説明

シート成形方法、シート成形金型及びシート成形方法により製造された容器

【課題】プラスチックシート素材を成形して、内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形する技術において、その型再現性を良好にする。
【解決手段】シート成形金型10は雌型12と雄型14とから構成され、雄型14は、成形品の内周面形状の一部に該当する形状を有するコア本体16と、該成形品のアンダーカット部に該当する形状を有しコア本体16に対して型開閉方向及び径方向に移動可能なスライドコア18とを有する。コア本体16とスライドコア18には、それぞれ互いに摺接可能なカム面16a、18aが形成され、該カム面16a、18aは雌型12の方に向うにつれて外径方向に向かう傾斜面となっている。雌型12と雄型14との間にシート素材を挿入させた後、型を閉めて、コア本体16及びスライドコア18と雌型12とを接近させると共に、カム面16a、18aを利用して、スライドコア18をコア本体16に対して外径方向に移動させることにより、スライドコア18によってアンダーカット部を付形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックシート素材をプレス成形により成形して、内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形するシート成形方法、シート成形金型及びシート成形方法により製造された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシート成形方法及び金型としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された金型では、軸線方向に移動可能なノックアウトモールドと、ノックアウトモールドの半径方向外方にあるモールドキャビティ本体と、モールドキャビティ本体と相伴って所定のモールドキャビティを形成するモールドキャビティ補助部材と、からなり、モールドキャビティ本体が中心方向内方に喰い込んでいる突出部と、モールドキャビティ補助部材が中心方向内方に喰い込んでいる上縁と、を有しており、各部品のパーテングライン内にエア抜き通路を形成している。こうして、型を雌型とし、真空成形により二重逆テーパ部分を有する成形品を成形するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−93046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の真空成形においては、必ずしもアンダーカット部の型再現性が満足するものとは言い難いという問題がある。例えば、成形品の材料のシート素材が比較的伸びやすい材質である場合には、成形品が十分に型に従って伸びることができるために、比較的良好な型再現性が得られる。しかしながら、伸びにくい材質の場合には、型再現性が悪く、真空引きを行なっても、所望の通りのメリハリのあるアンダーカット形状に成形することができない、という問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、プラスチックシート素材を成形して、内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形する技術において、その型再現性を良好にすることができるシート成形方法、シート成形金型及びシート成形方法により製造された容器を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、雌型と雄型とからなる金型を用いて内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形するシート成形方法であって、
雄型を、成形品の内周面形状の一部に該当する形状を有するコア本体と、成形品の前記アンダーカット部に該当する形状を有し前記コア本体に対して型開閉方向及び径方向に所定の範囲で相対移動可能となったスライドコアとから構成し、スライドコアとコア本体とにそれぞれ互いに摺接可能なカム面を形成した、金型を用いて、
開いた雄型と雌型との間にシート素材を挿入した後、型を閉めてコア本体及びスライドコアと雌型とを接近させて、コア本体と雌型とでシート素材を挟ませた後、前記カム面を利用してスライドコアをコア本体に対して外径方向に移動させて、該スライドコアによってアンダーカット部を付形することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記シート素材が発泡樹脂シートであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記発泡樹脂シートは発泡率が3%以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、雌型と雄型とからなり、シート素材から内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形するシート成形金型であって、
前記雄型が、成形品の内周面形状の一部に該当する形状を有するコア本体と、該成形品の前記アンダーカット部に該当する形状を有し前記コア本体に対して型開閉方向及び径方向に所定の範囲で相対移動可能となったスライドコアとを備え、スライドコアとコア本体とには、それぞれ、雌型の方に向うにつれて外径方向に向かうべく傾斜したカム面が互いに摺接可能に形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の前記スライドコアは、コア本体の周囲に沿って複数個設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の前記スライドコアを内径方向に常時付勢する付勢手段がさらに設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の前記シート素材が発泡樹脂シートであることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の前記発泡樹脂シートは発泡率が3%以上であることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載されたシート成形方法により成形されたアンダーカット部を内周面に有する容器を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、型を閉めて雄型と雌型とを接近させたときに、カム面を利用して、型開閉方向の力をスライドコアの外径方向への力へと変換させることができ、この力によってアンダーカット部を付形することができる。従って、アンダーカット部の付形力を十分に確保することができて、型再現性を良好にすることができる。こうして、アンダーカット部を所望のメリハリのある形状に成形することができる。
