説明

シリコンまたはその他の結晶性材料の自立プレートを製造する装置および方法

液相(5)中の材料の指向性凝固によって結晶性材料のシート(8)を製造する装置は、底(2)と、側壁(3)と、側壁(3)の底部に配置された少なくとも1個の水平出口スロット(4)とが設けられた坩堝(1)で構成されている。坩堝(1)が少なくともスロット(4)の高さで、液相(5)中の材料に磁気反発力を作り出す電磁手段(6)をスロット(4)の直ぐ近くにある外部表面に提供する。10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数をもつ交流電流が電磁手段(6)の中を流れる。液相(5)中の材料の撹拌を助けるため、低周波数が上記の周波数に加えて使用される可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底と、側壁と、水平であってかつ側壁の底部で底に位置している少なくとも1個のシート出口スロットと、を備えた坩堝内の液相中の材料の指向性凝固によって結晶性材料のシートを製造する方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
スロットが設けられた坩堝を用いる溶解原材料の指向性凝固による結晶性材料のシートの直接的な製造は、インゴットの結晶化後に、インゴットのクロッピング、クロッピングされたインゴットの積層へのスライス、および、スライス化による積層のウェハーへの切断のような付加的なステップを要することなくリボンを得ることを可能にする。しかし、光電池に一体化するためには、シートは、使用されるPN接合に直交し、したがって、シートの表面に直交する粒界を現すことが必要である。
【0003】
このタイプの装置における現在の主要な問題は、坩堝の内側の凝固ゾーンにおける垂直温度勾配を制御することである。特許文献1には、固相と液相との間の凝固界面が坩堝の側方スロットに位置している装置が提案されている。しかし、この装置は、実施することが困難であり、ある種の欠点を見せる。坩堝の内側の凝固は、実際には、小規模の表面に制限されている。さらに、液相の撹拌は、不純物が槽に入り込むことを可能な状態にするために十分でない。不純物は、そのとき、凝固フロントの進出と共に固相に存在する可能性がある。これらの不純物は、そのとき、集積化されるべき光電池に有害である。
【0004】
非特許文献1および非特許文献2は、押し出し溝を用いる別の指向性凝固の方法を提示している。シリコンは坩堝の内側で溶解され、圧力下で坩堝の底の中心に位置しているスロットを通じて移動させられる。坩堝の下部に取り付けられたシンブルとL形曲がりの鋳型は、そのとき、最終的なセクションに細長い溝を形成する。この最終的な部分において、加えられた垂直温度勾配は材料全体の垂直方向の指向性凝固を生じさせる。垂直方向の指向性凝固は、押し出し溝のサイズに起因して、固相から出て液相に存在する不純物を排除できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願PCT/FR2006/002349号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hide他著, “Cast Ribbon for Low Cost Solar Cells”, 0160−8371/88/0000−1400, 1988 IEEE 26th September 1988
【非特許文献2】Suzuki他著, “Growth of Polycrystalline Silicon Sheet by Hoxan Cast Ribbon Process”, Journal of Crystal Growth, Elsevier, vol 104,No.1, 1st July 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、これらの欠点を改善すること、特に、容易に実施でき、かつ、液相中の不純物のより大幅な排除を行う指向性凝固によって結晶性材料のシートを製造する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、坩堝が、内部を流れる10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数をもつ交流電流によって、少なくともシート出口スロットの高さで、液晶中の材料に磁気反発力を作り出す電磁手段を、シート出口スロットの直ぐ近くにある外部表面に提供するという事実によって実現される。
【0009】
その他の利点および特徴は、限定的でない目的のためだけに記載され、添付図面に現されている発明の特定の実施形態についての以下の説明からより明瞭に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発明による装置の特定の実施形態の略断面図である。
【図2】図1による装置のスロットの正面図である。
【図3】発明による装置の別の特定の実施形態の略断面図である。
