説明

シートヒータの制御装置

【課題】通電制御素子がショート故障した場合、採暖用ヒータへの通電を停止することができず、また、使用者も故障に気付き難いので、通電制御素子が過熱するという課題を有していたため、通電制御素子が故障した場合、故障検知手段によって確実に故障を検知し、報知手段によって使用者へ故障の報知を行うので、より安全なシートヒータを提供する。
【解決手段】シートヒータの制御装置において、通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、使用者へ故障の報知をする報知手段とを備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用座席に取り付けられて、座席の暖房を行うシートヒータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシートヒータは、例えばマイクロコンピュータのような制御手段を用いて採暖用ヒータへの通電制御を行っている。図2に示すものは、前記従来のシートヒータを示すもので、採暖用ヒータ15とマイクロコンピュータ等の制御手段11と採暖用ヒータ15の温度を検知するサーミスタからなる温度検知素子16で構成されている。
【0003】
ここで採暖用ヒータ15の温度は温度検知素子16であるサーミスタの抵抗値から検出し、検出した温度に応じて制御手段11が採暖用ヒータへの通電制御を行い、その温度を最適な値になるように制御している。
【0004】
また、マイクロコンピュータの暴走に配慮して暴走監視手段を備え、暴走時には採暖用ヒータ15への通電を停止させるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
さらに、温度検出手段16が故障した場合やノイズによって温度情報が異常になった場合に配慮して、温度検出手段の故障を検知する手段を備え、故障と判定した場合に採暖用ヒータ15への通電を停止させることが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−102794号公報
【特許文献2】特開2005−149878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、採暖用ヒータ15への通電を制御す通電制御素子12がショート故障した場合、制御手段11から採暖用ヒータ15への通電を停止することができない。
【0007】
通電制御素子としては、トランジスタ、サイリスタ、リレーなどが用いられるが、故障によってオープン状態になることもあれば、ショート状態になることもある。
特に若干の抵抗値をもってショート状態になった場合、通電制御素子が過熱するという課題を有していた。
【0008】
また、オープン故障においてもシートが温まらないことで使用者が故障に気付くまで時間がかかったり、故障したユニットがどこに有るのかが分かり難く、的確迅速な修理が行いにくいという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、通電制御素子の故障を検知し、ブザー等の報知手段によって故障を迅速に使用者へ知らせることで、より安全で使い勝手の良いシートヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のシートヒータ制御装置は、採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子と、通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、使用者へ故障の報知をする報知手段とを備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報
知をするようにしている。
【0011】
また、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子がショート故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をすると伴に、採暖用ヒータへの通電を停止させる措置を行うようにしている。
【0012】
さらに、車内ネットワーク等の通信手段を備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、通信手段によって故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、使用者へ通電制御素子の故障をより分かりやすく報知するようにしている。
【0013】
また、通電制御素子の故障を正確に検知して、安全を担保できるように、採暖用ヒータへの通電が所定の時間以上継続した場合に、採暖用ヒータへの通電を一時的に停止して、通電制御素子の故障検知を行うようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートヒータ制御装置によれば、採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子が故障した場合、故障検知手段によって通電制御素子の故障を検知して、使用者へ故障の報知をするので、使用者は早い段階で故障に気付き修理等の対応をとることができる。また、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子がショート故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をすると伴に、車輌側のヒューズを切るなどの通電を停止させる措置を行うので通電制御素子の過熱を防止することができる。
【0015】
また、車内ネットワーク等の通信手段を備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、通信手段によって故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、通電制御素子の故障を報知するので、使用者に対してより分かりやすい故障報知をすることができる。
【0016】
