説明

シールド線のドレン線止水構造およびドレン線止水方法

【課題】ドレン線の止水箇所をスリム化する。
【解決手段】シールド線10の内部から外部に引き出されるドレン線11が、絶縁樹脂からなる熱収縮チューブ15あるいはシリコンまたはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を含むゴムチューブ50で被覆されていると共に、該熱収縮チューブ15あるいはゴムチューブ50内のドレン線の素線間には止水剤16が浸透されている。かつ、ドレン線11の端末に接続される端子20と熱収縮チューブ15との境界部分をゴム栓21で被覆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド線のドレン線止水構造およびドレン線止水方法に関し、特に、車両のエンジンルーム等の防水領域に配線するシールド線において、該シールド線の端末から引き出されるドレン線の止水構造をスリム化するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索される電線のうち、特にノイズに対する遮蔽が要求される箇所にはシールド電線が用いられている。このシールド電線1としては、例えば図15(A)に示すように、複数本の信号線となる絶縁被覆電線(コア電線)2とアース用のドレン線3とを内包し、ドレン線3および被覆電線2をシールド層4および絶縁樹脂材料からなるシース5で順次被覆してなるものが用いられる(特許文献1)。
前記ドレン線3は多数本の導電性の素線からなり、絶縁被覆がされていないものであり、金属編組のチューブあるいは金属箔からなる前記シールド層4と接触させている。
【0003】
このようなシールド電線1をコネクタハウジングに取り付けるには、図15(B)に示すように、シールド電線1の端末加工が必要となる。即ち、シース5とシールド層4を約80〜200mmにわたって皮剥ぎ処理し、露出した被覆電線2の端末を更に皮剥ぎして端子金具7を圧着し、ドレン線3にも同様に端子8を圧着処理して各端子7、8をコネクタハウジング内に挿入して、相手側機器との機械的接続を可能とする。
【0004】
車両のエンジンルーム等の防水領域に配線される電線端末に端子を接続し、該端子をコネクタに接続する場合には、例えば、特開2001−167821号(特許文献2)では、芯線の露出部を含む端子接続部を覆うように高粘度シール樹脂でモールドする止水方法が開示されている。
【0005】
シールド線を防水領域のエンジンルーム内の機器に接続する場合には、絶縁被覆されていないドレン線もシールド線の端末から引き出されるため、該ドレン線を伝って機器の内部へ水が浸入することとなる。よって、図16に示すように、ドレン線3の端末に、絶縁被覆電線9を継ぎ足し、該絶縁被覆電線9の芯線9aとスプライス接続し、該スプライス箇所にシリコンなどの止水剤を塗布した後にテープを巻きつけている。
【0006】
しかしながら、前記止水スプライス箇所は、シリコン等により外径が太くなり、ハーネス外径の肥大化につながる。前記特許文献1に開示されている止水方法についても、同様の問題がある。特に、近年の自動車の電動化等により、シールド電線の増加が予想され、ドレン線の止水スプライス箇所の肥大化に対する対策はますます重要になっている。
また、ドレン線3に絶縁被覆電線9をスプライス接続して、シールド線を機器(例えば、ECU)に接続しているため、加工費用がかかり、コスト高となる点にも問題がある。
さらに、シールド電線の皮剥ぎ長さは、前記スプライス処理に必要な長さ(150〜200mm)となり、皮剥ぎ長さが長くなることによるシールド性能の低下も問題である。
【0007】
【特許文献1】特開2002−208321号公報
【特許文献2】特開2001−167821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、止水処理箇所をスリム化できると共に、止水処理を低コスト化でき、かつ高いシールド性能を備えるドレン線の止水構造およびドレン線の止水方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、シールド線の端末から外部に引き出されるドレン線が、絶縁樹脂またはゴムからなるチューブで被覆されていると共に、該チューブ内のドレン線の素線間には止水剤が充填されていることを特徴とするシールド線のドレン線止水構造を提供している。
【0010】
この止水構造によれば、ドレン線を被覆するチューブの端末側からチューブ内に浸水が発生しても、チューブ内に充填された止水剤により浸水を遮断できる。また、チューブ内に止水剤を充填しても、その止水箇所の外径増加は微量であり、従来のように、シリコンなどの止水剤を塗布したり樹脂でモールドする止水方法に比して、止水箇所を大幅にスリム化できる。
さらに、ドレン線にチューブを被せて擬似被覆電線状とすることにより、従来行われていた一般電線とドレン線とのスプライス接続が不要となる。これにより、電線や端子などの部材費用と加工費用を削減できる。
前記チューブを透明にすると、止水剤の充填状態を外部から目視することもできる。さらに、シールド線の先端皮剥ぎ長さを最短の40mmまで加工することができ、皮剥区間を短くすることでシールド性能の向上を図ることができる。
なお、止水剤としてはシリコンが好適に用いられるが、シリコンに限定されず、所要の流動性を有する熱可塑性あるいは熱硬化性の接着剤を用いることができる。
【0011】
前記チューブが熱収縮チューブからなる場合には、前記ドレン線の端末に接続される端子と前記熱収縮チューブとの境界部分はゴム栓で覆われている。
このように、ドレン線自体を熱収縮チューブで絶縁被覆しているため、ドレン線の被水そのものを効果的に防止できると共に、止水剤が充填された熱収縮チューブの端子接続側にゴム栓を取り付けると、熱収縮チューブの端子接続側端面からの浸水も完全に防止することができる。よって、シールド線の端末から引き出され、その先端に端子が圧着接続されたドレン線は、シールド線の端末から端子接続部までを完全に止水することができる。
【0012】
前記チューブがシリコンまたはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を含むゴムチューブからなる場合には、前記ドレン線の端末に接続される端子が前記ゴムチューブの外周面に圧着接続されている。
前記構成によれば、ドレン線に被覆するチューブを前記ゴム栓と同様の材料で形成して、該チューブに端子を直接圧着接続しているため、前記端子と熱収縮チューブとの間に設けたゴム栓が不要となる。これにより、部品点数を低減できると共に、ゴム栓の取付作業が不要となって作業性を向上させることができる。
【0013】
前記シールド線は車両内の防水領域に配線され、前記ドレン線の端末に接続された端子は、前記シールド線から引き出される被覆電線端末に接続された端子と共に、前記防水領域に配置される機器に接続される。
