説明

ショウガオール類の富化方法

【課題】 機能性食品等の素材として有効性が期待されるショウガ科植物またはその抽出物中に、優れた生理活性・薬理作用を有するショウガオール類を安定して富化する方法を提供すること。
【解決手段】 ショウガ科植物由来の原料をそのまま、または、その原料を発酵液と混合した後、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の条件下で、120時間〜500時間加熱するによって、ショウガ科植物由来の原料中のジンゲロール類をショウガオール類に変換してショウガオール類を富化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機能性食品類の主成分あるいは添加成分として利用されるショウガオール類の富化方法に関する。
【0002】
この発明において、ショウガオール類とは下記に示す構造の化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
式中、n=1〜10の整数を表す。
主に、n=4、6、8に相当する6−ショウガオール、8−ショウガオール、または10−ショウガオールを指す。
【背景技術】
【0005】
生姜に含まれるショウガオール類またはジンゲロール類は、発酵食品中の乳酸菌の働きを促進・調整し、乳酸菌数を安定させることが特許文献1においで開示されており、他にも、魚類寄生虫を減耗または死滅させる効果があることが特許文献2で開示されている。
【0006】
さらに、生姜の辛味成分であるショウガオール類は、食品香料として利用されるだけでなく、解熱作用、鎮痛作用、抗炎症作用、抗酸化作用、プロスタグランジンの生合成阻害作用、血行促進作用、体温上昇作用を有することが知られており、さらには、特許文献3において、ショウガオール類はアディポネクチン発現量を上昇させる作用を有し、糖尿病及び肥満を治療・予防することが記載されている。しかしながら、ショウガオール類は天然物中には微量しか存在していないことが特許文献4に開示されている。
【0007】
ショウガオール類は、上述の通り、解熱、鎮痛、抗炎症、プロスタグランジンの生合成阻害、血行促進、体温上昇、アディポネクチン発現の上昇等の様々な薬理的作用を有し、糖尿病や肥満等により誘発するメタボリックシンドロームの予防にも有効な成分として、今後、機能性食品・医薬品等への活用が期待されている。一方、ショウガ科の代表的な植物である生姜には、辛味を有する精油成分としてジンゲロール類、ショウガオール類等が含まれるが、生で未加工の状態では、その主体はジンゲロール類であり、ショウガオール類はごくわずかしか存在しない。さらには、生姜からショウガオール類を抽出する場合、最も抽出効率が高いエタノール抽出あるいは有機溶媒による抽出であっても、抽出物中のショウガオール類含量は、精々0.08重量%程度に過ぎず、機能性食品・医薬品等への活用が困難な状況にある。
【0008】
特許文献5において、ジンゲロール類を酸触媒の存在下で加熱することでショウガオール類を得ている例はあるが、加熱工程でトルエン等の有機溶剤を使用しているため、食するものの原料として使用することは難しい。
【0009】
したがって、ショウガ科植物中に含まれるジンゲロールを食品・医薬品等の使用に好適な条件・加工方法で、効率よくショウガオール類に変換できれば、優れた生理活性・薬理作用を有する機能性食品素材を市場に提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−13180号公報
【特許文献2】特開2005−230007号公報
【特許文献3】特開2008−189571号公報
【特許文献4】特開2001−314169号公報
【特許文献5】特開平8−40970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決課題は、機能性食品等の素材として有効性が期待されるショウガ科植物またはその抽出物中に、優れた生理活性・薬理作用を有するショウガオール類を安定して富化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、ショウガ科植物由来の原料を、そのまま、加熱、または、微生物を利用して植物または乳を発酵させた発酵液中または発酵液から抽出した酵素液中に漬け込んだ後、加熱することによって、ジンゲロール類を効率よくショウガオール類に変換し、これによって、ショウガオール類を富化するものである。
