説明

シロップの製造方法

ここで提供されるのは、実質的に透明なシロップを製造する方法であり、この方法は、45℃よりも高い温度において、少なくとも40% w/wの濃度の1以上の基質を、少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素と反応させる工程を包含する。好ましい実施形態では、この少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼおよび1以上の基質は、12時間未満にわたって45℃よりも高く保持される。別の好ましい実施形態では、酵素は、8ユニット/グラム基質未満の濃度を有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
飲料(例えば、スポーツドリンク)および他の食品適用の製造において使用されるコーンシロップが公知である。しかし、必要に応じて、コーンシロップと類似する甘味および官能性を有するが、より低い血糖上昇指数を有する、飲料および他の食品適用における使用のために利用可能な製品を有することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
(要旨)
本明細書中に提供するのは、アルテルナン(alternan)オリゴ糖を含む実質的に透明な低血糖上昇シロップ(LGS)の効率的な製造方法である。これらのシロップは、比較的低い血糖上昇指数を有し、増大した清澄性が所望される適用においてさらに有用である。これらの品質は、食品および飲料の配合において特に有益である。
【0003】
いくつかの実施形態では、実質的に透明なLGSを製造する方法は、45℃よりも高い温度において、少なくとも40% w/wの濃度の1以上の基質(最初のスクロース、ならびにスクロースからのグルコース単位を受け入れ得る、炭素番号2、3、6の炭素に1以上の遊離ヒドロキシル基を有する糖および糖アルコールから選択される1以上の最初のアクセプター)と、少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素とを反応させる工程を含む。さらなる実施形態では、この基質は、少なくとも約41% w/w、少なくとも約42% w/w、少なくとも約43% w/w、少なくとも約44% w/w、少なくとも約45% w/w、少なくとも約46% w/w、少なくとも約47% w/w、少なくとも約48% w/w、少なくとも約49% w/w、少なくとも約50% w/w、少なくとも約51% w/w、少なくとも約52% w/w、少なくとも約53% w/w、少なくとも約54% w/wまたは少なくとも約55% w/wの濃度である。さらなる実施形態では、この基質および酵素は、46℃よりも高い温度、47℃よりも高い温度、48℃よりも高い温度、49℃よりも高い温度、50℃よりも高い温度、または51℃よりも高い温度において反応され得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、この方法は、1以上のアルテルナンスクラーゼを、比較的短い時間(例えば、12時間未満または11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満もしくは7時間未満)にわたって基質と反応させる工程を包含する。
【0005】
45℃よりも高い温度でかつ少なくとも40% w/wの基質濃度において製造された実質的に透明なLGSは代表的に、より低い温度でかつより低い基質濃度において製造されたシロップと比較した場合、視覚的に、より透明である。清澄性はまた、本明細書中に記載される試験手順を用いて決定され得る。いくつかの実施形態では、実質的に透明なLGSは、20% w/wの濃度に調整された場合、650nmにおいて93%よりも高いかまたは94%よりも高い、95%よりも高い、96%よりも高い、97%よりも高い、98%よりも高い、もしくは99%よりも高い透明度を提示する。
【0006】
いくつかの実施形態では、実質的に透明なLGSは、DP12(グルコース単位の重合度)よりも大きな0.5%未満のアルテルナンを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、この方法は、低い粘度(例えば、80°Fおよび77%の乾燥固形分濃度において14,000cps未満の粘度)を有する実質的に透明なLGSを呈する。他の実施形態では、この実質的に透明なLGSは、80°Fおよび77%の乾燥固形分濃度において測定した場合、10000cps未満、9000cps未満、8000cps未満、7000cps未満、6000cps未満、5000cps未満または4,000cps未満の粘度を呈する。
【0008】