通電制御手段の故障を確実に検知し、使用者へ故障の報知をすることで、より安全で使い勝手のよいシートヒータ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明は、採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子と、通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、使用者へ故障を報知をする報知手段とを備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をするようにしている。これにより使用者は早い段階で故障に気付き修理等の対応をとることができる。
【0018】
第2の発明は、故障検知手段にて通電制御素子がショート故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をするとともに、採暖用ヒータへの通電を停止させる措置を行うようにしている。これにより通電制御素子の過熱を防止することができる。
【0019】
第3の発明は、採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子と、通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、車内ネットワーク等の通信手段とを備え、制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子が故障したと判断したときには、通信手段によって故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、使用者へ故障の報知を行うようにしている。これにより使用者に対してより分かりやすい故障報知をすることができる。
【0020】
第4の発明は、採暖用ヒータへの通電が所定の時間以上継続した場合に、採暖用ヒータ
への通電を一時的に停止して、通電制御素子の故障検知を行うようにしている。これにより通電制御素子の故障をより確実に検知することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるシートヒータ制御装置のブロック図を示すものである。
【0023】
図1において、制御手段1は操作手段7で採暖用ヒータ5をオンする操作が行われると温度検知素子6で検知した温度に応じて採暖用ヒータ5へ通電するよう通電制御素子2へ信号を出し、シートが最適な温度になるように制御している。
【0024】
操作手段7で採暖用ヒータ5をオフする操作が行われると、制御手段1は採暖用ヒータ5への通電を停止するよう通電制御素子2へ信号を出す。
【0025】
ここで故障検知手段3は、通電制御素子2の入出力間電圧を監視している。制御手段1が採暖用ヒータ5へ通電するよう通電制御素子2へ信号を出している場合、通電制御素子2の入出力間電圧は、電源電圧と採暖用ヒータの抵抗値と通電制御素子のオン抵抗から決まる電圧V1になる。一般に通電制御素子はオン抵抗が小さいものを採用するので電圧V1は小さい値になる。電源電圧や採暖用ヒータの抵抗値の変動範囲から通電制御素子が正常なときの電圧V1は閾値電圧V1S以下になる。
【0026】
制御手段1が採暖用ヒータ5への通電を停止するよう通電制御素子2へ信号を出している場合、通電制御素子2の入出力間電圧は、電源電圧とほぼ同じ電圧V2になる。
電源電圧や通電制御素子のリーク電流などの変動範囲から通電制御素子が正常なときの電圧V2は、閾値電圧V2S以上になる。
【0027】
制御手段1は、採暖用ヒータ5へ通電するよう通電制御素子2へ信号を出しているときに通電制御素子2の入出力間電圧が閾値電圧V1Sをこえると通電制御素子2が故障している可能性があると判断する。故障判定を確定させるには、所定時間この状態が連続することなどを確認するとノイズ等の影響を軽減できるのでより確実に判定できる。
【0028】
制御手段1は通電制御素子2が故障したと判定すると、報知手段4を用いて使用者へ故障の報知を行う。
【0029】
また、制御手段1は、採暖用ヒータ5への通電を停止するよう通電制御素子2へ信号を出しているときに通電制御素子2の入出力間電圧が閾値電圧V2Sを下まわると通電制御素子2が故障している可能性があると判断する。制御手段1は所定の確定処理を経て通電制御素子2が故障したと判定すると、報知手段4を用いて使用者へ故障の報知を行う。
【0030】
(実施の形態2)
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるシートヒータ制御装置のブロック図を示すものである。
【0031】
図3において、制御手段21が採暖用ヒータ25への通電を停止するよう通電制御素子22へ信号を出しているにもかかわらず、通電制御素子22の入出力間電圧が閾値電圧V2Sを下まわっていることを故障検知手段23を介して検知した場合、制御手段21は所定の確定処理を経て通電制御素子22がショート故障したと判断し、報知手段24によっ
て使用者へ故障の報知をすると伴に、採暖用ヒータへの通電を停止させる措置を行う。
【0032】
採暖用ヒータへの通電を停止させる措置の具体的な例としては、一定時間ブザー等の報知手段24で使用者へ通電制御素子の故障を報知した後、車輌側ヒューズを溶断させる電流を通電素子29を介して所定時間流すようにする。これによって通電制御素子22および採暖用ヒータ25への電流が断たれ、通電制御素子22の過熱を防止することができる。
【0033】
採暖用ヒータへの通電を停止させる手段としては通電制御素子22に直列にリレー等の通電制御素子を配置して複数個の通電制御素子で通電を制御する構成も考えられるが、大電流を開閉する通電制御素子は高価でサイズも大きいので実用的ではない。
【0034】
(実施の形態3)
図4は、本発明の第3の実施の形態におけるシートヒータ制御装置のブロック図を示すものである。
【0035】
図4において、制御手段31は操作手段37で採暖用ヒータ35をONする操作が行われると温度検知素子36で検知した温度に応じて採暖用ヒータ35へ通電するよう通電制御素子32へ信号を出し、シートが最適な温度になるように制御している。
操作手段37で採暖用ヒータ35をOFFする操作が行われると、制御手段31は採暖用ヒータ35への通電を停止するよう通電制御素子32へ信号を出す。
【0036】
ここで故障検知手段33は、通電制御素子32の入出力間電圧を監視している。
【0037】