【図4】スロットと、磁気力を作り出す電磁手段とを中心とする図3の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特許出願PCT/FR2006/002349の場合のように、図1および図2に示された装置は、底2と側壁3とを有する坩堝1を備える。坩堝1は、図1において右側壁3の底部に水平に配置されている側方出口スロット4を備える。坩堝1は、液相5の材料で部分的に満たされている。出口スロット4は、アルゴンのような天然ガスによって一般に構成されている、坩堝1を取り囲む雰囲気7と連通している。坩堝1の内側の材料の指向性凝固によって得られる結晶性材料のシート8は、スロット4の中を通って引き出される。
【0012】
結晶性材料は、たとえば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、または、その他のものである。従来的には、坩堝1の内側の温度勾配は垂直方向であり、温度は坩堝1の上端から底2へ減少する。坩堝1の内側の材料の凝固は、その結果、固相において材料のシート8に直交する粒界の形成の原因になる。この構造は光電池装置で使用するため有利である。
【0013】
材料の指向性凝固は、好ましくは、坩堝1の底2の高さで生じ、シート8を形成する固相中の材料は、凝固するとき、図1に表されていない適当な保持手段によって出口スロット4を介して槽から取り出される。
【0014】
坩堝1の内側の温度調節は、坩堝1の内側の温度勾配を安定かつ垂直方向に保つために、公知の手段によって行われる。
【0015】
図3に示されているように、坩堝1は、温度勾配を実質的に垂直方向に保つために、好ましくは、坩堝1の上に位置している加熱システム9と、好ましくは、坩堝1の下に位置している冷却システム10とに連結され得る点で有利である。坩堝1の内側の温度勾配は凝固界面と実質的に直交している。冷却システム10は、スロット4からの距離に応じて、凝固中に材料の下で引き出される熱流と、熱流の分布とを調節する。冷却システム10は、たとえば、坩堝1の透過的な底2を通る放熱による熱交換である。
【0016】
図3に示されているように、坩堝1の側壁3は熱絶縁体11に連結される点で有利である。この熱絶縁体11は、好ましくは、側壁3によって分離された表面全体に亘って坩堝1の外側に設置されている。このようにして、側壁3を通る側方損失は抑制され、温度勾配は実質的に垂直方向に保たれる。
【0017】
温度勾配に実質的に直交する材料の凝固界面は、坩堝1の底部に、好ましくは、坩堝1の底2に近接して位置している。この位置は、坩堝1の内側の温度勾配によって調整される。このようにして得られたシート8の厚さは、坩堝1の内部の熱流束と坩堝1から出るシート8の引出速度とによって本質的に画定される。シート8の引出速度は、好ましくは、毎分0.5〜10メートルの範囲内である。
【0018】
スロット4の高さは、シート8がスロット4を介して引き出されるとき、機械的な目詰まりと寄生凝固とを防止するためにシート8の厚さより大きくなるように選択される。
【0019】
装置は、出口スロット4の直ぐ近くで、側壁3に接して、坩堝1の外側に少なくとも1個の誘電体6をさらに備える。誘電体6は、磁気力を作り出す電磁手段の好ましい具体例である。10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数と、好ましくは100Aと3000Aとの間に含まれる強度とを有する交流電流は誘電体6の中を流れる。誘電体6は、その結果、液相5中の材料に磁気反発力を生み出す。
【0020】
誘電体6はスロット4の上または下に位置することがある。図1の特定の具体例では、2個の誘電体6がスロット4の両側に配置されている。
【0021】
図4に詳細に示されているように、液相5中の材料と雰囲気7との間の界面はメニスカス12の形状である。誘電体6によって作り出された磁気反発力だけが液相5中の材料に影響を与えるので、誘電体6はメニスカス12の位置が制御されることを可能にする。メニスカス12は、好ましくは、液相5中の材料が坩堝1の内側で液相5中の材料の結晶化を邪魔することなくスロット4を介して漏れることを防止するように、スロット4の内側に位置している。
【0022】
誘電体6によって加えられる磁気反発力は、液相5中の材料の反発が、シート8より上で、出口スロット4の高さで発生するように調整される。反発力は、シート8の縁と各側方端との間にも作用する。液相5中の材料は、その結果、坩堝1の内側に保たれる。誘電体6内の電流の振幅は、坩堝1内の液相5中の材料の水圧と、誘電体6とメニスカス12との間の距離とに応じて決定される。誘電体6の断面は、反発力を、好ましくは、メニスカス12に集中させるように選ばれる。
【0023】
装置の一実施形態の具体例は、メニスカス12から約5mmに電流を集中させる誘電体6を実施する。この誘電体は、900Aの電流が30kHzの周波数で誘電体の中を流れるとき、5cmの高さのシリコンが坩堝内に保たれることを可能にする。スロット4は、幅が75mmであり、高さが3mmである。
【0024】
誘電体6は、スロット4の近くで液相5中の材料の撹拌効果をさらに引き起こす。誘電体は、液相5中の材料全体における凝固界面から発生する不純物を取り除く液相5中の材料の再循環ループを作り出す。固相に近接した不純物の蓄積は、その結果、より広範囲の凝固フロントの存在が原因で、従来技術に比べて削減される。撹拌効果は、低周波数レンジ、たとえば、約50Hzにおける誘電体内での電流の使用によって高められる。したがって、装置は、好ましくは、液相5中の材料を攪拌するのに適した周波数を10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数レンジと組み合わせる手段を備える。
