説明

シールド材及びその製造方法、フレキシブルフラットケーブル及びその製造方法、並びに、電子機器

【課題】シールド材が有する金属層における短絡の発生を抑制する。
【解決手段】絶縁材14上には、導体12a〜12fの両端部を除く部分を被覆する絶縁性接着部材13が積層されている。絶縁性接着部材13は、導体12a〜12fをその上面及び下面方向から挟む2つの絶縁性接着剤層がラミネートによって互いに溶融し合うことにより形成されてなるものである。絶縁性接着部材13上には絶縁材11が積層され、絶縁材11は、絶縁性接着部材13と接着している。また、絶縁性接着部材13は、その下面において絶縁材14と接着している。絶縁材14は、その下面においてシールド層の側面が絶縁性接着剤層に被覆されてなるシールド部16と接着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁場によるノイズ抑制を行うシールド材及びその製造方法、当該シールド材を用いたフレキシブルフラットケーブル及びその製造方法、並びに、当該フレキシブルフラットケーブルを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型テレビジョン装置等の家電製品、大型複写機等の事務機器、医療機器等の多くの電気製品や電子機器が行う信号処理においては、信号の高速化が急速に進んでいる。これに伴い、これらの電気製品や電子機器に用いられるフレキシブルフラットケーブル(以下、「FFC」という。)をはじめとする多くのケーブルには、インピーダンスコントロール等の電気的特性の向上が要求されるようになってきている。大型テレビジョン装置等の家電製品は、コスト競争の激化に伴い、安価で長尺可能なFFCが有用されている。
【0003】
インピーダンスコントロールFFCは、信号線となる導体とFFC本体の外装に位置するシールド材との物理的サイズによってインピーダンスが制御される。シールド材には、FFC本体の片面に貼り付ける構造とFFC本体の外周を覆う構造とがあり、両者は、用途やコスト等に応じて使い分けられる。
【0004】
インピーダンスコントロールFFCに用いられるシールド材には、ノイズの抑制や伝送特性の向上等が要求される。信号線における伝送の高速化が進むにつれ、シールド材が信号の伝送特性の向上に及ぼす影響は大きい。
【特許文献1】特開2002−184245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号伝送の高速化を実現させるために、このようなシールド材を有するシールドFFCには、特性インピーダンスやアイパターンの向上とともに、特に、信号線となる導体の透過特性の向上が要求されている。例えば5GHz以下の低周波数帯域では、この透過特性に導体損が最も大きく関係し、特にシールド材の金属層の厚さが導体損に大きく影響することになる。従来、シールドFFCに用いられるシールド材には、作業性、可撓性を考慮して蒸着等の方法により厚さが1μm未満のAlやAg等の金属からなる金属層が適用されていた。しかしながら、1μm未満の薄い金属層が用いられたシールドFFCでは、透過特性が悪かった。
【0006】
信号の高速伝送を実現させるための透過特性の向上には、表皮効果等を考慮して少なくとも数μmの厚さを有する金属層を有するシールド材が必要であった。
【0007】
図13は、金属層の厚さが0.1μmである従来のシールド材、金属層の厚さが8μmである従来のシールド材をそれぞれ用いたシールドFFCにおける導体の透過特性(Sdd21)を示す図である。図13において、曲線aは、金属層の厚さが8μmであるシールド材を用いたシールドFFCにおける導体の透過特性を示し、曲線bは、金属層の厚さが0.1μmであるシールド材を用いたシールドFFCにおける導体の透過特性を示す。この図13に示す周波数帯域において、金属層の厚さが0.1μmであるシールド材よりも金属層の厚さが8μmであるシールド材を用いたシールドFFCの導体の透過特性が良いことがわかる。
【0008】
厚さが数μm以上の金属層を有するシールド材を用いたシールドFFCは、このような透過特性、特性インピーダンス、アイパターン等を含めた電気的特性が良好となり、信号の高速伝送を実現することが可能となる。
【0009】
図14は、厚さが数μm以上の金属層を有するシールド材を用いたシールドFFC100の断面図である。シールドFFC100において、シールド層107は、絶縁材104と、金属層105と、導電性接着剤層106とがこの順に積層されてなる。シールドFFC100は、このシールド層107上に絶縁材103と、導体102a〜102fを被覆する絶縁性接着剤層101とが順次積層されてなる。
【0010】
図14に示すように、金属層105の厚さが数μm以上であることにより、シールドFFC100における金属層105が露出する端部、すなわち金属層105の側面において短絡(ショート)が発生する虞がある。
【0011】
シールド材の金属層に対する絶縁処理を目的として、シールド材の側面に絶縁フィルムを貼り付ける等の方法が考えられるが、この方法では、可撓性の悪化、コスト高等の問題を招くことになる。
