説明

シール装置及びリニアガイド装置

【課題】位置決め専用の冶具を用いることなく、高精度に位置決めしつつ取り付けることができる非接触型のシール装置、及び、該シール装置を備える、低発塵で、かつ、良好な作動性を保持したリニアガイド装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のシール装置によれば、スライダ2にエンドシール5を装着する際に、位置決め部材16により上下左右方向の位置決めを行うことができる。これにより、位置決め専用の治具を使うことなく、案内レール1の外面に対するエンドシール5の位置を決めて、エンドシール5をスライダ2に取り付けることが可能となる。また、位置決め部材16の突出長さは、案内レール1とエンドシール5との間の所定間隔の隙間と同一となっている。これにより、位置決め専用の治具を用いることなく、案内レール1とエンドシール5との間の隙間が所定間隔となるように、エンドシール5をスライダ2へ取り付けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及びそれを備えたリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工作機械等で使用されているリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、案内レールの転動体転動溝に対向して形成された転動体転動溝を有し、案内レールに相対移動可能に跨架されるスライダとを備えている。
スライダは、スライダ本体と、スライダ本体の移動方向両端面に接合されたエンドキャップとを備えており、エンドキャップのスライダ本体と反対側の面には、エンドシールが取り付けられている。案内レールとスライダとの間に形成される空隙部にごみ、粉塵、切粉、切屑等の異物が入り込み、転動体転動溝に付着すると、転動体の円滑な転動が妨げられることから、このエンドシールは、前記空隙部への異物の侵入を防ぐために、前記空隙部の開口部分をシールしている。これにより、リニアガイド装置の良好な作動性が保持されている。また、エンドシールは、スライダ内部で発生した粉塵をスライダの外部へ排出するのを抑制する役割も果たしている。
【0003】
したがって、前記空隙部への異物の侵入を的確に防ぐために、案内レールの外面とこれに対向するエンドシールの対向面との隙間が所定の間隔になるように、案内レールの外面に対するエンドシールの位置を決めてエンドシールをスライダに装着することが必要となる。
案内レールの外面に対するエンドシールの位置を決めてエンドシールをスライダに装着する構成のリニアガイド装置としては、例えば、特許文献1及び2に記載されているリニアガイド装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−317765号公報
【特許文献2】特開2007−218357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているリニアガイド装置は、スライダに連結される部品に突起を設け、それによりエンドシールの位置の固定を行うものである。したがって、スライダと連結される部品の取り付け位置のずれや、突起自体の位置がずれる可能性があるため、そのずれがエンドシールの位置決めに影響を及ぼし、エンドシールの位置決めの精度が悪化する恐れがある。
【0006】
また、特許文献2に記載されているリニアガイド装置は、エンドシールのシール部が案内レールと接触しているため、エンドシール自体が案内レールに沿って位置決めされてしまう。さらに、案内レールと接触するタイプのエンドシールを備えるリニアガイド装置は、エンドシールを取り付けることでスライダの移動における摺動抵抗が増加する恐れがある。また、低発塵を要求される使用環境においては、接触タイプのシールが摺動することで発塵してしまい、低発塵化を実現できなくなる恐れがある。
【0007】
摺動抵抗の増加と発塵化の問題は、案内レールと非接触となるエンドシールを使用することで解決することができる。案内レールと非接触のタイプのエンドシールを取り付ける場合は、案内レールとエンドシールの間に規定の厚さのシムを挟みつつエンドシールをスライダに取り付けることにより、案内レールの外面とエンドシールの対向面との間の隙間が規定値となるように管理することができる。
【0008】
しかし、エンドシールを取り付ける際に、毎回シムを使用するのは作業に手間がかかるため好ましくない。また、案内レールとエンドシールとの間の隙間が極僅かな場合に、金属製のエンドシールを取り付ける場合には、エンドシールが案内レールの予期せぬ箇所に接触してしまい、案内レールに傷がつく恐れがあった。