説明

シロキサンポリマー組成物、硬化膜及び硬化膜の形成方法

【課題】本発明の課題は吐出ノズル式塗布法に好適であって、塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成でき、かつ透明性、耐擦傷性に優れる保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜を形成可能なシロキサンポリマー組成物を提供することである。
【解決手段】[A]ラジカル反応性官能基を有するシロキサンポリマー、[B]ラジカル重合開始剤、及び[C]有機溶媒を含有し、固形分濃度が5質量%以上30質量%以下であり、25℃における粘度が2.0mPa・s以上10mPa・s以下であり、かつ[C]有機溶媒として、少なくとも(C1)20℃における蒸気圧が0.1mmHg以上1mmHg未満の有機溶媒を含むシロキサンポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサンポリマー組成物、硬化膜及び硬化膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示素子には一般に層状に配置される配線の間を絶縁する目的で層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜の形成材料としては、必要なパターン形状を得るための工程数が少なく、また得られる層間絶縁膜に高度な平坦性が求められることからポジ型感放射線性組成物が幅広く使用されているが、コスト的に有利なネガ型感放射線性組成物の開発についても行われている(特開2000−162769号公報参照)。
【0003】
また、液晶表示素子等の製造工程においては溶媒への浸漬処理や高温処理がなされることから液晶表示素子が劣化することを防止するために保護膜を設けることがある。そのため保護膜には、平坦性、透明性、十分な表面硬度(耐擦傷性等)等が要求される。保護膜の形成材料としては、透明性等に優れるシロキサンポリマー系材料を用いる技術が開示されている(特開2000−001648号公報、特開2006−178436号公報、特開2008−248239号公報参照)。しかし、従来のシロキサンポリマー系材料は平坦性、表面硬度等の性能が満足できるものではなく、諸性能が改善されたシロキサンポリマー系感放射線性組成物の開発が望まれている。
【0004】
一方、タッチパネルが広く適用されている。タッチパネルの内部にも素子を保護するための保護膜や、微細な配線の間を絶縁する絶縁性硬化膜が必要とされる。上記のような液晶表示素子やタッチパネルの製造にはその目的及び工程に応じて多様な感放射線性組成物が用いられているが、コスト削減の観点から感放射線性組成物の統一化が望まれている。
【0005】
また、特開2002−131896号公報には小型基板に感放射線性組成物を塗布する方法としてスピンコート法が開示されている。このスピンコート法によると基板の中央に感放射線性組成物を滴下後、基板をスピンさせる塗布方法であって良好な塗布均一性が得られる。しかし、このスピンコート法により大型基板に塗布する場合には、スピンにより振り切られて廃棄される感放射線性組成物が多くなること、高速回転による基板の割れが発生し得ること、タクトタイムを確保する必要があること等の不都合がある。また、より大型の基板に適用する場合にはスピンに必要な加速度を得るために特注のモーターを要し、製造コスト面で不利である。
【0006】
そこでスピンコート法に代わる塗布方法として、感放射線性組成物をノズルから吐出して基板上に塗布する吐出ノズル式塗布法が採用されるようになっている。吐出ノズル式塗布法は、塗布ノズルを一定方向に掃引して基板上に塗膜を形成する塗布方法であって、スピンコート法と比較して塗布に必要な感放射線性組成物の量が低減でき、かつ塗布時間の短縮も図れ、製造コスト面で有利である。しかしながら、従来の感放射線性組成物を用いて吐出ノズル式塗布法により塗布した場合、塗布ムラが生じる場合があり、層間絶縁膜、保護膜等の特性として要求される高度な平坦性を実現することへの支障となっている。また、例えば特開2009−98673号公報には、この公報に記載の感放射線性組成物がスピンコート法以外の方法でも塗布可能である旨の記載はあるものの、好適な粘度、固形分濃度、溶剤等は具体的に開示されておらず、実施例においても吐出ノズル式塗布法等による塗布はなされていない。
【0007】
このような状況に鑑み、吐出ノズル式塗布法に好適であって、塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成でき、かつ透明性、耐擦傷性に優れる硬化膜を形成可能なシロキサンポリマー組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−162769号公報
【特許文献2】特開2000−001648号公報
【特許文献3】特開2006−178436号公報
【特許文献4】特開2008−248239号公報
【特許文献5】特開2002−131896号公報
【特許文献6】特開2009−98673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成でき、かつ透明性、耐擦傷性に優れる保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜を形成可能なシロキサンポリマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]ラジカル反応性官能基を有するシロキサンポリマー(以下、「[A]シロキサンポリマー」と称することがある)、
[B]ラジカル重合開始剤、及び
[C]有機溶媒
を含有し、
固形分濃度が5質量%以上30質量%以下であり、25℃における粘度が2.0mPa・s以上10mPa・s以下であり、かつ
[C]有機溶媒として、少なくとも(C1)20℃における蒸気圧が0.1mmHg以上1mmHg未満の有機溶媒(以下、「(C1)有機溶媒」と称することがある)を含むシロキサンポリマー組成物である。
【0011】
本発明のシロキサンポリマー組成物は、硬化膜を形成した場合に、[A]ラジカル反応性官能基を有するシロキサンポリマーを含有するため、一般的に透明性に優れるとされる。また、[B]ラジカル重合開始剤を含有するため、[A]シロキサンポリマーのラジカル重合による硬化が可能であり、低露光量であっても十分な耐擦傷性を有する硬化膜が得られる。また、当該シロキサンポリマー組成物の固形分濃度を上記範囲とすることで、塗布ムラの発生を効果的に抑制でき、結果として優れた外観を実現できる。さらに、当該シロキサンポリマー組成物の粘度を上記範囲とすることで、膜厚均一性を維持しつつ塗布ムラが生じても自発的に均し得る程度の粘度をバランスよく達成でき、かつ高速塗布性を実現できる。さらに、特定範囲の蒸気圧を有する(C1)有機溶媒を用いることで、より塗布ムラを防止しつつ高速塗布が可能となり、例えば吐出ノズル式塗布法を採用する場合においても好適である。
【0012】
[A]シロキサンポリマーは、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であり、
上記加水分解性シラン化合物が、
(a1)下記式(1)で示される加水分解性シラン化合物(以下、「(a1)化合物」と称することがある)と、
(a2)下記式(2)で示される加水分解性シラン化合物(以下、「(a2)化合物」と称することがある)と
を少なくとも含む加水分解縮合物であることが好ましい。
【化1】

【化2】

(式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rはラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。
式(2)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフッ化アルキル基、フェニル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基又はイソシアネート基である。nは0〜20の整数である。qは0〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。)
【0013】
(a1)化合物はラジカル反応性官能基を有し、(a2)化合物はラジカル反応性官能基を有さないため、[A]シロキサンポリマーを合成するに際し、(a1)化合物と(a2)化合物との重合比を調節することにより、[A]シロキサンポリマー中のラジカル反応性官能基の含有率を制御でき、結果として形成される硬化膜の耐擦傷性をより向上できる。
【0014】
[C]有機溶媒として、(C2)20℃における蒸気圧が1mmHg以上20mmHg以下の有機溶媒(以下、「(C2)有機溶媒」と称することがある)をさらに含有し、(C2)有機溶媒の含有量が、(C1)有機溶媒及び(C2)有機溶媒の合計量に対して10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。蒸気圧が低い(C1)有機溶媒と蒸気圧が高い(C2)有機溶媒との質量比を上記特定範囲とすることで、特にプレベーク後の塗膜中における残存溶媒量は最適化され、塗膜の流動性がバランスされたものとなり、結果として、塗布ムラ(筋ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等)の発生を抑制し、膜厚均一性をさらに向上できる。
【0015】
当該シロキサンポリマー組成物は[D]フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤から選択される1種以上の界面活性剤(以下、「[D]界面活性剤」と称することがある)をさらに含有し、[D]界面活性剤の含有量が[A]シロキサンポリマー100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましい。当該シロキサンポリマー組成物が、特定の[D]界面活性剤をさらに含有することで、塗膜の表面平滑性を向上でき、その結果、形成される層間絶縁膜の膜厚均一性をさらに向上できる。さらに、[D]界面活性剤の含有量を上記範囲とすることで塗膜の表面平滑性をより向上できる。
【0016】
当該シロキサンポリマー組成物は[E][A]シロキサンポリマー以外のエチレン性不飽和化合物(以下、「[E]エチレン性不飽和化合物」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。当該シロキサンポリマー組成物が、さらに[E]エチレン性不飽和化合物を含有することにより当該シロキサンポリマー組成物から形成される硬化膜は、耐擦傷性及び透明性がさらに向上する。
【0017】
当該感放射線性組成物は、[F]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤(以下、「[F]酸発生剤又は塩基発生剤」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。当該シロキサンポリマー組成物が、[F]酸発生剤又は塩基発生剤を含有することで重合性がより高くなり、耐擦傷性等に優れる硬化膜が得られる。
【0018】