【0013】
すなわち、ショウガ科植物由来の原料(葉、茎、根茎等)を、微生物を利用して植物または乳を発酵させた発酵液中または発酵液から抽出した酵素液中に漬け込んだ後、加熱方法として、蒸気加熱、遠赤外線等の電磁波を利用した加熱、電気ヒーター等の電熱機器を使用した加熱、直火、を利用した加熱等によって、淡褐色になるまで、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%、120時間〜500時間、加熱する。
【0014】
この富化処理のための被処理原料の形状は限定しない。すなわち、粉末状、塊状固体、スライス状、液状の如何なるものであってもよい。
【0015】
そして、ジンゲロール類の発酵・熟成によるショウガオール類への変換のメカニズムは、以下の反応による脱水反応により、ショウガオール類に変化したものと考えられる。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、n=1〜10の整数を表す。
主に、ショウガオール類はn=4、6、8に相当する6−ショウガオール、8−ショウガオール、または10−ショウガオールを指す。
また主に、ジンゲロール類はn=4,6,8に相当する6−ジンゲロール、8−ジンゲロール、10−ジンゲロールを指す。
【発明の効果】
【0018】
この発明の処理法によって富化したショウガオール類は安定して維持でき、しかも、ショウガオール類の含有量が、従来の抽出法によるものと対比して2倍以上、すなわち、ショウガ科植物の含有成分であるショウガオールとジンゲロールの比率は1:1〜30:1の組成の富化物とすることができる。また、本発明の富化方法は複雑な装置や処理を必要としないため、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明に使用できるショウガ科植物由来の原料は、金時生姜、三州生姜、近江生姜、谷中生姜、静岡4号、黄生姜、土生姜、オタフク生姜の根茎等が挙げられ、とくに、その中でも、金時生姜や三州生姜がジンゲロール類含有量等の点から好ましい。
【0020】
発酵液または発酵液から抽出した酵素液に混合する原料は、事前処理せずにそのまま使用することができる。また、原料をスライス、粉砕、圧搾またはすりおろした後、発酵液または発酵液から抽出した酵素液と混合しても良い。さらに、原料としてジンゲロール類、ショウガオール類を含有する抽出物を使用しても良い。
【0021】
抽出物を使用する場合には、熱水抽出、エタノール抽出、超臨界抽出等、何れの手段も適用できるが、ジンゲロール類、ショウガオール類の物性や収量向上を考慮するとエタノール抽出が好ましい。
【0022】
エタノール抽出に際しては、例えば、ショウガ科植物の根茎の細粒物に、エタノール、あるいはエタノールと水を混合した溶液を細粒物に対して等量以上加えて加温する。60℃以上に加温した後、温度を維持しながら攪拌を行う。この攪拌を1時間以上保持した後、ろ過して抽出液を得る。そして、さらに、この抽出液を濃縮して細粒物と同量の抽出物を得ることができる。固形分は約4.8%程度となる。
【0023】
抽出物が液状の場合、スプレードライやフリーズドライによって粉末化したものを原料として使用することもできる。
【0024】
ショウガ科植物由来の原料を発酵液または発酵液から抽出した酵素液に混合した後、微生物、または微生物によって発酵させた酵素を使用して、混合物自体を発酵させても良い。この混合物を加熱熟成することによって、ショウガオール類の富化効率、すなわち、ジンゲロール類のショウガオール類への変換効率は向上する。
【0025】
また、発酵液を使用する場合の微生物は、乳酸菌、麹菌、酵母菌、枯草菌、酢酸菌等を用いる。これらの菌類を1種類または2種類以上混合して使用しても良い。
【0026】