例えば、ドレン線端末の端子を、他のコア線の絶縁被覆電線の端末に接続された端子と共に止水コネクタに挿入係止し、該止水コネクタをエンジンルームに搭載されるECUのコネクタ嵌合部に嵌合している。
これにより、ドレン線を伝って機器内部に水が浸透することを防止でき、機器の不具合発生を防止できる。
【0014】
さらに、本発明は、前記ドレン線の止水方法を提供している。
第1のドレン線の止水方法は、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記外部に引き出されたドレン線に熱収縮チューブを通して、該熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは前記外部に引き出されたドレン線にゴムチューブを通し、
前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブからなるチューブの一端側からエア吸引を行いながら他端側から前記チューブ内に止水剤を供給して、前記チューブ内のドレン線の素線間に止水剤を充填している。
【0015】
前記第1の方法によれば、チューブ内に止水剤を充填する際にチューブの一端開口から止水剤を供給しながら、他端開口からエア吸引を行うことで、チューブ内にスムーズに、かつ、空隙を発生させることなく止水剤を充填していくことできる。
より詳細には、熱収縮チューブを用いる場合、ドレン線に熱収縮チューブを通して疑似電線状態をつくり、該熱収縮チューブの外周面にゴム栓を通した状態で、ドレン線端末に端子を圧着して、前記一端からのエア吸引と他端からの止水剤の注入を行っている。
【0016】
第2のドレン線の止水方法は、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記引き出されたドレン線に止水剤を滴下あるいは塗布してドレン線の素線間に浸透させ、
前記止水剤を浸透させたドレン線に熱収縮チューブを通し、該熱収縮チューブを加熱収縮している、あるいは前記止水剤を浸透させたドレン線にゴムチューブを通している。
なお、止水剤をドレン線に滴下する方法に代えて、ドレン線の表面に沿って止水剤を塗布することによっても、塗布された止水剤がドレン線の素線内部に浸透させることができる。
【0017】
前記第2の方法によれば、止水剤を浸透させた状態のドレン線に熱収縮チューブあるいはゴムチューブを通しているため、前記第1の方法と比較してエア吸引が不要となるため、エア吸引手段を不要とすることができると共に、作業時間を短縮できる。
【0018】
第3のドレン線の止水方法は、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
先端を斜めカット、あるいは先端にスリットを切り欠いた熱収縮チューブをドレン線に通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せ、その後、前記熱収縮チューブを加熱収縮している。
より詳細には、熱収縮チューブをシールド線の端まで通した後に加熱収縮を行い、収縮後に疑似電線状態となった熱収縮チューブの外周面にゴム栓を通し、ついで、ドレン線の端末に端子を圧着している。
【0019】
または、第3のドレン線の止水方法は、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
先端を斜めカット、あるいは先端にスリットを切り欠いたゴムチューブをドレン線に通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せている。
【0020】
前記第3の方法では、前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブをドレン線に途中まで通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せ、この状態で熱収縮チューブあるいはゴムチューブをシールド線の皮剥端末まで移動させていることが好ましい。
【0021】
前記第3の方法によれば、熱収縮チューブまたはゴムチューブの先端を斜めカットあるいはスリットを設けているため、チューブのカット面あるいはスリットを上面として水平配置すると、カット部あるいはスリットに対向する下面で止水剤を滴下して受け止めることができ、この止水剤をドレン線の素線間に浸透させていくことができる。
この第3の方法を用いた場合も、前記第1の方法と比較してエア吸引が不要となるため、エア吸引手段を不要にできると共に、作業時間を短縮できる。かつ、斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せるため、定量的に止水剤の量を管理することができる。さらに、止水剤をチューブに滴下してから、チューブをドレン線に被せると、止水剤をドレン線の周囲に確実に浸透させることができる。
【0022】
前記第3の方法において、前記シールド線を治具の水平載置面に配置し、前記ドレン線に通した熱収縮チューブあるいはゴムチューブを前記治具の水平載置面の側端縁より下向き傾斜させた傾斜面に沿わせて配置し、該傾斜面の上側に位置させた前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブの斜めカット部あるいはスリット部に前記止水剤を滴下していることが好ましい。
【0023】
前記構成によれば、ドレン線に被せたチューブを治具の傾斜面に配置しているため、チューブの斜めカット部あるいはスリット部に滴下した止水剤が傾斜に沿って流れ、止水剤がドレン線の素線間に浸透しやすくなる。
前記治具の傾斜面の傾斜角度は水平面に対して30〜90度、好ましくは30〜80度、より好ましくは45〜80度としている。これは傾斜角度が大きくなる程、止水剤の滴下が良好で、止水性能も向上するためである。傾斜角度が30度より小さいと傾斜角度が緩やか過ぎて止水剤を傾斜面に沿って浸透させにくいからであり、90度より大きいと斜めカット部で止水剤を受け止めにくくなるからである。
【0024】
また、前記第3の方法において、熱収縮チューブを用いる場合、前記止水剤を滴下して内部に充填する熱収縮チューブは非防水熱収縮チューブであり、
前記非防水熱収縮チューブの前記斜めカット部あるいはスリット部の先端を一端側が覆うと共に他端を前記シールド線の皮剥ぎ端と当接させた防水熱収縮チューブを被せ、
前記防水熱収縮チューブと非防水熱収縮チューブとを同時に加熱収縮することが好ましい。
【0025】
また、前記第3の方法において、ゴムチューブを用いる場合、前記ゴムチューブの前記斜めカット部あるいはスリット部の先端を一端側が覆うと共に他端を前記シールド線の皮剥ぎ端と当接させた防水熱収縮チューブを被せ、
前記防水熱収縮チューブを加熱収縮していることが好ましい。
【0026】