当該シロキサンポリマー組成物は、透明性、耐擦傷性に優れる硬化膜を形成可能なため、表示素子又はタッチパネル用の、保護膜又は層間絶縁膜としての硬化膜形成に用いられる材料として好適である。
【0019】
本発明には、当該シロキサンポリマー組成物を用いて形成される硬化膜も好適に含まれる。
【0020】
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該シロキサンポリマー組成物を、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させつつ、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)上記現像された塗膜を加熱する工程
を含む。
【0021】
当該形成方法においては、高速での塗布が可能であると共に膜厚均一性に優れた硬化膜を形成可能な当該シロキサンポリマー組成物を用いている。従って、吐出ノズル式塗布法を採用しても塗布ムラを防止しつつ高速塗布が可能となる。また、感放射線性を利用した露光・現像・加熱によってパターンを形成することによって、容易に微細かつ精巧なパターンを有する硬化膜を形成できる。さらに、こうして形成された保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜は、塗布ムラがなく高度な平坦性を有し、液晶表示素子、有機EL表示素子等の表示素子並びにタッチパネルに好適に使用できる。
【0022】
なお、本明細書にいう「吐出ノズル式塗布法」とは、ノズルを通じて当該シロキサンポリマー組成物を被塗物に対して吐出し塗布する方法を意味し、例えば複数のノズル孔が列状に配列された吐出口を有するノズルを用いて当該シロキサンポリマー組成物を塗布する方法、スリット状の吐出口を有するノズルを用いて当該シロキサンポリマー組成物を塗布する方法等が挙げられ、基板上に当該シロキサンポリマー組成物を塗布した後、基板をスピンさせて膜厚を調整する操作まで含めた概念である。また、本明細書にいう「感放射線性樹脂組成物」の「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明は塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成でき、かつ透明性、耐擦傷性に優れる保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜を形成可能なシロキサンポリマー組成物を提供することができる。当該シロキサンポリマー組成物は高速塗布性等の効果を奏するため、吐出ノズル式塗布法等に好適に適用できる。また、当該シロキサンポリマー組成物から形成される硬化膜は優れた透明性、耐擦傷性を奏することから表示素子用だけに留まらず、タッチパネル用の保護膜、層間絶縁膜等としても適用でき、コスト面でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<シロキサンポリマー組成物>
本発明のシロキサンポリマー組成物は、[A]シロキサンポリマー、[B]ラジカル重合開始剤及び[C]有機溶媒を含有する。また、好適成分として[D]界面活性剤、[E]エチレン性不飽和化合物、[F]酸発生剤又は塩基発生剤を含有してもよい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分を詳述する。
【0025】
<[A]シロキサンポリマー>
当該シロキサンポリマー組成物が含有する[A]シロキサンポリマーは、シロキサン結合を有する化合物のポリマーの主鎖又は側鎖にラジカル反応性官能基を有するものであれば特に限定されるものではない。[A]シロキサンポリマーは、ラジカル反応性官能基を有しているので、ラジカル重合により硬化させることができ、硬化収縮を最小限に抑えることが可能である。
【0026】
ラジカル反応性官能基としては、例えばビニル基、α−メチルビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基等の不飽和有機基が挙げられる。これらのうち、硬化反応が円滑に進むことから、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するものが好ましくい。
【0027】
[A]シロキサンポリマーは、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であり、上記加水分解性シラン化合物が、(a1)上記式(1)で示される加水分解性シラン化合物と、(a2)上記式(2)で示される加水分解性シラン化合物とを少なくとも加水分解縮合物であることが好ましい。
【0028】
本明細書における「加水分解性シラン化合物」とは、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(約25℃)〜約100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解してシラノール基を生成することができる基又はシロキサン縮合物を形成することができる基を有する化合物を指す。上記式(1)及び(2)で表される加水分解性シラン化合物の加水分解反応においては、生成するシロキサンポリマー中に、一部の加水分解性基が未加水分解の状態で残っていてもよい。ここで「加水分解性基」とは、上記加水分解してシラノール基を生成することができる基又はシロキサン縮合物を形成することができる基のことをいう。また、当該シロキサンポリマー組成物中には、一部の加水分解性シラン化合物は、その分子中の一部又は全部の加水分解性基が未加水分解の状態で、かつ他の加水分解性シラン化合物と縮合せずに単量体の状態で残っていてもよい。なお、「加水分解縮合物」は加水分解されたシラン化合物の一部のシラノール基同士が縮合した加水分解縮合物を意味する。以下、(a1)化合物及び(a2)化合物について詳述する。
【0029】
[(a1)化合物]
上記式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rはラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。
【0030】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、加水分解の容易性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。pとしては、加水分解縮合反応の進行の観点から1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0031】
ラジカル反応性官能基を有する有機基としては、上記ラジカル反応性官能基により1個以上の水素原子が置換された直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基等が挙げられる。同一分子内に複数のRが存在するとき、これらはそれぞれ独立している。またRが示す有機基はヘテロ原子を有していてもよい。そのような有機基としては、例えばエーテル基、エステル基、スルフィド基等が挙げられる。
【0032】
p=1の場合における(a1)化合物としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、o−スチリルトリメトキシシラン、o−スチリルトリエトキシシラン、m−スチリルトリメトキシシラン、m−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、メタクリロキシトリエトキシシラン、メタクリロキシトリプロポキシシラン、アクリロキシトリメトキシシラン、アクリロキシトリエトキシシラン、アクリロキシトリプロポキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロブチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0033】
p=2の場合における(a1)化合物としては例えばビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、フェニルトリフルオロプロピルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0034】
p=3の場合における(a1)化合物としては、アリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジフェニルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジフェニルメトキシシラン、3,3’−ジメタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3,3’−ジアクリロキシプロピルジメトキシシラン、3,3’,3’’−トリメタクリロキシプロピルメトキシシラン、3,3’,3’’−トリアクリロキシプロピルメトキシシラン、ジメチルトリフルオロプロピルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0035】
これらの(a1)化合物のうち、耐擦傷性等を高いレベルで達成できるとともに、縮合反応性が高くなることから、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0036】
[(a2)化合物]
上記式(2)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフッ化アルキル基、フェニル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基又はイソシアネート基である。nは0〜20の整数である。qは0〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。
【0037】
上記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、加水分解の容易性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。qとしては、加水分解縮合反応の進行の観点から1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0038】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、4,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2,3,3−トリメチルブチル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、6−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノナニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
【0039】
q=0の場合における(a2)化合物としては例えば4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等が挙げられる。
【0040】
