説明

シートの加工装置及びシートの製造方法

【課題】シートに高い延伸倍率で延伸加工を施すことができるシートの加工装置を提供すること。
【解決手段】本発明のシートの加工装置1は、周面部に互いに噛み合う歯溝を有する一対のロール2、3を備え、これらのロール2、3が回転されているときにその噛み合い部分に供給されたシート10に加工を施す装置である。各ロール2、3における隣接する歯20、30どうしのピッチが1.0mm〜5.0mm、前記各歯20、30の幅が前記ピッチの1/2未満、且つ前記歯20、30の高さが隣接する歯のピッチである。ロール2、3の歯20、30の噛み合いの深さが1.0mm〜歯の高さまでであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに伸縮性付与や立体形状の賦形等の加工を施すシートの加工装置、シートの製造方法、及びパンツ型着用物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周面部に互いに噛み合う歯溝を有する一対のロールを備えた加工装置を使用し、該ロールを回転させてそれらの噛み合い部分に不織布等のシートを供給し、該シートに加工を施す技術が種々提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、これらの技術のように歯溝を有する一対のロール間にシートを通して加工を施す場合、ロール同士を噛み合わせて回転させる必要がある。これらのロールとして、インボリュート歯車が代表的に使用されてきた。それらのインボリュート歯車はJIS B1701に規定された標準基準ラック寸法に準じた寸法形状で規定されている。このため、高い延伸倍率で延伸加工を施すには限界があり、伸縮性や深い凹凸形状等の加工を施すことが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特表2002−501127号公報
【特許文献2】特開2001−328191号公報
【特許文献3】特開2004−174234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、シートに高い延伸倍率で延伸加工を施すことができるシートの加工装置、該延伸加工により得られる伸縮性の高いシートの製造方法、及び該シートを使用したパンツ型着用物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、JIS B1701に規定されているギアの規格から外れるような形態の歯溝を有するロールについて検討した結果、特定の歯溝の形態を有するロールを用いてシートの加工を行うと、意外にも従来にない延伸加工を施せることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、周面部に互いに噛み合う歯溝を有する一対のロールを備え、これらのロールが回転されているときにそれらの噛み合い部分に供給された基材シートに加工を施すシートの加工装置であって、前記各ロールの歯溝は、該各ロールの軸に沿って設けられており、前記各ロールにおける隣接する歯どうしのピッチが1.0mm〜5.0mm、前記各歯の幅が前記ピッチの1/2未満、且つ前記歯の高さが隣接する歯のピッチ以上であるシートの加工装置を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0008】
また、本発明は、前記本発明のシートの加工装置における前記一対のロールを回転させながらそれらの噛み合い部分に基材シートを供給し、該基材シートに延伸加工を施す工程を具備しているシートの製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記本発明のシートの製造方法で製造されたシートを使用したパンツ型着用物品の製造方法であって、前記シートを含む外包材の連続体をその長手方向に沿って二つ折りにする折り工程と、二つ折りにした前記連続体を長さ方向に所定間隔をおいて接合して接合部を形成する接合工程と、前記連続体を前記接合部で切断して個々に分離する分離工程とを具備しているパンツ型着用物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート加工装置及び製造方法によれば、従来にない高い伸縮性の付与や深い凹凸形状等の立体形状の賦形等の加工をシートに好適に施すことができる。また、本発明のパンツ型着用物品の製造方法によれば、高い伸縮性等が付与されたシートが使用されるので、フィット性や肌触りに優れるパンツ型着用物品を好適に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。
