説明

シール組み付け装置及びシール組み付け方法

【課題】被組み付け部材の環状溝にシールリングを容易に組み付けることができて、組み付け時間を短縮することができるシール組み付け装置を提供する。
【解決手段】固定型22の外周面にシールリング11のシール部11aの内周面と対応する形状の保持面22aを形成する。固定型22の保持面22aと対応する位置にシールリング11を位置決めするために、複数の位置決めピン23を設ける。固定型22の外周には、複数の可動型24を接近離間可能に対向配置する。各可動型24の内側面には、シールリング11のシール部11aの外周面と対応する形状の保持面24aを形成する。固定型22の保持面22aと各可動型24の保持面24aとの間でシールリング11のシール部11aを保持した状態で、シールリング11の取付部11bをシリンダヘッドカバーの環状溝に組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばエンジンにおけるシリンダヘッドカバー等の被組み付け部材の環状溝にシールリングを組み付けるためのシール組み付け装置及びシール組み付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシール組み付け装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成が提案されている。
特許文献1に記載の装置では、シリンダヘッドカバーの環状溝への組み付け形状となるように造形されたシールリング(ガスケット)を、その形状に維持して仮定着するための補助枠が設けられている。そして、シリンダヘッドカバーの環状溝に対するシールリングの組み付け時には、シールリングを補助枠の挿入溝に挿入して仮定着した状態で、補助枠がシリンダヘッドカバーに向かって接近移動されることにより、シールリングがシリンダヘッドカバーの環状溝内に圧入組み付けされる。
【0003】
また、特許文献2に記載の装置では、組み付け用基板の前面上部に、シールリングの上端部を支持して他の部分を狭まった状態で垂下させるための支持バーが突設されている。基板の前面中央部の外側には、シールリングの外周側に位置する複数の固定ガイドピンが突設されている。基板の前面中央部の内側には、シールリングの内周側に位置する複数の可動ガイドピンが、固定ガイドピンに対して接近離間移動可能に突設されている。
【0004】
そして、被組み付け部材の環状溝に対するシールリングの組み付け時には、シールリングを前記支持バーに支持した状態で、複数の可動ガイドピンが固定ガイドピンに向かって接近移動される。この移動により、シールリングが被組み付け部材の環状溝に合致する所定の形状に拡開されて、各固定ガイドピン可動ガイドピンの間で挟持される。この状態で、シールリングが被組み付け部材の環状溝に向かって押付移動されることにより、シールリングが被組み付け部材の環状溝内に圧入組み付けされる。
【0005】
さらに、前記特許文献1及び特許文献2に記載の従来装置のほかに、被組み付け部材に形成された浅い環状溝の部分に液状のシール材を直接塗布し、このシール材を硬化させることによりシールリングを形成する方法も、従来から提案されている。
【特許文献1】特開平7−301336号公報
【特許文献2】特開平9−192950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この従来のシール組み付け装置または組み付け方法においては、次のような問題があった。特許文献1に記載の装置では、補助枠の狭い挿入溝内にシールリングを挿入して仮定着する必要があるため、そのシールリングの仮定着作業が面倒で時間がかかる。
【0007】
また、特許文献2に記載の装置では、可動ガイドピンの移動により複数の固定ガイドピン可動ガイドピンとの間でシールリングを挟持して、所定の形状に拡開されて保持するようになっている。このため、可動ガイドピンとシールリングとが相対移動し、言い換えれば、可動ガイドピンがシールリングに周面上をその延長方向に沿って相対移動する。従って、シールリングが単純なリング形状である場合は問題が少ないが、シールリングが凹凸部を有する複雑な形状である場合には、そのシールリングを均等に拡開させて所定の形状に保持するのが困難である。このような場合は、被組み付け部材の環状溝に対して組み付けることが難しい。
【0008】
