説明

シート状二次電池の製造方法

【課題】接続の際のシート状電極へのダメージを抑制すると共に、任意の枚数のシート状電極の積層形成を可能として、大容量化を容易に実現する。
【解決手段】シート状電極束の一11Aを電極リード3a上に載置し、該一のシート状電極束11Aの上部に、複数の金属箔11Pを載置して、これらを一括して超音波溶接し、溶接された一のシート状電極束11A及び金属箔11Pの上に、他のシート状電極束11Bを載置し、該他のシート状電極束11Bの上に、複数の金属箔11Pを載置して超音波溶接し、金属箔11Pを介した所望の枚数のシート状電極層を積層形成し、内部電極対1及びこの内部電極対1と一体に接続された電極リード3aを、当該電極リード3aの先端が袋状外包体2を気密に貫通して外部に突出するように、当該袋状外包体2の内部に電解液5と共に密封状態で収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状二次電池及びその製造方法に係り、特に限定されるものではないが、例えば、電気自動車、UPS(無停電電源装置)、ロードレベリング等の用途に好適に用いられる大容量のシート状二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器に対する小型・軽量化への要望は非常に強く、そのためには動力源である二次電池の性能向上が要求され、種々の電池の開発や改良が進められてきている。電池に期待されている特性の向上には、高電圧化、高エネルギー密度化、耐高負荷化、形状の任意化、安全性の確保等がある。このような要請の下、リチウムイオン二次電池は、現有する電池の中で最も高電圧、高エネルギー密度、耐高負荷化が実現できる二次電池であり、現在でもその改良が盛んに進められている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、一般的には、シート状の正極集電体とその表面に塗布された正極活物質とで構成されたシート状の正電極と、シート状の負極集電体とその表面に塗布された負極活物質とで構成されたシート状の負電極とをセパレータを介して積層することにより形成されたシート状の内部電極対と、この内部電極対を密封状態に被覆すると共に内部に電解液を収容する電池ケースと、この電池ケース内の内部電極対の各正電極及び各負電極から電池ケースに設けられた正極端子及び負極端子にそれぞれ接続される正電極リード及び負電極リードとで構成されており、充電時にはリチウムが正電極の正極活物質から電解液中にリチウムイオンとして抜け出し、負電極の負極活物質中に入り込み、放電時にはこの負極活物質中に入り込んだリチウムイオンが電解液中に放出され、再び正電極の正極活物質中に戻ることにより、充放電を行っている。かかるリチウムイオン二次電池については、その高エネルギー密度を達成できるということから、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の分野で用いられる大容量二次電池として期待されており、既に多くの開発や提案が行われている。
【0004】
例えば、このようなリチウムイオン二次電池として、三層構造のラミネートフィルムを用いて可撓性の袋状外包体を形成し、この袋状外包体の中にシート状の内部電極対と電解液とを封入して形成した軽量かつ薄型で可撓性を有するシート状リチウムイオン二次電池が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
この特許文献に開示されたシート状二次電池では、その電池ケースとして、内面側に例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の耐電解液性及びヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂製の内面層を、中間に例えばアルミ箔等の可撓性及び強度に優れた金属箔製の中間層を、また、外面側に例えばポリアミド系樹脂等の電気絶縁性に優れた絶縁樹脂製の外面層を有する三層構造のラミネートフィルムを用い、その内部にシート状の内部電極対と電解液とを封入して形成し、さらに、内部電極対を構成する複数の正電極及び負電極をそれぞれ個別に連結する一対の正電極リード及び負電極リードを設け、これら一対の正電極リード及び負電極リードがラミネートフィルムを気密に貫通して外部に突出する部分を電極端子若しくは外部リードとして用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−331816号公報
