説明

ジエン含有重合体をベースにした分散剤粘度調整剤

(a)カルボン酸官能基またはその反応性等価物(これは、α,β−不飽和カルボン酸化合物から誘導される)を含有する基を有するイソブチレン−ジエン共重合体と(b)該カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンを含むアミン成分との反応生成物の組成物は、有用な分散剤粘度調整剤粘度調整剤である。本発明は、さらに、内燃機関を潤滑させる方法に関し、この方法は、本発明の潤滑剤を該内燃機関に供給する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、特に、ヘビーデューティーディーゼルエンジンにおいて、すすで誘発させる粘度上昇を減らすために、燃料およびエンジン油潤滑剤で使用される分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘビーデューティーディーゼル車両は、環境への排気を減らすために、排気ガス再循環(EGR)を使用し得る。エンジンを通って排気ガスを再循環させる結果、EGRのないエンジンと比較して、異なるすす構造、および低すすレベルでのオイルの粘度上昇がある。オイルは、6%のすす装填で、最小限の粘度上昇(例えば、12mm/sec(cSt)未満)を示すことが望ましい。粘度上昇を弱める物質は、典型的には、高いすす装填に至るまで、すすを分散する。
【0003】
また、潤滑油組成物は、広範囲の温度にわたって、比較的に安定した粘度を維持することが望ましい。温度の上昇に伴う粘度低下の程度を少なくするために、または温度の低下に伴う粘度上昇の程度を少なくするために、またはそれらの両方のために、粘度向上剤がしばしば使用される。それゆえ、粘度向上剤は、それを含有するオイルの温度変化に伴う粘度の変化を改善する。このオイルの流動特性が向上する。
【0004】
無水マレイン酸でラジカル的にグラフトされ種々のアミンと反応されたエチレン−プロピレン共重合体から製造される伝統的な分散剤粘度調整剤(DVM)は、望ましい分散剤性能を示した。芳香族アミンは、このことに関して、良好な性能を示すと言われている。この種のDVMは、特許文献1(Nalesnikら、1989年9月5日)だけでなく、特許文献2(Valchoら)および特許文献3(Escheら)(各々、2000年8月22日)および特許文献4(Liuら、2000年9月12日)で開示されている。
【0005】
分散剤を調製するために、他の重合体骨格もまた使用されている。例えば、イソブチレンおよびイソプレン(「IOB/IP」)から誘導された重合体は、分散剤の調製で使用され、特許文献5で報告されている。本発明は、イソブチレンおよびジエン(例えば、イソプレン)をベースにした分散剤粘度調整剤を提供するが、これは、しかしながら、とりわけ、重合体骨格の分子量と、一般に、著しく異なるアミン成分(これは、著しく異なる重合体骨格につながる)の選択とによって、このような以前の分散剤とは区別される。本発明の物質は、エンジン試験において、優れた性能を示す。さらに、本発明の物質の合成は、イソブチレンおよびジエンをベースにして、典型的には、著しく簡単であり、そしてエチレン/プロピレン共重合体の合成よりも安価である。典型的には、単一の触媒だけが必要であり、連鎖停止剤として、極めて可燃性である水素ガスを必要としない。当該重合体は、オレフィン性不飽和を与え、それにより、触媒または溶媒を使って、またはそれなしで、さらに官能化するのに適当であるという有利な点がある。
【特許文献1】米国特許第4863623明細書
【特許文献2】米国特許第6107257号明細書
【特許文献3】米国特許第6107258号明細書
【特許文献4】米国特許第6117825号明細書
【特許文献5】国際公開第01/98387号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、エンジン試験において改良された性能を有する低価格の粘度調整剤を提供し、特に、ディーゼルエンジン(とりわけ、排気ガス再循環を使用するヘビーデューティーディーゼルエンジン)において、良好な粘度指数、および良好な分散および寛容(toleration)特性を提供するという問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
従って、本発明は、以下の反応生成物を含有する組成物を提供する:
(a)イソブチレン−ジエン共重合体であって、該共重合体は、1000〜150,000の
【0008】
【数6】

を有し、そして該重合体の
【0009】
【数7】

の各1000単位あたり、平均して、0.1〜4当量のカルボン酸官能基またはその反応性等価物を含有し、該カルボン酸官能基またはその反応性等価物は、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸化合物から誘導される;および
(b)アミン成分であって、該アミン成分は、該カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンを含む。
【0010】
本発明はまた、前述の反応生成物と潤滑粘性のあるオイルとを含有する潤滑剤および潤滑剤濃縮物だけでなく、それをそこに供給することにより内燃機関を潤滑させる方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、カルボン酸誘導体組成物を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(a)(i)イソブチレン−ジエン共重合体と、(ii)カルボン酸官能基を有するα,β−不飽和カルボン酸化合物またはその反応性等価物とを反応させる工程であって、該イソブチレン−ジエン共重合体は、1000〜150,000の
【0012】
【数8】

を有し、そして該重合体の
【0013】
【数9】

の各1000単位あたり、平均して、0.1〜2単位の反応性炭素−炭素二重結合を有する、工程;および
(b)(a)の生成物と、アミン成分とを反応させる工程であって、該アミン成分は、該カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンを含む、工程。
【0014】
本発明はまた、潤滑油組成物の粘度指数を向上させる方法を提供し、該方法は、該組成物に、少量で粘度向上量の本明細書中で記述した組成物を取り込む工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施態様は、非限定的な例示として以下に記載される。
【0016】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、それは、分子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして炭化水素的性質または主として炭化水素的な性質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例には、以下が挙げられる:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、および芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基。ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(例えば、2個の置換基は、一緒になって、環を形成する);
置換された炭化水素置換基、すなわち、非炭化水素基を含有する置換基。この非炭化水素基は、本発明の文脈では、置換基の主な炭化水素的性質を変化させない(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);
ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈内では、主として炭化水素的性質を有しながら、環または鎖の中に存在する炭素以外の原子を有するが、その他は炭素原子で構成されている基。ヘテロ原子には、イオウ、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、2個以下の非炭化水素置換基、好ましくは、1個以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基には、このような非炭化水素置換基は存在しない。
【0017】
(共重合体)
本発明の組成物は、1000〜150,000、あるいは、1000〜100,000、または1000〜50,000、または1000〜25,000、または2000〜18,000、または3000〜16,000の
【0018】
【数10】