【0025】
代替的な実施形態では、内部を流れる異なる周波数の電流をそれぞれに有している2個の誘電体6が設けられる。第1の誘電体は、そのとき、好ましくは、約50Hzの低周波数レンジに、液相5中の材料の撹拌を保証するように周波数を有している電流が供給される。もう一方の誘電体は、液相5中の材料の反発を保証するため、内部を流れる10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数をもつ電流を有している。この同時の作用は、単一の誘電体によって、たとえば、周波数変調、振幅過変調などによって達成することも可能である。
【0026】
スロット4からの出口の外側で、結晶性材料のシート8は固相だけで構成されている。液相5中の材料は、実際には、誘電体6によって坩堝1の内側に押し返される。シート8は、その後、坩堝から出るときに、自立している。
【0027】
凝固が始まるとき、結晶化シードを液相5中の材料と接触させることが好ましい。結晶化シードは、好ましくは、所定の配向性の下で結晶化を可能にさせるためメニスカス12と接触させられる。
【0028】
たとえば、局部的なヒートシンクによって形成される核生成/成長中心は、結晶化の開始を促進するため坩堝1の底2と液晶5中の材料との界面の高さで添加される可能性がある。
【0029】
図3に表された特定の実施形態では、処理装置13、特に、熱処理装置は、スロット4からの出口で坩堝1に連結されている。この装置は、シート8の冷却速度の所定のプロファイルが監視されることを可能にする。このプロファイルは、機械的応力と結晶欠陥の密度とが低減されることを可能にする。装置13は、さらに、凝固を開始するため使用されるシード結晶を予熱する目的に役立つ可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底(2)と、側壁(3)と、水平であって側壁(3)の底部に形成された少なくとも1個のシート出口スロット(4)と、からなる坩堝(1)の内部の液相(5)中の材料から指向性凝固によって結晶性材料のシート(8)を製造する装置であって、
前記坩堝(1)が、少なくとも前記シート出口スロット(4)の高さで、液相(5)中の前記材料に磁気反発力を作り出す電磁手段(6)を前記シート出口スロット(4)の直ぐ近くにある外部表面に提供し、10kHzと300kHzとの間に含まれる周波数をもつ交流電流が前記電磁手段(6)の中を流れることを特徴とする装置。
【請求項2】
磁気力を作り出す前記電磁手段(6)が前記スロット(4)より上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
磁気力を作り出す前記電磁手段(6)が前記スロット(4)より下に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
磁気力を作り出す前記電磁手段(6)が少なくとも1個の誘電体を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
液相(5)中の前記材料の撹拌を可能にする周波数を重ね合わせる手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
撹拌を可能にする前記周波数が約50Hzであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
100Aと3000Aとの間に含まれる強度を有する電流が磁気力を作り出す前記電磁手段の中を流れることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記坩堝(1)の前記底(2)と直交する方向に向けられた温度勾配を前記材料に生成し維持する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置の坩堝(1)の内部で液相(5)中の材料の指向性凝固によって結晶性材料のシート(8)を製造する方法であって、
磁気反発力が、液相(5)中の前記材料の漏れを防止するために、前記坩堝(1)の底(2)で行われる液相(5)中の前記材料の凝固のため、スロット(4)の高さで、液相(5)中の前記材料に加えられることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−523446(P2010−523446A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552248(P2009−552248)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000304
【国際公開番号】WO2008/132323
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(505278218)
【氏名又は名称原語表記】APOLLON SOLAR
【出願人】(505383246)
【氏名又は名称原語表記】CYBERSTAR
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(509252265)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT POLYTECHNIQUE DE GRENOBLE
【Fターム(参考)】