さらに、被組み付け部材に液状のシール材を直接塗布することによりシールリングを形成する従来方法では、シールリングを介して被組み付け部材を対向する部材に装着した場合、シールリングが対向する部材側に貼り付きやすい。このため、被組み付け部材を対向する部材から取り外した際に、シールリングが被組み付け部材から剥離して破損され、被組み付け部材を対向する部材に再度装着した場合、シール機能が低下するという基本的な機能が損なわれるおそれがあった。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、被組み付け部材の環状溝にシールリングを容易に組み付けることができて、組み付け時間を短縮することができるシール組み付け装置及びシールリングの組み付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、シール組み付け装置に係る発明は、シールリングの内周面または外周面の一方と対応する形状の保持面を形成した固定型と、その固定型の保持面と対応する位置にシールリングを位置決めするための位置決め手段と、前記固定型に接近離間可能に対向配置され、シールリングの内周面または外周面の他方と対応する形状の保持面を形成した複数の可動型とを備え、前記固定型の保持面と各可動型の保持面との間でシールリングを保持した状態で、そのシールリングを被組み付け部材の環状溝に組み付けるようにしたことを特徴とする。
【0011】
従って、この発明のシール組み付け装置においては、各可動型が固定型に向かって接近移動されると、固定型の保持面と各可動型の保持面との間でシールリングの基端部が保持される。そして、この保持状態でシールリングが被組み付け部材の環状溝に向かって押し付け移動されることにより、シールリングの先端部が被組み付け部材の環状溝内に組み付けられる。よって、シールリングが複雑な形状であっても、そのシールリングを所定の形状に保持した状態で、被組み付け部材の環状溝に容易かつ短時間に組み付けることができる。
【0012】
前記の構成において、前記固定型はその外周面に前記保持面を有し、前記可動型はその内周面に前記保持面を有するように構成するとよい。
前記の構成において、前記固定型及び可動型上には、シールリング側に突出して、そのシールリングの内周面及び外周面に対応する形状の案内面を有する補助型を設け、その補助型の案内面により被組み付け部材に対するシールリングの組み付けを案内するように構成するとよい。このように構成した場合は、被組み付け部材に対するシールリングの組み付けに際して、前記案内面によりシールリングを案内することができ、そのシールリングの組み付けを正確かつ円滑に行うことが可能になる。
【0013】
前記の構成において、前記固定型と前記可動型との間位置には、シールリングを被組み付け部材の環状溝内に押し込むための押し込み手段を設けるとよい。このように構成した場合には、シールリングを両型の保持面間で所定の形状に保持しながら、その保持面間から被組み付け部材の環状溝内に押し込み移動させることができる。よって、シールリングの組み付けを容易に行うことができる。
【0014】
前記の構成において、前記押し込み手段を、複数に分割し、各分割片がシールリングを単独で押し込み可能に構成するとよい。このようにすれば、シールリングからの押し込み手段の離脱に際して、分割片が単独で後退できるため、シールリングが被組み付け部材上の組み付け位置から引き込まれることを防止できる。
【0015】
前記の構成において、前記押し込み手段には、前記シールリングに向かってエアを吹き付けるためのエア噴出路を設けるとよい。このように構成した場合には、押し込み手段によりシールリングが被組み付け部材の環状溝内に押し込んで組み付けられた後、押し込み手段がシールリングから離間した位置に後退される際に、エア噴出口からシールリングに向かってエアが噴射される。このエア噴射により、シールリングが押し込み手段に密着して環状溝内から離脱するおそれを防止することができる。
【0016】
シールリングの組み付け方法に係る発明においては、シールリングの内周面または外周面の一方を固定型の保持面に保持して、そのシールリングを位置決めし、次いで、シールリングの内周面または外周面の他方と対応する形状の保持面が形成された複数の可動型を固定型の方向に移動させて、前記両型間にシールリングを保持し、その状態で、シールリングを押し込みピンにより被組み付け部材の環状溝内に押し込むことを特徴とする。
【0017】
従って、この方法によれば、前述のように、シールリングが複雑な形状であっても、そのシールリングを所定の形状に保持した状態で、被組み付け部材の環状溝に容易かつ短時間に組み付けることができる。
【0018】
前記の方法において、前記押し込みピンによる押し込みに際して押し込みピンの先端からエアを噴出させるとよい。この方法においては、前記のように、シールリングと押し込みピンとの密着を防止できる。
【0019】