を有するイソブチレン−ジエン共重合体から誘導される。共重合体のモル数は、本明細書中では、その共重合体の
【0019】
【数11】

または数平均分子量として規定され、これは、グラムで表わされる。これらの共重合体の分子量は、文献で記載された周知の方法を使用して、測定される。分子量を測定する手順の例には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、光散乱、および気相浸透法(VPO)がある。GPC技術は、試料を比較する十分に特性付けられた重合体を使用して、較正される。最良の結果を得るために、その試料と化学的に類似した標準が使用される。例えば、ポリスチレン重合体には、好ましくは、類似の分子量のポリスチレン標準が使用される。標準が試料と化学的に異なるとき、関連した重合体の一般的な相対分子量が測定できる。例えば、ポリスチレン標準を使用して、一連のポリメタクリル酸アルキルの相対(絶対できない)分子量が測定され得る。本発明の物質については、好ましくは、ポリイソブチレン標準が使用される。
【0020】
本発明の共重合体は、カチオン性重合触媒を使用して、調製できる。ルイス酸は、特に好ましい触媒である。これらには、ハロゲン化物(例えば、AlCl、BF、SnCl、SbCl、ZnCl、TiClおよびPCl)、有機金属誘導体(例えば、RAlCl、RAlCl、RAlであって、ここで、Rは、炭化水素基である)、およびオキシハロゲン化物(例えば、POCl、CrOCl、SOClおよびVOCl)が挙げられる。適当な触媒には、アルミニウム化合物(例えば、AlCl、AlEtClおよびAlEtClであって、ここで、Etは、エチルである)が挙げられる。ルイス酸による開始は、プロトン供与体(例えば、水、ハロゲン化水素、アルコールおよびカルボン酸)またはカルボカチオン供与体(例えば、塩化t−ブチルまたはフッ化トリフェニルメチル)の存在を必要とするか、その存在下にて、より速く進行する傾向にある。あるいは、所望の分子量の共重合体は、それより高い分子量の対応するブチルゴム化合物から、それらを適当な高剪断装置(例えば、押出機)で剪断することにより、調製できる。ブチルゴムおよびそれらの調製は、周知であり、例えば、Kresgeら、「Isobutyl Polymers」、Ency.Polym.Sci.Eng.(1987)8,423−48で記載されている。
【0021】
共重合体は、本明細書中では、少なくとも2種の異なるモノマーから誘導された重合体として、定義される。それゆえ、共重合体には、例えば、2種、3種、4種またはそれ以上の異なるモノマー、さらに多くの場合、2種または3種の異なるモノマーから誘導された重合体が挙げられる。従って、本発明の共重合体は、イソブチレンと少なくとも1種のジエン(これは、共役または孤立(非共役)した二重結合を有し得る)とから誘導される。さらに多くの場合、これらのポリエンは、共役ジエンである。適当なジエンには、イソプレン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,3−ブタジエンおよびリモネン(ジペンテンまたはp−メンタ(mentha)−1,8−ジエンであり、必要に応じて、活性または不活性である)が挙げられる。イソブチレン、イソプレンおよび1,3−ブタジエンから誘導された三元共重合体は、有用である。存在できる他のジエンには、メチルイソプレン、ジシクロペンタジエン、1,4−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、トランス−2−メチル−1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンおよび5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。トリエン(例えば、1,3,5−シクロヘプタトリエン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、ミルセン、1−イソ−プロピリデン−3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、1−イソプロピリデン−および2−(2−メチレン−4−メチル−3−ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ−5−ヘプテン)、および高級なポリエン(例えば、シクロオクタテトラエン)もまた、存在できる。シス異性体およびトランス異性体の両方が使用できる。
【0022】
この共重合体は、典型的には、その重合体1000
【0023】
【数12】

あたり、ジエンから誘導された0.1〜4または0.1〜2単位、あるいは、1000
【0024】
【数13】

あたり、0.15〜1.0単位を含有する。このことは、例えば、2000
【0025】
【数14】

の重合体が0.2個〜4個のジエン誘導単位を含有でき、25,000の重合体が、平均して、2.5〜50単位を含有できるなどを意味する。もちろん、重合体は、通常、1重合体鎖あたり、平均して、少なくとも1個のジエン単位を含有するべきである。これらの重合体鎖の相当な割合が、そのジエンモノマーにより提供される追加反応性部位のなしであることは、通常、望ましくないからである。特に明記しない限り、この共重合体は、例えば、共重合体の
【0026】
【数15】

を基準にしたモル数あたり、平均して、1〜150、または1〜100、または1〜50、または1〜30、または1〜25、または1〜12、または1〜10モル、頻繁には、1.5または2〜8モルのジエン誘導単位を含むことができるが、もちろん、その実際の量は、ある程度、この共重合体の
【0027】
【数16】

に依存している。この共重合体は、(不飽和カルボン酸化合物との反応前)、典型的には、それ1モルあたり、対応する数の反応性炭素−炭素二重結合を含有する。この文脈での「反応性」との用語は、この二重結合が、下記の条件下にて、これらの不飽和カルボン酸化合物の炭素−炭素二重結合と反応でき付加できることを意味する。ある条件下では、特に、熱的(すなわち、「エン」)反応には、この共重合体内の全ての二重結合が反応性である訳ではないことが観察されている;多分、これらの二重結合の70〜97%または80〜95%が反応性である。理論により束縛するつもりはないものの、このような条件下での不飽和カルボン酸化合物(例えば、無水マレイン酸)との適当な反応を保証するために、イソプレンのようなジエンは、1,4−付加で、優先的に取り込まれることが望まれ得ると考えられている。1,2に対する1,4の量は、H NMRで測定できる。
【0028】
本発明のイソブチレン−ポリエン共重合体は、重合体(最終的に、それらの誘導体)の設計における融通性が大きい。1種より多いモノマーを使用すると、特に望ましい特性を有する重合体の設計が可能となる。
【0029】
重合は、−90または−78℃から50℃まで;さらに一般的には、−50℃から−15℃または0℃までの温度で、行うことができる。一般に、温度が低いと、高分子量の重合体が得られる。反応の圧力は、ほぼ大気圧から、345kPaゲージ(1平方インチあたり、50ポンド、ゲージ[psig])、好ましくは、55〜117kPaゲージ(8〜約17psig)の範囲である。このジエンのイソブチレンとの共重合に対する反応性は、イソブチレンに比した充填量を決定する。このジエンの反応性がイソブチレンの反応性と類似しているとき、充填されるポリエンのモル比は、この重合体に取り込まれるものと類似している;もし、ジエンの反応性の方が低いなら、取り込まれる量は、少なくなり得る。例えば、イソプレンの場合、9%の相対モル比であれば、H NMRで測定したとき、この共重合体には、約2.3%のイソプレンが取り込まれる。イソプレンよりも反応性がずっと低いジエンについては、充填されるポリエンのモル比は、その重合体に取り込まれるポリエンの量よりも相当に大きく、しばしば、20倍大きく、時には、それ以上である。これらの重合中では、しばしば、乾燥溶媒が使用される。溶媒は、この重合体を溶解でき、反応温度を制御する手段を提供できる。反応時間は、通常、反応の規模および反応器に送達できる冷却の量に依存している。この反応は、メタノール、水または希苛性溶液でクエンチでき、そして水で洗浄できる。次いで、通常、高温および減圧でのストリッピングにより、溶媒およびライトエンド(低沸騰性副生成物を含めて)が除去される。
【0030】
(α,β−不飽和カルボン酸化合物)
本発明のカルボン酸誘導体組成物は、カルボキシル化イソブチレン−ジエン共重合体から調製される。カルボキシル化は、この共重合体と少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸化合物またはその反応性等価物とを反応させることにより、引き起こされる。カルボキシル化された共重合体は、典型的には、その重合体内のジエン単位の数について上記のように、この重合体の
【0031】
【数17】