いくつかの実施形態では、用いられるアルテルナンスクラーゼ酵素は、US6,570,065に記載される組換え法のような組換え法によって製造され得る。さらなる実施形態では、この組換え酵素は、全長酵素「Characterization of alternansucrase from Leuconostoc mesenteroides NNRL B−1355:rational and random approach to design of novel glucansucrase」、Gilles Joucla,Doctroal Dissertation,Ingenier INSA,Toulouse,France,2003と比較した場合に、小さいかまたは短縮化されている。
【0009】
別の局面では、本発明は、食品または飲料を製造する方法を提供し、この方法は、1以上の成分を、実質的に透明なシロップと混合する工程を包含し、この実質的に透明なシロップは、45℃よりも高い温度において、少なくとも40% w/wの濃度の1以上の基質を少なくともアルテルナンスクラーゼ酵素と接触させることにより製造される。
【0010】
本発明のこれらおよび他の目的および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から当業者に明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(詳細な説明)
(I.シロップの製造方法)
本明細書中に記載の実質的に透明なLGSは、種々の物理的特徴を呈する。より詳細には、アルテルナンオリゴ糖は、1以上のアルテルナンスクラーゼ酵素と反応させる、アクセプターおよびスクロースから製造され得る。アルテルナンスクラーゼ酵素は、グルコース単位をスクロースからアクセプター糖質へと転移し、そしてフルクトースおよび種々の長さのグルコースオリゴ糖を放出する。得られる産物は、コーンシロップの甘味度と類似したレベルの甘味度、ならびにコーンシロップの口当たりおよび官能性と類似した口当たりおよび官能性を有し得る。さらに、そして本方法に関してより顕著には、得られる産物は、いくつかの実施形態において、酵素と反応していない基質(スクロースおよびアクセプター)の組合せと比較して、より低い血糖上昇指数を有することにより特徴付けられ得る。これらのシロップは、実質的に透明な低血糖上昇シロップ(LGS)といわれる。
【0012】
アクセプターは、グルコース単位をスクロースから受容し得る遊離ヒドロキシル基を1以上の炭素位置(2位、3位、および6位)に有する、糖または糖アルコールからなる群より選択され得る。このアクセプターは、シロップまたはシロップ固形分の形態であり得る。本明細書中での使用に適切なシロップまたはシロップ固形分の例示は、マルトース、マルトトリオース、パノース、高マルトース(40%超)コーンシロップ、中程度から低いDE(デキストロース当量)のコーンシロップ、ラフィノース、セロビオース、マルチトール、マルトトリオース、マルトテトロース、グルコース、イソマルトース、イソマルチトール、大麦シロップおよび大麦シロップ固形分、コメシロップおよびコメシロップ固形分、ラクトース、ホエー透過物、タピオカ澱粉シロップおよびタピオカ澱粉シロップ固形分、ニゲロース、コウジビオース、イソマルトオリゴ糖、水素添加澱粉シロップ、馬鈴薯澱粉シロップおよび馬鈴薯澱粉シロップ固形分、コーンシロップおよびコーンシロップ固形分などである。ブレンドにおいて使用するために適切であるシロップの例示は、Cargill,Inc.から入手可能なSATINSWEETTMであるがこれに限定されない。SATINSWEETTMは、最少55〜70重量%のマルトースおよび45〜30重量%のグルコースおよび他のグルコース含有オリゴマーを含む。1つの実施形態では、使用されるシロップまたはシロップ固形分は、約2重量%〜約99重量%の量のマルトースを含む。
【0013】
LGSを生成するための反応において用いられ得るアルテルナンスクラーゼ酵素としては、Leuconostoc mesenteroides(LM)のNRRL B 1355株、NRRL B 23185株、NRRL B 23186株、NRRL B 23188株、NRRL B 23311株、NRRL B 21297株、NRRL B 30821株、NRRL B 30894株および本明細書中に提供される他の酵素が挙げられるがこれらに限定されない。これらの酵素は、例えば、Gilles Joucla,Doctroal Dissertation,Ingenier INSA,Toulouse,France,2003に記載されるように、さらにクローニングされてもよく、そして組換えによって発現されてもよい。これらの株は培養され得、そしてこれらの酵素は、以下に提供される方法のような当該分野で任意の方法を用いて単離され得る。
【0014】