図1及び2は本発明のシートの加工装置(以下、単に加工装置ともいう。)の一実施形態を模式的に示したものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の加工装置1は、周面部に互いに噛み合う歯溝を有する一対のロール2、3を備え、これらのロール2、3が回転されているときにそれらの噛み合い部分に供給された基材シート10に延伸加工を施して伸縮性を付与する装置である。本実施形態の加工装置1では、ロール2、3は同じ形態のロールで構成されており、図1に示すように、各ロールの歯溝は各ロールの軸に沿って設けられている。加工装置1は、加工する基材シート10の機械流れ方向の滑りを防ぐ滑り防止手段4と、ロール2、3による加工前後の基材シート10に張力を加える張力付与手段5、6を備えている。
【0013】
図2に示すように、各ロール2、3における隣接する歯20、30どうしのピッチPは、1.0mm〜5.0mmであり、前記各歯の幅Wが前記ピッチの1/2未満であり、且つ前記歯の高さHは隣接する歯のピッチ以上である。各ロールにおける歯溝の形態が斯かる範囲であり、これらロール2、3間に供給されるシートに従来にない高い伸縮性を付与することができる。ここで、ロールにおける隣接する歯どうしのピッチとは、1つの歯の中心線とそれと隣り合う歯の中心線との距離をいう。ロールの歯の幅とは、1つの歯の幅をいう。ロールの歯の形は長方形型、三角形型、台形型等いずれの形であってもよい。歯の幅は均等でなく、歯の根元から歯の先端に向って細くなる台形型の歯であってもよい。台形型の歯が一対の歯溝ロールが噛み合ったときの回転性とその噛み合い部分を材料(シート)が通過したときのダメージを考慮すると台形型の歯が好ましい。ロールの歯の高さとは、歯の根元から先端までの長さをいう。
【0014】
各ロール2、3における隣接する歯どうしのピッチPは、伸びの均一化を考慮すると、1.5〜3.5mmが好ましく、2.0〜3.0mmがより好ましい。また、各ロール2、3における歯の幅Wは、歯の強度を考慮すると、歯どうしのピッチの1/4〜1/2が好ましく、1/3〜1/2がより好ましい。さらに、各ロールの歯の高さHは、材料に伸縮性を与えるためには延伸倍率を高くすることを考慮すると、歯のピッチが例えば2.0mmの場合は2.0(ピッチの1.0倍)〜4.0(ピッチの2.0倍)mmが好ましく、2.5(ピッチの1.25倍)〜3.5(ピッチの1.75倍)mmがより好ましい。
【0015】
また、各ロール2、3における歯20、30の先端の角部は、材料が角部でダメージが与えられないように、面取りしておくのが好ましい。面取りの曲率半径は0.1〜0.3mmが好ましい。
【0016】
ロール2、3の歯20、30の噛み合い深さDは材料に伸縮性を与えるために延伸倍率を高くすることを考慮すると、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましい。ここで、歯の噛み合い深さとは、ロール同士を噛み合わせて回転させるとき、隣接する歯の重なり合う長さをいう。
【0017】
ロール2、3は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。ロール2、3の各軸に歯20、30とは別に、一般的な、JIS B1701に規定されているギアを駆動用のギアとしてとりつけてもよい。それによって、ロール2、3の歯20、30が噛み合うのではなく、これらのギアが噛み合うことによって、ロール2、3に駆動が伝達され、ロール2、3を回転させることができる。この場合、ロール2、3の歯20、30は接触することはない。また、ロール2、3にそれぞれ独立に駆動力を伝達する駆動手段(図示せず)を設けることで、それぞれの駆動手段をロール2,3の歯20,30を接触しないように制御することによっても実現可能である。材料の伸びが全体で均一になるようにするには、ロール2,3の歯20,30は接触せずに回転させることが好ましい。
【0018】
図1に示すように、滑り防止手段4は、ロール2と接触したロール41、42を具備している。ロール41、42はゴムロールで構成されており、それらの周面部をロール2に押し当てることで、ロール2、3間を通過する基材シート10の滑りや収縮を抑制する。ロール41、42はロール3に周面部を押し当てるように配置することもでき、これにより、上記同様の効果を奏させることができる。滑り防止手段4の他の例としては、一方のロールにその周面部において開孔する吸引路を設け、該吸引路を通して加工済みのシートを吸引する吸引手段を付設することで、材料の滑り若しくは収縮を抑制することもできる。また、加工時の材料滑りを抑えるために、ロール2,3の両方、若しくはどちらか一方の歯の先端部に、表面処理や機械加工等を行い、摩擦係数を高める方法を取ることも好ましい。歯の滑り防止は、歯の先端部の材料が巻きかけられる部分の全体又は部分的に施すことが好ましい。
【0019】
