説明

シリンダボア壁の保温構造体、内燃機関及び自動車

【課題】シリンダボア壁の壁温の均一性が高い内燃機関を提供すること。
【解決手段】内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、固定板21と、該固定板21に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面19を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材22、又は該固定板21に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、該固定板21を該シリンダボア壁方向に付勢する弾性部材24と、冷却水の温度が高くなると、該固定板21が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材23と、を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体1a。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボア壁の溝状冷却水流路側の壁面に接触させて配置される保温構造体及びそれを備える内燃機関並びに該内燃機関を有する自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、ボア内のピストンの上死点で燃料の爆発が起こり、その爆発によりピストンが押し下げられるという構造上、シリンダボア壁の上側は温度が高くなり、下側は温度が低くなる。そのため、シリンダボア壁の上側と下側では、熱変形量に違いが生じ、上側は大きく膨張し、一方、下側の膨張が小さくなる。
【0003】
その結果、ピストンのシリンダボア壁との摩擦抵抗が大きくなり、これが、燃費を下げる要因となっているので、シリンダボア壁の上側と下側とで熱変形量の違いを少なくすることが求められている。
【0004】
そこで、従来より、シリンダボア壁の壁温を均一にするために、溝状冷却水流路内にスペーサーを設置し、溝状冷却水流路内の冷却水の水流を調節して、冷却水によるシリンダボア壁の上側の冷却効率と及び下側の冷却効率を制御することが試みられてきた。例えば、特許文献1には、内燃機関のシリンダブロックに形成された溝状冷却用熱媒体流路内に配置されることで該溝状冷却用熱媒体流路内を複数の流路に区画する流路区画部材であって、前記溝状冷却用熱媒体流路の深さに満たない高さに形成され、前記溝状冷却用熱媒体流路内をボア側流路と反ボア側流路とに分割する壁部となる流路分割部材と、前記流路分割部材から前記溝状冷却用熱媒体流路の開口部方向に向けて形成され、かつ先端縁部が前記溝状冷却用熱媒体流路の一方の内面を越えた形に可撓性材料で形成されていることにより、前記溝状冷却用熱媒体流路内への挿入完了後は自身の撓み復元力により前記先端縁部が前記内面に対して前記溝状冷却用熱媒体流路の深さ方向の中間位置にて接触することで前記ボア側流路と前記反ボア側流路とを分離する可撓性リップ部材と、を備えたことを特徴とする内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−31939号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、引用文献1の内燃機関冷却用熱媒体流路区画部材によれば、ある程度のシリンダボア壁の壁温の均一化が図れるので、シリンダボア壁の上側と下側との熱変形量の違いを少なくすることができるものの、近年、更に、シリンダボア壁の上側と下側とで熱変形量の違いを少なくすることが求められている。
【0007】
従って、本発明の課題は、シリンダボア壁の壁温の均一性が高い保温構造体及びそれを備える内燃機関並びに該内燃機関を有する自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、シリンダボア壁の壁面と接することにより、シリンダボア壁の壁面を保温するための保温構造体に、保温構造体をシリンダボア壁方向に付勢する弾性部材又は保温構造体をシリンダボア壁から遠ざかる方向に付勢する弾性部材と、冷却水の温度が高くなると、保温構造体がシリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材とを取り付けた保温構造体は、冷却水の温度が低いときには、弾性部材又は温度変形部材により、シリンダボア壁の壁面に押し付けられて、シリンダボア壁の壁面に接するので、シリンダボア壁が保温され、一方、冷却水の温度が高いときには、温度変形部材の作用により、保温構造体がシリンダボア壁から離間するので、シリンダボア壁の壁面付近を冷却水が流れ、シリンダボア壁の壁面が冷却されること、及びこれらの作用及び効果により、シリンダボア壁の壁面の温度を一定の温度範囲に保つことができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体を提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁から遠ざかる方