説明

シリンダの位置計測装置

【課題】
シリンダチューブが厚く磁気シールドとして機能している場合であっても、簡単な構造で低コストをもって、磁力センサで磁力線を検出しやすくして、シリンダの位置計測を精度を向上させる。
【解決手段】
ピストン201に磁石350を設ける。シリンダチューブ250の外側、磁石350で生成された磁力を検出する磁力センサ301、302を設ける。磁性材料で構成され、磁力センサ301、302を覆うひさしであって、磁石350を起点とする磁力線が磁力センサ301、302を通り磁石350に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されているひさし310を設ける。磁力センサ301、302は、磁性体で構成されたバンドであって、シリンダチューブ250の外周に圧接されて固定されたバンド320に、装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチューブ内部を直動するロッド、ピストンの位置を計測するシリンダの位置計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ等のシリンダチューブの内部をロッドとともに直動するピストンに永久磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外部に磁力センサを設け、磁力センサを通過する磁力線を検出することによって、シリンダのピストン(ロッド)の位置を計測するという装置は、既に公知となっている。
【0003】
下記特許文献1には、シリンダチューブ内部のピストンに、永久磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外周のほぼ半分を覆うセンサ取付具をシリンダチューブに固定し、このセンサ取付部に磁力センサを装着するという発明が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、シリンダヘッドに、ロッドの直動量を回転量として検出するロータリエンコーダを設けるとともに、シリンダチューブの途中にあってチューブ外周面にリセット用磁力センサを設け、このリセット用磁力センサで、チューブ内部を直動するピストンに固定された磁石で発生した磁力を検出して、その磁力がピーク値に達したときに、ロータリエンコーダの検出値から得られる計測位置を原点位置にリセットするという発明が記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、シリンダチューブ内部をロッドとともに直動するピストンに永久磁石を設けるとともに、シリンダチューブの外側に、磁力センサを、合成樹脂によって囲み高透磁率材料の磁気バイパス上に配置する態様で、設けるという発明が記載されている。
【特許文献1】特開平11−51011号公報
【特許文献2】実開平5−75603号公報
【特許文献3】特許第3501625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、油圧シリンダのチューブは、内部の高圧の圧油を密封して高圧の圧油によって容易に変形や損傷が生じないように設計する必要があり、強度が高く厚い磁性材料(鉄鋼材)で形成されている。
【0007】
このためシリンダチューブの壁は、内部の永久磁石で生成された磁力線が外部に漏れることを防止する磁気シールドとして機能する。それゆえ、磁力センサで検出される信号レベルは、ベースレベルに比して極めて低く、信号レベルの変化は、極めて緩慢である。また、信号レベルは、他の磁界発生源(ノイズ)やピストンのガタや温度等の影響を受けやすい。このため磁力センサの検出信号から正確なストローク位置を計測することは難しく、位置計測の精度が劣化するおそれがある。なお、磁力線を透過しやすくするためにシリンダチューブを高透磁率材で構成することも可能であるが、材料強度が弱くコストが高くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、シリンダチューブが厚く磁気シールドとして機能している場合であっても、簡単な構造で低コストをもって、磁力センサで磁力線を検出し易くして、シリンダの位置計測を精度を向上させることを解決課題とするものである。
【0009】
なお、特許文献1、2は、単に、磁力線のシリンダチューブの外周に磁力センサを取り付けるということしか記載されておらず、シリンダチューブの外部の磁力センサでは磁力線が検出されにくいという問題点の指摘やそれに対する技術的課題、技術的解決手段は何ら記載されていない。また、特許文献3には、磁力センサを合成樹脂によって囲み高透磁率材料の磁気バイパス上に配置するという構成が記載されているが、構造が複雑であり高コストを招く。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた磁石(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に設けられ、前記磁石(350)で生成された磁力を検出する磁力センサ(301、302)と、
磁性材料で構成され、前記磁力センサ(301、302)を覆うひさしであって、前記磁石(350)を起点とする磁力線が前記磁力センサ(301、302)を通り前記磁石(350)に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されているひさし(310)と
を備えたことを特徴とする。
【0011】
第2発明は、第1発明において、
前記磁力センサ(301、302)は、
磁性体で構成されたバンドであって、前記シリンダチューブ(250)の外周に圧接されて固定されたバンド(320)に、
装着されていること
を特徴とする。