本実施形態においては、張力付与手段5は、ロール2、3の上流側に配された一組のテンションロール51、52を備えており、張力付与手段6は、ロール2、3の下流側に配された一組のテンションロール61、62を備えている。
【0020】
加工装置1は、制御手段(図示せず)を備えており、該制御手段は、前記駆動手段や滑り防止手段4を所定の動作シーケンスに従って制御する。
【0021】
ロール2、3を備えた加工装置1によれば、延伸倍率が好ましくは50%(1.5倍)以上(400%(5.0倍)以下)より好ましくは150%以上(2.5倍以上)(350%(4.5倍)以下)、特に好ましくは200%〜300%(3.0〜4.0倍)という高い延伸倍率の延伸加工を行うことができる。ここで、延伸倍率とは(歯溝を有するロールの噛み合いによって材料が延伸された時の長さ−該ロールの噛み合いによって延伸する前の材料長さ)/(該ロールの噛み合いによって延伸する前の材料長さ)×100(%)のことをいう。なお、該延伸倍率(%)の後のカッコ内の数字(倍)は、該延伸倍率を100で除した値に延伸前の材料長さを1として加え、延伸倍率を別の表現で表したものである。
【0022】
次に、本発明のシートの製造方法の一実施形態を、前記実施形態の加工装置1を用いて基材シートに加工を施す工程を具備するシートの製造方法に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、加工装置1における一対のロール2、3を回転させながらそれらの噛み合い部分に基材シート10を供給する。そして、図3に示すように、ロール2、3間において、基材シート10に延伸加工を施す。
【0024】
基材シート10により効果的に伸縮性を付与する観点から、加工前の基材シート10にテンションロール51、52によって張力を加えた状態でロール2、3間に供給することが好ましい。供給する基材シート10に加える張力は、加工前の基材シートの破断応力の10%〜80%が好ましく、20%〜70%がより好ましい。
同様の観点から、加工済みの基材シート10にテンションロール61、62によって張力を加えて前記ロール間から引き出すことが好ましい。供給する基材シート10に加える張力は、加工後の基材シートの破断応力の5%〜80%が好ましく、10%〜70%がより好ましい。材料の破断応力は歯溝延伸加工の加工前に比べて、加工後では小さくなる。また、歯溝延伸加工によって伸縮性を付与された加工済み基材シート10はわずかな張力でも伸びやすい。そのような観点から、加工済みの基材シート10に加える張力を加工前の基材シート10に加える張力よりも弱くすることが好ましい。
【0025】
加工を施す基材シート10の材質に特に制限はないが、加工装置1による延伸加工によりもたらされる効果をより一層奏させる上で、伸縮性を有する不織布が好ましく、特に、弾性繊維層の少なくとも一面に、実質的に非弾性の非弾性繊維層が配され、両繊維層は、弾性繊維層の構成繊維が繊維形態を保った状態で、繊維交点の熱融着によって全面接合されており、非弾性繊維層の構成繊維の一部が弾性繊維層に入り込んだ状態、及び/又は、弾性繊維層の構成繊維の一部が非弾性繊維層に入り込んだ状態になっている伸縮性不織布(以下、伸縮性複合不織布という。)が好ましい。また、弾性繊維と非弾性繊維の接合をより強固にするため、エンボス加工を施した伸縮性複合不織布がより好ましい。
【0026】
非弾性繊維層の厚みは、弾性繊維層の厚みの1.2〜20倍が好ましく、且つ坪量は非弾性繊維層よりも弾性繊維層の方が高くなっていることが好ましい。また、弾性繊維層の構成繊維の繊維直径が、非弾性繊維層の構成繊維の繊維直径の1.2〜5倍であり、且つ10〜100μmであることが好ましい。
【0027】
前記弾性繊維層の構成繊維は、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーからなる繊維であることが好ましい。また、非弾性繊維層の構成繊維は、非弾性繊維層を構成する繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる短繊維からなる繊維が好ましい。
【0028】
上述のような構成の基材シートに加工装置1によって、上述のような延伸倍率が200%を超えるような高い延伸加工を施すことによって、伸度が100〜160%(100cN/25mm荷重負荷時)といった高い伸縮性を有するシートを連続的に製造することができる。ここで、伸度とは(引っ張り荷重を与えた後の材料長さ−引っ張り荷重を与える前の材料長さ)/(引っ張り荷重を与える前の材料長さ)×100(%)のことをいう。
【0029】
上述の基材シート10の他、以下に説明する積層シート及び単層の繊維シートを基材シートとして、用いることが高い伸縮性を得る上で好ましい。
【0030】