【特許文献2】特開2004−178860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年は、二次電池に対するさらなる小型化、大容量化、高効率化あるいは長寿命化といった要請が高まっており、シート状二次電池においても、シート状電極のさらなる多積層化や断面積の大きな(厚みの厚い)電極端子(以下、電極リードとも称する)の採用による大容量化及び抵抗低減による高効率化、電池寿命の増大等が望まれている。
【0008】
このような要請に対して、上述の特許文献に係るシート状二次電池では、シート状電極と電極リードとの接続に、抵抗溶接やレーザー溶接等と比して、接続抵抗の低減、低コスト化あるいは耐振性の向上といった観点から有利である超音波溶接が用いられているが、かかる溶接接続方式においては、電極リードの厚さやシート状電極の積層厚さ、また、それぞれの材質によっても溶接条件が大きく変化してしまうといった問題が生じていた。つまり、ワークである電極リードとシート状電極の厚さや硬度によっては、適切な溶接条件を設定するのが困難であるといった問題が生じていた。
【0009】
例えば、充分な溶接強度を得るために過大な溶接エネルギーを付与すると、シート状電極に亀裂や割れが生じる等の問題が発生してしまう。そして、このようなシート状電極に対する亀裂や割れ等のダメージは、振動等により電極剥離やショートといった故障の要因となってしまう。一方、溶接エネルギーが不足する場合には、充分な溶接強度が得られずに、接触不良による電池抵抗増加などの問題が発生してしまう。
【0010】
そして、このような問題は、ワーク厚さが厚くなる、つまり、電極リード及び/又はシート状電極の積層厚さが厚くなるほど顕著な問題として発生してしまう。
【0011】
すなわち、内部電極対を密封状態で収容している上述の特許文献に開示されたシート状二次電池において、高出力化、高容量化及び低抵抗化を実現すべく断面積(厚み)の大きな電極リードと積層された金属箔状のシート状電極とを超音波溶接する際には、両者を破壊、特に、薄いシート状電極に損傷等のダメージを与えることなく、かつ、充分な接続強度を得ることが困難であるといった問題が生じていた。また、これにより所定の溶接条件においては、電極リード端子に適切に接合可能なシート状電極の積層枚数が限られてしまい、シート状二次電池の大容量化が阻害されるといった問題が生じていた。
【0012】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、正負それぞれのシート状電極を構成する集電箔と、正負それぞれの電極リードとを相互に接続する際のシート状電極へのダメージを抑制すると共に、適切な溶接条件の設定を容易にし、併せて任意の枚数のシート状電極の積層形成を可能として大容量化を容易に実現することができるシート状二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のシート状二次電池の製造方法は、それぞれの厚さが5μm以上5.0μm以下である複数のシート状の正電極とそれぞれの厚さが5μm以上5.0μm以下である複数のシート状の負電極とをセパレータを介して交互に積層して形成されたシート状の内部電極対と、前記内部電極対の各シート状の正電極及び負電極と接続されそれぞれの厚さが0.3mm以上5.0mm以下である正電極リード及び負電極リードと、これらを電解液と共に収容する袋状外包体とを用意し、前記複数のシート状電極からの集電箔を集約して、複数のシート状電極束を形成し、該シート状電極束の一を前記電極リード上に載置し、該一のシート状電極束の上部に、前記シート状電極と同様な材質の複数の金属箔を載置して、これらを一括して超音波溶接し、さらに、溶接された前記一のシート状電極束及び金属箔の上に、他のシート状電極束を載置し、該他のシート状電極束の上に、前記シート状電極と同様な材質の複数の金属箔を載置して超音波溶接し、同様な手順を繰り返して、金属箔を介した所望の枚数のシート状電極層を積層形成し、前記内部電極対及びこの内部電極対のシート状電極層と一体に接続された電極リードを、当該電極リードの先端が前記袋状外包体を気密に貫通して外部に突出するように、当該袋状外包体の内部に電解液と共に密封状態で収容することを特徴とするものである。
【0014】
ここで、シート状電極の厚さとは、シート状集電体の両面に積層される活物質の厚さを含まない、シート状集電体自体の厚さをいうものとする。
【0015】
一般に、シート状二次電池の大容量化、低抵抗化等を実現するためには、厚さの厚い(断面積の大きい)電極リード及び多層のシート状電極が求められるが、溶接接続される電極リードとシート状電極との厚さが大きくなるほど、適切な溶接強度の設定が困難となり、不十分な溶接強度による接続不良や過度な溶接エネルギーによるシート状電極の割れといった問題が顕著に発生することが本発明者らの研究により判明した。
