説明

シート接続体の製造方法及びシート接続体

【課題】 シート接続体が少なくとも一面側において段差を生じ難く且つ優れた接合強度を有し得るシート接続体の製造方法を提供することなどを課題とする。
【解決手段】 熱可塑性樹脂が含有されたシート部材の端部同士を突き合わせて該突き合わせ部分の一面側を接合部材で被覆する被覆工程と、該接合部材で被覆された部分にレーザー光を照射して前記シート部材と前記接合部材とを融着させることにより前記シート部材同士を接合させる接合工程とを有することを特徴とするシート接続体の製造方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート接続体の製造方法、及びシート接続体に関し、詳しくは、帯状のシート部材同士を接合してシート接続体を作製するシート接続体の製造方法、及び帯状のシート部材が接合されてなるシート接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状のシート部材を連続的に加工機に供給して加工を施すような場合において、先行するシート部材に続けて新たなシート部材を加工機に供給すべく、先行するシート部材の末端部分に新たなシート部材の先端部分を接合したシート接続体を作製して加工機に供給することが行われている。
また、このような場合に限らず、シート部材同士の端部を接合してシート接続体を作製することが広く行われている。
【0003】
この種のシート接続体の製造方法としては、図5(a)に示すように、先行するシート部材101の後端部と新たなシート部材102の先端部とを突き合せた状態とし、この突き合わせられた部分を覆うように両シート部材の上下両面から粘着テープ103,103を貼付することにより、両シート部材101,102を接合してシート接続体を作製する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、該方法を採用した場合には、接合部分に粘着テープ103による段差がシート接続体の上下両面に生じてしまい、例えば、後段の塗工工程で塗工された塗膜が、上記段差を原因とする液ダマリとなったり、搬送ロールやニップロールと粘着テープ103のエッジとが接触してこれらのロールを汚染又は損傷させたりするという問題がある。また、乾燥工程などの熱により粘着テープ103の粘着剤が流動化し、接合強度が低下するという問題もある。
【0005】
また、シート接続体の他の製造方法としては、図5(b)に示すように、先行するシート部材101の上から新たなシート部材102を重ね合わせ、この新たなシート部材102の先端部に予め配置しておいた粘着テープ103を介して両シート部材を接合した後、先行するシート部材101の後端に形成されるテール104を切断するという方法も提案されている。
【0006】
しかしながら、該方法を採用した場合、接合部における段差は上下両面に生じる上、先行するシート部材101の後端にはテール104が形成されることとなり、該シート部材を搬送する際にテール104がばたつき、上述の如き段差による問題点に加えて、ゴミの発生等を誘発するという問題がある。
【0007】
また、シート接続体の他の製造方法としては、図5(c)に示すように、先行するシート部材101の上から新たなシート部材102を重ね合わせ、この重ね合わせ部分に予め配置しておいた粘着剤105を介して両シート部材を接合するという方法も提案されている(特許文献1)。
しかしながら、斯かる方法を採用した場合、接合部における段差は上下両面に生じることから、上述のごとく段差を原因とする各種の問題が生じ得る。
【0008】
さらに、シート接続体の他の製造方法としては、図5(d)に示すように、先行するシート部材101の上から新たなシート部材102を重ね合わせ、該重ね合わせた部分にレーザー光を照射することにより、シート部材どうしを接合する方法も提案されている。
【0009】
しかしながら、該方法を採用した場合に於いても、両面に段差があることによる問題及びテール104のばたつきによってゴミの発生等を誘発しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−143432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、シート接続体の少なくとも一面側において段差を生じさせにくく、且つシート接続体に優れた接合強度を付与し得るシート接続体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、少なくとも一面側において段差が生じにくく、且つ優れた接合強度を有し得るシート接続体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のシート接続体の製造方法は、熱可塑性樹脂が含有されたシート部材の端部同士を突き合わせて該突き合わせ部分の一面側を接合部材で被覆する被覆工程と、該接合部材で被覆された部分にレーザー光を照射して前記シート部材と前記接合部材とを融着させることにより前記シート部材同士を接合させる接合工程とを有することを特徴とする。