製造されるシロップの物理的特徴は、異なる反応条件を用いて変更され得る。例えば、実質的に透明なLGSは、反応液中で1以上のアルテルナンスクラーゼ酵素を比較的高濃度のスクロースおよびアクセプターと反応させることによって製造され得る。さらに、この反応の効率は、45℃よりも高い温度において反応させることにより向上され得る。このことにより、反応の完了(残存基質が総糖質w/w基準で2%未満であるとき)を達成するために、より少ない酵素が必要とされることが可能になり、この反応は、より短い期間で完了され得る。例えば、この反応は、45℃よりも高い温度において、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17時間よりも短い時間または20時間未満の時間にわたって実施され得る。この上昇した温度はまた、いくつかの実施形態では、微生物汚染の危険性を低下させ得る。
【0015】
LGSの特徴は、スクロースのアクセプターに対する比率を制御することにより変更され得る。一般に、実質的に透明なLGSの血糖上昇指数は、スクロースのアクセプターに対する比率が約12:1という比率まで増大するにつれて減少する。例えば、1:1(スクロース:アクセプター)の比率を用いて製造された産物は、4:1(スクロース:アクセプター)の比率を用いて製造される産物の血糖上昇指数よりも高い血糖上昇指数を有することが予測される。いくつかの実施形態では、約8:1〜約11:1の比率が用いられる。他の実施形態では、この方法は、少なくとも4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1および10:1というスクロース:アクセプターの比率を用いてLGSを製造する工程を包含する。従って、本発明はまた、このような方法によって製造される食品および飲料の製品を提供する。
【0016】
LGSはまた、グルコースオリゴ糖中のグルコース分子間の結合によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、このグルコースオリゴ糖は、α1,3結合およびα1,6結合の両方を有する。いくつかの実施形態では、このグルコースオリゴ糖はまた、α1,4結合のような他の結合を含む。いくつかの実施形態では、LGSは、少なくとも20%のα1,3結合を有する。他の実施形態では、LGSは、少なくとも20%のα1,3結合および少なくとも20%のα1,6結合を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、実質的に透明なLGSは、その後、フルクトースの一部または全てを除去するために加工され、それにより、フルクトースが減少したLGSが得られる。フルクトースは、当該分野で公知の任意の方法を用いて(例えば、カラムクロマトグラフィーを用いて)LGSから除去され得る。一般に、LGSは、50%未満のフルクトースを含む。実質的に透明なLGSおよび/またはフルクトースが減少したLGSは、さらに水素添加されて、非還元性シロップが製造され得る。
【0018】
他の実施形態では、緩徐にではあるが完全に消化性の糖質であり、このことにより、腸の不快感も副作用も伴うことなく、LGSを、低血糖上昇応答および持続エネルギーを提供する独特の甘味料とする、重合度7〜12のオリゴアルテルナン(oligoalteran)が提供される。NRRL B 30821株およびNRRL B 30894株は、化学的変異誘発によって生成された、NRRL B 21297株(Leathersら,1997)の構成的変異体である。それゆえ、NRRL B 30821株においては、アルテルナンスクラーゼの最大産生を誘導するために、スクロースはもはや必要ではない。
【0019】
(II 実質的に透明な低血糖上昇シロップ(LGS)を含む、生成物およびブレンド)
本明細書中で記載される実質的に透明なLGSは、種々の他の成分のうちの1つ以上とブレンドされ得、そして配合者(formulator)にブレンドとして販売されてもよく、またはブレンドのための成分は、配合者に別々に提供されて配合者が最終食品製品を製造する間にこれらをブレンドしてもよい。実質的に透明なLGSは、1以上の他の成分(例えば、ビタミン、ミネラル、糖アルコール、高甘味度甘味料(high intensity sweetener)、香料、風味相乗剤、および他の従来の甘味料)とブレンドされて、所望の栄養的影響ならびに所望の風味を提供し得る。実質的に透明なLGSとのブレンドの作製は、最終製品の均質性を改善すると予想される。
【0020】
実質的に透明なLGSとブレンドされ得るビタミンとしては、身体の正常な代謝、増殖および発達に必須である、タンパク質、糖質、脂肪、ミネラルおよび有機塩以外の任意の有機物質が挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンI、ビオチン、コリン、葉酸、およびニコチン酸のような化合物が挙げられる。