【0016】
そこで、このような本発明に係るシート状二次電池の製造方法によれば、接続の際のシート状電極へのダメージを抑制すると共に、任意の枚数のシート状電極の積層形成を可能として、大容量化が容易なシート状二次電池の製造方法を提供することができる。
【0017】
また、前記金属箔は、総厚さが10μm以上100μm以下であって、所定の超音波溶接領域を覆うように超音波溶接されてもよい。
【0018】
ここで、総厚さとは、1枚の金属箔を用いる場合には、その厚さをいい、複数の金属箔を積層して用いる場合には、その積層厚さをいうものとする。
【0019】
この場合には、必要な接続強度を確保しつつ、大容量の電池に好適なシート状二次電池の製造方法を提供することができる。
【0020】
また、前記電極リードが前記袋状外包体から突出する方向に沿って、前記金属箔の端部は、前記シート状電極束の端部に揃えて載置されて、若しくは、前記シート状電極束の端部の外側に延在するように載置されて超音波溶接されてもよい。
【0021】
以上において、前記一のシート状電極束の溶接領域と、他のシート状電極束の溶接領域とは、前記金属箔を介して超音波溶接されてもよい。
【0022】
この場合には、所定の電流容量を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、接続の際のシート状電極へのダメージを抑制すると共に、任意の枚数のシート状電極の積層形成を可能として、大容量化を容易に実現することができるシート状二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシート状二次電池を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のシート状二次電池の左側面図である。
【図3】図1のシート状二次電池のA−A線断面図であり、図2における円A’で囲まれた部分の拡大図である。
【図4】図1における内部電極対を説明するための模式的拡大図である。
【図5】シート状集電箔と電極リードとの接続部の構成を示す模式的拡大図である。
【図6】本発明に適用される超音波溶接の概要を説明するための模式図である。
【図7】本発明に係るシート状二次電池の製造方法を説明する模式図である。
【図8】本発明に係るシート状二次電池の製造方法を説明する模式図である。
【図9】本発明に係るシート状二次電池の製造方法を説明する模式図である。
【図10】本発明に係るシート状二次電池の接続方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図1〜4を参照して説明する。ここで、図1は、本発明に係るシート状二次電池の一例を模式的に示す斜視図であり、図2は図1における左側面図である。また、図3は、図1のA−A断面図であり、図2における円A’で囲まれた部分を拡大して示した図であり、図4は、内部電極対を説明するための模式図である。
【0026】
図1〜3において、10はシート状リチウムイオン二次電池(シート状二次電池)であり、可撓性の袋状外包体2により内部電極対1及び電解液5が内部に密封状態に収容されている。内部電極対1は、図3に示すように、複数のシート状の正電極1aと複数のシート状の負電極1bとを、セパレータ1cを介して交互に積層してシート状に形成されており、当該内部電極対1における正電極1aとそれぞれ個別に連結するシート状の正電極リード3aが、袋状外包体2のヒートシール部4を気密に貫通すると共にこのヒートシール部4に固着され、袋状外包体2の外部に突出している。また、図示を省略しているが、負電極1bにも負電極リード3bがそれぞれ個別に連結しており、該負電極リード3bは、図1に示されるように袋状外包体2を挟んで、正電極リード3aとは反対側の端部(本例では、図中、下端部)から、正電極リード3aと同様にヒートシール部4を貫通して気密状態で外部に突出して形成されている。
【0027】
本発明において、内部電極対1と電解液5とを内部に密封状態に収容する可撓性の袋状外包体2については、シート状二次電池10の電池ケースとして使用可能な強度を有するとともに収容される電解液5に対して優れた耐電解液性を有するものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、内面側に例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アイオノマー等の耐電解液性及びヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂製の内面層を、中間に例えばアルミ箔、ステンレス箔等の可撓性及び強度に優れた金属箔製の中間層を、また、外面側に例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた絶縁樹脂製の外面層を有する三層構造のラミネートフィルムを用いて形成される可撓性の袋状外包体(再表98/042,036号参照)を例示することができる。
