説明

シールド接続構造およびシールド接続方法

【課題】シールドシェルにシールド電線のシールド編組を接続するシールド接続について、より信頼性の高い接続をなせるようにし、しかも接続構造の寸法増大を招かずに済み、さらにシールド接続の作業性を高めることができるようにする。
【解決手段】円筒状の接続受け部5が設けられたシールドシェル1に対し接続受け部を介してシールド電線のシールド編組8をその端末部11で接続するについて、シールド編組の端末部を接続受け部に覆い被せるとともに、帯状の加締部材12を接続受け部に被覆の端末部に沿ってリング状に曲げることで形成される加締リング13により接続受け部に被覆の端末部を加締めるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタにおけるシールドシェルにシールド電線のシールド編組をその端末部で接続するシールド接続に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド電線をシールドコネクタに接続するについてはシールド電線のシールド編組をシールドコネクタにおけるシールドシェルに接続する。この場合、シールド編組の電磁遮蔽機能を安定的に発揮させるために、シールド編組のシールドシェルに対する接続について高い信頼性が求められる。こうした要求に応える技術として、例えば特許文献1や特許文献2に開示のシールド接続技術が知られている。これらのシールド接続技術は、いずれも、シールドシェルに設けられる円筒状の接続受け部を介してシールドシェルにシールド編組をその端末部で接続する場合である。
【0003】
特許文献1では、シールドシェルに設ける円筒状の接続部材(接続受け部)をカシメ側半筒体と受け側半筒体で形成し、カシメ側半筒体の端縁部をカシメ部とする一方で、受け側半筒体の端縁部を歯状縁部とする。そしてこうした接続部材を介してシールドシェルにシールド電線のシールド層(シールド編組)を接続するについて、歯状縁部を外側からシールド層の編組線の隙間に貫通させてシールド層の内面に沿うように進入させ、またカシメ部をシールド層の外面側から歯状縁部と対応するように宛がってシールド層にカシメ付けるようにしている。このようなシールド接続技術によれば、シールド層を歯状縁部とカシメ部の間で挟圧することになるので、樹脂製のコアがへたってもシールド層の歯状縁部とカシメ部への密接状態が保たれ、接続の信頼性を高めることができる。
【0004】
特許文献2のでは、円筒状の嵌め合い部(接続受け部)が設けられた接続端子を介してシールド編組のシールドシェルへの接続を行うようにしている。具体的には、接続端子の嵌め合い部をシールド電線のシールド編組と絶縁内皮の間に嵌入させる。つまりシールド編組の端末部を嵌め合い部に覆い被せる。そしてその状態で加締スリーブを嵌め込んで被せてから加締スリーブの外側から均一的に加締めることでシールド編組を嵌め合い部に密接させる。このようなシールド接続技術によれば、加締スリーブを介した加締めによりシールド編組を嵌め合い部に対して均一的に密接させることができ、接続の信頼性を高めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平11−121052号公報
【特許文献2】特開2000−268924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1や特許文献2のシールド接続技術は、いずれも接続の信頼性を高めるという点ではそれなり有効であるものの、必ずしも十分とはいえない。例えば特許文献1のシールド接続技術では、接続部材へのシールド編組の高い密接状態が得られるのは歯状縁部とカシメ部で挟圧されている部分だけであり、経時的に接続性が不安定になる可能性を残す。また特許文献1のシールド接続技術は、カシメ側半筒体のカシメ部と受け側半筒体の歯状縁部に重なりを必要とし、そのために接続構造の寸法が大きくなるという問題を抱えている。さらに特許文献1のシールド接続技術は、受け側半筒体の歯状縁部をシールド層に貫通させるようにセットするという煩雑な作業を必要とし、そのために作業性に難があるという問題も抱えている。
【0007】
一方、特許文献2のシールド接続技術には、加締スリーブの寸法に関する問題がある。すなわちシールド接続の作業性を高めるには、シールド編組の端末部を覆い被せた嵌め合い部に加締スリーブを嵌め込み易くする必要があり、そのためには加締スリーブの径に余裕を持たせる必要があるが、そのようにすると、加締スリーブを介してシールド編組を加締める際に加締スリーブに大きな縮径を生じ、これに伴って加締スリーブに屈曲部分を生じ、その屈曲部分により接続構造の寸法が大きくなる。一方、こうした接続構造の寸法増大を避けるために加締スリーブの径をタイトにすると、嵌め込み抵抗が大きくなって作業性が低下することになる。