【0021】
実質的に透明なLGSとブレンドされ得るミネラル化合物としては、身体の無機構成成分を構成する、無機元素の無機化合物が挙げられる。ミネラル塩および水は、身体から毎日排出されるので、補給される必要がある。これらは、食品または補助食品の摂取を通して補充されなければならない。ミネラルの例としては、Ca、Fe、P、Na、Cu、KおよびMgが挙げられる。
【0022】
香料および/または風味相乗剤もまたLGSとブレンドされ得る。例えば、ジヒドロキシ安息香酸(全ての異性体を含め、DHB)および香料(例えば、ペパーミント、ココアおよびバニラ)である。
【0023】
糖アルコールはLGSとブレンドされ得、そして特定の食品製品に甘味を付与するために用いられ得、そして多くの例では、糖アルコールは、従来の甘味料と比較した場合、製品のカロリー含量にはそれほど大きくは寄与しない。糖アルコールは、ケトン糖またはヘキソース糖におけるヒドロキシル基の存在によって特徴付けられる。本明細書中に記載されるLGS甘味料とブレンドされ得る糖アルコールの例としては、ソルビトール、マンニトール(manitol)、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト(isomalt)、水素添加澱粉加水分解物、およびエリスリトールが挙げられる。
【0024】
本明細書中に開示されるLGSはまた、高甘味度甘味料とブレンドされ得る。高甘味度甘味料は、非常に低い濃度で甘味強度を示す物質である。本明細書中に記載されるLGS組成物とブレンドされ得る高甘味度甘味料の例としては、サッカリン、シクラメート、アスペルテーム、モナチン(monatin)、アリテーム(alitame)、アセスルファムカリウム、スクラロース、ソーマチン、ステビオシド、およびグリシルリチン(glycynhizin)が挙げられる。
【0025】
実質的に透明なLGSを用いて製造され得る用途および製品のさらなる例は、本明細書中に参考として援用されるWO2004023894A1およびWO2005089483A2に含まれる。
【0026】
以下の実施例は特定の実施形態を提供し、当業者は、これらの実施例が例示の目的のためにのみ与えられており、特許請求の範囲を限定するとは決して解釈すべきでないことを認識している。
【実施例】
【0027】
(実施例1:酵素溶液を製造する方法)
Leuconostoc Mesenteroides NRRL B 30821またはNRRL B 30894を、種々の供給源からの10g/L酵素抽出物、5g/Lリン酸カリウム、0.2g/L硫酸マグネシウム(七水和物)、0.1g/L硫酸マンガン(一水和物)、0.02g/L塩化カルシウム、0.01g/L塩化ナトリウム、0.01g/L硫酸鉄(II)七水和物および20〜40g/Lグルコースを含む培地において増殖させることにより、酵素調製物を作製した。Leuconostoc Mesenteroides NRRL B 21297培養物を、2%スクロースおよび2%高マルトースコーンシロップ(65%マルトース)を炭素源として含むこと以外は同じ培地において増殖させた。培養物を、炭水化物が消費されるまで、27℃〜30℃にて、かつ(10% NaOHを用いて)pHを6.0に制御して増殖させた。一旦炭素源が枯渇したら4℃にて30分間、12,200×gでの遠心分離によって細胞を除去した。清澄にした培養上清を、50,000分子量カットオフ(50kD MWCO)メンブレンを通した限外ろ過によって濃縮して、体積あたり10倍の酵素濃縮物を得た。NRRL B 30821株およびNRRL B 30894株は両方とも、化学的変異誘発によってLeuconostoc Mesenteroides NRRL B 21297から誘導された。これらの株は両方とも、グルコース培地において増殖された場合にアルテルナンスクラーゼを構成的に発現する。
【0028】
(実施例2:消化性を決定するためのアッセイ)
得られるシロップの消化性を、インビトロ消化アッセイによって決定した。2mLの8%試験シロップを10μLのグルコアミラーゼ(Optidex L−400、Genencor International,Palo Alto,CA)および2mLの0.019M酢酸緩衝液(pH=4.5)と混合し、そして60℃にて16〜20時間インキュベートした。消化後、2mLのシロップを取り出し、そして2mLの0.05Mリン酸緩衝液(pH=6.5)、0.1mLの1% NaN3、および0.1gのラット腸粉末(カタログ番号I−1630,Sigma−Aldrich Fine Chemicals,St.Louis,MO,USA)と混合し、そして37℃にて24時間までインキュベートした。各時点で0.5mLの混合物を1mLの1.2N HClと混合してさらなる反応を停止させた。グルコアミラーゼおよびラット腸酵素での加水分解によるグルコース放出の量を、Aminex HPX−87Hカラム(Bio−Rad Laboratories(Hercules,CA))を用い、0.6ml/分にて60℃の0.01N(規定)硫酸を移動相として用いたHPLCにより決定した。消化性を、総グルコオリゴ糖から放出されたグルコースの%として表した。消化性を以下の式によって計算する:
