説明

シートスイッチ

【課題】外部に反射される光量が均一で安定している薄型のシートスイッチを提供する。
【解決手段】シートスイッチ10が、固定接点2が設けられる基板1と、固定接点2の上方を覆うように配置され、上方からの押圧力を受けて固定接点2と接触するように構成されるドーム状の可動接点部材4と、基板1上に設けられる発光素子6と、可動接点部材4の上方を覆うように設けられ、発光素子6から放射された光を導光する導光シート5と、所定の厚さを有して導光シート5及び可動接点部材4の間に設けられて、導光シート5と可動接点部材4との間に部分的に空間Sを形成すると共に、導光シート5に導光されている光を反射させる複数の光反射部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明機能を有するシートスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
シートスイッチは、固定接点が設けられる基板と、その固定接点の上方を覆うように配置され、上方からの押圧力を受けて固定接点と接触するように構成されるドーム状の可動接点部材とを備えて構成される。このようなシートスイッチに照明機能を付加する場合、基板上に発光素子を設け、発光素子から放射された光を導光する導光シートを、粘着シートを介してドーム状の可動接点部材上に設けて、導光シートを基板及びドーム状の可動接点部材に対して接着する。その結果、導光シート中を導光される光が導光シートと基板及び粘着シートとの界面で反射されて、シートスイッチが光ることになる。
【0003】
また、特許文献1に記載のシートスイッチは、可動接点部材の上方の粘着シートと導光シートとの間に、導光シートに導光されている光を反射させるための反射部を備える。反射部は、白色系或いは銀等の高反射率を有する反射シート材や反射塗膜によって形成される。それにより、導光シート中を導光される光は、上記反射シート材又は上記反射塗膜の反射作用により、可動接点部材の上方で大きく光るようになる。
【0004】
【特許文献1】特開2007−87749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の照明機能を有するシートスイッチは、導光シートを下方の基板及び可動接点部材に接着するための粘着シートを備えているため、粘着シートの厚さ分(例えば、50μm)だけシートスイッチが厚くなるという問題がある。
【0006】
また、上述したような反射シートや反射塗膜で形成される反射部の代わりに、突起状の光反射部を設けた構成のシートスイッチも想定できる。図4(a)は、そのようなシートスイッチ30の断面図である。図示するように、シートスイッチ30は、固定接点32及び回路パターン33が設けられる基板31上に各種部品が搭載されて構成される。具体的には、回路パターン33に接して設けられるドーム状の可動接点部材34が、固定接点32の上方を覆うように配置される。可動接点部材34が設けられた状態の基板31には、基板31及び可動接点部材34の上方を覆うように粘着シート35が設けられ、更にその粘着シート35を覆うように、基板31上に設けられた発光素子37から放射された光を導光する導光シート36が設けられる。また、可動接点部材34の上方において、導光シート36の、粘着シート35と対向する面には、導光シート36に導光される光を反射させる複数の光反射部38が部分的に設けられている。つまり、可動接点部材34の上方には、複数の光反射部38が付加された導光シート36が、それらの間に粘着シート35を介して配置される。また、各光反射部38は、所定の厚さを有して導光シート36及び粘着シート35の間に設けられており、それにより、導光シート36と粘着シート35との間に部分的に空間Sを形成する。
以上のように、図4(a)に示すシートスイッチ30において、導光シート36の内部を伝搬する光は、シートスイッチ30の中央部Cでは、破線矢印で示すように複数の光反射部38で反射されて導光シート36の外部に漏れ出すものの、周辺部Pなどでは、導光シート36に接触する部材が存在しないため全反射を内部で繰り返して伝搬している。
【0007】
図4(b)は、このようなシートスイッチ30において、上方からの押圧力が中央部Cに加えられた状態を示す断面図である。上方からの押圧力がシートスイッチ30の中央部Cに加えられたとき、可動接点部材34が基板31上の固定接点32に接触して、固定接点32と回路パターン33とが可動接点部材34を介して導通する。また、この状態では、導光シート36、粘着シート35及びドーム状の可動接点部材34が一体で下方に押し下げられるため、シートスイッチ30の周辺部Pにおいて、導光シート36と粘着シート35とが接触する。このように、導光シート36と粘着シート35とが接触したとき、その接触部分の導光シート36では、内部を伝搬されている光の全反射は発生せず、導光シート36から粘着シート35の方へと光が出て行き、破線矢印で示すように、粘着シート35の表面での光反射が起こる。つまり、上方からの押圧力がシートスイッチ30に加わると、シートスイッチ30の外部からは、中心部Cに加えて周辺部Pからの強い反射光が新たに見られることになる。
