説明

シーラント材、カバーテープ、及び電子部品搬送用包装体

【課題】ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとの接着力に優れ、高温・高湿度下でエージングを行ったときの該接着力の低下が抑制され、剥離時のピール性(剥離感)に優れたシーラント材を提供する。
【解決手段】ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、
(A)エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、(B)粘着付与剤と、を少なくとも含み、前記(A)、前記(B)、(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体、及び(D)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの含有比率が、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、それぞれ25〜95質量部、3〜20質量部、0〜70質量部、及び0〜70質量部であるシーラント材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの保管、運搬などに好適なポリカーボネートを用いたキャリアテープに密着されるシーラント材、並びにこれを用いたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や電子部品などのマイクロチップを輸送や保管するために用いられるキャリアテープが広く知られている。
このキャリアテープによれば、あまりに小サイズなために取り扱いが困難なマイクロチップ等を、キャリアテープに設けられた凹部に1個ずつ埋め込んで保管、運搬することができる。
キャリアテープには、マイクロチップ等が埋め込まれた凹部を閉塞するためのカバーテープがヒートシール等により密着され、パッケージ化される。この状態で運搬等した後、キャリアテープをマウンターという部品組立用の機械(実装機)にセットし、埋め込まれたマイクロチップ等を取り出せるようになっている。
【0003】
マイクロチップ等のほか、従来からカップ麺やゼリー、ヨーグルト等の飲食品、医薬品などの容器として、易開封性の蓋材を備えたプラスチックス容器が知られている。このような易開封性の蓋材に設けられるヒートシール材料として、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体と粘着付与樹脂の組成物、これにポリエチレンや低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体などを配合したヒートシール材料などが知られている。
【0004】
ところが、キャリアテープ本体に用いられるプラスチックス材料も多様化し、従来のヒートシール材料では所望とされるヒートシール性を保てない場合がある。また、用途によっては、求められるヒートシール性が異なり、他の特性が必要とされる。
【0005】
ヒートシールに関連する技術としては、エチレン・不飽和エステル共重合体とエラストマーと結晶性ポリオレフィンと粘着付与剤とをそれぞれ所望の範囲で含むエチレン共重合体組成物が開示されており(例えば、特許文献1参照)、ポリプロピレンやポリスチレン等の飲食品容器に対して密封性、低温ヒートシール性、及び易開封性に優れるとされている。
【0006】
また、ビニルエステル含量が所定範囲のエチレン・ビニルエステル、エチレンとプロピレンまたはブテン−1との共重合体、及び粘着付与剤が溶融混合してなるヒートシール性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2〜3参照)。これは、プリンやゼリーなどの食品包装に用いられる易開封性ヒートシール材用として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/090722
【特許文献2】特開昭58−47038号公報
【特許文献3】特公昭63−29894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したキャリアテープとしては、ポリスチレン(PS)を基材とするものが主として使用されているが、生産性の向上の要請からキャリアテープの加工速度が速くなっている傾向があり、上記PSを基材とするキャリアテープでは速度を上げると破断したりする問題がある。この問題に対して、キャリアテープの基材として、ポリカボーネート(PC)が使用される事例が増えてきている。また、ESD(静電気敏感性デバイス)を対象にした高速生産用として導電性ポリカーボネートが使用される事例も増加してきている。
【0009】
しかしながら、PCは接着し難い材料であることに加え、PCを用いたキャリアテープでは、高温、短時間(例えば0.1〜0.3秒)での接着が求められている。このため、PCを用いたキャリアテープでは、熱接着(ヒートシール)による接着力として、所望とする接着力が得られ難い傾向がある。
また、キャリアテープはカバーテープでシールされた後、高温・高湿下(例えば、60℃、90%RHの環境下)で保管されることがあるが、高温・高湿度下でのカバーテープの剥離が問題となることがある。
更に、キャリアテープでは、封入されるICチップ等の位置ずれや飛び出しを防止する観点から、キャリアテープからシーラント材(カバーテープ)を剥離する際のジッピング(滑らかに剥離できずに微小な振動が生じる現象)を抑制すること、即ち、剥離時のピール性(剥離感)を向上させることが要求されることがある。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとの接着力に優れ、高温・高湿度下でエージングを行ったときの該接着力の低下が抑制され、剥離時のピール性(剥離感)に優れたシーラント材、並びにこれを用いたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、