前記構成によれば、シールド線から引き出したドレン線を非防水熱収縮チューブあるいはゴムチューブで疑似被覆電線化すると共に、非防水熱収縮チューブあるいはゴムチューブの斜めカット部あるいはスリット部からシールド線の皮剥ぎ端までの間にのみ防水熱収縮チューブを被せているため、引き出したドレン線が全長に亙って大幅に大径化することがない。また、前記防水熱収縮チューブにより、斜めカット部あるいはスリット部における防水性能をさらに高めることができると共に、皮剥ぎ端から引き出したドレン線の引き出し部分が補強され、ドレン線をコネクタ等と接続するときに座屈するのを防止することができる。
【0027】
第4の方法として、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記外部に引き出されたドレン線に熱収縮チューブを通し、
前記ドレン線の先端側を囲む前記熱収縮チューブを加熱収縮する一方、反対側のシールド線側は加熱収縮せずにドレン線との間に隙間を保持させて止水剤受部を形成し、該止水剤受部の開口側が上方となるように配置して該止水受部の開口に止水剤を滴下し、
前記滴下した止水剤をドレン線と熱収縮チューブの全長に充填させた後に、前記加熱収縮していない側の熱収縮チューブを加熱収縮することを特徴とするシールド線のドレン線止水方法を提供している。
【0028】
前記熱収縮チューブの先に加熱収縮する部分は、熱収縮チューブの全長の約2/3の長さとすることが好ましい。これは、先に加熱収縮する部分の長さが長くなる程、止水剤がドレン線の長さ方向に浸透するのではなく、止水剤受部においてドレン線の素線間に十分に浸透するため、止水性能を向上させることができるからである。この場合、残りの約1/3の長さを有する前記止水剤受部は、言わば深底の受皿状となり、この受皿状の止水剤受部を設けることで、ドレン線の全長にわたり浸透させる量の止水剤で上方から滴下した際に、前記止水剤受部で溢れることなく受け入れることができる。
この第4の方法の場合も、止水剤受部とした部分を加熱収縮して、熱収縮チューブの全長が収縮されてドレン線を疑似被覆電線とした後に、ゴム栓を熱収縮チーブに外嵌して通し、その後、ドレン線の先端に端子を圧着し、該圧着後に端子とドレン線の間にゴム栓を移動している。
【0029】
第5の方法として、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
所要箇所を切り欠いて開口を設けた熱収縮チューブをドレン線に通して前記開口よりドレン線を露出させ、
前記開口に止水剤を滴下して載せ、この状態で前記熱収縮チューブを加熱収縮し、
さらに前記開口に防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法を提供している。
【0030】
また、第5の方法として、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
所要箇所を切り欠いて開口を設けたゴムチューブをドレン線に通して前記開口よりドレン線を露出させ、
前記開口に止水剤を滴下して載せ、
さらに前記開口に防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法を提供している。
【0031】
前記第5の方法によれば、熱収縮チューブあるいはゴムチューブの所要箇所を切り欠いて開口を設けているため、熱収縮チューブあるいはゴムチューブの開口を上面として水平配置すると、開口位置で止水剤を滴下して受け止めることができ、この止水剤をドレン線の素線間に浸透させていくことができる。
この第5の方法を用いた場合も、前記第1の方法と比較してエア吸引が不要となるため、エア吸引手段を不要にできると共に、作業時間を短縮できる。かつ、開口位置に止水剤を滴下して載せるため、定量的に止水剤の量を管理することができる。さらに、止水剤を熱収縮チューブあるいはゴムチューブに滴下してから、さらに防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮しているため、止水剤をドレン線の素線間およびドレン線の周囲に確実に浸透させることができる。
【0032】
また、第6の方法として、シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、該皮剥ぎ端にスリットを切り欠いて設け、コア電線の絶縁被覆電線を前記皮剥ぎ端から外部に引き出すと共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を前記スリットを通して外部に引き出し、
前記引き出されたドレン線に非防水熱収縮チューブを通して該非防水熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは前記引き出されたドレン線にゴムチューブを通し、
前記スリットに止水剤を滴下して載せ、
さらに前記非防水熱収縮チューブあるいはゴムチューブの前記シールド線側端部を一端側が覆うと共に他端側が前記シースのスリットを覆う防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法を提供している。
【0033】
前記第6の方法によれば、シースの皮剥ぎ端にスリットを設けているため、該スリットを上面として水平配置すると、スリットに対向する下面で止水剤を滴下して受け止めることができ、この止水剤をドレン線の素線間に浸透させていくことができる。さらに、止水剤を滴下してから、さらに防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮しているため、止水剤をドレン線の素線間およびドレン線の周囲に確実に浸透させることができる。
この第6の方法を用いた場合も、前記第1の方法と比較してエア吸引が不要となるため、エア吸引手段を不要にできると共に、作業時間を短縮できる。かつ、スリットに止水剤を滴下して載せるため、定量的に止水剤の量を管理することができる。
【0034】
なお、前記第1〜第3および第5、6の方法で用いるゴムチューブも、シリコンまたはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を含む材料により形成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
上述したように、本発明によれば、ドレン線に熱収縮チューブあるいはゴムチューブを被せ、その内部に止水剤を充填している構造であるため、ドレン線を疑似被覆電線化して止水処理ができ、該止水処理部をスリム化してハーネスの肥大化を防止できる。
【0036】
また、従来の止水処理で用いられていた絶縁被覆電線をドレン線をスプライス接続して継ぎ足し、該スプライス部分をシリコン等でモールドする止水処理と比較して、作業工数が低減できると共に部品点数も低減できる。かつ、シールド線の端末からのシース皮剥ぎ寸法も、スプライス処理に必要な長さを(150mm以上)を必要とせず、端末に端子を圧着接続できるだけの最短寸法とすることができ、その結果、シールド線のシールド性能低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態のシールド線10を示し、該シールド線10は自動車のエンジンルームの防水領域に配線され、該シールド線10の端末をコネクタ30に接続し、該コネクタを防水領域に配置するECU(図示せず)のコネクタ収容部に嵌合するものである。