前記の方法において、前記押し込みピンをその軸線方向に沿って2分割し、シールリングの押し込み終了に際して、一方の分割片がシールリングに接合した状態で他方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させ、次いで、その他方の分割片をシールリングに再度接合させるとともに、一方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させ、そして、他方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させるとよい。この方法によれば、シールリングからの押し込みピンの離脱に際して、分割片がシールリングを押さえた状態で別のシールリングが後退できるため、シールリングが被組み付け部材上の組み付け位置から引き込まれることを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、被組み付け部材の環状溝にシールリングを容易に組み付けることができて、組み付け時間を短縮することができるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
まず、この第1実施形態のシール組み付け装置に用いられるシールリングについて説明する。図6〜図8に示すように、このシールリング11は、耐熱性,耐油性を有するゴム等の高分子弾性材料により構成されている。この実施形態において取り扱われるシールリング11は、単純なリング形状ではなく、図6から理解されるように、円弧状の凹凸部分を有する複雑な形状に形成されている。図8において断面して示すように、シールリング11は、幅広(図8の左右方向寸法)のシール部11aと、そのシール部11aよりも薄い肉厚(図8の左右方向寸法)の取付部11bとを有している。前記シール部11aの端面にはシール面11cが形成されている。シールリング11のシール部11aの内周面には複数の突片12が所定間隔おきに形成され、それらの突片12には位置決め孔13が透設されている。
【0022】
図7に示すように、前記シールリング11の取付部11bの両側面には、第1リブ14及び第2リブ15が所定間隔おきに交互に位置するように形成されている。図9に示すように、第1リブ14は、シールリング11の取付部11bにおいて高さ方向のほぼ全長にわたって延びるように形成されている。図10に示すように、第2リブ15は、シールリング11の取付部11bにおいて高さ方向のほぼ全長にわたって延びるように形成されるとともに、その第2リブ15の高さ方向の先端側には肉厚部15aが形成されている。
【0023】
図5に示すように、前記シールリング11を組み付けるための被組み付け部材としてのシリンダヘッドカバー16は、対向する部材としてのエンジンのシリンダヘッド18上に組み付けられる。図9及び図10に示すように、前記シリンダヘッドカバー16の下面には、環状溝17が形成されている。環状溝17の溝幅は、シールリング11における第1リブ14の部分の厚さよりも若干小さくなるように形成されている。そして、このシリンダヘッドカバー16の環状溝17にシールリング11の取付部11bが圧入されることにより、シールリング11のシール部11aが環状溝17の外側に露出した状態で組み付けられる。
【0024】
また、このシールリング11の組み付け状態で、シリンダヘッドカバー16がシリンダヘッド18上に組み付けられることにより、シールリング11のシール部11aのシール面11cがシリンダヘッド18の上面に密着される。このため、シリンダヘッド18とシリンダヘッドカバー16との間のシールが保たれる。
【0025】
次に、前記シールリング11をシリンダヘッドカバー16の環状溝17に組み付けるためのシール組み付け装置について説明する。
図1〜図3に示すように、基台21の上面中央部に固定型22が固定配置されている。固定型22の外周面には、シールリング11のシール部11aの内周面形状と対応する形状の保持面22aが形成されている。その固定型22の保持面22aに近接するように、基台21上には位置決め手段としての複数の位置決めピン23がシールリング11の突片12の位置決め孔13と同じ所定間隔おきに固定されている。そして、図1及び図3に鎖線で示すように、前記各位置決め孔13を位置決めピン23にそれぞれ取り付けることにより、シールリング11が固定型22の外周の保持面22aと対応する所定の位置に位置決め配置される。
【0026】
前記基台21の上面外周部には、4つの可動型24が各一対のガイドピン25及びガイド溝26の係合により、固定型22の外周の保持面22aに対して接近するとともに、保持面22aから離間する方向へ移動可能に対向配置されている。この各可動型24は図3に示す固定位置のエアシリンダ51により前記接近及び離間方向に移動される。各可動型24の内側面には、シールリング11のシール部11aの外周面形状と対応する形状の保持面24aが形成されている。そして、固定型22の外周にシールリング11が位置決め配置された状態で、各可動型24が固定型22の外周に向かって接近移動されることにより、固定型22の保持面22aと各可動型24の保持面24aとの間でシールリング11のシール部11aが挟持状態で保持される。