【0013】
斯かるシート接続体の製造方法によれば、熱可塑性樹脂が含有されたシート部材がレーザー光を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換し、発生した熱によっていったん溶融した後に固化することから、接合部材に対してシート部材が融着する。従って、この融着による接合強度をシート接続体に付与できる。
また、粘着剤等を用いなくとも接合できることから、製造後にシート接続体が加熱されても粘着剤が流動化して接合強度が低下することが抑制できる。
しかも、シート部材の端部同士を突き合わせた部分の一面側を接合部材で被覆することから、他方の面側において段差が生じにくく、接合された部分において生じ得る段差に起因した従来の問題の発生を抑制できる。
【0014】
また、本発明に係るシート接続体の製造方法においては、好ましくは、前記被覆工程で、前記シート部材と前記接合部材との間に光吸収剤を配する。
斯かるシート接続体の製造方法によれば、前記シート部材と前記接合部材との間に配された光吸収剤によってレーザー光の光エネルギーが効率よく熱エネルギーへと変換され、シート部材がより溶融しやすくなることから、シート部材と接合部材とがより接合されやすくなるという利点がある。
【0015】
本発明に係るシート接続体の製造方法においては、好ましくは、光吸収剤を含む前記接合部材を用いる。
斯かるシート接続体の製造方法によれば、前記シート部材に隣接する接合部材においてレーザー光の光エネルギーが効率よく熱エネルギーへと変換され、接合部材で発生した熱によってシート部材がより溶融しやすくなることから、前記シート部材と前記接合部材とがより接合されやすくなるという利点がある。
【0016】
さらに、本発明に係るシート接続体の製造方法においては、好ましくは、少なくともいずれか一方のシート部材と同種の樹脂材料で形成されている前記接合部材を用いる。
斯かるシート接続体の製造方法によれば、少なくともいずれか一方のシート部材と前記接合部材とが同種の樹脂材料で形成されていることにより、レーザー光によって一部溶融した斯かるシート部材と一部溶融した前記接合部材とが溶融後に容易に相溶し、その後固化する。従って、斯かるシート部材と前記接合部材との間の融着がより確実なものとなるという利点がある。
【0017】
また、本発明のシート接続体は、熱可塑性樹脂を含有したシート部材の端部同士が突き合わされた状態で前記シート部材同士が接合されているシート接続体であって、
前記端部同士が突き合わされた部分の一面側が接合部材で被覆され、該接合部材で被覆された部分にレーザー光が照射されて前記シート部材と前記接合部材とが融着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、少なくとも一面側における段差の発生が抑制され、且つ優れた接合強度が付与されたシート接続体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シート接続体が製造される前における、先行する第一シート部材1と追従する新たな第2シート部材2との関係を表した斜視図。
【図2】第一実施形態に係るシート接続体の製造方法においてシート接続体が製造される様子を表した図。
【図3】第二実施形態に係るシート接続体の製造方法においてシート接続体が製造される様子を表した図。
【図4】第三実施形態に係るシート接続体の製造方法においてシート接続体が製造される様子を表した図。
【図5】従来技術の製造方法によって製造されたシート接続体の断面の一部を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、第一実施形態のシート接続体の製造方法において用いられるシート部材を示すものである。
第一実施形態に係るシート接続体の製造方法は、図1に示すように、例えば、長尺帯状に形成され熱可塑性樹脂が含有されてなるシート部材1(以下、第一シート部材ともいう)を所定の加工手段(図示せず)へと送りながら、該第一シート部材1の末端が近づいた際に、該第一シート部材1に、同じように形成され熱可塑性樹脂が含有されてなる新たなシート部材2(以下、第二シート部材ともいう)を接合し、上記加工手段による処理工程を継続して行おうとする場合に適用されうるものである。
【0022】
第一シート部材1および第二シート部材2は、同種の熱可塑性樹脂で構成されたものであるのが一般的であるが、必ずしも同種のものである必要はない。第一シート部材1および第二シート部材2としては、熱可塑性樹脂を含むものであれば、異なる種類のものであってもよく、例えば、それぞれ相溶性のある異種の熱可塑性樹脂を含むものを用いることができる。