該シールド線10の皮剥端末から引き出されるドレン線に止水処理を施している。
【0038】
シールド線10は、図2に示すように、2本の信号線となる絶縁被覆電線12(以下、コア線12と称す)とドレン線11とを内包し、このドレン線11とコア線12をシールド層13およびシース14で順次被覆し、シールド層13にドレン線11を接触させて導通している。
前記シールド線10は、先端から40mm程度の最短寸法Lでシース14およびシールド層13を切断剥離してドレン線11とコア線12とを引き出し、各コア線12およびドレン線11の端末にコネクタ30に挿入係止される端子20を圧着接続している。
【0039】
前記シールド線10の端末から引き出されるドレン線11は、図3に示すように、熱収縮チューブ15に通し、かつ、該熱収縮チューブ15の内部に止水剤16を充填して止水処理している。
また、熱収縮チューブ15の先端と端子20の圧着部との境界部分にはゴム栓21を取り付けている。ゴム栓21は他のコア線12と端子20との境界部分にも装着している。
【0040】
つぎに、前記止水構造としたドレン線11の第1の止水方法を説明する。
まず、シールド線10を先端から、前記したように、シース14および金属編組からなるシールド層13を最短寸法Lで切除して、所謂皮剥を行い、切断端のシールド線10の端末からコア線12とドレン線11とを外部に引き出す。
【0041】
ついで、図4(A)に示すように、ドレン線11に絶縁樹脂からなる熱収縮チューブ15を通し、該熱収縮チューブ15を加熱収縮する。これにより、熱収縮チューブ15はドレン線11の外周のほぼ全長にわたって密着被覆される。
【0042】
次に、図4(B)に示すように、熱収縮チューブ15の後端部15aとシース14の皮剥ぎ端との隙間に露出するドレン線11に、熱収縮チューブ15の後端開口15aを塞ぐように例えばシリコンからなる止水剤16を滴下する。この滴下と同時あるいは滴下直後に、図4(C)に示すように、ドレン線11の先端側では熱収縮チューブ15の先端開口15bを覆うようにホース17を接続し、該ホース17の他端を吸引ポンプ18の吸込口に接続する。吸引ポンプ18を駆動して熱収縮チーブ15内のエア吸引を行って、熱収縮チューブ15内を減圧する。
この減圧により、止水剤16を、熱収縮チューブ15の後端開口15aから熱収縮チューブ15内に吸引し、ドレン線11の素線間に浸透させ、時間経過により硬化させる。
【0043】
前記した止水処理後に、ドレン線11の先端側から止水用のゴム栓21を通し、熱収縮チューブ15の先端側の外周面に仮止めしておく。この状態で、熱収縮チューブ15の先端より、ドレン線11が端子20を圧着できる寸法だけ突出している。
ついで、前記ドレン線11の先端に端子20を圧着接続し、その後、ゴム栓21を端子20を覆う位置まで移動させる。この状態で、ゴム栓21の他端側は熱収縮チューブ15の先端側の外周面を覆う位置にあり、ドレン線11の端子圧着部と熱収縮チューブ15との境界部分をゴム栓21で覆っている。
該熱収縮チューブ15の他端はシールド線11の皮剥位置にあり、熱収縮チューブ15でドレン線11を完全に覆い疑似被覆電線化している。
なお、熱収縮チューブ15の後端とシールド線10の端末との間に若干隙間があっても、前記のように、隙間から止水剤16を供給し、隙間の外周面を止水剤16で覆ってモールドした状態としているため、隙間からのドレン線11への浸水を防止できる。
【0044】
2本のコア線12の先端にも、図1に示すように、端子20を圧着接続し、ドレン線11と同様に、ゴム栓21を取り付けている。
【0045】
このように、シールド線10のシース14から露出しているドレン線11を熱収縮チューブ15で被覆すると共に、該熱収縮チューブ15内に例えばシリコンからなる止水剤16を充填して止水処理を施している。
よって、熱収縮チューブ15の両端開口から仮に浸水が発生しても、内部に充填した止水剤16で浸水を遮断できる。また、熱収縮チューブ15の後端側では、前記したようにシールド線10の端末と隙間があってドレン線11が露出していても、該ドレン線11は止水剤のシリコンでモールドされた状態であるため、ドレン線11への浸水が防止できる。
一方、熱収縮チューブ15の先端側では、端子20との境界部分をゴム栓21で被覆しているため、先端側からの浸水も防止できる。
【0046】
さらに、熱収縮チューブ15内に止水剤16をエア吸引してドレン線11の素線間に止水剤16を充填させた止水構造としているため、止水処理箇所の外径は大幅に増大せず、従来の止水処理箇所よりもスリム化できる。
また、ドレン線11に熱収縮チューブ15を被覆して擬似電線化することにより、ドレン線11と絶縁被覆電線とのスプライス接続が不要となる。従って、材料費および加工費を削減できるうえ、シールド線10のシース皮剥ぎ長さLを端子圧着に必要な40mmとすることができ、皮剥ぎ長さLの最短化によりシールド線10のシールド性能の低下を大幅に抑制できる。
【0047】
図5に、ドレン線の止水方法の第2の方法を示す。
第2の方法では、シールド線10の皮剥端から外部に露出させたドレン線11に対して、熱収縮チューブ15を被せる前に、その長さ方向の中間位置で上方から止水剤(シリコン)16を滴下する。滴下された止水剤16は、その流動性によりドレン線11の素線間に浸透していき、露出させたドレン線11の全長にわたって止水剤16を浸透させることができる。このドレン線11への止水剤16の浸透状態は熱収縮チューブを被せていないため、目視検査することができる。
その後、熱収縮チューブ15をドレン線11の先端側から被せていき、ドレン線の先端から皮剥ぎ端までの全長に被覆した後、熱収縮チューブ15を加熱収縮し、止水剤16が浸透されたドレン11の外周面に熱収縮チューブ15を密着させる。
その後の工程は前記第1の方法と同様で、ゴム栓を取り付け、ドレン線11の先端に端子を圧着接続している。
【0048】
前記第2の方法により止水処理されたドレン線11は第1の方法で止水処理された場合と同様で、前記図1〜図3に示す構造となり、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有する。
なお、止水剤16をドレン線11の中間部に滴下する方法に代えて、止水剤16をドレン線11の外周面に沿って塗布してもよい。
【0049】
図6に、ドレン線の止水方法の第3の方法を示す。
第3の方法では、シールド線に被せる熱収縮チューブ15には、シールド線10の皮剥端側となる先端に、斜めカットした止水剤保持部15cを形成している。
この斜めカットした止水剤保持部15c側から熱収縮チューブ15をドレン線11に被せていき、先端の止水剤保持部15cが前記皮剥端に達するまでの途中の位置で停止し、該斜めカットした止水剤保持部15cをカット側を上面として水平状態に保持して上方からシリコンからなる止水剤16を滴下し、止水剤保持部15cで受け止める。滴下された止水剤は熱収縮チューブ15を被せたドレン線11の先端側へと浸透していく。
