説明

シールド導電路の製造方法、シールド導電路の製造装置、及びシールド導電路

【課題】放熱性を効果的に高めることができると共にコルゲートチューブの凸部形状が崩れにくいシールド導電路等を提供する。
【解決手段】シールド導電路1は、例えば電気自動車においてインバータ装置やモータなどの機器間を接続するものであり、複数の電線30と、これら複数の電線30を一括して包囲する編組線20と、複数の電線30及び編組線20を包囲するコルゲートチューブ10とを備えている。さらに、コルゲートチューブ10の凸部11の頂部には当該コルゲートチューブ10の内外に連通する溶融孔13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド導電路の製造方法、シールド導電路の製造装置、及びシールド導電路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車においてインバータ装置やモータなどの機器間を接続する場合、シールド機能を備えた導電路(以下、シールド導電路ともいう)が用いられる。この種の導電路としては、複数の電線を編組からなるシールド部材によって一括して包囲するいわゆる一括シールドタイプのものが提供されており、さらには、特許文献1のように、そのシールド部材を保護するために、可撓性を有する蛇腹状のコルゲートチューブを被せた構成が採用されている。このように編組線の周囲をコルゲートチューブによって被覆すれば、編組線を効果的に保護できると共に、導電路全体を可撓性を有する構成とすることができる。
【特許文献1】特開2004−172476公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のように電線をコルゲートチューブで包囲する構成の場合、電線の発熱に対する放熱性が問題となる。即ち、電線の外周とコルゲートチューブの内壁との間には熱伝導性の低い空気層が介在するためこの空気層が外部への放熱を阻害し、高温空気の滞留によりコルゲートチューブ内部が高温化する虞がある。これを抑制するには、電線の導体サイズを大きくする方法が考えられるが、この場合、導電路全体の大型化が避けられない。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、放熱性を効果的に高めることができると共にコルゲートチューブの凸部形状が崩れにくいシールド導電路、シールド導電路の製造方法、及びシールド導電路の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、
複数の電線と、前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、凹部と凸部が交互に配されてなるコルゲートチューブと、を有し、前記複数の電線の周囲に配される前記編組線の外側を前記コルゲートチューブによって包囲してなるシールド導電路の製造方法であって、
前記コルゲートチューブにおける前記凸部の頂部を溶融手段によって溶融させ、当該コルゲートチューブ内外に連通する溶融孔を形成する溶融孔形成工程と、
前記複数の導線及び前記編組線を前記コルゲートチューブの内部に配置する配置工程と、
を含むことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシールド導電路の製造方法において、
前記溶融孔形成工程は、前記凸部の前記頂部に対して加熱した針部材を刺し通すことで前記溶融孔を形成することを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載のシールド導電路の製造方法において、
前記コルゲートチューブは、前記凸部の前記頂部が円筒状に形成されるものであり、
前記溶融孔形成工程は、前記頂部の円筒領域内に収まるように前記針部材を刺し通し、前記頂部領域内に収まる前記溶融孔を形成することを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載のシールド導電路の製造方法において、
前記溶融孔形成工程は、前記針部材を前記コルゲートチューブの径方向に沿って移動させて前記凸部の頂部を刺し通すことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のシールド導電路の製造方法において、
前記溶融孔形成工程は、係合部材を前記コルゲートチューブの外周部に係合させて位置決めし、前記係合部材に設けられた移動方向規制手段に従い、前記針部材を前記係合部材に対して所定方向に相対移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、