の各1000単位あたり、0.1〜4または0.1〜2当量の不飽和カルボン酸官能基、または
【0032】
【数18】

の各1000単位あたり、0.15〜1単位を含有する。それゆえ、すぐ上で記述したように、特定の実施態様では、共重合体1モルあたり、1〜50または1〜30または1〜25または1〜12、または1.5〜10モルのカルボン酸官能基またはその反応性等価物含有基が存在でき、該基は、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸化合物から誘導される。
【0033】
α,β−不飽和カルボン酸化合物の反応性等価物とは、カルボン酸と類似の様式で反応して、カルボン酸から得られるものとほぼ同じ誘導体を形成する反応物である。例えば、無水物、低級アルキルエステルおよびハロゲン化アシルは、アミンと反応して、対応する酸と実質的に類似の生成物を形成する。無水物、低級アルキルエステルおよびハロゲン化アシルは、全て、対応する酸の反応性等価物と見なされる。
【0034】
これらのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸およびそれらの反応性等価物は、当該技術分野で周知である。最も一般的に使用される物質は、カルボニル炭素を除いて、2個〜20個の炭素原子を含有する。これらには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン酸およびメサコン酸だけでなく、それらの無水物、ハロゲン化物およびエステル(特に、低級アルキルエステルであって、「低級アルキル」との用語は、7個までの炭素原子を有するアルキル基を意味する)が挙げられる。アクリル酸化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物およびイタコン酸化合物(ここで、「化合物」との用語は、本明細書中で記述するように、酸およびそれらの反応性等価物を意味すると解釈される)が好ましい。特に好ましい化合物は、α,β−オレフィン性不飽和カルボン酸(特に、少なくとも2個のカルボキシ基を含有するもの、さらに好ましくは、ジカルボン酸およびそれらの誘導体)である。マレイン酸および無水マレイン酸(とりわけ、後者)は、特に適当である。マレイン酸化合物、および2個の隣接カルボキシ基を持つ他の物質は、2当量のカルボン酸官能基に寄与するとみなされる。
【0035】
本発明のカルボン酸誘導体中に存在している塩素の量をできるだけ少なくするために、時には、塩素または塩素含有反応物、促進剤または触媒の使用を避けることが望ましい。従って、1実施態様では、このカルボキシル化共重合体は、熱的反応により調製され、ここで、この共重合体およびα,β−オレフィン性カルボン酸またはそれらの反応性等価物は、単に、それらの反応物を混ぜ合わせて高温(例えば、通常、150℃から250℃まで、または240℃まで、または230℃まで、好ましくは、約180℃から)で加熱することにより、反応される。この熱的反応は、いずれの触媒または開始剤も加えることなしで行うことができ、それを引き続いて除去する必要性がなくなる。この反応の時間は、4〜6時間、または24時間まで、あるいは、そうでなければ、当業者に明らかである。この反応は、公知条件下にて、撹拌した容器または押出機で、行うことができる。
【0036】
いわゆる「熱的」経路による本発明の生成物の調製は、処理工程の点から、熱的プロセスによる従来の分散剤の公知の調製と類似していると見なされ得る。文献で開示されているように、比較的に高ビニリデンのポリイソブチレンは、典型的には、BF触媒を使用することにより調製でき、引き続いて、無水マレイン酸と反応できることが知られている。この反応は、塩素触媒なしで、一連の熱的「エン」反応により起こり、モノ−およびポリ−コハク化分散剤物質の混合物が生成する。BFプロセスおよびそれらのアミンとの反応から製造されるポリイソブチレンからの従来のアシル化剤の調製は、米国特許第4,152,499号で開示されている。ポリイソブチレン以外の重合体をベースにした類似の付加物は、公知である。例えば、米国特許第5,275,747号は、末端エテニリデン(ethenylidene)不飽和を有する誘導体化エチレン−α−オレフィン重合体を開示しており、これは、モノ−またはジカルボン酸生成部分で置換できる。
【0037】
代替プロセスでは、本発明のグラフト化共重合体は、ラジカル反応により、すなわち、撹拌容器にて、溶媒の存在下または非存在下にて、または押出機にて、典型的には、追加遊離ラジカル開始剤の存在下にて、この不飽和カルボン酸化合物をイソブチレン−ジエン重合体にグラフトすることにより、調製でき、ランダムにグラフト化された生成物が得られる。適当な遊離ラジカル開始剤は、周知の物質であり、これには、過酸含有物質が挙げられる。この重合体はまた、押出プロセスの結果として、高い剪断を受け得、分子量の低下した重合体鎖が生じる。このようなグラフト化プロセスは、例えば、米国特許第3,862,265号で開示されている。
【0038】
この重合体と反応されるカルボン酸化合物の量は、ある場合には、当量基準で、その重合体内の反応性二重結合の量に等しいかそれ未満である。過剰な酸物質(これは、引き続いて、除去する必要があり得る)が存在しないようにすることが望まれ得るものの、もし、より完全な変換が望ましいなら、過剰量が供給され得る。また、ラジカルグラフト化プロセスを使用するとき、カルボン酸化合物の量は、初期に存在している反応性二重結合の量より過剰で(例えば、1.1まで、あるいは1.2または1.5当量)、使用され得る。
【0039】
(芳香族アミン)
本発明のカルボン酸誘導体組成物は、このカルボキシル化共重合体と芳香族アミン(これは、少なくとも1個、好ましくは、正確に1個のN−H基(これは、該カルボン酸官能基と縮合できる)と反応させて本発明の窒素含有カルボン酸誘導体(これは、分散剤官能基を含む)を形成することにより、得られる。芳香族アミンには、一般構造NH−Arにより表わすことができるものが挙げられ、ここで、Arは、芳香族基(窒素含有芳香族基および次の構造のいずれかを含むAr基だけでなく複数の非縮合芳香環を含めて)である:
【0040】
【化1】