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体を提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、本発明(1)又は(2)のシリンダボア壁の保温構造体が、シリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置されていることを特徴とする内燃機関を提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、本発明(3)の内燃機関を有することを特徴とする自動車を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内燃機関のシリンダボア壁の壁温の均一性を高くすることができる。そのため、本発明によれば、シリンダボア壁の上側と下側とで熱変形量の違いを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体がシリンダブロックに設置されている状態を示す模式的な平面図である。
【図2】図1のx−x線断面図である。
【図3】図1に示す中のシリンダブロックの斜視図である。
【図4】本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な正面図である。
【図5】本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な背面図である。
【図6】本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な平面図である。
【図7】図4のx−x端面図である。
【図8】図4のy−y端面図である。
【図9】温度変形部材が変形する様子を示す模式的な端面図である。
【図10】本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体が、溝状冷却水流路内で移動する様子を示す模式的な側面図である。
【図11】本発明の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体が、溝状冷却水流路内で移動する様子を示す模式的は端面図である。
【図12】枠部材がシリンダボア壁に接しているときの冷却水の流れを示す模式図である。
【図13】枠部材がシリンダボア壁から離間しているときの冷却水の流れを示す模式図である。
【図14】本発明(1)の第二の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な正面図である。
【図15】図14のx−x端面図である。
【図16】本発明(2)の第三の形態例のシリンダボア壁の保温構造体が、溝状冷却水流路内で移動する様子を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体である。
【0016】
本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体及び本発明の内燃機関について、図1〜図13を参照して説明する。図1は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体がシリンダブロックに設置されている状態を示す模式的な平面図である。図2は、図1のx−x線断面図である。図3は、図1に示す中のシリンダブロックの斜視図である。図4は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な正面図であり、シリンダボア壁に接する側から見た図である。図5は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な背面図であり、シリンダボア壁に接する側とは反対側から見た図である。図6は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な平面図である。図7は、図4をx−x線で切ったときの端面図である。図8は、図4をy−y線で切ったときの端面図である。図9は、温度変形部材が変形する様子を示す模式的な端面図であり、図9(A)は、温度変形部材が変形する前の様子であり、図9(B)は、温度変形部材が変形した後の様子である。図10は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体が、溝状冷却水流路内で移動する様子を示す模式的な側面図であり、図10(A)は、温度変形部材が変形する前の様子であり、図10(B)は、温度変形部材が変形した後の様子である。図11は、本発明(1)の第一の形態例のシリンダボア壁の保温構造体が、溝状冷却水流路内で、移動する様子を示す模式的な端面図であり、図11(A)は、温度変形部材が変形する前の様子であり、図11(B)は、温度変形部材が変形した後の様子である。図12は、枠部材がシリンダボア壁に接しているときの冷却水の流れを示す模式図であり、図12(A)は、保温構造体を上側から見た平面図であり、図12(B)は、保温構造体を水平方向で切ったときの端面図である。図13は、枠部材がシリンダボア壁から離間しているときの冷却水の流れを示す模式図であり、図13(A)は、保温構造体を上側から見た平面図であり、図13(B)は、保温構造体を水平方向で切ったときの端面図である。図14は、本発明(1)の第二の形態例のシリンダボア壁の保温構造体の模式的な正面図であり、シリンダボア壁に接する側から見た図である。図15は、図14のx−x端面図である。なお、説明の都合上、図1、図12及び図13では、保温構造体のうちの固定板及び枠部材のみを記載し、図9では、保温構造体のうちの固定板及び形状変化部材のみを記載し、図10では、枠部材の右側面の位置より奥に見える固定板及び枠部材の記載を省略し、図2では、二点鎖線より下側部分については、記載を省略した。また、図10及び図11では、壁面17及び壁面18が垂直な例で示した。