複数の電線と、前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、凹部と凸部が交互に配されてなるコルゲートチューブと、を有し、前記複数の電線と、前記編組線とを前記コルゲートチューブによって包囲してなるシールド導電路の製造装置であって、
前記コルゲートチューブにおける前記凸部の頂部を溶融させ、当該コルゲートチューブ内外に連通する溶融孔を形成する溶融孔形成手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記溶融孔形成手段は、
前記コルゲートチューブを刺し通す針部材と、
前記針部材を加熱する加熱手段と、
を有することを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記コルゲートチューブは、前記凸部の頂部が円筒状に形成されるものであり、前記溶融孔形成手段は、前記針部材を前記頂部の円筒領域内に収まるように案内する案内手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記案内手段は、前記針部材を前記コルゲートチューブの径方向に沿って移動させるように案内することを特徴とする。
【0014】
請求項10の発明は、請求項9に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記案内手段は、
前記コルゲートチューブに係合する係合部材と、
前記係合部材に対する前記針部材の移動方向を規制する移動方向規制手段と、
を有することを特徴とする。
【0015】
請求項11の発明は、請求項10に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記移動方向規制手段は、前記係合部材に形成された前記針部材をガイドするガイド孔であることを特徴とする。
【0016】
請求項12の発明は、請求項11に記載のシールド導電路の製造装置において、
前記係合部材には、複数の前記針部材をガイドする複数の前記ガイド孔が、前記凸部のピッチに対応するピッチで形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項13の発明は、
複数の電線と、
前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、
外周部に凹部と凸部とが交互に配された構成をなし、前記複数の電線と前記編組線とを包囲するコルゲートチューブと、
を備え、
前記凸部は頂部が円筒状に構成されており、前記頂部の円筒領域内に収まるように、貫通孔が形成されていることを特徴とする路。
【0018】
請求項14の発明は、請求項13記載のシールド導電路において、
前記貫通孔は、前記コルゲートチューブを溶融させてなる溶融孔であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
<請求項1, 6の発明>
請求項1,6の発明によれば、放熱性に優れたシールド導電路を好適に製造できる。特に、コルゲートチューブの凸部の頂部を溶融させて溶融孔を形成する方法を用いているため、打ち抜きなどと比較して凸部をそれほど変形させずに簡易かつ良好に孔を形成できる。また頂部を溶融させているため溶融工程が行いやすく、その上、孔形成後の製品を、凸部形状が崩れにくい構成とすることができる。
【0020】
<請求項2,7の発明>
請求項2,7の発明によれば、複雑な構成や高価な構成を用いることなく簡易かつ良好に溶融孔を形成できる。
【0021】
<請求項3,8の発明>
請求項3,8の発明によれば、頂部の円筒領域内に収まるように溶融孔を形成することができる。また、頂部領域を溶融させて溶融孔を形成しているため、凸部の形状を崩すことなく簡易に孔を形成でき、かつ孔形成後の製品も凸部形状が崩れにくい構成となる。
【0022】
<請求項4,9の発明>
請求項4,9の発明によれば、頂部の円筒領域の所定位置に精度高く溶融孔を形成できる。
【0023】
<請求項5,10の発明>
請求項5,10の発明によれば、針部材とコルゲートチューブとの位置関係を適切に保った上で針部材を移動させることができるため、溶融孔を所定位置に精度高く形成できる。
【0024】
<請求項11の発明>
請求項11の発明によれば、針部材の移動方向を規制する構成を簡易かつ安価に実現できる。
【0025】
<請求項12の発明>
請求項12の発明によれば、複数の凸部に溶融孔を迅速に形成できるため、製造時間短縮に有利となる。
【0026】
<請求項13の発明>