前記積層シートとしては、図4(a)及び(b)に示すように、弾性伸縮性を有する第1繊維層(弾性層)11の両面に、それぞれ実質的に非弾性の第2及び第3繊維層(非弾性繊維層)12,13が積層されており、これらが規則的なパターンで、部分的に接合されている積層シート10Aが挙げられる。
【0031】
斯かる積層シート10Aは、第1のカード機から供給されて一方向(流れ方向,MD)に連続搬送されている繊維ウエブ(第3繊維層)上に、繊維成形機により成形された弾性繊維を供給して、該繊維ウエブ上に、弾性繊維からなる層(第1繊維層)を連続的に形成し、さらにその上に、第2のカード機から供給される繊維ウエブ(第2繊維層)を連続的に供給した後、得られた3層構造の積層シートに対して、エアースルー方式のドライヤーにより熱風処理を施し、熱風処理後の積層シートに対して、周面にエンボス用凸部が規則的に配置されたエンボスロール及びそれに対向配置されたアンビルロールを備えたエンボス装置により熱エンボス加工を施すことによって得ることができる。これにより、図4に示すように、接合部14が規則的なパターンで形成された積層シートが得られる。
【0032】
上述した積層シートの製造方法においては、ドライヤーによる熱風処理を、弾性繊維と非弾性繊維との熱融着や繊維の入り込みを目的として行っているが、斯かる熱風処理は省略することもできる。
【0033】
前記第1繊維層(弾性層)11は、伸ばすことができ且つ伸ばした力から解放したときに収縮する性質を有するものであり、少なくとも面と平行な一方向において、100%伸張後に収縮させたときの残留歪みが20%以下であることが好ましく、さらに好ましくは100%伸張後に収縮させたときの残留歪みが10%以下であることがより好ましい。これらの値は、少なくとも、MD方向及びCD方向の何れか一方において満足することが好ましく、両方向において満足することがより好ましい。最大伸度は30〜500%、特に300〜500%であることが好ましい。
【0034】
第1繊維層(弾性層)11は、弾性材料からなる弾性繊維を含むものが好ましい。弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、ゴム、エチレン・プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、比較的容易に繊維状の弾性体が成形できる点から、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン、スチレン系(SBS,SIS,SEBS,SEPS等)、オレフィン系(エチレン、プロピレン、ブテン等の共重合体等)、塩化ビニル系、ポリエステル系等を挙げることができる。これらは一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
第1繊維層11中の、弾性材料からなる弾性繊維の含有率は、50〜100重量%、特に、75〜100重量%であることが好ましい。第1繊維層11の弾性繊維樹脂にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(PETやPBT)、ナイロン等の非弾性樹脂や有機又は無機顔料、各種添加剤(酸化防止剤、可塑剤、等)を含むこともできる。また、第1繊維層中に非弾性繊維、有機又は無機顔料を含むことができる。
弾性層としては、繊維層からなるものに代えて、フィルム状のもの、ネット状のもの等を用いることもできる。フィルムやネットの形成材料としては、上記各種の弾性材料を用いることができる。
【0036】
第2及び第3繊維層(非弾性繊維層)12,13は、伸張性を有するが、実質的に非弾性のものである。ここでいう、伸張性は、構成繊維自体が伸張する場合と、構成繊維自体は伸張しなくても、繊維同士の交点において熱融着していた両繊維同士が離れたり、繊維同士の熱融着等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、繊維層として伸張する場合の何れであっても良い。
【0037】
非弾性繊維層を構成する繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(PETやPBT)、ナイロン等やポリ乳酸等の生分解樹脂からなる繊維等が挙げられる。非弾性繊維層を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、親水性でも撥水性でも良い。また、芯鞘型の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に短繊維においては延伸により毛羽が起こりやすいが、本方法を用いると接合部の破壊が起こりにくいため、強度が高く、かつ、毛羽立ちが防止でき肌触りの良いものができる点で好ましい。
【0038】
