説明

シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法

【課題】 シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンから水を除去して、シリコーンパウダーを均一に分散するオイル組成物を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンを、容器の内壁に沿って低速で回転する攪拌手段と、容器の内部で高速で回転する攪拌手段を少なくとも有する攪拌装置によって、減圧下、攪拌しながら前記エマルジョンから水を除去することを特徴とする、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜5には、水中に分散したオイル液滴中にシリコーンパウダーを含有する水系エマルジョンから水を除去することにより、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物を製造できることが記載されている。上記エマルジョンは界面活性剤を含有しており、界面活性剤が加熱により変質して臭気を発生するため、上記エマルジョンを加熱乾燥することができず、風乾することが記載されている。
【0003】
しかし、上記のような方法では、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物を効率よく製造することは難しい。このため、上記エマルジョンから水を除去する方法として、減圧下、攪拌しながら水を除去する方法について検討したが、攪拌翼にシリコーンパウダーが凝集して付着したり、オイル組成物が付着して、効率よく水を除去し、オイル中にシリコーンパウダーを均一に分散するオイル組成物を効率よく製造することが難しかしいことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−281523号公報
【特許文献2】特開2000−281903号公報
【特許文献3】特開2001−139416号公報
【特許文献4】特開2001−139819号公報
【特許文献5】特開2002−249588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンから水を除去して、シリコーンパウダーを均一に分散するオイル組成物を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法は、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンを、容器の内壁に沿って低速で回転する攪拌手段と、容器の内部で高速で回転する攪拌手段を少なくとも有する攪拌装置によって、減圧下、攪拌しながら前記エマルジョンから水を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンから水を除去して、シリコーンパウダーを均一に分散するオイル組成物を効率よく製造できるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の製造方法で用いる攪拌装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられるシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンはシリコーンパウダーとオイルが水中に分散しているものであり、好ましくは、水中に乳化しているオイルの液滴中にシリコーンパウダーを含有しているものである。このシリコーンパウダーの性状は、ゲル状、ゴム状等のエラストマー状が好ましい。また、このシリコーンパウダーの平均粒径は、0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらには、0.1〜100μmの範囲内であることが好ましく、特には、0.1〜50μmの範囲内であることが好ましい。このようなシリコーンパウダーとしては、架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応、縮合反応、有機過酸化物によるラジカル反応、あるいは高エネルギー線照射によるラジカル反応等により架橋反応させたものが好ましく、特に、ヒドロシリル化反応、または縮合反応により架橋させたものが好ましい。
【0010】
ヒドロシリル化反応架橋性シリコーン組成物としては、(A)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、および(C)ヒドロシリル化反応用触媒から少なくともなるものが例示される。
【0011】
(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基が好ましい。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基等の一価炭化水素基が例示される。(A)成分の分子構造は、直鎖状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状が例示され、エラストマー状のシリコーンパウダーを形成するためには、直鎖状、あるいは一部分岐を有する直鎖状であることが好ましい。また、(A)成分の25℃における粘度は、20〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、20〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子結合有機基としては、前記と同様のアルケニル基を除く一価炭化水素基が例示される。(B)成分の分子構造は、直鎖状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状が例示される。また、(B)成分の25℃における粘度は、1〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。(B)成分の配合量は、上記組成物を架橋させるに十分な量であれば特に限定されず、具体的には、(A)成分100重量部に対して0.3〜200重量部の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、(C)成分は、上記組成物の架橋反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、特に、白金系触媒であることが好ましい。この白金系触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金黒、白金担持のシリカが例示される。(C)成分の配合量は、上記組成物の架橋反応を促進するに十分な量であれば特に限定されず、(C)成分として白金系触媒を用いる場合には、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して(C)成分中の白金金属が1×10−7〜1×10−3重量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0014】