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、位置決め専用の冶具を用いることなく、高精度に位置決めしつつ取り付けることができる非接触型のシール装置、及び、該シール装置を備える、低発塵で、かつ、良好な作動性を保持したリニアガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係るシール装置は、軸方向に延びる案内レールと、軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、を備えるリニアガイド装置の前記スライダに、前記案内レールの外面に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように装着され、前記案内レールと前記スライダとの間に形成された空隙部の開口部分をシールする非接触型のシール装置において、前記案内レールに取り付けられた前記スライダに該シール装置を装着する際に、前記案内レールの外面に接触して、前記案内レールの外面とこれに対向する前記シール装置の対向面との接触を防ぎ、且つ、前記案内レールの外面と前記対向面との間隔を前記所定間隔に保ちつつ装着するための位置決め部を備え、該位置決め部は、前記対向面から突出する突起からなり、且つ、前記対向面からの突出長さが前記所定間隔と同一であることを特徴とする。
【0010】
また、上記シール装置においては、前記スライダの軸方向端部に装着され、前記空隙部の開口部分のうち軸方向に向く開口部分をシールする部材であることが好ましい。
さらに、上記シール装置においては、前記スライダのうち、断面形状略角形の前記案内レールの側面に対向する対向部分に装着され、前記空隙部の開口部分のうち、前記案内レールの側面と前記スライダの対向部分との間に形成された空隙部の開口部分をシールする部材であることが好ましい。
【0011】
また、上記シール装置においては、前記位置決め部が樹脂製であることが好ましい。
さらに、本発明の一態様に係るリニアガイド装置は、軸方向に延びる案内レールと、軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの外面に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように前記スライダに装着され、前記案内レールと前記スライダとの間に形成された空隙部の開口部分をシールする非接触型のシール装置と、を備えるリニアガイド装置において、前記シール装置を、上記各態様のうちいずれかのシール装置とし、前記位置決め部を前記案内レールの外面に接触させて、前記案内レールの外面とこれに対向する前記シール装置の対向面との接触を防ぎ、且つ、前記案内レールの外面と前記対向面との間隔を前記所定間隔に保ちつつ、前記案内レールに取り付けられた前記スライダに前記シール装置を装着して得たものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシール装置は、スライダに装着する際に、シール装置に備えられた位置決め部が案内レールの外面に接触して、案内レールとシール装置との接触を防ぎ、且つ、案内レールとシール装置との間の隙間を所定間隔に保ちつつ装着することができる。そのため、案内レールに傷をつけず、且つ、位置決め専用の冶具を用いることなくシール装置の位置決めを行うことができる。
【0013】
また、本発明のリニアガイド装置は、本発明のシール装置を装着して得たものであるため、シール装置をスライダに装着する際に、案内レールに傷がつかず、且つ、位置決め専用の冶具を用いることなくシール装置の位置決めが行われている。また、低発塵で、かつ、良好な作動性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のシール装置を備えるリニアガイド装置の構造を示す斜視図である。
【図2】図1のリニアガイド装置を軸方向から見た断面図である。
【図3】図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。
【図4】図3におけるA部分の拡大図である。
【図5】図3におけるB部分の拡大図である。
【図6】第2実施形態のシール装置を備えるリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。
【図7】図6におけるC部分の拡大図である。
【図8】図6におけるD部分の拡大図である。
【図9】第3実施形態のシール装置を備えるリニアガイド装置を下面方向から見た図である。
【図10】図9におけるE部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るシール装置及びリニアガイド装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態について、以下に説明する。
図1は、本発明に係るシール装置を備えたリニアガイド装置の一実施形態の構造を示す斜視図であり、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た断面図である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0016】
