説明

シリコーンMQ樹脂強化シリコーンエラストマーエマルジョン

水性シリコーンエマルジョンは、水の蒸発で樹脂強化エラストマーフィルムを形成する。エマルジョン組成物は、(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シリコーンMQ樹脂、および(iii)有機官能性ポリシロキサン、から構成されるシリコーン混合物からなる分散相を含む。水性シリコーンエマルジョンは、成分、(i)から(iii)を混合し、混合物を形成し、混合物に乳化剤および水を添加し、成分を混合して水性ベースエマルジョンを得、架橋を促進するために、ベースエマルジョンのpHを酸性または塩基性pHに調整し、引き続いてエマルジョンを中和することによって調製される。エラストマーフィルムは、エマルジョンを基体上で周囲条件で乾燥させることによって得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の蒸発で樹脂強化エラストマーを形成することができる水性シリコーンエマルジョンに関する。特に、エマルジョンの分散相は、(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シリコーンMQ樹脂、および(iii)有機官能性ポリシロキサンの架橋生成物を含む。エマルジョンを調製するプロセスは、この3種のシリコーン成分(i)から(iii)を混合し、次いで、水性ベースエマルジョンを得るためにこの混合物を乳化することによって実施される。次いで、水性ベースエマルジョンのpHを架橋を促進するために調整し、引き続いて中和する。このようなエマルジョン、ならびにこのようなエマルジョンを蒸発させることによって生成される樹脂強化エラストマーのフィルムは、強化の主な供給源として、架橋剤として、コロイドシリカおよび反応性オルガノシランをしばしば含む従来技術の典型的エマルジョンに優るいくつかの利点を有する。例えば、本発明の組成物は、良好なポリマーおよびエマルジョン安定性、均質な強化を提供し、これらは、通常は従来技術のエマルジョンに存在する揮発性有機化合物および金属触媒を含まない。
【背景技術】
【0002】
基体上で乾燥すると架橋してエラストマーフィルムとなる水性シリコーン分散液は、当技術分野で知られている。1つのタイプは、主な成分として縮合および水除去により架橋し得るポリジオルガノシロキサンを使用している。このような分散液は、通常は(i)α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサンなどのヒドロキシ基含有ポリジオルガノシロキサンの水中油型(O/W)エマルジョン、(ii)縮合触媒、(iii)架橋剤、および(iv)場合によって非ケイ質無機充填剤を含む。最も好ましい縮合触媒は、ジアルキルスズジカルボキシレートなどの有機金属化合物である。一般に、これらのヒドロキシ末端封鎖ポリジオルガノシロキサンエマルジョンは、前重合された線状シリコーンを、アニオンおよび/もしくはノニオン界面活性剤で機械的に乳化することによって、またはアニオン界面活性剤含有酸性系において、線状または環式オリゴマーシロキサンをエマルジョン重合することによって生成される。
【0003】
一般に、架橋に使用される機作は、3つの主な種類に分けられる。第1の種類においては、コロイドシリカまたはアルカリ金属ケイ酸塩を架橋剤として使用し、これを有機金属触媒と、しかも高pHで水性分散液中で混合し、ポリマーを架橋して、エラストマーにする。第2の種類においては、アルコキシシランを架橋剤として使用し、エマルジョンをシリカまたは非ケイ質充填剤で充填する。第3の種類においては、反応性シリコーン樹脂または金属シリコネートを使用して、ヒドロキシ末端封鎖ポリジオルガノシロキサンを強化および/または架橋する。
【0004】
架橋剤として、コロイドシリカまたはケイ酸塩をベースとする種類1の分散液には、限定された貯蔵安定性という固有の問題がある。エマルジョンをエージングすることによる、または二価スズ触媒を使用することによるなどの、この問題を部分的に克服する一定の手段をとることはできる。しかしながら、貯蔵安定性問題は、中性のエマルジョンは、貯蔵の際安定でなく、貯蔵後、エラストマーに硬化しないので、解決することが困難である。最も良く知られた技術的解決は、分散液を高pHで貯蔵するものであるが、高pHは、しばしばある種の用途で不適合なことがある。さらに、乾燥してエラストマーフィルムを硬化する際に、有機スズ塩などの有機金属触媒が必要であり、金属触媒の存在は、多くの最終用途において必ずしも望ましくない。コロイドシリカまたはアルカリ金属ケイ酸塩を含む分散液に関連する他の固有の問題は、シリカがエマルジョンの乾燥の際に凝集する可能性があり、機械的特性の劣った不均質なフィルムを形成することである。さらに、このような分散液中のシリカ粒子がシリコーン-水界面に存在し、その結果、シリカが油相内に分布しているとした場合とは異なって、シリコーンの架橋および強化が、より効率的でないことを示す形跡がある。