特に、高い反射率を有する白色のテープが粘着シートとして用いられている場合、導光シート36と粘着シート35とが密着した部位と、密着していない部位との間で光反射の度合に大きなムラが生じてしまうという問題が発生する。
【0008】
また、このようなシートスイッチにおいて、粘着シートが熱や圧力を加えて接着させるようなタイプのものである場合には、周囲の部品に熱や圧力による変形や変質などの問題が生じることもある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部に反射される光量が均一で安定している薄型のシートスイッチを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るシートスイッチの特徴構成は、固定接点が設けられる基板と、
前記固定接点の上方を覆うように配置され、上方からの押圧力を受けて前記固定接点と接触するように構成されるドーム状の可動接点部材と、
前記基板上に設けられる発光素子と、
前記可動接点部材の上方を覆うように設けられ、前記発光素子から放射された光を導光する導光シートと、
所定の厚さを有して前記導光シート及び前記可動接点部材の間に設けられて、前記導光シートと前記可動接点部材との間に部分的に空間を形成すると共に、前記導光シートに導光されている光を反射させる複数の光反射部とを備える点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、導光シートと、その下方の可動接点部材との接着が、光反射部によって行われる。その結果、従来のシートスイッチでは設けられていた粘着シートが不要になり、その粘着シートの分だけシートスイッチの薄型化を実現できる。また、粘着シートが不要なことで、従来、熱や圧力を加えて接着させるようなタイプの粘着シートを用いていた場合に問題となっていた、熱や圧力による変形や変質などが周囲の部品に発生しなくなるという利点もある。
【0012】
また、シートスイッチに対して上方から押圧力が加えられた場合、押圧力が加えられる前は導光シートと可動接点部材との間に空間が形成されていた部分においても、導光シートと可動接点部材とが接触することもある。従来のシートスイッチでは、そのような場合において導光シートと粘着シートとが接触することになるため、その接触した部分の粘着シートの表面での反射光が突然大きく現れるという問題がある。
ところが、本特徴構成においては、粘着シート自体が存在しないため、シートスイッチに対して上方から押圧力が加えられた場合に導光シートと接触することになる可動接点部材に反射率の低い材料を用いていれば、導光シートと可動接点部材とが接触しても、強い反射光が見られることはない。このように、従来は、粘着シートが導光シートと接触することとなったため、導光シートと粘着シートとが密着した部位と、密着していない部位との間で光反射の度合に大きなムラが生じてしまうという問題が発生したが、本特徴構成のシートスイッチではそのような問題は発生しない。
従って、本特徴構成によれば、外部に反射される光量が均一で安定している薄型のシートスイッチを提供できる。
【0013】
本発明に係るシートスイッチの別の特徴構成は、前記光反射部は、反射剤に接着剤が練り込まれて形成されている点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、光反射部はそれ自体が接着剤として機能するので、シートスイッチを組み立てるときに、別途、接着剤を用意する必要はなく、接着剤を塗布などする工程も不要となる。
【0015】
本発明に係るシートスイッチの別の特徴構成は、前記光反射部は、反射剤の表面に接着剤が付着されて形成されている点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、反射剤の表面に接着剤を付着させた上でシートスイッチの組み立てが行われるので、反射剤が特別なものである必要はなく、様々な種類の反射剤を使用できる。
【0017】
本発明に係るシートスイッチの別の特徴構成は、前記反射剤は、白色顔料を含む点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、高い反射率を有する白色顔料が用いられるので、シートスイッチを強く発光させることができる。
【0019】
本発明に係るシートスイッチの別の特徴構成は、前記光反射部の厚さは10μm〜20μmである点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、接着用途に粘着シートが用いられている場合に比べて、シートスイッチの厚さを薄くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して本発明に係るシートスイッチについて説明する。
図1(a)は、本発明に係るシートスイッチ10の断面図であり、図1(b)は、シートスイッチ10の上方から押圧力が加えられた状態を説明する断面図である。