請求項13の発明によれば、コルゲートチューブ内の放熱性を効果的に高めることができ、かつコルゲートチューブの凸部形状が崩れにくい構成となる。
【0027】
<請求項14の発明>
請求項14の発明によれば、コルゲートチューブ内の放熱性を効果的に高めることができ、かつコルゲートチューブの凸部形状が崩れにくい好適例となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図面を参照して説明する。
1.全体構成
図1は、本発明の実施形態1に係るシールド導電路1を例示する側断面概略図であり、図2は、図1を部分的に拡大した拡大図である。また、図3は、図1のA−A断面図、図4は、図1のB−B断面図である。また、図5は、シールド導電路の製造装置の要部を説明する説明図である。
【0029】
図1に示すように、シールド導電路1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などにおいてインバータ装置やモータなどの機器間を接続するものであり、複数の電線30と、これら複数の電線30を一括して包囲する編組線20と、複数の電線30及び編組線20を包囲するコルゲートチューブ10とを備えている。
【0030】
図1ないし図4に示すように、電線30は、金属製(例えば、アルミニウム合金や銅合金など)の芯線31の外周を合成樹脂製の絶縁被覆32で包囲したノンシールドタイプの電線からなり、芯線31は、複数本の細線(図示せず)を螺旋状に寄り合わせた撚り線、又は棒状の単芯線からなる。図2、図3に示すように、電線30の断面形状については芯線31と絶縁被覆32の双方が真円形とされている。また、絶縁被覆32の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられている。
【0031】
なお、各電線30の端末部には、図示しない電線側端子を接続することができる。電線側端子は、例えば略前半部分を、前後方向に長い平板状をなすとともにボルト孔の形成された機器接続部とし、略後半部分を、いわゆるオープンバレル状の電線接続部として構成することができる。
【0032】
シールド部材として構成される編組線20は、金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状のものであって、3本の電線30を一括して包囲している。この編組線20は、金属細線の有する可撓性により、径方向における伸縮及び長さ方向における伸縮が可能となっている。
【0033】
コルゲートチューブ36は、合成樹脂製であって、半径方向に張り出すと共に周方向に沿って配される凸部11と、周方向の凹部12とが交互に連続する蛇腹状の形態とされており、各凸部11及び各凹部12は、それぞれ独立して配されている。また、コルゲートチューブ10の外面10Aは外気(空気)に晒されている。即ち、コルゲートチューブ10の外側にテープ等の被覆部材が配されておらず、凸部11の外面及び凹部12の外面が共に外気(空気)に晒され、放熱性が高められている。
【0034】
上述したようにコルゲートチューブ10は、外周部に凹部と凸部とが交互に配された構成をなしており、本実施形態では凸部11の頂部11Aにおいて、コルゲートチューブ10の内外に連通した溶融孔(貫通孔)13が形成されている。より詳しくは、図1〜図3、図5に示すように、凸部11は頂部11Aが円筒状に構成されており、図2,図5に示すように、この頂部11の円筒領域内に収まるように、円形の開口を有する溶融孔13が形成されている。即ち、図2に示すように、溶融孔13の径D1は、円筒状とされる頂部領域11Aの幅W1よりも小さくなっており、溶融孔13が凸部11の側壁部11B(換言すれば、凹部12の内壁部)にまで至らないようになっている。
【0035】
なお、溶融孔13は、全ての凸部11に形成されており、各凸部11には、それぞれ4つの溶融孔13が形成されている。4つの溶融孔13は、各凸部11において、コルゲートチューブ10の中心線Gを挟んだ対象位置に配される2組のペア(13A及び13Bのペアと、13C及び13Dのペア)によって構成されている。各溶融孔13は、中心線Gを中心として90°ずつ回転した位置にそれぞれ配置されている。
【0036】
このように溶融孔13が形成されているため、コルゲートチューブ10内の放熱性を効果的に高めることができ、かつ頂部11Aに形成されているため、コルゲートチューブ10の凸部形状が崩れにくい構成となる。即ち、コルゲートチューブ10を屈曲させたとしても座屈などが生じにくく、形状が安定的に保持され、劣化等が生じにくい構成となる。特に、溶融孔13が頂部11Aの頂部領域(円筒状部分の領域)に収まっているため、その効果は一層高いものとなっている。