q=1の場合における(a2)化合物としては、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アミノトリメトキシシラン、アミノトリエトキシシラン、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
q=2の場合における(a2)化合物としては、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
q=3の場合における(a2)化合物としては、3個の非加水分解性基と1個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物として、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
これらの(a2)化合物のうち、4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物が好ましく、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とで置換されたシラン化合物がより好ましい。特に好ましい加水分解性シラン化合物としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このような加水分解性シラン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
上記(a1)化合物及び(a2)化合物の混合比については、(a1)化合物が5モル%を超えることが望ましい。(a1)化合物が5モル%以下の場合、硬化膜を形成する際の露光感度が低く、さらに得られる硬化膜の耐擦傷性等を低下させる傾向にある。
【0045】
上記(a1)化合物及び(a2)化合物を加水分解縮合させる条件としては、(a1)化合物及び(a2)化合物の少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を起こさせるものである限り、特に限定されるものではないが一例として以下のように実施することができる。
【0046】
加水分解縮合反応に供される水としては、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量としては上記(a1)化合物及び(a2)化合物の加水分解性基の合計量1モルに対して、好ましくは0.1モル〜3モル、より好ましくは0.3モル〜2モル、特に好ましくは0.5モル〜1.5モルである。このような量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
【0047】
加水分解縮合に供される溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素類、ケトン類、他のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0048】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0049】
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0050】
グリコールエーテルとして、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
エチレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0052】
ジエチレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0053】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0054】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0055】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、例えばプロピレンモノグリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
【0056】
芳香族炭化水素類としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0057】
ケトン類としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
【0058】
他のエステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸ブチル、2−ブトキシプロピオン酸メチル、2−ブトキシプロピオン酸エチル、2−ブトキシプロピオン酸プロピル、2−ブトキシプロピオン酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸プロピル、3−エトキシプロピオン酸ブチル、3−プロポキシプロピオン酸メチル、3−プロポキシプロピオン酸エチル、3−プロポキシプロピオン酸プロピル、3−プロポキシプロピオン酸ブチル、3−ブトキシプロピオン酸メチル、3−ブトキシプロピオン酸エチル、3−ブトキシプロピオン酸プロピル、3−ブトキシプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0059】
これらの溶媒のうち、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、メトキシ酢酸ブチルが好ましく、特に、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸ブチルが好ましい。
【0060】
加水分解縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸等)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩;各種ルイス塩基等)又はアルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等)等の触媒の存在下で行われる。例えば、アルミニウムアルコキシドとしては、トリ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。触媒の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、加水分解性シラン化合物のモノマー1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001モル〜0.1モルである。
【0061】
加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜設定されるが、例えば反応温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間である。このような反応温度及び反応時間とすることによって、加水分解縮合反応を効率的に行うことができる。この加水分解縮合においては、反応系内に加水分解性シラン化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく又は加水分解性シラン化合物、水及び触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解及び縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いでエバポレーションにかけることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することができる。この段階で用いられる脱水剤は、一般的に、過剰の水を吸着又は包接して脱水能が完全に消費されるか又はエバポレーションにより除去される。
【0062】
上記加水分解縮合物のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」と称する)としては、500〜5,000が好ましく、1,000〜3,000がより好ましい。Mwを500以上とすることで、当該シロキサンポリマー組成物の成膜性を改善できる。一方、Mwを5,000以下とすることによって、シロキサンポリマー組成物の現像性の低下を防止できる。
【0063】
上記加水分解縮合物のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」と称する)としては300〜1,500が好ましく、500〜1,200がより好ましい。[A]シロキサンポリマーのMnを上記範囲とすることによって、当該シロキサンポリマー組成物の塗膜の硬化時の硬化反応性を向上できる。
【0064】
上記加水分解縮合物の分子量分布「Mw/Mn」としては、3.0以下が好ましく、2.6以下がより好ましい。(a1)化合物及び(a2)化合物の加水分解縮合物のMw/Mnを3.0以下とすることにより、得られる硬化膜の現像性を高めることができる。[A]シロキサンポリマーを含む当該シロキサンポリマー組成物は、現像する際に現像残りの発生が少なく容易に所望のパターン形状を形成できる。
【0065】
<[B]ラジカル重合開始剤>
当該シロキサンポリマー組成物は[B]ラジカル重合開始剤を含有するため[A]シロキサンポリマーのラジカル重合による硬化が可能であり、低露光量であっても十分な耐擦傷性を有する硬化膜が得られる。なお、[B]ラジカル重合開始剤は感放射線性重合開始剤であることが好ましい。
【0066】
[B]ラジカル重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの[B]ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
O−アシルオキシム化合物としては、例えばエタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0068】
これらのうち、好ましいO−アシルオキシム化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0069】
アセトフェノン化合物としては、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物等が挙げられる。
【0070】
α−アミノケトン化合物としては、例えば2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0071】
α−ヒドロキシケトン化合物としては例えば1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0072】
これらのうち、好ましいアセトフェノン化合物としては、α−アミノケトン化合物が好ましく、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが挙げられる。
【0073】
ビイミダゾール化合物としては、例えば2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが挙げられる。
【0074】