接合部14は、例えば、図4(b)に示すように、積層シート10Aの流れ方向(MD)及びその直交方向(CD)の両方向に不連続に形成されていることが好ましい。また、積層シート10Aは、第2繊維層12及び/又は第3繊維層13は、肌触りの良い伸縮性不織布(伸縮性シート)を得る観点から、接合部14が積層シート10Aの表面に凹部を形成しており、それ以外の部分が、凸部となっていることが好ましい。
【0039】
一方、前記基材シート10に用いられる前記単層の繊維シートとしては、弾性成分と実質的に非弾性の成分とを含み、エンボス加工による部分的なエンボス部が形成されている単層の繊維シートが挙げられる。例えば、(1)芯部が弾性成分から構成され、鞘部が実質的に非弾性の成分からなる芯鞘型複合繊維、又は弾性成分若しくは非弾性の成分からなるサイド・バイ・サイド型複合繊維、多数分割型複合繊維で構成された、繊維ウエブや各種製法の不織布等に、上述した第1実施形態におけるのと同様のパターンでエンボス加工によるエンボス部を形成したもの、(2)弾性繊維と非弾性繊維とを混合状態で含む、繊維ウエブや各種製法の不織布等に、上述した積層シートにおける接合部と同様のパターンでエンボス加工によるエンボス部を形成したもの等を用いることができる。繊維シートの具体例としては、カード法で得られた繊維ウエブやスパンボンド、メルトブローンなどによって紡糸した繊維ウエブ、水流交絡繊維ウエブ、ニードル交絡繊維ウエブに、ヒートロールで多数の熱融着部を平面視において散点状に形成したものを挙げることができる。
弾性成分としては、上述した弾性繊維の構成材料を挙げることができる。実質的に非弾性の成分としては、上述した非弾性繊維の構成材料が挙げられる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の加工装置1及びそれを用いたシートの製造方法によれば、噛み合って回転するロール2、3間に基材シート10を一度通しただけで、該基材シート10に高い延伸倍率で延伸加工を施し、これにより発現される、高い伸縮性を備えたシートを好適に製造することができる。また、本実施形態の加工装置は、基材シートを一度通すだけで優れた延伸加工を施すことができるため、加工済みのシートをそのままその応用製品の製造ラインにインラインで供給することができる。
【0041】
次に、本発明のパンツ型着用物品の製造方法を、パンツ型の使い捨ておむつの製造方法(以下、おむつの製造方法という。)に適用した好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0042】
図5に示したように、本実施形態のおむつの製造方法は、前記シートの製造方法で製造されたシート(延伸加工が施されたシート)10を使用し、おむつ100を製造するものであり、シート10の連続体を用いる以外は、従来の、いわゆる横流れ方式のパンツ型使い捨ておむつの製造方法と同様にして製造することができる。
【0043】
本実施形態のおむつの製造方法は、シート10を含む外包材101の連続体の形成工程と、外包材101の連続体に吸収性本体102を配置する吸収性本体102の配置工程と、外包材101の連続体にレッグホール103を形成するレッグホール形成工程と、外包材101の連続体と吸収性本体102の折り工程と、二つ折りにした外包材101の連続体を長さ方向に所定間隔をおいて接合して接合部を形成する接合工程と、外包材101の連続体を接合した部分で切断して個々に分離する分離工程とを具備している。
【0044】
外包材101の連続体の形成工程では、外包材101に含ませる外層シートとしての前記シート10と、肌側に配される内層シート104とを接合して外包材101の連続体を形成する。本実施形態においては、これらのシート同士を接合するときに、ウェスト部弾性部材105及びレッグ部弾性部材106もこれらのシート同士の間に供給され、それらの間に伸張状態で接合される。具体的には、両シートを重ね合わせる前に、両シートの何れか一方又は双方の相対向する面の所定の部位に、ウェスト部弾性部材105及びレッグ部弾性部材106を固定するための接着剤を塗工しておき、これらの弾性部材を伸長状態で挟んだ状態で、両帯状シートを、ニップロール7で狭圧する。
【0045】
シート10と内層シート104との間は、おむつ100の腹側部、背側部及び股下部それぞれの大部分において接合されていない。具体的には、シート10と内層シート104とは、おむつ100の腹側部及び背側部それぞれの両側縁部において、ヒートシール、高周波シール又は超音波シール等の手法により互いに接合され、ウェスト開口部の周縁部及び一対のレッグホールのそれぞれの周縁部において、ホットメルト型接着剤等の接着剤により互いに接合され、腹側部、背側部及び股下部それぞれのおむつ幅方向中央部において接合されている。そして、それらの以外の部分においては接合されていない。
【0046】