【0017】
本発明によれば、従来、アンダーカット部の成形が困難であった伸びにくい発泡樹脂シート、特に発泡率が3%以上の発泡樹脂シートがシート素材である場合にも、所望のアンダーカット部を内周面に有する成形品を成形することができるようになる。これによって、断熱性を有する容器を成形することができるようになる。
【0018】
スライドコアをコア本体の周囲に沿って複数個設けることで、スライドコアが外径方向に移動したときに、スライドコアによって押圧されない部分の発生を極力抑えることができる。
【0019】
また、スライドコアを内径方向に常時付勢する付勢手段が設けられることで、成形後に型を開く際に、スライドコアがカム面に従って内径方向に移動していくことができ、成形したアンダーカット部を回避しながら移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明のシート成形方法を実施するための本発明のシート成形金型の実施形態を表す図である。シート成形金型10は、成形品として、内周面にアンダーカット部を有する筒状、錘状または椀状形状のものを成形することができ、具体的には、図7に示すような容器40を成形することができる。
【0021】
容器40は、その内周面の上部にアンダーカット部40aを有している。容器40には、蓋42が装着可能となっており、蓋42に形成された突起42aが容器40のアンダーカット部40aに係止されることで、蓋42によって容器40の内側から封止することが可能となっており、これによって、容器40からの液体漏れを防止することができる。また、アンダーカット部40aが、容器40内の内容物を取り出す際のストッパーとして機能することもできる。
【0022】
この容器40はプラスチックシート素材から成形され、プラスチックシート素材としては、発泡率が3%未満の非発泡樹脂シート、及び3%以上の発泡樹脂シートのいずれも使用することができる。本発明は、特に、従来成形が困難であった断熱性を有する発泡率3%以上の発泡樹脂シートにおいて優位性を発揮するものであり、断熱性を有する容器40の製造に適している。
【0023】
また、発泡樹脂シートの材料としては、PP、PS、PET、その他のエンジニアリングプラスチックとすることができる。また、発泡樹脂シートには、適宜、OPPフィルム等のフィルムを接着することができる。
【0024】
図1及び図2に戻り、シート成形金型10は、主として、雌型12と雄型14とから構成される。この明細書において、型開閉方向は上下方向とし、従って、雄型14と雌型12とは図示しない駆動手段によって所定の圧力を持って上下方向に相対移動するようになっている。雌型12の雄型14に対向する面12aは、成形品の外周面形状に該当する形状をなしている。
【0025】
雄型14は、コア本体16と、コア本体16に対して上下方向及び径方向に所定の範囲で移動可能となった複数のスライドコア18と、コア本体16及びスライドコア18を支持する支持体20と、から構成される。
【0026】
コア本体16は、支持体20を貫通する複数のピン22の先端にネジ止めされており、支持体20に対してピン22が摺動可能な範囲で上下方向に相対移動することができるようになっている。また、コア本体16と支持体20との間には、図3に示すように常時両者を上下方向に離反する方向に付勢するバネ24が介挿される。
【0027】
スライドコア18は、コア本体16の外周囲に沿って周方向に複数個に設けられており、この例では6個となっている。スライドコアの個数は、少なすぎると隣接するスライドコアとの間に形成される隙間が大きくなってしまうため、隙間が許容できる程度の個数とするとよい。
【0028】
スライドコア18は、支持体20に固定されたピン26によって支持体20に対して径方向に遊びを持って支持されており、スライドコア18は、その外周面が支持体20の周縁部において突設されたフランジ部20aの内径方向突出部20cに当接するまで外径方向に移動することができる。さらに、スライドコア18と該フランジ部20aとの間には付勢手段としてのバネ28が介挿されており、バネ28は常時スライドコア18を内径方向に付勢している。
【0029】
従って、スライドコア18は、コア本体16に対して、上下方向及び径方向に所定の範囲で相対移動可能となっている。そして、コア本体16とスライドコア18との間には、それぞれ対向する面において上下方向に対して傾斜したカム面16a、18aが形成されている。カム面16a及びカム面18aは、雌型12の方に向うにつれて外径方向へと拡がる方向に傾斜しており、これらのカム面16a、18aは互いに摺接可能となっている。
【0030】
コア本体16の雌型12に対向する面16bと、スライドコア18の外径方向突出部18bと、支持体20のフランジ部20aの雌型12に対向する面20bとが、成形品の内周面形状に該当する形状をなしている。ここで、スライドコア18の外径方向突出部18bは、成形品の所望のアンダーカット部に該当する形状をなしている。
【0031】
以上のように構成されるシート成形金型において、その作用を説明する。
まず、シート成形金型10に連続的または非連続的に加熱シート素材が送られてきて、互いに上下方向に離反されて開いた状態の雌型12と雄型14との間に挿入される(図3)。
【0032】