【0008】
本発明は、以上のような事情を背景になされてものであり、その課題は、より信頼性の高いシールド接続をなすことができ、しかも接続構造の寸法増大を招くようなことがなく、さらにシールド接続の作業性に優れるシールド接続構造およびシールド接続方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決するために、円筒状の接続受け部が設けられたシールドシェルに対し前記接続受け部を介してシールド電線のシールド編組をその端末部で接続するシールド接続構造において、前記シールド編組の端末部は、前記接続受け部に覆い被せられるとともに、帯状の加締部材を前記接続受け部に被覆の前記端末部に沿ってリング状に曲げることで形成される加締リングにより加締められていることを特徴としている。
【0010】
また本発明では、上記課題を解決するために、円筒状の接続受け部が設けられたシールドシェルに対し前記接続受け部を介してシールド電線のシールド編組をその端末部で接続するシールド接続方法において、前記接続受け部に前記シールド編組の端末部を覆い被せた状態とするとともに、この状態で前記端末部を加締リングにより前記接続受け部との間で加締めることで前記シールドシェルに対する前記シールド編組の接続をなすようにされ、かつ前記加締リングは、前記接続受け部の外周長さ程度の長さとされるとともに、前記接続受け部の外周形状に対応する形状の円弧部とこの円弧部から延びる一対の平面部を有した帯状に形成された加締部材をリング状に曲げて形成するようにされ、さらに前記加締は、半円筒形の上側加圧面が形成されたクリンパと同じく半円筒形の下側加圧面が形成されたアンビルにより加圧してなすようにされ、そして前記円弧部を介して前記下側加圧面に前記加締部材が載置された前記アンビルに、前記接続受け部に被覆の前記端末部を当該端末部が前記加締部材の前記円弧部に納まるようにしてセットするセット工程、前記下側加圧面に載置の前記加締部材における前記一対の平面部を前記上側加圧面に摺接させた状態で前記クリンパに加圧動作を行わせることで前記一対の平面部を前記接続受け部に被覆の前記端末部に沿って曲げることにより前記加締リングを形成する加締リング形成工程、および前記加締リング形成工程で形成された加締リングを前記クリンパと前記アンビルにより加圧して加締めることで前記端末部を前記接続受け部に密接させる加締工程を含むことを特徴としている。
【0011】
以上のようなシールド接続構造やシールド接続方法は、加締リングを介して加締めることでシールド編組をシールドシェルの接続受け部に密接させるようにしていることから、シールド編組を接続受け部に対して均一的に密接させることができ、接続の信頼性をより高めることができる。
【0012】
また以上のようなシールド接続構造やシールド接続方法は、帯状の加締部材を接続受け部に被覆の端末部に沿ってリング状に曲げることで加締リングを形成するようにしていることから、上述した特許文献1における重なり部や特許文献2における屈曲部分のような接続構造の寸法増大要因を加締リングに招くことを避けることができるとともに、例えば特許文献2のシールド接続技術のような加締スリーブを用いる場合に必要となる加締スリーブへのシールド編組の先通しを不要とすることができ、作業性を向上させることができる。
【0013】
上記のようなシールド接続構造やシールド接続方法については、加締リングにより加締められた状態の端末部に溶接処理を施すことで、さらに接続の信頼性を高めることができる。こうしたことから本発明では、上記のようなシールド接続構造について、前記シールド編組の端末部は、前記加締リングにより加締められた状態で溶接処理により前記接続受け部に接合するようにすることを好ましい形態とし、また上記のようなシールド接続方法について、前記加締リングで加締られた状態の前記端末部を前記接続受け部に溶接で接合させる溶接工程をさらに含むことを好ましい形態としている。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明によれば、より信頼性の高いシールド接続をなすことができ、しかも接続構造の寸法増大を招かずに済み、さらにシールド接続の作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1に示すのは、一実施形態によるシールド接続構造におけるシールドシェル1とシールド電線2の関係である。
【0016】
シールドシェル1は、円筒状に形成された本体部3を有しており、この本体部3の一端側に縮径用のテーパ部4を介して円筒状の接続受け部5が適切な長さで一体的に形成されている。
【0017】