【0027】
前記固定型22の上面外周縁には、4つの第1補助型27が各一対のガイドピン28及びガイド溝29の係合により、固定型22上からシールリング11側へ突出移動可能に配置されている。この各第1補助型27は、固定型22上のエアシリンダ52により前記突出方向及びその逆方向に移動される。各第1補助型27の外側面には、シールリング11の取付部11bの内周面の形状と対応する形状の案内面27aが形成されている。各可動型24の上面内側縁には、第2補助型30が各一対のガイドピン31及びガイド溝32の係合により、可動型24上からシールリング11側へ突出移動可能に配置されている。この各第2補助型30は可動型24上のエアシリンダ53により前記突出方向及びその逆方向に移動される。各第2補助型30の内側面には、シールリング11の取付部11bの外周面の形状と対応する形状の案内面30aが形成されている。そして、図11(b)に示すように、固定型22の保持面22aと各可動型24の保持面24aとの間でシールリング11のシール部11aが保持された状態において、各第1補助型27及び第2補助型30がシールリング11側への突出位置に移動される。この移動により、各補助型27,30の案内面27a,30aがシールリング11の取付部11bの内周面及び外周面に近接される。
【0028】
図1及び図3に示すように、前記固定型22の保持面22aに近接して所定間隔おきに配置されるように、基台21の下方位置には押し込み手段としての複数の押し込みピン33が基台21の孔を通って上下方向へ移動可能に支持されている。図3及び図4に示すように、各押し込みピン33は、軸線方向に沿って二つ割り状に分割され、それぞれ単独で上下動可能な2つの分割片33a,33bから構成されている。これらの分割片33a,33bはそれぞれ図示しないエアシリンダにより上下動される。押し込みピン33の両分割片33a,33b間には、シールリング11に向かってエアを吹き付けるためのエア噴出路34が形成されている。
【0029】
そして、図11(c)に示すように、固定型22及び各可動型24の保持面22a,24a間でシールリング11のシール部11aが保持されるとともに、シールリング11の上方にシリンダヘッドカバー16の環状溝17が対向配置された状態で、各押し込みピン33の両分割片33a,33bが上方に一体的に移動される。この上方移動により、シールリング11が保持面22a,24a間から押し上げられ、そのシールリング11の取付部11bがシリンダヘッドカバー16の環状溝17内に押し込まれて組み付けられる。
【0030】
さらに、このシールリング11の組み付け終了後には、図12(c)及び(d)に示すように、押し込みピン33の各分割片33a,33bがシールリング11に対する接合位置から離間位置へ交互に後退移動される。このとき、両分割片33a,33b間のエア噴出路34からシールリング11に向かってエアが噴射されることにより、シールリング11が分割片33a,33bの上端面に密着して下方に引き下げられることが抑制される。
【0031】
次に、前記のように構成されたシール組み付け装置の動作を説明する。
さて、図1に示す状態では、各可動型24が固定型22の外周から離間した位置に配置されるとともに、第1補助型27及び第2補助型30が固定型22及び可動型24の端縁から突出しない後退位置に配置されている。この状態において、図11(a)に示すように、作業者によりシールリング11の内周面が固定型22の外周の保持面22aと対応するように、基台21上に同シールリング11がセットされる。そして、図1及び図3に鎖線で示すように、シールリング11のシール部11aにおける複数の突片12がその位置決め孔13において位置決めピン23に挿通されることにより、シールリング11が固定型22の外周の保持面22aと対応する位置に位置決め保持される。
【0032】
その後、シール組み付け装置が作動されると、各可動型24がシリンダ51により固定型22の外周に向かって接近移動されて、図11(b)に示すように、シールリング11のシール部11aが固定型22の保持面22aと各可動型24の保持面24aとの間で挟持される。それとともに、第1補助型27及び第2補助型30がそれぞれシリンダ52,53によりシールリング11側へ突出移動されて、各補助型27,30の案内面27a,30aがシールリング11の取付部11bの内周面及び外周面に近接配置される。このため、前記取付部11bの倒れが防止される。
【0033】
