剤:ローム・アンド・ハース・ジャパン社製「ケーソンCG(商品名)」、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物。
キレート剤:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和塩。
【0045】
実施例および比較例のシャンプーを用い、洗浄時の毛髪のきしみの評価、洗浄後の毛髪の低湿度下および高湿度下での水分量測定、並びに洗浄後の毛髪の平均摩擦係数(MIU)測定を行った。
【0046】
<洗浄時の毛髪のきしみの評価>
専門のパネラー5名が、実施例および比較例のシャンプー各6gを用いて洗髪をし、その際のきしみの少なさを、下記の評価基準に従って点数付けした。
きしみを感じない 2点、
きしみを殆ど感じない 1点、
どちらでもない 0点、
きしみをやや感じる −1点、
きしみを感じる −2点。
【0047】
そして、全パネラーの点数を合計して、実施例および比較例のシャンプーそれぞれについて、洗浄時の毛髪のきしみの有無を評価した。
【0048】
<洗浄後の毛髪の低湿度下および高湿度下での水分量測定>
日本人女性から集められた化学的に処理されていないくせ毛を集め(長さ約20cm)、これらから3gの毛束を複数作製した。そして、実施例および比較例のシャンプー各3gを使用してそれぞれ別の毛束を洗浄した後に、各毛束に表3に示す組成のコンディショナー1gを塗布して洗い流した。その後各毛束を乾燥させた。
【0049】
乾燥後の各毛束の一部を、所定の温度および湿度環境下で保管した後に、水分量測定試料約0.01gを採取してアルミホイルに精秤し、カールフィッシャー水分測定装置を用いて試料中の水分量を測定した。なお、低湿度下での水分量の測定用試料の保管は、25℃、相対湿度30%の環境下で24時間以上行い、高湿度下での水分量の測定用試料の保管は、30℃、相対湿度80%の環境下で24時間以上行った。
【0050】
【表3】

【0051】
表3における水の欄の「計100とする」とは、コンディショナーを構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。
【0052】
<MIU測定>
低湿度下および高湿度下での水分量測定用に洗浄、コンディショナーによる処理および乾燥を行った各毛束から毛髪の一部を採取し、それぞれ、25℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上保管した後に、スライドガラス上に1mm間隔で10本並べ、各毛髪の両端をセロハンテープで固定した。
【0053】
これらの毛髪について、摩擦感テスター[カトーテック社製「KES−SE(STP)(商品名)」]を使用し、接触子にシリコーンを用い、摩擦荷重を25gとしてMIUを測定した。MIUが低いほど毛髪の表面摩擦が小さく、すべりが良好であるといえる。
【0054】
上記の各評価結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
表4における「水分量の差」の欄では、高湿度下での水分量から低湿度下での水分量を引いた値を示している。
【0057】
表4に示す通り、アシルアミノ酸またはその塩、多価アルコール、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン、カチオン化ポリマーおよび水を使用し、多価アルコールを高配合量とした実施例1〜6のシャンプーで処理した毛髪は、低湿度下での水分量と高湿度下での水分量の差が小さく、環境の湿度が変わっても水分量が変動し難い。よって、これらのシャンプーで洗浄した毛髪は、環境が変化しても、広がりが生じにくいといえる。また、実施例1〜6のシャンプーでは、洗浄時の毛髪のきしみが抑えられており、更に、これらのシャンプーで洗浄した毛髪は、MIUが小さく、すべりが良好である。
【0058】
一方、アシルアミノ酸またはその塩に代えて、他のアニオン性界面活性剤を使用した比較例1のシャンプー、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタインを使用しなかった比較例2のシャンプー、多価アルコールの配合量が少ない比較例3〜5のシャンプー、および多価アルコールに代えて保湿成分として知られているヒアルロン酸ナトリウムを配合した比較例6のシャンプーでは、処理した毛髪における低湿度下での水分量と高湿度下での水分量の差が大きく、環境の湿度が変わることで水分量が変動しやすい。よって、これらのシャンプーで洗浄した毛髪は、環境の変化によって広がりが生じやすいと考えられる。また、比較例1〜6のシャンプーでは、実施例のシャンプーを用いた場合よりも洗髪時にきしみが認められており、更に、比較例1〜6のシャンプーで洗浄した毛髪は、実施例のシャンプーで洗浄した毛髪よりもMIUが大きく、すべりが劣っている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルアミノ酸またはその塩、多価アルコール、分岐型脂肪酸アミドプロピルベタイン、カチオン化ポリマーおよび水が配合されており、
上記多価アルコールの配合量が、10〜30質量%であることを特徴とするシャンプー。
【請求項2】
アシルアミノ酸またはその塩が、アシル酸性アミノ酸またはその塩である請求項1に記載のシャンプー。
【請求項3】
アシル酸性アミノ酸またはその塩として、アシルアスパラギン酸またはその塩と、アシルグルタミン酸またはその塩とが配合されている請求項2に記載のシャンプー。
【請求項4】
ショ糖脂肪酸エステルが更に配合されている請求項1〜3のいずれかに記載のシャンプー。

【公開番号】特開2012−87094(P2012−87094A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235162(P2010−235162)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】