【0012】
第3発明は、
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた磁石(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に設けられ、前記磁石(350)で生成された磁力を検出する磁力センサ(301、302)と、
磁性体で構成され、前記磁力センサ(301、302)が装着されるバンドであって、前記シリンダチューブ(250)の外周に圧接されて固定されたバンド(320)と
を備えたことを特徴とする。
【0013】
第4発明は、第1発明において、
磁力センサ(301、302)は、ひさし(310)に固定され、ひさし(310)には、磁力センサ(301、302)に電気的に接続されるハーネスの端子(312)が内蔵されていること
を特徴とする。
【0014】
第1発明を図面に即して説明すると、図2に示すように、ひさし310は、磁性材料で構成されており、磁力センサ301、302の上面300T、後面300Gを覆うように配置されている。ひさし310は、炭素鋼、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0015】
磁力センサ301を含むモールド材303は、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側が、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300B側がシリンダチューブ250の外周面に密着されている。
【0016】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301、302の底面300Bを配置して、磁力センサ301、302を、ひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構成となっている。
【0017】
図3(a)に示すように、ひさし310があることによって、磁石350のN極を起点として磁力線は、シリンダチューブ250、磁力センサ301、ひさし310を透過し、磁石350のS極に戻る経路を生成する。
【0018】
このように本第1発明によれば、磁力センサ301、302を覆うひさし310を設け、磁石350を起点とする磁力線がシリンダチューブ250、磁力センサ301、302、ひさし310を通過して磁石350に戻る経路を形成するようにしたので、たとえシリンダチューブ250が強度を確保するために厚いものであったとしても、チューブの250外部に設けられた磁力センサ301、302で磁力線を確実に検出することができるようになる。この結果、磁力センサ301、302の検出結果に基づくロッド202の位置計測精度が飛躍的に向上する。
【0019】
また、第2発明では、第1発明の構成に加えて、磁力センサ301、302は、バンド320によって、シリンダチューブ250の外周面に固定される。バンド320は、磁性材料で構成されているため、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となり、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301、302に集中的に集められる。ひさし310とバンド320の相乗的な効果により、磁石350で生成された磁力は、磁力センサ301、302に集中的に集められる。
【0020】
また、バンド320は、シリンダチューブ250の外周に圧接されて固定されるため、シリンダチューブ250にネジ穴を形成したり、シリンダチューブ250の外周を溶接するなどの加工、処理を施すことなく、シリンダチューブ250の外周に磁力センサ301、302を固定することができる。シリンダチューブ250に加工、処理を施す必要がないため、シリンダチューブ250の厚さを、最低限の厚さに維持することができる。すなわち、シリンダチューブ250に加工、処理を施すことにすると、強度を保つために、チューブ自体を厚くしなければならないが、その必要はない。
【0021】
また、バンド320によって、磁力センサ301、302をシリンダチューブ250の外周に固定するようにしたので、磁力センサ301、302をシリンダチューブ250の長手方向(ピストン201、ロッド202の直動方向)の任意の位置に容易に装着することができる。
【0022】
第3発明は、ひさし310を介することなく、バンド320に磁力センサ301、302を直接、装着することで、シリンダチューブ250の外周に固定する構成も含む。
【0023】
第4発明では、図2に示すように、リセットセンサとしての磁力センサ301、302が、ひさし310に固定されており、ひさし310には、磁力センサ301、302に電気的に接続されるハーネスの端子312が内蔵されている。すなわち、リセットセンサ301、302の筐体310がハーネスのジャンクションボックスを兼ねている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係るシリンダの位置計測装置の実施の形態について説明する。
【0025】
図1(a)は、シリンダ200と、ストローク位置センサとしての回転センサ100と、リセットセンサとしての磁力センサ300の位置関係を、シリンダ200の縦断面図で示している。
【0026】
図1(a)に示すように、シリンダ200の壁であるシリンダチューブ250には、ピストン201が摺動自在に設けられている。ピストン201には、ロッド202が取り付けられている。ロッド202は、シリンダヘッド203に摺動自在に設けられている。シリンダヘッド203とピストン201とシリンダ内壁とによって画成された室が、シリンダヘッド側油室204Hを構成する。ピストン201を介してシリンダヘッド側油室204Hとは反対側の油室がシリンダボトム側油室204Bを構成している。