これらのうち、好ましいビイミダゾール化合物としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが挙げられ、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
【0075】
[B]ラジカル重合開始剤として、ビイミダゾール化合物を使用する場合、これを増感するために、ジアルキルアミノ基を有する脂肪族又は芳香族化合物(以下、「アミノ系増感剤」と称する)を添加できる。
【0076】
アミノ系増感剤としては、例えば4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらのアミノ系増感剤のうち、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。上記アミノ系増感剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0077】
さらに、当該シロキサンポリマー組成物においてビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、水素ラジカル供与剤としてチオール化合物を添加できる。ビイミダゾール化合物は、アミノ系増感剤によって増感されて開裂し、イミダゾールラジカルを発生するが、そのままでは高い重合開始能が発現しない場合がある。しかし、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とが共存する系に、チオール化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール化合物から水素ラジカルが供与される。その結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されると共に、重合開始能の高い硫黄ラジカルを有する成分が発生し、それにより低放射線照射量であっても耐擦傷性等の高い硬化膜を形成できる。
【0078】
かかるチオール化合物としては、例えば
2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール等の芳香族チオール化合物;
3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル等の脂肪族モノチオール化合物;
ペンタエリストールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリストールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)等の2官能以上の脂肪族チオール化合物が挙げられる。これらのチオール化合物の中でも、2−メルカプトベンゾチアゾールが特に好ましい。
【0079】
ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、アミノ系増感剤の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。アミノ系増感剤の使用量を0.1質量部〜50質量部とすることによって、当該シロキサンポリマー組成物の露光時の硬化反応性が向上し、得られる硬化膜の耐擦傷性等を高めることができる。
【0080】
また、ビイミダゾール化合物、アミノ系増感剤及びチオール化合物を併用する場合、チオール化合物の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。チオール化合物の使用量を0.1質量部〜50質量部とすることによって、得られる硬化膜の耐擦傷性等を改善することができる。
【0081】
当該シロキサンポリマー組成物における[B]ラジカル重合開始剤の使用量としては、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜30質量部、より好ましくは0.1質量部〜15質量部である。[B]ラジカル重合開始剤の使用量を上記範囲とすることによって、当該シロキサンポリマー組成物は、高い放射線感度を示し、さらに高い耐擦傷性等を有する硬化膜を形成することができる。
【0082】
<[C]有機溶媒>
当該シロキサンポリマー組成物は、[C]有機溶媒として少なくとも(C1)20℃における蒸気圧が0.1mmHg以上1mmHg未満の有機溶媒を含有する。また、(C2)20℃における蒸気圧が1mmHg以上20mmHg以下の有機溶媒を含有することが好ましい。特定範囲の蒸気圧を有する[C]有機溶媒を用いることで、吐出ノズル式塗布法を採用しても、塗布ムラを防止しつつ高速塗布が可能となる。なお、蒸気圧の測定は、公知の方法を使用できるが、本明細書ではトランスピレーション法(気体流通法)により測定した値をいう。
【0083】
[C]有機溶媒としては、上記各構成要素を均一に溶解又は分散し、各構成要素と反応しないものが好適に用いられる。このような[C]有機溶媒としては、例えば、アルコール類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸エステル類、脂肪族カルボン酸エステル類、アミド類、ラクトン類、ケトン類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
(C1)有機溶媒としては、例えば、
ベンジルアルコール等のアルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類;
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;
N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;
ジプロピルケトン等のケトン類等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
(C2)有機溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、3−メトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
(C1)有機溶媒と(C2)有機溶媒を混合して使用する場合、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル/ジエチエレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル/シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジエチルエーテル/ジエチエレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル/シクロヘキサノン、ジエチレングリコールジエチルエーテル/3−メトキシプロピオン酸メチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル/メチルイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル/酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテル等の組み合わせが好ましい。なお、(C1)有機溶媒又は(C2)有機溶媒は、2種以上を混合して使用してもよく、例えば、ジエチレングリコールジエチルエーテル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/シクロヘキサノン/3−メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。
【0087】
(C2)有機溶媒の含有量としては、(C1)有機溶媒及び(C2)有機溶媒の合計量に対して10質量%以上50質量%が好ましい。蒸気圧が低い(C1)有機溶媒と蒸気圧が高い(C2)有機溶媒との質量比を上記範囲とすることで、特にプレベーク後の塗膜中における残存溶媒量は最適化され、塗膜の流動性がバランスされたものとなり、結果として、塗布ムラ(筋ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等)の発生を抑制し、膜厚均一性をさらに向上できる。
【0088】
<[D]界面活性剤>
当該シロキサンポリマー組成物は当該シロキサンポリマー組成物の被膜形成性をより向上させるために、[D]フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選択される1種以上の界面活性剤をさらに含有することが好ましい。当該シロキサンポリマー組成物が、[D]界面活性剤を含有することで、塗膜の表面平滑性を向上することができ、その結果、形成される硬化膜の膜厚均一性をさらに向上できる。
【0089】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基及び/又はフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、例えば1,1,2,2−テトラフルオロn−オクチル(1,1,2,2−テトラフルオロn−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロn−オクチル(n−ヘキシル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロn−ペンチル)エーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロn−ブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロn−ペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロn−ブチル)エーテル、パーフルオロn−ドデカンスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロn−デカン、1,1,2,2,3,3,9,9,10,10−デカフルオロn−ドデカン、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルリン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルポリオキシエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、カルボン酸フルオロアルキルエステル等が挙げられる。
【0090】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BM CHEMIE社)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183、メガファックF178、メガファックF191、メガファックF471、メガファックF476(以上、大日本インキ化学工業社)、フロラードFC−170C、フロラードFC−171、フロラードFC−430、フロラードFC−431(以上、住友スリーエム社)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−382、サーフロンSC−101、サーフロンSC−102、サーフロンSC−103、サーフロンSC−104、サーフロンSC−105、サーフロンSC−106(以上、旭硝子社)、エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(以上、新秋田化成社)、フタージェントFT−100、フタージェントFT−110、フタージェントFT−140A、フタージェントFT−150、フタージェントFT−250、フタージェントFT−251、フタージェントFT−300、フタージェントFT−310、フタージェントFT−400S、フタージェントFTX−218、フタージェントFT−251(以上、ネオス社)等が挙げられる。