止水剤16を定量滴下した後、シールド線10の皮剥端まで熱収縮チューブ15をドレン線11に被せて移動させる。其の際、熱収縮チューブ15内に挿入されていくドレン線11の外周面は、止水剤保持部15cで保持された止水剤16と接触し、接触した止水剤16はドレン線11の素線間に浸透していく。
【0050】
前記工程で、熱収縮チューブ15の通し作業と止水剤16のドレン線への浸透作業とが同時に行われる。熱収縮チューブ15をドレン線11のシールド線10の皮剥端まで被せると、ドレン線11の全長にわたり止水剤16が浸透された状態となる。
その後、熱収縮チューブ15を加熱収縮し、止水剤16が浸透されているドレン線の外周面に密着させる。
ついで、前記第1、第2の方法と同様に、ゴム栓を通した後、ドレン線11の熱収縮チューブ15の先端から突出させた端末に端子を圧着する。該端子圧着の後、ゴム栓を端子と熱収縮チューブ15との境界位置に被せるように移動させる。
【0051】
前記第3の方法により防止処理されたドレン線11も第1、第2の方法で止水処理された場合と同様で、前記図1〜図3に示す構造となり、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有するものである。
かつ、第2の方法と同様に止水剤の充填時にエア吸引を行う必要がなく作業時間を短縮できる。さらに、滴下した止水剤を熱収縮チューブの斜めカットした止水剤保持部で受け止めているために落下せず、かつ、滴下する止水剤の量を止水剤保持部に受け止められる量に規制できる。即ち、止水剤保持部の斜めカットの大きさ調節することで、止水剤を定量管理することができる。
【0052】
図7に、ドレン線の止水方法の第3の方法の第1変形例を示す。
第3の方法の変形例では、水平載置面40aと、該水平載置面40aの側端縁より下向き傾斜させた傾斜面40bを備えた治具40を用いている。傾斜面40bの傾斜角度は水平面に対して45度とし、傾斜面40bの下側には熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cと反対側の端部15dに当接させて熱収縮チューブ15を傾斜面40b上に保持するための止め板40cを設けている。
【0053】
前記治具40の水平載置面40aにシールド線10を配置すると共に、傾斜面40bにドレン線11に被せた熱収縮チューブ15を止め板40cで保持して配置し、該熱収縮チューブ15の斜めカットした止水剤保持部15cを傾斜面40bの上側に配置している。このとき、止水剤保持部15cのカット側を上面としている。なお、該熱収縮チューブ15は第3の方法で用いたのと同一形状とし、内面に止水剤を設けていない非防水熱収縮チューブからなる。
【0054】
前記治具40の傾斜面40bに配置した熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cに上方から止水剤16を滴下し、止水剤保持部15cで受け止める。滴下された止水剤16は熱収縮チューブ15を被せたドレン線11の先端側へ傾斜面に沿って浸透していく。
止水剤16を定量滴下した後、シールド線10の皮剥端まで熱収縮チューブ15をドレン線11に被せて移動させる。其の際、熱収縮チューブ15内に挿入されていくドレン線11の外周面は、止水剤保持部15cで保持された止水剤16と接触し、接触した止水剤16はドレン線11の素線間に浸透していく。
【0055】
次いで、シールド線10を治具40から取り外し、熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cからシールド線10の皮剥ぎ端にかけて内面に止水剤41aを設けた防水熱収縮チューブ41を被せている。即ち、防水熱収縮チューブ41の一端側が熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cを覆うと共に他端がシールド線10の皮剥ぎ端と当接している。この状態で、熱収縮チューブ15と防水熱収縮チューブ41を加熱収縮し、ドレン線11の外周面に密着させる。
次いで、前記第1、第2の方法と同様に、ゴム栓を通した後、ドレン線11の熱収縮チューブ15の先端から突出させた端末に端子を圧着する。
【0056】
前記第3の方法の第1変形例により防水処理されたドレン線11も第3の方法で止水処理された場合と同様で、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有するものである。
かつ、ドレン線11に被せた熱収縮チューブ15を治具40の傾斜面40bに配置しているため、熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cに滴下した止水剤16が傾斜に沿って流れ、止水剤16がドレン線11の素線間に浸透しやすくなる。
なお、他の方法及び作用効果は第3の方法と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図8に、ドレン線の止水方法の第3の方法の第2変形例を示す。
本変形例の方法では、シールド線に被せる熱収縮チューブ15には、シールド線10の皮剥端側となる先端に、熱収縮チューブ15の長さ方向に延在する三角形状のスリット15eを切り欠き、該スリット部を備えた止水剤保持部15cを形成している。
このスリットを設けた止水剤保持部15c側から熱収縮チューブ15をドレン線11に被せていき、先端の止水剤保持部15cが前記皮剥端に達するまでの途中の位置で停止し、該止水剤保持部15cをスリット15eを上面として水平状態に保持して上方から止水剤16を滴下し、止水剤保持部15cで受け止める。滴下された止水剤は熱収縮チューブ15を被せたドレン線11の先端側へと浸透していく。
止水剤16を定量滴下した後、シールド線10の皮剥端側へ熱収縮チューブ15をドレン線11に被せて移動させる。其の際、熱収縮チューブ15内に挿入されていくドレン線11の外周面は、止水剤保持部15cで保持された止水剤16と接触し、接触した止水剤16はドレン線11の素線間に浸透していく。
【0058】
前記工程で、熱収縮チューブ15の通し作業と止水剤16のドレン線への浸透作業とが同時に行われる。熱収縮チューブ15をドレン線11のシールド線10の皮剥端側まで被せると、ドレン線11の全長にわたり止水剤16が浸透された状態となる。
次いで、熱収縮チューブ15の止水剤保持部15cからシールド線10の皮剥ぎ端にかけて内面に止水剤を設けた防水熱収縮チューブ41を被せている。即ち、防水熱収縮チューブ41の一端側が熱収縮チューブ15のスリット15e全体を覆うと共に他端がシールド線10の皮剥ぎ端と当接している。この状態で、熱収縮チューブ15と防水熱収縮チューブ41を加熱収縮し、ドレン線11の外周面に密着させる。
次いで、前記第1、第2の方法と同様に、ゴム栓を通した後、ドレン線11の熱収縮チューブ15の先端から突出させた端末に端子を圧着する。