【0027】
シリンダヘッド203には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミがシリンダヘッド側油室204Hに入り込まないようにするロッドシール205a、ダストシール205bが設けられている。
【0028】
シリンダチューブ250には、油圧ポート206H、206Bが形成されている。油圧ポート206Hを介して、シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、若しくは同油室204Hから油圧ポート206Hを介して圧油が排出される。油圧ポート206Bを介して、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給され、若しくは同油室204Bから油圧ポート206Bを介して圧油が排出される。
【0029】
シリンダヘッド側油室204Hに圧油が供給され、シリンダボトム側油室204Bから圧油が排出されることによって、ロッド202が縮退し、あるいは、シリンダヘッド側油室204Hから圧油が排出され、シリンダボトム側油室204Bに圧油が供給されることによって、ロッド202が伸張する。すなわち、ロッド202は図中左右方向に直動する。
【0030】
シリンダヘッド側油室204Hの外部にあって、シリンダヘッド203に密接した場所には、回転センサ100を覆い、内部に収容するケース207が形成されている。ケース207は、シリンダヘッド203にボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド203に固定されている。すなわち、ケース207(回転センサ100)は、シリンダチューブ250に簡易に取り付けたり、取り外すことができる。
【0031】
回転センサ100を構成する後述する回転ローラ110は、その表面がロッド202の表面に接触し、ロッド202の直動に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ110によって、ロッド202の直線運動が回転運動に変換される。
【0032】
回転ローラ110は、その回転中心軸110cが、ロッド202の直動方向に対して、直交(紙面の背後方向、看者方向)するように配置されている。ケース207には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミが回転ローラ110とロッド202との間に入り込まないようにするダストシール208が設けられている。これにより回転ローラ110とロッド202との間に塵埃等が入り込んで、回転ローラ110が動作不良となるような事態を回避することができる。つまり、回転センサ100は、ケース207に設けられたダストシール208と、シリンダヘッド203に設けられたダストシール205bとによって防塵構造となっている。
【0033】
回転センサ100は、上述した回転ローラ110と、回転ローラ110の回転量を検出する図示しない回転センサ部とを少なくとも備えている。回転センサ部で検出された回転ローラ110の回転量を示す信号は、演算処理部400に送られ、シリンダ200のロッド202の位置(ストローク)に変換される。
【0034】
回転センサ100の回転ローラ110とロッド202と間では、滑り(スリップ)が発生することは避けられず、この滑りによって回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置と、ロッド202の実際の位置との間には、誤差(滑りによる累積誤差)が生じる。そこで、この回転センサ100の検出結果から得られる計測位置を、原点位置(基準位置)にリセットするために、シリンダチューブ250の外部には、リセットセンサとしての磁力センサ300が設けられている。
【0035】
すなわち、ピストン201には、磁力線を生成する磁石350が設けられている。磁石350は、ピストン201、ロッド202の直動方向に対して垂直な図中鉛直方向に、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けられている。なお、磁石350を、ピストン201、ロッド202の直動方向と平行な方向に沿って、N極、S極が配置されるように、ピストン201に設けてもよい。
【0036】
磁力センサ300は、ピストン201の直動方向に沿って所定距離離間されて配置された2個の磁力センサ301、302からなる。磁力センサ301、302は、磁石350で生成された磁力線を透過して、磁力(磁束密度)を検出し、磁力(磁束密度)に応じた電気信号(電圧)を出力する。磁力センサ301、302は、既知の原点位置に設けられている。磁力センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られる計測位置が、原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0037】
また、2個の磁力センサ301、302の検出位置に基づいて、ピストン201、ロッド202の絶対移動距離を計測することができる。たとえば、回転センサ100の回転ローラ110が経年変化によって消耗すると、回転センサ100の検出回転量から得られるロッド202の移動距離は、実際のロッド202の移動距離よりも小さくなるが、ピストン201が2個の磁力センサ301、302間を移動したときに回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離L′と、実際の2個の磁力センサ301、302間の距離Lとの比率L/L′に基づいて、回転センサ100の検出回転量から得られる移動距離を補正することができる。
【0038】