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール1に、断面形状略コ字状のスライダ2が軸方向に移動可能に取り付けられている。なお、これらの断面とは、軸方向に直交する平面で切断した断面である。断面形状略角形の案内レール1は、外面として、軸方向両端面と、軸方向に伸びる4面とを有している。一方、スライダ2は、板状部7の両側から袖部6,6が同方向に延びてなり、板状部7と両袖部6,6とは直角をなしているため、スライダ2の断面形状は略コ字状をなしている。そして、スライダ2の内面は、板状部7の内側面7aと両袖部6,6の内側面6a,6aとからなり、スライダ2の内面の断面形状は、案内レール1の外面の断面形状に沿う形状とされている。
【0017】
案内レール1に取り付けられたスライダ2は、その内面のうち板状部7の内側面7aが案内レール1の前記4面のうち1面1bと対向しており、両袖部6,6の内側面6a,6aが前記1面1bに隣り合う2面1a,1aとそれぞれ対向している。本発明においては、板状部7の内側面7aと対向する面1bを案内レール1の上面とし、袖部6の内側面6aと対向する面1aを案内レール1の側面とし、案内レール1の前記4面のうち上面1bと平行な面を下面とする。また、本発明においては、リニアガイド装置を軸方向端部側から見た場合に、案内レール1の中心軸線を対称中心とした両側を左右とする。
案内レール1の上面1bと左右両側面1a,1aとが交差する稜線部には、軸方向に延びる断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成され、また、案内レール1の左右両側面1a,1aの上下方向の中間位置には、軸方向に延びる断面ほぼ半円形の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成されている。
【0018】
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bとで構成されている。さらに、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間に形成された空隙部の開口部分のうち軸方向に向く開口部分をシールする後述するエンドシール5,5が装着されている。
【0019】
さらに、案内レール1の側面1a,1aに対向するスライダ2の両袖部6,6の内側面6a,6aのうち最下部近傍には、前記空隙部の開口部分のうち下方に向く開口部分(案内レール1の側面1aと、これに対向するスライダ2の袖部6の内側面6aとの間に形成された空隙部の開口部分)をシールするアンダーシール15が装着されている。これらエンドシール5,5とアンダーシール15とにより、外部から前記空隙部への異物の侵入や、スライダ2の内部で発生した粉塵の外部への排出や、前記空隙部から外部への潤滑剤の漏出が防止されている。なお、エンドシール5及びアンダーシール15が、本発明の構成要件であるシール装置に相当する。
【0020】
さらに、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面6a,6aには、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10に対向する断面ほぼ半円形の凹溝からなる転動体転動溝11,11,11,11が形成されている。そして、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10とスライダ2の転動体転動溝11,11,11,11との間に、断面ほぼ円形の転動体転動路13,13,13,13が形成されていて、これらの転動体転動路13は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体転動溝10,11の数は片側二列に限らず、例えば片側一列又は三列以上などであってもよい。また、転動体転動溝10,11の断面形状は、前述したように単一の円弧からなる円弧状でもよいが、曲率中心の異なる2つの円弧を組合せてなる略V字状(ゴシックアーク形状溝)でもよい。
【0021】
この転動体転動路13内には、多数の転動体3が転動自在に装填されていて、これらの転動体3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動するようになっている。なお、転動体の種類はボールに限定されるものではなく、転動体としてころも使用可能である。また、転動体3の間にスペーサーを介装してもよい。
さらに、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路13と平行をなして軸方向に貫通する断面ほぼ円形の貫通孔からなる直線状路14,14,14,14を備えている。
【0022】
一方、エンドキャップ2B,2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。また、エンドキャップ2B,2Bの裏面(スライダ本体2Aとの当接面)の左右両側には、断面ほぼ円形の半ドーナツ状の湾曲路(図示せず)が上下二段に形成されている。このエンドキャップ2B,2Bをスライダ本体2Aに取り付けると、湾曲路によって転動体転動路13と直線状路14とが連通される。これら直線状路14と両端の湾曲路とで、転動体3を転動体転動路13の終点から始点へ送る転動体戻し路が構成され、転動体転動路13と前記転動体戻し路とで、略環状の転動体循環路が案内レール1を挟んで左右両側に形成される。