理論的グルコース放出%=[グルコース]/[フルクトース]×0.45/0.55×100
あるいは、最初のグルコアミラーゼ処理工程を省略し得る。
【0029】
(実施例3:酵素アッセイおよび単位の定義)
2.5mLの40%(w/v)のスクロース:マルトース(9:1の比率)および0.1mlの1.5Mクエン酸緩衝液(pH5.5)に、0.1mL〜2.4mLの濃縮酵素を添加した。この体積をナノピュア水で5.0mlにし、そして反応物を37℃にてインキュベートした。1時間後、0.5mLの各反応物を90℃〜100℃の水浴中に5分間配置した。短時間の冷却時間後、1.0mLのナノピュア水を0.5mLのサンプルに添加し、そして0.05〜0.1gのイオン交換混合物(Dowex 66およびDowex 88(Dow Chemical Co.,Midland,MI)からなる)を添加した。このサンプルを2〜3分間倒置し、そして0.45μmのナイロンフィルター(Whatman,Clifton,NJ)を通して濾過してHPLCバイアルに入れた。サンプルを、0.9mL/分において移動相として水を用い、85℃においてHPX−87C糖質カラム(300mm×7.8mm)(Bio−Rad,Hercules,CA)を通してHPLCに流した。計算は、糖の合計面積に対するフルクトースの面積パーセントに基づいた。計算は以下のとおりである:
フルクトースパーセント×5mL反応物中の1g総糖/1時間/使用した酵素ブロスの体積=フルクトースのg/時間/mLの活性。
【0030】
次いで、値を、フルクトースの式量およびメートル変換を用いてμモル/分/mlに変換した。1単位を、37℃において1分間当たりフルクトース1μmolの放出と定義し、そして値をU/mLで報告する。
【0031】
(実施例4:低血糖上昇シロップの糖プロフィール分析)
低血糖上昇シロップのオリゴ糖プロフィールを、以下に記載のとおり、HPLC法により分析する。低血糖上昇シロップのサンプルを脱イオン水で希釈して5%〜10%の乾燥固形分にし、イオン交換樹脂(Dowex 66/Dowex 88,Dow Chemical Co.,Midland,MI)で脱灰(de−ash)し、そして0.45ミクロンのフィルターを通して濾過し、その後、糖分析のためにHPLCに注入する。オリゴ糖分離を、屈折率検出器を備えた、65℃の一続きの2つのBioRad Aminex HPX−42A,300−7.8mmカラム(Hercules,CA)を用いて達成する。水を、0.2ml/分の流量において溶離液として用いる。代表的な低血糖上昇シロップサンプル(PDF8)のクロマトグラムを図1に示す。このクロマトグラムに示される連続したピークは、漸増する重合度(DP)のオリゴマーに帰属される。例えば、DP3はトリサッカリドであり、DP4はテトラサッカリドである。
【0032】
はるかに左側の、最短の時間で溶出するピークは、少なくとも250,000の分子量を有するポリマーピークに帰属される。
【0033】
(実施例5:高温での特に透明なシロップへのスクロース/マルトース基質(スクロース:マルトース比率=9:1)の酵素的変換)
低い消化性および低い粘度を有する実質的に透明なLGSは、45℃よりも高い温度において作製され得る。上昇した温度においては、糖基質を透明なシロップへと変換する速度が大いに増大する。高温での反応速度の上昇に起因して、酵素の使用、変換時間の長さおよび加工中の微生物汚染の危険性が大いに低減される。これは、商業的製造においては特に重要なことであり、実質的に透明なLGSの製造に関して経済的利点を提供する。
【0034】