内層シート104には、長手方向に伸長性を有するが伸縮性を有しないシートが好ましく用いられる。内層シート104の長手方向の最大伸度は100%以上であることが好ましい。長手方向に伸長性を有するが伸縮性を有しないシートとしては、特表平8−508789号公報、特表2000−513054号公報等に記載のもの等を用いることができる。また、内層シート104には、同じように上述のロール2、3によって延伸加工した基材シート10のように、伸縮性を有するシートを用いることもできる。また、特願2006−207596の出願当初の明細書〔0021〕〜〔0027〕に記載されているように、伸長状態の第1帯状シートと実質的に非伸長状態の第2帯状シートとが貼り合わされたシートを用いることもできる。
【0047】
ウェスト部弾性部材105は、おむつのウェスト部に位置するように外包材101の両側部に供給されて接着剤で接合固定される。レッグ部弾性部材106は、後に形成されるレッグホール103及び股下部分の形態に合わせて供給されて接着剤で接合固定される。レッグ部弾性部材106は、シート10及び内層シート104の流れ方向に直交する方向に公知の揺動ガイド(図示せず)で揺動されながら、両帯状シート間に導入される。ウェスト部弾性部材105及びレッグ部弾性部材106には、従来からこの種の物品に使用されている通常のものを採用することができる。ウェスト部弾性部材105及びレッグ部弾性部材106としては、それぞれ、天然ゴム、ポリウレタン系樹脂、発泡ウレタン系樹脂、ホットメルト系伸縮部材等の伸縮性素材を糸状(糸ゴム)又は帯状(平ゴム)に形成したものが好ましく用いられる。
【0048】
吸収性本体102の配置工程では、予めホットメルト接着剤等の接着剤が塗布された吸収性本体102が、90度回転され、外包材101の連続体の内層シート104上に間欠的に供給されて固定される。
【0049】
吸収性本体102は、液透過性の表面シート、液不透過性又は撥水性の裏面シート及これら両シート間に介在配置された液保持性の吸収性コアを有する実質的に縦長の形態を有している。これらの表面シート、裏面シート及び吸収性コアには、従来からこの種の物品に用いられているものと同様のものが採用される。吸収性コアには、高吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成され、ティッシュペーパ(図示せず)によって被覆されているもの等が好ましく用いられる。
【0050】
レッグホール形成工程では、吸収性本体102が配置された外包材101の連続体におけるレッグ部弾性部材106の環状部の内側にレッグホール103が形成される。レッグホール103の形成には、ロータリーカッター、レーザーカッター等の従来からこの種の物品の製造方法における手法と同様の手法が採用される。レッグホールの形成は、吸収性本体10の配置前に行うこともできる。
【0051】
折り工程では、予めウェスト部弾性部材105及び吸収性本体102の長さ方向の両端部に折り重なるように、外包材101の連続体の両側縁部が折り込まれた後、外包材101の連続体と吸収性本体102とが二つ折りにされる。
【0052】
接合工程では、吸収性本体102とともに二つ折りにされた外包材101の連続体が、長さ方向に所定間隔をおいて接合され、おむつのサイドシール部に対応する接合部107が形成される。接合部107の形成には、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の従来からこの種の物品の製造方法における手法と同様の手法が採用される。
【0053】
分離工程では、接合工程において形成した外包材101の連続体の接合部107の略中央部で当該連続体が切断されて個々のおむつ100に分離される。おむつ100の分離には、従来からこの種の物品の製造方法における手法と同様の手法が採用される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のおむつの製造方法によれば、高い伸縮性等が付与されたシート10が使用されているので、フィット性や肌触りに優れるパンツ型着用物品を好適に製造することができる。また、延伸加工を施した基材シート10をインラインで供給しておむつを製造できるので、従来のおむつの製造方法における工程を大幅に変更せずに、おむつを製造することができる。
【0055】
本発明は、前記実施形態に制限されない。
例えば、図6に示す実施形態の加工装置1’のように、ロール2、3を基材シート10の機械流れ方向に直列に複数(図6では便宜上2機)配置し、これらのロール2、3によって基材シート10に延伸加工を繰り返し施すことによって、基材シート10により高い伸縮性を発現させることもできる。
【0056】