【0005】
種類2の分散液は、必然的に副生成物揮発成分としてアルコールを生成する。結果として、かなりの量のアルコキシシランが内蔵された場合は、分散液の用途が非常に制約されることがある。さらに、通常はアルコキシシランを水相に添加すると、注意深く添加しないとエマルジョンのゲル化を引き起こすことが知られている。種類3においては、このような分散液中のシリコーン樹脂またはシリコネートは、通常はD(R2SiO2/2)単位およびT(RSiO3/2)単位、またはM(R3SiO1/2)単位、D単位およびT単位の構成を有する。まれな例において、MおよびQ(SiO4/2)単位を含有するシリコーン樹脂が使用される場合、一般にこれはトルエン中の溶液の形態であり、さらにまた市場においてそれらの使用を制約する。
【特許文献1】米国特許出願第10/346,544号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によるエマルジョンは、知られている組成物とは異なり、それらは、エマルジョンから水を蒸発させて、シリコーンMQ樹脂強化エラストマーフィルムを形成する際に、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンの架橋および強化のためのシリコーンMQ樹脂により調製される。また、これらのエマルジョンは、シリコーンMQ樹脂を大部分含み、金属含有触媒を含まない。本発明による組成物は、次を含む多くの利点を提供する。(i)エマルジョン液滴における、ならびに乾燥フィルムにおける良好なポリマー安定性、(ii)周囲条件下で、水蒸発により、架橋が十分迅速に生じ、エラストマーフィルムになる、(iii)組成物が、個々のシリカ粒子による代わりに、シリコーンMQ樹脂により架橋および強化を行うので、乾燥フィルムは、巨視的にも、微視的にも均質であり、(iv)架橋および強化が、シリコーンオイル相を通じて生じ、領域分離がないので本質的に優れた機械的特性を生じ、(v)エマルジョンは揮発性有機化合物を含まない、(vi)金属含有触媒の使用が排除されている、および(vii)広範囲の樹脂対線状比を有し、最終製品において広範囲の機械的特性を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、架橋シリコーンエラストマーを含む水性シリコーンエマルジョンを製造する方法を対象とする。エマルジョンは、(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シラノール含有シリコーンMQ樹脂、および(iii)有機官能性ポリシロキサンを合わせ、混合して、シリコーン混合物を形成すること;前記シリコーン混合物に、少なくとも1種の乳化剤および水を添加して混合し、水性のシリコーンベースエマルジョンを得ること;架橋シリコーンエラストマーを形成する際に、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンとシラノール含有シリコーンMQ樹脂との縮合および架橋を促進するのに必要な酸性または塩基性pHに、水性シリコーンベースエマルジョンのpHを調整するために、水性シリコーンベースエマルジョンに十分量の酸性または塩基性化合物を添加すること;および架橋シリコーンエラストマーを含む水性シリコーンエマルジョンを中和することによって調製される。水性シリコーンエマルジョンは、基体に塗布することができ、周囲条件下で乾燥して、エラストマーシリコーンフィルムが得られる。
【0008】
本発明のこれらおよび他の特徴は、次の詳細な説明の考察から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による水性シリコーンエマルジョンは、(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シリコーンMQ樹脂および(iii)有機官能性ポリシロキサン、を含む分散相を先ず形成することによって調製される。成分(i)から(iii)を含む分散相を混合して、シリコーン混合物を形成する。乳化剤および水を、シリコーン混合物に添加し、成分を混合して水性ベースエマルジョンを得、ベースエマルジョンのpHを架橋を促進するために酸性または塩基性pHに調整し、エマルジョンを中和する。エマルジョンを基体上で周囲条件下で乾燥することによってエラストマーフィルムが得られる。
【0010】