(A)エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、
(B)粘着付与剤と、
を少なくとも含み、
前記(A)、前記(B)、(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体、及び(D)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの含有比率が、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、それぞれ25〜95質量部、3〜20質量部、0〜70質量部、及び0〜70質量部であるシーラント材である。
【0012】
<2> 更に、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜10質量部の(E)アンチブロッキング剤を含む<1>に記載のシーラント材である。
【0013】
<3> 更に、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜5質量部の(F)スリップ剤を含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載のシーラント材である。
【0014】
<4> 基材上に、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに熱接着して用いられるカバーテープである。
【0015】
<5> ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に<1>〜<3>のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープと、を備えた電子部品搬送用包装体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとの接着力に優れ、高温・高湿度下でエージングを行ったときの該接着力の低下が抑制され、剥離時のピール性(剥離感)に優れたシーラント材、並びにこれを用いたカバーテープ及び電子部品搬送用包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のシーラント材、カバーテープ、及び電子部品搬送用包装体について詳細に説明する。
【0018】
本発明のシーラント材は、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、(A)エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(以下、「成分(A)」や「(A)」ともいう)と、(B)粘着付与剤(以下、「成分(B)」や「(B)」ともいう)と、を少なくとも含み、前記(A)、前記(B)、(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体(以下、「成分(C)」や「(C)」ともいう)、及び(D)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマー(以下、「成分(D)」や「(D)」ともいう)の含有比率が、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、それぞれ25〜95質量部、3〜20質量部、0〜70質量部、及び0〜70質量部である。
【0019】
シーラント材を上記本発明の構成としたことにより、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとの接着力に優れ、高温・高湿度下(例えば、60℃、90%RHの環境下)でエージングを行ったときの該接着力の低下が抑制される。更には、ヒートシール部における最大剥離強度と最小剥離強度との差を小さくすることができるので、剥離時のピール性(剥離感)を向上させることができる。別の言い方をすれば、ジッピングというビリビリした振動感を感じずにスムーズに剥離できる。
以下では前記接着力を、「ヒートシール強度」又は「剥離強度」ということがある。
【0020】
(A)エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体
本発明のシーラント材は、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(成分(A))を含有する。本発明のシーラント材は、該成分(A)を一種単独で含んでいてもよいし二種以上含んでいてもよい。
本発明においては、シーラント材中における成分(A)の含有比率を、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、25〜95質量部の範囲とする。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(A)の含有比率が25質量部未満であると、高温・高湿下でのエージングにより接着力(ヒートシール強度)が低下する。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(A)の量が95質量部を超えると、接着力(ヒートシール強度)が不足する。
中でも、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(A)の量は、30〜90質量部が好ましく、40〜90質量部がより好ましい。
【0021】
本発明における樹脂組成物の必須成分であるエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(A)は、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1以上(好ましくは炭素数1以上8以下)のアルキルエステルとの共重合体(好ましくはランダム共重合体)である。
アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nブチルなどが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、入手のし易さ、性能および価格のバランスから炭素数1以上4以下のアルキルエステルを有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
かかる好ましい共重合体(A)としては、例えば、エチレン・アクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸nプロピル共重合体、エチレン・アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸nプロピル共重合体、エチレン・メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・メタクリル酸nブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸イソブチル共重合体などが挙げられる。
【0023】
なお、本発明における成分(A)は、二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをエチレンと共重合させたものであってもよい。
【0024】
また、本発明における成分(A)の中で、好ましく使用されるのは、JIS K7121−1987に準拠して測定した融点T[℃]と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位含有量X[モル%]が式(1)を満たすものである。
【0025】
−3.0X+125≧T≧−3.0X+107 … 式(1)
【0026】
式(1)を満たす成分(A)は、式(1)を満たさないエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と比較して耐熱性が優れている。そのため、高速生産に伴う発熱に耐えうるシーラント強度(ヒートシール強度)を保持できる。
【0027】
式(1)を満たす成分(A)を製造する方法は、とくに限定されないが、チューブラー法による高圧ラジカル重合プロセスで得ることができる。
例えば、エチレンガスと(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの全量および有機過酸化物をチューブラー反応器の入口部から導入し、反応器内の平均反応温度を150〜250℃の範囲に設定して重合をおこなうと、式(1)を満たす成分(A)が得られる。
エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとでは反応性が異なるので、チューブラー反応器内の入口部と出口部とで(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーのエチレンガス中での濃度が変化する。すなわち、エチレンガス中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー濃度が入口部で高く出口部で低くなり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が高い共重合体と低い共重合体とが混在して生成する。この中で(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量の低い共重合体がより高い融点と耐熱性を与える。したがって、共重合体の(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有量の平均値が同じ場合、オートクレーブ法に比べてチューブラー法で得られた成分(A)は融点が高くなるため、式(1)の条件を満たす成分(A)を得ることができる。
【0028】
本発明の成分(A)は、上記以外に通常のオートクレーブ法による重合で得られるものであっても構わない。
【0029】
本発明における成分(A)は、とくに限定されないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位含有量Xが0.5モル%以上15モル%以下、好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、さらに好ましくは1.5モル%以上6モル%以下である。Xが上記範囲にある成分(A)は、シーラント材の機械物性、耐熱性、ヒートシール強度がより一層優れている。
【0030】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位含有量Xは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに帰属する赤外吸収スペクトル(IR)により測定される。例えばアクリル酸エチル(EA)の場合、EAに帰属する860cm−1の吸光度から求める。ただし、検量線は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)によりEA濃度を求め、IRの860cm−1の吸光度との相関によって求める。
【0031】
また、本発明における成分(A)は、とくに限定されないが、JIS K7210−1999に準拠して測定したメルトフローレート(190℃、2160g荷重)が1g/10分以上50g/10分以下、好ましくは2g/10分以上10g/10分以下である。
成分(A)の前記メルトフローレートが1g/10分以上であると、フィルム加工性がより向上し、成分(A)の前記メルトフローレートが50g/10分以下であると、低分子成分が少なくなるので、エージング後にキャリアテープとの間でベタツキを生じる現象をより抑制できる。
【0032】
(B)粘着付与剤
本発明のシーラント材は、粘着付与剤の少なくとも一種(成分(B))を含有する。
