説明

ジアゼパンオレキシン受容体アンタゴニスト

本発明はオレキシン受容体のアンタゴニストであり、オレキシン受容体が関与する神経精神障害及び疾患の治療又は予防に有用なジアゼパン化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、オレキシン受容体が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
オレキシン(ヒポクレチン)は視床下部で産生されるオレキシンA(OX−A)(33アミノ酸ペプチド)とオレキシンB(OX−B)(28アミノ酸ペプチド)の2種類の神経ペプチドからなる(Sakurai T.ら,Cell,1998,92,573−585)。オレキシンはラットで食物消費を刺激することが認められており、これらのペプチドは摂食行動を調節する中枢フィードバック機構でメディエータとして生理的役割を果たしていると予想される(Sakurai T.ら,Cell,1998,92,573−585)。オレキシンは睡眠状態と覚醒状態も調節しており、ナルコレプシー又は不眠症患者の新規治療アプローチとして期待される(Chemelli R.M.ら,Cell,1999,98,437−451)。2種類のオレキシン受容体が哺乳動物でクローニングされ、特性決定されている。これらはG蛋白質共役受容体スーパーファミリーに属しており(Sakurai T.ら,Cell,1998,92,573−585)、オレキシン−1受容体(OXないしOX1R)はOX−Aに選択的であり、オレキシン−2受容体(OX2ないしOX2R)はOX−AとOX−Bに結合することができる。オレキシンが関与していると予想される生理的作用はオレキシン受容体の2種類のサブタイプであるOX1受容体とOX2受容体の一方又は両方を介して発現されると考えられる。
【0002】
オレキシン受容体は哺乳動物の脳に存在しており、鬱病;不安症;依存症;強迫性障害;感情障害;抑鬱神経症;不安神経症;気分変調性障害;行動障害;気分障害;性機能不全;心因性性機能不全;性的障害;統合失調症;躁鬱病;譫妄;認知症;ハンチントン病やトゥーレット症候群等の重度精神遅滞及びジスキネジア;拒食症、過食症、悪液質及び肥満症等の摂食障害;心臓血管疾患;糖尿病;食欲/味覚障害;嘔吐、悪心;喘息;癌;パーキンソン病;クッシング症候群/クッシング病;好塩基性腺腫;プロラクチノーマ;高プロラクチン血症;下垂体腫瘍/腺腫;視床下部疾患;炎症性腸疾患;胃性ジスキネジア;胃潰瘍;フレーリヒ症候群;副腎・下垂体疾患;下垂体疾患;副腎・下垂体機能低下;副腎・下垂体機能亢進;視床下部性腺機能低下症;カルマン症候群(嗅覚消失、嗅覚減退);機能性又は心因性無月経;下垂体機能低下症;視床下部甲状腺機能低下症;視床下部・副腎機能不全;特発性高プロラクチン血症;成長ホルモン欠乏視床下部障害;特発性成長ホルモン欠乏症;小人症;巨人症;末端肥大症;生体・概日リズム障害;神経障害、神経因性疼痛及び下肢静止不能症候群等の疾患に伴う睡眠障害;心臓及び肺疾患、急性及び鬱血性心不全;低血圧;高血圧;尿閉;骨粗鬆症;狭心症;心筋梗塞;虚血性又は出血性脳卒中;クモ膜下出血;潰瘍;アレルギー;良性前立腺肥大;慢性腎不全;腎疾患;グルコース耐性障害;片頭痛;痛覚過敏;疼痛;痛覚過敏、カウザルギー及びアロディニア等の疼痛感受性増大ないし亢進;熱傷疼痛;非定型顔面痛;神経因性疼痛;背痛;複合性局所疼痛症候群I及びII;関節痛;スポーツ損傷疼痛;感染(例えばHIV)に関連する疼痛、化学療法後の疼痛;脳卒中後の疼痛;手術後疼痛;神経痛;嘔吐、悪心;過敏性腸症候群や狭心症等の内臓痛に伴う症状;片頭痛;尿失禁(例えば切迫性尿失禁);麻薬耐性又は麻薬離脱;睡眠障害;睡眠時無呼吸;ナルコレプシー;不眠症;睡眠随伴症;時差症候群;脱抑制−認知症−パーキンソン病−筋萎縮症複合疾患等の疾病分類を含む神経変性疾患;淡蒼球−橋−黒質変性;癲癇;発作障害及び全般的なオレキシン系機能不全に関連する他の疾患等の病変に多くの関係があると思われる。
【0003】
所定のオレキシン受容体アンタゴニストはPCT特許公開WO99/09024、WO99/58533、WO00/47576、WO00/47577、WO00/47580、WO01/68609、WO01/85693、WO2002/051232、WO2002/051838、WO2003/002559、WO2003/002561、WO2003/032991、WO2003/037847、WO2003/041711、WO2003/051872、WO2003/051873、WO2004/004733、WO2004/033418、WO2004/083218、WO2004/085403、WO2005/060959、WO2005/118548に開示されている。2−アミノ−メチルピペリジン誘導体(WO01/96302)、3−アミノメチルモルホリン誘導体(WO02/44172)及びN−アロイル環状アミン(WO02/090355、WO02/089800及びWO03/051368)がオレキシン受容体アンタゴニストとして開示されている。
【発明の開示】
【0004】
(発明の概要)
本発明はオレキシン受容体のアンタゴニストであり、オレキシン受容体が関与する神経精神障害及び疾患の治療又は予防に有用なジアゼパン化合物に関する。本発明はこれらの化合物を含有する医薬組成物と、オレキシン受容体が関与する前記疾患の予防又は治療におけるこれらの化合物及び組成物の使用にも関する。
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は式I:
【0006】
【化5】

{式中、
Xは−SO−、−(C=O)−、及び−(C=S)−から選択され;

(1)R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、
(2)R1a、R1b及びR1cで置換されたナフチル、並びに
(3)R1a、R1b及びR1cで置換されたヘテロアリールから構成される群から選択され;
はR2a、R2b及びR2cで置換されたヘテロアリールであり;
1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2c
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)−(C=O)−O−C1−6アルキル[mは0又は1であり、nは0又は1であり(但し、mが0又はnが0の場合には、結合が存在する。)、アルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(5)−(C=O)−O−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)−(C=O)−C2−4アルケニル(アルケニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(7)−(C=O)−C2−4アルキニル(アルキニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(8)−(C=O)−O−フェニル又は−(C=O)−O−ナフチル(フェニル又はナフチルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(9)−(C=O)−O−複素環(複素環は置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(10)−(C=O)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキル、
(c)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC3−6アルケニル、
(d)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたシクロアルキル、
(e)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニル、及び
(f)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環から構成される群から独立して選択される。]、
(11)−S(O)−NR1011
(12)−S(O)−R12(qは0、1又は2であり、R12はR10及びR11の定義から選択される。)、
(13)−COH、
(14)−CN、及び
(15)−NOから構成される群から独立して選択され;
及びRは、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、
(5)−O−C1−6アルキル(アルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニル又はナフチル、
(7)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキルから構成される群から独立して選択される。]から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはRとRは一緒になってC=Oを形成し;
13
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−(C=O)−O−C1−6アルキル(アルキルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(4)−O−(C1−3)ペルフルオロアルキル、
(5)−(C=O)−O−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)−(C=O)−C2−4アルケニル(アルケニルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(7)−(C=O)−O−フェニル又は−(C=O)−O−ナフチル(フェニル又はナフチルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(8)−(C=O)−O−複素環(複素環は置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(9)−(C=O)−NR1011
(10)−S(O)−NR1011
(11)−S(O)−R12
(12)−COH、
(13)−CN、及び
(14)−NOから構成される群から選択され;
14
(1)ヒドロキシル、
(2)ハロゲン、
(3)C1−6アルキル、
(4)−C3−6シクロアルキル、
(5)−O−C1−6アルキル、
(6)−O(C=O)−C1−6アルキル、
(7)−NH−C1−6アルキル、
(8)フェニル、
(9)複素環、
(10)−COH、及び
(11)−CNから構成される群から選択される。}の化合物又はその医薬的に許容可能な塩に関する。
【0007】
本発明の1実施形態は式Ia:
【0008】
【化6】

(R、R、R及びRは本明細書に定義する通りである。)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含む。
【0009】
本発明の1実施形態は式Ib:
【0010】
【化7】

(R、R、R及びRは本明細書に定義する通りである。)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含む。
【0011】
本発明の1実施形態は式Ic:
【0012】
【化8】