酵素調製物を、実施例1に記載のとおり、Leuconostoc Msenteroides NRRL B 30821から得た。この酵素調製物は、実施例3における定義において92.5単位/mLの活性を有していた。この酵素調製物および水の比重を1g/mLとみなした。結晶スクロースおよびマルトース(両方ともSigma−Aldrich Fine Chemicals(St.Louis,MO,USA)から購入した)を、乾燥重量基準で9:1のスクロース:マルトースの比率において乾式混合し、そしてコーヒー粉砕機で粉砕して均質な粉末基質混合物を得た。この粉末基質混合物を本明細書の以下では基質という。この糖基質を脱イオン水に溶解して、50mLのキャップしたポリプロピレン試験チューブにおいて、酵素調製物の添加を含め、最終濃度を20重量%、30重量%、40重量%および50重量%にした。0.17mLの酵素調製物のアリコートを各試験チューブに添加して、種々の酵素用量を得た(表1)。基質、水および酵素の合計重量は各試験チューブおいて8.50gであった。これらの試験チューブを、37℃に設定した水浴、45℃に設定した水浴、50℃に設定した水浴および55℃に設定した水浴中に30分間配置して、基質溶液をそれぞれの温度につき平衡化した後で酵素を添加した。
【0035】
【表1】

酵素調製物の添加後、試験チューブを、37℃、45℃、50℃および55℃のそれらのそれぞれの水浴に戻して配置した。20時間のインキュベーション後、少量のサンプルを各試験チューブから取り出した。基質の面積パーセントを糖面積の合計に対して計算したこと以外は、サンプル中の残りの基質を実施例3に記載のとおりにHPLCによって分析した。20時間の反応中の平均反応速度を酵素1単位あたりの減少した基質のμmol(μmol基質/時間/単位)として計算した。
【0036】
以下の表2は、反応の結果を提供し、そしてより高温およびより高い基質濃度での反応がより高い基質変換およびより速い反応速度を示すことを示す。その結果、高温および高基質濃度においては、より少ない時間で反応を完了するために、より低い基質濃度およびより低い温度と比較して、より少ない酵素が必要とされることを当業者は認識する。例えば、97%の基質利用は、20時間以内での6.17U/gの酵素を用いた30%の濃度、37℃において98%の基質減少と比較して、3.7U/gの酵素を用いて50%の基質濃度および50℃において達成され、98%の基質の完了は、4.63U/gの酵素を用いて40%の濃度にて45℃において達成された。37℃において20%の濃度の反応を完了するためには、9.25U/gの酵素を必要とした。産業的な操作の観点から見て、高い基質濃度での反応はまた、水およびエネルギーの使用の低減という利点を提供する。
【0037】
この実験から、当業者はまた、遅い反応速度に起因して、高い基質濃度でかつ低い温度(例えば、37℃)において反応を完了するためにははるかに長い時間が必要であることを理解する。
【0038】
【表2】

(実施例5:高温で製造された透明なシロップの化学的特性および物理的特性)
酵素調製物を、実施例1に記載のとおり、Leuconostoc Mesenteroides NRRL B 30821から得た。この酵素調製物は、実施例3における定義において92.5単位/mLの活性を有した。この酵素調製物および水の比重を1g/mLとみなした。結晶スクロースおよびマルトース(両方ともSigma−Aldrich Fine Chemicals(St.Louis,MO,USA)から購入した)を、乾燥重量基準で9:1のスクロース:マルトースの比率において乾式混合し、そしてコーヒー粉砕機で粉砕して均質な粉末基質混合物を得た。この粉末基質混合物を本明細書の以下では基質という。この糖基質を脱イオン水に溶解して、50mLのキャップしたポリプロピレン試験チューブにおいて、酵素調製物の添加を含め、最終濃度を50重量%および60重量%にした。酵素調製物のアリコートを各試験チューブに添加して、2U/g、5U/gおよび8U/gの最終酵素用量を得た。基質、水および酵素の合計重量は各試験チューブおいて20gであった。これらの試験チューブを50℃に設定した水浴中に30分間配置して、基質溶液をそれぞれの温度につき平衡化した後で酵素を添加した。50℃にて48時間後、サンプルを、実施例3に記載の二重Aminex HPX−42A HPLCカラムを用いて、それらの糖組成について分析した。これらのサンプルの消化性を、実施例2に記載の方法によって決定した。
【0039】
一般に、高温かつ高基質濃度において製造されたシロップは、より少ないポリマーおよびより多くのロイクロース(leucrose)を含んでいるが、類似の量のグルコオリゴ糖を含んでいた(表3)。インビトロでの消化速度はオリゴ糖の含有量に大いに起因し得るので、高温かつ高基質濃度において製造されたシロップは、低温かつ低基質濃度でのインビトロ消化性と類似のインビトロ消化性を示した。インビトロ消化速度の結果は、試験したサンプル間で類似の消化速度を示した。同じ消化条件下では、マルトースまたはマルトオリゴ糖は、8時間以内に100%消化される(データは示さず)。
【0040】
【表3】

(実施例6:高温で製造されたシロップの清澄性)
低減したポリマー濃度に起因して、高温で製造されたシロップは、別の重要な特徴を示した。すなわち、これらは透明である。
【0041】