一般に、水性ベースエマルジョンは、同時係属中の米国特許出願第10/346,544号(2003年1月16日出願、標題「シリコーン樹脂エマルジョンを製造する方法」、本発明と同一譲渡人に譲渡され、参照により本明細書に合体する('544号出願))において詳細に記載されている方法で、およびプロセスによって調製される。同時係属中の出願は、水性ベースエマルジョンを製造する方法を記載しているが、本発明の構想、すなわち、架橋を促進するために水性ベースエマルジョンのpHを酸性または塩基性pHに調整すること、エマルジョンを中和すること、およびエマルジョンを基体上で周囲条件下で乾燥することによってエラストマーフィルムを得ること、を教示または示唆してはいない。
【0011】
この点に関しては、エラストマーを形成するための架橋機作は、酸性または塩基性化合物を水性ベースエマルジョンに添加することによって開始および/または触媒されることに留意されたい。酸性または塩基性化合物を添加すると、シリコーンMQ樹脂上に存在するシラノール基、および線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン上に存在するシラノール基が互いに縮合し、シリコーンMQ樹脂を線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンと架橋させて、エラストマーシリコーンを形成する。
【0012】
本発明による水性シリコーンエマルジョンは、水中油型(O/W)エマルジョンである。水性シリコーン(O/W)エマルジョンの油相は、(i)1〜95重量部、好ましくは40〜90重量部の線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)5〜60重量部、好ましくは10〜40重量部のシラノール基含有シリコーンMQ樹脂、および(iii)0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部の有機官能性ポリシロキサン、の混合物である。
【0013】
線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンは、α,ω-ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンであり、この中の有機基は、一価炭化水素基または1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む官能性置換炭化水素基であることができる。有機基は、一価置換および非置換アルキル基およびアリール基(メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、およびフェニルなどの)などの一般の有機基である。好ましくは有機基の少なくとも80パーセントは、メチル基である。線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンは、粘度0.65〜100,000センチストーク(mm2/s)、好ましくは30〜10,000センチストーク(mm2/s)を有することができる。
【0014】
本明細書では、頭字語MQは、4個の符号M、D、TおよびQから得られ、これらは≡Si-O-Si≡結合によって結合される、シロキサン単位を含む有機ケイ素化合物中に存在する構造単位の官能基を表す。一官能(M)単位は、R3SiO1/2を表す;二官能基(D)単位はR2SiO2/2を表す;三官能(T)単位は、RSiO3/2を表し、分枝線状シロキサンの形成をもたらす;および四官能(Q)単位はSiO4/2を表し、架橋した樹脂状組成物の形成をもたらす。Rは一価有機基、好ましくはメチルなどの炭化水素基を表す。したがって、MQは、シロキサンが全て一価M単位および四価Q単位、またはシロキサンを樹脂状にする高百分率のMおよびQを含む場合に使用される。
【0015】
本発明によるシリコーンMQ樹脂は、構造MxQy[式中、MはR3SiO1/2単位を表し、QはSiO4/2単位を表し、およびRはヒドロキシ、一価炭化水素基、または1〜6個の炭素原子を有する官能性置換炭化水素基、好ましくはメチル基である]の、シラノール基含有樹脂である。文字xおよびyは数を表し、x:yの比は、0.6〜0.9であり、但し、樹脂1分子当り、M単位中のケイ素原子に結合した平均して少なくとも3個のヒドロキシ基が存在する。
【0016】