制御手段31は、採暖用ヒータ35へ通電するよう通電制御素子32へ信号を出しているときに通電制御素子32の入出力間電圧が閾値電圧V1Sをこえると通電制御素子32が故障している可能性があると判断する。制御手段31は所定の確定処理を経て通電制御素子32が故障したと判定すると、通信手段34を用いて故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、使用者へ故障の報知を行う。
【0038】
また、制御手段31は、採暖用ヒータ35への通電を停止するよう通電制御素子32へ信号を出しているときに通電制御素子32の入出力間電圧が閾値電圧V2Sを下まわると通電制御素子32が故障している可能性があると判断する。制御手段31は所定の確定処理を経て通電制御素子32が故障したと判定すると、通信手段34を用いて故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、使用者へ故障の報知を行う。
【0039】
これらの場合の故障情報は、音声や画像で使用者へ報知できるので、使用者は故障の状況がより分かりやすく、的確迅速に修理等の対応をすることができる。
【0040】
(実施の形態4)
図5は、本発明の第4の実施の形態におけるシートヒータ制御装置のタイミング図を示すものである。
【0041】
図5において、制御手段からの通電信号の状態と通電制御素子の入出力間電圧との関係を示している。[A]は正常動作時で制御手段から通電オフの信号が出ていると通電制御素子の入出力間電圧は閾値V2Sより大きい電圧になり、制御手段から通電オンの信号が出ていると通電制御素子の入出力間電圧は閾値V1Sより小さい電圧になる。
【0042】
[B]は、制御手段から通電オンの信号が出ているときにショート故障が発生したときの通電制御素子の入出力間電圧を示している。通電中なので若干レベルが変動するが閾値
V1S以下のレベル保つので故障検知はできない。
【0043】
[C]は制御手段から通電オンの信号が出ているときにオープン故障が発生したときの通電制御素子の入出力間電圧を示している。通電が遮断されるので通電制御素子の入出力間電圧は閾値V1Sを越えたレベルになり、故障検知される。
【0044】
[D]は故障検知シーケンスを示すもので、制御手段から通電オンの信号が出ているときにショート故障が発生した場合、通電オン信号が継続している間は故障検知できないことに対応したものである。
【0045】
制御手段は、操作手段での操作や温度検知素子の温度が採暖用ヒータへ通電すべき状態になっていても、所定の時間以上採暖用ヒータへの通電が継続した場合は強制的に通電オフの信号を出して通電制御素子の入出力間電圧をチェックする。
【0046】
通電オフの信号を出しているとき通電制御素子の入出力間電圧が閾値V2S以上ならば正常と判断して通電オンの信号を出す。通電オフの信号を出しているとき通電制御素子の入出力間電圧が閾値V2Sを下まわっていれば故障と判断し、報知手段によって使用者へ故障の報知を行う。
【0047】
通電制御素子の故障検知に要する時間は短時間なので、シートの温度制御には殆ど影響せず、快適性を損なうことはない。
【0048】
オープン故障についても、通電オフ状態が継続している間は故障検知できないので、所定の時間以上通電オフ状態が継続した場合、強制的にオン信号を出して故障検知を行うことも考えられるが、オープン故障を早く検知できるというメリットがある一方で使用者の意思に反して通電するというデメリットがある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるシートヒータ制御装置は、通電制御素子が故障した場合、故障検知手段によって確実に故障を検知し、報知手段によって使用者へ故障の報知を行うので車載採暖用シートヒータに適用でき、より安全なシートヒータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシートヒータ制御装置のブロック図
【図2】従来のシートヒータ制御装置のブロック図
【図3】本発明の実施の形態2におけるシートヒータ制御装置のブロック図
【図4】本発明の実施の形態3におけるシートヒータ制御装置のブロック図
【図5】本発明の実施の形態4における故障検知タイミング図
【符号の説明】
【0051】
1 制御手段
2 通電制御素子
3 故障検知手段
4 報知手段
5 採暖用ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子と、前記通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、使用者へ故障を報知をする報知手段とを備え、制御手段は、前記故障検知手段にて前記通電制御素子が故障したと判断したときには、前記報知手段によって使用者へ故障の報知をすることを特徴とするシートヒータの制御装置。
【請求項2】
制御手段は、故障検知手段にて通電制御素子がショート故障したと判断したときには、報知手段によって使用者へ故障の報知をするとともに、採暖用ヒータへの通電を停止させる措置を行うことを特徴とする請求項1に記載のシートヒータの制御装置。
【請求項3】
採暖用ヒータと、前記採暖用ヒータへの通電を制御する通電制御素子と、前記通電制御素子の故障を検知する故障検知手段と、車内ネットワーク等の通信手段とを備え、制御手段は、前記故障検知手段にて前記通電制御素子が故障したと判断したときには、通信手段によって故障情報をカーナビゲーションシステム等へ伝えて、使用者へ故障の報知を行うことを特徴とするシートヒータの制御装置。
【請求項4】
採暖用ヒータへの通電が所定の時間以上継続した場合に、前記採暖用ヒータへの通電を一時的に停止して、通電制御素子の故障検知を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシートヒータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70085(P2010−70085A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240491(P2008−240491)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】