【0028】
本実施の形態においては、上記袋状外包体2は、内面側にポリエチレン製の内面層2aを、中間にアルミ箔製の中間層2bを、また、外面側にナイロン製の外面層2cを有する三層構造のラミネートフィルムで形成されている。
【0029】
セパレータ1cは、多孔質膜、不織布、網など、電子絶縁性で正電極1a及び負電極1bとの密着に対して充分な強度を有するものであれば、どのようなものでも使用可能である。材質は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンの単層多孔質膜及びこれらの多層化した多孔質膜が接着性及び安全性の観点から好ましい。
【0030】
また、イオン伝導体として用いる電解液5に供する溶剤及び電解質塩としては、従来の電池に使用されている非水系の溶剤及びリチウムを含有する電解質塩が使用可能である。具体的には、溶剤として、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルなどのエステル系溶剤、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤の単独液、及び前述の同一系統の溶剤同士あるいは異種系統の溶剤からなる2種の混合液が使用可能である。また電解質塩は、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiN(C25SO22などが使用可能である。
【0031】
本実施の形態において、内部電極対1は、図4に示すように、各正電極1aがアルミニウム製の正極集電体11の両面に正極活物質12を積層して形成されており、同様に、各負電極1bが銅製の負極集電体13の両面に負極活物質14を積層して形成されている。より具体的には、本実施の形態において、シート状の各正電極1aを構成する正極集電体11は、その厚さが5〜30μm程度の極薄のアルミニウム箔で形成されていると共に、シート状の各負電極1bを構成する負極集電体13は、その厚さが5〜30μm程度の極薄の銅箔で形成されており、これらの正極集電体11又は負極集電体13に対応する金属箔を、例えば各40枚ずつセパレータ1cを介して交互に積層することにより内部電極対1が構成されている。さらに、正電極リード3aは上記正極集電体11と同じアルミニウム製であり、負電極リード3bは上記負極集電体13と同じ銅製又はニッケル製である。ただし、その材質としては特に限定されるものではなく、電気化学的に安定な金属材料を用いることが望ましい。なかでも、正電極リード3aとしてはアルミニウム、アルミニウム合金等を、負電極リード3bとしては銅、ステンレス、ニッケル等を好ましいものとして例示することができる。また、正電極リード3aについては、正極集電体を形成する材質と同じ材質、例えばアルミニウムを用いるのが特に好ましく、負電極リード3bについては、銅及び/又はニッケルを用いるのが特に好ましい。
【0032】
本実施の形態において、正電極リード3a及び負電極リード3bの厚さはともに0.3mmであり、その幅は、ともに30mmである。なお、本発明により構成されるシート状二次電池10は、例えば電気自動車等、大電流を企図するものに好適に採用されるものであり、本発明において、正電極リード3a及び負電極リード3bの厚さとしては、超音波溶接が可能なリード厚みという観点から、例えば0.3mm以上5.0mm以下の板状の端子を用いることが好ましい。
【0033】
次に、正電極リード3a又は負電極リード3bと内部電極対1との接続部について、図5を参照してさらに説明する。図5は、各リード部と内部電極対との接続部を模式的に示す拡大図である。なお、正極側接続部と負極側接続部とは、同様な構成であるため、以下、正極側接続部を例示して説明する。
【0034】