磁力センサ301、302としては、たとえばホールICが使用される。
【0039】
磁力センサ301、302は、ひさし310に装着されている。ひさし310は、バンド320に装着されている。バンド320は、シリンダチューブ250の外周に固定されている。バンド320は、磁性材料によって構成されている。バンド320の材料としては、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0040】
図1(b)は、図1(a)のA−A断面図、つまりシリンダチューブ250の横断面図を示している。
【0041】
バンド320は、シリンダチューブ250の外周に圧接されて固定される。バンド320は、シリンダチューブ250の外径に応じた断面半円弧状のバンド部材320Aと、同じく断面半円弧状のバンド部材320Bとからなり、バンド部材320Aと、バンド部材320Bとは、ボルト321によって締結され、締結されることによりシリンダチューブ250の外周に圧接される。一方のバンド部材320Aには、ひさし310が装着されている。このためシリンダチューブ250にネジ穴を形成したり、シリンダチューブ250の外周を溶接するなどの加工、処理を施すことなくして、シリンダチューブ250の外周に磁力センサ301、302を固定することができる。また、シリンダチューブ250に加工、処理を施す必要がないため、シリンダチューブ250の厚さを、最低限の厚さに維持することができる。すなわち、シリンダチューブ250に加工、処理を施すことにすると、強度を保つために、チューブ自体を厚くしなければならないが、その必要はない。
【0042】
また、バンド320のシリンダチューブ250への固定位置の変更が容易かつ簡単に行え、磁力センサ301、302を、シリンダチューブ250の長手方向(ピストン201、ロッド202の直動方向)の任意の位置に、容易にかつ簡単に装着することができる。
【0043】
(第1実施例)
図2は、磁力センサ301、302と、ひさし310と、バンド320の構成の詳細を示している。
【0044】
図2(a)は、図1(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図を拡大して示している。図2(b)は、図1(b)に対応するシリンダチューブ250の横断面図(図2(a)のA視)を拡大して示している。図2(c)は、図2(a)をZ視方向(図中下方から上方に向かう方向)からみた図である。
【0045】
図2(d)は、磁力センサ301、302の各面を定義する図である。
【0046】
磁力センサ300(301、302)は、直方体形状の部材であり、底面300B、上面300T、前面300F、左右側面300L、300R、後面300Gを有している。
同図2に示すように、磁石350は、ピストン201のシリンダヘッド側油室204Hに臨む面に、ホルダリング351によって固定されている。
【0047】
ホルダリング351と磁石350をピストン201に共締めすることで、磁石350がピストン201に固定される。
【0048】
ひさし310は、磁性材料で構成されており、磁力センサ301、302の上面300T、後面300Gを覆うように配置されている。ひさし310は、炭素鋼、一般構造用鉄鋼材等、通常容易に入手できる磁性材料を使用することができる。
【0049】
ひさし310と磁力センサ301、302の配置は、図2(a)中左右対称であり同様な位置関係にあるので、一方の磁力センサ301を代表させて説明する。
【0050】
ひさし310のバンド固定面310Aは、バンド部材320Aに固定される。ひさし310のチューブ密着面310Bは、シリンダチューブ250の外周面に密着される。
【0051】
磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側が、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300B側がシリンダチューブ250の外周面に密着されている。
【0052】
磁力センサ301の前面300F、左右側面300L、300R側には、真ちゅう製の板材311が設けられる。
【0053】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301、302の底面300Bを配置して、磁力センサ301、302を、ひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構成となっている。
【0054】
一方の磁力センサ301について説明したが、他方の磁力センサ302についても同様にして、ひさし310に装着される。
【0055】
ひさし310には、端子312を備えた端子台313が内蔵されている。また、ひさし310には、図示しないハーネスが挿通される穴であって、端子312に連通する挿通穴314が形成されている。磁力センサ301、302と、端子312とは、図示しない電気信号線によって接続される。端子312には、ひさし310の外部から、挿通穴314を介して、ハーネスが接続される。
【0056】
このように本実施例では、リセットセンサとしての磁力センサ301、302が、ひさし310に固定されており、ひさし310には、磁力センサ301、302に電気的に接続されるハーネスの端子312が内蔵されている。すなわち、リセットセンサ301、302の筐体310がハーネスのジャンクションボックスを兼ねている。
【0057】
上記ハーネスは、演算処理部400に接続される。この演算処理部400では、磁力センサ301、302の検出信号と、回転センサ100の検出信号とが演算処理されて、ロッド202(ピストン201)の直動位置が計測される。すなわち、回転センサ100の検出結果からロッド202の位置が計測されるとともに、磁力線センサ301、302の検出結果に基づいて、回転センサ100の検出結果から得られるロッド202の計測位置が原点位置(基準位置)にリセットされる。