有機官能性ポリシロキサンは、一般式(R13SiO1/2)a(R22SiO2/2)b(R3SiO3/2)c[式中、R1、R2、およびR3は同一または異なった、炭化水素基または1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する有機官能性置換炭化水素基であり;但し、少なくとも1個の有機官能性置換炭化水素基が存在し、分子中のケイ素原子に結合しており、有機官能性置換炭化水素基は、アミノ基、エポキシ化アミノ基、第4級アンモニウム基、グリシジル基、メルカプト基、カルボキシル基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基、またはそれらの組合せからなる群から選択される]の組成物である。aの値は、0〜100であり、bは0〜1,000であり、かつcは0〜100であり、但し、a〜cの少なくとも2つはゼロでなく、得られた組成物は室温で流体である。
【0017】
適切な有機官能性基のいくつかの例は、≡SiCH2CH2CH2NH2などのアミノ基、≡SiC4H8NRC2H4NR2[式中、Rは約20パーセント水素および約80パーセントの-CH2CH(OH)CH2CH]などのエポキシ化アミノ基、≡Si(CH2)3OCH2CH(O)CH2などのグリシジル基、≡Si(CH2)3(OCH2CH2)10[OCH2(CH3)CH]4OC(O)CH3などのポリオキシエチレンオキシプロピレン基、≡Si(CH2)3COOHなどのカルボキシル基、≡Si(CH2)3SHなどのメルカプト基、および≡SiC4H8NHC2H4NHCH2CH(OH)CH2N+(CH3)3Cl-などの第4級アンモニウム基である。
【0018】
本発明による1つの特に好ましい有機官能性ポリシロキサンは、次の構造のアミノ官能性ポリシロキサン流体である:
【0019】
【化1】

【0020】
[式中、R'は、ヒドロキシル、メチル基、または1〜18個の炭素原子を有する、他の炭化水素または官能性置換炭化水素基であることができ;Zは、アミノエチルアミノプロピル基またはアミノエチルアミノイソブチル基;pおよびqは、1〜1,000の整数を表し、但しq/pは、0.02〜0.1である。]
特に有用なアミノ官能性ポリシロキサンは、いくつかのアミン水素原子がエポキシ官能基により置換された上の構造の流体である。
【0021】
使用される線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンの量と、シリコーンMQ樹脂との間の比は、シリコーンエラストマーの最終的特性を決めることになる。したがって、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンのシリコーンMQ樹脂に対する比によって、特性の所望の範囲を変化させることができる。例えば、シリコーンMQ樹脂のレベルを上げると、コーティング用途で最も適切な、破断伸度の小さい、高弾性率、および高引張り強度のより硬質のフィルムをもたらす。これに反し、シリコーンMQ樹脂含有量が低いと、破断伸度の大きい、低弾性率および低引張り強度のフィルムをもたらし、これは、適切な充填剤と組み合わせた場合に、シーラントとして使用することができる。
【0022】
したがって、本発明の主な利点の1つは、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンと、シリコーンMQ樹脂との間の混合比を単に変化させることによって広い用途範囲を得られることである。線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンのシリコーンMQ樹脂に対する、いくつかの有用かつ実用的割合および/または比は、90:10から40:60であると求められている。より高含有量のシリコーンMQ樹脂も可能であるが、乳化に適する流動性のある状態に混合物を維持するためには、加圧および/または加熱ミキサーなどの特殊な装置を必要とする。
【0023】
この点に関しては、使用される有機官能性ポリシロキサンの相対量は、'544号出願に記載の方法による乳化のプロセスの間、転化を助けるのに十分なレベルに維持されるべきであることに留意されたい。しかし経済的理由で、それ以上は必要ない。したがって、シリコーンMQ樹脂の、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンに対する比が低い、すなわち0.2未満の場合には、有機官能性ポリシロキサンを、乳化を容易にするためだけで含ませる必要はないであろう。有機官能性ポリシロキサンのタイプの選択およびその量は、水性シリコーンエマルジョンの所望の特性、ならびに得られる生成したエラストマーシリコーンフィルムの所望の特性に応じたものであるべきである。このことは、有機官能性基のタイプを選択して、目的の用途に特に適する、シリコーンMQ樹脂強化有機官能性シリコーンエラストマーを提供することができるという点で、本発明のさらなる利点である。
【0024】