【0091】
シリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンDC7PA、トーレシリコーンSH11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH−190、トーレシリコーンSH−193、トーレシリコーンSZ−6032、トーレシリコーンSF−8428、トーレシリコーンDC−57、トーレシリコーンDC−190、SH 8400 FLUID(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン社)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(以上、GE東芝シリコーン社)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業社)等が挙げられる。
【0092】
これらの[D]界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。当該シロキサンポリマー組成物における[D]界面活性剤の含有量としては、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上2質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上1質量部以下である。[D]界面活性剤の含有量を上記範囲とすることで塗膜の表面平滑性をより向上することができる。
【0093】
<[E]エチレン性不飽和化合物>
当該シロキサンポリマー組成物は[E]エチレン性不飽和化合物をさらに含有することが好ましい。当該シロキサンポリマー組成物が、さらに[E]エチレン性不飽和化合物を含有することにより放射線感度が向上し昇華性が低下する。そのため、当該シロキサンポリマー組成物から形成される硬化膜は、耐擦傷性及び透明性がさらに向上する。
【0094】
[E]エチレン性不飽和化合物としては、重合性が良好であり、得られる硬化膜の強度が向上するという観点から、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。当該感放射線性組成物がこれらの化合物を含有することにより、透明性と耐擦傷性等が高度にバランスされた硬化膜を形成することができる。
【0095】
単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)メタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えばアロニックスM−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、東亞合成社);KAYARAD TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬社);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業社)等が挙げられる。
【0096】
2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えばアロニックスM−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成社);KAYARADHDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬社);ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社);ライトアクリレート1,9−NDA(共栄社化学社)等が挙げられる。
【0097】
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基とを有し、かつ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等が挙げられる。市販品としては、例えばアロニックスM−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成社);KAYARADTMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬社);ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社);多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品としては、ニューフロンティアR−1150(第一工業製薬社)、KAYARAD DPHA−40H(日本化薬社)等が挙げられる。
【0098】
これらの[E]エチレン性不飽和化合物のうち、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品が好ましい。
【0099】
上記の[E]エチレン性不飽和化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。当該組成物における[E]エチレン性不飽和化合物の使用割合としては、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、5質量部〜80質量部が好ましく、10質量部〜30質量部がより好ましい。[E]エチレン性不飽和化合物の使用量を上記範囲とすることによって、当該組成物の放射線感度及び得られる硬化膜の耐擦傷性等がより良好となる。
【0100】
<[F]酸発生剤又は塩基発生剤>
[F]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤は、放射線を照射することにより、酸性活性物質又は塩基性活性物質を放出することができる化合物と定義される。[A]シロキサンポリマーは[F]酸発生剤又は塩基発生剤の触媒作用により硬化し、重合性がより高くなり、耐擦傷性等に優れる硬化膜が得られる。
【0101】
[F]酸発生剤又は塩基発生剤を分解し、酸性活性物質又は塩基性活性物質のカチオン又はアニオン等を発生するために照射する放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等が挙げられる。これらの放射線の中でも、一定のエネルギーレベルを有し、高い硬化速度を達成でき、しかも照射装置が比較的安価かつ小型であることから、紫外線を使用することが好ましい。
【0102】
感放射線性酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩が好ましく、トリフェニルスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩がより好ましい。
【0103】
ジフェニルヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホン酸等が挙げられる。
【0104】
トリフェニルスルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホナート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2、6−ジフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0105】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(5−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(6−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート等が挙げられる。
【0106】
これらの感放射線性酸発生剤の中でも、感放射線性組成物の放射線感度向上の観点からトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホンナート、1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナートが特に好ましい。
【0107】
感放射線性塩基発生剤としては、例えば2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、[〔(2,6−ジニトロベンジル)オキシ〕カルボニル]シクロヘキシルアミン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ビス[〔(2−ニトロベンジル)オキシ〕カルボニル]ヘキサン−1,6−ジアミン、トリフェニルメタノール、O−カルバモイルヒドロキシアミド、O−カルバモイルオキシム、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)等が挙げられる。
【0108】
これらの感放射線性塩基発生剤の中でも、感放射線性組成物の放射線感度向上の観点から、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、O−カルバモイルヒドロキシアミドがより好ましい。
【0109】
[F]酸発生剤又は塩基発生剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[F]酸発生剤又は塩基発生剤の使用量としては、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部以下、さらに好ましくは0.1〜10質量部以下である。[D]酸発生剤又は塩基発生剤の使用量を0.01〜20質量部とすることによって、放射線感度、耐擦傷性、透明性等がバランス良く優れた硬化膜を得ることができる。
【0110】
<その他の任意成分>
当該シロキサンポリマー組成物は、上記の[A]〜[F]成分に加え、所望の効果を損なわない範囲で必要に応じて密着助剤、塩基性化合物、キノンジアジド化合物等のその他の任意成分を含有できる。以下、これらの成分について詳述する。なお、その他の任意成分はそれぞれを単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
【0111】
[密着助剤]
当該シロキサンポリマー組成物においては、基板となる無機物、例えばシリコーン、酸化シリコーン、窒化シリコーン等のシリコーン化合物、金、銅、アルミニウム等の金属と絶縁膜との接着性を向上させるために密着助剤を使用できる。このような密着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用される。官能性シランカップリング剤としては、例えばカルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基(好ましくはオキシラニル基)、チオール基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0112】