【0012】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、シールドFFCに用いられるシールド材の金属層における短絡の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明に係るシールド材の製造方法は、絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、絶縁性接着剤層とを熱圧着し、前記導電性接着剤層上に前記絶縁性接着剤層が積層されたシールド材を製造する方法であって、前記シールド層と前記絶縁性接着剤層との熱圧着によって前記絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤が溶融することにより、前記絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面を被覆するシールド材の製造方法である。
【0014】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るシールド材は、絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、前記導電性接着剤層上に積層された絶縁性接着剤層とを有するシールド材であって、前記絶縁性接着剤層の端部は垂下しており、当該垂下した絶縁性接着剤層によって少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面が被覆されているシールド材である。
【0015】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るフレキシブルフラットケーブルの製造方法は、第1の絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、第1の絶縁性接着剤層とを熱圧着し、前記導電性接着剤層上に前記第1の絶縁性接着剤層が積層されたシールド材を製造する第1の工程と、前記シールド材と、複数の導体を配設した第2の絶縁材が第2の絶縁性接着剤層上に積層された積層体とを熱圧着し、前記第1の絶縁性接着剤層上に前記第2の絶縁性接着剤層が積層されたフレキシブルフラットケーブルを製造する第2の工程とを有し、前記第1の工程では、前記シールド層と前記第1の絶縁性接着剤層との熱圧着によって前記第1の絶縁性接着剤層を構成する第1の絶縁性接着剤が溶融することにより、前記絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面を被覆し、前記第2の工程では、前記シールド材と前記積層体との熱圧着によって前記第2の絶縁性接着剤層を構成する第2の絶縁性接着剤が溶融することにより、前記第1の絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記導電性接着剤層の側面及び前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記金属層の側面をさらに被覆するフレキシブルフラットケーブルの製造方法である。
【0016】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係るフレキシブルフラットケーブルは、第1の絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、前記導電性接着剤層上に積層された第1の絶縁性接着剤層とを有するシールド材であり、少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面が、垂下した前記第1の絶縁性接着剤層に被覆されている前記シールド材上に、複数の導体を配設した第2の絶縁材が第2の絶縁性接着剤層上に積層された積層体が積層されたフレキシブルフラットケーブルであって、垂下した前記第2の絶縁性接着剤層によって、少なくとも前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記導電性接着剤層の側面及び前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記金属層の側面がさらに被覆されてなるフレキシブルフラットケーブルである。
【0017】
また、上述した目的を達成するために、本発明に係る電子機器は、本発明のフレキシブルフラットケーブルを搭載した電子機器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シールド材の金属層が絶縁性接着剤層に被覆されているため、シールド材の端部において短絡の発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本実施の形態におけるシールドフレキシブルフラットケーブル(以下、「シールドFFC」という。)は、外部の電磁波によるノイズを抑制しインピーダンスを制御するシールド材が貼着されてなるものである。
【0021】