乳酸菌類としては、桿菌のラクトバシラス属やビフィドバクテリウム属、球菌のロイコノストック属、ペディオコッカス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属の乳酸菌が挙げられるが、その他、エンテロコッカス属、バゴコッカス属、カルノバクテリウム属、アエロコッカス属、テトラゲノコッカス属の乳酸菌を利用することができる。具体的な乳酸菌株としては、クトバシルスブルガリス、ラクトバシルスヘルベティカス、ラクトバシルスアシドフィルス、ラクトバシルスラクティス、ラクトバシルスカゼイ、ラクトバシルスブレビス、ラクトバシルスプランタラム、ラクトバシルスサケ、ストレプトコッカスサーモフィルス、ストレプトコッカスラクティス、ストレプトコッカスクレモリス、ビィフィドバクテリウムロンガム、ビィフィドバクテリウムビィフィダム、ビィフィドバクテリウムブレーベ、ビィフィドバクテリウムインファンティス、ロイコノストッククレモリス、ロイコノストックメセンテロイデス、ロイコノストックオクノス、ペディオコッカスアシディラクティシ、ペディオコッカスセレビシエ、ペディオコッカスペントサセウス等が挙げられる。
【0027】
麹菌としては、例えばアスペルギルス属があり、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ウサミ、アスペルギルス・シロウサミ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ソヤー、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・タマリ等が挙げられる。
【0028】
酵母菌としては、例えばデバリョマイセス属、サッカロマイセス属、ピチア属、クルイベロマイセス属、トルラスポラ属、シュビア属、ブレッタノマイセス属、クリプトコッカス属、エレモテリウム属、イッサチェンキア属、クロッケラ属、リポマイセス属、メトシュニコウイア属、ロードトルア属、シゾサッカロマイセ属、ジゴサッカロマイセス属、カンジダ属等があげられ、サッカロマイセス・セレビシアエやカンジダ・ビルサチルス等が挙げられる。食品として使われる酵母としては、酒酵母、ビール酵母やワイン酵母、パン酵母、葡萄酒酵母、焼酎酵母等が挙げられる。清酒酵母として、きょうかい6号、きょうかい7号、きょうかい9号、きょうかい10号、きょうかい11号、金沢酵母、泡なし酵母−601号、秋田流・花酵母AK−1等の種類が挙げられ、ビール酵母にはエール酵母、ラガー酵母等が挙げられる。また野生酵母で自然発酵させてもよい。
【0029】
枯草菌としては、例えばバシルス属の菌株等が挙げられ、バチルス・サブチリス、バチルス・ナットウ菌株等が挙げられる。
【0030】
酢酸菌としては、例えばアセトバクター属、アサイア属、アシドモナス属等があり、アセトバクター・トロピカリス、アセトバクター・インドネシエンシス、アセトバクター・シジギイ、アセトバクター・シビノンゲンシス、アセトバクター・オリエンタリス、アセトバクター・パスツリアヌス、アセトバクター・オルレアネンシス、アセトバクター・ロバニエンシス、アセトバクター・アセチ、アセトバクター・ポモラム、アサイア・ボゴレンシス、アサイア・シアメンシス、アシドモナス・メタノリカ等が挙げられる。
【0031】
また、発酵液には、オリゴ糖やブドウ糖等の糖類やミネラル類を添加することもできる。
【0032】
さらに、発酵物としては、植物由来の発酵物を利用することができる。 好ましい植物としては、米、玄米、大麦、小麦、オーツ麦、ライ麦、カラス麦、トウモロコシ等の各種穀物あるいはそれら穀物の種子の発芽物、エンドウ豆、フェイジョン豆、小豆、大豆等の豆類、アガリクス属およびボレタス属のキノコ、リンゴ、バナナ、ナシ、イチゴ、カキ、パイナップル、ブドウ、アンズ、モモ、プラム、パパイヤ、マルメロ、アボガド、マンゴー、サクランボ、アプリコット、メロン、ビワ、イチジク、プルーン、キウイ、ブルーベリー、ブラックベリー、ラスベリー、ツルコケモモ、ヅグリ、ゴボウ、ナス、トマト、ヨモギ、ハスの根、レタス、キャベツ、甜菜、ホップ、バースニップ、ほうれん草、大根、カブ、カリフラワー、チコリー、タマネギ、セロリ、ニンジン、アスパラガス、西洋ワサビ、ショウガ、アロエ、ピーマン、アルファルファ、モルト、ソラマメ、インゲン、サヤインゲン、ヤエナリ、バレイショ、サツマイモ、サトウキビ、タロイモ、茶、タバコ、オリーブ、キク、アシタバ、ケール、ウコン、ジャガイモ、サツマイモ、ヤマイモ、ナス、トマト、ニガウリ、ピーマン、ゴマ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ショウガ、ゴボウ、ダイコン、ワサビ、アボカド、ニンジン、ホウレンソウ、ユリ、ラッキョウ、シソ、ネギ、ニラ、パースニップ、ワラビ、タケノコ、栗、シイタケ、マッシュルーム等の各種野菜、レモン、リンゴ、イチゴ、オレンジ、グァバ、バナナ、ブルーベリー、ブラックベリー、クランベリー、キイチゴ、コケモモ、ヤマモモ、フェイジョア、タマリロ、アセロラ、ライム、シークワ―サー、メロン、モモ、マンゴー、ユズ、パインアップル、ナシ、プラム、グレープフルーツ、カリン、アンズ、ミカン、ザクロ、スイカ、プルーン、キウイ等の果物、アーモンド、カシューナッツ、マカデミアナッツ、クリ、ギンナン、クルミ等の各種ナッツ各種素材等が挙げられる。1種または2種以上を組み合わせて使用しても良い。これら植物を生のまま使用しても良いし、蒸す、茹でる等の操作をした後、発酵しやすい最適な温度にしてから、微生物を加えて発酵させても良い。またその際には水を加えてもよい。
