説明

シール手段及び該シール手段を備えた加圧装置

【課題】シール性能の高いシールリングを提供する。
【解決手段】例えば、ギヤポンプ又は押出機の回転軸12方向への溶融ゴムの漏洩を防止する複数(4個)のシール手段20a〜20dからなるシールリング20であって、前記シールリングは、隣接するシールリングとの間に微小間隔を隔てて、前記回転軸12の半径方向外方に順に配置されている。複数のシールリング間の間隙は断面略L字状をなしているため、加圧された溶融ゴムはこの隙間に流入するが、流動抵抗により前記隙間に詰まり、或いはシールリングの変形で流動がブロックされるため、シールリング20から外部に漏洩することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアポンプやゴム押出機等のような加圧装置において、その回転軸方向への被加圧流体の漏洩を防止する複数段のシールリングかなるシール手段及び該シール手段を備えた加圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融したゴム部材を押し出すギアポンプや、押出機の先端に直接ギヤポンプを取り付けてギヤポンプで昇圧してダイスから押し出して成形する押出機においては、ギヤポンプで昇圧されたゴム部材が外部に漏れ出さないように、回転軸には各種のシール手段が施されている。
このような、ギヤポンプに用いるシール手段としては、図6に模式的に示すように種々のものが知られている。
即ち、(1)弾性体でできたシールを回転軸の周りに密封状に配置したO−リングを用いるもの(具体例としては、例えば特開平11−62852号公報参照)、(2)同様にギヤモータに用いた回転軸の周りにオイルシールなどの弾性体を密封状に配置したもの(同、特開2003−21435号公報参照)、(3)回転軸の周りに非弾性体を密封状に配置し金属の弾性を利用したメタルシール、(4)ラビリンスシール(同、特開平10−47260号公報)等が知られている。
【0003】
ところで、溶融ゴムなどの強粘性流体を、例えばギアポンプで加圧しようとすると、これらのシールと回転軸収容部外壁との間から、加圧されたゴムの一部が漏れ出すことは避けられず、そのため漏れ出したゴムでギヤポンプのベアリングが破損するという問題がある。
【特許文献1】特開平11−62852号公報
【特許文献2】特開2003−214359号公報
【特許文献3】特開平10−47260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来のギアポンプ等の加圧装置におけるシール漏れの問題を解決すべくなされたものであって、ギアポンプ等の加圧装置で昇圧されたゴム材等の被加圧流体がシール手段から漏洩するのを完全に防止して、漏洩した前記流体による加圧装置のベアリングの破損等を無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、加圧装置の回転軸方向への被加圧流体の漏洩を防止するシール手段であって、前記シール手段は、隣接するシールリングとの間に微小間隔を隔てて、前記回転軸の半径方向外方に順に配置された複数のシールリングで構成され、前記複数のシールリングは回転軸方向に所定の長さで互いに重なる区域を有し、被加圧流体が前記区域内において前記微小間隙を閉塞することを特徴とするシール手段である。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたシール手段において、前記複数のシールリングは前記回転軸の回りで独立して回転可能に配置されていることを特徴とするシール手段である。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載されたシール手段において、前記隣接するシールリング間の微小間隙は、前記回転軸方向に延びた直線部に続きこれから所定の角度で延在する屈曲部からなることを特徴とするシール手段である。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載されたシール手段において、前記被加圧流体は溶融ゴムであることを特徴とするシール手段である。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載されたシール手段において、前記シールリングは前記微小間隙に流入した被加圧流体により変形可能であることを特徴とするシール手段である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載されたシール手段を備えた加圧装置である。
【0006】
(作用) ギヤポンプ等の加圧装置から複数のシールリング間の隙間に流れ込んだゴム材等の強粘性被加圧流体は、そこで前記隙間を埋めてシールするか、或いはシールリングを変形させることで前記隙間を遮断し、それ以上の流動を完全に阻止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加圧装置から漏れ出した被加圧流体は、複数のシールリングの互いに重なった区域内に進入しその区域の隙間を埋めるか、又は前記区域内に進入してその区域のシールリングを変形させることで前記被加圧流体の漏洩を完全に遮断することができる。 また、本発明によれば、とくに加圧装置で発生した圧力をシール手段のシール性の向上に向けることができるとともに、シール手段が複数段のシールリングで構成されているため、要求されるシール性能及びコストの面から最適なシールの段数を設定することができ、コストを最低にしつつ完全なシール性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るシール手段の1実施の形態を図面を参照して説明する。 図1は本実施の形態に係るシール手段を備えたギヤポンプの断面図である。 ギヤポンプ1は、ギアポンプを構成する歯車10と該歯車10と一体に連結された回転軸12と、回転軸12を支承するためハウジング16に取り付けられた軸受(ベアリング)14、前記歯車10と軸受14間に設けられ、ギヤポンプから回転軸12上にゴムが流出するのを阻止するための多段のシールリングで構成されたシール手段20、シール手段20と軸受12との間で回転軸12上に配置され、複数段のシールリングの最も外側のシールリング端面に係合してシールリング同士が相互にずれるのを防止するカラー18とからなっている。
【0009】
図2は、図1に示すシール手段20の一部を拡大して示した断面図である。
シール手段20は、ここでは4段のシールリングを有するものとして示されている。即ち、各シールリングは、ギヤポンプの回転軸12に接触する位置から回転軸12の半径方向外側に重ねて配置されるよう、順に大径となる第1〜第4のシールリング20a〜20dからなっている。
【0010】