図1に示すように、シートスイッチ10は、固定接点2及び回路パターン3が設けられる基板1上に各種部品が搭載されて構成される。具体的には、回路パターン3に接して設けられるドーム状の可動接点部材4が、固定接点2の上方を覆うように配置される。可動接点部材4が設けられた状態の基板1には、基板1及び可動接点部材4の上方を覆うように導光シート5が設けられる。また、可動接点部材4の上方において、導光シート5の、可動接点部材4と対向する面には、導光シート5に導光される光が反射される複数の光反射部7が部分的に設けられている。
【0022】
可動接点部材4は、弾性変形自在の金属製又は導電性のフィルム状の部材で形成される。具体的には、可動接点部材4は、周囲が円形のドーム状の部材であり、その周囲の部分は回路パターン3と導通した状態で固定される。また、可動接点部材4のドーム状の頂部は、固定接点2の真上にあるように配置される。よって、可動接点部材4に対して上方から押圧力が加えられたとき、図1(b)に示すように可動接点部材4が押しつぶされるように変形して、その頂部が固定接点2に接触する。そして、その押圧力が無くなると、可動接点部材4は元の位置に復元して、固定接点2から離れる。
【0023】
導光シート5は、光を高い透過率で透過させることのでき、且つ、変形自在の透明のシート状の部材で形成される。基板1上の任意の位置には発光ダイオードなどを用いて構成される発光素子6が設けられており、発光素子6から放射された光は導光シート5の内部に導かれる。導光シート5の内部に導かれた光は、導光シート5の表裏両面で全反射されている限りは、理論的には導光シート5の外部に漏れることなく伝搬される。
【0024】
各光反射部7は、反射率の高い材料を含んで形成されたバルク状の部材であり、導光シート5に接着されている。よって、光反射部7が導光シート5に接着した部分では、導光シート5の内部を伝搬する光の全反射は発生せず、導光シート5から光反射部7へ光が漏れる。その結果、図中で破線矢印で示すように、導光シート5から漏れた光が光反射部7の表面で反射され、シートスイッチ10の外部から観測される。つまり、照明機能を有するシートスイッチ10が得られたことになる。例えば、各光反射部7は、反射率の高い白色顔料を含む反射剤に接着剤が練り込まれてバルク状に形成されている。このように、接着剤が光反射部7に練り込まれているので、光反射部7は、導光シート5及び可動接点部材4の両方に対して良好に接着する。接着剤の種類としては、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、天然ゴム系など様々な種類のものを使用可能である。
【0025】
また、各光反射部7は、所定の厚さを有して導光シート5及び可動接点部材4の間に設けられており、それにより、導光シート5と可動接点部材4との間に部分的に空間Sを形成する。本実施形態において、光反射部7の厚さ:dは10μm〜20μmである。
【0026】
図1(b)に示すように、上方からの押圧力がシートスイッチ10の中央部Cに加えられたとき、可動接点部材4が基板1上の固定接点2に接触して、固定接点2と回路パターン3とが可動接点部材4を介して導通する。また、この状態では、導光シート5及び可動接点部材4が一体で下方に押し下げられるため、シートスイッチ10の周辺部Pにおいて、導光シート5と可動接点部材4とが接触する。このように、導光シート5と可動接点部材4とが接触したとき、その接触部分の導光シート5では、内部を伝搬されている光の全反射は発生せず、導光シート5から可動接点部材4の方へと光が出て行き、可動接点部材4の表面での光反射が起こる。つまり、上方からの押圧力がシートスイッチ10に加わると、シートスイッチ10の外部からは、中心部Cに加えて周辺部Pからの反射光が新たに見られることもある。
【0027】
但し、本発明に係るシートスイッチ10では、上方から押圧力が加えられた場合に導光シート5と接触することになる可動接点部材4は、反射率の低い材料である。よって、導光シート5と可動接点部材4とが接触しても、その接触部分からの強い反射光が見られることはない。このように、従来は、図4に示したような高い反射率を有する白色の粘着シートが導光シート5と接触することとなったため、導光シート5と粘着シートとが密着した部位と、密着していない部位との間で光反射の度合に大きなムラが生じてしまうという問題が発生したが、本発明に係るシートスイッチ10ではそのような問題は発生しない。
【0028】
図2は、導光シート5への複数の光反射部7の配置状態を説明する図である。図2に示すように、複数の光反射部7は、シートスイッチ10の中央部Cにまとめて設けられている。複数の光反射部7同士の間隔:mは約0.5mmである。導光シート5と接触している部分の光反射部7の直径:φは、約0.3mmである。光反射部7において反射される光量は、導光シート5と接触している部分の光反射部7の直径に比例するため、その反射光量を大きくするためには光反射部7の直径を大きくすればよい。また、複数の光反射部7で反射される合計の反射光量を調節するためには、光反射部7の数を変更すればよい。