図1は、本実施の形態におけるシールドFFC1の外観図である。また、図2(A)は、シールドFFC1の上面図であり、図2(B)は、シールドFFC1の下面図である。
【0022】
図2(A)に示すように、シールドFFC1において、絶縁材14上には、信号線としての導体12a〜12fが0.5mmのピッチで平行に配設されている。この導体12a〜12fのサイズは、それぞれ幅0.3mm×厚さ0.035mmである。
【0023】
図1に示すように、導体12a〜12fは、両端を除く部分が絶縁性接着部材13に被覆されている。また、導体12a〜12fは、それぞれ両端の下面において絶縁性接着部材13と接着している。なお、導体12の数はこれに限られない。
【0024】
絶縁材14上には、導体12a〜12fの両端部を除く部分を被覆する絶縁性接着部材13が積層され、絶縁材14と絶縁性接着部材13とは互いに接着している。絶縁性接着部材13は、導体12a〜12fをその上面及び下面方向から挟む2つの絶縁性接着剤層が後述のラミネートによって互いに溶融し合うことにより形成されてなる。絶縁性接着部材13上には絶縁材11が積層され、絶縁性接着部材13と絶縁材11とは互いに接着している。
【0025】
絶縁材14は、その下面においてシールド層が絶縁性接着剤に被覆されてなるシールド部16と接着している。
【0026】
また、絶縁材14は、その下面の両端においてそれぞれ絶縁性接着剤層(図示せず)を介して補強板15a,15bと接着している。補強板15a,15bは、例えば熱プレスにより接着される。
【0027】
図3は、図1に示すシールドFFC1のA−A線断面図である。ここで、A−A線は、導体12cの長手方向に切断するようにシールドFFC1を切断するものである。また、図4は、図1に示すシールドFFC1のB−B線断面図である。ここで、B−B線は、シールドFFC1を短手方向に切断するものである。
【0028】
図3に示すように、絶縁材14と、絶縁性接着剤層13bと、導体12cと、絶縁性接着剤層13aと、絶縁材11とは、この順に積層されている。なお、実際のシールドFFC1の構成においては、導体12cの両端部を除く部分は、絶縁性接着剤層13aと絶縁性接着剤層13bとが互いに溶融し合うことにより形成された絶縁性接着部材13に覆われている。
【0029】
シールド部16において、シールド層20は、絶縁材17と金属層18と導電性接着剤層19とがこの順に積層されてなる。導電性接着剤層19上には、絶縁性接着剤層21が積層されている。この金属層18は、外部の電磁場によるノイズを抑制するとともに、信号線としての導体12a〜12fに対するグランドとして機能する。シールドFFC1は、図2(A)の上面図及び図2(B)の下面図、並びに、図3及び図4の断面図に示すように、シールド層20の側面が、垂下した絶縁性接着剤層21によって被覆されている。ここで、シールド層20における少なくとも導電性接着剤層19の側面及び金属層18の側面は、完全に絶縁性接着剤層21に被覆されて露出しない。このため、シールドFFC1は、端部(エッジ部)における短絡(ショート)の発生が抑制されている。
【0030】
導体12a〜12fとしては、例えば錫メッキによって表面処理が施された軟銅を挙げることができる。
【0031】
また、絶縁材11,14,17としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の絶縁フィルムを用いることができる。
【0032】
また、絶縁性接着部材13を構成する絶縁性接着剤、及び、絶縁性接着剤層21を構成する絶縁性接着剤としては、例えば難燃性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、難燃性ポリエチレン樹脂等、難燃性で絶縁性の熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、この絶縁性接着剤は、ノンハロゲン系材料であることが好ましい。なお、絶縁性接着部材13と絶縁性接着剤層21とは、互いに同一の絶縁性接着剤からなることが好ましい。
【0033】
また、補強板15a,15bを構成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート等の絶縁フィルムを挙げることができる。
【0034】
また、金属層18としては、鉄やニッケル等の透磁性の高い金属箔、銅等の導電性の高い金属箔、アルミニウム箔や亜鉛等を用いることができる。
【0035】
本実施の形態では、以下で説明する2段階のラミネートによってシールドFFC1を製造する。
【0036】
先ず、図5(A)に示すように、絶縁材17と金属層18と導電性接着剤層19とがこの順に積層されてなるシールド層20と絶縁性接着剤層22とを熱圧着する。本実施の形態では、熱圧着処理としてラミネータによるラミネート処理を行う。すなわち、シールド層20と絶縁性接着剤層22とを重ね合わせた状態でラミネータ31によってラミネートする(第1のラミネート処理)。ここで、ラミネート前における絶縁性接着剤層22の厚さは、数十μm以上とすることができる。
【0037】