【0017】
図1〜図3に示すように、保温構造体1aが設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック11には、ピストンが上下するためのボア12、及び冷却水を流すための溝状冷却水流路14が形成されている。そして、ボア12と溝状冷却水流路14とを区切る壁が、シリンダボア壁13である。また、シリンダブロック11には、溝状冷却水流路11へ冷却水を供給するための冷却水供給口15及び冷却水を溝状冷却水流路11から排出するための冷却水排出口16が形成されている。そして、溝状冷却水流路14内に、つまり、シリンダボア壁の壁面17と壁面17とは反対側の溝状冷却水流路の壁面18の間に、保温構造体1aが設置される。
【0018】
図4〜図8に示すように、保温構造体1aは、固定板21と、固定板21に固定されている枠部材22と、温度変形部材23と、弾性部材24と、を有する。
【0019】
固定板21は、平面視で弧状の金属板であり、枠部材22、温度変形部材23及び弾性部材24が固定される部材である。固定板21を上及び下から見たときの形状は、溝状冷却水流路14内に保温構造体1aが収まり、且つ、枠部材22のシリンダボア壁接触面19がシリンダボア壁の壁面17に接することができるように、溝状冷却水流路14の形状に対応して弧状である。また、固定板21をシリンダボア壁の壁面側及びその反対側から見たときの形状は、枠部材22、温度変形部材23及び弾性部材24を固定ができる形状であれば、特に制限されない。
【0020】
固定板21の材質としては、特に制限されないが、耐ロングライフクーラント性(以下、「耐LLC性」と言う。)が良く及び強度が高い点で、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等が好ましい。
【0021】
固定板21の厚みは、特に制限されず、保温構造体1aの強度、溝状冷却水流路の幅、必要とされる水流れ流路断面積等により、適宜選択される。
【0022】
枠部材22は、シリンダボア壁の壁面17に接する部材であり、固定板21に固定されている面とは反対側に、シリンダボア壁の壁面17に接するシリンダボア壁接触面19を有する。図2に示すように、シリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17に接すると、シリンダボア壁の壁面17と固定板21と枠部材22により、冷却水滞留部25が形成される。そのため、枠部材22は、冷却水滞留部25が形成されるように、冷却水滞留部25の周囲を囲むように、且つ、適切な厚みをもって、固定板21の面上に設けられている。
【0023】
枠部材22の材質は、特に制限されず、例えば、ゴム、発泡ゴム等が挙げられ、ゴムはシール性及び磨耗防止に優れる点で好ましい。
【0024】
枠部材22の材質に用いられるゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。これらのうち、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が耐LLC性及び耐熱性という点で好ましい。枠部材22の材質が上記のゴムであれば、冷却水流路内において、−10℃〜150℃、特に−40℃〜200℃の温度で、且つ10年以上の長期間の環境において、十分な安定性を維持しつつ本願発明の作用効果を奏し、また、LLCによる腐食の問題も生じない。
【0025】
枠部材22及び枠部材22のシリンダボア壁接触面19を、シリンダボア壁の壁面側から見たときの形状は、図4に示す第一の形態例では、シリンダボア壁の壁面側から見たときに冷却水滞留部25の外周の形状が長方形となるような形状であるが、これに制限されず、例えば、冷却水滞留部の外周の形状が円形、楕円形、正方形、多角形等の形状となるような形状であってもよい。また、冷却水滞留部25の外周の形状が多角形の場合、その角が円弧状になっていてもよい。
【0026】
また、枠部材22の幅は、図4に示す第一の形態例のように、厚み方向に、枠部材22のシリンダボア壁接触面19の幅のまま一定であってもよいし、例えば、厚み方向に少しずつ幅が大きくなっていてもよい。
【0027】
枠部材22を上及び下から見たときの全体形状は、シリンダボア壁の壁面17及び溝状冷却水流路14の形状に対応して弧状である。そして、枠部材22のシリンダボア壁接触面19の表面形状は、シリンダボア壁の壁面17の表面形状に対応した形状である。
【0028】