これらの構造および関連した構造では、R、RおよびRは、別個に、本明細書中で開示した他の基のうちで、−H、−C1〜18アルキル基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−C1〜18アルキル、−COO−C1〜18アルキル、−OH、−O−(CHCH−O)1〜18アルキル基、−NO、および−O−(CHCHO)Ar(ここで、nは、0〜10である)であり得る。
【0041】
芳香族アミンには、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合されたアミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアミンは、モノアミンまたはポリアミンであり得る。この芳香環は、典型的には、単核芳香環(すなわち、ベンゼンから誘導されたもの)であるが、縮合芳香環(特に、ナフタレンから誘導されたもの)を含むことができる。芳香族アミンの例には、アニリン、N−アルキルアニリン(例えば、N−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリン)、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、ナフチルアミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、4−(4−ニトロフェニル−アゾ)アニリン(分散オレンジ(disperse orange)3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロ−アニリン、4−アミノアセトアニリド、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(アミノサリチル酸フェニル)、N−(4−アミノ−5−メトキシ−2−メチル−フェニル)−ベンズアミド(ファストバイオレットB)、N−(4−アミノ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−ベンズアミド(ファストブルーRR)、N−(4−アミノ−2,5−ジエトキシ−フェニル)−ベンズアミド(ファストブルーBB)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミドおよび4−フェニルアゾアニリンが挙げられる。他の例には、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミン、およびチエニル置換アニリンが挙げられる。他の適当な芳香族アミンの例には、アミノ置換芳香族化合物およびそのアミン窒素が芳香環の一部であるアミン(例えば、3−アミノキノリン、5−アミノキノリンおよび8−アミノキノリン)が挙げられる。また、2−アミノベンゾイミダゾールのような芳香族アミンも挙げられ、これは、その芳香環に直接結合した第二級アミノ基およびイミダゾール環に結合した第一級アミノ基を含有する。他のアミンには、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミド(すなわち、φ−NH−φ−NH−COCHCH(CH)NH)が挙げられる。追加芳香族アミンおよび関連化合物は、米国特許4,863,623号、第6,107,257号および第6,107,258号で開示されている;これらの一部には、アミノカルバゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノインダゾリノン、アミノペリミジン(aminoperimidines)、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジエン(aminopyridiens)、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾールおよびアミノベンゾトリアゾールが挙げられる。他の適当なアミンには、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミド、およびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドが挙げられる。使用できる他の芳香族アミンには、例えば、アミド構造により連結された複数の芳香環を含有する種々の芳香族アミンが挙げられる。例には、以下の一般構造を有する物質およびそれらの異性体バリエーションが挙げられる:
【0042】
【化2】

ここで、RおよびRは、別個に、水素、アルキル基またはアルコキシ基(例えば、メチル、メトキシまたはエトキシ)である。ある場合においては、RおよびRは、両方とも、−OCHであり、この物質は、ファストブルーRR[CAS# 6268−05−9]として、知られている。別の場合においては、Rは、−OCHであり、そしてRは、−CHであり、この物質は、ファストバイオレットB[99−21−8]として、知られている。RおよびRの両方がエトキシであるとき、この物質は、ファストブルーBB[120−00−3]である。米国特許第5,744,429号は、他の芳香族アミン化合物(特に、アミノアルキルフェノチアジン)を開示している。N−芳香族置換酸アミド化合物(例えば、米国特許出願第2003/0030033 A1で開示されたもの)はまた、本発明の目的のために、使用され得る。好ましい芳香族アミンには、そのアミン窒素が芳香族カルボン酸化合物で置換されているものが挙げられ、すなわち、この窒素は、芳香環内にて、spハイブリダイズされていない。この芳香族アミンは、好ましくは、カルボン酸アシル化剤と縮合できるN−H基を有する。
【0043】
ある種の芳香族アミンは、酸化防止剤として、一般的に使用される。その点において、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミン)は、特に重要である。これらの物質が重合体鎖のカルボン酸官能基と縮合する範囲まで、それらはまた、本発明で使用するのに適当である。しかしながら、そのアミン窒素に結合された2個の芳香族基は、立体障害を引き起こし得、反応性が低下し得ると考えられる。それゆえ、好ましいアミンには、これらのヒドロカルビル置換基の1個が比較的に短鎖のアルキル基(例えば、メチル)である第一級窒素原子(−NH)または第二級窒素原子を有するものがある。好ましい芳香族アミンには、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノ−ジフェニルアミン、2−アミノベンゾイミダゾール、3−ニトロアニリン、4−(4−ニトロフェニル−アゾ)アニリン(分散オレンジ3)、N−(4−アミノ−5−メトキシ−2−メチル−フェニル)−ベンズアミド(ファストバイオレットB)、N−(4−アミノ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−ベンズアミド(ファストブルーRR)、N−(4−アミノ−2,5−ジエトキシ−フェニル)−ベンズアミド(ファストブルーBB)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、およびN,N−ジメチルフェニレンジアミンがある。
【0044】
上記芳香族アミンは、単独で、または互いに併用して、使用できる。それらはまた、他の追加芳香族または非芳香族(例えば、脂肪族)アミン(これは、1実施態様では、1個〜8個の炭素原子を含む)と併用して、使用できる。これらの追加アミンは、種々の理由のために、含有できる。時には、いくつかの残留酸官能基が比較的に嵩張った芳香族アミンと不完全に反応する傾向があり得る場合には、この重合体の酸官能基との完全な反応を保証するために、脂肪族アミンを取り込むことが望まれ得る。あるいは、脂肪族アミンは、芳香族アミンの大部分の性能を維持しつつ、それより価格が高い芳香族アミンの一部に代えて使用され得る。脂肪族モノアミンには、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンおよび種々の高級アミンが挙げられる。ジアミンまたはポリアミンは、それらが、一般に、単一の反応性アミノ基(すなわち、第一級または第二級基、好ましくは、第一級基)だけを有するという条件で、この機能のために使用できる。このようなジアミンの適当な例には、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノ−プロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリドン、アミノエチルモルホリンおよびアミノプロピルモルホリンが挙げられる。このようなアミンの量は、典型的には、この芳香族アミンの量と比較して、少ない量(すなわち、重量またはモル基準で、存在している全アミンの50%未満)であるものの、それより多い量は、使用できる。代表的な量には、10〜70重量パーセント、または15〜50重量パーセント、または20〜40重量パーセントが挙げられる。
【0045】
本発明の1実施態様では、この反応生成物のアミン成分は、さらに、該カルボン酸官能基(すなわち、2個またはそれ以上の反応性基)と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンを含む。この物質は、このカルボン酸官能基を含有する重合体を共に連結するのに使用できるので、以下、「連結アミン」と呼ぶ。このような生成物は、さらに優れたすす取り扱い性能を示す。この連結アミンは、脂肪族アミンまたは芳香族アミンのいずれかであり得る;もし、芳香族アミンであるなら、それは、上記芳香族アミンとは別の異なる要素とみなされ、その要件は、それらの重合体鎖の過度の架橋を避けるために、1個だけの縮合可能または反応性NH基を有し、好ましくは、有するべきである。このような連結アミンの例には、エチレンジアミン、2,4−ジアミノトルエンおよびフェニレンジアミンが挙げられる;他のものには、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよび他のα,β−ポリアルキレンジアミンが挙げられる。
【0046】
芳香族アミンをカルボキシ含有インターポリマーに連結する他の特定の手段もまた、「イソブチレン−ジエン共重合体とアミン成分との反応生成物」との表現により、本発明の範囲内に含まれると意図される。例えば、アミン官能基は、インターポリマーをグラフト化するとき、その反応混合物にアミン含有コモノマーを含ませることにより、この重合体に導入できる。このアミン含有コモノマーは、アミンと上記α,β−不飽和アシル化剤との反応生成物または縮合生成物であり得る。例えば、無水マレイン酸と芳香族アミン(例えば、4−アミノジフェニルアミンまたは4−フェニルアゾアニリン)との縮合生成物が使用できる。後者の物質は、公知であり、そしてCAS番号[16201−96−0]を持つ。それは、以下の構造(その幾何異性体および位置異性体を含めて)を有すると考えられる:
【0047】
【化3】