【0037】
2.製造方法
次に、シールド導電路1の製造方法について説明する。なお、図5は、シールド導電路1を製造する製造装置100を説明する説明図であり、図6は、図5の要部を拡大して説明する説明図である。
【0038】
製造装置100は、上記のようなシールド導電路1を製造するための装置であり、図5、図6に示す溶融孔形成装置60と、図示しない配置装置とを有している。
【0039】
当該製造装置100に組み込まれる溶融孔形成装置60は、溶融孔形成手段の一例に相当するものであり、コルゲートチューブ10に溶融孔13を形成する溶融孔形成工程を行う装置である。この溶融孔形成工程では、コルゲートチューブ10における凸部11の頂部11Aを後述する溶融装置102によって溶融させ、当該コルゲートチューブ10内外に連通する溶融孔13を形成する。
【0040】
溶融孔形成装置60は、コルゲートチューブ10を刺し通す金属材料などからなる針部材61と、針部材61を加熱する加熱手段(例えば、ニクロム線やPTC素子などの各種発熱材料(通電に応じて発熱する材料)によって構成されるヒータ)を有している。針部材61は、可撓性を有する連結部材66によって連結されている。この連結部材66は、例えば金属材料、樹脂材料などによって構成できる。樹脂材料によって構成する場合には針部材61の発熱によって当該連結部材が溶融しないように連結部材66と針部材61の間に断熱部材を介在させるとよい。
【0041】
加熱手段は、例えばニクロム線によって加熱手段を構成した場合、複数の針部材61にニクロム線を接続するようにすれば容易に針部材61を加熱できるようになる。この場合、後述する係合部材61ごとに加熱手段を設け、コルゲートチューブ10に係合する係合部材61に対応する針部材61のみを加熱するように構成すれば、効率的な加熱が可能となる。なお、針部材61は、コルゲートチューブ10を構成する樹脂材料の融点以上に加熱すると良い。
【0042】
図5、図6に示すように、上記のように構成される溶融孔形成装置60を用い溶融孔形成工程では、凸部11の頂部11Aに対して加熱した針部材を刺し通すことで溶融孔13を形成する。なお、本実施形態では、コルゲートチューブ10を挟んで左右対称位置に溶融孔形成装置60が設けられ、同様の溶融孔形成装置60が図示しない上下対称位置にも設けられた例を示している。なお、このようにせずに、左右一対或いは上下一対で配される溶融孔形成装置60を用い、一対の溶融孔13をそれぞれ形成してからコルゲートチューブ10を回転させ別位置に溶融孔13を形成するようにしてもよい。或いは、一つの溶融孔形成装置60によって一列に溶融孔13を形成し、順次コルゲートチューブ10を回転させて溶融孔13を複数列形成するようにしてもよい。
【0043】
また、コルゲートチューブ10は、凸部11の頂部11Aが略円筒状に形成されるものであり、溶融孔形成装置60、針部材61を前記頂部の円筒領域内に収まるように案内する係合部材62及びガイド孔67を備えている。係合部材62とガイド孔67は案内手段の一例に相当するものであり。更に詳しくは、針部材61をコルゲートチューブ10の径方向に沿って移動させるように案内し、針部材61をコルゲートチューブ10の径方向に沿って移動させて凸部11の頂部11Aを刺し通す。
【0044】
各係合部材62は、突出部62Aと、ガイド孔67が形成される窪み部分62Bとを有しており、突出部62Aを凹部12に嵌め込むことでコルゲートチューブ10と係合するようになっている。
【0045】
ガイド孔67は、移動方向規制手段の一例に相当するものであり、係合部材62において、頂部11Aと対向する位置に開口するように形成され、針部材61を頂部11Aに至るまでガイドする構成をなしている。また、各係合部材62には、複数(本実施形態では3つ)の針部材61をガイドする複数のガイド孔67が、凸部11のピッチに対応するピッチで形成されている。
【0046】
溶融孔形成装置60は、このように形成される係合部材62をコルゲートチューブ10の外周部に係合させて位置決めし、係合部材62に設けられたガイド孔67に従い、針部材61を係合部材62に対して所定方向に相対移動させる。より具体的には、図6に示すようにコルゲートチューブ10に係合部材61が係合した状態で、これらが押出部材64に対して相対的に移動する。
【0047】