【0023】
該熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ノルボルネン樹脂、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、ポリアミド、アクリル系樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィドなどを挙げることができる。
【0024】
また、シート部材1,2への加工処理は、いわゆるロールトゥーロール(Roll to Roll)で搬送しながら実施されるため、シート部材1,2の厚みは1μm以上2mm以下が好ましく、5μm以上500μm以下がより好ましく、10μm以上300μm以下がさらに好ましい。なお、第一シート部材1および第二シート部材2の厚みは、通常、同一であるが、異なっていてもよい。
さらに、該シート部材1,2は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層のシート部材としては、例えば、基材層と、粘着剤を含む粘着層が片面側に設けられた保護フィルム層とがラミネートされたものを挙げることができる。
なお、このような複層のシート部材を接合する場合、各層を一時的に剥離して各層毎に独立して接合してもよいし、複層のまま接合してもよい。基材層と保護フィルム層との相溶性が悪く、斯かる層間で融着しない場合には、複層のまま接合して製造したシート接続体5は、使用時に基材層と保護フィルム層との間で剥離し、基材層同士又は保護フィルム層同士が接合されたシート状接続材にすることができる。斯かる製造方法の詳細については、後述する第三実施形態において説明する。
【0025】
第一実施形態におけるシート接続体の製造方法では、第一及び第二のシート部材1,2を切断してそれぞれの端面1a,2aを形成する準備工程と、該準備工程の後シート部材の端部同士を突き合わせて該突き合わせ部分の一面側を接合部材で被覆する被覆工程と、接合部材で被覆された部分にレーザー光を照射して前記シート部材と前記接合部材とを融着させることにより前記シート部材同士を接合させてシート接続体を作製する接合工程と、該シート接続体を取り出す取出し工程とをおこなう。
【0026】
図2(a)〜(d)は、第一実施形態のシート接続体の製造方法においてシート接続体5が製造される様子を示すものである。図2に示されているように第一実施形態においては、第一シート部材1と第二シート部材2の2枚のシート部材を接合部材3で接合してシート接続体5を製造する。
なお、図2(a)は、本実施形態のシート接続体の製造方法における準備工程の様子を示す側面図であり、図2(b)は、前記準備工程後に実施される被覆工程の様子を示す側面図である。また、図2(c)は、前記被覆工程後に実施される接合工程の様子を示す側面図であり、図2(d)は、前記接合工程後に実施される取出し工程の様子を示す側面図である。
【0027】
以下に、各工程について説明する。
前記準備工程においては、先ず、図2(a)に示すように、先行する第一シート部材1の末端部分と、新たな第二シート部材2の先端部分とを重ね合わせ、重ね合わされた領域の任意の位置を切断手段31により切断する。
【0028】
この切断により、図2(b)に示すように、第一シート部材1の後端と第二シート部材2の先端とに、同一形状の端面(第一シート部材1の後端面1aと第二シート部材2の先端面2a)が形成されることとなる。
切断線の形状については特に限定されるものではなく、例えば、直線状、波状、又は鋸刃状等とすることができる。シート同士の接合面積を増大させて接合強度を高め、且つ、後段の処理工程において接合面に作用する応力を分散させてシートが分断されることを防止するという観点から、波状や鋸刃状等とすることや、また、シート部材1,2の幅方向に対して斜めに切断することが好ましい。
【0029】
次に、前記被覆工程においては、図2(c)に示すように、平盤状のステージ33の上面中央部に、第一シート部材1の端部1aと第二シート部材2の端部2aとを位置させ、しかも、これら端部どうしが突き合わせられた状態となるようにして第一シート部材1と第二シート部材2とを配置し、さらに、この第一シート部材1の端部1aと第二シート部材2の端部2aとが突き合わせられている部分を被覆するように、前記接合部材3をシート部材1,2に対してレーザー照射側と同じ側に配置させる。
このように配置させた接合部材3の上方に透明ガラス板32を配置し、該透明ガラス板32を下方側(ステージ側)に向けて押圧し、該押圧力によって第一シート部材1、第二シート部材2、及び接合部材3の位置を固定させる。
【0030】