同様に、4−アミノジフェニルアミンとの付加物およびその調製方法は、米国特許出願公報2004/0043909で報告されている;例えば、15ページの実施例1を参照のこと。
【0048】
このような代替経路の他の例では、ヒドロキシアミドは、その重合体鎖上のカルボキシ基とエステル化できる。代表的なヒドロキシアミドは、
【0049】
【化4】

により表わされ、ここで、Arは、芳香族アミン(これは、追加窒素または他の官能基を含み得る)の芳香族部分であり、そしてRは、アルキレンまたはヒドロカルビレン連結基である。あるいは、ヒドロキシ酸は、まず、このインターポリマー上のカルボキシ基とエステル化でき、その後、芳香族アミンと反応できる;いずれかの場合、このヒドロキシ酸は、この重合体鎖と芳香族アミンとの間の連結基として働く。
【0050】
この重合体のカルボン酸官能基に縮合されるアミンの全量は、好ましくは、上記重合体鎖上のα,β−不飽和カルボキシ化合物1当量あたり、約1当量の反応性アミン官能基である。もし、化学量論量より多い量を使用するなら、過剰のアミンは、残留し得、そして生成物から除去する必要があり得る。もし、化学量論量より少ない量を使用するなら、残余の未反応の酸または無水物官能基は、この重合体中に残留し得、これは、同様に、有害であり得る。もし、芳香族モノアミンに加えて、ジアミンを使用するなら、このジアミンは、その重合体鎖上の5〜6モルのカルボキシ化合物あたり、1モル(すなわち、2当量)の縮合可能なアミン官能基の量で、存在できる。それゆえ、このジアミンは、4〜5モルの芳香族モノアミンあたり、1モル(すなわち、2当量)であり得る。任意の連結アミンは、その重合体がゲル化する可能性をできるだけ少なくするために、任意の所定の重合体鎖上の無水物(またはカルボキシ物質)が1連結アミン分子だけに由来のアミン窒素と反応する量で使用されることが望ましい。
【0051】
本発明のカルボキシル化共重合体と上記アミンとを反応させることにより生成されるカルボン酸誘導体組成物は、アシル化アミンであり、これには、アミン塩、アミド、イミドおよびイミダゾリンだけでなく、それらの混合物が挙げられる。これらのアミンからカルボン酸誘導体組成物を調製するためには、1種またはそれ以上のカルボキシル化共重合体と1種またはそれ以上のアミンとは、必要に応じて、通常液状で実質的に不活性の有機液状溶媒/希釈剤の存在下にて、80℃から反応物または生成物の分解点までの温度、通常、100℃〜300℃(300℃が反応物または生成物の分解点を超えないという条件で)で、加熱できる。通例、125℃〜250℃の温度が使用される。もし、1種より多いアミンを使用するなら、これらのアミンは、いずれかの順序で、または同時に加えられ、反応できる。このカルボン酸組成物とアミンとは、そのカルボン酸組成物1当量あたり、約半分の当量から2モルまでのアミンを提供するのに十分な量で、反応される。別の実施態様では、このカルボン酸組成物は、そのカルボン酸組成物1当量あたり、約半分の当量から1モルまでのアミンと反応される。本発明の目的のために、1当量のアミンとは、アミンの全重量を、H−N<基を有する存在する縮合可能な窒素の全数で割った量に対応するアミンの量である。それゆえ、オクチルアミンは、その分子量に等しい当量を有する;エチレンジアミンは、その分子量の半分に等しい当量を有し、そしてアミノエチルピペラジン(これは、3個の窒素原子を有するが、2個だけが少なくとも1個のH−N<基を有する)は、その分子量の半分に等しい当量を有する。
【0052】
(潤滑粘性のあるオイル)
本発明の潤滑組成物は、潤滑粘性のあるオイルを使用し、これには、天然または合成潤滑油およびそれらの混合物が挙げられる。天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、鉱物性の潤滑油(例えば、液状の石油オイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油)が挙げられる。石炭またはけつ岩から誘導される潤滑粘性のあるオイルもまた、有用である。合成の潤滑油には、以下の炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が包含される。この炭化水素油およびハロ置換炭化水素油には、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィンおよびそれらの混合物、アルキルベンゼン、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニル);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、それらの類似物および同族体がある。アルキレンオキシド重合体およびインターポリマーおよびそれらの誘導体は、末端水酸基がエステル化、エーテル化などにより修飾された場合、他の有用な種類の公知合成潤滑油を構成する。他の適当な種類の合成潤滑油には、ジ−およびポリカルボン酸のエステル、およびC〜C12モノカルボン酸およびポリオールまたはポリオールエーテルから製造したものが包含される。他の合成潤滑油には、リン含有酸の液状エステル、重合体テトラヒドロフランなど、シリコンベース油(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油)が挙げられる。合成潤滑油には、また、気液またはフィッシャー−トロプシュプロセスにより生成されたものが挙げられる。
【0053】
未精製油、精製油および再精製油(これは、上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれかである;これは、これらのいずれかの2種またはそれ以上の混合物であってもよい)は、本発明の組成物中で用いられ得る。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。精製油には、水素化精製油、水素化仕上げ油、水素処理油、および水素化分解および水素化異性化技術により得られる油が挙げられる。
【0054】
潤滑粘性のあるオイルはまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで明記されたように、定義できる。5つの基油群は、以下のとおりである:
【0055】
【表1】