続いて、図11(c)に示すように、第1補助型27及び第2補助型30上にシリンダヘッドカバー16が載置されて、そのシリンダヘッドカバー16の環状溝17がシールリング11の上方に対応配置される。この状態で、押し込みピン33の両分割片33a,33bが上方に一体的に同時に突出移動されて、図11(d)に示すように、シールリング11の取付部11bがシリンダヘッドカバー16の環状溝17内の途中までに押し込まれる。この場合、シールリング11のシール部11aが固定型22及び可動型24の保持面22a,24a間で位置規制されながら、シールリング11の取付部11bが第1補助型27及び第2補助型30の案内面27a,30a間で案内される。よって、シールリング11の取付部11bをシリンダヘッドカバー16の環状溝17に対して正確かつ円滑に挿入することができる。
【0034】
次いで、第1補助型27及び第2補助型30がシリンダ52,53によりシールリング11から離間する方向に移動されて、図12(a)に示すように、固定型22及び可動型24上の後退位置に配置される。この状態では、第1補助型27及び第2補助型30の案内面27a,30aが固定型22及び可動型24の保持面22a,24aと同一面上において連続する。そして、この状態で、押し込みピン33の両分割片33a,33bがさらに一体的に上方へ移動されて、図12(b)に示すように、シールリング11の取付部11bがシリンダヘッドカバー16の環状溝17内の奥部まで押し込まれて組み付けられる。この場合にも、シールリング11のシール部11aが固定型22及び可動型24の保持面22a,24a間及び第1,第2補助型27,30の案内面27a,30aで位置規制されるため、シールリング11の取付部11bをシリンダヘッドカバー16の環状溝17に対して正確かつ円滑に挿入することができる。
【0035】
その後、押し込みピン33の一方の分割片33aがシールリング11に対する接合位置から下方に移動されて、図12(c)に示すように、シールリング11の下面より離間した位置に配置される。この場合、両分割片33a,33b間のエア噴出路34からシールリング11に向かってエアが噴射される。このエア噴射により、シールリング11が一方の分割片33aの上端面に密着することを防止でき、その結果シールリング11が下方に引っ張られることを防止することができる。
【0036】
さらに、押し込みピン33の一方の分割片33aがシールリング11の下面と近接する位置まで上方に移動される。それとともに、他方の分割片33bがシリンダにより、シールリング11に対する接合位置から下方に移動されて、図12(d)に示すように、シールリング11の下面より離間した位置に配置される。この場合にも、両分割片33a,33b間のエア噴出路34からシールリング11に向かってエアが噴射される。このエア噴射により、シールリング11が他方の分割片33bの上端面に密着することを防止でき、シールリング11が下方に引っ張られることを防止することができる。
【0037】
そして、この状態から押し込みピン33の他方の分割片33bがシールリング11に対する近接位置から下方に移動される。それとともに、シリンダヘッドカバー16が補助型27,30上から離脱されることにより、シリンダヘッドカバー16の環状溝17に対するシールリング11の組み付け作業が終了する。
【0038】
そして、この第1実施形態のシール組み付け装置においては、以下の効果がある。
(1) このシール組み付け装置においては、固定型22の保持面22aと可動型24の保持面24aとの間でシールリング11のシール部11aが保持された状態で、シールリング11の取付部11bがシリンダヘッドカバー16の環状溝17に組み付けられる。このため、前述した特許文献1のようにシールリング11を狭い溝内に挿入したり、あるいは特許文献2のようにシールリング11の延長方向に沿って可動ガイドピンが移動したりすることがない。従って、シールリング11が複雑な形状であっても、シールリング11を所定の形状に保持した状態で、シリンダヘッドカバー16の環状溝17に容易かつ短時間に組み付けることができる。
【0039】
(2) このシール組み付け装置においては、固定型22及び可動型24上には、シールリング11側に突出して、そのシールリング11の取付部11bの内周面及び外周面に対応可能な補助型27,30が設けられている。このため、シールリング11が所定の形状に保持された状態で、シリンダヘッドカバー16の環状溝17内に組み付けられる際に、両補助型27,30が突出位置に配置されて、それらの補助型27,30の案内面27a,30a間において、シールリング11の取付部11bを環状溝17内へ倒れたりすることなく円滑に案内移動させることができる。
【0040】
(3) このシール組み付け装置においては、シールリング11を固定型22と可動型24との間からシリンダヘッドカバー16の環状溝17内に押し込むための複数の押し込みピン33が設けられている。このため、シールリング11を両型22,24の保持面22a,24a間で所定の形状に保持しながら、その保持面22a,24a間からシリンダヘッドカバー16の環状溝17内に容易に移動させて組み付けることができる。