【0023】
案内レール1に取り付けられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、転動体転動路13内に装填されている転動体3は、転動体転動路13内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、転動体3が転動体転動路13の終点に達すると、転動体転動路13からすくい上げられ湾曲路へ送られる。湾曲路に入った転動体3はUターンして直線状路14に導入され、直線状路14を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして転動体転動路13の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0024】
上記のような構成のリニアガイド装置は、前述したエンドシール5を備えている。このエンドシール5について、図3〜5を参照しながら説明する。図3は、本実施形態のシール装置を装着した図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。図4は、図3のうち円で囲んだA部分を拡大して示した図である。また、図5は、図3のうち円で囲んだB部分を拡大して示した図である。
エンドシール5は、エンドキャップ2Bと同様に、断面略コ字形に形成されている。また、エンドシール5には、エンドシール5を案内レール1の軸方向に貫通する貫通孔が形成されており(図示せず)、エンドシール5は、該貫通孔を貫通する取り付けねじ(図示せず)によりスライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの端面)に装着されている。
【0025】
このエンドシール5は、熱可塑性樹脂等の樹脂からなる非接触型のシール装置である。すなわち、エンドシール5は、案内レール1の外面(上面1b及び両側面1a,1a)に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように装着されていて、案内レール1とスライダ2との間に形成された空隙部の開口部分をシールしている。このエンドシール5は、案内レール1の外面と、これに対向するエンドシール5の対向面とが接触しないので、非接触型のシール装置である。
【0026】
そして、エンドシール5のうち案内レール1の外面に対向する対向面には、対向面から案内レール1の外面に向かって突出する突起からなり、且つ、対向面からの突出長さが前記所定間隔と同一である位置決め部材16が設けられていて、案内レール1の外面に摺動可能に接している。なお、この位置決め部材16が、本発明の構成要件である位置決め部に相当する。
【0027】
すなわち、エンドシール5には、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの端面)に装着された時に案内レール1の上面1bと転動体転動溝10,10とが交差する稜線部1c,1cに対向する面5a,5aが形成されている。また、エンドシール5には、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの端面)に装着された時に案内レール1の左右両側面1a,1aと対向する面5b,5bが形成されている。
【0028】
そして、エンドシール5は、稜線部1c,1cに対向する面5a,5a、及び、案内レール1の左右両側面1a,1aに対向する面5b,5bに、位置決め部材16が設けられている。なお、位置決め部材16の配置される位置は、上記の位置に限定されるものではなく、傷がつくことでスライダ2の軸方向への相対移動に悪影響が出ることが考えられる転動体転動溝10や、傷が目立つ案内レール1の上面1b以外の案内レール1の外面に摺動自在に接触するように設けることができる。
【0029】
また、エンドシール5に設ける位置決め部材16の個数は、特に限定されるものではないが、エンドシール5の上下左右方向の位置決めを適切に行うためには複数設けることが好ましい。例えば、エンドシール5の上下方向の位置決めを行う位置決め部材16は、上記のように稜線部1c,1cに対向する面5a,5aに設けることが好ましく、エンドシール5の左右方向の位置決めを行う位置決め部材16は、案内レール1の左右両側面1a,1aと対向する面5b,5bに設けることが好ましい。
【0030】
さらに、位置決め部材16の材質は、接することにより案内レール1の外面に損傷を与えることがなく、且つ、スライダ2の軸方向への相対移動を妨げないようなものならば、特に限定されない。位置決め部材16の材質として、好ましくは樹脂、より好ましくは熱可塑性プラスチック、ゴム等があげられる。
さらに、位置決め部材16は、エンドシール5と一体に形成されていてもよいし、別体の位置決め部材16をエンドシール5の対向面に、接着等の慣用の固着方法により取り付けてもよい。
【0031】