第I族、第II族および第III族は、鉱油ベースストックである。第III族基油はまた、時には、合成基油とみなされる。
【0056】
(他の添加剤)
本発明の潤滑油組成物は、他の成分を含有し得る。このような添加剤の使用は、任意であり、本発明の組成物中でのそれらの存在は、特定の用途および必要な性能のレベルに依存している。それゆえ、他の添加剤は、含有され得るか含有され得ない。これらの組成物は、金属塩(しばしば、ジチオリン酸の亜鉛塩)を含有し得る。ジチオリン酸の亜鉛塩は、しばしば、ジチオリン酸亜鉛またはO,O’−ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛と呼ばれ、時には、ZDP、ZDDPまたはZDTPの略語で呼ばれる。ジチオリン酸の1種またはそれ以上の亜鉛塩は、追加の極圧、耐摩耗および酸化防止性能を与えるために、少量で存在し得る。ジチオリン酸の他の金属塩(例えば、銅塩、アンチモン塩など)は、公知であり、そして本発明の潤滑油組成物に含有され得る。
【0057】
必要に応じて、本発明の潤滑油で使用され得る他の添加剤には、清浄剤、分散剤、粘度向上剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、流動点降下剤、極圧剤、摩擦調整剤、耐摩耗剤、色安定化剤および消泡剤が挙げられる。前述の分散剤および粘度向上剤は、本発明の組成物に加えて、使用され得る。
【0058】
本発明の組成物に含有され得る補助の極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤は、塩素化脂肪族炭化水素、有機スルフィドおよびポリスルフィド、亜リン酸ジ炭化水素およびトリ炭化水素を含めたリン含有エステル、モリブデン化合物などにより、例示される。
【0059】
補助の粘度改良剤(これはまた、時には、粘度指数改良剤と呼ばれる)は、本発明の組成物に含有され得る。粘度改良剤は、通常、重合体であり、これらには、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエン重合体、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン−無水マレイン酸共重合体、アルケニルアレン−共役ジエン共重合体(すなわち、ビニルアレン共役ポリエン共重合体およびこの種の水素化共重合体(例えば、水素化スチレン−ブタジエン共重合体))、およびポリオレフィンが含まれる。本発明のもの以外の多機能性粘度改良剤(これらは、分散剤特性および/または酸化防止特性を有する)は、公知であり、必要に応じて、本発明の生成物に加えて、使用され得る。
【0060】
清浄剤は、典型的には、オーバーベース化物質である。オーバーベース化物質は、別に、オーバーベース化塩またはスーパーベース化塩と呼ばれるが、一般に、均一なニュートン系であり、これは、その金属および金属と反応される特定の酸性有機化合物の化学量論に従って中和するために存在している金属含量よりも過剰の金属含量により、特徴付けられる。これらのオーバーベース化物質は、酸性物質(典型的には、無機酸または低級カルボン酸、好ましくは、二酸化炭素)と、以下を含有する混合物とを反応させることにより、調製される:酸性有機化合物、該酸性有機物質用の少なくとも1種の不活性有機溶媒(鉱油、ナフサ、トルエン、キシレンなど)を含む反応媒体、化学量論的に過剰な金属塩基、および促進剤(例えば、フェノールまたはアルコール)。この酸性有機物質は、通常、オイル中で一定の溶解度を与えるのに十分な数の炭素原子を有する。過剰な金属量は、通常、金属比で表わされる。「金属比」との用語は、この酸性有機化合物の当量に対する金属の全当量の比である。中性の金属塩は、金属比1を有する。正塩中に存在する金属の4.5倍の金属を有する塩は、3.5当量過剰の金属、すなわち、4.5の金属比を有する。
【0061】
このようなオーバーベース化物質は、当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、ホスホン酸、およびそれらのいずれかの2種またはそれ以上の混合物の塩基性塩を製造する技術を記述している特許には、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が挙げられる。
【0062】
分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、これらには、主として、無灰型分散剤として知られているものが挙げられる。無灰型分散剤は、比較的に高分子量の炭化水素鎖に結合された極性基により、特徴付けられる。典型的な無灰分散剤には、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられ、これは、典型的には、以下を含む種々の化学構造を有する:
【0063】
【化5】

ここで、各Rは、別個に、アルキル基(これは、1個より多いスクシンイミド基を有し得る)、しばしば、500〜5000の分子量を有するポリイソブチル基(対応する分散剤は、それゆえ、ポリイソブチレンスクシンイミドとなる)であり、そしてRは、アルキレン基(通例、エチレン(C)基)である。このような分子は、通例、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応から誘導され、上で示した簡単なイミド構造のほかに、これらの2つの部分の間の広範囲の連鎖が可能である。スクシンイミド分散剤は、米国特許4,234,435号および第3,172,892号で、さらに詳細に記載されている。特に有用なスクシンイミド分散剤には、約1より大きいN:CO比を有するもの、すなわち、コハク酸基から誘導されたカルボニル官能基と比較して、ポリアミンから誘導された全体的に過剰の窒素官能基を有するものがある。このよう物質は、また、高窒素分散剤としても記述され得、これは、その分散剤中にて、(オイルを含まない活性化学物質基準で)、少なくとも1.6%または少なくとも2%の窒素を含有し、そして少なくとも30、40または50(活性化学物質基準で、試料1グラムあたりのmg当量KOH)の比較的に高い全塩基価(TBN)を有する。望ましい物質はまた、比較的に高い分子量の分散剤であり、これは、例えば、1300より高い
【0064】
【数19】

を有するアルキルまたはヒドロカルビル(重合体)基を有する。
【0065】
他の種類の無灰分散剤には、高分子量エステルがある。これらの物質は、ヒドロカルビルアシル化剤と多価脂肪族アルコール(例えば、グリセロール、ペンタエリスリトールまたはソルビトール)との反応により調製されるとみなされ得ること以外は、上記スクシンイミドと類似している。このような物質は、米国特許第3,381,022号で、さらに詳細に記載されている。
【0066】
他の種類の無灰分散剤には、マンニッヒ塩基がある。これらは、高分子量アルキル置換フェノール、アルキレンポリアミンおよびアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)の縮合により形成される物質である。このような物質は、以下の一般構造(種々の異性体などを含めて)を有し得、そして米国特許第3,634,515号でさらに詳細に記載されている:
【0067】
【化6】