なお、前記ステージ33の材質は特に限定されず、斯かる材質としては、金属、ガラス、樹脂、ゴム、セラミックなどが挙げられる。比較的幅の広いシート部材1,2の接合においてより均一な押圧ができる点で、比較的硬度が低く、クッション性のある樹脂、ゴムが好ましい。
【0031】
前記接合部材3は、シート部材1,2が該接合部材3に融着し得るものであれば特に限定されない。
また、前記接合部材3は、少なくとも一方の前記シート部材と同種の樹脂材料で形成されていることが好ましい。前記接合部材3が少なくとも一方の前記シート部材と同種の樹脂材料で形成されていることにより、該シート部材の樹脂材料と接合部材3の樹脂材料とがレーザー光の熱によって溶融した後に容易に相溶し、その後固化する。従って、少なくとも一方の前記シート部材と前記接合部材3との間の融着がより確実なものとなる。
また、前記シート部材と前記接合部材3との間における融着がさらに確実なものとなるという点で、両シート部材1,2と接合部材3とが同種の樹脂材料で形成されていることがより好ましい。
【0032】
また、第一シート部材1を形成している樹脂材料と第二シート部材2を形成している樹脂材料とが異なる場合、前記接合部材3は、第一シート部材1を形成している樹脂材料及び第二シート部材2を形成している樹脂材料の双方に相溶し得る樹脂材料で形成されていることが好ましい。斯かる前記接合部材3は、第一シート部材1を形成している樹脂材料と第二シート部材2を形成している樹脂材料とが相溶しにくいものであったとしても、レーザー照射の熱によって双方の樹脂材料と相溶し得ることから、双方のシート部材1,2と確実に融着し得る。従って、斯かる前記接合部材3を用いることにより、シート部材1,2を形成している樹脂材料が異なる場合であっても、強度に優れたシート接続体5を作製できる。
【0033】
前記シート接続体の製造方法においては、金属材料で形成された金属層を備えた接合部材3を用い、該金属層にシート部材1,2が融着するように前記接合部材3を配することが好ましい。
金属層を備えた接合部材3をシート接続体の製造方法において用いることにより、シート部材1,2に用いられている熱可塑性樹脂がレーザー光によって発生した熱によって溶融したあとに前記金属層に融着される際、金属層表面におけるアンカー効果によって金属層に対してシート部材1,2がより強固に融着し、シート接続体5の接合強度がより高まり得るという利点がある。また、金属材料の熱伝導性が比較的高いことから、レーザー光によって発生した熱が金属層を介してシート部材1,2に伝わりやすく、シート部材1,2に用いられている熱可塑性樹脂がより溶融しやすくなり、溶融した熱可塑性樹脂による融着によって、シート部材1,2と接合部材3との接合がより確実に行われるという利点がある。
【0034】
該金属層を形成する金属材料としては、ステンレス(SUS)、アルミニウム、銅などが挙げられる。また、該金属層は、表面粗さRaが0.05〜1μmのものであることが好ましい。表面粗さRaは、JIS B0601−2001に準じて測定された値である。
【0035】
金属材料で形成された金属層を備えた接合部材3としては、具体的には例えば、金属箔を用いることが好ましい。
【0036】
シート部材1,2と接合部材3との界面部におけるレーザー光Rの吸収が不十分となることが予測されるようであれば、予め前記被覆工程において第一シート部材1と前記接合部材3との間や前記第二シート部材2と前記接合部材3との間などに光吸収剤を配し、光吸収性(発熱性)を向上させておくことも可能である。
【0037】
該光吸収剤は、前記接合部材3の表面に塗布して用いることが好ましい。詳しくは、光吸収剤の塗布された面をシート部材1,2に当接するようにして前記接合部材3を配置することにより、第一シート部材1と前記接合部材3との間や前記第二シート部材2と前記接合部材3との間に光吸収剤を配することが好ましい。
比較的サイズが小さく取り扱いの簡便な接合部材3の表面に光吸収剤を塗布して用いることにより、比較的大きな接合シートにわざわざ光吸収剤を塗布したり含有させたりしなくとも、簡便且つ効率よくレーザー光Rのエネルギーを熱エネルギーに変換できる。
【0038】
シート部材1,2に対して前記接合部材3をレーザー照射側と同じ側に配する場合、即ち、レーザー光が前記接合部材3を透過してシート部材1,2に到達するように前記シート部材1,2及び前記接合部材3を配置する場合であって、光吸収剤の塗布された面をシート部材1,2に当接するようにして前記接合部材3を配置する場合は、接合部材3がレーザー光の波長に対して比較的高い透過性を有していることが好ましい。詳しくは、接合部材3は、レーザー光の波長に対して40%以上の透過率を有していることが好ましく、60%以上の透過率を有していることがより好ましい。
【0039】