Savage(MN,USA)のCargill Process Development Facility、において、20%(w/w)基質濃度でかつ37℃において製造されたシロップサンプル(PDF03、PDF04、PDF06、PDF08およびPDF10)を、50%(w/w)基質濃度でかつ50℃において製造されたシロップサンプルと比較した。アルテルナンポリマーを除去するために限外ろ過(50kD MWCO)によってPDF70から製造されたサンプルもまた比較に含めた。全てのサンプルを、約80%の乾燥固形分から、脱イオン水により50%、40%、30%、20%、10%および5%の乾燥固形分に希釈し、そして1cmのセルを用い、分光光度計(Hewlett Packard,Model 8453)を650nmにて用いて、光透過率を測定した。試験サンプルの透過率を測定する前に、分光光度計を脱イオン水で較正した。表4に示すとおり、20%の基質濃度でかつ37℃において製造された全てのサンプル(ポリマーを限外濾過によって除去したPDF07を除く)は、96.1%未満の光透過率を有し、40%以下の乾燥固形分濃度において不透明に見えた。逆に、高温において製造したサンプルは、全ての濃度範囲(0.5%の乾燥固形分から85%の乾燥固形分まで)において、ポリマーを限外ろ過によって除去したサンプルと同程度に透明であった。
【0042】
【表4】

(実施例7:高温においてNRRL B 30894を用いて製造されたシロップ)
Leuconostoc Mesenteroides NRRL B 30821株おいびNRRL B 30894株からの酵素調製を実施例1に従って行った。シロップのバッチPDF12を、3Ug基質の酵素(Leuconostoc Mesenteroides NRRL B 30894株)を50℃および50%総糖(スクロース対マルトースの比率は9)において用いて製造した。シロップのバッチPDF6およびPDF7を、37℃でかつ20%総糖(スクロース対マルトースの比率は9)において6U/g基質の用量のNRRL B 30821酵素を用いて製造した。消化アッセイを、グルコアミラーゼ前処理工程を用いずに実施例2に記載のとおりに行った。粘度の測定を、2つの異なるロットのシロップを77%の乾燥固形分で用い、Brookfield DV−E Viscometer(Brookfield Engineering Labs,Inc.,Middleboro,MA)を用いて、種々の温度において行った。
【0043】
シロップのバッチPDF6およびPDF7は不透明であり、シロップのバッチPDF12は透明なシロップであった。低温(PDF7)および高温(PDF12)において製造した2種類のシロップの糖プロフィールを表6に示す。表6においては、シロップPDF12にはポリマーが存在しないことが示された。透明なシロップは、同じ乾燥固形分レベルの不透明なシロップと比較して有意に低い粘度を有した(表7)。そして透明なシロップは、不透明なシロップと類似の速度においてラット腸粉末によって消化される(表8)。
【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

(実施例8:種々のLeuconostoc株由来の酵素調製物を用いて高温において製造された透明なシロップ)
酵素調製物を、実施例1において記載される方法を用いて3つの異なるLeuconostoc株から得た。合計3kgの糖基質(スクロース:マルトース=9:1)を水道用水に溶解して、酵素添加を含め、50%乾燥固形分w/wまたは52%乾燥固形分w/wの最終濃度にした。反応を、50℃または52℃にて実施した(以下の表9)。アリコートを各反応の最後に取り出し、そしてそれらの糖プロフィールおよびインビトロ消化性を記載のとおりに決定した。
【0047】
表9に示すとおり、全ての酵素調製物は反応を完了した。得られるしるっぷは、類似の化学組成およびインビトロ消化速度を示した。
【0048】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】代表的な低血糖上昇シロップサンプル(PDF8)のクロマトグラムを図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に透明なシロップを製造する方法であって、該方法は、45℃よりも高い温度において、少なくとも40% w/wの濃度の1以上の基質を、少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素と反応させて実質的に透明なシロップを得る工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼおよび1以上の基質が、12時間未満にわたって45℃よりも高く保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、8ユニット/グラム基質未満の濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