(R及びRは本明細書に定義する通りである。)の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含む。
【0013】
本発明の1実施形態はXが−SO−である化合物を含む。
【0014】
本発明の1実施形態はXが−(C=O)−である化合物を含む。
【0015】
本発明の1実施形態はXが−(C=S)−である化合物を含む。
【0016】
本発明の1実施形態はRがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか又は
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−O−C1−6アルキル[nは0又は1であり(但し、nが0の場合には、結合が存在する。)、アルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(4)−O−フェニル(フェニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(5)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環、
(6)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキルから構成される群から独立して選択される。]
(7)−S(O)−NR1011
(8)−COH、
(9)−CN、及び
(10)−NOの1個以上で置換されている化合物を含む。
【0017】
本発明の1実施形態はRがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか又は1個以上のメチル、−CF、ハロ、−OCF、−OCH、−OCHCH、−COCH、−CN、−N(CH)、−NH(CHCH)、−NO、トリアゾリルもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0018】
本発明の1実施形態はRがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか又は1個以上のメチル、−CF、クロロ、フルオロ、−OCF、−OCH、−OCHCH、−COCH、トリアゾリルもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0019】
本発明の1実施形態はRがフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか又は1個以上のメチル、−CF、フルオロ、−OCF、−OCH、−COCHもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0020】
本発明の1実施形態はR
(1)フェニル、
(2)ビフェニル、
(3)2,6−ジメトキシフェニル、
(4)2,4−ジクロロフェニル、
(5)2,6−ジクロロフェニル、
(6)2,3−ジフルオロフェニル、
(7)2,4−ジフルオロフェニル、
(8)2,6−ジフルオロフェニル、
(9)2−メトキシ−4−メチルフェニル、
(10)3−メトキシビフェニル、
(11)3−メチルビフェニル、及び
(12)5−メチル−2−トリアゾリルフェニルから構成される群から選択される化合物を含む。
【0021】
本発明の1実施形態はRがフェニルである化合物を含む。
【0022】
本発明の1実施形態はRが2,6−ジメトキシフェニルである化合物を含む。
【0023】
本発明の1実施形態はRがヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが置換されていないか又は
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−O−C1−6アルキル[nは0又は1であり(但し、nが0の場合には、結合が存在する。)、アルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(4)−O−フェニル(フェニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(5)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環、
(6)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキルから構成される群から独立して選択される。]
(7)−S(O)−NR1011
(8)−COH、
(9)−CN、及び
(10)−NOの1個以上で置換されている化合物を含む。
【0024】
本発明の1実施形態はRがヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールが置換されていないか又はハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルキル、−O−C1−6アルキルもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0025】
本発明の1実施形態はR
(1)ベンゾイミダゾリル、
(2)ベンゾチアゾリル、
(3)ベンゾオキサゾリル、
(4)キナゾリニル、
(5)キノリニル、
(6)チアジアゾリル
から構成される群から選択され、前記が置換されていないか又はハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルキル、−O−C1−6アルキルもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0026】
本発明の1実施形態はR
(1)ベンゾイミダゾール−2−イル、
(2)1,3−ベンゾチアゾール−2−イル、
(3)1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル、
(4)2−キナゾリニル、
(5)1−キノリン−2−イル、
(6)1,2,4−チアジアゾール−5−イル
から構成される群から選択され、前記が置換されていないか又はメチル、フルオロ、クロロもしくはフェニルで置換されている化合物を含む。
【0027】
本発明の1実施形態はRが置換されていないか又はクロロで置換されたベンゾチアゾリルである化合物を含む。
【0028】
本発明の1実施形態はRが6−クロロベンゾチアゾリルである化合物を含む。
【0029】
本発明の1実施形態はRがベンゾオキサゾリルである化合物を含む。
【0030】
本発明の1実施形態はRがキナゾリニル又はキノリニルである化合物を含む。
【0031】
本発明の1実施形態はR及びR
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)−C1−6アルキル、
(5)−O−C1−6アルキル、
(6)−フェニル、
(7)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)C1−6アルキルから構成される群から独立して選択される。]から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはRとRが一緒になってC=Oを形成する化合物を含む。
【0032】
本発明の1実施形態はRとRが水素である化合物を含む。
【0033】
本発明の1実施形態はRがフルオロであり、Rが水素である化合物を含む。
【0034】
本発明の1実施形態はRがヒドロキシルであり、Rが水素である化合物を含む。
【0035】
本発明の1実施形態はRが−NH−C1−6アルキルであり、Rが水素である化合物を含む。
【0036】
本発明の1実施形態はRが−O−C1−6アルキルであり、Rが水素である化合物を含む。
【0037】
本発明の1実施形態はRとRが一緒になってC=Oを形成する化合物を含む。
【0038】
本発明の特定実施形態としては、下記実施例の標題化合物から構成される群から選択される化合物又はその医薬的に許容可能な塩が挙げられる。
【0039】
本発明の化合物は1個以上の不斉中心を含む場合があり、従ってラセミ化合物及びラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。分子上の各種置換基の種類に応じて更に不斉中心が存在する場合もある。このような各不斉中心は独立して2種の光学異性体を生じ、混合物中に存在するもの及び純化合物又は部分精製化合物としての可能な全光学異性体及びジアステレオマーを本発明の範囲に含むものとする。本発明はこれらの化合物のこのような全異性体を含むものとする。式Iは好ましい立体配置を指定せずにこのような化合物の構造を示す。
【0040】
これらのジアステレオマーの個々の合成又はそのクロマトグラフィー分離は本明細書に開示する方法を適宜変更することにより当分野で公知のように実施することができる。その絶対立体配置は必要に応じて既知絶対配置の不斉中心を含む試薬で誘導体化した結晶生成物又は結晶中間体のX線結晶解析により決定することができる。所望により、個々のエナンチオマーを単離するように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は化合物のラセミ混合物を純エナンチオマー化合物とカップリングしてジアステレオマー混合物を形成した後に分別結晶法やクロマトグラフィー等の標準方法により個々のジアステレオマーを分離する等の当分野で周知の方法により実施することができる。カップリング反応は多くの場合には純エナンチオマー酸又は塩基を使用する塩形成である。その後、付加キラル残基の開裂によりジアステレオマー誘導体を純エナンチオマーに変換することができる。キラル固定相を使用するクロマトグラフィー法により化合物のラセミ混合物を直接分離することもでき、このような方法は当分野で周知である。あるいは、当分野で周知の方法により既知配置の光学的に純粋な出発材料又は試薬を使用して立体選択的合成により化合物の任意エナンチオマーを得ることもできる。
【0041】
当業者に自明の通り、本明細書で使用するハロ又はハロゲンとはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味する。同様に、C1−6アルキル等におけるC1−6とはこの基が直鎖又は分岐鎖配置で1、2、3、4、5又は6個の炭素をもつことを意味すると定義され、従って、C1−8アルキルとしては具体的にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。ある基が独立して置換基で置換されていると言う場合には、独立して複数のこのような置換基で置換されていてもよい。本明細書で使用する「複素環」なる用語は不飽和複素環部分と飽和複素環部分の両者を意味し、不飽和複素環部分(本明細書では「ヘテロアリール」と言う)としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゼピン、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル及びそのN−オキシドが挙げられ、飽和複素環部分としては、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オンイル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチエニル及びそのN−オキシドが挙げられる。
【0042】
「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、第2マンガン、第1マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2種類以上の結晶構造で存在してもよいし、水和物形態でもよい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。
【0043】
本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸や有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸及び酒石酸が特に好ましい。当然のことながら、本明細書で式Iの化合物と言う場合にはその医薬的に許容可能な塩も含むものとする。
【0044】
本発明の適用例は実施例及び本明細書に開示する化合物の使用である。本発明に含まれる特定化合物としては下記実施例に開示する化合物から構成される群から選択される化合物とその医薬的に許容可能な塩及びその個々のジアステレオマーが挙げられる。
【0045】
本発明の化合物はオレキシン受容体活性の阻害を必要とする哺乳動物等の患者における前記活性の阻害方法として、有効量の前記化合物を投与することを含む方法において有用である。本発明はオレキシン受容体活性のアンタゴニストとしての本明細書に開示する化合物の使用に関する。霊長類、特にヒトに加え、他の各種哺乳動物も本発明の方法により治療することができる。本発明は更に、ヒト及び動物におけるオレキシン受容体活性の阻害用医薬又は本明細書に記載する障害及び疾患の治療用医薬の製造方法として、本発明の化合物を医薬担体又は希釈剤と配合する段階を含む方法に関する。
【0046】
本発明の方法で治療する対象は一般にヒト等の雌雄哺乳動物である。「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められる組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘発する本発明の化合物の量を意味する。当然のことながら、当業者は有効量の本発明の化合物を使用して神経精神障害に現在冒されている患者を治療するか又は前記障害に冒されている患者を予防的に治療することにより前記障害を処置することができる。本明細書で使用する「治療」及び「治療する」なる用語は本明細書に記載する神経精神障害の進行を遅延、中断、阻止、抑制又は停止させる等の全プロセスを意味するが、必ずしも全障害症状の完全な排除や、特にこのような疾患又は障害の素因のある患者における上記症状の予防的治療を意味するものではない。化合物「の投与」及び/又は「を投与する」なる用語は治療を必要とする個体に本発明の化合物又は本発明の化合物のプロドラッグを提供することを意味する。
【0047】
本明細書で使用する「組成物」なる用語は特定量の特定成分を含有する製剤に加え、特定量の特定成分の併用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。医薬組成物に関してこの用語は活性成分と担体を構成する不活性成分を含有する製剤に加え、成分の任意2種以上の配合、錯化もしくは凝集、又は成分の1種以上の解離、又は成分の1種以上の他の型の反応もしくは相互作用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物と医薬的に許容可能な担体を混合することにより製造される任意組成物を含む。「医薬的に許容可能」とは担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分と適合可能でなければならず且つそのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0048】
オレキシン受容体OX1R及び/又はOX2Rアンタゴニストとしての本発明の化合物の効果は過度の実験を必要とせずに「FLIPR Ca2+フラックスアッセイ」(Okumuraら,Biochem.Biophys.Res.Comm.280:976−981,2001)等の当分野で周知の方法により容易に判定することができる。典型的実験では、以下の実験方法に従って本発明の化合物のOX1R及びOX2R受容体アンタゴニスト活性を測定した。細胞内カルシウム測定に備え、2mM L−グルタミン、0.5g/ml G418、1%ヒポキサンチン−チミジンサプリメント、100U/mlペニシリン、100ug/mlストレプトマイシン及び10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)を添加したイスコブ改変DMEMでラットオレキシン−1受容体又はヒトオレキシン−2受容体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を増殖させる。ポリ−D−リジンをコーティングしたBecton−Dickinson黒色384ウェル透明底滅菌プレートに細胞20,000個/ウェルを播種する。全試薬はGIBCO−Invitrogen Corp.から入手した。播種したプレートを一晩37℃で5% CO下にインキュベートする。アゴニストとしてのAla6,12ヒトオレキシン−Aを1%ウシ血清アルブミン(BSA)で1mMストック溶液として調製し、アッセイ用に終濃度70pMでアッセイバッファー(20mM HEPES、0.1% BSA及び2.5mMプロベネシドを添加したHBSS,pH7.4)で希釈する。化合物をDMSOで10mMストック溶液として調製した後、384ウェルプレート内で先ずDMSO、次いでアッセイバッファーで希釈する。アッセイの当日に細胞をアッセイバッファー100ulで3回洗浄した後、1uM Fluo−4AMエステル、0.02%プルロニック酸及び1% BSAを添加したアッセイバッファー60ul中で60分間(37℃,5% CO)インキュベートする。次に、色素ローディング溶液を吸引し、細胞をアッセイバッファー100ulで3回洗浄する。同一バッファー30ulを各ウェルに残す。蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR5 Molecular Devices)内で試験化合物25ulをプレートに加え、5分間インキュベートし、最後にアゴニスト25ulを加える。各ウェルについて1秒間隔で5分間蛍光を測定し、アンタゴニストの代わりに70pM Ala6,12オレキシン−A/バッファーにより誘導した蛍光ピークの高さと各蛍光ピークの高さを比較する。アンタゴニスト毎に、IC50値(アゴニスト応答の50%を阻害するために必要な化合物の濃度)を測定する。本発明で使用することができる化合物の固有オレキシン受容体アンタゴニスト活性はこれらの方法により測定することができる。
【0049】
特に、下記実施例の化合物は上記アッセイでラットオレキシン−1受容体及び/又はヒトオレキシン−2受容体を阻害する活性をもち、一般にIC50は約50μM未満であった。本発明に含まれる多くの化合物は上記アッセイでラットオレキシン−1受容体及び/又はヒトオレキシン−2受容体を阻害する活性をもち、IC50は約100nM未満であった。このような結果からこれらの化合物はオレキシン−1受容体及び/又はオレキシン−2受容体のアンタゴニストとして使用する際に固有活性をもつことが明らかである。本発明はオレキシン−1受容体及び/又はオレキシン−2受容体のアゴニストとしての活性をもつ本発明の属範囲内の化合物も含む。
【0050】
オレキシン受容体は多様な生体機能に関係があると考えられている。従って、これらの受容体はヒト又は他の種における各種疾患プロセスに潜在的役割をもつと考えられている。本発明の化合物はオレキシン受容体に関連する各種神経精神障害の治療、予防、改善、抑制又は危険低減に有用であり、このような障害としては以下の症状又は疾患の1種以上が挙げられる:睡眠障害、睡眠異常(例えば睡眠品質増進、睡眠品質改善、睡眠効率増進、睡眠維持増進);対象の睡眠時間を対象が取ろうとしている睡眠時間で割ることにより計算される値の増加;入眠の改善;睡眠潜伏時間ないし開始時間(入眠までの時間)の短縮;入眠困難の低減;睡眠持続時間の増加;睡眠中の覚醒回数の低減;睡眠中の断続覚醒の低減;夜間覚醒の低減;最初の入眠後に覚醒に消費される時間の低減;合計睡眠量の増加;睡眠の断片化の低減;レム睡眠期のタイミング、頻度又は長さの改変;徐波(即ちステージ3又は4)睡眠期のタイミング、頻度又は長さの改変;ステージ2睡眠の量及び百分率の増加;徐波睡眠の促進;睡眠中のEEG−δ活動の増進;夜間覚醒、特に早朝覚醒の低減;日中の清明度の増加;日中嗜眠の低減;過剰な日中の眠気の治療又は緩和;睡眠強度に対する満足の増加;睡眠維持の増加;特発性不眠症;睡眠問題;不眠症、過眠症、特発性過眠症、反復性過眠症、真性過眠症、ナルコレプシー、断続睡眠、睡眠時無呼吸、覚醒、夜間ミオクローヌス、レム睡眠中断、時差ぼけ、交代勤務性睡眠障害、睡眠異常症、夜間恐怖症、鬱病、情緒/気分障害、アルツハイマー病又は認知障害に伴う不眠症、夢遊病及び遺尿症、並びに加齢に伴う睡眠障害;アルツハイマー病の日暮れ時徴候;概日リズムに関連する疾患、時差を伴う旅行及び交代勤務スケジュールに関連する精神及び身体障害、副作用としてレム睡眠を減少させる薬剤に起因する疾患;線維筋肉痛;非回復性睡眠により発現される症候群及び睡眠中の呼吸障害に伴う筋肉痛又は睡眠時無呼吸;睡眠品質低下に起因する疾患;学習能力増進;記憶増進;記憶保持増進;過食関連摂食障害とその合併症、強迫性摂食障害、(遺伝的原因又は環境的原因を問わずに任意原因による。)肥満症、肥満症関連障害(例えば、過食症及び神経性大食症、高血圧、糖尿病、血漿インスリン濃度及びインスリン抵抗性増加、脂質代謝異常、高脂血症、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、変形性関節症、閉塞型睡眠時無呼吸、胆石症、胆石、心臓病、心拍リズム異常及び不整脈、心筋梗塞、鬱血性心不全、冠状動脈性心臓病、突然死、脳卒中、多嚢胞性卵巣疾患、頭蓋咽頭腫、プラダー・ウィリー症候群、フレーリヒ症候群、GH欠損対象、正常変異短躯、ターナー症候群、及び代謝活性低下又は総除脂肪量の百分率としての安静時エネルギー消費量の低下を示す他の病態(例えば急性リンパ芽球性白血病の幼児)、代謝症候群(X症候群とも言う)、インスリン抵抗性症候群、生殖ホルモン異常、性機能及び生殖機能障害(例えば受精障害、不妊症、男性性腺機能低下症及び女性多毛症)、妊婦肥満に伴う胎児異常、胃腸運動障害(例えば肥満症関連胃食道逆流症)、呼吸器障害(例えば肥満低換気症候群(ピックウィック症候群)、息切れ)、心臓血管障害、炎症(例えば全身性血管炎症)、動脈硬化症、高コレステロール血症、高尿酸血症、腰痛、胆嚢疾患、通風、腎臓癌、麻痺の危険増加、左心室肥大の危険低減等の肥満症の二次転帰の危険低減);脳内に異常振動活動が生じる疾患又は障害(例えば鬱病、片頭痛、神経因性疼痛、パーキンソン病、精神病及び統合失調症)及び特に視床を介する活動の連動異常を生じる疾患又は障害;認知機能増進;記憶増進;記憶保持増進;免疫応答増進;免疫機能増進;ホットフラッシュ;寝汗;寿命延長;統合失調症;心拍リズム等の神経系による興奮/弛緩リズムにより制御される筋肉関連障害及び他の心臓血管系障害;血管拡張又は血管収縮及び血圧等の細胞増殖に関連する疾患;癌;心臓不整脈;高血圧;鬱血性心不全;泌尿生殖系疾患;性機能及び妊娠障害;腎機能不全;麻酔薬反応;気分障害、例えば鬱病又はより特定的には鬱病性障害(例えば単発性又は反復性大鬱病性障害及び気分変調性障害)、又は双極性障害(例えばI型双極性障害、II型双極性障害及び気分循環性障害)、一般病状に起因する気分障害、及び物質誘発性気分障害;不安障害(例えば急性ストレス障害、広場恐怖症、全般性不安障害、強迫性障害、パニック発作、パニック障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、対人恐怖症、特定恐怖症、物質誘発性不安障害及び一般病状に起因する不安症);急性神経精神障害(例えば心臓バイパス手術及び移植、脳卒中、虚血性脳卒中、脳虚血、脊髄外傷、頭部外傷、周産期低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷後の脳欠損);ハンチントン舞踏病;筋委縮性側索硬化症;多発性硬化症;眼球損傷;網膜症;認知障害;特発性及び薬物誘発性パーキンソン病;筋攣縮及び筋痙縮に関連する障害(例えば振戦、癲癇、痙攣);(アルツハイマー病、虚血、外傷、血管障害又は脳卒中、HIV病、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツェルフェルト・ヤコブ病、周産期低酸素症、他の一般病状又は物質濫用に関連する。)認知症を含む認知障害;譫妄、健忘症又は加齢による認知機能低下;統合失調症又は統合失調症を含む精神病(妄想型、破瓜型、緊張型又は未分化型)、統合失調症型障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、一般病状に起因する精神障害及び物質誘発性精神障害;物質関連障害及び常習行為(例えば物質誘発性譫妄、持続性認知症、持続性健忘症、精神障害又は不安障害);アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静剤、催眠剤又は不安緩解剤等の物質に対する耐性、常習摂取、依存性又は離脱;運動障害として、無動症及び無動・硬直症候群(例えばパーキンソン病、薬物誘発性パーキンソン病、脳炎後パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病−ALS痴呆複合及び大脳基底核石灰化症)、慢性疲労症候群、疲労(例えばパーキンソン病の疲労、多発性硬化症の疲労、睡眠障害又は概日リズム障害に起因する疲労)、薬物誘発性パーキンソン病(例えば神経遮断薬誘発性パーキンソン病、神経遮断薬性悪性症候群、神経遮断薬誘発性急性ジストニア、神経遮断薬誘発急性アカシジア、神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジア及び薬物誘発性姿勢時振戦)、ジルドラツーレット症候群、癲癇及びジスキネジア[例えば振戦(例えば安静時振戦、本態性振戦、姿勢時振戦及び企図時振戦)、舞踏病(例えばシデナム舞踏病、ハンチントン舞踏病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病及びヘミバリスム)、ミオクローヌス(例えば全般性ミオクローヌス及び焦点性ミオクローヌス)、チック症(例えば単純チック、複雑チック及び症候性チック症)、下肢静止不能症候群及びジストニア(特発性ジストニア、薬物誘発性ジストニア、症候性ジストニア及び発作性ジストニア等の全般性ジストニアと、眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性発声障害、痙性斜頚、軸性ジストニア、ジストニア書痙及び片麻痺ジストニア等の焦点性ジストニア)];注意欠陥多動性障害(ADHD);行為障害;片側痛(例えば片頭痛);尿失禁;物質耐性、物質離脱(例えばオピエート、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、催眠剤等の物質);精神病;統合失調症;不安症(例えば全般性不安障害、パニック障害及び強迫性障害);気分障害(例えば鬱病、躁病、双極性障害);三叉神経痛;難聴;耳鳴り;眼球損傷を含むニューロン損傷;網膜症;黄斑変性症;嘔吐;脳浮腫;疼痛、例えば急性及び慢性疼痛状態、重度疼痛、難治性疼痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、外傷後疼痛、骨及び関節痛(変形性骨関節炎)、反復性運動痛、歯痛、癌性疼痛、筋筋膜痛(筋肉損傷、線維筋肉痛)、周術期疼痛(一般外科、婦人科)、慢性疼痛、神経因性疼痛、外傷後疼痛、三叉神経痛、片側痛及び片頭痛。
【0051】
従って、特定実施形態では、本発明は睡眠品質増進;睡眠維持増進;レム睡眠増進;ステージ2睡眠増進;睡眠パターンの断片化の低減;不眠症の治療;認知機能増進;記憶保持増進;肥満症の治療又は抑制;鬱病の治療又は抑制;失神癲癇を含む癲癇の治療、抑制、改善又は危険低減;神経因性疼痛を含む疼痛の治療又は抑制;パーキンソン病の治療又は抑制;精神病の治療又は抑制;あるいは統合失調症の治療、抑制、改善又は危険低減を必要とする哺乳動物患者におけるこれらの方法として、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0052】
本発明の化合物は更に本明細書に記載する疾患、障害及び症状の予防、治療、抑制、改善又は危険低減方法でも有用である。本発明の組成物中の活性成分の用量は各種用量とすることができるが、適切な剤形が得られるように活性成分の量を選択することが必要である。活性成分は最適な医薬効力を提供する用量でこのような治療を必要とする患者(動物又はヒト)に投与することができる。選択する用量は所望治療効果、投与経路及び治療期間により異なる。用量は疾患の種類と重篤度、患者の体重、患者が順守している特別な食生活、併用投薬及び当業者に自明の他の因子により患者間で異なる。一般に、オレキシン受容体の有効な阻害を得るためには、0.0001〜10mg/kg体重/日の用量レベルを患者(例えばヒト及び高齢者)に投与する。用量範囲は一般に患者1人1日当たり約0.5mg〜1.0gであり、一度に投与してもよいし、複数回に分けて投与してもよい。1実施形態では、用量範囲は患者1人1日当たり約0.5mg〜500mgであり、別の実施形態では患者1人1日当たり約0.5mg〜200mgであり、更に別の実施形態では患者1人1日当たり約5mg〜50mgである。本発明の医薬組成物は例えば活性成分約0.5mg〜500mg、又は活性成分約1mg〜250mgを含有する固体製剤として投与することができる。医薬組成物は活性成分約1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、200mg又は250mgを含有する固体製剤として投与することができる。経口投与の場合、組成物は治療する患者の症状に合わせて活性成分1.0〜1000mg、例えば1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000mgを含有する錠剤として投与することができる。化合物は1日1〜4回、例えば1日1回又は2回のレジメンで投与することができる。
【0053】
本発明の化合物は薬剤を併用したほうが単剤よりも安全又は有効である場合には、本発明の化合物又は他の薬剤が有用であり得る疾患又は症状の治療、予防、抑制、改善又は危険低減に他の1種以上の薬剤と併用することができる。このような他の薬剤はこのような用途に通常使用されている経路と量で本発明の化合物と同時又は順次投与することができる。本発明の化合物を他の1種以上の薬剤と同時に使用する場合には、このような他の薬剤と本発明の化合物を含有する単位用量形態の医薬組成物が考えられる。他方、併用療法は本発明の化合物と1種以上の他の薬剤を別個のオーバーラップするスケジュールで投与する療法でもよい。1種以上の他の活性成分と併用する場合には、本発明の化合物と他の活性成分を各々単独使用する場合よりも低用量で使用できるとも考えられる。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物に加えて1種以上の他の活性成分を含有するものを含む。上記併用は本発明の化合物と他の1種の活性化合物との併用のみならず、2種以上の他の活性化合物との併用も含む。
【0054】
同様に、本発明の化合物は本発明の化合物が有用である疾患又は症状の予防、治療、抑制、改善又は危険低減に使用される他の薬剤と併用することもできる。このような他の薬剤はこのような用途に通常使用されている経路と量で本発明の化合物と同時又は順次投与することができる。本発明の化合物を他の1種以上の薬剤と同時に使用する場合には、本発明の化合物に加えてこのような他の薬剤を含有する医薬組成物が考えられる。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物に加えて1種以上の他の活性成分を含有するものを含む。
【0055】
本発明の化合物と第2の活性成分の重量比は変動させることができ、各成分の有効用量により異なる。一般に、各々の有効用量を使用する。従って、例えば本発明の化合物を別の物質と併用する場合には、本発明の化合物と他の物質の重量比は一般に約1000:1〜約1:1000、例えば約200:1〜約1:200となる。本発明の化合物と他の活性成分の併用も一般に上記範囲に含まれるが、各場合に各活性成分の有効用量を使用すべきである。このような併用では、本発明の化合物と他の活性剤を別々に投与してもよいし、一緒に投与してもよい。更に、ある成分を他の物質の前に投与してもよいし、同時に投与してもよいし、後から投与してもよい。
【0056】