また、本発明の加工装置及びそれを用いたシートの製造方法は、前述したような不織布を基材シートとし、伸縮性のシートを製造する場合に特に好適であるが、それ以外、例えば、他の不織布、紙、樹脂フィルム或いはこれらを複合化した複合シート等を基材シートとし、該基材シートに高い延伸加工を施すことができる。このような延伸加工が施されたシートに伸縮性の付与、凹凸形状等の立体形状の賦形加工を施すことができる。
【0057】
本発明の加工装置には、必要に応じてヒーター等を備え、ロールを加熱したりしてその温度を調整する温度調節手段を付設してもよい。また、一方のロールにその周面部において開孔する吸引路を設け、該吸引路を通して加工済みのシートを吸引する吸引手段を付設し、加工済みのシートを移送できるようにしてもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
下記実施例1〜3のロールを供えた装置を使用し、下記加工条件で各ロール間に下記基材シートを一度だけ通して加工を施した。加工を施したシートについて下記条件で荷重を負荷したときの伸度を調べた。その結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例1〕
<ロールの形態及び歯の噛み合い深さ>2本とも同じ仕様
ロールの歯のピッチ:2mm
ロールの歯の幅:0.7mm(根元)、0.525mm(歯の先端)
ロールの歯の高さ:3.5mm
ロールの歯のP.C.D(Pitch Circle Diameter):150mm
ロールの歯の噛み合い深さ:2.7mm(歯の接触があり連れ回りで回転)
【0060】
<基材シートの材質>
加工を施す基材シートには、下記弾性繊維からなる弾性繊維層の両面に下記非弾性繊維からなる非弾性繊維層がエアースルー法により複合化された伸縮性複合不織を用いた。
弾性繊維:スチレン系の熱可塑性エラストマー繊維、繊維径30μm
弾性繊維層の坪量:40g/m2
非弾性繊維:PET/PE芯/鞘構造繊維、繊維太さ2dtex
非弾性繊維層の坪量:10g/m2
複合シート坪量:60g/m2
【0061】
<加工条件>
加工前の基材シートにかける張力:500cN/100mm幅
加工済みの機材シートにかける張力:200cN/100mm幅
【0062】
〔伸度の測定〕
加工を施したシートから幅25mm、長さ75〜100mmの試験片を作製し、該試験片をシートの機械流れ方向が引っ張り方向となるように引張り試験機にセット(チャック間距離50mm)し、ロードセル速度30m/minで引っ張ったときの荷重−伸度特性を調べた。3本の試験片について同じ測定を行ってそれらの平均値を求めた。そして、100cN/25mmのときの伸度を評価伸度に採用した。
【0063】
〔実施例2〕
ロールの歯の噛み合い深さを3.0mmに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例1と同じシートを加工した。
【0064】
〔実施例3〕
各ロールの歯どうしが接触しないように各ロールをギアで駆動させた以外は、実施例1と同様にして実施例1と同じシートを加工した。
【0065】
〔比較例〕
下記の一般的なインボリュート歯車の形状の歯溝を有する一対のロールを供えた装置を使用し、実施例1と同様にして実施例1と同じシートを加工した。その結果を表1に示す。
<ロールの形態及び歯の噛み合い深さ>
ロールの歯のモジュール:0.75mm
なお、ロールの歯の幅、高さ、ピッチは歯のモジュールによりJIS B1701によって規定される。
ロールの歯のP.C.D:150mm
ロールの歯の噛み合い深さ:0.75mm
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示したように、実施例1〜3の何れの場合にも、1回の加工を施すだけで、高い伸縮性を有するシートを製造できることがわかった。これに対し、比較例1の装置によって加工を施したシートは、伸度が1/3以下であった。また、歯の接触による連れ回りで回転する場合には、材料が均等に伸ばされるので、実施例1、2のほうが連れ回りのない実施例3よりも多少伸びがよくなった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のシートの加工装置及びシートの製造方法は、加工を施すシートに応じて、多様な産業上の利用が可能であり、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品、衣料、医療用の包帯や湿布材等の様々な物品の製造に利用することができる。また、本発明は、パンツ型の使い捨ておむつ、パンツ型の生理用ナプキン、パンツ型の失禁パッド等のパンツ型の吸収性物品の製造に特に適しているが、吸収性本体ないし吸収性コアを具備しない、サニタリーショーツその他のパンツ型着用物品の製造にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のシートの加工装置の一実施形態及びそれを用いたシートの製造工程を模式的に示す図である。