枠部材22の厚みは、特に制限されず、冷却水滞留部25の容積の設計値、溝状冷却水流路の幅、必要とされる水流れ流路断面積等により、適宜選択される。また、枠部材22のシリンダボア壁接触面の幅は、枠部材22の材質、接触面圧、シール性等により、適宜選択される。
【0029】
なお、シリンダボア壁の壁面17と固定板21と枠部材22により形成される冷却水滞留部25の容積及び形成位置は、エンジンの機種、耐久条件、エンジンの燃焼域、過大な圧力損失を招かないこと等により、適宜選択される。
【0030】
枠部材22を固定板21に固定する方法としては、特に制限されず、例えば、接着剤で固定する方法、固定板21に複数の貫通穴を開け、その穴に枠部材22の固定面側に設けた突起を係合させて固定する方法、止め爪によるカシメ等があげられる。
【0031】
枠部材22のシリンダボア壁接触面19は、冷却水滞留部25内への外からの冷却水の侵入が完全になくなるほど、シリンダボア壁の壁面17に密着して接している必要はない。枠部材22がシリンダボア壁の壁面17に接しているときに、冷却水滞留部25内への冷却水の侵入がある程度抑えられていれば、冷却水滞留部25内で冷却水が滞留して、温められるので、シリンダボア壁の保温効果が得られる。よって、シリンダボア壁の保温効果が得られる程度に、冷却水滞留部25内での冷却水の滞留が起こるのであれば、冷却水滞留部25内への、枠部材22のシリンダボア壁接触面19とシリンダボア壁の壁面17との間からの冷却水の侵入は許容される。そして、枠部材22がシリンダボア壁の壁面17に接しているときに、冷却水滞留部25内で冷却水が温められて、シリンダボア壁の保温効果が得られる程度の冷却水の滞留が起こるように、枠部材22の材質、シリンダボア壁接触面19の表面形状及び幅、面圧等が、適宜選択される。
【0032】
弾性部材24は、固定板21の背面側(シリンダボア壁の壁面側とは反対側)に固定され、枠部材22をシリンダボア壁の壁面17方向に付勢する部材である。つまり、弾性部材24は、固定板21を、常に、シリンダボア壁の壁面17方向に向かって押し続けるための部材である。
【0033】
弾性部材24は、図4〜図8に示す第一の形態例では、両端が固定板24に固定され、側面視で弧状に曲げられている縦長の金属板である。図4〜図8に示す第一の形態例の弾性部材24は、例えば、固定板21の弾性部材24の両端(上下)の固定位置の直線距離より長く、その上端及び下端がコ字状、L字状等に加工されている金属板を用意し、その金属板を弧状に曲げて、上端及び下端を固定板21に設けられたスリットに係合させることにより、固定される。なお、弧状とは、円又は楕円の一部分の形状のように、曲率半径の中心が同一方向にある曲線が連続した形状を指す。
【0034】
図4〜図8に示す第一の形態例では、溝状冷却流路の幅方向で見たときに、枠部材22のシリンダボア壁の接触面19から、弾性部材24の壁面18と接触する部位までの長さが、弾性部材24が接触する位置の溝状冷却流路の幅よりも長くなるように、弾性部材24の形状が選択される。このことにより、保温構造体1aが溝状冷却流路内に設置されると、弾性部材24の作用により、常に、枠部材22がシリンダボア壁の壁面17方向に付勢される。
【0035】
温度変形部材23は、固定板21の枠部材側に固定されており、冷却水の温度が変化することにより、形状が変化する部材である。温度変形部材23の材質としては、熱膨張率が異なる2種の金属を合わせたバイメタルが挙げられる。この場合、バイメタルの構造を、熱膨張率が高い方の金属を固定板21側に、熱膨張率が低い方の金属をシリンダボア壁の壁面17側に配置させた構造にする。
【0036】
図9(A)は、温度が低温のときの状態であり、図9(B)は、高温のときの状態である。温度変形部材23は、側面視で弧状の板状の部材であるが、固定端231が固定板21に固定されている。一方、自由端232は、どこにも固定されておらず、自由である。そして、温度変形部材23は、図9(A)及び(B)に示すように、温度が高くなると、外側に向かって反るように変形するため、温度が高くなると、温度変形部材23は、自由端232側が、固定板21から遠ざかる方向に変形する。
【0037】
そのため、図10に示すように、溝状冷却水流路14内に、保温構造体1aが設置され、溝状冷却水流路14内に冷却水が流された場合、冷却水の温度が低いときは、図10(A)のように、弾性部材24の付勢力により、枠部材22がシリンダボア壁の壁面17に押し付けられるため、枠部材22のシリンダボア壁接触面19は、シリンダボア壁の壁面17に接している。一方、冷却水の温度が高くなると、温度変形部材23は、自由端232側が、固定板21から遠ざかる方向に変形し、その変形により、弾性部材24の付勢力に対抗して、シリンダボア壁の壁面17から遠ざかる方向に、固定板21を押し返す力が生じる。そして、弾性部材24の付勢力より、温度変形部材22による押し返す力が強くなると、図10(B)のように、固定板21がシリンダボア壁から遠ざかる方向に移動し、枠部材22のシリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17から離間する。
【0038】
このように、温度変形部材23は、冷却水の温度が高くなると、枠部材22をシリンダボア壁の壁面17から離間させるように変形する部材である。