本発明の化合物は睡眠品質を増進し、睡眠障害及び睡眠異常を予防及び治療するために有用であるとして当分野で公知の他の化合物(例えば鎮静剤、催眠剤、不安緩解剤、抗精神病薬、抗不安剤、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、シクロピロロン、GABAアゴニスト、5HT−2アンタゴニスト(5HT−2Aアンタゴニスト及び5HT−2A/2Cアンタゴニストを含む)、ヒスタミンアンタゴニスト(ヒスタミンH3アンタゴニスト、H3逆アゴニストを含む)、イミダゾピリジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、他のオレキシンアンタゴニスト、オレキシンアゴニスト、プロキネチシンアゴニスト及びアンタゴニスト、ピラゾロピリミジン、他のT型カルシウムチャネルアンタゴニスト、トリアゾロピリジン等)と併用投与することができ、例えば、アジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アルモダフィニル、APD−125、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプロモレリン、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロレテート、クロザピン、クロナゼパム、シプラゼパム、デシプラミン、デクスクラモール、ジアゼパム、ジクロルアルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、EMD−281014,エプリバンセリン、エスタゾラム、エスゾピクロン、エトクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、ガボキサドール、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、イブタモレン、イミプラミン、インディプロン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、LY−156735、マプロチリン、MDL−100907、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、メチプリロン、ミダフルル、ミダゾラム、モダフィニル、ネファゾドン、NGD−2−73、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オキサゼパム、パルアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォル、プロトリプチリン、クアゼパム、ラメルテオン、レクラゼパム、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、TAK−375、テマゼパム、チオリダジン、チアガビン、トラカゾラート、トラニルシプロミン、トラザドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ゾラゼパム、ゾピクロン、ゾルピデム及びその塩並びにその組合わせ等が挙げられ、あるいは本発明の化合物は光療法や電気刺激等の物理的方法と併用投与することもできる。
【0057】
別の実施形態では、本発明の化合物は当分野で公知の他の化合物と併用することができ、これらの化合物は別個に投与してもよいし、同一医薬組成物で投与してもよく、限定されないが、インスリン増感剤、例えば(i)グリタゾン(例えばシグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、イサグリタゾン(MCC−555)、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、ツラリク、BRL49653、CLX−0921、5−BTZD、GW−0207、LG−100641及びLY−300512等)等のPPARγアンタゴニスト;(iii)ビグアニド(例えばメトホルミンやフェンホルミン);(b)インスリン又はインスリンミメティクス(例えばバイオタ、LP−100、ノバラピド、インスリンデテミル、インスリンリスプロ、インスリングラルギン、インスリン亜鉛懸濁液(レンテ及びウルトラレンテ)、Lys−Proインスリン、GLP−1(73−7)(インスリントロピン)及びGLP−1(7−36)−NH);(c)スルホニル尿素(例えばアセトヘキサミド、クロルプロパミド、ジアビネーゼ、グリベンクラミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、グリクラジド、グリペンチド、グリキドン、グリソラミド、トラザミド及びトルブタミド);(d)αグルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース、アジポシン、カミグリボース、エミグリテート、ミグリトール、ボグリボース、プラジミシン−Q、サルボスタチン、CKD−711、MDL−25,637、MDL−73,945及びMOR14等);(e)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(アトルバスタチン、イタバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン及び他のスタチン類)、(ii)胆汁酸吸収剤/溶解剤(例えばコレスチラミン、コレスチポール、架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体、Colestid(登録商標)、LoCholest(登録商標)等)、(ii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iii)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラート及びベザフィブラート)等の増殖因子活性化受容体αアゴニスト、(iv)コレステロール吸収抑制剤(例えばスタノールエステル、β−シトステロール、ステロールグリコシド(例えばチクエシド)及びアゼチジノン(例えばエゼチミブ))、及びアシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤(例えばアバシミブやメリナミド)、(v)抗酸化剤(例えばプロブコール)、(vi)ビタミンE、及び(vii)甲状腺ホルモンミメティクス;(f)PPARαアゴニスト(例えばベクロフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、エトフィブラート、フェノフィブラート及びゲムフィブロジル;並びに他のフィブリン酸誘導体(例えばAtromid(登録商標)、Lopid(登録商標)及びTricor(登録商標)等)及びGlaxoによりWO97/36579のPPARαアゴニスト;(g)PPARδアゴニスト;(h)PPARα/δアゴニスト(例えばムラグリタザール及び米国特許第6,414,002号に開示の化合物);更に(i)抗肥満薬、例えば(1)成長ホルモン分泌促進薬、成長ホルモン分泌促進薬受容体アゴニスト/アンタゴニスト(例えばNN703、ヘキサレリン、MK−0677、SM−130686、CP−424,391、L−692,429及びL−163,255);(2)蛋白チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤;(3)カンナビノイド受容体リガンド(例えばカンナビノイドCB受容体アンタゴニスト又は逆アゴニスト、例えばリモナバント(Sanofi Synthelabo)、AMT−251、SR−14778及びSR 141716A(Sanofi Synthelabo)、SLV−319(Solvay)、BAY 65−2520(Bayer));(4)抗肥満セロトニン作動薬(例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン及びシブトラミン);(5)β3アドレナリン受容体アゴニスト(例えばAD9677/TAK677(Dainippon/Takeda)、CL−316,243、SB 418790、BRL−37344、L−796568、BMS−196085、BRL−35135A、CGP12177A、BTA−243、Trecadrine、Zeneca D7114、SR 59119A);(6)膵リパーゼ阻害剤(例えばオルリスタット(Xenical(登録商標))、Triton WR1339、RHC80267、リプスタチン、テトラヒドロリプスタチン、テアサポニン、リン酸ジエチルウンベリフェリル);(7)ニューロペプチドY1アンタゴニスト(例えばBIBP3226、J−115814、BIBO 3304、LY−357897、CP−671906、GI−264879A);(8)ニューロペプチドY5アンタゴニスト(例えばGW−569180A、GW−594884A、GW−587081X、GW−548118X、FR226928、FR240662、FR252384、1229U91、GI−264879A、CGP71683A、LY−377897、PD−160170、SR−120562A、SR−120819A及びJCF−104);(9)メラニン凝集ホルモン(MCH)受容体アンタゴニスト;(10)メラニン凝集ホルモン1受容体(MCH1R)アンタゴニスト(例えばT−226296(Takeda));(11)メラニン凝集ホルモン2受容体(MCH2R)アゴニスト/アンタゴニスト;(12)オレキシン受容体アンタゴニスト(例えばSB−334867−A及び本明細書に引用する特許公開に開示の化合物);(13)セロトニン再取込み阻害剤(例えばフルオキセチン、パロキセチン及びセルトラリン);(14)メラノコルチンアゴニスト(例えばMelanotan II);(15)他のMc4r(メラノコルチン4受容体)アゴニスト(例えばCHIR86036(Chiron)、ME−10142及びME−10145(Melacure)、CHIR86036(Chiron)、PT−141及びPT−14(Palatin));(16)5HT−2アゴニスト;(17)5HT2C(セロトニン受容体2C)アゴニスト(例えばBVT933、DPCA37215、WAY161503、R−1065);(18)ガラニンアンタゴニスト;(19)CCKアゴニスト;(20)CCK−A(コレシストキニン−A)アゴニスト(例えばAR−R 15849、GI 181771、JMV−180、A−71378、A−71623及びSR14613);(22)コルチコトロピン放出ホルモンアゴニスト;(23)ヒスタミン受容体−3(H3)モジュレーター;(24)ヒスタミン受容体−3(H3)アンタゴニスト/逆アゴニスト(例えばチオペラミド、N−(4−ペンテニル)カルバミン酸3−(1H−イミダゾール−4−イル)プロピル、クロベンプロピット、ヨードフェンプロピット、イモプロキシファン、GT2394(Gliatech)及びO−[3−(1H−イミダゾール−4−イル)プロパノール]−カルバミン酸塩);(25)[β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ−1阻害剤(β−HSD−1);(26)PDE(ホスホジエステラーゼ)阻害剤(例えばテオフィリン、ペントキシフィリン、ザプリナスト、シルデナフィル、アムリノン、ミルリノン、シロスタミド、ロリプラム及びシロミラスト);(27)ホスホジエステラーゼ−3B(PDE3B)阻害剤;(28)NE(ノルエピネフリン)輸送阻害剤(例えばGW 320659、デスピラミン、タルスプラム及びノミフェンシン);(29)グレリン受容体アンタゴニスト;(30)組換えヒトレプチン(PEG−OB,Hoffman La Roche)及び組換えメチオニルヒトレプチン(Amgen)を含むレプチン;(31)レプチン誘導体;(32)BRS3(ボンベシン受容体サブタイプ3)アゴニスト(例えば[D−Phe6,β−Ala11,Phe13,Nle14]Bn(6−14)や[D−Phe6,Phe13]Bn(6−13)プロピルアミド、及びPept.Sci.2002 Aug;8(8):461−75)に開示の化合物);(33)CNTF(毛様体神経栄養因子)(例えばGI−181771(Glaxo−SmithKline)、SR146131(Sanofi Synthelabo)、ブタビンジド、PD170,292及びPD 149164(Pfizer));(34)CNTF誘導体(例えばアキソキン(Regeneron));(35)モノアミン再取り込み阻害剤(例えばシブトラミン);(36)UCP−1(脱共役蛋白−1、2又は3)活性化剤(例えばフィタン酸、4−[(E)−2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−5,5,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]安息香酸(TTNPB)及びレチノイン酸);(37)甲状腺ホルモンβアゴニスト(例えばKB−2611(KaroBioBMS));(38)FAS(脂肪酸シンターゼ)阻害剤(例えばCerulenin及びC75);(39)DGAT1(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ1)阻害剤;(40)DGAT2(ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2)阻害剤;(41)ACC2(アセチル−CoAカルボキシラーゼ−2)阻害剤;(42)グルココルチコイドアンタゴニスト;(43)アシル−エストロゲン(例えばdel Mar−Grasa,M.ら,Obesity Research,9:202−9(2001)に開示のオレオイル−エストロン);(44)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤(例えばイソロイシンチアゾリジド、バリンピロリジド、NVP−DPP728、LAF237、MK−431、P93/01、TSL 225、TMC−2A/2B/2C、FE 999011、P9310/K364、VIP 0177、SDZ 274−444);(46)ジカルボン酸トランスポーター阻害剤;(47)グルコーストランスポーター阻害剤;(48)リン酸トランスポーター阻害剤;(49)メトホルミン(Glucophage(登録商標));(50)トピラメート(Topimax(登録商標));(50)ペプチドYY、PYY 3−36、ペプチドYYアナログ、誘導体及びフラグメント(例えばBIM−43073D、BIM−43004C(Olitvak,D.A.ら,Dig.Dis.Sci.44(3):643−48(1999));(51)ニューロペプチドY2(NPY2)受容体アゴニスト(例えばNPY3−36、Nアセチル[Leu(28,31)]NPY 24−36、TASP−V及びシクロ−(28/32)−Ac−[Lys28−Glu32]−(25−36)−pNPY);(52)ニューロペプチドY4(NPY4)アゴニスト(例えば膵ペプチド(PP))及び他のY4アゴニスト(例えば1229U91);(54)シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(例えばエトリコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、BMS347070、チラコキシブ又はJTE522、ABT963、CS502及びGW406381、並びにその医薬的に許容可能な塩);(55)ニューロペプチドY1(NPY1)アンタゴニスト(例えばBIBP3226、J−115814、BIBO 3304、LY−357897、CP−671906、GI−264879A);(56)オピオイドアンタゴニスト(例えばナルメフェン(Revex(登録商標))、3−メトキシナルトレキソン、ナロキソン、ナルトレキソン);(57)11β HSD−1(11−βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼタイプ1)阻害剤)(例えばBVT 3498、BVT 2733);(58)アミノレクス;(59)アンフェクロラール;(60)アンフェタミン;(61)ベンズフェタミン;(62)クロルフ
ェンテルミン;(63)クロベンゾレクス;(64)クロフォレクス;(65)クロミノレクス;(66)クロルテルミン;(67)シクレキセドリン;(68)デキストロアンフェタミン;(69)ジフェメトキシジン;(70)N−エチルアンフェタミン;(71)フェンブトラザート;(72)フェニソレクス;(73)フェンプロポレクス;(74)フルドレクス;(75)フルミノレクス;(76)フルフリルメチルアンフェタミン;(77)レボアンフェタミン;(78)レボファセトペラン;(79)メフェノレクス;(80)メタンフェプラモン;(81)メタンフェタミン;(82)ノルプソイドエフェドリン;(83)ペントレクス;(84)フェンジメトラジン;(85)フェンメトラジン;(86)ピシロレクス;(87)フィトファーム57;及び(88)ゾニサミドが挙げられる。
【0058】
別の実施形態では、本発明の化合物は抗鬱剤又は抗不安剤と併用することができ、例えば、ノルエピネフリン再取込み阻害剤(例えば第三級アミン三環系及び第二級アミン三環系)、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMA)、セロトニン及びノルアドレナリン再取込み阻害剤(SNRI)、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α−アドレナリン受容体アンタゴニスト、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、非定型抗鬱剤、ベンゾジアゼピン、5−HT1Aアゴニスト又はアンタゴニスト、特に5−HT1A部分アゴニスト、並びにコルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストが挙げられる。特定薬剤としてはアミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン及びトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン及びプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン及びセレギリン;モクロベミド;ベンラファキシン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドン及びビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム及びプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロン及びイプサピロン、並びにその医薬的に許容可能な塩が挙げられる。
【0059】
別の実施形態では、本発明の化合物はアルツハイマー病治療剤;βセクレターゼ阻害剤;γセクレターゼ阻害剤;成長ホルモン分泌促進剤;組換え成長ホルモン;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;NSAID(例えばイブプロフェン);ビタミンE;抗アミロイド抗体;CB−1受容体アンタゴニスト又はCB−1受容体逆アゴニスト;抗生物質(例えばドキシサイクリン及びリファムピン);N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト(例えばメマンチン);コリンエステラーゼ阻害剤(例えばガランタミン、リバスチグミン、ドネペジル及びタクリン);成長ホルモン分泌促進剤(例えばイブタモレン、メシル酸イブタモレン及びカプロモレリン);ヒスタミンHアンタゴニスト;AMPAアゴニスト;PDE IV阻害剤;GABA逆アゴニスト;又はニューロンニコチンアゴニストと併用することができる。
【0060】
別の実施形態では、本発明の化合物は鎮静剤、催眠剤、不安緩解剤、抗精神病薬、抗不安剤、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、マイナートランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT−2アンタゴニスト等と併用投与することができ、例えば、アジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、ベンタゼパム、ベンゾクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼペート、クロレテート、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デクスクラモール、ジアゼパム、ジクロルアルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エトクロルビノール、エトミデート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、ホサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルル、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オキサゼパム、パルアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォル、プロトリプチリン、クアゼパム、レクラゼパム、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、テマゼパム、チオリダジン、トラカゾラート、トラニルシプロミン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ゾラゼパム、ゾルピデム及びその塩並びにその組合わせ等が挙げられ、あるいは本発明の化合物は光療法や電気刺激等の物理的方法と併用投与することもできる。
【0061】
別の実施形態では、本発明の化合物は(カルビドパやベンセラジド等の選択的脳外脱炭酸酵素阻害剤との併用下又は非併用下の)レボドパ、抗コリン薬(例えば(場合によりその塩酸塩又は乳酸塩としての)ビペリデン及び塩酸トリヘキシルフェニジル(ベンズヘキソール))、COMT阻害剤(例えばエンタカポン)、MOA−B阻害剤、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト及びドーパミン受容体アゴニスト(例えばアレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキソール)と併用することができる。当然のことながら、ドーパミンアゴニストは医薬的に許容可能な塩の形態とすることができ、例えば臭化水素酸アレンテモール、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸フェノルドパム、塩酸ナキサゴリド及びメシル酸ペルゴリドが挙げられる。リスリドとプラミペキソールは一般に非塩形態で使用される。
【0062】
別の実施形態では、本発明の化合物はアセトフェナジン、アレンテモール、ベンズヘキソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、レボドパ+ベンセラジド、レボドパ+カルビドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシルフェニジル、チオリダジン、チオチキセン又はトリフルオペラジンと併用することができる。
【0063】
別の実施形態では、本発明の化合物はフェノチアジン、チオキサンテン、複素環式ジベンズアゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジン及びインドロン類の神経遮断薬から選択される化合物と併用することができる。フェノチアジンの適切な例としてはクロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン及びトリフルオペラジンが挙げられる。チオキサンテンの適切な例としてはクロルプロチキセンとチオチキセンが挙げられる。ジベンズアゼピンの1例はクロザピンである。ブチロフェノンの1例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの1例はピモジドである。インドロンの1例はモリンドンである。他の神経遮断薬としてはロキサピン、スルピリド及びリスペリドンが挙げられる。当然のことながら、神経遮断薬を本発明の化合物と併用する場合には、医薬的に許容可能な塩の形態とすることができ、例えば塩酸クロルプロマジン、ベシル酸メソリダジン、塩酸チオリダジン、マレイン酸アセトフェナジン、塩酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸チオチキセン、デカン酸ハロペリドール、琥珀酸ロキサピン及び塩酸モリンドンが挙げられる。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジド及びリスペリドンは一般に非塩形態で使用される。
【0064】
別の実施形態では、本発明の化合物は食欲抑制剤(例えばアミノレクス、アンフェクロラール、アンフェタミン、ベンズフェタミン、クロルフェンテルミン、クロベンゾレクス、クロホレクス、クロミノレクス、クロルテルミン、シクレキセドリン、デクスフェンフルラミン、デクストロアンフェタミン、ジエチルプロピオン、ジフェメトキシジン、N−エチルアンフェタミン、フェンブトラゼート、フェンフルラミン、フェニソレクス、フェンプロポレクス、フルドレクス、フルミノレクス、フルフリルメチルアンフェタミン、レボアンフェタミン、レボファセトペラン、マジンドール、メフェノレクス、メタンフェプラモン、メタンフェタミン、ノルプソイドエフェドリン、ペントレクス、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、ピシロレクス及びシブトラミン);選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI);ハロゲン化アンフェタミン誘導体(例えばクロルフェンテルミン、クロホレクス、クロルテルミン、デクスフェンフルラミン、フェンフルラミン、ピシロレクス及びシブトラミン);及びその医薬的に許容可能な塩と併用することができる。
【0065】
別の実施形態では、本発明の化合物はオピエートアゴニスト、リポキシゲナーゼ阻害剤(例えば5−リポキシゲナーゼ阻害剤)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えばシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤)、インターロイキン阻害剤(例えばインターロイキン−1阻害剤)、NMDAアンタゴニスト、一酸化窒素阻害剤もしくは一酸化窒素合成阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬又はサイトカイン抑制性抗炎症薬と併用することができ、例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛薬、スフェンタニル、スリンダック、テニダップ等の化合物と併用することができる。同様に、本発明の化合物は鎮痛剤;補助剤(例えばカフェイン、H2アンタゴニスト、シメチコン、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム);充血除去剤(例えばフェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン又はレボデオキシエフェドリン);鎮咳薬(例えばコデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン又はデキストラメトルファン);利尿薬;及び鎮静性又は非鎮静性抗ヒスタミン薬と併用投与することもできる。
【0066】
本発明の化合物は経口、非経口(例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、槽内注射もしくは輸液、皮下注射、又はインプラント)、吸入スプレー、鼻孔内、膣、直腸、舌下、又は局所投与経路により投与することができ、各投与経路に適した従来の医薬的に許容可能な非毒性担体、アジュバント及びビヒクルを含有する適切な用量単位製剤に単独又は2種以上を配合することができる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル等の温血動物の治療に加え、本発明の化合物はヒトで使用するのにも有効である。
【0067】
本発明の化合物の投与用医薬組成物は用量単位形態とすると簡便であり、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。いずれの方法も1種以上の補助成分を構成する担体と活性成分を配合する段階を含む。一般に、医薬組成物は活性成分を液体担体又は微粉状固体担体又は両者と均質混和した後に必要に応じて生成物を所望製剤に成形することにより製造される。医薬組成物には、疾患の過程又は症状に所望効果を生じるために十分な量の目的活性化合物を配合する。本明細書で使用する「組成物」なる用語は特定量の特定成分を含有する製剤に加え、特定量の特定成分の併用により直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。
【0068】
経口用組成物は医薬組成物の製造方法として当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の添加剤を添加することができる。錠剤は錠剤の製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤と混合した活性成分を含有する。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えばコーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。錠剤はコーティングしなくてもよいし、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせて長時間持続作用を提供するために公知技術によりコーティングしてもよい。経口用組成物は更に活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水又は油性媒体(例えば落花生油、液体パラフィン又はオリーブ油)と混合したソトフゼラチンカプセルの形態でもよい。水性懸濁液剤は水性懸濁液剤の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。油性懸濁液剤は適切な油に活性成分を懸濁することにより製剤化することができる。水中油エマルションも利用できる。水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の防腐剤と混合した活性成分を提供する。本発明の医薬組成物は注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよい。本発明の化合物は直腸投与用座剤形態で投与することもできる。局所用には、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液等を使用することができる。本発明の化合物は吸入投与用に製剤化することもできる。本発明の化合物は当分野で公知の方法により経皮パッチにより投与することもできる。
【実施例】
【0069】
本発明の化合物の数種の製造方法を下記スキーム及び実施例に例証する。出発材料は当分野で公知の手順に従って製造するか又は本明細書に例証するように製造する。本明細書では以下の略語を使用する。Me:メチル;Et:エチル;t−Bu:tert−ブチル;Ar:アリール;Ph:フェニル;Bn:ベンジル;Ac:アセチル;THF:テトラヒドロフラン;DEAD:アゾジカルボン酸ジエチル;DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DMSO:ジメチルスルホキシド;EDC:N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド;HOBT:ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;Boc:tert−ブチルオキシカルボニル;EtN:トリエチルアミン;DCM:ジクロロメタン;DCE:ジクロロエタン;BSA:ウシ血清アルブミン;TFA:トリフルオロ酢酸;DMF:N,N−ジメチルホルムアミド;MTBE:メチルtert−ブチルエーテル;SOCl:塩化チオニル;CDI:カルボニルジイミダゾール;rt:室温;HPLC:高性能液体クロマトグラフィー。本発明の化合物は種々の方法で製造することができる。
【0070】
場合により、例えば置換基の操作により最終生成物を更に修飾してもよい。これらの操作としては限定されないが、当業者に一般に公知の還元、酸化、アルキル化、アシル化及び加水分解反応が挙げられる。場合により、反応を助長するため又は望ましくない反応生成物を避けるために上記反応スキームの実施順序を変更してもよい。以下の実施例は本発明をより十分に理解できるように記載するものである。これらの実施例は例証に過ぎず、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0071】
【化9】