【0033】
その中でも、コストが安く、市販されていて容易に入手可能である点から、納豆、玄米発酵素が好適に使用できる。
【0034】
さらに、リンゴ酢やモロミや発酵後の絞り粕、例えばモロミの絞り粕である酒粕等を使用しても良い。リンゴ酢は市販されており、コストも安く、容易に製造することが可能であるため好ましい。モロミはコストも安く、容易に製造することが可能であるため好ましい。さらに、酒粕は栄養分が豊富であり、毎年、大量に廃棄処分されているという背景から、コスト的にも安価であり、廃品利用の観点からも好ましい。酒粕の場合、アルコールが残存しているため、乾燥させてアルコールを飛ばしてから使用するのが好ましい。また、発酵後の絞り粕として、酒粕だけでなく、植物粕を使用することもできる。
【0035】
発酵液に使用する発酵物としては、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの乳由来の発酵物も使用できる。牛乳は市販されており、安価で手に入りやすいので好ましい。
【0036】
さらに、微生物が植物または乳、次いで生姜を発酵させることで、植物または乳の成分だけでなく、発酵時に生成される成分が付与され、機能性食品としてさらに効果を発揮する。
【0037】
この発明においては、ショウガ科植物由来の原料をそのままを加熱熟成してよいし、発酵液と混合した後、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の条件下で、120時間〜500時間加熱するが、加熱の手段としては、蒸気加熱、遠赤外線等の電磁波を利用した加熱、電気ヒーター等の電熱機器を使用した加熱、直火、を利用した加熱等によって、淡褐色になるまで、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の下で、120時間〜500時間、加熱する。
【0038】
加熱条件としては、およそ2日間かけて30℃から78℃に上昇させ、78℃を維持した状態で10日から2週間、湿度を約70%に保ち、熟成を行った後、徐々に温度と湿度を下げるのが好ましい。熟成が不十分な場合は、さらに加熱熟成を行ってもよい。加熱熟成後、1ヶ月間、約20℃の湿度の低い環境で乾燥・熟成を行うことが好ましい。
【0039】
この加熱条件を得るためには、遠赤外線による加熱が、微生物が植物を発酵させることのできる温度を調節しやすいことや、原料を熟成させる温度を調整しやすい点から好ましい。
【0040】
以下、この発明の実施例を、ショウガ科植物に該当する生姜の原料として、三州生姜を用いた例によって説明する。
【実施例】
【0041】
原料の処理
生姜原料100gをステンレス製のビーカーに入れ、発酵素液を加え、浸漬した。
【0042】
酵素液としては、種麹で玄米を発酵させ、得られた玄米発酵物50gに水200mLを加えて調製し、そのうち60mLを使用した。
【0043】
浸漬後、この混合物を、遠赤外線を熱源として備えた蒸し器に入れ、50時間かけて30℃から78℃に温度を上昇させ、78℃を維持したまま、湿度約70%で300時間保持して蒸し込んだ。 加熱後、この生姜を78℃から徐々に冷却し、50時間かけて室温に戻した。熟成工程に合計400時間を要した。熟成後、この生姜を1ヶ月間乾燥させた後、加工生姜を秤量したところ、11gとなり、回収率は11%であった。
【0044】
酵素液浸漬と加熱熟成処理前後の生姜抽出液のショウガオール類含量分析
酵素・熟成処理前後の生姜抽出液のショウガオール類の含量を分析した。