ここで、ギアポンプの回転軸12に接触する第1のシールリング20aは断面が略矩形の円環状を成しており、これに対し、第1のシールリング20aよりも半径方向外側に配置される第2〜4のシールリング20b〜20dは、図2に示すように断面略逆L字状の円環状を成している。即ち、第2のシールリング20bは、例えば断面略正方形状の第1のシールリング20aの外周面22a及びそれと略直角をなす半径方向面24aにそれぞれ対応する、内周面22bと半径方向面24bとを有する断面略逆L字状に形成されており、同様に第3〜4のシールリングも第2のシールリングと同様の断面形状を有している。
【0011】
第1〜4のシールリング20a〜20dは、互いに例えば0.01〜0.05mm程度の微小な隙間で隔てられており、軸方向に所定の距離、つまり被加圧流体が当該隙間を閉塞するに必要な距離だけ互いに重なり合っており、かつそれぞれがギヤポンプの回転軸12の回りで独立して回転自在となるよう配置されている。
【0012】
本実施の形態に係るシール手段を備えたギヤポンプにおいて、昇圧された溶融ゴムの一部がギアポンプの回転軸12に沿って流れ出すと、この溶融ゴムはシール手段20のシールリング20a〜20d間の前記微小間隙内に流入する。ここで溶融ゴムは微小間隙内で前記ギヤポンプによりシールリング20a〜20d間で強く加圧されて前記間隙を閉鎖し、ゴム自体が一種のシールとなって、ゴムの流動を阻止する作用を持つ。
また、間隙内に流入した溶融ゴムがシールリングを変形させ無理に流動しようとすると、その変形によりその外周面側はその外側のシールリングの内周面に強く押し付けられるため、新たな溶融ゴムの流入は阻止される。
【0013】
また、既に間隙内に流入した溶融ゴムがさらに流動し続けようとしても、溶融ゴムの流動経路は、第1のシール手段20の断面形状を略矩形とし、第2〜4のシール手段20b〜20dの断面形状を略逆L字状に形成したことにより、各シール手段20間の空隙は前記略逆L字状の約0.01〜0.05mmの微小な空隙のみであるから、その流動抵抗はきわめて高く、流入した溶融ゴムがこの微小な屈曲通路を通り抜けてベアリング側に流動することは不可能である。
【0014】
図3A、図3Bは、シールリング間に溶融ゴムが流入してそこでブロックされる様子、つまりシールメカニズムを説明するために示したシール手段の要部断面図である。
即ち、図3Aは、各シールリング20aと20b及び20bと20cの間に溶融ゴムが流入し、そのゴムに作用する圧力で各シールリングの微小な空隙に詰め込まれ、その詰まったゴムがシール機能を有することになる様子を示している。
また、図3Bは、溶融ゴムが例えば、シールリング20aと20b間の微小な空隙に侵入することで、シールリング20bが変形しそれより、シールリング20bとシールリング20c間の微小な空隙を閉鎖する様子を示している。
【0015】
このように、本実施の形態に係るシール手段では、加圧溶融ゴムは、自らの圧力でシールリング間を閉塞して後続の溶融ゴムの侵入を完全に遮断するから、従来のように、これがギヤポンプの回転軸12方向に漏れ出してベアリング14を損傷させる等の問題が生じることはない。
【0016】
図4は、シール手段をギヤポンプに適用した図1と同様の図である。
このシール手段20は、図1に関連して説明したギャポンプに適用したものと基本的に同じで、シールリング20a〜20dがギアポンプの回転軸12から図1のものと逆向きに配置され、従って、シールリング20aから20dのずれ止め用カラー18がギヤポンプの回転軸12に最も近いシールリング20aの端面に係合していることを除き、前記第1の実施の形態のギヤポンプと同様である。
【0017】
図5は、本発明のシールリングを押出機に適用した図1と同様の図である。シール手段20がフィードロール11の回りに配置されており、このシールリングの配置は、図示に示す前記ギヤポンプのものと同様であり、その作用効果等は前記第1及び第2の実施の形態と同様である。
なお、押出機においても、シールリング及びカラーの配置を図3に関連して示した配置にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のシール手段を適用したギヤポンプの縦断面図である。
【図2】シール手段の拡大断面図である。
【図3】シールリングのシールメカニズムを説明するための図1に示すシール手段の拡大断面図である。
【図4】本発明のシール手段を適用したギヤポンプの縦断面図である。
【図5】本発明のシール手段を適用した押出機の縦断面図である。
【図6】従来のシール手段を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・・ギヤポンプ、10・・・ギヤポンプの歯車、11・・・フィードロール、12・・・ギヤポンプの回転軸、14・・・ベアリング、16・・・ギヤポンプハウジング、18・・・カラー、20・・・シール手段。20a〜20d・・・シールリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧装置の回転軸方向への被加圧流体の漏洩を防止するシール手段であって、
前記シール手段は、隣接するシールリングとの間に微小間隔を隔てて、前記回転軸の半径方向外方に順に配置された複数のシールリングで構成され、前記複数のシールリングは回転軸方向に所定の長さで互いに重なる区域を有し、被加圧流体が前記区域内において前記微小間隙を閉塞することを特徴とするシール手段。
【請求項2】
請求項1に記載されたシール手段において、
前記複数のシールリングは前記回転軸の回りで独立して回転可能に配置されていることを特徴とするシール手段。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたシール手段において、
前記隣接するシールリング間の微小間隙は、前記回転軸方向に延びた直線部に続きこれから所定の角度で延在する屈曲部からなることを特徴とするシール手段。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたシール手段において、
前記被加圧流体は溶融ゴムであることを特徴とするシール手段。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたシール手段において、
前記シールリングは前記微小間隙に流入した被加圧流体により変形可能であることを特徴とするシール手段。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたシール手段を備えた加圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37747(P2006−37747A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214775(P2004−214775)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】