上記組成物を水中で分散した状態で架橋する場合には、上記組成物に予め(C)成分を配合してもよく、また、(C)成分を除いた架橋性シリコーン組成物を水中に分散させた後、(C)成分を水中に添加することにより、上記組成物を架橋することができる。後者の場合、(C)成分を平均粒径1μm以下に分散した水分散液を用いることが好ましい。
【0015】
また、縮合反応架橋性シリコーン組成物としては、(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合する水酸基、またはアルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基等の加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、(E)一分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合するアルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基等の加水分解性基を有するシラン系架橋剤、および(F)有機錫化合物、有機チタン化合物等の縮合反応用触媒から少なくともなるものが例示される。
【0016】
(D)成分中のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基が例示される。また、(D)成分中のオキシム基としては、ジメチルケトキシム基、メチルエチルケトキシム基が例示される。(D)成分中のその他のケイ素原子結合有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基等の一価炭化水素基が例示される。(D)成分の分子構造は、直鎖状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状が例示され、エラストマー状のシリコーンパウダーを形成するためには、直鎖状、あるいは一部分岐を有する直鎖状であることが好ましい。また、(D)成分の25℃における粘度は、20〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、20〜10,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0017】
また、(E)成分中のアルコキシ基およびオキシム基としては、前記と同様の基が例示される。(E)成分としては、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリオキシムシラン、ビニルトリオキシムシランが例示される。(E)成分の配合量は、上記組成物を架橋させるに十分な量であれば特に限定されず、具体的には、(D)成分100重量部に対して0.3〜200重量部の範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、(F)成分は、上記組成物の架橋反応を促進するための縮合反応用触媒であり、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)が例示される。(F)成分の配合量は、上記組成物の架橋反応を促進するに十分な量であれば特に限定されず、具体的には、(D)成分100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.05〜2重量部の範囲内であることが好ましい。
【0019】
一方、オイルは特に限定されないが、シリコーンオイルまたはケイ素不含の有機オイルが好ましい。このオイルの25℃における粘度は、1〜100,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、2〜10,000,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0020】
シリコーンオイルとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、環状ジメチルシロキサン、環状メチルフェニルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、環状メチルビニルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体が例示され、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体が例示される。
【0021】
なお、シリコーンオイルを予め架橋性シリコーン組成物中に配合してシリコーンパウダーを含有するシリコーンオイル組成物の水系エマルジョンを調製する場合、上記組成物の架橋反応に関与しないシリコーンオイルを用いることが好ましい。具体的には、架橋反応がヒドロシリル化反応である場合には、上記シリコーンオイルとしては、分子中にアルケニル基やケイ素原子結合水素原子を有しないものであり、また、架橋反応が縮合反応である場合には、分子中にシラノール基やケイ素原子結合水素原子やケイ素原子結合加水分解性基を有しないシリコーンオイルである。
【0022】
また、ケイ素不含の有機オイルとしては、流動パラフィン、イソパラフィン、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アボガド油、アーモンド油、オリブ油、カカオ油、ホホバ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、スクワラン、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、卵黄油、豚脂等の油脂;ポリプロピレングリコールモノオレート、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート等のグリコールエステル油;イソステアリン酸トリグリセライド、椰子油脂肪酸トリグリセライド等の多価アルコールエステル油;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル油が例示される。