官能性シランカップリング剤としては、例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0113】
当該シロキサンポリマー組成物において、このような密着助剤は[A]シロキサンポリマー100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。密着助剤の量を上記範囲とすることによって、形成される硬化膜と基板との密着性が改善される。
【0114】
[塩基性化合物]
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられるものから任意に選択して使用できる。塩基性化合物としては、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、4級アンモニウムヒドロキシド、カルボン酸4級アンモニウム塩等が挙げられる。当該シロキサンポリマー組成物に塩基性化合物を含有させることにより、露光により酸発生剤から発生した酸の拡散長を適度に制御することができ、パターン現像性を良好にできる。
【0115】
脂肪族アミンとしては、例えばトリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン等が挙げられる。
【0116】
芳香族アミンとしては、例えばアニリン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0117】
複素環式アミンとしては、例えばピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5,3,0]−7ウンデセン等が挙げられる。
【0118】
4級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0119】
カルボン酸4級アンモニウム塩としては、例えばテトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムベンゾエート等が挙げられる。
【0120】
当該シロキサンポリマー組成物における塩基性化合物の含有量は、[A]シロキサンポリマー100質量部に対して0.001質量部〜1質量部が好ましく、0.005質量部〜0.2質量部がより好ましい。塩基性化合物の含有量を上記範囲とすることで、パターン現像性が良好となる。
【0121】
[キノンジアジド化合物]
キノンジアジド化合物は、放射線の照射によりカルボン酸を発生する化合物である。キノンジアジド化合物として、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下、「母核」と称する)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を用いることができる。
【0122】
上記母核としては、例えばトリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核が挙げられる。
【0123】
トリヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0124】
テトラヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0125】
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0126】
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0127】
(ポリヒドロキシフェニル)アルカンとしては、例えばビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン等が挙げられる。
【0128】
その他の母核としては、例えば2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、1−[1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−3−(1−(3−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−4,6−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0129】
これらの母核のうち、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0130】
また、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとしては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド及び1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドが挙げられる。これらの中でも、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドが好ましい。
【0131】
フェノール性化合物又はアルコール性化合物と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物としては、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの縮合物、4,4’−〔1−〔4−〔1−〔4−ヒドロキシフェニル〕−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドとの縮合物が好ましい。
【0132】
フェノール性化合物又はアルコール性化合物(母核)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応では、フェノール性化合物又はアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30モル%〜85モル%、より好ましくは50モル%〜70モル%に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は、公知の方法によって実施できる。
【0133】
また、キノンジアジド化合物としては、上記例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類、例えば2,3,4−トリアミノベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0134】
<シロキサンポリマー組成物の調製>
当該シロキサンポリマー組成物は[C]有機溶媒に[A]シロキサンポリマー、[B]ラジカル重合開始剤及び必要に応じて任意成分を所定の割合で均一に混合せしめ、溶解又は分散させた状態に調製される。
【0135】
当該シロキサンポリマー組成物を溶液状態として調製する場合、固形分([A]シロキサンポリマー、[B]ラジカル重合開始剤及び必要に応じ含有される任意成分の合計量)濃度としては、10質量%以上30質量%以下である。15質量%〜30質量%が好ましく、20質量%〜28質量%がより好ましい。また、当該シロキサンポリマー組成物の25℃における粘度は、2.0mPa・s以上10mPa・s以下である。当該シロキサンポリマー組成物の粘度を上記範囲とすることで、膜厚均一性を維持しつつ、塗布ムラが生じても自発的に均し得る程度の粘度をバランスよく達成でき、かつ高速塗布性を実現できる。調製された当該シロキサンポリマー組成物の溶液は、孔径0.2μm〜0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いてろ過した後使用に供することもできる。
【0136】
<硬化膜>
本発明には、当該シロキサンポリマー組成物を用いて形成される硬化膜も好適に含まれる。本発明における「硬化膜」とは、当該シロキサンポリマー組成物を用いて形成される熱硬化物の総称である。当該シロキサンポリマー組成物は、透明性、耐擦傷性に優れる硬化膜を形成可能であことから、かかる硬化膜は高い耐擦傷性等や透明性を要する技術用途に適用でき、例えば液晶表示素子やタッチパネル等の各種デバイスの保護膜、層間絶縁膜等として好適に用いることができる。
【0137】
<硬化膜の形成方法>
本発明の硬化膜の形成方法は、
(1)当該シロキサンポリマー組成物を、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させつつ、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)上記現像された塗膜を加熱する工程
を含む。以下、各工程を詳述する。
【0138】
[工程(1)]
本工程は、基板上に感放射線性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程に相当する。従来の感放射線性樹脂組成物を塗布する場合、その方法としては例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)等の吐出ノズル式塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用されるが、本発明のシロキサンポリマー組成物は、塗布ムラがなく高速での塗布が可能であることから吐出ノズル式塗布法を採用できる。工程(1)における吐出ノズル式塗布法では、基板の片面に透明導電膜を形成し、透明導電膜上に当該シロキサンポリマー組成物を吐出ノズルと基板とを相対的に移動させながら塗布し、次いで、好ましくは塗布面をプレベークすることによって[C]有機溶媒を除去して塗膜を形成する。
【0139】
使用できる基板としては、例えばガラス、石英、シリコーン、樹脂等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。上記透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等が挙げられる。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、好ましくは70℃〜120℃で1分〜10分間程度とすることができる。
【0140】
[工程(2)]
本工程では、形成された上記塗膜の少なくとも一部に露光する。塗膜の一部に露光する際には、通常所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。露光に使用される放射線としては、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。本工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates社)により測定した値を意味し、500J/m〜10,000J/mが好ましく、1,500J/m〜7,000J/mがより好ましい。
【0141】
[工程(3)]