他の分散剤には、重合体分散剤添加剤(これは、一般に、その重合体に分散特性を与える極性官能基を含む炭化水素ベース重合体である)が挙げられる。
【0068】
分散剤はまた、種々の試薬のいずれかで後処理できる。これらには、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物およびリン化合物がある。このような処理を詳述している参考文献は。米国特許第4,654,403号で列挙されている。
【0069】
上で説明した添加剤は、それぞれ、潤滑組成物中にて、0.001重量%程度に低い濃度、通常、0.01重量%〜20重量%で存在し得る。大ていの場合、それらは、それぞれ、0.1重量%〜10重量%、さらに多くの場合、5重量%までに寄与する。
【0070】
(添加剤濃縮物)
本明細書中で記述した種々の添加剤は、この潤滑剤に直接加えることができる。しかしながら、好ましくは、それらは、濃縮物形成量の実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤(例えば、鉱油または合成油(例えば、ポリアルファオレフィン))で希釈されて、添加剤濃縮物が形成される。これらの濃縮物は、通常、0.1〜80重量%の本発明の組成物を含み、それに加えて、当該技術分野で公知またはこの上で記述した1種またはそれ以上の他の添加剤を含有し得る。15%、20%、30%または50%またはそれ以上のような濃度の添加剤が使用され得る。「濃縮物形成量」とは、一般に、十分に調合された潤滑剤中に存在している量よりも少ない(例えば、85%または80%または70%または60%未満)オイルまたは他の溶媒の量を意味する。添加剤濃縮物は、しばしば、高温(通常、150℃または130℃または115℃まで)で、所望の成分を共に混合することにより、調製できる。
【0071】
(潤滑油組成物)
本発明はまた、本発明のカルボン酸組成物を含有する潤滑油組成物に関する。十分に調合された潤滑剤中の重合体の量は、典型的には、0.1〜10重量%、あるいは、0.5〜6重量%または1〜3重量%てある。この上で述べたように、本発明の組成物は、潤滑粘性のあるオイルに直接ブレンドされ得るか、さらに多くの場合、他の添加剤を含有する添加剤濃縮物に取り込まれ、これは、順に、このオイルにブレンドされる。
【0072】
上記物質のいくつかは、最終調合物と相互作用し得、その結果、最終調合物の成分は、最初に加えたものとは異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤のもの)は、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動できる。そのように形成された生成物は、本発明の組成物をその目的用途で使用すると形成される生成物を含めて、簡単に記述できない場合がある。それにもかかわらず、このような全ての改良および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記成分を混合することにより調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
1Lの連続反応器に、イソブチレン、イソプレン、ヘキサンおよびAlClを充填する。固形AlClは、これらのモノマーの重合を促進するために、加える。その反応混合物を、外部冷却により、−30℃で維持する。7時間にわたって、この反応容器に、イソブチレン7056g、イソプレン858g、ヘキサン11,780mLおよびAlCl(17.3g)を充填する。
【0074】
ヘキサン、メタノールおよび水の混合物に落とすことにより、この反応器に残留している生成物をクエンチする。有機層を蒸留水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、そして205℃で、133Pa(1mmHg)でストリッピングする。共重合体の収量は、2450gである。
【0075】
【数20】

(ポリイソブチレン標準に対するGPC)は、6900である。1H NMRにより、この重合体の1000分子量単位には、1個のイソプレン誘導モノマー単位が存在している。
【0076】
(実施例2)
実施例1における重合体と類似の様式で、共重合体を調製する。10時間にわたって、反応容器に、イソブチレン10,080g、イソプレン915g、ヘキサン16,420mLおよびAlCl(13g)を加える。共重合体の収量は、3429gである。
【0077】
【数21】

(ポリイソブチレン標準に対するGPC)は、8200である。1H NMRにより、この重合体の1300分子量単位には、1個のイソプレン誘導モノマー単位が存在している。
【0078】
異なる触媒および異なる温度を使用して、類似の様式で、4種の共重合体を調製する。
【0079】
【表2】

(実施例7)
実施例1から得た共重合体(2450g)と無水マレイン酸(88g)とを、Nのブランケット下にて、撹拌しながら、203℃で、24時間加熱し、そして14L/hr(0.5SCFH)で、30分間にわたって、Nを吹き付ける。得られたヒドロカルビル置換アシル化剤は、38の全酸価(TAN)および0.7重量%の未反応無水マレイン酸を有する。
【0080】
(実施例8〜10)
実施例2の共重合体を使用して、実施例7の手順に従って、3種のヒドロカルビル置換アシル化剤を調製する。
【0081】
【表3】

(実施例11〜12)
実施例3〜4の共重合体を使用して、実施例7の手順に従って、2種のヒドロカルビル置換アシル化剤を調製する。
【0082】
【表4】

(実施例13)
実施例6から得た共重合体(403g)と無水マレイン酸(22g)とを、N 14L/hr(0.5SCFH)のブランケット下にて、撹拌しながら、160℃まで加熱する。滴下漏斗に過酸化t−ブチル(4g)を充填し、そして2.5時間にわたって、滴下する。その調製物を、160℃で、さらに30分間撹拌し、その試料を、190℃で、N 57L/hr(2.0SCFH)でパージする。得られたヒドロカルビル置換アシル化剤は、46の全酸価(TAN)および0.2重量%の未反応無水マレイン酸を有する。
【0083】
(実施例14)
実施例7のヒドロカルビル置換アシル化剤175gを希釈油393gで希釈することにより、分散剤粘度調整剤を調製する。次いで、110℃で、30分間にわたって、4−アミノジフェニルアミン11gを加え、続いて、160℃で、4時間加熱する。ケイ藻土のパッドで濾過することにより、生成物を得る。収量は、548gである。窒素のパーセントは、0.29である。100℃での動粘度=98(KV100、ASTM D445_100)。
【0084】
(実施例15〜17)
実施例8〜10のヒドロカルビル置換アシル化剤を使用して、実施例14の方法により、3種の分散剤粘度調整剤を調製する。
【0085】
【表5】