【0059】
前記第3の方法の第2変形例により防水処理されたドレン線11も第3の方法で止水処理された場合と同様で、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有するものである。
また、熱収縮チューブ15のドレン線挿入側の先端にスリット15eを設けているため、熱収縮チューブ15にドレン線を簡単に通すことができる。
なお、他の方法及び作用効果は第3の方法と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
前記第3の方法では、熱収縮チューブ15をドレン線11に途中まで通し、止水剤16を滴下した後に、シールド線10の皮剥ぎ端側へ移動させているが、熱収縮チューブ15を予め所定位置まで通し、止水剤16を滴下した後に移動させない方法としてもよい。
【0061】
図9に、ドレン線の止水方法の第4の方法を示す。
まず、シールド線10の皮剥端から外部に引き出されたドレン線11の先端側から熱収縮チューブ15を被せる。
被せた熱収縮チューブ15は、ドレン線11の先端側から約半分の長さの部分15xを加熱収縮してドレン線11の外周面に密着させる。この状態で図9(A)に示すように、加熱収縮していない皮剥端側の残り半分は、ドレン線11の外周面との間に隙間を有し、皮剥端側と対向する側が隙間を有する開口端となる。即ち、熱収縮チューブ15の残り半分は深底の皿状となり、この部分を止水剤受部15yとする。
【0062】
ついで、熱収縮チューブ15を止水剤受部15yの開口端15y−1が上方となるように、上下方向に配置し、図9(B)に示すように、上向きの開口端15y−1を上方の皮剥端との間に間隔をあけて配置し、上方より止水剤16を滴下していく。
滴下された止水剤は加熱収縮した部分15x内に自重落下して内部に通しているドレン線11内に浸透していく。かつ、止水剤受部15y内のドレン線11にも浸透していく。該止水剤受部15y内に定量の止水剤16を滴下すると、ドレン線11の全長に渡り止水剤16が浸透することとなる。
【0063】
止水剤16を定量滴下した後、熱収縮チューブ15の開口端15y−1を上方へと引き上げてシールド線10の皮剥端と当接させ、ドレン線11の全長に止水剤16を浸透させる。
ついで、加熱収縮していない止水剤受部15yを加熱収縮して、ドレン線11の外周面に密着させる。
ついで、前記第1、第2の方法と同様に、ゴム栓21を通した後、ドレン線11の熱収縮チューブ15の先端から突出させた端末に端子20を圧着する。該端子圧着の後、ゴム栓21を端子20と熱収縮チューブ15との境界位置に被せるように移動する。
【0064】
前記第4の方法により防止処理されたドレン線11は、第1、第2の方法で止水処理された場合と同様で前記図1〜図3に示す構造となり、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有するものである。
かつ、第4の方法では、第3の方法で必要とした熱収縮チューブの斜めカットをすることなく、止水剤受部を形成することができると共に、該止水剤受部は深底の皿状となるため、上方から滴下する止水剤を確実に溢れることなく受け入れることができる。しかも、熱収縮チューブの先に加熱収縮する長さと、加熱収縮せずに止水剤受部とする長さを適宜に調節することで滴下する止水剤の量を管理することができる。
なお、第4の方法では、熱収縮チューブ15の約半分の長さの部分を加熱収縮して、残りの約半分を止水剤受部としているが、約2/3の長さの部分を加熱収縮して、残りの約1/3を止水剤受部としても良好な止水処理部を形成することができる。
また、第4の方法では、熱収縮チューブ15の長さ方向を垂直方向として止水処理部を形成しているが、第3の方法の治具40の傾斜面40bに熱収縮チューブ15を載置した傾斜状態で第4の方法により止水処理部を形成してもよい。
【0065】
図10に、ドレン線の止水方法の第5の方法を示す。
第5の方法では、ドレン線11に被せる熱収縮チューブ15には、中間位置を切り欠いて開口15dを設けている。
図10(A)に示すように、この熱収縮チューブ15を皮剥端に達するまでドレン線11に被せていき、開口15dを上面として水平状態に保持して、該開口15dに上方からシリコンからなる止水剤16を滴下し、開口15dの周縁および開口15dの対向位置の熱収縮チューブ15で受け止める。滴下された止水剤16は熱収縮チューブ15を被せたドレン線11の素線間に浸透していく。
止水剤16を定量滴下した後、熱収縮チューブ15を加熱収縮し、止水剤16が浸透されているドレン線11の外周面に密着させる。
【0066】
ついで、図10(B)に示すように、熱収縮チューブ15の開口15d全面を覆うように、さらに防水熱収縮チューブ19を被せ、該防水熱収縮チューブ19を加熱収縮する。このとき、防水熱収縮チューブ19の内周面に設けた止水剤19aで開口15dを覆うと共に、熱収縮チューブ15の外周面と防水熱収縮チューブ19の内周面との間に止水剤19を充填している。
ついで、前記第1、第2の方法と同様に、ゴム栓を通した後、ドレン線11の熱収縮チューブ15の先端から突出させた端末に端子を圧着する。
【0067】
前記第5の方法により防止処理されたドレン線11は前記方法で止水処理された構造よりも防水熱収縮チューブ19を被せている分、若干大径となるが、止水処理した熱収縮チューブ15の開口15dからの浸水を確実に防止することができると共に、ドレン線先端の端子をコネクタ内に挿入して相手型端子との接続時に直進性が保持でき、コネクタ接続作業を容易とすることができる。
かつ、第2の方法と同様に止水剤の充填時にエア吸引を行う必要がなく作業時間を短縮できる。さらに、滴下した止水剤を熱収縮チューブの開口周縁で受け止めているために落下せず、かつ、滴下する止水剤の量を開口周縁に受け止められる量に規制できる。
なお、第5の方法では、熱収縮チューブ15の開口15dに直接防水熱収縮チューブ19を被せているが、開口15dをテープ巻きして止水剤の溢れを防止してから防水熱収縮チューブ19を被せてもよい。
【0068】
図11及び図12に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、シールド線10の端末から引き出されるドレン線11に、熱収縮チューブに替えてシリコンまたはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を含むゴムチューブ50を通し、該ゴムチューブ50の内部に止水剤16を充填して止水処理している。
【0069】
ドレン線11の端末側に位置するゴムチューブ50の先端部には、第1実施形態のゴム栓と略同一形状のゴム栓部50aを一体的に設けており、端子20の一方のバレル20aをドレン線11の端末に圧着する一方、他方のバレル20bをゴムチューブ50のゴム栓部50aに圧着している。
また、ゴムチューブ50の他端とシールド線10の皮剥ぎ端との間に隙間を設けており、ゴムチューブ50の他端部からシールド線10の皮剥ぎ端にかけてテープ51を巻き付けている。