【0058】
図3(a)は、図2(a)に対応する図であり、磁石350の磁極Nを起点とし磁極Sを終点とする磁力線の経路を概念的に示している。
【0059】
図3(b)は、比較例であり、本第1実施例のひさし310が仮にないとした場合の磁力線の経路を概念的に示している。
【0060】
同図3(a)と図3(b)とを対比してわかるように、ひさし310があることによって、磁石350のN極を起点として磁力線は、シリンダチューブ250、磁力センサ301、ひさし310を透過し、磁石350のS極に戻る経路を生成するが、ひさし310がない場合には、磁石350で生成された磁力は、シリンダチューブ250によって遮られてしまいチューブ250外部の磁力センサ301まで磁力線が到達しないか、僅かにしか到達しない。図3では、一方の磁力センサ301について磁力線を示したが、他方の磁力線センサ302についても同様である。
【0061】
また、バンド320は、磁性材料で構成されているため、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となり、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301、302に集中的に集められる。このようにひさし310とバンド320の相乗的な効果により、磁石350で生成された磁力は、磁力センサ301、302に集中的に集められる。
【0062】
以上のように本第1実施例によれば、磁力センサ301、302を覆うひさし310を設け、磁石350を起点とする磁力線がシリンダチューブ250、磁力センサ301、302、ひさし310を通過して磁石350に戻る経路を形成するようにしたので、たとえシリンダチューブ250が強度を確保するために厚い磁性材料で構成されていたとしても、チューブの250外部に設けられた磁力センサ301、302で磁力線を確実に検出することができるようになる。この結果、磁力センサ301、302の検出結果に基づくロッド202の位置計測精度が飛躍的に向上する。
【0063】
つぎに、上記第1実施例の変形例について説明する。
【0064】
(第2実施例)
上述した第1実施例では、バンド320によって、磁力センサ301、302をシリンダチューブ250の外周に固定するようにしているが、磁力センサ301、302の固定方法は任意である。また、第1実施例では、磁力センサ300を2個設けるようにしているが、磁力センサ300は、1個の磁力センサ301だけであってもよい。
【0065】
図4は、シリンダチューブ250の外周に、1個の磁力センサ301が装着されたひさし310を、バンドなしで固定する斜視図にて示している。
【0066】
同図4に示すように、第1実施例と同様に、磁力センサ301は、上面300T、後面300Gが、ひさし310の上面固定面310T、後面固定面310Rそれぞれに固定されている。また、磁力センサ301の底面300Bがシリンダチューブ250の外周面側に配置されている。
【0067】
すなわち、シリンダチューブ250の外周面に、磁力センサ301の底面300Bを配置し、磁力センサ301の上面300T、後面300Gをひさし310によって覆うようにしたため、磁力センサ301の上面300T側、後面300G側に関しては、磁性材料(ひさし310)が配置されるが、磁力センサ301の前面300F側、左右側面300L、300R側に関しては、磁性材料は配置されない(磁性材料から開放されている)構造となっている。
【0068】
図5は、バンド320以外の装着部材で、ひさし310を、シリンダチューブ250の外周に固定する装着例を示している。
【0069】
すなわち、シリンダの種類によっては、シリンダチューブ250の外周の長手方向に沿って、複数のタイロッド260が架け渡された構造のものがある。
【0070】
そこで、ひさし310に、複数(2本)のタイロッド260、260が挿通される挿通穴260Aを形成し、この挿通穴260Aに、タイロッド260を挿通させることで、ひさし310をシリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0071】
(第3実施例)
上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の上面300Tの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも上面300Tの全体を覆う必要はない。
【0072】
また、上述した第1実施例、第2実施例では、ひさし310を、磁力センサ301の後面300Gの全体を覆う形状、大きさとしているが、必ずしも後面300Gの全体を覆う必要はない。
【0073】
図6は、磁力センサ301の一部を覆う形状、大きさに形成されたひさし310の第1例を例示している。
【0074】
図6(a)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)を上面からみた図である。
【0075】
同図6(a)、(b)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の後面300Gについては全体を覆うが、上面300Tについては一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0076】
図6(c)は、図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面図であり、図6(d)は、図6(c)を上面からみた図である。
【0077】