本工程では、露光後の塗膜を現像することにより、不要な部分(放射線の非照射部分)を除去して所定のパターンを形成する。現像工程に使用される現像液としては、アルカリ性の水溶液が好ましい。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0142】
また、このようなアルカリ水溶液にはメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ水溶液におけるアルカリの濃度は適当な現像性を得る観点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用できる。現像時間は、当該シロキサンポリマー組成物の組成によって異なるが、好ましくは10秒〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒〜90秒間行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成できる。
【0143】
[工程(4)]
本工程では、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、パターニングされた薄膜を加熱することで、当該シロキサンポリマー組成物の硬化反応を促進して硬化物を得ることができる。本工程における加熱温度としては、例えば120℃〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱工程を行う場合には5分〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には30分〜90分間とすることができる。2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。
【0144】
このように形成された硬化膜の膜厚は、好ましくは0.1μm〜8μm、より好ましくは0.1μm〜6μm、さらに好ましくは0.1μm〜4μmである。
【0145】
当該形成方法においては、高速での塗布が可能であると共に膜厚均一性に優れた硬化膜を形成可能な当該シロキサンポリマー組成物を用いている。従って、吐出ノズル式塗布法を採用しても塗布ムラを防止しつつ高速塗布が可能となる。また、感放射線性を利用した露光・現像・加熱によってパターンを形成することによって、容易に微細かつ精巧なパターンを有する硬化膜を形成できる。さらに、こうして形成された保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜は、塗布ムラがなく高度な平坦性を有し、液晶表示素子、有機EL表示素子等の表示素子並びにタッチパネルに好適に使用できる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0147】
重合体のMw及びMnは、下記の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:GPC−101(昭和電工社)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803及びGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0148】
粘度はE型粘度計(東機産業社、VISCONIC ELD.R)を用いて25℃における当該シロキサンポリマー組成物の粘度を測定した。また、固形分濃度は当該シロキサンポリマー組成物0.3gをアルミ皿に精坪し、ジエチレングリコールジメチルエーテル約1gを加えたのち、175℃で60分間ホットプレート上にて乾固させて、乾燥前後の質量から求めた。
【0149】
<[A]シロキサンポリマー>
[合成例1]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル24質量部を仕込み、続いて、フェニルトリメトキシシラン39質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン18質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水19質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル28質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−1)を得た(固形分濃度=35質量%、Mw=1,800、Mw/Mn=2.2)。
【0150】
[合成例2]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル23質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン24質量部、テトラメトキシシラン16質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン17質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水21質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル30質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−2)を得た(固形分濃度=35質量%、Mw=2,500、Mw/Mn=2.3)
【0151】
[合成例3]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル27質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン6質量部、フェニルトリメトキシシシラン20質量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン16質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水16質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル30質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−3)を得た(固形分濃度=28質量%、Mw=1,800、Mw/Mn=2.0)。
【0152】
[合成例4]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル27質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン16質量部、フェニルトリメトキシシシラン20質量部、n−デシルトリメトキシシラン6質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水16質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル30質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−4)を得た(固形分濃度=28質量%、Mw=1,800、Mw/Mn=2.0)。
【0153】
[合成例5]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル27質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン16質量部、フェニルトリメトキシシシラン20質量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン6質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水16質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル30質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、水及び加水分解縮合で発生したメタノールを除去した。以上により、加水分解縮合物(A−5)を得た(固形分濃度=28質量%、Mw=1,800、Mw/Mn=2.0)。
【0154】
<シロキサンポリマー組成物>
[実施例1]
合成例1で得られた加水分解縮合物(A−1)を含む溶液(加水分解縮合物(A−1)100質量部(固形分)に相当する量)に、[B]ラジカル重合開始剤として後述する(B−1)3質量部、[C]有機溶媒として後述する(C−1−1)及び(C−1−2)を所望の固形分濃度となるように添加し、[D]界面活性剤として後述する(D−1)0.20質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過することにより、当該シロキサンポリマー組成物を調製した。
【0155】
[実施例2〜11及び比較例1〜4]
各成分の種類及び配合量を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に操作して実施例2〜11及び比較例1〜4の組成物を調製した。なお、表1に示す[C]有機溶媒の数値は(C1)有機溶媒と(C2)有機溶媒の質量%比である。
【0156】
表1に示す実施例及び比較例で用いた他の成分を以下に詳述する。
【0157】
[B]ラジカル重合開始剤
B−1:エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
B−2:1,2オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)(イルガキュアOXE01、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
B−3:2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
B−4:2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホルニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア379EG、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)
【0158】
[C]有機溶媒
(C1)有機溶媒(20℃における蒸気圧が0.1mmHg以上1mmHg未満の有機溶媒)
C−1−1:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(20℃、0.75mmHg)
C−1−2:エチレングリコールモノブチルエーテル(20℃、0.76mmHg)
(C2)有機溶媒(20℃における蒸気圧が1mmHg以上20mmHg以下の有機溶媒)
C−2−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃、6.7mmHg)
C−2−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20℃、3.75mmHg)
C−2−3:シクロヘキサノン(20℃、3.4mmHg)
比較例で使用した溶媒
1,4−ジオキサン(20℃、29mmHg)
エチレングリコール(20℃、0.08mmHg)
【0159】
[D]界面活性剤