図5に示すように、本実施の形態において、シート状の正電極を構成する、例えばアルミニウム製の複数のシート状正極集電体(以下、正極集電箔とも称する)11−1〜11−40は、保護箔11P−1〜11P−4を介して正電極リード3a上に積層された状態で、超音波溶接により一体に接続されている。具体的には、正極集電箔11−1〜11−20と、11−21〜11−40とは、正極集電箔11と同様な金属(本例では、アルミニウム)で形成された、正極集電箔11とは別体の保護箔11P−1,11P−2が挿入された状態で積層形成(接続)されていると共に、最上部の正極集電箔11−40の上にも、同様な材質の別体の保護箔11P−3,11P−4が挿入された状態で積層形成(接続)されている。そして、保護箔11P−1,11P−2によって、正極集電箔の積層方向中間部における接続保護層(以下、中間部接続保護層11Pmとも称する)が形成されていると共に、11P−3,11P−4によって、積層方向端部(正電極リード3aと反対側の端部)における接続保護層(以下、端部接続保護層11Peとも称する)が形成されている。また、負極側接続部についても、正極側接続部と同様な構成であり、シート状負極集電体(以下、負極集電箔とも称する)13と同様な材質(例えば、銅)の接続保護層13Pm,13Peが形成されている。なお、各接続部におけるシート状集電体には、活物質は塗布されていない。
【0035】
ここで、本発明に係るシート状二次電池10における集電箔11,13及び保護箔11Pの枚数は任意に設定可能であるが、接続の際の各集電箔11,13に対する損傷等のダメージを低減するという観点から、積層された各集電箔11−1,11−2・・・,13−1,13−2・・・の積層厚さが所定の厚さ(本例では、例えば0.3mm以上)となるごとに接続保護層11Pを形成することが好ましい。
【0036】
このように構成した本発明に係るシート状二次電池10においては、シート状集電体11(13)と電極リード3a(3b)との接続部において、積層されたシート状集電箔11(13)の積層方向中間部に接続保護層11Pm(13Pm)が形成されているので、後述する製造方法によってシート状二次電池10を製造する際に、各集電箔11(13)にダメージを与えることなく、各集電箔11(13)の接続の際の加圧による沈み込みによる亀裂の発生を未然に防止すると共に、任意の枚数の集電箔の積層形成を可能として、小型大容量のシート状二次電池10を容易に実現することが可能となる。さらに、積層方向端部にも接続保護層11Pe(13Pe)が形成されているので、接続の際の加圧によりダメージを受けやすいシート状集電箔端部を効果的に保護することができる。
【0037】
次に、本発明に係るシート状二次電池10の製造方法について図面を参照して説明する。先ず、本製造方法に適用される超音波溶接について図6を参照して説明する。図6は、超音波溶接の概要を説明するための超音波溶接装置の概略構成図である。
【0038】
図6に示すように、超音波溶接装置は、ホーン131と、その先端に取り付けられたチップ132と、チップ132に対向配置されたアンビル133とから構成されている。そして、チップ132とアンビル133との間に接合対象となる2つの部材(ホーン側部材134及びアンビル側部材135)を重ねて配置し、チップ132とアンビル133とで挟んで加圧し、ホーン131に超音波振動を与えると、チップ132がアンビル133の加工面に対し略並行に振動する。すると、該超音波振動がチップ132を介してホーン側部材134及びアンビル側部材135に伝達され、接面効果、工作効果及び熱効果により両者が接続されるようになっている。
【0039】
このような超音波溶接は、溶接界面を溶融せずに、あるいは極めて限られた薄層だけを溶融することができ、また、溶接界面における酸化膜等の不純物の摩擦によるクリーニング効果が期待できるといった特徴を有し、これにより、接続抵抗を低減すると共に、接合対象となる部材に大きなダメージを与えることなく、低コストで安定的に、かつ広い面積で両者を確実に接続することが可能となる。
【0040】
本実施の形態では、ホーン側部材134として積層された集電箔11(13)を、アンビル側部材135として電極リード3a(3b)を、それぞれ配置することで、両者を超音波溶接するようになっている。
【0041】
ところで、このような超音波溶接を用いて、厚さが5〜30μm程度の薄い金属箔状の集電箔11(13)を積層して電極リード3a(3b)に接続する場合、電極リード3a(3b)の厚さや、シート状集電箔11(13)の枚数及び積層厚さ、及びそれぞれの材質によっても適切な溶接条件が変化してしまう。
【0042】
特に、大容量化を企図した断面積(厚さ)の大きい電極リード3a(3b)の上に、薄い集電箔11(13)を積層接続する際には、箔亀裂等の溶接不良が発生し易くなり、所定の溶接条件の下で、適切に積層接続可能な集電箔11(13)の枚数が限られ、これにより、電池の大容量化が阻害されてしまう。これに対して、少数の集電箔11(13)ごとに溶接を行った場合には、溶接回数が多くなり、作業工数が増大して生産性が大幅に低下してしまう。