シールド電線2は、撚り線である芯線6、芯線6を覆うようにして設けられた絶縁内皮7、絶縁内皮7を覆うようにして設けられたシールド編組8、およびシールド編組8を覆うようにして設けられた絶縁外皮9で構成され、そのシールド編組8がシールドシェル1に接続される。
【0018】
シールド編組8のシールドシェル1への接続は、接続受け部5を介してなされる。具体的には、絶縁外皮9を剥ぎ取って露出させたシールド編組8の端末部11を接続部として接続受け部5に覆い被せ、その状態で、加締部材12から形成される加締リング13を介して外周から加締め、さらにその加締状態で溶接処理することにより端末部11を接続受け部5に接合させることでシールドシェル1とシールド編組8のシールド接続を行う。
【0019】
図2に示すのは、以上のようなシールド接続での一過程におけるシールドシェル1の接続受け部5と加締部材12およびシールド編組8の端末部11の関係であり、端末部11を覆い被せた接続受け部5を加締部材12に対しセットした様子を断面状態で示してある。
【0020】
図3に、加締部材12とこれから形成される加締リング13を斜視状態で示す。加締部材12は、図3や図1、図2に見られるように、接続受け部5の外周形状に対応する形状の円弧部14とこの円弧部14から延びる一対の平面部15a、15bを有した帯状に形成され、その長さは接続受け部5の外周長さ程度とされて、その幅は接続受け部5の長さ程度とされている。
【0021】
また加締部材12は、これをリング状に曲げて加締リング13とした際に加締リング13に重なり部が生じるのを避けるための重なり回避構造が与えられている。具体的には、平面部15aの端縁を傾斜させて傾斜縁16aとするとともに、平面部15bの端縁を傾斜縁16aとは逆の向きで傾斜させた傾斜縁16bとし、加締部材12をリング状に曲げた際にこれら傾斜縁16aと傾斜縁16bがスカーフジョイント構造的に当接し合って加締リング13を形成するようにしている。このため加締部材12の長さが接続受け部5の外周長、より具体的には接続受け部5に覆い被さっている端末部11の外周長より長くてもその過剰長さを傾斜縁16aと傾斜縁16bの当接ずれで吸収することができ、また加締時に加締リング13に生じる縮径についてもその縮径分を傾斜縁16aと傾斜縁16bの当接ずれで吸収することができ、したがって加締リング13に重なり部や屈曲部分が生じるのを避けることができる。
【0022】
シールドシェル1とシールド編組8のシールド接続は、上述のように、シールド編組8の端末部11を接続受け部5に覆い被せた状態としてから加締リング13を介して外周から加締め、さらにその加締状態で溶接処理することにより端末部11を接続受け部5に接合させることで行われる。以下では、こうしたシールド接続の詳細について説明する。
【0023】
図4に模式化して示すように、シールド接続処理は、半円筒形の上側加圧面21が形成されたクリンパ(上型)22を備えるとともに、同じく半円筒形で上側加圧面21と対になって円筒形となる下側加圧面23が形成されたアンビル(下型)24を備えたシールド接続装置を用いて行われ、図4の(a)のセット工程、図4の(b)の加締リング形成工程、図4の(c)の加締工程、図4の(d)の溶接工程、および図4の(e)の取出し工程を含む。
【0024】
セット工程では、円弧部14を介して下側加圧面23に加締部材12を載置してあるアンビル24に接続受け部5に被覆の端末部11をセットする。このセットは、端末部11を加締部材12の円弧部14に納まらせるようにして行なう。ここで、加締時の加圧により接続受け部5が潰れるのを防ぐための治具を必要に応じて用いることがある。その治具としては、例えば接続受け部5の内側にぴったり嵌るような中子を用い、これを必要とする場合には、セット工程またはセット工程に先立って接続受け部5の内側に組み込むようにする。
【0025】
加締リング形成工程では、下側加圧面23に載置の加締部材12における平面部15a、15bを上側加圧面21に摺接させた状態でクリンパ22に加圧動作を行わせることで平面部15a、15bを接続受け部5に被覆の端末部11に沿って曲げることにより加締部材12から加締リング13を形成する。
【0026】
加締工程では、加締リング13をクリンパ22とアンビル24により加圧することで端末部11を加締めることにより接続受け部5に密接させる。すなわちクリンパ22による加圧力Pを上側加圧面21と下側加圧面23で加締リング13に加えて端末部11を加締め、これにより端末部11を接続受け部5に密接させる。
【0027】
溶接工程では、加締リング13で加締られた状態の端末部11を接続受け部5に溶接で接合させる。この場合の溶接は、例えば超音波溶接や加熱溶接で行われる。したがって超音波溶接とする場合は、クリンパ22が超音波溶接用の加圧加振ヘッド(加圧加振ホーン)として機能し、加熱溶接とする場合は、クリンパ22が加圧加熱ヘッドと機能することになる。