本発明においては、シーラント材中における成分(B)の含有割合を、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、3〜20質量部の範囲とする。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(B)の含有比率が3質量部未満であると、ヒートシール強度が不足する。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(B)の含有比率が20質量部を超えると、強度過多になりやすく、剥離時のピール性(剥離感)が悪化する。
中でも、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(B)の含有比率は、5〜15質量部が好ましく、7〜11質量部がより好ましい。
【0033】
前記粘着付与剤は、粘着付与性のある樹脂を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。
【0034】
前記脂肪族系炭化水素樹脂としては、例えば、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどの炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0035】
前記脂環族系炭化水素樹脂としては、例えば、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後、重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂(例えば、水素化石油樹脂等)などが挙げられる。
【0036】
前記芳香族系炭化水素樹脂としては、例えば、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどの炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と前記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。
【0037】
前記ポリテルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
【0038】
前記ロジン類としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示できる。
【0039】
前記スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0040】
粘着付与剤は、軟化点が85〜130℃の樹脂が好ましい傾向がある。軟化点は、一般的に85℃以上であると耐熱性に優れた効果を発揮する傾向があり、130℃以下であると粘着性に優れた効果を発揮する傾向がある。
【0041】
(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体
本発明のシーラント材は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の少なくとも一種(成分(C))を含有することが好ましい。
本発明のシーラント材が成分(C)を含む場合、ヒートシール強度をより安定化させることができる。
【0042】
本発明においては、シーラント材中における成分(C)の含有比率を、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、0〜70質量部の範囲とする。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(C)の含有割合が70質量部を超えると、エージング後のヒートシール強度の低下が顕著となる。
中でも、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(C)の含有比率は、1〜70質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、1〜20質量部が更に好ましく、5〜10質量部が特に好ましい。
【0043】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、少なくともエチレンと酢酸ビニルとが共重合した共重合体であり、場合により他のモノマーが更に共重合されてもよい。
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体におけるビニルエステルの共重合比(即ち、ビニルエステルに由来する構造単位の含有量)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の全質量に対して、3〜20質量%であることが好ましい。これにより、ヒートシール強度をより向上させることができ、ベタツキをより抑制することができる。
ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが含まれ、共重合体の共重合単位として複数種のビニルエステル由来の構造単位を含んでもよく、本発明においては少なくとも酢酸ビニル由来の構造単位を共重合単位として含む場合が好ましい。
【0044】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと共重合体全質量に対して3〜20質量%の割合の酢酸ビニルとの2元共重合体が好ましい。
【0045】
また、前記(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体のJIS K7210−1999に準拠して測定された190℃、2160g荷重でのメルトフローレート(単位:g/10分)としては、加工性、ピール性(剥離性)の観点より、1〜30g/10分が好ましく、1〜10g/10分がより好ましい。
【0046】
(D)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマー
本発明のシーラント材は、エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの少なくとも一種(成分(D))を含有することが好ましい。
本発明のシーラント材が成分(D)を含む場合、ヒートシール強度の温度依存性を小さくすることができる。
【0047】
本発明においては、シーラント材中における成分(D)の含有比率を、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、0〜70質量部の範囲とする。
成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(D)の含有比率が70質量部を超えると、ベタツキが大きくなり、加工性が低下することがある。
中でも、成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対する成分(D)の含有比率は、1〜70質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、10〜50質量部が更に好ましく、10〜40質量部が特に好ましい。
【0048】
α−オレフィンとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン等が挙げられる。
【0049】
エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体などが挙げられ、中でもエチレン・1−ブテン共重合体が特に好ましい。
【0050】
エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの密度は、ヒートシール強度向上及びジッピングの発生抑制の観点から、860〜900kg/mの範囲が好ましく、880〜890kg/mの範囲がより好ましい。
【0051】
(E)アンチブロッキング剤
本発明のシーラント材は、アンチブロッキング剤の少なくとも一種(成分(E))を含有することが好ましい。アンチブロッキング剤を含有することで、フィルムのブロッキングが緩和される。
【0052】
アンチブロッキング剤の例としては、シリカ、アルミノ珪酸塩(ゼオライト等)などを挙げることができる。
【0053】
本発明においては、シーラント材中における成分(E)を、前記成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で含有することができる。成分(E)の含有比率が0.1質量部以上であるのはアンチブロッキング性付与のために実質的に含むことを示し、0.1質量部以上である場合、ベタツキが抑えられ、ブロッキングの発生防止効果が高い。成分(E)の含有比率が10質量%以下であると、透明性を高く保持することができる点で有利である。
中でも、ベタツキ防止及び透明性の観点から、成分(E)の含有比率は、前記成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、1〜3質量部の範囲が好ましい。
【0054】
(F)スリップ剤
本発明のシーラント材は、スリップ剤の少なくとも一種(成分(F))を含有することが好ましい。スリップ剤を含有することで、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上される。
【0055】
スリップ剤の例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などが挙げられる。
【0056】
本発明においては、シーラント材中における成分(F)を、前記成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で含有することができる。成分(F)の含有比率が0.1質量部以上であるのはスリップ性付与のために実質的に含むことを示し、0.1質量部以上である場合、押出加工等の加工性、離ロール性、フィルム滑り性などが向上する。成分(F)の含有量が5質量%以下であると、逆に滑り過ぎが生じることがない点と、シーラント材の汚染がない点とで有利である。
中でも、加工性、離ロール性、フィルム滑り性の観点から、成分(F)の含有比率は、前記成分(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、0.2〜1質量部の範囲が好ましい。
【0057】
本発明のシーラント材は、上記成分のほか、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、顔料、染料などの添加剤を例示することができる。
【0058】
本発明のシーラント材は、前記成分(A)及び(B)、並びに、必要に応じて配合されることがある前記成分(C)、(D)、(E)、(F)、及びその他添加剤を、それぞれ同時に又は逐次的に混合することにより調製することができる。本発明のシーラント材の調製にあたっては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いることができる。
【0059】
本発明のシーラント材は、押出加工等の加工性、ヒートシール強度を考慮すると、JIS K7210−1999に準拠した190℃、2160g荷重でのメルトフローレート(MFR;以下同じ)が1〜100g/10分であるものが好ましく、特には3〜50g/10分のものが好ましい。
【0060】
本発明のシーラント材は、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープ(特にポリカーボネート製のキャリアテープ)に用いられ、該キャリアテープの上に重ねてヒートシール等により接着することで、例えばICチップを収納した収納部を閉塞して保管、運搬が可能である。
【0061】
本発明のシーラント材は、あらかじめキャスト法やインフレーション法によりフィルム化し、ドライラミネーション法によりポリカーボネートを含ませたキャリアテープと貼り合わせる方法などにより用いることができる。