【0023】
上記オイルを予め架橋性シリコーン組成物に配合する場合、オイルの配合量は、この架橋性シリコーン組成物を架橋して得られるシリコーンパウダーがオイルを保持することができる量(すなわち、そのシリコーンパウダーが含有できるオイルの量)をこえる量であることが必要である。この保持し得る量は、オイルと架橋性シリコーン組成物の組み合わせにより異なるが、一般には、オイルの配合量は、架橋性シリコーン組成物100重量部に対して200〜5,000重量部の範囲内であることが好ましく、特に、250〜2,000重量部の範囲内であることが好ましい。
【0024】
このようなシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンを調製する方法としては、オイルを予め配合した架橋性シリコーン組成物を水中に乳化した後、これを架橋反応させることが好ましい。上記組成物を水中に乳化するため、ホモミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー、インライン式連続乳化機、超音波乳化機、真空式練合機等の攪拌装置を用いることができる。
【0025】
また、上記組成物を水中に安定性よく乳化するため、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、あるいはアニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、特に、ノニオン系界面活性を用いることが好ましい。この界面活性剤の配合量は、オイルを配合した架橋性シリコーン組成物100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.5〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
【0026】
このようにして得られるシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンにおいて、オイル液滴の平均粒径は0.1〜500μmの範囲内であることが好ましく、さらに、0.2〜500μmの範囲内であることが好ましく、さらに、0.5〜500μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.5〜200μmの範囲内であることが好ましい。これは、オイル液滴の平均粒径が上記範囲の下限未満である水分散液を調製することが困難であり、一方、上記範囲の上限をこえる水分散液は安定性が低下するからである。
【0027】
本発明の製造方法では、このようなシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンを、減圧下、攪拌しながら水を除去する際、容器の内壁に沿って低速で回転する攪拌手段と、容器の内部で高速で回転する攪拌手段を少なくとも有する攪拌装置を用いることを特徴とする。本発明で用いることのできる攪拌装置の一例を図1に示した。図1を用いて本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0028】
攪拌手段2は、容器1の内壁に沿って低速で回転することにより、容器内の水系エマルジョン4を全体的に攪拌する。この攪拌手段2としては、アンカーミキサー、スクレパーを装着したアンカーミキサーが例示される。この攪拌手段2により、容器内の水系エマルジョンの局所的な滞留を抑制し、上記エマルジョンからむらなく水を除去することができる。この攪拌手段2は低速で回転するが、その回転速度としては、1〜500rpmの範囲であることが好ましい。
【0029】
また、攪拌手段3は、容器1の内部で高速で回転することにより、容器内の水系エマルジョンあるいは該エマルジョンから水を除去してなるオイル組成物を強制的に攪拌する。これは、前記攪拌手段2のみであると、水系エマルジョンから水を効率よく除去することが困難であり、また、この攪拌手段3のみであると、水系エマルジョン4が、この攪拌手段3の近傍の局所的に攪拌され、結果、水系エマルジョン4から水を効率よく除去することが困難であるからである。この攪拌手段3としては、攪拌軸に、ファン、プロペラ、ソフト十字、かい十字、バタフライ、タービン、ディスクタービン、湾曲ディスクタービン、ブレードタービン、傾斜パドル、ディスパー等の羽根が装着されてなるインペラー式攪拌機;高速回転タービン羽根とステーターとからなるホモミキサーが例示され、特に、ディスパーミキサーであることが好ましい。この攪拌手段3は高速で回転するが、その回転速度としては、1,000〜20,000rpmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法では、水系エマルジョンを減圧下、攪拌しながら水を除去するが、水の除去を促進するため、前記エマルジョンを100℃未満の温度に加熱することが好ましくは、特に、50〜90℃の範囲内の温度に加熱することが好ましい。また、減圧の程度も特に限定されないが、100mmHg以下であることが好ましく、特に、50mmHg以下であることが好ましい。
【0031】
このようにして得られるオイル組成物は、オイル中にシリコーンパウダーが均一に分散しており、その性状としては、液状、クリーム状、ペースト状、あるいはグリース状が例示される。
【実施例】
【0032】
本発明のシリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の特性は25℃における値である。また、エマルジョンの平均粒径、シリコーンパウダーの平均粒径、およびオイル組成物の特性を次のようにして求めた。
【0033】
[エマルジョンの平均粒径]
エマルジョンをレーザー回折式粒度分布測定器(堀場製作所のLA−750)により測定し、得られたメジアン径(累積分布の50%に相当する粒径)を平均粒径とした。
【0034】
[シリコーンパウダーの平均粒径]
エマルジョンをガラス板上で風乾し、実体顕微鏡下でシリコーンパウダーを集めて試料を作製し、これを電子顕微鏡下で観察して、10個の粒子径の平均を平均粒径とした。
【0035】
[オイル組成物の粘弾性]