該光吸収剤としては、例えば、ポルフィリン系化合物が用いられた顔料、染料、カーボンブラックなどが挙げられる。また、染料としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、キノン系化合物、アゾ系化合物などが挙げられる。
【0040】
前記光吸収剤の塗布方式としては、例えば、インクジェット、コーター、スタンパー、ディスペンサー、スプレー(1流体式、2流体式、超音波式を含む)、スクリーン印刷などの一般的な手法を用いることができる。詳しくは、該光吸収剤を有機溶媒などで希釈し、斯かる塗布方法によって光吸収剤を前記接合部材3の表面に塗布することができる。
【0041】
また、前記接合部材3は、前記光吸収剤を含んでいることが好ましい。前記接合部材3が前記光吸収剤を含んでいることにより、上述のごとく接合部材3に光吸収剤を塗布することをしなくとも、前記シート部材1,2に隣接する接合部材3においてレーザー光の光エネルギーが効率よく熱エネルギーへと変換され、発生した熱により接合部材3に対してシート部材1,2がより融着しやすくなり、シート部材1,2と接合部材3とがより接合されやすくなるという利点がある。なお、前記光吸収剤を含んでいる接合部材3の表面に上述のごとく光吸収剤を塗布してから接合部材3を用いることもできる。
【0042】
前記接合部材3に光吸収剤を塗布したり光吸収剤を含ませたりすることは、接合部材3が比較的小さいものであることから、比較的大きなシート部材1,2に光吸収剤を塗布したり光吸収剤を含ませたりすることよりも簡便な操作でおこなえるものである。本実施形態のシート接続体の製造方法においては、取り扱いが簡便な接合部材3に光吸収剤を塗布したり光吸収剤を含ませたりすることにより、接合部材3又は接合部材3に隣接する部位においてレーザー光を吸収させて簡便に熱を発生させることができ、該熱の発生による融着を利用してシート接続体に優れた接合強度を比較的簡便に付与することができる。
【0043】
前記接合部材3の厚みは特に限定されないが、ハンドリング性の観点から、20〜500μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。また、シート部材1,2の長尺方向に沿った長さ(接合部材3の幅)は、通常、2〜100mmである。
【0044】
前記接合工程(図2(c)参照)においては、前記透明ガラス板32による前記接合部材3への押圧を維持しつつ、接合部材3が第一シート部材1の端部1aと第二シート部材2の端部2aとを被覆している部分に向けて透明ガラス板32の上方側からレーザー光Rを照射する。
そして、透明ガラス板32を通過させたレーザー光Rを、接合部材3と第一シート部材1とが接触している界面、及び、接合部材3と第二シート部材2とが接触している界面に到達させ、主としてこの界面部で照射したレーザー光Rを吸収させて光エネルギーを熱エネルギーに変換し、接合部材3と第一シート部材1との融着、及び接合部材3と第二シート部材2との融着をおこなう。
また、レーザー光Rの照射により生じた熱が、第一シート部材1の後端面1aおよび第二シート部材2の先端面2aを溶融させ得ることから、突き合わされたシート部材1,2の端部同士が融着し得る。シート接続体により大きな接合強度を付与する点においては、突き合わされたシート部材1,2の端部同士が融着していることが好ましい。
【0045】
前記接合工程における前記レーザー光Rの照射方法については、特に限定されるものではなく、例えば、接合部材3が第一シート部材1の端部1aと第二シート部材2の端部2aとを被覆している部分において、集光レンズによって所望のビームサイズに集光されたスポットビームを所定の速度で走査させる方法、該スポットビームをガルバノスキャナーによって走査させる方法、シリンドリカルレンズや回折光学素子といった光学部材の使用によって整形したラインビームを無走査で照射させる方法、シート部材1,2の幅方向において所定間隔をあけて配置された複数本のレーザー光を照射する方法などを採用することができる。
【0046】
また、レーザー光Rの照射時における前記透明ガラス板32による押圧は、第一シート部材1や第二シート部材2と、接合部材3との接合強度を向上させるべくおこなうものであり、接合部材3、第一シート部材1、及び第二シート部材2の材質や、レーザー光Rの照射強度などにもよるが、0.5kgf/cm2以上100kgf/cm2以下のいずれかの圧力が接合部材3に加えられるように実施されることが好ましく、1kgf/cm2以上20kgf/cm2以下のいずれかの圧力とされることがさらに好ましい。
【0047】
該押圧の方法としては、前記透明ガラス板32の上面から機械的に押圧する方法を採用することができる。斯かる方法以外にも、具体的には、例えば透明ガラス板32を用いずに上方側からアシストガスを第一シート部材1、第二シート部材2、及び接合部材3に吹き付けて押圧する方法を採用することができる。
【0048】