従って、例えば、シートスイッチ10を明るく光らせたい場合には、各光反射部7の直径:φを大きくすること及び光反射部7の数を多くすることの少なくとも一方を行えばよい。
【0029】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、白色顔料を含む反射剤に接着剤を練り込んで光反射部7を形成した例について説明したが、光反射部7の構成を改変してもよい。例えば、光反射部7を、白色顔料を含む反射剤の表面に接着剤を印刷又は塗布するなどして付着させて形成することで、光反射部7が、導光シート5及び可動接点部材4の両方に対して良好に接着するように構成できる。
また、反射剤は白色顔料に限定されず、高い反射率を有する材料であれば適宜変更可能である。
更に、上記実施形態において、光反射部7の厚さ:d、複数の光反射部7同士の間隔:m、及び、光反射部7の直径:φの値を例示したが、それらの数値は適宜変更可能である。
【0030】
<2>
上述したシートスイッチを複数個備えたシートスイッチモジュールを作製するとき、上記光反射部をシートスイッチ以外の部位に設けてもよい。図3は、複数のシートスイッチを備えたシートスイッチモジュール100の上面図である。このシートスイッチモジュール100において、二つの発光素子6は、配列した複数のシートスイッチ10へ向けて光を放射するように構成されている。つまり、発光素子6は、複数のシートスイッチ10で共用される。よって、各シートスイッチ10においては、上記実施形態で説明したように、発光素子6から放射された光が各光反射部7で反射される。シートスイッチモジュール100においても、導光シート5と、その下方の可動接点部材(図示せず)との接着は、上記実施形態と同様に光反射部7の接着機能によって行われる。
【0031】
更に、ここで説明するシートスイッチモジュール100では、シートスイッチモジュール100の外側端部X及び複数のシートスイッチ10の間の隙間部分Yにも、上記光反射部7が複数設けられている。よって、シートスイッチモジュール100の外側端部X及び隙間部分Yにおいても、導光シート5と、その下方の基板(図示せず)との接着は、光反射部7の接着機能によって行われる。尚、シートスイッチモジュール100は携帯電話機など電気機器に搭載されて、その電気機器の押しボタンスイッチ部分に用いられるものであり、上記外側端部Xや上記隙間部分Yは、電気機器の筐体によって覆い隠される部分である。よって、外側端部X及び隙間部分Yに設けられた光反射部7によって導光シート5の内部を伝搬する光が反射されたとしても、その反射光が電気機器の外部で見られることはない。
【0032】
以上のように、導光シート5と、その下方の基板及び可動接点部材との接着が、シートスイッチモジュール100の幅広い範囲の複数箇所において行われることで、導光シート5と、その下方の基板および可動接点部材との接着が強固になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、携帯電話機などの電気機器に設けられる押しボタンスイッチに照明機能を持たせるシートスイッチに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】シートスイッチの断面図
【図2】導光シートへの複数の光反射部の配置状態を説明する図
【図3】シートスイッチモジュールの上面図
【図4】従来のシートスイッチの断面図
【符号の説明】
【0035】
1 基板
2 固定接点
4 可動接点部材
5 導光シート
6 発光素子
7 光反射部
10 シートスイッチ
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が設けられる基板と、
前記固定接点の上方を覆うように配置され、上方からの押圧力を受けて前記固定接点と接触するように構成されるドーム状の可動接点部材と、
前記基板上に設けられる発光素子と、
前記可動接点部材の上方を覆うように設けられ、前記発光素子から放射された光を導光する導光シートと、
所定の厚さを有して前記導光シート及び前記可動接点部材の間に設けられて、前記導光シートと前記可動接点部材との間に部分的に空間を形成すると共に、前記導光シートに導光されている光を反射させる複数の光反射部とを備えるシートスイッチ。
【請求項2】
前記光反射部は、反射剤に接着剤が練り込まれて形成されている請求項1記載のシートスイッチ。
【請求項3】
前記光反射部は、反射剤の表面に接着剤が付着されて形成されている請求項1記載のシートスイッチ。
【請求項4】
前記反射剤は、白色顔料を含む請求項2又は3記載のシートスイッチ。
【請求項5】
前記光反射部の厚さは10μm〜20μmである請求項1〜4の何れか一項に記載のシートスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−146815(P2009−146815A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324813(P2007−324813)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】