4−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(A−2)
A−1(2.4g,12mmol)のDMF(6ml)溶液を2,6−ジクロロベンゾチアゾール2.45g(12mmol)とトリエチルアミン1.7mL(12mmol)で処理し、100℃一晩で撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、水、次いでブラインで洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、A−2を得た。A−2のデータ:HNMR(500MHz,CDCl)δ 7.55(s,1H),7.4(m,1H),7.25(m,1H),3.8−3.6(m,6H),3.5−3.3(m,2H),2.05(m,2H),1.4(m,9H)ppm。
【0072】
6−クロロ−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−1,3−ベンゾチアゾール塩酸塩(A−3)
A−2のEtOAc溶液をHCl(g)で処理し、密閉フラスコで一晩室温にて撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、塩酸塩A−3を白色固体として得た。A−3のデータ:LC/MS:rt=1.32min;m/z(M+H)=268.0(実測値);268.1(遊離塩基の計算値)。
【0073】
6−クロロ−2−[4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]−1,3−ベンゾチアゾール(A−4)
A−3(250mg,0.82mmol)のCHCl(3mL)溶液にトリエチルアミン720μL(4.1mmol)と塩化2,6−ジメトキシベンゾイル206mg(1.0mmol)を加えた。3時間撹拌後、反応混合物を水に注ぎ、更にDCMを加えて分配した。層分離後、有機層をNaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、A−4を白色固体として得た。A−4のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H):432.1149(実測値),432.1143(計算値)。
【0074】
【化10】