次いで、型を閉めるべく雌型12が雄型14に接近するように図示しない駆動手段によって駆動される。コア本体16がある程度雌型12との間でシート素材を挟んだ状態になり、コア本体16と雌型12との相対移動が停止すると、バネ24の付勢力に抗しながら雌型12と雄型14とがさらに接近する(図4)。すると、コア本体16と支持体20との間で上下方向に相対移動が発生するために、スライドコア18もコア本体16に対して上下方向に相対移動し(図5)、バネ28の付勢力に抗しながら、スライドコア18のカム面18aがコア本体16のカム面16aに沿って移動する。これによって、スライドコア18の外周面が支持体20のフランジ部20aの内径方向突出部20cに当接するまで、スライドコア18は外径方向へと移動する(図6)。こうして、スライドコア18の外径方向突出部18bは、コア本体16よりも外径方向に突出することになり、アンダーカット部が付形される。
【0033】
このスライドコア18のカム面18aがコア本体16のカム面16aに沿って移動することにより、雄型12に作用する上下方向の力はスライドコア18の外径方向の力に変換されて、スライドコア18はアンダーカット部に対して、内径方向から押圧力を与えることになる。この内径方向の押圧力によって、アンダーカット部への付形力が作用する。
【0034】
成形終了後は、先と反対の動作によって、型を開くべく雌型12が雄型14から離反する。このとき、バネ28によってスライドコア18のカム面18aはカム本体16のカム面16aに沿って摺接し、よって、スライドコア18は内径方向に移動しながら上下方向に移動していくために、成形品のアンダーカット部を回避しながら、型を開くことができる。
【0035】
以上のように本発明においては、スライドコア18が内径方向から外径方向に向かって移動してアンダーカット部を成形し、その際に、型を上下方向に押圧する力が、カム面16a、18aによってスライドコア18の外径方向の力に効果的に変換されるために、アンダーカット部への付形力が増加されることになり、型再現性を良好にすることができる。これによって、特に伸びにくい発泡樹脂シートからアンダーカット部を有する成形品を成形することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のシート成形方法を実施するための本発明のシート成形金型の実施形態を表す断面図である。
【図2】雄型の平面図であり、(a)はコア本体を含み、(b)はコア本体を省略した状態を表す。
【図3】シート成形時の作用を示す断面図である。
【図4】図3に続きシート成形時の作用を示す断面図である(シート素材は図示省略する)。
【図5】図4に続きシート成形時の作用を示す断面図である(シート素材は図示省略する)。
【図6】図5に続きシート成形時の作用を示す断面図である(シート素材は図示省略する)。
【図7】成形品である容器と該容器を封止する蓋の斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 シート成形金型
12 雌型
14 雄型
16 コア本体
16a カム面
18 スライドコア
18a カム面
28 バネ(付勢手段)
40 容器
40a アンダーカット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型と雄型とからなる金型を用いて内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形するシート成形方法であって、
雄型を、成形品の内周面形状の一部に該当する形状を有するコア本体と、成形品の前記アンダーカット部に該当する形状を有し前記コア本体に対して型開閉方向及び径方向に所定の範囲で相対移動可能となったスライドコアとから構成し、スライドコアとコア本体とにそれぞれ互いに摺接可能なカム面を形成した、金型を用いて、
開いた雄型と雌型との間にシート素材を挿入した後、型を閉めてコア本体及びスライドコアと雌型とを接近させて、コア本体と雌型とでシート素材を挟ませた後、前記カム面を利用してスライドコアをコア本体に対して外径方向に移動させて、該スライドコアによってアンダーカット部を付形することを特徴とするシート成形方法。
【請求項2】
前記シート素材は発泡樹脂シートであることを特徴とする請求項1記載のシート成形方法。
【請求項3】
前記発泡樹脂シートは発泡率が3%以上であることを特徴とする請求項2記載のシート成形方法。
【請求項4】
雌型と雄型とからなり、シート素材から内周面にアンダーカット部を有する成形品を成形するシート成形金型であって、
前記雄型が、成形品の内周面形状の一部に該当する形状を有するコア本体と、該成形品の前記アンダーカット部に該当する形状を有し前記コア本体に対して型開閉方向及び径方向に所定の範囲で相対移動可能となったスライドコアとを備え、スライドコアとコア本体とには、それぞれ、雌型の方に向うにつれて外径方向に向かうべく傾斜したカム面が互いに摺接可能に形成されてなることを特徴とするシート成形金型。
【請求項5】
前記スライドコアは、コア本体の周囲に沿って複数個設けられることを特徴とする請求項4記載のシート成形金型。
【請求項6】
前記スライドコアを内径方向に常時付勢する付勢手段がさらに設けられることを特徴とする請求項4または5記載のシート成形金型。
【請求項7】
前記シート素材は発泡樹脂シートであることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載のシート成形金型。
【請求項8】
前記発泡樹脂シートは発泡率が3%以上であることを特徴とする請求項7記載のシート成形金型。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載されたシート成形方法により成形されたアンダーカット部を内周面に有する容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−105230(P2008−105230A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288989(P2006−288989)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(501323929)寿化成工業株式会社 (3)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】