ラミネータ31は、例えばガラスからなる中心部32a,32bと、中心部32a,32bをそれぞれ覆う例えばシリコンゴムからなる表面部33a,33bとからなる。ここで、ラミネータ31のラミネート時における加熱温度は、例えば100〜120℃とすることができる。また、ラミネータ31のラインスピードは、1.5m/分とすることができる。
【0038】
第1のラミネート処理によって、絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤が溶融して絶縁性接着剤層22が垂下する。図5(B)に示すように、シールド層20の側面が、垂下した絶縁性接着剤層22によって被覆されたシールド材41が製造される。製造されたシールド材41を室温で放置することにより自然冷却する。
【0039】
図6は、シールド材41の外観図であり、図7(A)は、図6に示すシールド材41のC−C線断面図であり、図7(B)は、図6に示すシールド材41のD−D線断面図である。
【0040】
図7(A)及び図7(B)に示すように、シールド材41は、シールド層20の側面が、垂下した絶縁性接着剤層22の端部によって被覆されている。ここで、シールド層20における少なくとも導電性接着剤層19の側面及び金属層18の側面は、完全に絶縁性接着剤層22に被覆されて露出しない。このため、シールドFFC1は、端部における短絡の発生が抑制されている。
【0041】
シールド層20における少なくとも導電性接着剤層19の側面及び金属層18の側面が完全に絶縁性接着剤層22に被覆されて露出しないようにするために、シールド層20と絶縁性接着剤層22とのラミネート時における絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度は、0.01MPa・s〜100MPa・sであることが好ましい。
【0042】
絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度が0.01MPa・s未満である場合、シールド層20の側面において絶縁性接着剤層22の絶縁性接着剤が液垂れする虞があるとともに、シールド層20の側面を被覆する絶縁性接着剤層22に欠落部分が生じ、金属層18が露出する虞がある。
【0043】
一方、絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度が100MPa・sよりも大きい場合、ラミネート時において絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤が溶融しても、この絶縁性接着剤が硬すぎることによりシールド層20における少なくとも導電性接着剤層19の側面及び金属層18の側面が完全に被覆されない虞がある。
【0044】
金属層18の厚さは、2μm以上とすることができる。金属層18の厚さを2μm以上とすることにより、シールドFFC1は、導体12a〜12fにおける透過特性、特性インピーダンス、アイパターン等の電気的特性が良好となり、信号の高速伝送が実現可能となる。
【0045】
なお、金属層18の厚さが2μm以上であれば、絶縁材17、金属層18、導電性接着剤層19、絶縁性接着剤層22それぞれの厚さを任意に設定することが可能である。本実施の形態においては、絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度等を考慮し、少なくとも金属層18の側面及び導電性接着剤層19の側面が完全に被覆されるような各値を設定することができる。
【0046】
次に、図8(A)に示すように、シールド材41と、導体12a〜12f(図8では導体12と記載している。)を有するベースFFC42とを熱圧着する。ベースFFC42は、絶縁性接着剤層23と、絶縁材14と、導体12a〜12fの両端を除く部分を被覆する絶縁性接着部材13と、絶縁材11とがこの順に積層され、絶縁材14の下面に絶縁性接着剤層(図示せず)を介して補強板15a,15bが接着されてなるものである。
【0047】
具体的に、ベースFFC42の絶縁性接着剤層23の下面とシールド材41の上面とを重ね合わせるようにしてベースFFC42とシールド材41とをラミネータ31によってラミネートする(第2のラミネート処理)。ここで、ラミネート前における絶縁性接着剤層23の厚さは、数十μm以上とすることができる。
【0048】
第2のラミネート処理によって、絶縁性接着剤層23は、ラミネートによって絶縁性接着剤層23を構成する絶縁性接着剤が溶融することにより垂下し、シールド層20が絶縁性接着剤層22に被覆されてなるシールド材41の側面をさらに被覆する。ここで、絶縁性接着剤層23を構成する接着剤と絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤とは溶融し合い絶縁性接着剤層22よりもさらに厚い絶縁性接着剤層21を構成する。
【0049】
具体的には、少なくとも金属層18の側面及び導電性接着剤層19の側面は、絶縁性接着剤層22よりもさらに厚い絶縁性接着剤層21によって完全に被覆されて露出しない。このような絶縁性接着剤層21によるさらなる被覆により、絶縁性接着剤層21は破損しにくくなり、後に導電性接着剤層19の側面及び金属層18の側面が露出する虞が低減される。