20% w/wの濃度の前記シロップが、650nmにおいて93%よりも高い透過率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シロップが、DP12よりも大きな0.5%未満のアルテルナンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シロップが、80°Fおよび77%乾燥固形分濃度において14000cps未満の粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、乳酸細菌から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、Leuconostoc mesenteroidesから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、Leuconostoc mesenteroidesのNRRL B 1355株、NRRL B 23185株、NRRL B 23186株、NRRL B 23188株、NRRL B 23311株、NRRL B 21297株、NRRL B 30821株、NRRL B 30894株からなる群より選択される株から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、組換えにより産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法に従って製造された、シロップ。
【請求項12】
請求項11に記載のシロップを含む、食品組成物または飲料組成物。
【請求項13】
食品または飲料を製造する方法であって、該方法は、1以上の成分を実質的に透明なシロップと混合する工程を包含し、該実質的に透明なシロップは、45℃よりも高い温度において、少なくとも40% w/wの濃度の1以上の基質を少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素と反応させることにより製造される、方法。
【請求項14】
前記飲料がスポーツドリンクである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、乳酸細菌から得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、Leuconostoc mesenteroidesから得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アルテルナンスクラーゼ酵素が、Leuconostoc mesenteroidesのNRRL B 1355株、NRRL B 23185株、NRRL B 23186株、NRRL B 23188株、NRRL B 23311株、NRRL B 21297株、NRRL B 30821株、NRRL B 30894株からなる群より選択される株から得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアルテルナンスクラーゼ酵素が、組換えにより産生される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記成分のうちの少なくとも1つがビタミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記成分のうちの少なくとも1つが高甘味度甘味料である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
請求項13に記載の方法によって製造される、食品。
【請求項22】
請求項13に記載の方法によって製造される、飲料。

【図1】
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【公表番号】特表2008−529534(P2008−529534A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555345(P2007−555345)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/005210
【国際公開番号】WO2006/088884
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507274803)カーギル, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】