【0039】
温度変形部材23としては、温度変化により、形状を変化させるものであれば、特に制限されない。温度変形部材23の材質としては、例えば、熱膨張率の異なる2種の金属板を合わせたバイメタル、変態点以上の温度になると、変形を受けても、元の形状に戻る性質を有する形状記憶合金等が挙げられる。温度変形部材23として、形状記憶合金を用いる場合は、変態点以上の温度で、図9(B)及び図10(B)の形状となるような形状記憶合金を用いることにより、冷却水の温度が低温で変態点未満のときには、弾性部材24の付勢力により、温度変形部材23は、図9(A)及び図10(A)の形状に変形しているが、冷却水の温度が高くなり、変態点以上の温度になると、図9(B)及び図10(B)の形状に戻り、図9及び図10に示すような形状変化が可能となる。また、温度変形部材23の材質としては、バイメタルや形状記憶合金のような金属以外にも、複合樹脂材料、樹脂材料と金属材料の複合材料等、上記のバイメタルや形状記憶合金と同様の温度変化による変形が可能なものも用いられる。
【0040】
図4〜図8に示す形態例では、温度変形部材の形状は、側面視で弧状の縦長の板状であるが、これに限定されず、適宜選択される。また、温度変形部材の固定位置及び固定方法は、適宜選択される。
【0041】
保温構造体1aにおいて、弾性部材24の付勢力の大きさと、温度変形部材23による固定板21を押し返す力の大きさとの関係は、冷却水の温度が低いときには、「弾性部材24の付勢力>温度変形部材23による固定板21を押し返す力」であり、冷却水の温度が高いときには、「弾性部材24の付勢力<温度変形部材23による固定板21を押し返す力」であることが必要なので、このような関係となるように、弾性部材24及び温度変形部材23の組み合わせを適宜選択する。また、冷却水の温度が何度になったときに、枠部材22のシリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17から離間するようにするかは、エンジンの機種、シリンダボア壁の壁面温度等を考慮して、適宜選択される。そして、その選択された温度で、枠部材22のシリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17から離間するように、弾性部材24及び温度変形部材23の材質、形状、固定位置等が選択される。
【0042】
次いで、保温構造体1aの作用及び効果について、説明する。図11(A)に示すように、冷却水の温度が低いときには、枠部材22のシリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17に接しているので、シリンダボア壁17と枠部材22と固定板21とにより、冷却水滞留部25が形成される。このとき、図12に示すように、冷却水27は、固定板21の背面側、つまり、固定板21と壁面18との間を流れるので、壁面18側には冷却水が流れるのに対し、シリンダボア壁の壁面17側は、冷却水が流れず、冷却水滞留部25内で冷却水が滞留する。冷却水滞留部25内に滞留している冷却水は、シリンダボア壁からの熱により加熱され、温度が高くなる。そのため、冷却水の温度が低いときには、シリンダボア壁の壁面17は、冷却水滞留部25内に滞留することにより温度が高くなった冷却水により保温されている状態となる。
【0043】
シリンダボア壁の壁面が保温された状態が続くと、つまり、シリンダボア壁接触面19がシリンダボア壁の壁面17に接している状態が続くと、冷却水全体の温度が高くなる。そして、冷却水の温度が、特定の温度より高くなると、温度変形部材23の変形により、図11(B)に示すように、枠部材22のシリンダボア壁接触面19が、シリンダボア壁の壁面17から離間し、冷却水滞留部25での冷却水の滞留が解消されると共に、図13に示すように、枠部材22のシリンダボア壁接触面19とシリンダボア壁の壁面17との間の隙間26を通って、シリンダボア壁の壁面17側にも、冷却水27が流れる。そのため、シリンダボア壁の壁面17は、冷却される。
【0044】
シリンダボア壁の壁面17側に冷却水が流れて、冷却されている状態が続くと、つまり、シリンダボア壁接触面19がシリンダボア壁の壁面17から離間している状態が続くと、冷却水全体の温度が下がる。そして、冷却水の温度が、特定の温度より低くなると、温度変形部材23の形状が低温のときの形状に戻り、図11(A)及び図12の状態に戻る。図11(A)及び図12の状態が続き、冷却水全体の温度が高くなると、再び、図11(B)及び図13の状態になり、以降、図11(A)及び図12の状態と図11(B)及び図13の状態とが、繰り返される。
【0045】
そして、冷却水全体の温度が、高くなり過ぎると、図11(B)及び図13の状態になって、シリンダボア壁の壁面が冷却され温度が下がり、冷却水の温度も低くなる。また、冷却水全体の温度が、低くなり過ぎると、図11(A)及び図12の状態になって、シリンダボア壁の壁面が保温され温度が上がり、冷却水の温度も高くなる。このようなことから、保温構造体1aでは、図11(A)及び図12の状態と図11(B)及び図13の状態とが、繰り返されることにより、冷却水全体の温度は、高くなり過ぎず且つ低くなり過ぎない、一定の温度範囲内で推移する。そのため、シリンダボア壁の壁面17の温度が、一定の温度範囲内に保たれる。