【0050】
このような第1,第2のラミネート処理により、図8(B)に示すようなシールド部16を備えたシールドFFC1が製造される。そして、製造されたシールドFFC1を室温に放置して自然冷却する。
【0051】
ベースFFC42とシールド材41とのラミネート時における絶縁性接着剤層22を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度は、第1のラミネート処理の説明で述べた理由と同様の理由により、0.01MPa・s〜100MPa・sであることが好ましい。
【0052】
また、上述したように、絶縁性接着剤層23の厚さは、任意に設定することが可能である。すなわち、絶縁性接着剤層22,23を構成する絶縁性接着剤の溶融粘度等を考慮し、少なくとも金属層18の側面及び導電性接着剤層19の側面が完全に被覆されるような値を設定することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、本実施の形態におけるシールド材の製造方法によって製造されたシールド材を、導体12a〜12fを有するベースFFCの外周に設けたシールドFFCを製造することができる。
【0054】
図9は、ベースFFC43の外周にシールド材41を設けたシールドFFC2の外観図である。また、図10(A)は、シールドFFC2の上面図であり、図10(B)は、シールドFFC2の下面図である。シールドFFC2において、シールドFFC1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、シールドFFC2は、導体12a〜12fを有するベースFFC43の両端を除く外周部分にシールド材41が巻きつけられており、図10(B)に示すように、シールドFFC2の下面において、シールド材41同士が接着されている。
【0056】
図11は、図9に示すシールドFFC2のD−D線断面図である。図11に示すように、シールドFFC2は、絶縁材14と、導体12a〜導体12fを被覆する絶縁性接着部材13と、絶縁材11とがこの順に積層されてなるベースFFC43と、このベースFFC43の外周を被覆するシールド材41とから構成される。
【0057】
シールド材41は、上述したように、絶縁材17と、金属層18と、導電性接着剤層19とがこの順に積層されてなるシールド層20と、導電性接着剤層19の上面に積層された絶縁性接着剤層22とから構成される。シールド材41同士の貼り付け部分は、絶縁性接着剤層22を介して接着されている。
【0058】
このシールドFFC2は、ベースFFC43の外周にシールド材41を巻きつけてラミネータ31によってラミネートすることにより製造される。ここで、ベースFFC43とシールド材41とをラミネートする際の諸条件は、上述のシールドFFC1の製造時のラミネートにおける諸条件と同一である。すなわち、ラミネータ31のラミネート時における加熱温度は、100〜120℃とすることができる。また、ラミネータ31のラミネート時におけるラインスピードは、1.5m/分とすることができる。
【0059】
以上述べたような本実施の形態におけるシールドFFCは、例えば、フラットパネルディスプレイを備えたテレビジョン装置等の電子機器に搭載することができる。このような薄型のテレビジョン装置は、高画質化を実現するために、高性能な画像伝送デバイスが必須となる。本実施の形態におけるシールドFFCは、厚さ2μm以上の金属層を有するシールド材の端部が絶縁性接着剤層に被覆されていることにより、短絡を抑制しながら信号の高速伝送を実現することができることから、このような電子機器に搭載することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。本実施例では、上述した本実施の形態における製造方法で図1に示すシールドFFCを製造した。
【0061】
先ず、図6に示すシールド材を製造した。すなわち、絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と絶縁性接着剤層とを重ね合わせた状態で、ラミネータによってラミネートした。
【0062】
ここで、ラミネート前における絶縁性接着剤層の厚さは、40μmとした。また、金属層としては、厚さ8μmの銅箔を用いた。絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤としては、難燃性ポリエステル樹脂からなるハロゲンフリーTCフィルム(SCID(Sony Chemical & Information Device)製)を用いた。また、ラミネータのラインスピードを1.5m/分とし、ラミネータの加熱温度を120℃とした。
【0063】
図12は、絶縁性接着剤としての難燃性ポリエステル樹脂の温度[℃]と粘度[MPa・s]との関係を示す図である。ラミネータの加熱温度を120℃としたことにより、ラミネート時における絶縁性接着剤としての難燃性ポリエステル樹脂の溶融粘度は、約0.1MPa・sであった。
【0064】