針部材62は、押出部材64とは離れた位置ではコルゲートチューブ10とは反対側に付勢されている(例えば、ばねや樹脂材料などの付勢手段或いは連結部材66などによって各針部材61がコルゲートチューブ10とは反対側に付勢され、各針部材62の先端部がガイド孔67から突出しない位置で位置保持されている)。そして、図6のように針部材61が押出部材64に沿って通過する位置では、この押出部材64のガイドにより当該針部材61がコルゲートチューブ10側に押し出される。すると、加熱された針部材61がガイド孔67よりも飛び出してコルゲートチューブ10における凸部11の頂部11Aを刺し通し、溶融孔13が形成される。
【0048】
なお、複数の係合部材62は、図示しない連結手段によって例えば環状に連結されており、図示しない駆動手段によって駆動される構成をなしている。駆動手段はコルゲートチューブ10の移動に伴い、係合部材62が連結されたユニットをキャタピラー状に回転させて、各係合部材62を順次コルゲートチューブ10に係合させる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る製造方法及び製造装置100を用いれば、放熱性に優れたシールド導電路1を好適に製造できる。特に、コルゲートチューブ10の凸部11の頂部11Aを溶融させて溶融孔13を形成する方法を用いているため、凸部11をそれほど変形させずに簡易かつ良好に孔を形成できる。また頂部11Aを溶融させているため、孔形成後の製品は、凸部形状が崩れにくい構成となる。
【0050】
また、溶融手段を、針部材61及び加熱手段によって実現しているため、複雑な構成や高価な構成を用いることなく簡易かつ良好に溶融孔13を形成できる。
【0051】
また、頂部11Aの円筒領域内に収まるように溶融孔13を形成しているため、凸部11の形状を崩すことなく簡易に孔を形成でき、かつ孔形成後の製品も凸部形状が崩れにくく、劣化しにくい構成となる。
【0052】
さらに、コルゲートチューブ10の径方向に針部材61を移動させて頂部11Aの円筒領域を刺し通しているため、針部材61が円筒領域に対してずれにくく、頂部11Aの円筒領域の所定位置に精度高く溶融孔13を形成できる。
【0053】
さらに、係合部材62をコルゲートチューブ10に係合させ、針部材61とコルゲートチューブ10との位置関係を適切に保った上で針部材61を移動させているため、溶融孔13を所定位置により精度高く形成できる。
【0054】
また、針部材61の移動方向を規制する構成を簡易かつ安価に実現でき、さらには、複数の凸部11に溶融孔13を迅速に形成できるようにもなるため、製造時間短縮に極めて有利となる。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)上記実施形態ではコルゲートチューブ10を、独立した周方向の凸部11と独立した周方向の凹部12が交互に連続する蛇腹状の形態としたが、例えば凸部及び凹部がそれぞれ螺旋状に構成されるようなものであってもよい。
(2)上記実施形態では、1本のコルゲートチューブ10に挿通される導体の本数は3本としたが、発明によれば、1本のコルゲートチューブ10に保持される導体の本数は1本、2本、4本以上のいずれとしてもよい。
(3)複数の電線30を、保持体(例えば、コルゲートチューブ10の長手方向全体に亘って電線30を一括して包囲する外装体など)によって包囲してもよい。
(4)上記実施形態では、編組線20の内外を空気層としていたが、例えば編組線20の内部に樹脂材料を充填してもよく、編組線20の付近に樹脂材料からなる樹脂層を配してもよい。
(5)上記実施形態では、各凸部11に4つの溶融孔13を形成した例を示したが、各凸部11に1つのみとしてもよく、各凸部11に2つ、3つ或いは5以上としてもよい。
(6)上記実施形態では、各凸部11において、周方向全体に亘り均等間隔に溶融孔13を配置したが、周方向全体のうちいずれか半分の領域のみに溶融孔を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態1に係るシールド導電路を例示する側断面概略図
【図2】図1の一部を拡大した拡大図
【図3】図1のA−A断面図
【図4】図1のB−B断面図
【図5】シールド導電路の製造装置の要部を説明する説明図
【図6】図5を部分的に拡大して説明する説明図
【符号の説明】
【0058】
1…シールド導電路
10…コルゲートチューブ
11…凸部
11A…頂部
12…凹部
13…溶融孔
20…編組線
30…電線
60…溶融孔形成装置
61…針部材
62…係合部材(案内手段)
67…ガイド孔(移動方向規制手段)
100…シールド導電路の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、凹部と凸部が交互に配されてなるコルゲートチューブと、を有し、前記複数の電線の周囲に配される前記編組線の外側を前記コルゲートチューブによって包囲してなるシールド導電路の製造方法であって、