【図2】同実施形態におけるロールの部分拡大図である。
【図3】本実施形態の加工装置において一対のロール間で基材シートに延伸加工を施している状態を模式的に示す図である。
【図4】本発明のシートの製造方法に用いられる基材シートの一形態を模式的に示す拡大図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明のパンツ型着用物品の製造方法を使い捨ておむつの製造方法に適用した一実施形態の製造工程を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明のシートの加工装置の他の実施形態及びそれを用いたシートの製造工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1、1’ シートの加工装置
2、3 ロール
20、30 歯
4 滑り防止手段
5、6 張力付与手段
10、10A 基材シート
100 おむつ
101 外包材
102 吸収性本体
103 レッグホール
104 内層シート
105 ウェスト部弾性部材
106 レッグ部弾性部材
107 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面部に互いに噛み合う歯溝を有する一対のロールを備え、これらのロールが回転されているときにそれらの噛み合い部分に供給された基材シートに加工を施すシートの加工装置であって、
前記各ロールの歯溝は、該各ロールの軸に沿って設けられており、
前記各ロールにおける隣接する歯どうしのピッチが1.0mm〜5.0mm、前記各歯の幅が前記ピッチの1/2未満、且つ前記歯の高さが隣接する歯同士のピッチ以上であるシートの加工装置。
【請求項2】
前記ロールどうしの歯の噛み合いの深さが1.0mm〜歯の高さである請求項1に記載のシートの加工装置。
【請求項3】
前記一対のロール間に供給される基材シートの機械流れ方向の滑りを防ぐ滑り防止手段を備えている請求項1に記載のシートの加工装置。
【請求項4】
前記基材シートに延伸加工を施すように設けられている請求項1〜3の何れかに記載のシートの加工装置。
【請求項5】
前記延伸加工による延伸倍率が50〜400%である請求項4に記載のシートの加工装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載のシートの加工装置における前記一対のロールを回転させながらそれらの噛み合い部分に基材シートを供給し、該基材シートに延伸加工を施す工程を具備しているシートの製造方法。
【請求項7】
前記一対のロールを前記基材シートの機械流れ方向に複数配置し、該基材シートに前記延伸加工を繰り返し施す請求項6に記載のシートの製造方法。
【請求項8】
加工前の前記基材シートに張力を加えた状態で前記ロール間に供給する請求項6又は7に記載のシートの製造方法。
【請求項9】
加工済みの前記基材シートに張力を加えて前記ロール間から引き出す請求項6〜8の何れかに記載のシートの製造方法。
【請求項10】
加工済みの前記基材シートに加える張力を加工前の前記基材シートに加える張力よりも弱くする請求項9に記載のシートの製造方法。
【請求項11】
前記基材シートが不織布からなり、前記延伸加工によって該基材シートの流れ方向に伸縮性を付与する請求項6〜10の何れかに記載のシートの製造方法。
【請求項12】
請求項6に記載のシートの製造方法で製造されたシートを使用したパンツ型着用物品の製造方法であって、
延伸加工が施された前記シートを含む外包材の連続体をその長手方向に沿って二つ折りにする折り工程と、
二つ折りにした前記連続体を長さ方向に所定間隔をおいて接合して接合部を形成する接合工程と、前記連続体を前記接合部で切断して個々に分離する分離工程とを具備しているパンツ型着用物品の製造方法。
【請求項13】
前記外包材に含ませる前記シートと、肌側に配される内層シートとを接合して前記外包材の連続体を形成する外包材の形成工程を具備している請求項12に記載のパンツ型着用物品の製造方法。
【請求項14】
前記折り工程の前に、前記外包材の連続体における前記内層シートに吸収性本体を配置する吸収性本体の配置工程を具備している請求項13に記載のパンツ型着用物品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−177384(P2007−177384A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288019(P2006−288019)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】