【0062】
次に、本発明のカバーテープ及びこれを用いた電子部品搬送用包装体について詳述する。
【0063】
本発明のカバーテープは、ポリカーボネートを含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープにヒートシールして用いられるものであり、基材と、該基材上に有する前記本発明のシーラント材を含む層(以下、「シーラント層」ともいう。)とを設けて構成されている。
本発明のカバーテープは、本発明のシーラント材を用いて構成されるので、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとの接着力に優れ、高温・高湿下でのエージングによる該接着力の低下が抑制される。更に、本発明のカバーテープは、剥離時のピール性に優れ、すなわちジッピングを抑制しながらスムーズに剥離できるので、キャリアテープ内に収容された電子部品が躍り上がってこぼれたり位置が変わったりすることを抑制でき、また、剥離帯電に基づく静電気による静電気敏感性デバイスへの悪影響を抑制できる。
【0064】
また、本発明のカバーテープが適用できる電子部品搬送用キャリアテープには、前述のポリカーボネートを含ませて作製されたもの以外に、スチレン系樹脂を含ませたものや紙で作製されたものにも適用可能である。
【0065】
シーラント層の厚みとしては、3〜50μmとすることが好ましい。厚みが前記範囲内であると、良好なヒートシール性が得られる。
【0066】
基材としては、特に制限はなく、紙、アルミニウム、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどが挙げられる。これらの基材は、単層構造のみならず、2層以上の積層構造であってもよい。
【0067】
本発明の電子部品搬送用包装体は、ポリカーボネートを含ませて作製された電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に既述の本発明のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープとを備えている。
本発明の電子部品搬送用包装体は、本発明のシーラント材を用いて構成されるので、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープで求められている短時間の接着条件でも、該キャリアテープとカバーテープとの接着力に優れ、高温・高湿下でのエージングによる該接着力の低下が抑制される。更に、本発明の電子部品搬送用包装体は、キャリアテープとカバーテープとを剥離する際のピール性に優れ、すなわちジッピングを抑制しながらスムーズに剥離できるので、キャリアテープ内に収容された電子部品が躍り上がってこぼれたり位置が変わったりすることを抑制でき、また、剥離帯電に基づく静電気による静電気敏感性デバイスへの悪影響を抑制できる。
【0068】
電子部品搬送用キャリアテープは、部品組立用の機械(実装機)にセットされて、マイクロチップ等の電子部品を埋め込んで保管、運搬等し、その後は所望に応じて取り出すことができる長尺に形成されたものである。
【0069】
電子部品搬送用包装体は、電子部品搬送用キャリアテープとカバーテープを用い、電子部品搬送用キャリアテープの電子部品(例:ICチップや静電気敏感性デバイス)が収容される収容部が開口する開口面の上に、カバーテープをそのシーラント層が開口面に向くように重ね、カバーテープの上からヒートシールすることにより作製される。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0071】
〔実施例1〜4、比較例1〜3〕
−シーラント組成物の調製−
下記表1に示す組成となるように、各成分を65mmφ単軸押出機(ナカタニ機械(株)製)に投入し、樹脂温度160℃にて溶融混練してシーラント組成物を調製した。
【0072】
−評価フィルムの作製−
次に、厚み12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)と厚み20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)とを押出成形により重ねて押し出し、重層ラミネートされた2層構造の延伸PET/LDPE積層フィルムを用意した。
この延伸PET/LDPE積層フィルムのLDPE面に、上記で調製したシーラント組成物を、40mmφTダイ成形機(ナカタニ機械(株)製)を用いて押出ラミネートにより厚み20μmにて押し出して積層し、シーラント層/LDPE/延伸PETの積層構造を有する評価フィルムを作製した。
上記押出ラミネートは、樹脂温度220℃、加工速度30m/minの条件下で行なった。
【0073】
−積層サンプルの作製−
上記とは別に、被着体としてポリカーボネートキャリアテープ(台湾キャリアテープエンタープライズ(株)製)を準備した。
このポリカーボネートキャリアテープ(以下、「PCキャリアテープ」ともいう)の上に、上記で作製した評価フィルムをそのシーラント層がPCキャリアテープと向き合うように重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて下記条件にてヒートシールし、積層サンプルとした。
<条件>
・ヒートシーラー:テスター産業(株)製
・ヒートシール温度:150℃及び180℃の2条件
・ヒートシール圧力:0.3MPa
・ヒートシール時間:0.3秒
・ヒートシールバー及びヒートシール箇所:0.5mm幅×300mm長のヒートシールバーを2本並べ、ヒートシール箇所を幅1mm×300mm長とした。
【0074】
−評価−
作製した積層サンプルを下記条件a又は下記条件bにて保管し、保管後のサンプルについて、下記のように測定、評価を行った。
測定及び評価の結果は下記表2及び表3に示す。
(条件a)23℃、50%RHの室内に1日間静置