さらに、エンドシール5と位置決め部材16が同一の材質からなる場合は、一体に成形することが好ましいが、エンドシール5と位置決め部材16の材質が同一の材質の場合でも、一体成形ではなく別体のものを接合してもよい。また、エンドシール5は、樹脂のみで構成されていてもよいが、金属等からなる芯金を備えていてもよい。
エンドシール5がこのような位置決め部材16を備えているので、リニアガイド装置を製造する際にエンドシール5の内面が案内レール1の外面に接触して損傷が生じることを防ぐことができる。すなわち、案内レール1に取り付けられたスライダ2に対してエンドシール5を装着する際に、位置決め部材16が案内レール1の外面に接触するため、案内レール1の外面とこれに対向するエンドシール5の内面(対向面)との接触が防がれる。
【0032】
また、スライダ2にエンドシール5を装着する際に、稜線部1c,1cに対向する面5a,5aに設けられた位置決め部材16により上下方向の、案内レール1の左右両側面1a,1aと対向する面5b,5bに設けられた位置決め部材16により左右方向の位置決めを行うことができる。これにより、シム等の位置決め専用の治具を使うことなく案内レール1の外面に対するエンドシール5の位置を決めて、エンドシール5をスライダ2に取り付けることが可能となる。なお、エンドシール5をスライダ2に装着した後は、位置決め部材16を除去しても差し支えない。
【0033】
また、本実施形態のエンドシール5に設けられた位置決め部材16の対向面からの突出長さは、案内レール1とエンドシール5との間の前記所定間隔と同一となっている。これにより、位置決め部材16の先端が案内レール1の外面に接触するようにエンドシール5をスライダ2に装着すれば、シム等の位置決め専用の治具を用いることなく、案内レール1の外面とエンドシール5の対向面との間の隙間が前記所定間隔となるように、エンドシール5をスライダ2へ取り付けることが可能である。
【0034】
さらに、本実施形態のエンドシール5によれば、案内レール1に接触しているのは位置決め部材16のみであり、エンドシール5は案内レール1に非接触となるため、エンドシール5が案内レール1の外面と摺動して摺動抵抗が増加する恐れがない。また、本実施形態のエンドシール5によれば、摺動による発塵を抑えることができるため、低発塵化を実現することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態のエンドシール5に設けられた位置決め部材16は樹脂製であるため、案内レール1の外面と接触しても案内レール1に傷がつきにくく、スライダ2の軸方向への相対移動を妨げにくい。また、位置決め部材16が摩耗して変形をしても、エンドシール5自体はねじ等にてスライダ2に固定されているため、初期の位置を保つことが可能となる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図6〜図8を参照しながら説明する。なお、第2実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用効果は、第1実施形態のリニアガイド装置とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
図6は、本実施形態のシール装置を装着したリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。図7は、図6のうち円で囲んだC部分を拡大して示した図である。また、図8は、図6におけるD部分を拡大して示した図である。
エンドシール5の案内レール1の外面に対向する対向面には、対向面から案内レール1の外面に向かって突出し、且つ、対向面からの突出長さが前記所定間隔と同一である突起16bがインサート成形により設けられていて、案内レール1の外面に摺動可能に接している。
【0037】
すなわち、エンドシール5が例えば金属製である場合には、金属製のエンドシール5をインサートとしてインサート成形することにより、樹脂製の位置決め部材16をエンドシール5の対向面に設けることができる。インサート成形により成形される位置決め部材16は、ベース部16aと、ベース部16aの外面から突出する突起16bと、で構成されている。エンドシール5の対向面に形成された孔から突起16bがエンドシール5の外部に突出し、且つ、突起16bに連続するベース部16aがエンドシール5の内部に配されるように、インサート成形により位置決め部材16が成形される。この位置決め部材16の突起16bが、本発明の構成要件である位置決め部に相当する。
【0038】
位置決め部材16をエンドシール5に設ける方法は、位置決め部材16がエンドシール5に取り付けられていれば特に限定されない。位置決め部材16をエンドシール5に設ける方法としては、接着剤を用いて位置決め部材16をベース部16aを介してエンドシール5に接着させる方法や、位置決め部材16をインサート成形する方法等があげられ、これによりエンドシール5に突起16bを設けることができる。
【0039】