このラミネート処理により、絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤が溶融して絶縁性接着剤層が垂下し、シールド層の側面全体が、垂下した絶縁性接着剤層によって被覆されたシールド材が製造された。そして、製造されたシールド材を室温で放置することにより自然冷却した。
【0065】
次に、図1に示すシールドFFCを製造した。すなわち、ベースFFCの絶縁性接着剤層の下面とシールド材の上面とを重ね合わせるようにしてベースFFCとシールド材とをラミネータによってラミネートした。ここにおいても、ラミネータのラインスピードを1.5m/分とし、ラミネータの加熱温度を120℃とした。このため、ラミネート時における絶縁性接着剤としての難燃性ポリエステル樹脂の溶融粘度は、約0.1MPa・sであった。
【0066】
ベースFFCが有する絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤としては、上述の難燃性ポリエステル樹脂からなるハロゲンフリーTCフィルム(SCID製)を用いた。ラミネート前におけるベースFFCが有する絶縁性接着剤層の厚さは、40μmとした。
【0067】
このラミネート処理により、ベースFFCが有する絶縁性接着剤層は、絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤が溶融することにより垂下し、シールド層が絶縁性接着剤層に被覆されてなるシールド材の側面全体がさらに被覆された。ここで、絶縁性接着剤層を構成する接着剤と絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤とは溶融し合い、ラミネート前のシールド材が有する絶縁性接着剤層よりもさらに厚い絶縁性接着剤層を構成した。
【0068】
製造されたシールドFFCの全長は200mmであった。また、このシールドFFCの導体ピッチは0.5mmであり、ピン数は21pinであった。
【0069】
製造されたシールドFFCは、シールド材の側面が絶縁性接着剤層に完全に被覆されていた。これにより、製造されたシールドFFCは、導体における透過特性、特性インピーダンス、アイパターン等の電気的特性が良好であり、信号の高速伝送が実現可能なシールドFFCとすることができる。
【0070】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施の形態におけるシールドFFCの外観図である。
【図2】図2(A)は、図1に示すシールドFFCの上面図であり、図2(B)は、図1に示すシールドFFCの下面図である。
【図3】図1に示すシールドFFCのA−A線断面図である。
【図4】図1に示すシールドFFCのB−B線断面図である。
【図5】図5(A)は、第1のラミネート処理を説明するための図であり、図5(B)は、第1のラミネート処理によって製造されたシールド材の側面図である。
【図6】第1のラミネート処理によって製造されたシールド材の外観図である。
【図7】図7(A)は、図6に示すシールド材のC−C線断面図であり、図7(B)は、図6に示すシールド材のD−D線断面図である。
【図8】図8(A)は、第2のラミネート処理を説明するための図であり、図8(B)は、第2のラミネート処理によって製造されたシールドFFCの側面図である。
【図9】本実施の形態におけるシールド材をベースFFCの外周に設けたシールドFFCの外観図である。
【図10】図10(A)は、図9に示すシールドFFCの上面図であり、図10(B)は、図9に示すシールドFFCの下面図である。
【図11】図9に示すシールドFFCのD−D線断面図である。
【図12】絶縁性接着剤としての難燃性ポリエステル樹脂の温度[℃]と粘度[MPa・s]との関係を示す図である。
【図13】金属層の厚さが0.1μmである従来のシールド材、及び、金属層の厚さが8μmである従来のシールド材における透過特性を示す図である。
【図14】従来の一般的なシールド材の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1,2 シールドFFC、11,14,17 絶縁材、12a〜12f 導体、13 絶縁性接着部材、15a,15b 補強板、16 シールド部、18 金属層、19 導電性接着剤層、20 シールド層、21,22,23 絶縁性接着剤層、31 ラミネータ 41 シールド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、絶縁性接着剤層とを熱圧着し、前記導電性接着剤層上に前記絶縁性接着剤層が積層されたシールド材を製造する方法であって、
前記シールド層と前記絶縁性接着剤層との熱圧着によって前記絶縁性接着剤層を構成する絶縁性接着剤が溶融することにより、前記絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面を被覆するシールド材の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁性接着剤の溶融粘度は、0.01MPa・s〜100MPa・sである請求項1記載のシールド材の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁性接着剤は、熱可塑性樹脂である請求項2記載のシールド材の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁性接着剤は、難燃性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、又は難燃性ポリエチレン樹脂である請求項3記載のシールド材の製造方法。