オイル組成物の貯蔵弾性率G'(Pa)、損失弾性率G''(Pa)、さらに損失正接tanδをARES粘弾性測定装置(Reometric Scientific社製)により測定した。なお、測定の条件は、室温、25mmパラレルプレート、ギャップ:0.5〜0.6mm、歪み:10%、振動数:0.01〜50Hzである。
【0036】
[オイル組成物の粘度]
オイル組成物の粘度をEMD型粘度計(東京計器社製)により測定した。なお、コーンは1.34°×R24のものを用い、50rpmで3分間経過後の値を読み取った。
【0037】
[参考例1]
粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=1.18重量%)9.13重量部、粘度50mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.43重量%)0.87重量部、粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン90重量部を混合して架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0038】
上記組成物に、予め調製しておいたポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB=14.5)1.6重量部と2−フェノキシエタノール1.6重量部を純水96.8重量部に溶解させた水溶液29.5重量部を加えて、コロイドミルにより乳化した後、さらに純水27.6重量部を加えて、架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0039】
上記エマルジョンに、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を主成分とする白金系触媒の水系エマルジョン(白金系触媒の平均粒径=0.05μm、白金金属濃度=0.05重量%)を、上記のエマルジョン中の架橋性シリコーン組成物に対して、白金金属が重量単位で10ppmとなる量を添加して、均一に混合した。
【0040】
上記エマルジョンを50℃で1日間放置することにより、架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により架橋して、水中に分散しているシリコーンオイル液滴中にシリコーンゴムパウダーを含有しているシリコーンオイル組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0041】
[参考例2]
粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.48重量%)15.24重量部、粘度75mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.05重量%)4.76重量部、粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン80重量部を混合して架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0042】
上記組成物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB=14.5)1.6重量部と2−フェノキシエタノール1.6重量部を純水96.8重量部に溶解させて調製した水溶液29.5重量部を加えて、コロイドミルにより乳化した後、さらに純水27.6重量部を加えて、架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0043】
上記エマルジョンに、実施例1で用いた白金系触媒の水系エマルジョンを加えて、架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により架橋して、水中に分散しているシリコーンオイル液滴中にシリコーンゴムパウダーを含有しているシリコーンオイル組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0044】
[参考例3]
5℃に冷却した、粘度40mPa・sの分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルポリシロキサン(水酸基の含有量=3.8重量%)9.05重量部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=1.56重量%)0.95重量部、粘度6mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン90重量部、およびジオクチル酸錫0.10重量部を均一に混合して架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0045】
上記組成物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB=14.5)1.6重量部と2−フェノキシエタノール1.6重量部を純水96.8重量部に溶解させて調製した水溶液29.5重量部を加えて、コロイドミルにより乳化した後、さらに純水29.1重量部を加えて、架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0046】
上記エマルジョンを室温で1週間静置することにより、架橋性シリコーン組成物の縮合架橋反応を行い、水中に分散しているシリコーンオイル液滴中にシリコーンゴムパウダーを含有しているシリコーンオイル組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0047】
[参考例4]
粘度400mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=1.18重量%)9.13重量部、粘度50mPa・sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.43重量%)0.87重量部、イソパラフィン(日本石油化学社製のアイソゾール400K、C1634)90重量部を混合して架橋性シリコーン組成物を調製した。
【0048】
上記組成物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB=14.5)1.6重量部と2−フェノキシエタノール1.6重量部を純水96.8重量部に溶解させた水溶液29.5重量部を加えて、コロイドミルにより乳化した後、さらに純水27.6重量部を加えて、架橋性シリコーン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0049】