このような本実施形態のエンドシール5によれば、エンドシール5と位置決め部材16の材質を異なるものとすることができる。これにより、エンドシール5が例えば金属製のような、案内レール1に傷をつけやすいような材質であっても、エンドシール5をスライダ2に装着する際に、位置決め部材16が案内レール1に接触するため、案内レール1とエンドシール5は接触することなく、案内レール1とエンドシール5との間の隙間が前記所定間隔となるように位置決めを行うことが可能となる。なお、エンドシール5をスライダ2に装着した後は、位置決め部材16を除去しても差し支えない。
【0040】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図9,10を参照して説明する。
なお、第3実施形態のリニアガイドの構成及び作用効果は、第1実施形態のリニアガイド装置とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
図9は、本実施形態のシール装置を装着したリニアガイド装置を下面方向から見た図である。図10は、図9のうち円で囲んだE部分を拡大して示した図である。
【0041】
上記のような構成のリニアガイド装置は、前述したアンダーシール15を備えている。このアンダーシール15は、案内レール1の外面(側面1a,1a)に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように、軸方向に沿ってスライダ2に装着されていて、案内レール1とスライダ2との間に形成された空隙部の開口部分をシールしている。このアンダーシール15は、案内レール1の外面と、これに対向するアンダーシール15の対向面15aとが接触しないので、非接触型のシール装置である。
【0042】
アンダーシール15をスライダ2に装着する方法は特に限定されないが、本実施形態においては、その軸方向両端部が両エンドキャップ2B,2Bに設けられたアンダーシール固定部17に保持されることにより、スライダ2に装着されている。このとき、アンダーシール15は、左右方向には移動可能に保持されている。アンダーシール固定部17の構造は、アンダーシール15を固定して保持することができるならば特に限定されないが、例えばスリットがあげられる。両エンドキャップ2B,2Bに形成されたスリット状のアンダーシール固定部17にアンダーシール15の軸方向両端部を係合させることにより、アンダーシール15が両エンドキャップ2B,2Bに保持される。
【0043】
そして、アンダーシール15のうち案内レール1の外面に対向する対向面15aには、対向面15aから案内レール1の外面に向かって突出する突起からなり、且つ、対向面15aからの突出長さが前記所定間隔と同一である位置決め部材16が設けられていて、案内レール1の外面に摺動可能に接している。この位置決め部材16が、本発明の構成要件である位置決め部に相当する。
なお、位置決め部材16の配置される位置は、上記の位置に限定されるものではなく、傷がつくことでスライダ2の軸方向への相対移動に悪影響が出ることが考えられる転動体転動溝10以外の案内レール1の外面(側面1a)に摺動自在に接触するように設けることができる。
【0044】
また、アンダーシール15に設ける位置決め部材16の個数は、特に限定されるものではないが、アンダーシール15の位置決めを適切に行うためには複数設けることが好ましい。例えば、アンダーシール15の対向面15aの複数の軸方向位置(例えば軸方向両端部近傍)に設けることが好ましい。
さらに、位置決め部材16の材質は、接することにより案内レール1の外面に損傷を与えることがなく、且つ、スライダ2の軸方向への相対移動を妨げないようなものならば、特に限定されない。位置決め部材16の材質として、好ましくは樹脂、より好ましくは熱可塑性プラスチック、ゴム等があげられる。
【0045】
さらに、位置決め部材16は、アンダーシール15と一体に形成されていてもよいし、別体の位置決め部材16をアンダーシール15の対向面15aに、接着等の慣用の固着方法により取り付けてもよい。
さらに、アンダーシール15と位置決め部材16が同一の材質からなる場合は、一体に成形することが好ましいが、アンダーシール15と位置決め部材16の材質が同一の材質の場合でも、一体成形ではなく別体のものを接合してもよい。また、アンダーシール15は、樹脂で構成されていてもよいし、金属で構成されていてもよい。また、樹脂で構成されている場合でも、金属等からなる芯金を備えていてもよい。
【0046】
アンダーシール15がこのような位置決め部材16を備えているので、リニアガイド装置を製造する際にアンダーシール15の対向面15aが案内レール1の外面に接触して損傷が生じることを防ぐことができる。すなわち、案内レール1に取り付けられたスライダ2に対してアンダーシール15を装着する際に、位置決め部材16が案内レール1の外面に接触するため、案内レール1の外面とこれに対向するアンダーシール15の対向面15aとの接触が防がれる。
【0047】
また、スライダ2にアンダーシール15を装着する際に、対向面15aに設けられた位置決め部材16により左右方向の位置決めを行うことができる。これにより、シム等の位置決め専用の治具を使うことなく案内レール1の外面に対するアンダーシール15の位置を決めて、アンダーシール15をスライダ2に取り付けることが可能となる。なお、アンダーシール15をスライダ2に装着した後は、位置決め部材16を除去しても差し支えない。