同図6(c)、(d)に示すように、ひさし310は、磁力センサ301の上面300T、後面300Gについて一部を覆う形状、大きさに形成されている。
【0078】
いずれにせよ、ひさし310としては、磁力センサ301(302)をどの程度覆うのかが問題なのではなく、図3(a)で概念的に示したように、磁石350を起点とする磁力線が磁力センサ301を通り磁石350に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されていればよい。
【0079】
(第4実施例)
上述した第1実施例〜第3実施例では、磁力センサ301(302)をひさし310を介してシリンダチューブ250の外周に固定する構造としているが、ひさし310を介することなく、バンド320に磁力センサ301(302)を直接、装着することで、シリンダチューブ250の外周に固定してもよい。
【0080】
図7(a)は図2(a)に対応するシリンダチューブ250の縦断面を示し、図7(b)は図7(a)のA−A断面を示し、図7(c)は図7(a)を上面からみた図である。
【0081】
同図7に示すように、磁力センサ301は、モールド材303に囲まれるようにモールド材303と一体形成されている。磁力センサ301を含むモールド材303は、カバー304によって覆われ、カバー304は、バンド320に接続されている。カバー304は、真ちゅう等の非磁性材料で構成されている。
【0082】
磁力センサ301は、後面300Gがバンド320の側面320Sに配置される態様で、バンド320に装着されている。
【0083】
このため、磁力センサ301の前面300F側、上面300T側、左右側面300L、300R側には、磁性材料が配置されておらず(磁性材料から開放されている)、磁力センサ301の後面300G側については、磁性材料(バンド320)が配置された構造となっている。
【0084】
このように構成した場合にも、バンド320は、シリンダチューブ250の外周方向の磁力線の経路となって、磁力線は、バンド320を透過して、チューブ250の外周方向の一点箇所に設けられた磁力センサ301に集中的に集められるため、チューブ250内部の磁石350で生成された磁力を磁力センサ301で確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1(a)、(b)は、シリンダと回転センサとリセットセンサの関係を説明するために用いたシリンダチューブの断面図である。
【図2】図2(a)、(b)、(c)、(d)は、第1実施例のリセットセンサの構成を示す図である。
【図3】図3(a)、(b)は、磁力線の経路を概念的に本実施例と比較例とを対比して示す図である。
【図4】図4は、第2実施例を例示する図で、バンドなしで、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図5】図5は、第2実施例を例示する図で、バンド以外の装着部材で、ひさしを、シリンダチューブの外周に固定する装着例を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、第3実施例を例示する図で、磁力センサの一部を覆うひさしを構成を示した図である。
【図7】図7(a)、(b)(c)は第4実施例の構成図である。
【符号の説明】
【0086】
100 回転センサ 201 ピストン 202 ロッド 250 シリンダチューブ 300 301、302 磁力センサ(リセットセンサ) 310 ひさし 320 バンド 350 磁石 400 演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた磁石(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に設けられ、前記磁石(350)で生成された磁力を検出する磁力センサ(301、302)と、
磁性材料で構成され、前記磁力センサ(301、302)を覆うひさしであって、前記磁石(350)を起点とする磁力線が前記磁力センサ(301、302)を通り前記磁石(350)に戻る経路を形成するような形状、大きさに形成されているひさし(310)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項2】
前記磁力センサ(301、302)は、
磁性体で構成されたバンドであって、前記シリンダチューブ(250)の外周に圧接されて固定されたバンド(320)に、
装着されていること
を特徴とする請求項1記載のシリンダの位置計測装置。
【請求項3】
シリンダチューブ(250)内部を直動する直動部材(201、202)の位置を計測するシリンダの位置計測装置において、
前記直動部材(201)に設けられた磁石(350)と、
前記シリンダチューブ(250)の外側に設けられ、前記磁石(350)で生成された磁力を検出する磁力センサ(301、302)と、
磁性体で構成され、前記磁力センサ(301、302)が装着されるバンドであって、前記シリンダチューブ(250)の外周に圧接されて固定されたバンド(320)と
を備えたことを特徴とするシリンダの位置計測装置。
【請求項4】
磁力センサ(301、302)は、ひさし(310)に固定され、ひさし(310)には、磁力センサ(301、302)に電気的に接続されるハーネスの端子(312)が内蔵されていること
を特徴とする請求項1記載のシリンダの位置計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−220621(P2006−220621A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36695(P2005−36695)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】