2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)−5−メチル安息香酸(B−2)
2−ヨード−5−メチル安息香酸(4.0g,15.3mmol)のDMF(10mL)溶液を1,2,3−トリアゾール(2.1g,30.5mmol)、CsCO(9.95g,30.5mmol)、CuI(0.145g,0.76mmol)及びトランス−N,N’−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジアミン(0.43g,3.05mmol)で処理した。混合物をマイクロ波反応器で10分間120℃に加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、水で希釈し、EtOAcで洗浄した。水相を1N HClで酸性化し、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物をSiO(0→10% MeOH/水+0.1% AcOH)で勾配溶出により精製すると、先ず2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)−5−メチル安息香酸(B−2)が溶出し、その後、望ましくない位置異性体1−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)−5−メチル安息香酸が溶出した。B−2のデータ:HNMR(500MHz,DMSO−d)d 12.98(br s,1H),8.04(s,2H),7.72−7.45(m,3H),2.41(s,3H)ppm。
【0075】
2−{4−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール(B−3)
B−1(150mg,0.45mmol)、B−2(101mg,0.50mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物77mg(0.57mmol)、及びトリエチルアミン250μL(1.81mmol)のDMF(3mL)溶液にEDC 109mg(0.57mmol)を加え、反応混合物を一晩室温で撹拌した。反応混合物をEtOAcと飽和NaHCO水溶液に分配した。層分離し、有機層をブラインで2回洗浄し、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、B−3を白色固体として得た。B−3のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)403.1888(実測値);403.1877(計算値)。
【0076】
【化11】