【0046】
図14及び図15には、本発明(2)の第二の形態例のシリンダボア壁の保温構造体1bを示す。なお、保温構造体1bの平面図は、図6と同じである。図14及び図15に示すように、保温構造体1bでは、固定板21に、べた当たり部材30が固定されている。
【0047】
べた当たり部材30は、シリンダボア壁の壁面17に接する部材であり、固体板21に固定されている面とは反対側に、シリンダボア壁の壁面17に接するシリンダボア壁接触面31を有する。べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面31は、シリンダボア壁の壁面17の保温部位の全体を覆うようにして、シリンダボア壁の壁面17に接する。つまり、べた当たり部材30は、保温構造体1aの枠部材22の内側の冷却水滞留部25の部分も、べた当たり部材の材質で埋められているものである。
【0048】
そして、保温構造体1bは、枠部材22が固定板21固定されている代わりに、べた当たり部材30が固定板21に固定されていること以外は、保温構造体1aと同様である。そのため、温度変形部材23及び弾性部材24の作用による固体板21及びそれに固定されているべた当たり部材30の移動は、図10及び図11に示す固体板21及びそれに固定されている枠部材22の移動と同様であり、固体板21及び当たり部材30が移動したときの冷却水の流れの変化も、図12及び図13に示す固体板21及び枠部材22が移動たときの冷却水の流れの変化と同様である。
【0049】
つまり、保温構造体1aでは、冷却水滞留部25内に冷却水を滞留させることにより、冷却水滞留部25内の冷却水が温められて、シリンダボア壁の壁面17の保温部位が保温されるのに対し、保温構造体1bでは、べた当たり部材30がシリンダボア壁の壁面17の保温部位全体を覆うことにより、シリンダボア壁の壁面17の保温部位が保温される。
【0050】
べた当たり部材30の材質は、枠部材22の材質と同様である。
【0051】
べた当たり部材30を、シリンダボア壁の壁面側から見たときの形状は、図14に示す第二の形態例では、長方形となるような形状であるが、これに制限されず、例えば、円形、楕円形、正方形、多角形等の形状となるような形状であってもよい。また、多角形の場合、その角が円弧状になっていてもよい。
【0052】
べた当たり部材30を上及び下から見たときの全体形状は、シリンダボア壁の壁面17及び溝状冷却水流路14の形状に対応して弧状である。そして、べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面31の表面形状は、シリンダボア壁の壁面17の表面形状に対応した形状である。
【0053】
べた当たり部材30の厚みは、特に制限されず、溝状冷却水流路の幅、必要とされる水流れ流路断面積等により、適宜選択される。
【0054】
なお、べた当たり部材30の位置は、エンジンの機種、耐久条件、エンジンの燃焼域、過大な圧力損失を招かないこと等により、適宜選択される。
【0055】
べた当たり部材30を固定板21に固定する方法としては、特に制限されず、例えば、接着剤で固定する方法、固定板21に複数の貫通穴を開け、その穴にべた当たり部材30の固定面側に設けた突起を係合されて固定する方法、止め爪によるカシメ等があげられる。
【0056】
べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面31とシリンダボア壁の壁面17との間に、冷却水が完全に侵入しなくなるほど、べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面31は、シリンダボア壁の壁面17に密着して接している必要はない。べた当たり部材30がシリンダボア壁の壁面17に接しているときに、シリンダボア壁の壁面17への冷却水の接触が制限されていれば、シリンダボア壁の壁面17の保温部位は温められるので、シリンダボア壁の保温効果が得られる。よって、シリンダボア壁の保温効果が得られる程度であれば、べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面31とシリンダボア壁の壁面17との間への、冷却水の侵入は許容される。そして、べた当たり部材30がシリンダボア壁の壁面17に接しているときに、シリンダボア壁の保温効果が得られるように、べた当たり部材30の材質、シリンダボア壁接触面31の表面形状及び幅、面圧等が、適宜選択される。
【0057】
このように、本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体である。なお、以下では、本発明(1)の第一の形態例の保温構造体及び本発明(1)の第二の形態例の保温構造体と同様な点については、本発明(1)の第一の形態例の保温構造体及び本発明(1)の第二の形態例の保温構造体の記載を参照し、その記載を省略する。
【0058】