本明細書において使用に適する乳化剤の範囲には、アニオン、カチオン、ノニオン、両性およびそれらの混合物が含まれ得るが、2種のノニオン界面活性剤からなる混合物を使用するのが最も好ましく、この混合物において組み合わせたHLBが11.0〜16.0になるように、一方のノニオン界面活性剤は、低HLB(親水性-親油性比)を有し、他方のノニオン界面活性剤は高HLBを有する。いくつかの適切なノニオン界面活性剤には、C12〜16アルコール部分などの長鎖脂肪アルコール基または脂肪酸基を有するエチレンオキシドの縮合物;アミンまたはアミドとエチレンオキシドとの縮合物;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの縮合生成物;グリセロール、スクロースまたはソルビトールのエステル;脂肪酸アルキロールアミド;スクロースエステル;ポリシロキサンポリオキシアルキレンコポリマー;フッ素タイプ界面活性剤;脂肪アミンオキシドが含まれる。最も適切なノニオン界面活性剤には、The Dow Chemical Company,Midland,Michiganにより商標TERGITOL(登録商標)の下に販売されているエトキシル化アルコールが含まれる。いくつかの例には、エトキシル化トリメチルノナノールとしても知られるエトキシル化アルコールであるTERGITOL(登録商標)TMN-6、およびC12〜C14第2級アルコールエトキシレートとしても知られるエトキシル化アルコールであるTERGITOL(登録商標)15-S-15が含まれる。本発明により水性シリコーンエマルジョンを調製する際に使用される乳化剤の特定の量は重要ではなく、適当なエマルジョン液滴径が与えられれば十分である。
【0025】
水性シリコーンエマルジョンは、シリコーンベースエマルジョンに、pHを酸性または塩基性に調整して、架橋反応を促進および/または開始するために、適当な無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基を添加することによって触媒される。例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物およびトリエタノールアミンなどのアミンが、シリコーンベースエマルジョンのpHを9以上に調整する際に使用することができる。短い熟成期間の後に、シリコーンエラストマーを含む得られたエマルジョンを、カルボン酸またはクエン酸などの酸の添加によって中和することができる。別法としては、シリコーンベースエマルジョンを、先ず酸の添加によってpH4以下にし、次いで、引き続いて塩基で中和する。
【0026】
当技術分野において知られている他の添加剤(ケイ質および非ケイ質充填剤などの);接着性促進剤(有機官能性シランおよび有機官能性シランの加水分解生成物などの);および殺生剤を、本発明によるエマルジョン組成物中に含ませることができる。このような添加剤は、調製の間の適当な段階で、エマルジョン組成物に添加することができる。本発明のエマルジョン組成物におけるシリコーンの最終含有量は、20〜70重量パーセントの範囲であり得る。
【0027】
手順的には、水の蒸発により樹脂強化エラストマーフィルムを形成する、水性シリコーンエマルジョンを製造する方法は、(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シリコーンMQ樹脂、および(iii)有機官能性ポリシロキサンを、シリコーン成分(i)〜(iii)の均質な混合物が得られるまで混合することによって開始される。しかし、使用されるシリコーンMQ樹脂が、トルエンなどの有機溶媒中の溶液の形態である場合には、溶媒中の樹脂溶液を、先ず線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンと混合し、引き続いて、溶媒をストリッピングして、シリコーンMQ樹脂および線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンのブレンドを得る。
【0028】
次いで、(i)および(ii)のブレンドを有機官能性ポリシロキサンと混合する。乳化剤を、次いで(i)〜(iii)の混合物に添加し、均質になるまで混合する。(i)〜(iii)のシリコーン混合物100重量部当り、通常は2〜20重量部の初期量の水を、(i)〜(iii)および乳化剤を含む混合物に、一度に添加し、エマルジョンに転化するのに十分なせん断応力を生じる中程度から高混合速度で混合する。次いで、残余の水を添加して、エマルジョンを所望の濃度にし、水性シリコーンベースエマルジョンを形成する。
【0029】
水性シリコーンベースエマルジョンのpHを9以上に、適当量の塩基性化合物(例えば、アルカリ金属水酸化物、アミン、またはそれらの水溶液などの)を添加することによって調整する。水性シリコーンベースエマルジョンを次いで、熟成期間、通常は数時間から1日、撹拌下に保持し、架橋反応を生じさせる。次いで、対応する量のクエン酸などの酸を添加して、エマルジョンを中和する。別法としては、水性シリコーンベースエマルジョンを、先ず酸でpH4以下にし、熟成させて、次いで、塩基で中和することができる。塩基性pHでの熟成が好ましい。