6−クロロ−2−[4−(フェニルスルホニル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]−1,3−ベンゾチアゾール(C−1)
A−3(30mg,0.1mmol)のCHCl(1mL)溶液に塩化ベンゼンスルホニル19μL(0.15mmol)とDIPEA 50μL(0.3mmol)を加え、反応混合物を一晩室温で撹拌した。反応混合物をEtOAcと飽和NHCl水溶液に分配した。層分離し、有機層をブラインで2回洗浄し、MgSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物を逆相HPLC(CHCN/HO+添加剤として0.1% TFA)により精製し、C−1を得た。C−1のデータ:LRMS m/z(M+H)407.9(実測値);408.0(計算値)。
【0077】
【化12】

4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(D−1)
A−1(7.2g,36.0mmol)のCHCl(50mL)溶液にトリエチルアミン10.0mL(72mmol)と塩化2,6−ジメトキシベンゾイル7.93g(39.6mmol)を加えた。72時間撹拌後、反応混合物を10%クエン酸水溶液に注ぎ、更にCHClを加えて分配した。層分離後、水層を再びCHClで抽出し、有機層を合わせて飽和NaHCO水溶液、次いで水で洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、D−1を白色固体として得た。D−1のデータ:LC/MS:rt=2.02min;m/z(M+H)=365.1(実測値);365.2(計算値)。
【0078】
1−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン塩酸塩(D−2)
触ってみて温かく感じるまでD−2(5.0g,13.7mmol)のEtOAc(150mL)溶液をHCl(g)で処理した。反応フラスコをストッパーで密閉し、室温で一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物にEtOを加えてトリチュレーションし、再び濃縮し、D−2をオフホワイト固体として得た。D−2のデータ:LC/MS(これらの条件下の2種のコンホマー参照):rt=0.62 & 0.87min;m/z(M+H)=265.1(実測値);265.1(遊離塩基の計算値)。
【0079】
2−クロロキナゾリン(D−3)
2−アミノベンズアルデヒド1.0g(8.3mmol)の0℃のTHF(30mL)溶液にトリエチルアミン1.73mL(12.4mmol)、次いでトリホスゲン980mg(3.30mmol)を加えた。4時間0℃で撹拌後、NHの7M MeOH溶液9.4mL(66mmol)を加え、得られた混合物を室温までゆっくりと昇温しながら一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物にEtOと水を加えてトリチュレーションした。得られた白色固体を濾別し、中間体カルボニル化合物[キナゾリン−2(1H)−オン]を得た。この材料55mg(0.37mmol)のPOCl(1mL)溶液を100℃まで1時間加熱し、この時点で過剰の溶媒の大半をN流で除去した。残留物をEtOAcとNaCOの5%水溶液に分配した。層分離後、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、D−3を白色固体として得た。D−3のデータ:LC/MS:rt=1.51min;m/z(M+H)=165.0(実測値);165.0(計算値)。;HNMR(500MHz,CDCl)δ 9.35(s,1H),8.0(m,3H),7.7(s,1H)ppm。
【0080】
2−[4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]キナゾリン(D−4)
D−2(100mg,0.33mmol)のDMF(2ml)溶液をD−3(60mg,0.37mmol)とKCO(140mg,1mmol)で処理し、マイクロ波反応器で100℃にて20分間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで3回洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、D−4をベージュ色固体として得た。D−4のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)393.1930(実測値);393.1921(計算値)。
【0081】
【化13】