アシストガスを吹き付けることにより押圧する方法においては、ガスGの吹き付け方向は、シート部材1,2と接合部材3とを密着させることができる範囲内であれば、限定されるものではないが、吹き付けるガスGを効率良く利用しながらシート部材1,2と接合部材3とを密着させることができるという観点から、接合部材3の上面に垂直となるようにすることが好ましい。なお、ガスGの種類としては、ヘリウムやネオンなどの不活性ガス、空気、窒素などが挙げられる。
【0049】
ガスGのゲージ圧としては、ガスの吹き出し口の大きさ、ガスの吹き出し口の先端から、ガスが吹き付けられている部分までの距離、接合部材3の上面に対するガスGの吹き付け方向、第一シート部材1、第二シート部材2の材質、レーザー光Rの照射強度などにもよるが、0.01MPa以上5MPa未満の範囲の圧力が好ましく、0.1MPa以上2MPa未満の範囲の圧力がより好ましい。
該圧力が0.01MPa以上であることにより、シート部材1,2と接合部材3とをより密着させることができ、そのため、融着を促進させることができるという利点がある。また、該圧力が5MPa未満であることにより、風圧によりシート部材1,2や接合部材3のばたつきが抑えられるという利点がある。
【0050】
ガスGの吹き付けの解除は、レーザー照射の解除直後であってもよく、また、レーザー光Rの照射の停止後しばらく経過した後でもよい。レーザー光Rの照射によって溶融したシート部材1,2を速く冷却させ、シート部材1,2と接合部材3とを速く接合させることができるという観点から、ガスGの吹き付けの解除は、レーザー光Rの照射の停止後しばらく経過した後が好ましい。
【0051】
該レーザー光Rとしては、シート部材1,2を溶融させうるものであれば特に限定されず、例えば、半導体レーザー、Nd−YAGレーザー、ファイバーレーザー、CO2レーザーなどの種々の発振手段によって得られるものを採用することができ、その発振方法についても、連続的にレーザー光が照射される、いわゆる、CWレーザー(Continuous Wave Laser)や、フェムト秒レーザーなどのパルスレーザー等を採用することができる。なかでも、面内で均一なビーム強度が得られやすいという観点から、半導体レーザー、ファイバーレーザーを好適に使用しうる。
また、多くの樹脂材料に対して透過性に優れ、シート部材1,2と接合部材3との界面にレーザー光を到達させやすく、シート部材1,2と接合部材3との界面での融着を容易に行いうるという観点から、該レーザー光の波長は近赤外線領域であることが好ましい。具体的には、波長は、800〜2000μmであることが好ましい。
【0052】
前記取出し工程(図2(d)参照)においては、必要に応じて融着した部分等を冷却した後に、透明ガラス板32の押圧を解除してシート接続体5の取り出しを実施する。
融着が完了した後、図2(d)に示すように、ガラス板32を引き上げ、シート部材1,2の接合が完了する。
【0053】
このようにして作製されたシート接続体5は、接合部材配置側と反対側の面において段差の発生が抑制されてなるものであるため、搬送ローラやニップローラ等のローラ類の損傷や、塗工工程、延伸工程、乾燥工程等において種々の問題が発生することを抑制することができ、また、テールのバタつきによって起こるような汚染を防止することができる。
【0054】
次に、第二実施形態のシート接続体の製造方法について添付図面を参照しつつ説明する。図3は、第二実施形態のシート接続体の製造方法においてシート接続体5が製造される様子を表すものである。
【0055】
第二実施形態のシート接続体の製造方法においては、図3に示すように、シート部材1,2に対して前記接合部材3をレーザー照射側と反対側に配する。即ち、シート部材1,2の下方側に接合部材3を配し、上方側からレーザー光を照射することによりシート接続体5を作製する。
第二実施形態のシート接続体の製造方法は、金属材料で形成された金属層を備えた接合部材3を用いる場合において、特に好ましい製造方法である。即ち、レーザー光が照射される側に対して、金属層がシート部材1,2をはさんで反対側にあることにより、レーザー光が金属層によって遮られることなく、シート部材1,2と接合部材3との界面近傍に達することができる。これにより、接合部材3に対してシート部材1,2がより確実に融着できる。
なお、第二実施形態のシート接続体の製造方法においては、前記接合部材3の配置を異ならせる点以外は、第一実施形態のシート接続体の製造方法と同様にしてシート接続体5を作製することができる。
【0056】
続いて、第三実施形態のシート接続体の製造方法について添付図面を参照しつつ説明する。図4は、第三実施形態のシート接続体の製造方法においてシート接続体5が製造される様子を表すものである。
【0057】