前記コルゲートチューブにおける前記凸部の頂部を溶融手段によって溶融させ、当該コルゲートチューブ内外に連通する溶融孔を形成する溶融孔形成工程と、
前記複数の導線及び前記編組線を前記コルゲートチューブの内部に配置する配置工程と、
を含むことを特徴とするシールド導電路の製造方法。
【請求項2】
前記溶融孔形成工程は、前記凸部の前記頂部に対して加熱した針部材を刺し通すことで前記溶融孔を形成することを特徴とする請求項1に記載のシールド導電路の製造方法。
【請求項3】
前記コルゲートチューブは、前記凸部の前記頂部が略円筒状に形成されるものであり、
前記溶融孔形成工程は、前記頂部の円筒領域内に収まるサイズの前記針部材を刺し通し、前記頂部領域内に収まる前記溶融孔を形成することを特徴とする請求項2に記載のシールド導電路の製造方法。
【請求項4】
前記溶融孔形成工程は、前記針部材を前記コルゲートチューブの径方向に沿って移動させて前記凸部の頂部を刺し通すことを特徴とする請求項3に記載のシールド導電路の製造方法。
【請求項5】
前記溶融孔形成工程は、係合部材を前記コルゲートチューブの外周部に係合させて位置決めし、前記係合部材に設けられた移動方向規制手段に従い、前記針部材を前記係合部材に対して所定方向に相対移動させることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のシールド導電路の製造方法。
【請求項6】
複数の電線と、前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、凹部と凸部が交互に配されてなるコルゲートチューブと、を有し、前記複数の電線と、前記編組線とを前記コルゲートチューブによって包囲してなるシールド導電路の製造装置であって、
前記コルゲートチューブにおける前記凸部の頂部を溶融させ、当該コルゲートチューブ内外に連通する溶融孔を形成する溶融孔形成手段を備えたことを特徴とするシールド導電路の製造装置。
【請求項7】
前記溶融孔形成手段は、
前記コルゲートチューブを刺し通す針部材と、
前記針部材を加熱する加熱手段と、
を有することを特徴とする請求項6に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項8】
前記コルゲートチューブは、前記凸部の頂部が円筒状に形成されるものであり、
前記溶融孔形成手段は、前記針部材を前記頂部の円筒領域内に収まるように案内する案内手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項9】
前記案内手段は、前記針部材を前記コルゲートチューブの径方向に沿って移動させるように案内することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項10】
前記案内手段は、
前記コルゲートチューブに係合する係合部材と、
前記係合部材に対する前記針部材の移動方向を規制する移動方向規制手段と、
を有することを特徴とする請求項9に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項11】
前記移動方向規制手段は、前記係合部材に形成された前記針部材をガイドするガイド孔であることを特徴とする請求項10に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項12】
前記係合部材には、複数の前記針部材をガイドする複数の前記ガイド孔が、前記凸部のピッチに対応するピッチで形成されていることを特徴とする請求項11に記載のシールド導電路の製造装置。
【請求項13】
複数の電線と、
前記複数の電線を一括して包囲する編組線と、
外周部に凹部と凸部とが交互に配された構成をなし、前記複数の電線と前記編組線とを包囲するコルゲートチューブと、
を備え、
前記凸部は頂部が円筒状に構成されており、前記頂部の円筒領域内に収まるように、貫通孔が形成されていることを特徴とするシールド導電路。
【請求項14】
前記貫通孔は、前記コルゲートチューブを溶融させてなる溶融孔であることを特徴とする請求項13記載のシールド導電路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−71525(P2008−71525A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246874(P2006−246874)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】