2−(6−フルオロ−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1,3−ベンゾオキサゾール(E−2)
E−1(C.B.Zieglerら,J.Med.Chem.1990,33,142−146)(3.2g,11.4mmol)のDMF(30ml)溶液を2−クロロベンゾオキサゾール1.44mL(12.6mmol)とKCO 6.4g(45.7mmol)で処理し、油浴で80℃にて1時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで3回洗浄し、NaSOで乾燥した。LC/MSによると、所望材料は水相に存在していたので、水相を合わせてNaClで飽和させ、2:1 CHCl/EtOHで3回抽出した。これらの抽出相を濃縮し、E−2をオフホワイト固体として得た。E−2のデータ:LC/MS:rt=0.94min;m/z(M+H)=236.1(実測値);236.1(計算値)。
【0082】
2−{4−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール(E−3)
E−2(410mg,1.74mmol)、B−2(425mg,2.1mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物294mg(2.2mmol)及びトリエチルアミン730μL(5.2mmol)のDMF(25mL)溶液にEDC 418mg(2.2mmol)を加え、反応混合物を50℃で3時間撹拌した。反応混合物をEtOAcと飽和NaHCO水溶液に分配した。層分離し、有機層をブラインで2回洗浄し、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、E−3を白色固体として得た。E−3のデータ:HRMS(APCI):m/z(M+H)421.1785(実測値);421.1783(計算値)。
【0083】
【化14】

6−ヒドロキシ−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(F−2)
MeOH/CHCl溶液を0℃まで冷却してF−1(W.S.Sarriら,J.Org.Chem.1971,36,1711−1714)を溶かした溶液に二炭酸ジ−tert−ブチル(0.126モル比)/CHClを滴下した。反応混合物を一晩撹拌下に室温までゆっくりと昇温した。CHClをロータリーエバポレーターで除去し、残留物を水に溶かし、ブフナー漏斗で濾過した。濾液をCHClで抽出し、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:9 MeOH/CHCl)により精製し、F−2を淡黄色油状物として得た。F−2のデータ:LC/MS:rt=0.89min;m/z(M+H)=217.1(実測値);217.1(計算値)。
【0084】
4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−6−ヒドロキシ−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(F−3)
F−2(1.02g,4.72mmol)の−78℃のCHCl(100mL)溶液にトリエチルアミン1.31mL(9.43mmol)と塩化2,6−ジメトキシベンゾイル993mg(4.95mmol)を加えた。室温までゆっくりと一晩昇温しながら撹拌後、反応混合物を10%クエン酸水溶液に注ぎ、更にCHClを加えて分配した。層分離後、水層を再びCHClで抽出し、有機層を合わせて飽和NaHCO水溶液、次いで水で洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、F−3を白色固体として得た。F−3のデータ:LC/MS(これらの条件下の2種のコンホマー参照):rt=1.57 & 1.79min;m/z(M+H)=381.0(実測値);381.2(計算値)。
【0085】
1−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−6−オール塩酸塩(F−4)
触ってみて温かく感じるまでF−3(182mg,0.48mmol)のEtOAc(10mL)溶液をHCl(g)で処理した。反応フラスコをストッパーで密閉し、室温で一晩撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物にEtOを加えてトリチュレーションし、再び濃縮し、F−4を白色固体として得た。F−4のデータ:LC/MS:rt=0.41min;m/z(M+H)=281.2(実測値);281.1(遊離塩基の計算値)。
【0086】
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−6−オール(F−5)
F−4(105mg,0.33mmol)のDMF(3ml)溶液を2−クロロベンゾオキサゾール56mg(0.35mmol)とKCO 185mg(1.32mmol)で処理し、マイクロ波反応器で80℃にて20分間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで3回洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、F−5を白色固体として得た。F−5のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)398.1722(実測値);398.1711(計算値)。
【0087】
【化15】

4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−6−オキソ−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(G−1)
F−3(550mg,1.45mmol)のCHCl(40ml)溶液をデス・マーチン・ペルヨージナン736mg(1.74mmol)で処理した。1時間室温で撹拌後、NaSOの5%水溶液と飽和NaHCO水溶液を順次加え、得られた2塩基性混合物を30分間激しく撹拌した。反応混合物を分液漏斗に加え、層分離し、水層をCHClで抽出した。有機層を合わせて飽和NaHCO水溶液、次いで水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、G−1を白色タフィーとして得た。G−1のデータ:LC/MS(これらの条件下の2種のコンホマー参照):rt=1.97 & 2.06min;m/z(M+H)=379.0(実測値);379.2(計算値)。
【0088】
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−6−オン(G−3)
前段階で製造したG−1材料をEtOAc(25mL)に溶かし、触ってみて温かく感じるまでHCl(g)で処理した。反応フラスコをストッパーで密閉し、室温で1.5時間撹拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留物にEtOを加えてトリチュレーションし、再び濃縮し、G−2を得た。この材料をDMF 10mLに溶かし、2−クロロベンゾオキサゾール244mg(1.6mmol)とKCO 607mg(4.34mmol)で処理し、油浴で60℃にて2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで3回洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製し、G−3を淡黄色固体として得た。G−3のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)396.1551(実測値);396.1554(計算値)。
【0089】
【化16】

1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−N−メチル−1,4−ジアゼパン−6−アミン(H−1)
G−3(61mg,0.154mmol)の1,2−ジクロロエタン(5mL)溶液にメチルアミンの2M THF溶液770μL(1.54mmol)とHOAc 40μl(0.62mmol)を加えた。2時間室温で撹拌後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム65mg(0.31mmol)を加え、反応混合物を一晩室温で撹拌した。次にEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。ロータリーエバポレーターで濃縮後、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/20:1:1 EtOH:NHOH:HO)により精製し、H−1を白色固体として得た。H−1のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)411.2028(実測値);411.2027(計算値)。
【0090】
【化17】