(条件b)60℃、90%RHの恒温恒湿槽内に7日間静置(エージング)後、23℃、50%RHの室内に1日間静置
【0075】
[剥離強度(ヒートシール強度)]
前記条件a又は条件bでの保管後のサンプルについて、剥離強度テスターVG−35(Vanguard社製)を用い、下記の剥離条件にて、被着体であるPCキャリアテープから評価フィルムを剥離し(即ち、上記ヒートシール箇所を剥離し)、剥離時における剥離強度を測定した。
上記ヒートシール箇所における剥離強度の平均値を、処理a又は処理bでの保管後の剥離強度とし、得られた剥離強度を表2又は表3に示した。また、その際、条件bでの保管後のサンプルについて、評価フィルム剥離時のジッピングの有無についても確認した。
<剥離条件>
・剥離速度:300mm/min
・剥離角度:165°〜180°(引き剥がすときの評価フィルムと引き出す方向との角度)
・剥離方向:長手方向に剥離
【0076】
[エージングによる剥離強度の変化率]
下記式(2)に従い、エージングによる剥離強度の変化率を求めた。
【0077】
エージングによる剥離強度の変化率(%)
=((条件bでの保管後の剥離強度−条件aでの保管後の剥離強度)/条件aでの保管後の剥離強度)×100 … 式(2)
【0078】
[剥離強度差]
上記条件bでの保管後のサンプルについての剥離強度の測定において、ヒートシール箇所における最大剥離強度と最小剥離強度との差を求め、剥離強度差とした。
この剥離強度差が小さい程(30g/mm未満)、剥離時のピール性(剥離感)に優れている。
この剥離強度差が大きい程、剥離時のピール性(剥離感)に劣り、ジッピングが発生する傾向がある。
【0079】
【表1】

【0080】
−表1の説明−
・MFR: JIS K7210−1999に準拠して測定された190℃、2160g荷重でのメルトフローレート(単位:g/10分)
・EMA :エチレン・アクリル酸メチル共重合体(アクリル酸メチル(MA)に由来する構造単位の含有量2.8モル%、融点101℃(式(1)による融点範囲98.6〜116.6℃))
・EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体1(酢酸ビニル(VA)に由来する構造単位の含有量16質量%)
・EVA2:エチレン・酢酸ビニル共重合体2(酢酸ビニル(VA)に由来する構造単位の含有量10質量%)
・EBR: エチレン・ブテン共重合体(タフマーA4085、三井化学(株)製)
・エチレンヘキセン共重合体: エボリューSP0540、(株)プライムポリマー製
・水素化石油樹脂: 水素化芳香族炭化水素樹脂(アルコンAM1、荒川化学(株)製)
・テルペンフェノール樹脂: YSポリスター T145 ヤスハラケミカル(株)製
・軟化温度: 環球法軟化点
・AB剤: アンチブロッキング剤(シルトンJC−50(珪酸アルミニウム)、水澤化学(株)製)
・ELA: エルカ酸アミド
・PEG4000: ポリエチレグリコール(日油(株)製)
【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
表2及び表3に示すように、実施例1〜4では、剥離強度(接着力)が高く、高温・高湿度下でエージングを行ったときの剥離強度(接着力)の低下が抑制されていた。更に、実施例1〜4では、剥離強度差が小さいことから、剥離時のピール性(剥離感)に優れていることが確認された。
一方、成分(B)を含有しない比較例1では、剥離強度が低かった。
また、成分(A)のみで構成された比較例2でも剥離強度が低かった。
また、成分(A)を含有しない比較例3では、高温・高湿度下でエージングを行ったときの剥離強度が低下した。更に、比較例3では、剥離強度差が大きく、剥離時のピール性(剥離感)が低下していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに用いられ、
(A)エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、
(B)粘着付与剤と、
を少なくとも含み、
前記(A)、前記(B)、(C)エチレン・酢酸ビニル共重合体、及び(D)エチレン・α−オレフィン共重合エラストマーの含有比率が、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対して、それぞれ25〜95質量部、3〜20質量部、0〜70質量部、及び0〜70質量部であるシーラント材。
【請求項2】
更に、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜10質量部の(E)アンチブロッキング剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のシーラント材。
【請求項3】
更に、前記(A)〜(D)の合計量100質量部に対する含有比率が0.1〜5質量部の(F)スリップ剤を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシーラント材。
【請求項4】
基材上に、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープに熱接着して用いられるカバーテープ。
【請求項5】
ポリカーボネートを含ませた電子部品搬送用キャリアテープと、基材上に請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシーラント材を含む層を有し、前記電子部品搬送用キャリアテープに熱接着されるカバーテープと、を備えた電子部品搬送用包装体。

【公開番号】特開2012−188133(P2012−188133A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51967(P2011−51967)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】