【請求項5】
前記金属層を構成する金属は、銅である請求項1記載のシールド材の製造方法。
【請求項6】
前記金属層の厚さは、2μm以上である請求項1記載のシールド材の製造方法。
【請求項7】
絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、前記導電性接着剤層上に積層された絶縁性接着剤層とを有するシールド材であって、
前記絶縁性接着剤層の端部は垂下しており、当該垂下した絶縁性接着剤層によって少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面が被覆されているシールド材。
【請求項8】
第1の絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、第1の絶縁性接着剤層とを熱圧着し、前記導電性接着剤層上に前記第1の絶縁性接着剤層が積層されたシールド材を製造する第1の工程と、
前記シールド材と、複数の導体を配設した第2の絶縁材が第2の絶縁性接着剤層上に積層された積層体とを熱圧着し、前記第1の絶縁性接着剤層上に前記第2の絶縁性接着剤層が積層されたフレキシブルフラットケーブルを製造する第2の工程とを有し、
前記第1の工程では、前記シールド層と前記第1の絶縁性接着剤層との熱圧着によって前記第1の絶縁性接着剤層を構成する第1の絶縁性接着剤が溶融することにより、前記絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面を被覆し、
前記第2の工程では、前記シールド材と前記積層体との熱圧着によって前記第2の絶縁性接着剤層を構成する第2の絶縁性接着剤が溶融することにより、前記第1の絶縁性接着剤層の端部が垂下して少なくとも前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記導電性接着剤層の側面及び前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記金属層の側面をさらに被覆するフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記第1の絶縁性接着剤及び前記第2の絶縁性接着剤の溶融粘度は、0.01MPa・s〜100MPa・sである請求項8記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項10】
前記第1の絶縁性接着剤及び前記第2の絶縁性接着剤は、熱可塑性樹脂である請求項9記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項11】
前記第1の絶縁性接着剤及び前記第2の絶縁性接着剤は、難燃性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、又は難燃性ポリエチレン樹脂である請求項10記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項12】
前記金属層を構成する金属は、銅である請求項8記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項13】
前記金属層の厚さは、2μm以上である請求項8記載のフレキシブルフラットケーブルの製造方法。
【請求項14】
第1の絶縁材と金属層と導電性接着剤層とがこの順に積層されてなるシールド層と、前記導電性接着剤層上に積層された第1の絶縁性接着剤層とを有するシールド材であり、少なくとも前記導電性接着剤層の側面及び前記金属層の側面が、垂下した前記第1の絶縁性接着剤層に被覆されている前記シールド材上に、複数の導体を配設した第2の絶縁材が第2の絶縁性接着剤層上に積層された積層体が積層されたフレキシブルフラットケーブルであって、
垂下した前記第2の絶縁性接着剤層によって、少なくとも前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記導電性接着剤層の側面及び前記第1の絶縁性接着剤層に被覆された前記金属層の側面がさらに被覆されてなるフレキシブルフラットケーブル。
【請求項15】
請求項14記載のフレキシブルフラットケーブルを搭載した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−108779(P2010−108779A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280206(P2008−280206)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】