上記エマルジョンに、実施例1で用いた白金系触媒の水系エマルジョンを加えて、架橋性シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により架橋して、水中に分散しているイソパラフィン液滴中にシリコーンゴムパウダーを含有しているイソパラフィン組成物の水系エマルジョンを調製した。
【0050】
【表1】

【0051】
[実施例1]
参考例1で調製したシリコーンオイル組成物の水系エマルジョン1,700gをコンビミックス(プライミクス株式会社製のT.K. Combi Mix 3M−5型)に仕込み、アンカーミキサーの回転数80rpm、ディスパーミキサーの回転数1,000rpmで攪拌しながら、2時間から3時間かけて75〜85℃に昇温しつつ、減圧にして、50mmHg以下で1時間保持して水分を除去した。その後、室温まで冷却して、1,070gのペースト状シリコーンオイル組成物(水分含有量<0.1重量%)を得た。このシリコーンオイル組成物を実体顕微鏡で観察したところ、シリコーンオイル中にシリコーンゴムパウダーが均一に分散しており、このシリコーンゴムパウダーの形状が球状であることがわかった。このシリコーンオイル組成物の特性を表2に示した。
【0052】
[実施例2]
参考例2で調製したシリコーンオイル組成物の水系エマルジョン100gをコンビミックス(株式会社エスエムテー製のバキュームミキサーHV−030型)に仕込み、アンカーミキサーの回転数90rpm、ディスパーミキサーの回転数1,000rpmで攪拌しながら、1時間から2時間かけて75〜85℃に昇温しつつ、減圧にして、50mmHg以下で1時間保持して水分を除去した。その後、室温まで冷却して、60gのペースト状シリコーンオイル組成物(水分含有量<0.1重量%)を得た。このシリコーンオイル組成物を実体顕微鏡で観察したところ、シリコーンオイル中にシリコーンゴムパウダーが均一に分散しており、このシリコーンゴムパウダーの形状が球状であることがわかった。このシリコーンオイル組成物の特性を表2に示した。
【0053】
[実施例3]
参考例3で調製したシリコーンオイル組成物の水系エマルジョン100gを、実施例2と同様の方法で水分を除去して、55gのシリコーンオイル組成物(水分含有量<0.1重量%)を得た。このシリコーンオイル組成物を実体顕微鏡で観察したところ、シリコーンオイル中にシリコーンゴムパウダーが均一に分散しており、このシリコーンゴムパウダーの形状が球状であることがわかった。このシリコーンオイル組成物の特性を表2に示した。
【0054】
[実施例4]
参考例4で調製したイソパラフィン組成物の水系エマルジョン100gを、実施例2と同様の方法で水分を除去して、45gのイソパラフィン組成物(水分含有率<0.1重量%)を得た。このイソパラフィン組成物の粘度は65mPa・sであり、上記の条件で粘弾性を測定することはできなかった。このイソパラフィン組成物を実体顕微鏡で観察したところ、イソパラフィン中にシリコーンゴムパウダーが均一に分散しており、このシリコーンゴムパウダーの形状が球状であることがわかった。
【0055】
[比較例1]
参考例1で調製したシリコーンオイル組成物の水系エマルジョン10gを直径5cmのアルミ皿に移して、ドラフト内で1週間風乾することにより水分を除去して、6gのペースト状シリコーンオイル組成物(水分含有率<0.5重量%)を得た。このシリコーンオイル組成物の特性を表2に示した。実施例1で調製したシリコーンオイル組成物に比べて、このシリコーンオイル組成物では、シリコーンゴムパウダーの凝集があるので、G’が大きく、G”が小さくなり、tanδが小さくなっていることがわかる。
【0056】
[比較例2]
参考例1で調製したシリコーンオイル組成物の水系エマルジョン100gを、コンビミックス(株式会社エスエムテー製のバキュームミキサーHV−030型)に仕込み、アンカーミキサーの回転数90rpm、ディスパーミキサーの回転数1,000rpmで攪拌しながら、1時間から2時間かけて75〜85℃に昇温し、その温度で1時間保持した。その後、室温まで冷却して、96gのシリコーンオイル組成物(水分含有率>30重量%)を得た。このシリコーンオイル組成物は水分が多く、水の除去が不十分であることがわかった。
【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法により得られるオイル組成物は、オイル中にシリコーンパウダーが均一分散されているので、潤滑剤、樹脂用添加剤、化粧料、医薬用等に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1 攪拌装置の容器
2 低速で回転する攪拌手段
3 高速で回転する攪拌手段
4 シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の水系エマルジョンを、容器の内壁に沿って低速で回転する攪拌手段と、容器の内部で高速で回転する攪拌手段を少なくとも有する攪拌装置によって、減圧下、攪拌しながら前記エマルジョンから水を除去することを特徴とする、シリコーンパウダーを含有するオイル組成物の製造方法。
【請求項2】
シリコーンパウダーがシリコーンゴムパウダーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
オイルがシリコーンオイルまたはケイ素不含の有機オイルである、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
容器の内壁に沿って低速で回転する攪拌手段がアンカーミキサーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
容器の内部で高速で回転する攪拌手段がディスパーミキサーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
100℃未満の温度で水を除去する、請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−105800(P2011−105800A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259741(P2009−259741)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】