【0030】
シリコーンMQ樹脂強化エラストマーは、水性シリコーンベースエマルジョンの水蒸発
によって生成することができる。水蒸発は、周囲条件または高温で実施することができる。通常は、硬化されたエラストマーシリコーンフィルムは、熟成水性シリコーンエマルジョンを、基体上で周囲条件下で乾燥することによって、約48時間以内に生成することができる。エラストマーシリコーンフィルムは、平滑であり、良好な弾性および強度を示し、その性質は、乾燥されるエマルジョン組成物の詳細に依存するであろう。
【0031】
以下の実施例を本発明をさらに詳細に例示するために記載する。別に示さない限り、全ての部および百分率は、重量で表す。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
粘度2,000センチストーク(mm2/s)の線状ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを、トルエン中のシリコーンMQ樹脂溶液と混合した。樹脂は、数平均分子量約4,300のシラノール担持シリコーンMQ樹脂であり、平均構造[HO(CH3)2SiO1/2]0.2[(CH3)3SiO1/2]0.5[SiO4/2]を有する。混合物を80℃で真空蒸留してストリッピングし、トルエンを除去した。ストリッピング後、混合物は、線状ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン70重量%およびシリコーンMQ樹脂30重量%を含んでいた。Lightning銘柄の2個の遠心羽根車を備えたミキサーを使用して、混合物56.8グラムをアミノ官能性ポリシロキサン流体10.0グラムと混合した。流体は、粘度4,000センチストーク(mm2/s)のC13〜C15アルコール末端アミノ官能性ポリジオルガノシロキサンからなる。流体は、平均して、約98モルパーセントのジメチルシロキサン単位、および、2モルパーセントのアミノエチル/アミノイソブチルメチルシロキサン単位を含んでいた。流体中に存在するアミン水素約80モルパーセントは、グリシドールと反応させてあり、流体は約11重量パーセントの過剰のC13〜C15アルコールを含んでいた。ノニオン界面活性剤TERGITOL(登録商標)TMN-6約10.7グラムおよび予備加温したTERGITOL(登録商標)15-S-40 6.6グラムを混合物に添加し、混合した。水約13.3グラムを添加し、700RPMで混合すると、透明なゲルエマルジョンが直ぐに生成した。別の部分の水60.0グラムを添加し、600RPMで30分間混合すると、微細な青みがかった白色エマルジョンが生成した。青みがかった白色エマルジョンを、次いで、別の水100グラムで希釈した。水酸化ナトリウムの10重量%水溶液約4.10グラムを添加し、エマルジョンを24時間、ゆっくりと撹拌した。翌日、10重量パーセントの酢酸水溶液6.13gを熟成エマルジョンに滴下添加し、30分間混合した。得られたエマルジョンは、平均粒径112ナノメートル(0.112マイクロメーター)を有した。エマルジョンをプラスチックペトリ(Petri)皿に室温で注型し、24時間乾燥させ、良好な強度を有する平滑なエラストマーフィルムを形成した。エマルジョンは6カ月間を超えて安定であった。
【0033】
(実施例2)
Hauschild銘柄歯科用混合カップを使用して、シリコーンMQ樹脂および線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンを含む、ストリッピングした実施例1の混合物5.67gをアミノ官能性ポリシロキサン流体1グラムと、混合した。流体は、実施例1において使用した流体95重量パーセント、および粘度3,100センチストーク(mm2/s)のトリメチルシロキシ末端ジメチル/メチル(グリシドキシプロピル)/メチル(プロピル)ポリエチレンオキシドプロピレンオキシド)(メチル)ポリシロキサン約5重量パーセントを含んでいた。TERGITOL(登録商標)TMN-6約1.07グラムおよび予備加温したTERGITOL(登録商標)15-S-40 0.60グラムを混合物に添加し、混合した。水約1.33グラムを混合物に添加し、試料を3,000RPMで22秒間回転撹拌すると、透明なゲルエマルジョンが形成された。水、2.67グラムを続けて2回、次いで、13.5グラムをエマルジョンに添加し、回転撹拌した。得られたエマルジョンは、青みがかった白色であり、平均粒径121ナノメートル(0.112マイクロメーター)を有する粒子を含んでいた。エマルジョンに、水酸化ナトリウムの10重量%水溶液約0.33グラムを添加し、試料を電磁撹拌機上で、6時間維持した。エマルジョンを酢酸の10重量%水溶液0.5グラムで中和した。エマルジョンをプラスチックペトリ皿に室温で注型し、24時間乾燥し、良好な強度を有する平滑なエラストマーフィルムを形成した。フィルムは、実施例1において調製されたフィルムよりも柔軟な感触を有していた。