第一実施形態及び第二実施形態においては、単層のシート部材1,2を用いてシート接続体5を作製する場合について説明したが、第三実施形態のシート接続体の製造方法では、複数の層を備えた複層のシート部材を用いる場合について説明する。第三実施形態で用いる該複層のシート部材は、例えば、比較的小さい力によって所定の層間で剥離させることができるものである。
第三実施形態のシート接続体の製造方法においては、上記複層のシート部材を用い、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、前記準備工程、前記被覆工程、及び前記接合工程を実施し、シート部材の一面側に第一の接合部材が配された中間接続体(図4(a)参照)を作製する。さらに、該中間接続体に対して、シート部材の端部を突き合わせた部分における他面側を第二の接合部材で被覆し、該第二の接合部材で被覆された部分にレーザー光を照射して前記シート部材と前記第二の接合部材とを融着させてシート状接続材を作製する(図4(b)参照)。
【0058】
具体的には、本実施形態においては、例えば図4に示すように、粘着層11と保護フィルム層12との積層体(例えば、商品名「SPV」 日東電工社製)と基材層10とがラミネートされた複層のシート部材を用いることができる。
このような複層のシート部材同士を接合する場合、例えば、第一実施形態及び第二実施形態と同様の方法によって保護フィルム層12側に第一の接合部材を配して複層のシート部材同士を接合する(図4(a)参照)。その後、基材層10側に第二の接合部材を配して第一実施形態及び第二実施形態と同様にレーザー光を照射して、この第二の接合部材を介して基材層10同士を接合する。このようにして、接合部材が両面側にあるシート状接続材を作製する(図4(b)参照)。
【0059】
このようにして作製されたシート状接続材は、使用時においては、基材層10と粘着層11との間で剥離させることにより、少なくとも一方の面において段差の発生が抑制されてなるシート接続体5(図4(c)参照)となる。
斯かるシート接続体5は、第一実施形態及び第二実施形態で作製されたシート接続体5と同様に、少なくとも一方の面において段差の発生が抑制されてなるものであるため、搬送ローラやニップローラ等のローラ類の損傷や、塗工工程、延伸工程、乾燥工程等において種々の問題が発生することを抑制することができ、また、テールのバタつきによって起こるような汚染を防止することができる。
【0060】
なお、本発明において、発明の効果が著しく損なわれない範囲において、従来公知の技術事項を適宜採用し得ることは当然である。
例えば、上記実施形態では、シート部材を固定する固定手段として、ステージとガラス板とを用いた場合について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、例えば、該ガラス板に代えて、球状のガラスや円筒状のガラスを採用することができ、レーザー光の照射と合わせて転動させるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、予め所定の大きさに切断された接合部材を用いる場合について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、例えば、シート部材の長尺方向に直交する方向を長手方向とする予め所定の大きさに切断されていないシート部材を用いることもできる。この場合、斯かる接合部材をレーザー光の照射によってシート部材に接合させた後に、シート部材の幅に合わせて接合部材を切断する工程をおこなうことができる。
【0062】
また、本発明では、シート部材と接合部材とが接合した接合部をシート部材の幅方向に亘って連続的に形成してもよく、例えば、幅方向において所定間隔で該接合部を形成してもよい。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
トリアセチルセルロース(TAC)製シート部材(幅50mm、厚さ80μm、富士フィルム社製)を2枚用い、該シート部材の端部を重ね合わせて固定し、カッターで切断した。切断により形成された端面同士を突き合わせた。上記シート部材と同種の接合部材(50mm×5mm)の一方の面に光吸収剤(商品名「Clearweld LD120C」20nL/mm2、Gentex社製)を塗布し、塗布した面がシート部材に接するように接合部材を配置しつつ、接合部材によってシート部材の端部を突き合わせた部分を上方側から覆った。斯かる状態のシート部材及び接合部材をステージ上に載置し、接合部材をガラス板で上方側から10kgf/cm2で加圧しつつ、接合部材の上方側から半導体レーザー光(940nm、30W、2.0mmφスポット径)を走査速度100mm/秒で照射した。
その結果、接合部材を介して2枚のシート部材を接合することができ、片側面に段差のないシート接続体を作製することができた。また、得られたシート接続体の引張強度を測定したところ、120N/25mmという高い強度が確認された。