本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体は、固定板と、固定板に固定されている枠部材又はべた当たり部材と、温度変形部材と、弾性部材と、を有する。
【0059】
固定板は、本発明(1)の第一の形態例で説明した固定板21と同様である。また、枠部材は、本発明(1)の第一の形態例で説明した枠部材22と同様である。また、べた当たり部材は、本発明(1)の第二の形態例で説明したべた当たり部材30と同様である。
【0060】
本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体に係る弾性部材は、固定部材をシリンダボア壁の壁面方向に付勢する部材であり、弾性部材は、固定板を、常に、シリンダボア壁の壁面方向に向かって押し続けるための部材であるので、弾性部材としては、固定板をシリンダボア壁の壁面方向に付勢することができるものであれば、特に制限されず、第一の形態例の弾性部材24以外には、例えば、コイル状のバネ等が挙げられる。また、弾性部材の材質としては、冷却水に対する耐食性を有する材質であれば、特に制限されない。
【0061】
本発明(1)のシリンダボア壁の保温構造体に係る温度変形部材は、冷却水の温度が変化することにより、形状が変化する部材であり、冷却水の温度が高くなると、固定板がシリンダボア壁の壁面から遠ざかる方向に移動するように変形する部材であるので、温度変形部材としては、そのような変形をするものであれば、特に制限されず、第一の形態例で説明したものが挙げられる。
【0062】
弾性部材及び温度変化部材の材質、形状、固定方法、固定位置等は、冷却水の温度が低いときは、枠部材又はべた当たり部材のシリンダボア壁接触面がシリンダボア壁の壁面に接するように、且つ、冷却水の温度が高くなると、固定板をシリンダボア壁の壁面から遠ざかる方向に移動させることができるものであれば、特に制限されない。そして、冷却水の温度が低いときには、「弾性部材の付勢力>温度変形部材による固定板を押し返す力」となり、冷却水の温度が高いときには、「弾性部材の付勢力<温度変形部材による固定板を押し返す力」となるように、弾性部材及び温度変形部材が適宜選択される。また、冷却水の温度が何度になったときに、枠部材又はべた当たり部材のシリンダボア壁接触面が、シリンダボア壁の壁面から離間するようにするかは、エンジンの機種、シリンダボア壁の壁面温度等を考慮して、適宜選択される。そして、その温度で、枠部材又はべた当たり部材のシリンダボア壁接触面が、シリンダボア壁の壁面から離間するように、弾性部材及び温度変形部材の組み合わせが選択される。
【0063】
本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体は、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁から遠ざかる方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体である。
【0064】
本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体の形態例としては、図4〜図8に示す保温構造体1a又は図14及び図15に示す保温構造体1bの温度変形部材23及び弾性部材24の固定板21への固定位置が、表裏反対のもの、すなわち、枠部材22又はべた当たり部材30が固定されている方の固定板21の面側に、弾性部材24が固定され、固定板21の背面側に、温度変形部材23が固定されている形態例(第三の形態例とも記載する。)が挙げられる。
【0065】
本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体の第三の形態例では、弾性部材24は、固定板がシリンダボア壁の壁面から遠ざかる方向に付勢する部材である。つまり、弾性部材は、固定板を、常に、シリンダボア壁の壁面17方向から遠ざかる方向に押し続けるための部材である。
【0066】
また、本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体の第三の形態例では、温度変形部材23は、冷却水の温度が低いときには、自由端側が最も離れた位置にあり、冷却水の温度が高くなると、自由端が固定板21に近づく方向に変形する。このような、変形をする温度変形部材としては、熱膨張率が低い方の金属を固定板21側に、熱膨張率の高い方の金属を壁面18側に配置させたバイメタルが挙げられる。
【0067】
そして、本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体の第三の形態例では、冷却水の温度が低いときは、図16(A)のように、温度変形部材23が固定板21を押す力が、弾性部材24による付勢力より強くなり、且つ、冷却水の温度が高いときには、図16(B)のように、温度変形部材23が、温度変形部材23の自由端と固定板21との距離が短くなるように変形するように、温度変形部材23及び弾性部材24を選択する。このことにより、本発明(2)のシリンダボア壁の保温構造体の第三の形態例では、冷却水の温度が低いときは、図16(A)のように、温度変形部材23が固定板21を押す力により、枠部材22(べた当たり部材30)のシリンダボア壁接触面が、シリンダボア壁の壁面17に接し、冷却水の温度が高いときには、温度変形部材23が自由端と固定板21との距離が短くなるように変形することにより、弾性部材24の付勢力で、固定板21がシリンダボア壁の壁面17から遠ざかる方向に移動し、枠部材22(べた当たり部材30)のシリンダボア壁接触面が、シリンダボア壁の壁面17から離間する。