【0041】
(4) このシール組み付け装置においては、各押し込みピン33にエア噴出路34が設けられている。このため、シリンダヘッドカバー16の環状溝17に対するシールリング11の押し込み組み付け後に、押し込みピン33がシールリング11から離間した位置に後退される際、エア噴出路34からシールリング11に向かってエアが噴射されることにより、シールリング11が押し込みピン33に密着することを防止でき、そのシールリング11が押し込みピン33とともに下降してしまい、環状溝17内から離脱するおそれを防止することができる。
【0042】
(5) このシール組み付け装置においては、押し込みピン33が複数の分割片33a,33bに分割され、それらの各分割片33a,33bがシールリング11を単独で押し込み可能になっている。このため、シールリング11からの押し込みピン33の離脱に際して、ひとつの分割片33aまたは33bがシールリング11を押さえた状態で、他の分割片33bまたは33aが単独で後退できるため、シールリング11がシリンダヘッドカバー16上の組み付け位置から離脱方向へ引き込まれることを防止できる。
【0043】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第2実施形態においては、図13及び図14に示すように、前記第1実施形態とは逆に、固定型がシールリング11の外周側に、可動型がシールリング11の内周側に配置されている。
【0044】
すなわち、基台21の上面中央部に4つの可動型122が後述する固定型124の保持面124aに対して接近離間可能に配置されている。可動型24の外周面には、シールリング11のシール部11aの内周面形状と対応する形状の保持面122aが形成されている。
【0045】
前記基台21の上面外周部には、環状の固定型124が固定され、その内周面にはシールリング11の外周面形状に対応する保持面124aが形成されている。位置決めピン123は保持面124aの位置において基台21上に固定されている。従って、この第2実施形態において用いられるシールリング11は透孔を有する突片が同シールリング11の外周に形成されている。
【0046】
前記可動型122の上面外周縁及び固定型124の上面内周縁には、それぞれ前記第1実施形態と同様な4つの第1,第2補助型127,130がそれぞれ各一対のガイドピン28,31及びガイド溝29,32の係合により、可動型122及び固定型124上からシールリング11側へ突出移動可能に配置されている。各第1補助型127の外側面及び第2補助型130には、シールリング11の取付部11bの内周面及び外周面の形状と対応する形状の案内面127a,130aが形成されている。
【0047】
なお、前記可動型122及び第1,第2補助型127,130は、図示はしないが、前記第1実施形態と同様にエアシリンダにより移動される。
従って、この第2実施形態においては、可動型122が固定型124から離隔した状態において、シールリング11が作業者により固定型124の内周の保持面124a上にセットされるとともに、突片の透孔が位置決めピン123に取り付けられる。そして、可動型122が固定型124側に移動され、それらの保持面122a,124a間にシールリング11の取付部11bが挟持される。その後は、前記第1実施形態と同様にして組み付け工程が進行する。
【0048】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0049】
・ 可動型24,122を2または3あるいは5以上の数のものによって構成すること。
・ 押し込みピン33を分割することなく、軸心部にエア噴出路34が形成された筒状に形成すること。
【0050】
・ 固定型22,124と基台21とを一体に形成すること。
・ 第1,第2補助型27,30、127,130を省略すること。
・ 押し込みピン33を省略すること。この場合、シールリング11は、シリンダヘッドカバー16がシリンダヘッド18に組み付けられた時に環状溝17内に押し込まれる。
【0051】
・ 前記第1,第2実施形態のシール組み付け装置を、シリンダヘッドカバーとは異なった被組み付け部材の環状溝に組み付ける場合に具体化すること。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態のシール組み付け装置を示す平面図。
【図2】同じくエアシリンダとの関係を示す平面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図3の4−4線における拡大断面図。
【図5】シリンダヘッドカバーを組み付けた状態のエンジンの一部破断簡略図。