【0070】
次に、前記止水構造としたドレン線11の止水方法を説明する。
まず、シールド線10の皮剥端から外部に露出させたドレン線11に対して、ゴムチューブ50を被せる前に、その長さ方向の中間位置で上方から止水剤(シリコン)16を滴下する。
次いで、ゴムチューブ50をドレン線11の先端側から被せていき、ゴムチューブ50で止水剤16の滴下部分を被覆した後、ゴムチューブ50の先端側に端子20を圧着すると共に、他端側にテープ51を巻きつける。
なお、本実施形態では、ゴムチューブ50の他端側にテープ51を巻き付けているが、防水熱収縮チューブを被せてもよい。
【0071】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有する。かつ、熱収縮チューブの加熱工程が不要となると共に、ゴムチューブ50の端末に直接端子を圧着できるため、ゴム栓が不要となり、部品点数および作業工数を低減することもできる。
なお、本実施形態の止水方法は、第1実施形態の第2の止水方法に相当するが、本実施形態のようにゴムチューブ50を用いて、第1実施形態の第1、第3、第5の止水方法に相当する方法(熱収縮チューブ15を加熱収縮する工程を除く)を採用することもできる。
また、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
図13及び図14に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、シールド線10のシース14の皮剥ぎ端に、シース14の長さ方向に延在する三角形状のスリット14aを切り欠いて設け、該スリット14aを通してドレン線11を外部へ引き出している。ドレン線11はスリット14aからシース14の皮剥ぎ端と反対方向に引き出して、スリット14aの細幅部分でドレン線を保持し、引き出したドレン線11を所要箇所でシース14の皮剥ぎ端側へ折り返している。
【0073】
前記ドレン線11の引き出し位置の素線間に止水剤16を充填している一方、ドレン線11の先端側に非防水熱収縮チューブ15を通して加熱収縮しており、該非防水熱収縮チューブ15の先端にゴム栓21を被せて端子20を圧着している。
さらに、シース14と非防水熱収縮チューブ15との間で露出したドレン線11に防水熱収縮チューブ19を被せて熱収縮しており、該防水熱収縮チューブ19の一端側で非防水熱収縮チューブのシールド線側端部を覆うと共に他端側でシース14のスリット14aを覆っている。これによりシース14と非防水熱収縮チューブ15との間で露出したドレン線11の外周を防水熱収縮チューブ19の止水剤19aで覆っている。
【0074】
次に、止水構造としたドレン線11の止水方法(第6の方法)を説明する。
まず、図14(A)に示すように、コア線12をシース14の皮剥ぎ端から外部に引き出すと共に、ドレン線11をシース14の皮剥ぎ端に設けたスリット14aを通して外部に引き出す。
次いで、図14(B)に示すように、引き出したドレン線11の先端側に非防水熱収縮チューブ15を通して該非防水熱収縮チューブ15を加熱収縮する。
次いで、前記スリット14aに止水剤16を滴下して載せ、シース14と非防水熱収縮チューブ15との間で露出したドレン線11に防水熱収縮チューブ19を被せて加熱収縮する。
その後、ドレン線11の先端にゴム栓21を取り付けると共に端子20を圧着接続する。
【0075】
前記構成によれば、第1実施形態と同様、ドレン線11にスリムな止水処理部を設けることができる等、同一の作用効果を有する。また、エア吸引が不要となるため、エア吸引手段を不要にできると共に、作業時間を短縮できる。かつ、シース14のスリット14aに止水剤16を滴下して載せるため、定量的に止水剤の量を管理することができる。
なお、本実施形態の非防水熱収縮チューブに替えて、第2実施形態のゴムチューブを用いてもよい。
また、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態のドレン線が止水処理されたシールド線の全体を示す図面である。
【図2】シールド線の斜視図である。
【図3】(A)(B)は止水処理されたドレン線の拡大断面図である。
【図4】(A)(B)(C)は、第1のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図5】第2のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図6】第3のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図7】(A)(B)は第3のドレン線の止水方法の第1変形例を示す図面である。
【図8】(A)(B)は第3のドレン線の止水方法の第2変形例を示す図面である。
【図9】(A)(B)(C)は第4のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図10】(A)(B)は第5のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図11】本発明の第2実施形態を示す図面である。
【図12】第2実施形態のドレン線の止水方法を示す図面である。
【図13】本発明の第3実施形態を示す図面である。
【図14】第3実施形態のドレン線の止水方法(第6のドレン線止水方法)を示す図面である。
【図15】(A)(B)は従来例の図である。
【図16】他の従来例の図である。
【符号の説明】
【0077】
10 シールド線
11 ドレン線
12 絶縁被覆電線(コア線)
13 シールド層
14 シース
15 熱収縮チューブ
16 止水剤(シリコン)
20 端子
21 ゴム栓
40 治具
40a 水平載置面
40b 傾斜面
50 ゴムチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド線の端末から外部に引き出されるドレン線が、絶縁樹脂またはゴムからなるチューブで被覆されていると共に、該チューブ内のドレン線の素線間には止水剤が充填されていることを特徴とするシールド線のドレン線止水構造。
【請求項2】
前記チューブが熱収縮チューブからなり、前記ドレン線の端末に接続される端子と前記熱収縮チューブとの境界部分はゴム栓で被覆されている請求項1に記載のシールド線のドレン線止水構造。
【請求項3】
前記チューブがシリコンまたはEPDM(エチレンプロピレンゴム)を含むゴムチューブからなり、前記ドレン線の端末に接続される端子が前記ゴムチューブの外周面に圧着接続されている請求項1に記載のシールド線のドレン線止水構造。
【請求項4】
前記シールド線は車両内の防水領域に配線され、前記ドレン線の端末に接続された端子は、前記シールド線から引き出される被覆電線端末に接続された端子と共に、前記防水領域に配置される機器に接続される請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシールド線のドレン線止水構造。