2−(4−{[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]カルボノチオイル}−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1,3−ベンゾオキサゾール(I−1)
B−3(100mg,0.25mmol)のTHF(1mL)溶液にローソン試薬60mg(0.149mmol)を加え、反応混合物を72時間室温で撹拌した。更にローソン試薬60mgを加え、混合物を50℃に数時間加熱した。反応混合物を次にマイクロ波反応器で100℃に5分間加熱した。更にローソン試薬100mgを加え、反応混合物をマイクロ波で100℃に更に10分間加熱した。反応混合物にシリカゲルを加え、混合物を濃縮後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、I−1をオフホワイト固体として得た。I−1のデータ:HRMS(APCI)m/z(M+H)419.1652(実測値);419.1649(計算値)。
【0091】
上記反応スキーム及び実施例に記載したように適切に置換された試薬を代用した以外は上記方法を使用して以下の化合物を製造した。必要な出発材料は市販品、文献に記載されているもの、又は過度の実験を要することなしに有機合成分野の当業者により容易に合成されるものを使用した。最終生成物によってはフラッシュクロマトグラフィー(SiO;EtOAc/ヘキサン)により精製し、遊離塩基として単離し、あるいは、生成物によっては逆相HPLC(CHCN/HO+添加剤として0.1% TFA)により精製し、TFA塩として単離したが、その場合には報告する質量実測値は遊離塩基の数値である。
【0092】
【表1】


【0093】
以上、所定の特定実施形態について本発明を記載及び例証したが、当業者に自明の通り、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに手順及びプロトコールの各種応用、変更、変形、代用、削除又は追加を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

{式中、
Xは−SO−、−(C=O)−、及び−(C=S)−から選択され;

(1)R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、
(2)R1a、R1b及びR1cで置換されたナフチル、並びに
(3)R1a、R1b及びR1cで置換されたヘテロアリール
から構成される群から選択され;
はR2a、R2b及びR2cで置換されたヘテロアリールであり;
1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2c
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)−(C=O)−O−C1−6アルキル[mは0又は1であり、nは0又は1であり(mが0又はnが0の場合には、結合が存在する。)、並びにアルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(5)−(C=O)−O−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)−(C=O)−C2−4アルケニル(アルケニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(7)−(C=O)−C2−4アルキニル(アルキニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(8)−(C=O)−O−フェニル又は−(C=O)−O−ナフチル(フェニル又はナフチルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(9)−(C=O)−O−複素環(複素環は置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(10)−(C=O)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキル、
(c)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC3−6アルケニル、
(d)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたシクロアルキル、
(e)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニル、及び
(f)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環
から構成される群から独立して選択される。]、
(11)−S(O)−NR1011
(12)−S(O)−R12(qは0、1又は2であり、並びにR12はR10及びR11の定義から選択される。)、
(13)−COH、
(14)−CN、及び
(15)−NO
から構成される群から独立して選択され;
及びRは、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、
(5)−O−C1−6アルキル(アルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたフェニル又はナフチル、
(7)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキル
から構成される群から独立して選択される。]
から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはRとRは一緒になってC=Oを形成し;
13
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−(C=O)−O−C1−6アルキル(アルキルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(4)−O−(C1−3)ペルフルオロアルキル、
(5)−(C=O)−O−C3−6シクロアルキル(シクロアルキルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(6)−(C=O)−C2−4アルケニル(アルケニルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(7)−(C=O)−O−フェニル又は−(C=O)−O−ナフチル(フェニル又はナフチルは置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(8)−(C=O)−O−複素環(複素環は置換されていないか又はR14から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(9)−(C=O)−NR1011
(10)−S(O)−NR1011
(11)−S(O)−R12
(12)−COH、
(13)−CN、及び
(14)−NO
から構成される群から選択され;
14
(1)ヒドロキシル、
(2)ハロゲン、
(3)C1−6アルキル、
(4)−C3−6シクロアルキル、
(5)−O−C1−6アルキル、
(6)−O(C=O)−C1−6アルキル、
(7)−NH−C1−6アルキル、
(8)フェニル、
(9)複素環、
(10)−COH、及び
(11)−CN
から構成される群から選択される。}
又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
式Iaの請求項1の化合物
【化2】

又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
式Ibの請求項1の化合物
【化3】

又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項4】
式Icの請求項1の化合物
【化4】

又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項5】
Xが−SO−である請求項1の化合物。
【請求項6】
Xが−(C=O)−である請求項1の化合物。
【請求項7】
Xが−(C=S)−である請求項1の化合物。
【請求項8】
がフェニルであり、前記フェニルが置換されていないか又は
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−O−C1−6アルキル[nは0又は1であり(nが0の場合には、結合が存在する。)、並びにアルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(4)−O−フェニル(フェニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(5)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環、
(6)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキル
から構成される群から独立して選択される。]
(7)−S(O)−NR1011
(8)−COH、
(9)−CN、及び
(10)−NO
の1個以上で置換されている請求項1の化合物。
【請求項9】
が、置換されていないか又は1個以上のメチル、−CF、ハロ、−OCF、−OCH、−OCHCH、−COCH、−CN、−N(CH)、−NH(CHCH)、−NO、トリアゾリルもしくはフェニルで置換されているフェニルである請求項8の化合物。
【請求項10】
が、置換されていないか又は1個以上のメチル、−CF、フルオロ、−OCF、−OCH、−COCHもしくはフェニルで置換されているフェニルである請求項9の化合物。
【請求項11】

(1)フェニル、
(2)ビフェニル、
(3)2,6−ジメトキシフェニル、
(4)2,4−ジクロロフェニル、
(5)2,6−ジクロロフェニル、
(6)2,3−ジフルオロフェニル、
(7)2,4−ジフルオロフェニル、
(8)2,6−ジフルオロフェニル、
(9)2−メトキシ−4−メチルフェニル、
(10)3−メトキシビフェニル、
(11)3−メチルビフェニル、及び
(12)5−メチル−2−トリアゾリルフェニル
から構成される群から選択される請求項10の化合物。
【請求項12】
がフェニル又は2,6−ジメトキシフェニルである請求項11の化合物。
【請求項13】
が、置換されていないか又は
(1)ハロゲン、
(2)ヒドロキシル、
(3)−O−C1−6アルキル[nは0又は1であり(nが0の場合には、結合が存在する。)、並びにアルキルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。]、
(4)−O−フェニル(フェニルは置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されている。)、
(5)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換された複素環、
(6)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)置換されていないか又はR13から選択される1個以上の置換基で置換されたC1−6アルキル
から構成される群から独立して選択される。]
(7)−S(O)−NR1011
(8)−COH、
(9)−CN、及び
(10)−NO
の1個以上で置換されているヘテロアリールである請求項1の化合物。
【請求項14】
が、置換されていないか又はハロゲン、ヒドロキシル、C1−6アルキル、−O−C1−6アルキルもしくはフェニルで置換されている
(1)ベンゾイミダゾリル、
(2)ベンゾチアゾリル、
(3)ベンゾオキサゾリル、
(4)キナゾリニル、
(5)キノリニル、
(6)チアジアゾリル
から構成される群から選択される請求項13の化合物。
【請求項15】
が、置換されていないか又はクロロで置換されたベンゾチアゾリル、6−クロロベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル及びキノリニルから構成される群から選択される請求項14の化合物。
【請求項16】
及びR
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)ヒドロキシル、
(4)−C1−6アルキル、
(5)−O−C1−6アルキル、
(6)−フェニル、
(7)−NR1011[R10及びR11
(a)水素、
(b)C1−6アルキル
から構成される群から独立して選択される。]
から構成される群から独立して選択されるか、
あるいはRとRが一緒になってC=Oを形成する請求項1の化合物。
【請求項17】
とRが以下の選択肢:
とRが水素である、
がフルオロであり、並びにRが水素である、
がヒドロキシルであり、並びにRが水素である、
が−NH−C1−6アルキルであり、並びにRが水素である、
が−O−C1−6アルキルであり、並びにRが水素である、又は
とRが一緒になってC=Oを形成する
から選択される請求項1の化合物。
【請求項18】
6−クロロ−2−[4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]−1,3−ベンゾチアゾール;
2−{4−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール;
6−クロロ−2−[4−(フェニルスルホニル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]−1,3−ベンゾチアゾール;
2−[4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−1−イル]キナゾリン;
2−{4−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール;
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−6−オール;
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1,4−ジアゼパン−6−オン;
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−N−メチル−1,4−ジアゼパン−6−アミン;
2−(4−{[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)フェニル]カルボノチオイル}−1,4−ジアゼパン−1−イル)−1,3−ベンゾオキサゾール;
4−(ビフェニル−2−イルカルボニル)−1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−1,4−ジアゼパン;
1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−4−(2−メトキシ−4−メチルベンゾイル)−1,4−ジアゼパン;
2−{4−[(2−メチル−5−フェニル−1,3−チアゾール−4−イル)カルボニル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール;
1−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−4−(3−フェニル−1,2,4−チアジアゾール−5−イル)−1,4−ジアゼパン;
2−[4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−6−メトキシ−1,4−ジアゼパン−1−イル]−1,3−ベンゾオキサゾール;
2−{4−[(3−メトキシビフェニル−2−イル)カルボニル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール;
2−{4−[(3−メチルビフェニル−2−イル)カルボニル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}−1,3−ベンゾオキサゾール;
2−{4−[5−メチル−2−(2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)ベンゾイル]−1,4−ジアゼパン−1−イル}キナゾリン;
1−(1,3−ベンゾオキサゾール−2−イル)−4−[2−(エチルアミノ)ベンゾイル]−1,4−ジアゼパン;
4−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−1−キノリン−2−イル−1,4−ジアゼパン
から構成される群から選択される化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項19】
不活性担体と、請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物。
【請求項20】
医薬における使用のための請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項21】
睡眠障害の治療又は予防用医薬の製造のための請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項22】
睡眠品質の増進を必要とする哺乳動物患者における睡眠品質の増進方法であって、治療有効量の請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を患者に投与することを含む前記方法。
【請求項23】
不眠症の治療を必要とする哺乳動物患者における不眠症の治療方法であって、治療有効量の請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を患者に投与することを含む前記方法。
【請求項24】
肥満症の治療又は抑制を必要とする哺乳動物患者における肥満症の治療又は抑制方法であって、治療有効量の請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を患者に投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2009−531447(P2009−531447A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502989(P2009−502989)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/007738
【国際公開番号】WO2007/126935
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】