分析はLC/MS/MSで行った。サーモサイエンティフィック社製環境分析・食品ポジティブリスト用トリプル四重極型質量分析計(装置名:TSQ Quantum Access MAX)にて測定した。使用カラムはハイパーシルゴールド(C18 50*2.1mm)、溶媒はアセトニトリルと水を用い、時間によって溶媒比率を変化させた。1分まではアセトニトリル:水=20:80の混合溶媒を、4分までの間に徐々に比率を変化させ、最終的にアセトニトリル:水=100:0にし、次いで7分までにアセトニトリル:水=80:20に比率を変化させ、この比率の混合溶媒で20分保持した。 流速は0.2ml/minで行った。
【0045】
酵素液浸漬・加熱熟成処理前の生姜抽出液の分析結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
酵素液浸漬・遠赤外線加熱処理前の三州生姜の抽出液に関して、6−ショウガオールの含量が550ppm、6−ジンゲロールは4900ppmであった。
【0048】
また、発酵液より抽出した酵素液浸漬工程・遠赤外線による加熱処理後の抽出液成分において、玄米発酵素液による加熱処理後の抽出液中の6−ショウガオールの含量は、3700ppmに富化し、6−ジンゲロールは350ppmであった。よって、6−ショウガオールは6.7倍富化した。さらに6−ショウガオールと6−ジンゲロールの比率は11:1が実現できた。
【0049】
すなわち、得られた加工生姜11g中に6−ショウガオールが41mgとなり、加工前の生姜11g中で比較すると、6−ショウガオールは6.1mgとなっており、従来よりも、6−ショウガオールが富化していることがわかった。よって、6−ショウガオールの多い、機能性食品を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、機能性食品・医薬品等の素材として有効性が期待されるショウガ科植物またはその抽出物中に、優れた生理活性・薬理作用を有するショウガオール類を安定して富化することができる。
【0051】
すなわち、ショウガオールの薬理作用を利用した機能性食品・医薬品を製造するにあたり、この富化方法を利用することで、機能性食品の有用性を向上させ、併せて製造コストを下げることが可能である。
【0052】
さらに、この発明の富化方法による、発酵液や酵素液は従来の食品発酵技術を応用する方法を採用しており、安全な機能性食品や医薬品を提供できる。
【0053】
またさらに、この発明によって得られたショウガオール類を多く含む機能性原料は、機能性食品や各種治療薬として広く適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショウガ科植物由来の原料を温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の条件下で、120時間〜500時間加熱するによって、ショウガ科植物由来の原料中のジンゲロール類をショウガオール類に変換するショウガオール類の富化方法。
【請求項2】
ショウガ科植物由来の原料を発酵液と混合した後、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の条件下で、120時間〜500時間の加熱するによって、ショウガ科植物由来の原料中のジンゲロール類をショウガオール類に変換するショウガオール類の富化方法。
【請求項3】
発酵液が、酵母菌、乳酸菌、麹菌、枯草菌、酢酸菌の中の何れかで構成される微生物により発酵させた発酵物を含む請求項2に記載のショウガオール類の富化方法。
【請求項4】
発酵液が、米、玄米、大麦、小麦、オーツ麦、ライ麦、カラス麦、ライ麦、
トウモロコシ等の穀類由来、または、エンドウ豆、フェイジョン豆、小豆、大豆等の豆類由来、または、果物、野菜等の植物由来、または、乳由来の発酵物を含む請求項2に記載のショウガオール類の富化方法。
【請求項5】
加熱が、遠赤外線等の電磁波を利用した加熱、または蒸気加熱、または、電熱機器を使用した加熱、または直火による加熱、またはを利用した加熱である請求項1または請求項2に記載のショウガオール類の富化方法。
【請求項6】
得られた富化物が、ショウガオール類とジンゲロール類の比率が1:1〜30:1である請求項1または請求項2に記載の富化方法。

【公開番号】特開2011−32248(P2011−32248A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182897(P2009−182897)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(501131379)株式会社エヌ・エル・エー (3)
【Fターム(参考)】