D−1:シリコーン系界面活性剤(SH 8400 FLUID、東レ・ダウコーニング・シリコーン社)
D−2:フッ素系界面活性剤(フタージェントFTX−218、ネオス社)
【0160】
[E]エチレン性不飽和化合物
E−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(KAYARAD DPHA、日本化薬社)
E−2:ペンタエリスリトールトリアクリレート(A−TMM−3LMN、新中村化学工業社)
E−3:コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
【0161】
[F]酸発生剤又は塩基発生剤
F−1:1−(4,7−ジブトキシ−1−ナフタレニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホナート
F−2:2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート
【0162】
<硬化膜の形成>
550×650mmのガラス基板上に、ヘキサメチルジシラザンを塗布し、60℃にて1分間加熱した。このヘキサメチルジシラザン処理後のクロム成膜ガラス上に、実施例1〜11及び比較例1〜4のシロキサンポリマー組成物をスリットダイコーター(東京応化工業社、TR632105−CL)を用いて塗布し、到達圧力を100Paに設定して真空下で溶媒を除去した後、さらに90℃において2分間プレベークすることによって、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。続いて、露光機(キヤノン社、MPA−600FA)を用い、5,000J/mの露光量で露光した。次いで、0.05質量%の水酸化カリウム水溶液にて25℃において現像し、超純水で1分間流水洗浄を行い、その後230℃のオーブン中で60分間加熱することにより、膜厚(2.0μm)の硬化膜としての保護膜を形成した。
【0163】
<評価>
実施例1〜11及び比較例1〜4のシロキサンポリマー組成物、並びにそのシロキサンポリマー組成物から形成された硬化膜について下記の特性を評価した。評価結果を表1にあわせて示す。なお、当該シロキサンポリマー組成物の粘度及び固形分濃度についても評価結果との相関性が高いことから表1にあわせて示す。
【0164】
[塗膜の外観]
550×650mmのクロム成膜ガラス上に、実施例1〜11及び比較例1〜4のシロキサンポリマー組成物をスリットダイコーター(東京応化工業社、TR632105−CL)を用いて塗布し0.5Torrまで減圧乾燥した後、ホットプレート上で100℃にて2分間プレベークして塗膜を形成し、さらに2,000J/mの露光量で露光することにより、クロム成膜ガラスの上面からの膜厚が4μmの膜を形成した。ナトリウムランプ下において、肉眼によりこの塗膜の外観の観察を行った。このとき、塗膜の全体における筋ムラ(塗布方向又はそれに交差する方向にできる一本又は複数本の直線のムラ)、モヤムラ(雲状のムラ)、ピン跡ムラ(基板支持ピン上にできる点状のムラ)の出現状況を調べた。これらのムラのいずれもほとんど見えない場合を「A」(良好と判断)、いずれかが少し見える場合を「B」(やや不良と判断)、はっきりと見える場合を「C」(不良と判断)とした。
【0165】
[膜厚均一性]
上述のようにして作製したクロム成膜ガラス上の塗膜の膜厚を、針接触式測定機(KLA Tencor社、AS200)を用いて測定した。膜厚均一性は、9つの測定点における膜厚を測定し、下記式から計算した。9つの測定点は基板の短軸方向をX、長軸方向をYとすると、(X[mm]、Y[mm])が、(275、20)、(275、30)、(275、60)、(275、100)、(275、325)、(275、550)、(275、590)、(275、620)、(275、630)である。膜厚均一性が3%以下の場合、膜厚均一性は良好と判断した。
膜厚均一性(%)={FT(X、Y)max−FT(X、Y)min}×100/{2×FT(X、Y)avg.}
上記式中FT(X、Y)maxは、9つの測定点における膜厚中の最大値、FT(X、Y)minは、9つの測定点における膜厚中の最小値、FT(X、Y)avg.は9つの測定点における膜厚中の平均値である。
【0166】
[高速塗布性]
550mm×650mmの無アルカリガラス基板上にスリットコーターを用いて塗布し、塗布条件として下地とノズルの距離を150μm、露光後の膜厚が2.5μmとなるようにノズルから塗布液を吐出しノズルの移動速度を120mm/sec.〜220mm/sec.の範囲で変量し、液切れによる筋状のムラが発生しない最大速度を求めた。180mm/sec.以上の速度でも筋状のムラが発生しない場合は、高速塗布に対応が可能であると判断した。
【0167】
[透明性]
上述のように形成した保護膜としての硬化膜を有する基板について、分光光度計(日立製作所、150−20型ダブルビーム)を用い、波長400nm〜800nmの光線透過率(%)を測定した。波長400nm〜800nmの光線透過率(%)の最小値を透明性とした。この値が95%以上のとき、保護膜の透明性は良好であると判断した。なお、層間絶縁膜としての硬化膜の場合、その膜厚が3.0μmであって、保護膜としての硬化膜(2.0μm)と膜厚が異なるだけのため、層間絶縁膜の透明性の評価は保護膜の透明性の評価と同様であると判断した。
【0168】
[耐擦傷性]
上述のように形成した保護膜としての硬化膜を有する基板について、学振型磨耗試験機を用い、スチールウール(#0000)の上に200gの荷重をかけて10往復させた。擦傷の状況を肉眼で確認し、以下の基準で評価した。
A:全く傷がつかない
B:1〜3本の傷がつく
C:4〜10本の傷がつく
D:11本以上の傷がつく
A又はBであれば、良好な耐擦傷性と判断した。なお、透明性の評価同様、層間絶縁膜の場合、保護膜と膜厚が異なるだけのため、層間絶縁膜の耐擦傷性の評価は保護膜の耐擦傷性の評価と同様であると判断した。
【0169】
【表1】

【0170】
表1の結果から実施例1〜11の当該シロキサンポリマー組成物は、比較例1〜4のシロキサンポリマー組成物と比べて塗布ムラが少なく、かつ高速塗布が可能であり、得られる塗膜の膜厚均一性及び外観についても良好であることが明らかとなった。また、当該シロキサンポリマーから得られる保護膜又は層間絶縁膜としての硬化膜については透明性及び耐擦傷性に優れることが明らかとなった。従って、かかる硬化膜は表示素子又はタッチパネル用として有用であることも示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明は塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成でき、かつ透明性、耐擦傷性に優れる保護膜及び層間絶縁膜としての硬化膜を形成可能なシロキサンポリマー組成物を提供することができる。当該シロキサンポリマー組成物は高速塗布性等の効果を奏するため、吐出ノズル式塗布法等に好適に適用できる。また、当該シロキサンポリマー組成物から形成される硬化膜は優れた透明性、耐擦傷性を奏することから表示素子用だけに留まらず、タッチパネル用の保護膜、層間絶縁膜等としても適用でき、コスト面でも有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ラジカル反応性官能基を有するシロキサンポリマー、
[B]ラジカル重合開始剤、及び
[C]有機溶媒
を含有し、
固形分濃度が5質量%以上30質量%以下であり、25℃における粘度が2.0mPa・s以上10mPa・s以下であり、かつ
[C]有機溶媒として、少なくとも(C1)20℃における蒸気圧が0.1mmHg以上1mmHg未満の有機溶媒を含むシロキサンポリマー組成物。
【請求項2】
[A]シロキサンポリマーが、加水分解性シラン化合物の加水分解縮合物であり、
上記加水分解性シラン化合物が、
(a1)下記式(1)で示される加水分解性シラン化合物と、
(a2)下記式(2)で示される加水分解性シラン化合物と
を少なくとも含む請求項1に記載のシロキサンポリマー組成物。
【化1】

【化2】

(式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rはラジカル反応性官能基を含む有機基である。pは1〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。
式(2)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基である。Rは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフッ化アルキル基、フェニル基、ナフチル基、エポキシ基、アミノ基又はイソシアネート基である。nは0〜20の整数である。qは0〜3の整数である。但し、R及びRが複数となる場合、複数のR及びRはそれぞれ独立している。)
【請求項3】
[C]有機溶媒として、(C2)20℃における蒸気圧が1mmHg以上20mmHg以下の有機溶媒をさらに含有し、
(C2)有機溶媒の含有量が、(C1)有機溶媒及び(C2)有機溶媒の合計量に対して10質量%以上50質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項4】
[D]フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群より選択される1種以上の界面活性剤をさらに含有し、
[D]界面活性剤の含有量が[A]シロキサンポリマー100質量部に対して0.01質量部以上2質量部以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項5】
[E][A]シロキサンポリマー以外のエチレン性不飽和化合物をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項6】
[F]感放射線性酸発生剤又は感放射線性塩基発生剤をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項7】
表示素子又はタッチパネル用の、保護膜又は層間絶縁膜としての硬化膜形成に用いられる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物を用いて形成される硬化膜。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物を、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させつつ、基板上に塗布して塗膜を形成する工程、
(2)上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)上記放射線が照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)上記現像された塗膜を加熱する工程
を含む硬化膜の形成方法。

【公開番号】特開2012−68417(P2012−68417A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212868(P2010−212868)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】