【0028】
取出し工程では、クリンパ22を引き上げ、シールド編組8とのシールド接続がなされたシールドシェル1をアンビル24から取り出す。
【0029】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、これは代表的な例に過ぎず、本発明はその趣旨を逸脱することのない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば以上の実施形態では、加締リングにより加締めた状態で溶接を施すようにしている。このような溶接は、接続の信頼性をより一層高めるのに有効であるということで、加締リングによる加締めだけで足る場合であれば、省略するようにしてもよい。また以上の実施形態では、加締部材に与える重なり回避構造としてスカーフジョイント構造を用いていたが、これに限られず、例えばフィンガージョイント構造、つまり加締部材の各端部に凹凸を形成し、その凹凸を嵌め合わせるようにする構造を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態によるシールド接続構造におけるシールドシェルとシールド電線の関係を簡略化して示す図である。
【図2】端末部を覆い被せた接続受け部を加締部材に対しセットした様子を断面状態について模式化して示す図である。
【図3】加締部材と加締リングを斜視状態で示す図である。
【図4】シールド接続処理の様子を模式化して示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 シールドシェル
2 シールド電線
5 接続受け部
8 シールド編組
11 端末部
12 加締部材
13 加締リング
14 円弧部
15a 平面部
15b 平面部
21 上側加圧面
22 クリンパ
23 下側加圧面
24 アンビル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の接続受け部が設けられたシールドシェルに対し前記接続受け部を介してシールド電線のシールド編組をその端末部で接続するシールド接続構造において、
前記シールド編組の端末部は、前記接続受け部に覆い被せられるとともに、帯状の加締部材を前記接続受け部に被覆の前記端末部に沿ってリング状に曲げることで形成される加締リングにより加締められていることを特徴とするシールド接続構造。
【請求項2】
円筒状の接続受け部が設けられたシールドシェルに対し前記接続受け部を介してシールド電線のシールド編組をその端末部で接続するシールド接続方法において、
前記接続受け部に前記シールド編組の端末部を覆い被せた状態とするとともに、この状態で前記端末部を加締リングにより前記接続受け部との間で加締めることで前記シールドシェルに対する前記シールド編組の接続をなすようにされ、かつ前記加締リングは、前記接続受け部の外周長さ程度の長さとされるとともに、前記接続受け部の外周形状に対応する形状の円弧部とこの円弧部から延びる一対の平面部を有した帯状に形成された加締部材をリング状に曲げて形成するようにされ、さらに前記加締は、半円筒形の上側加圧面が形成されたクリンパと同じく半円筒形の下側加圧面が形成されたアンビルにより加圧してなすようにされ、そして
前記円弧部を介して前記下側加圧面に前記加締部材が載置された前記アンビルに、前記接続受け部に被覆の前記端末部を当該端末部が前記加締部材の前記円弧部に納まるようにしてセットするセット工程、
前記下側加圧面に載置の前記加締部材における前記一対の平面部を前記上側加圧面に摺接させた状態で前記クリンパに加圧動作を行わせることで前記一対の平面部を前記接続受け部に被覆の前記端末部に沿って曲げることにより前記加締リングを形成する加締リング形成工程、および
前記加締リング形成工程で形成された加締リングを前記クリンパと前記アンビルにより加圧して加締めることで前記端末部を前記接続受け部に密接させる加締工程を含むことを特徴とするシールド接続方法。
【請求項3】
前記シールド編組の端末部は、前記加締リングにより加締められた状態で溶接処理により前記接続受け部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載のシールド接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−277437(P2009−277437A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126269(P2008−126269)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】