【0043】
具体的には、大電流出力・低抵抗化を目的とした、厚さ0.3mm以上の電極リード3a(3b)端子を用い、この電極リード3a(3b)と、積層厚さ(総厚さ)T=t*x(ここで、t:集電箔の厚さ、x:集電箔の積層枚数;5≦t≦30μm、x≧20枚)が0.3mm以上となる多積層されたシート状集電箔11(13)とを超音波溶接しようとする場合には、そのワークの厚さのため、シート状集電箔11(13)の破壊あるいは溶接強度の不足といった問題が生じ易くなり、適切な溶接条件を決定することが困難となることが本発明者らの研究により判明した。また、シート状集電箔11(13)を実際に積層した状態においては、同極の集電箔(例えば、正極集電箔11)間に対極の集電箔(例えば、負極集電箔13)及びセパレータ1cが介在しているため、超音波溶接を行なう電極リード3a(3b)との接続部分では、同極の集電箔同士の間隔は50〜200μm程度開いている状態となる。このため、集電箔の積層厚さが0.3mm以上となる場合、同じ厚み・枚数の集電箔を単純に積層したものについて超音波溶接する場合よりも、上記接続部分における集電箔の沈み込みが大きくなり、その結果、溶接部分(所定の溶接領域の境界縁近傍)に沿って箔亀裂が発生し易くなる、特に、溶接接続時における積層方向端部(電極リードと反対側の端部)の集電箔に箔亀裂が発生し易くなることが本発明者らの研究により判明した。
【0044】
そこで、本発明に係るシート状二次電池10の製造方法では、次のようにして電極リード3a(3b)と、各シート状集電箔11(13)とを各接続保護層11P(13P)を介して接続することにより、接続の際のシート状集電箔11(13)に対するダメージを抑制しつつ、任意の枚数のシート状集電箔11(13)の積層を可能としている。以下に、本発明に係るシート状二次電池10の製造方法について、正極側を例にとって図7〜図9を参照して説明する。
【0045】
先ず、図7に示すように、それぞれの厚さが5〜30μmである、例えば40枚のシート状集電箔11−1〜11−40を数枚ずつに集約して、集電箔束を形成する。本実施の形態では、例えば、20枚ずつに分割し、集電箔束11A,11Bを形成する。
【0046】
次に、その厚さが0.3mm以上の電極リード3aを用意し、図8に示すように、超音波ホーン131とアンビル133との間に、電極リード3a、集電箔束11A、中間部接続保護層11Pmを形成する金属箔11P−1,11P−2をセットし、これらの電極リード3a、集電箔束11A層及び中間部接続保護層11Pmを一括して超音波溶接する。具体的には、電極リード3aをアンビル133の上に載置し、電極リード3aの上に集電箔束11Aを積層し、さらに、この上に集電箔保護用の金属箔11P−1,11P−2を載置し、超音波ホーン131をこの保護用金属箔11P−1,11P−2に押し当てて超音波溶接する。
【0047】
次に、図9に示すように、電極リード3aと一体となって溶接された集電箔束11A層及び中間部接続保護層11Pmの上に、残りの集電箔束11Bを重ねて、さらに、その上に端部接続保護層11Peを形成する金属箔11P−3,11P−4を載せて、超音波ホーン131をこの保護用金属箔11P−3,11P−4に押し当てて同様に超音波溶接する。
【0048】
以上のような手順を繰り返すことにより、任意の枚数の集電箔11を、保護層11Pを介して電極リード3a上に積層溶接(接続)することが可能となる。
【0049】
その後、任意の枚数の集電箔11(13)により構成された内部電極対1及び集電箔11(13)が積層接続された電極リード3a(3b)を、袋状外包体2の内部に収容すると共に電解液を充填し、該電極リード3a(3b)が袋状外包体2を気密に貫通するように、袋状外包体2の開口部をヒートシールして密封することにより、容易に大容量化が可能なシート状二次電池10を実現することができる。
【0050】
ここで、接続保護層11P(13P)を形成する、例えば金属箔の大きさとしては、超音波ホーン131上のチップ132の大きさによって規定される所定の溶接領域を覆うような大きさであることが、十分な接続強度を得るという観点から好ましい。
【0051】
また、保護層11P(13P)の厚さとしては、過大な溶接エネルギーを要することなく、積層されたシート状集電箔11(13)と一体に溶接可能とするために、10μ以上100μm以下であることが好ましい。
【0052】
さらに、各集電箔束(本例では、11A,11B)を溶接して積層接続する際には、それぞれの集電箔束11A,11Bの溶接領域(面積)が、中間部接続保護層11Pmを介して、少なくとも二分の一以上重なるように溶接接続することが、所定の電流容量を確保するという観点から好ましい。