【0068】
本発明(2)のシリンダボア壁の保温部材の固定板及び枠部材又はべた当たり部材が、溝状冷却水流路内で移動することによる冷却水の流れの変化は、本発明(1)のシリンダボア壁の保温部材の固定板及び枠部材又はべた当たり部材が、溝状冷却水流路内で移動することによる冷却水の流れの変化と同様である。
【0069】
本発明の内燃機関は、本発明(1)又は(2)のシリンダボア壁の保温部材が、シリンダブロックの溝状冷却水流路に設置されていることを特徴とする内燃機関である。なお、本発明の内燃機関は、シリンダブロック及び保温構造体の他に、ピストン、シリンダヘッド、ヘッドガスケット等を有する。
【0070】
図1では、シリンダブロックに、1つの保温構造体が設置されているが、2以上の保温構造体が設置されていてもよい。また、保温構造体の設置位置は、適宜選択される。
【0071】
本発明の自動車は、本発明の内燃機関を有することを特徴とする自動車である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、内燃機関のシリンダボア壁の上側と下側との変形量の違いを少なくすることができるので、ピストンの摩擦を低くすることができるため、省燃費の内燃機関を提供できる。
【符号の説明】
【0073】
1a、1b 保温構造体
11 シリンダブロック
12 ボア
13 シリンダボア壁
14 溝状冷却水流路
15 冷却水供給口
16 冷却水排出口
17 シリンダボア壁13の壁面
18 シリンダボア壁13とは反対側の溝状冷却水流路14の壁面
19 枠部材22のシリンダボア壁接触面
21 固定板
22 枠部材
23 温度変形部材
24 弾性部材
25 冷却水滞留部
26 隙間
27 冷却水
30 べた当たり部材
31 べた当たり部材30のシリンダボア壁接触面
231 固定端
232 自由端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体。
【請求項2】
前記固定板は、平面視で弧状の金属板であり、
前記弾性部材は、両端が該固定板に固定され、側面視で弧状に曲げられている金属板であり、
前記温度変形部材は、固定端が該固定板に固定され、冷却水の温度が高くなると、自由端側が該固定板から遠ざかる方向に変形する板状部材であること、
を特徴とする請求項1記載のシリンダボア壁の保温構造体。
【請求項3】
内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置され、
固定板と、
該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、冷却水滞留部の周囲を囲む枠部材、又は該固定板に固定され、溝状冷却水流路側のシリンダボア壁の壁面に接するシリンダボア壁接触面を有し、シリンダボア壁の壁面の保温部位の全体を覆うべた当たり部材と、
該固定板を該シリンダボア壁から遠ざかる方向に付勢する弾性部材と、
冷却水の温度が高くなると、該固定板が該シリンダボア壁から遠ざかる方向に移動するように変形する温度変形部材と、
を有することを特徴とするシリンダボア壁の保温構造体。
【請求項4】
前記固定板は、平面視で弧状の金属板であり、
前記弾性部材は、両端が該固定板に固定され、側面視で弧状に曲げられている金属板であり、
前記温度変形部材は、固定端が該固定板に固定され、冷却水の温度が高くなると、自由端側が該固定板に近づく方向に変形する板状部材であること、
を特徴とする請求項1記載のシリンダボア壁の保温構造体。
【請求項5】
前記温度変形部材が、バイメタル又は形状記憶合金であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項シリンダボア壁の保温構造体。
【請求項6】
前記枠部材又は前記べた当たり部材が、ゴム材質からなることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のシリンダボア壁の保温構造体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載のシリンダボア壁の保温構造体が、シリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置されていることを特徴とする内燃機関。
【請求項8】
請求項7記載の内燃機関を有することを特徴とする自動車。

【図4】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−112245(P2012−112245A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259059(P2010−259059)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】