【0065】
(実施例2)
接合部材をシート部材の下方側に配置し、シート部材を上方側から加圧した点以外は、実施例1と同様にしてシート接続体を作製した。
その結果、シート接続体が120N/25mmという高い引張強度を有していることが確認された。
【0066】
(実施例3)
幅1,400mmのシート部材を用いた点以外は、実施例2と同様にしてシート接続体を作製した。
作製したシート接続体においては、良好な接合が確認され、このシート接続体を張力300Nでロールトゥロール(R−to−R)搬送したところ、シート接続体が破断することなく搬送された。また、段差の生じていない(接合部材が固着していない)面において連続塗工することができた。
【0067】
(比較例1)
50mm幅の粘着テープ[商品名「ダンプロンテープ」(日東電工社製)]を用い、実施例1と同様のTAC製シート部材(但し幅は1,400mm)を図5(a)に示すようにして接合した。即ち、シート部材の端部が突き合わされた部分の両面側に粘着テープを貼り付けることによりシート部材を接合した。
その結果、得られたシート接続体の接合強度は比較的高いもの(引張強度:130N/25mm)であったが、いずれの面にも段差があることにより、ロールトゥロール(R−to−R)搬送においてニップロールが傷ついたり、塗工した薬液が溜まったりする問題が生じた。
【0068】
(比較例2)
50mm幅の両面粘着テープを用い、実施例1と同様のTAC製シート部材(但し幅は1,400mm)を図5(b)に示すようにして接合した。即ち、一方のシート部材の上からもう一方のシート部材を重ね合わせ、この重ね合わせ部分に予め配置しておいた両面粘着テープを介して両シート部材を接合した。
その結果、得られたシート接続体の引張強度は80N/25mmであり、また、いずれの面にも段差があることにより、連続塗工ができなかった。
【0069】
(比較例3)
実施例1と同様のTAC製シート部材(但し幅は1,400mm)を図5(d)に示すようにして接合した。即ち、一方のシート部材の上からもう一方のシート部材を幅100mmで重ね合わせ、この重ね合わせ部分のうち上側シート部材の端縁から2mm幅の部分を実施例1と同様の加圧条件、レーザー照射条件でレーザー照射によって接合した。
その結果、得られたシート接続体の接合強度は比較的高いもの(引張強度:110N/25mm)であったが、いずれの面にも段差があることにより、連続塗工ができなかった。
【符号の説明】
【0070】
1:第一シート部材、1a:第一シート部材の後端面、2:第二シート部材、2a:第二シート部材の後端面、3:接合部材、5:シート接続体、10:基材層、11:粘着層、12:保護フィルム層、31:切断手段、32:ガラス板、33:ステージ、G:ガス、R:レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂が含有されたシート部材の端部同士を突き合わせて該突き合わせ部分の一面側を接合部材で被覆する被覆工程と、該接合部材で被覆された部分にレーザー光を照射して前記シート部材と前記接合部材とを融着させることにより前記シート部材同士を接合させる接合工程とを有することを特徴とするシート接続体の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程では、前記シート部材と前記接合部材との間に光吸収剤を配することを特徴とする請求項1記載のシート接続体の製造方法。
【請求項3】
光吸収剤を含む前記接合部材を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のシート接続体の製造方法。
【請求項4】
少なくともいずれか一方のシート部材と同種の樹脂材料で形成されている前記接合部材を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート接続体の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を含有したシート部材の端部同士が突き合わされた状態で前記シート部材同士が接合されているシート接続体であって、
前記端部同士が突き合わされた部分の一面側が接合部材で被覆され、該接合部材で被覆された部分にレーザー光が照射されて前記シート部材と前記接合部材とが融着されていることを特徴とするシート接続体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194947(P2010−194947A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44207(P2009−44207)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】