【0053】
このように、多積層集電箔11−1,11−2・・・を分割して集電箔束11A,11B・・・を形成し、この集電箔束11A,11B・・・を、中間部接続保護層11Pmを介して順次溶接していくことにより、一度に全てのシート状集電箔11−1,11−2・・・を溶接する場合に比し、溶接強度を適切に設定する(各集電箔11−1,11−2・・・にダメージを与えないような溶接強度に設定する)ことが可能となると共に、電極リード3a(3b)との溶接部分における、溶接接続時の多層集電箔11−1,11−2・・・の沈み込みを緩和することができる。これにより、接続の際の集電箔11−1,11−2・・・の亀裂の発生等による接続不良を未然に防止し、かつ、任意の枚数の集電箔11−1,11−2・・・の積層を可能として、シート状二次電池の高出力化・高容量化を容易に実現することができる。また、少数の集電箔を、順次溶接する場合に比し、積層される集電箔を保護(特に、ダメージを受け易い積層方向端部の集電箔を確実に保護)すると共に作業工数の低減を可能とし、併せて生産性の向上を図ることができる。
【0054】
さらに、このような接続保護層11Pを、例えば金属箔を数枚重ねて形成することにより、亀裂などの箔破壊が、万一保護層11Pに発生してもシート状集電箔11−1,11−2・・・本体に及ぶことなく溶接接続することが可能となり、電極剥離やショートといった不具合を未然に防止すると共に、電池出力の安定化、高容量化に寄与することができる。なお、端部接続保護層11Peについては、最後に重ねた集電箔束を溶接する際に、箔破壊を起こさずに溶接可能である場合(適度な溶接条件を設定できる場合)には省略可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、例えば金属箔11P−1〜11P−4により接続保護層11Pを形成したが、本発明は、このような形態の接続保護層に限定されるものではなく、例えば図10に示すような、一部のシート状電極を接続部において折り返すことによって接続保護層を形成してもよい。以下、このような接続保護層の変形例11P’について、図10を参照して説明する。なお、図10において、先の実施の形態と同様な機能を有する部材には、同様な符号を付し、その説明は省略する。また、正極側接続部と負極側接続部は同様な構成であるため、正極側を例にして説明する。
【0056】
本変形例における内部電極対1は、図10に示すように、例えば、42枚の正極集電箔11−1〜11−42から構成されている。また、それぞれの正極集電箔の厚さ及び電極リードの厚さは、先の実施の形態と同様であり、それぞれ5〜30μm及び0.3〜5.0mmである。
【0057】
本変形例では、所定の溶接エネルギーに応じて、保護層11Pを介した適切な積層溶接が可能となる集電箔11の枚数(例えば、本例では、11−1〜11−20,11−22〜11−41の各20枚)ごとに、その上に積層される集電箔(本例では、11−21,11−42)を予め他の集電箔(11−1〜11−20,11−22〜11−41)よりも長く形成しておき、当該集電箔11−21,11−42を接続部において折り曲げることにより接続保護層11P’を形成したものである。
【0058】
具体的には、先の実施の形態と同様な手順で、先ず、電極リード3a上に集電箔11−1〜11−20束を積層すると共に、その上の中間部接続保護層11P’mを形成する集電箔11−21を折り曲げて(折り返して)、これらを一括して超音波溶接し、その後、集電箔11−22〜11−41までの20枚及びその上に積層される端部接続保護層11P’eを形成する集電箔11−42を折り曲げ形成して、先に溶接した集電箔11−1〜11−20束及び中間部接続保護層11P’mの上に載置し、同様に超音波接続することにより、任意の枚数の集電箔11と電極リード3aとの積層接続を可能としている。
【0059】
ここで、接続保護層11Pを形成する集電箔11−21,11−42を折り返す際には、折り返された集電箔部分が、超音波ホーン131上のチップ132の大きさによって規定される所定の溶接領域を覆うように折り返すことが、十分な接続強度を得るという観点から好ましい。
【0060】
また、各集電箔束11−1〜11−20,11−22〜11−41を溶接して積層接続する際には、それぞれの集電箔束11−1〜11−20,11−22〜11−41の溶接領域(面積)が、折り曲げ形成される集電箔(本例では、11−21)を介して、少なくとも二分の一以上重なるように溶接接続することが、所定の電流容量を確保するという観点から好ましい。
【0061】