【0048】
また、本実施形態のアンダーシール15に設けられた位置決め部材16の対向面15aからの突出長さは、案内レール1とアンダーシール15との間の前記所定間隔と同一となっている。これにより、位置決め部材16の先端が案内レール1の外面に接触するようにアンダーシール15をスライダ2に装着すれば、シム等の位置決め専用の治具を用いることなく、案内レール1の外面とアンダーシール15の対向面15aとの間の隙間が前記所定間隔となるように、アンダーシール15をスライダ2へ取り付けることが可能である。
【0049】
さらに、本実施形態のアンダーシール15によれば、案内レール1に接触しているのは位置決め部材16のみであり、アンダーシール15は案内レール1に非接触となるため、アンダーシール15が案内レール1の外面と摺動して摺動抵抗が増加する恐れがない。また、本実施形態のアンダーシール15によれば、摺動による発塵を抑えることができるため、低発塵化を実現することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のアンダーシール15に設けられた位置決め部材16は樹脂製であるため、案内レール1の外面と接触しても案内レール1に傷がつきにくく、スライダ2の軸方向への相対移動を妨げにくい。また、位置決め部材16が摩耗して変形をしても、アンダーシール15自体はねじ等にてスライダ2に固定されるため、初期の位置を保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 案内レール
1a 側面
1b 上面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
5 エンドシール
15 アンダーシール
16 位置決め部材
16a ベース部
16b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる案内レールと、軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、を備えるリニアガイド装置の前記スライダに、前記案内レールの外面に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように装着され、前記案内レールと前記スライダとの間に形成された空隙部の開口部分をシールする非接触型のシール装置において、
前記案内レールに取り付けられた前記スライダに該シール装置を装着する際に、前記案内レールの外面に接触して、前記案内レールの外面とこれに対向する前記シール装置の対向面との接触を防ぎ、且つ、前記案内レールの外面と前記対向面との間隔を前記所定間隔に保ちつつ装着するための位置決め部を備え、該位置決め部は、前記対向面から突出する突起からなり、且つ、前記対向面からの突出長さが前記所定間隔と同一であることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記スライダの軸方向端部に装着され、前記空隙部の開口部分のうち軸方向に向く開口部分をシールする部材であることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記スライダのうち、断面形状略角形の前記案内レールの側面に対向する対向部分に装着され、前記空隙部の開口部分のうち、前記案内レールの側面と前記スライダの対向部分との間に形成された空隙部の開口部分をシールする部材であることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項4】
前記位置決め部が樹脂製であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載のシール装置。
【請求項5】
軸方向に延びる案内レールと、軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの外面に対して所定間隔の隙間を空けて対向するように前記スライダに装着され、前記案内レールと前記スライダとの間に形成された空隙部の開口部分をシールする非接触型のシール装置と、を備えるリニアガイド装置において
前記シール装置を、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール装置とし、
前記位置決め部を前記案内レールの外面に接触させて、前記案内レールの外面とこれに対向する前記シール装置の対向面との接触を防ぎ、且つ、前記案内レールの外面と前記対向面との間隔を前記所定間隔に保ちつつ、前記案内レールに取り付けられた前記スライダに前記シール装置を装着して得たものであることを特徴とするリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−102811(P2012−102811A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252222(P2010−252222)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】