【図6】図1のシール組み付け装置に用いられるシールリングを示す平面図。
【図7】図6のA部分を拡大して示す部分平面図。
【図8】図7の8−8線における拡大断面図。
【図9】図7の9−9線における拡大断面図。
【図10】図7の10−10線における拡大断面図。
【図11】(a)〜(d)は図1のシール組み付け装置によるシールリングの組み付け動作を順に示す部分断面図。
【図12】(a)〜(d)は図11に続いてシールリングの組み付け動作を順に示す部分断面図。
【図13】第2実施形態のシール組み付け装置を示す平面図。
【図14】図13の部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0053】
11…シールリング、11a…シール部、11b…取付部、13…位置決め孔、16…シリンダヘッドカバー、17…環状溝、21…基台、22…固定型、22a…保持面、23…位置決め手段としての位置決めピン、24…可動型、24a…保持面、27…第1補助型、27a…案内面、30…第2補助型、30a…案内面、33…押し込み手段としての押し込みピン、33a,33b…分割片、34…エア噴出路、122…可動型、122a…保持面、124…固定型、124a…保持面127a…案内面、130a…案内面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールリングの内周面または外周面の一方と対応する形状の保持面を形成した固定型と、
その固定型の保持面と対応する位置にシールリングを位置決めするための位置決め手段と、
前記固定型に接近離間可能に対向配置され、シールリングの内周面または外周面の他方と対応する形状の保持面を形成した複数の可動型とを備え、
前記固定型の保持面と各可動型の保持面との間でシールリングを保持した状態で、そのシールリングを被組み付け部材の環状溝に組み付けるようにしたことを特徴とするシール組み付け装置。
【請求項2】
前記固定型はその外周面に前記保持面を有し、前記可動型はその内周面に前記保持面を有することを特徴とする請求項1に記載のシール組み付け装置。
【請求項3】
前記固定型及び可動型上には、シールリング側に突出して、そのシールリングの内周面及び外周面に対応する形状の案内面を有する補助型を設け、その補助型の案内面により被組み付け部材に対するシールリングの組み付けを案内するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のシール組み付け装置。
【請求項4】
前記固定型と前記可動型との間位置には、シールリングを被組み付け部材の環状溝内に押し込むための押し込み手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のシール組み付け装置。
【請求項5】
前記押し込み手段は、複数に分割され、各分割片がシールリングを単独で押し込み可能である請求項4に記載のシール組み付け装置。
【請求項6】
前記押し込み手段には、前記シールリングに向かってエアを吹き付けるためのエア噴出路を設けたことを特徴とする請求項4または5に記載のシール組み付け装置。
【請求項7】
シールリングの内周面または外周面の一方を固定型の保持面に保持して、そのシールリングを位置決めし、次いで、シールリングの内周面または外周面の他方と対応する形状の保持面が形成された複数の可動型を固定型の方向に移動させて、前記両型間にシールリングを保持し、その状態で、シールリングを押し込みピンにより被組み付け部材の環状溝内に押し込むことを特徴とするシール組み付け方法。
【請求項8】
前記押し込みピンによる押し込みに際して押し込みピンの先端からエアを噴出させる請求項7に記載のシール組み付け方法。
【請求項9】
前記押し込みピンをその軸線方向に沿って2分割し、シールリングの押し込み終了に際して、一方の分割片がシールリングに接合した状態で他方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させ、次いで、その他方の分割片をシールリングに再度接合させるとともに、一方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させ、そして、他方の分割片をシールリングとの接合位置から後退させることを特徴とする請求項7または8に記載のシール組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−125903(P2009−125903A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305911(P2007−305911)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】