このように構成した本変形例に係る接続保護層11P’においては、金属箔11Pにより接続保護層11Pを形成した先の実施の形態と同様な効果が得られると共に、接続保護層としての金属箔を別途設ける必要がなく、容易に接続保護層11P’を形成することが可能となる。
【0062】
なお、本発明に係るシート状二次電池10及びその製造方法において、積層される集電箔11(13)の各厚さ及び枚数や、保護層を形成する保護箔(本例では、11P−1〜11P−4)若しくは集電箔(本例では、11−21,11−42)の各厚さや枚数は、所定の溶接条件(溶接強度)に応じて適宜設定可能である。また、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、溶接接続の際に、シート状電極(集電箔)に対する損傷等のダメージを抑制するような導電性層が、接続部における積層方向中間部に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0063】
1:内部電極対、1a:正電極、1b:負電極、1c:セパレータ、2:袋状外包体、3a:正電極リード、3b:負電極リード、4:ヒートシール部、5:電解液、10:シート状二次電池、11:正極集電箔、11A,11B:集電箔束、11P,11P’:接続保護層、11Pm,11P’m:中間部接続保護層、11Pe,11P’e:端部接続保護層、13:負極集電箔、131:超音波ホーン、132:チップ、133:アンビル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの厚さが5μm以上5.0μm以下である複数のシート状の正電極とそれぞれの厚さが5μm以上5.0μm以下である複数のシート状の負電極とをセパレータを介して交互に積層して形成されたシート状の内部電極対と、前記内部電極対の各シート状の正電極及び負電極と接続されそれぞれの厚さが0.3mm以上5.0mm以下である正電極リード及び負電極リードと、これらを電解液と共に収容する袋状外包体とを用意し、
前記複数のシート状電極からの集電箔を集約して、複数のシート状電極束を形成し、該シート状電極束の一を前記電極リード上に載置し、該一のシート状電極束の上部に、前記シート状電極と同様な材質の複数の金属箔を載置して、これらを一括して超音波溶接し、
さらに、溶接された前記一のシート状電極束及び金属箔の上に、他のシート状電極束を載置し、該他のシート状電極束の上に、前記シート状電極と同様な材質の複数の金属箔を載置して超音波溶接し、同様な手順を繰り返して、金属箔を介した所望の枚数のシート状電極層を積層形成し、前記内部電極対及びこの内部電極対のシート状電極層と一体に接続された電極リードを、当該電極リードの先端が前記袋状外包体を気密に貫通して外部に突出するように、当該袋状外包体の内部に電解液と共に密封状態で収容することを特徴とするシート状二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記金属箔は、総厚さが10μm以上100μm以下であって、所定の超音波溶接領域を覆うように超音波溶接されることを特徴とする請求項1に記載のシート状二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電極リードが前記袋状外包体から突出する方向に沿って、前記金属箔の端部は、前記シート状電極束の端部に揃えて載置されて、若しくは、前記シート状電極束の端部の外側に延在するように載置されて超音波溶接されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記一のシート状電極束の溶接領域と、他のシート状電極束の溶接領域とは、前記金属箔を介して超音波溶接されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシート状二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−209269(P2012−209269A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165568(P2012−165568)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2007−115505(P2007−115505)の分割
【原出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(397009152)エナックス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】