【0034】
本発明によるシリコーンMQ樹脂含有エマルジョンは、弾性、強度などの性能特性を付与することができ、フィルム形成に役立つ。したがって、これらは、コーティング用途、シーラント、および家庭用、化粧用およびパーソナルケアー用途に使用することができ、強い耐久性、保護的品質、耐水性、および遮断特性を提供する。これは、シリコーンエラストマーを提供する際に、炭化水素ベースの溶媒の使用を回避する必要がある用途において使用することができる。
【0035】
本発明の本質的特徴を逸脱することなく、本明細書において記載されている、化合物、組成物、および方法において、他の変形形態をとることができる。本明細書に具体的に示されている本発明の実施形態は、例示的なものに過ぎず、添付の特許請求の範囲の記載を除外して範囲を限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シラノール含有シリコーンMQ樹脂、および(iii)有機官能性ポリシロキサンを混合して、シリコーン混合物を形成すること;前記シリコーン混合物に、少なくとも1種の乳化剤および水を添加して混合し、水性のシリコーンベースエマルジョンを得ること;架橋シリコーンエラストマーを形成する際に、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンとシラノール含有シリコーンMQ樹脂との縮合および架橋を促進するために必要な酸性または塩基性pHに水性シリコーンベースエマルジョンのpHを調整するために、水性シリコーンベースエマルジョンに十分量の酸性または塩基性化合物を添加すること;ならびに架橋シリコーンエラストマーを含む水性シリコーンエマルジョンを中和すること;
を含む架橋シリコーンエラストマーを含む水性シリコーンエマルジョンの製造方法。
【請求項2】
有機官能性ポリシロキサンが、式(R13SiO1/2)a(R22SiO2/2)b(R3SiO3/2)c[式中、R1、R2およびR3は、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素または有機官能性置換炭化水素基であり;但し、少なくとも1種の有機官能性置換炭化水素基は、ポリシロキサン中のケイ素原子に結合しており、有機官能性置換炭化水素基は、アミノ基、エポキシ化アミノ基、第4級アンモニウム基、グリシジル基、メルカプト基、カルボキシル基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基、またはそれらの組合せからなる群から選択され;aは0〜100であり、bは0〜1,000であり、cは0〜100であり、但し、a〜cの少なくとも2つはゼロでない]
を有し、有機官能性ポリシロキサン組成物が室温で流体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳化剤が、11.0〜16.0の複合親水性-親油性比(HLB)を有する2種のノニオン界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
架橋シリコーンエラストマーを形成する際に、線状ヒドロキシ末端ポリジオルガノシロキサンとシラノール含有シリコーンMQ樹脂との縮合および架橋を促進するために、塩基性化合物を水性シリコーンベースエマルジョンに添加し、pHを9以上の値に調整する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法によって調製された水性シリコーンエマルジョン。
【請求項6】
請求項5に記載の水性シリコーンエマルジョンを基体に塗布し、周囲条件下で乾燥してエラストマーシリコーンフィルムにする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって調製されたエラストマーシリコーンフィルム。

【公表番号】特表2007−508413(P2007−508413A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533818(P2006−533818)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/020198
【国際公開番号】WO2005/040250
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】