【請求項5】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記外部に引き出されたドレン線に熱収縮チューブを通して、該熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは前記外部に引き出されたドレン線にゴムチューブを通し、
前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブからなるチューブの一端側からエア吸引を行いながら他端側から前記チューブ内に止水剤を供給して、前記チューブ内のドレン線の素線間に止水剤を充填していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項6】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記引き出されたドレン線に止水剤を滴下あるいは塗布してドレン線の素線間に浸透させ、
前記止水剤を浸透させたドレン線に熱収縮チューブを通し、該熱収縮チューブを加熱収縮している、あるいは前記止水剤を浸透させたドレン線にゴムチューブを通していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項7】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
先端を斜めカット、あるいは先端にスリットを切り欠いた熱収縮チューブをドレン線に通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せ、その後、前記熱収縮チューブを加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項8】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
先端を斜めカット、あるいは先端にスリットを切り欠いたゴムチューブをドレン線に通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せていることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項9】
前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブをドレン線に途中まで通した後、前記斜めカット部あるいはスリット部に止水剤を滴下して載せ、この状態で熱収縮チューブあるいはゴムチューブをシールド線の皮剥端末まで移動させている請求項7または請求項8に記載のシールド線のドレン線止水方法。
【請求項10】
前記シールド線を治具の水平載置面に配置し、前記ドレン線を通した熱収縮チューブあるいはゴムチューブを前記治具の水平載置面の側端縁より下向き傾斜させた傾斜面に沿わせて配置し、該傾斜面の上側に位置させた前記熱収縮チューブあるいはゴムチューブの斜めカット部あるいはスリット部に前記止水剤を滴下している請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のシールド線のドレン線止水方法。
【請求項11】
前記止水剤を滴下して内部に充填する熱収縮チューブは非防水熱収縮チューブであり、
前記非防水熱収縮チューブの前記斜めカット部あるいはスリット部の先端を一端側が覆うと共に他端を前記シールド線の皮剥ぎ端と当接させた防水熱収縮チューブを被せ、
前記防水熱収縮チューブと非防水熱収縮チューブとを加熱収縮している請求項7、請求項9または請求項10に記載のシールド線のドレン線止水方法。
【請求項12】
前記ゴムチューブの前記斜めカット部あるいはスリット部の先端を一端側が覆うと共に他端を前記シールド線の皮剥ぎ端と当接させた防水熱収縮チューブを被せ、
前記防水熱収縮チューブを加熱収縮している請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載のシールド線のドレン線止水方法。
【請求項13】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
前記外部に引き出されたドレン線に熱収縮チューブを通し、
前記ドレン線の先端側を囲む前記熱収縮チューブを加熱収縮する一方、反対側のシールド線側は加熱収縮せずにドレン線との間に隙間を保持させて止水剤受部を形成し、該止水剤受部の開口側が上方となるように配置して該止水受部の開口に止水剤を滴下し、
前記滴下した止水剤をドレン線と熱収縮チューブの全長に充填させた後に、前記加熱収縮していない側の熱収縮チューブを加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項14】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
所要箇所を切り欠いて開口を設けた熱収縮チューブをドレン線に通して前記開口よりドレン線を露出させ、
前記開口に止水剤を滴下して載せ、この状態で前記熱収縮チューブを加熱収縮し、
さらに前記開口に防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項15】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、コア電線の絶縁被覆電線と共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を外部に引き出し、
所要箇所を切り欠いて開口を設けたゴムチューブをドレン線に通して前記開口よりドレン線を露出させ、
前記開口に止水剤を滴下して載せ、
さらに前記開口に防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。
【請求項16】
シールド線のシースを先端から所要寸法皮剥ぎして、該皮剥ぎ端にスリットを切り欠いて設け、コア電線の絶縁被覆電線を前記皮剥ぎ端から外部に引き出すと共に金属編組あるいは金属箔からなるシールド材と接触させたドレン線を前記スリットを通して外部に引き出し、
前記引き出されたドレン線に非防水熱収縮チューブを通して該非防水熱収縮チューブを加熱収縮し、あるいは前記引き出されたドレン線にゴムチューブを通し、
前記スリットに止水剤を滴下して載せ、
さらに前記非防水熱収縮チューブあるいはゴムチューブの前記シールド線側端部を一端側が覆うと共に他端側が前記シースのスリットを覆う防水熱収縮チューブを被せて加熱収縮していることを特徴とするシールド線のドレン線止水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−108684(P2008−108684A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2370(P2007−2370)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】