(実施例18)
実施例9のアシル化剤1026gを希釈油2241gで希釈することにより、分散剤粘度調整剤を調製する。この混合物に、50℃で、2時間にわたって、エチレンジアミン3gを滴下する。得られた混合物を110℃まで温め、そして10分間にわたって、4−アミノジフェニルアミン30gを少しずつ加える。得られた混合物を、110℃で、1時間、次いで、160℃で、9時間撹拌する。ケイ藻土を使用して、生成物を濾過する。収量は、3119gである。窒素のパーセントは、0.22である。KV 100は、177である。
【0086】
(実施例19)
実施例13のアシル化剤374gを希釈油852gで希釈することにより、分散剤粘度調整剤を調製する。この混合物に、110℃で、30分間にわたって、4−アミノジフェニルアミン28gを加える。得られた混合物を160℃まで温め、そして5時間撹拌する。ケイ藻土を使用して、生成物を濾過する。収量は、1205gである。窒素のパーセントは、0.29である。KV 100は、159である。
【0087】
上で調製した実験試料のうちの7つについて、すすスクリーン試験を実行する。この試験では、Mack(商標)T−11からの試験排水の末端部に由来のオイル試料に、候補化学物質を加える。この試料を振動にかけ、その候補がすすの分子間での会合の蓄積を減らす性能を、SAE Paper 2001−01−1967、「Understanding Soot Mediated Oil Thickening:Rotational Rheology Techniques to Determine Viscosity and Soot Structure in Peugot XUD−11 BTE Drain Oils」(M.Parry、H.George、and J.Edgar;International Spring Fuels & Lubricants Meeting & Exhibition,Orlando,Florida、2001年5月7〜9日で提示された)で記載された方法により、モジュラスとして、測定する。計算されたパラメータは、G’と呼ばれる。実験化学物質で処理された試料のG’を、添加剤のない排油と比較する(後者は、1.00と規定される)。1.00未満のG’値は、すすの分散における有効性を高めることを示す。
【0088】
【表6】

(実施例26〜28)
3種の潤滑剤調合物を調製し、そしてMack T−11試験にかける。この試験では、潤滑剤の試料を、Mack T−11にて、252時間まで実験する。長時間にわたって、すすがオイルに蓄積したとき、試料を取り出し、それらの動粘度を100℃で測定する。結果は、mm/s(cSt)で、粘度増加として報告する。
【0089】
実施例26(参照)は、オイルおよび市販組成物を含有するベースラインであり、この市販組成物は、オレフィン共重合体粘度調整剤、清浄剤、オーバーベース化カルシウム清浄剤、フェノール性酸化防止剤、腐食防止剤、および他の従来の成分を含む。実施例27(参照)は、ポリイソブチレン/イソプレン置換基を有するスクシンイミド分散剤を2.6%(希釈油について補正されていない;潤滑剤中の1.17%の活性化学物質)で含有すること以外は、実質的に同じ調合物である。実施例28は、3.1%の本発明の分散剤粘度調整剤(実施例27と同様、補正されていない;潤滑剤中で、1.0%の活性化学物質を与える)を含有し、また、従来の粘度調整剤の量を比較できる量だけ減らしたこと以外は、実質的に同じ調合物である。
【0090】
これらの試料の各の粘度上昇は、時間およびすす蓄積の関数として、次の表で示す:
【0091】
【表7】

この表の結果から、ベースライン物質が約4%のすすレベル(144時間)で著しい粘度上昇を示すことが明らかとなる。実施例27のベースライン+分散剤物質は、緩やかな上昇および約5.5%のすすレベル(192時間)での著しい上方ブレイクを示す。実施例28の本発明の物質もまた、緩やかな上昇および6%のすすレベル(216時間)での著しい上方ブレイクを示す。(実施例28について、低いすすレベルでの粘度上昇がゼロでないのは、有意であるとは見なされず、この表の表のその後の値から差し引かれ得る)。これらの結果から、本発明の物質は、このディーゼルエンジン試験において、すすを分散させるのに有効であることが明らかである。
【0092】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用できる。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の反応生成物:
(a)イソブチレン−ジエン共重合体であって、該共重合体は、約1000〜約150,000の
【数1】

を有し、そして該重合体の
【数2】

の各1000単位あたり、平均して、約0.1〜4当量のカルボン酸官能基またはその反応性等価物を含有し、該カルボン酸官能基またはその反応性等価物は、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸化合物から誘導される、イソブチレン−ジエン共重合体;および
(b)アミン成分であって、該アミン成分は、該カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンを含む、アミン成分、
を含有する、組成物。
【請求項2】
前記ジエンが、イソプレン、ピペリレン、1,3−ブタジエンおよびリモネンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジエンが、イソプレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(a)前記カルボン酸官能基を含有する共重合体が、(i)イソブチレン−ジエン共重合体と(ii)α,β−不飽和カルボン酸化合物とを反応させることにより、調製され、該イソブチレン−ジエン共重合体が、該共重合体1モルあたり、平均して、約1〜約150モルの反応性炭素−炭素二重結合を有し、そして該共重合体の
【数3】

の1000単位あたり、約0.1〜約2モルの該二重結合を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記α,β−不飽和カルボン酸化合物が、アクリル酸化合物、メタクリル酸化合物、マレイン酸化合物、フマル酸化合物またはイタコン酸化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記α,β−不飽和カルボン酸化合物が、無水マレイン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミン成分が、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノベンゾイミダゾール、3−ニトロアニリン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン、N−(4−アミノ−5−メトキシ−2−メチル−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−2,5−ジメトキシ−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−2,5−ジエトキシ−フェニル)−ベンズアミド、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステルおよびN,N−ジメチル−フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミン成分が、さらに、前記カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2個のN−H基を有するアミンが、エチレンジアミン、2,4−ジアミノトルエンまたはフェニレンジアミンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
主要量の潤滑粘性のあるオイルと、少量の請求項1に記載の組成物とを含有する、潤滑剤組成物。
【請求項11】
さらに、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、酸化防止剤および耐摩耗剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の成分を混合することにより調製される、潤滑剤組成物。
【請求項13】
さらに、約1より高いN:CO比を有するポリイソブテンスクシンイミド分散剤を含有する、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
さらに、ビニル芳香族モノマーと共役ポリエンとの水素化共重合体を含有する、請求項10に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
内燃機関を潤滑させる方法であって、請求項10に記載の潤滑剤を該内燃機関に供給する工程を包含する、方法。
【請求項16】
潤滑油組成物の粘度指数を向上させる方法であって、該組成物に、少量で粘度向上量の請求項1に記載の組成物を取り込む工程を包含する、方法。
【請求項17】
すすで誘発される潤滑油組成物の粘度上昇を減らす方法であって、該組成物に、少量で粘度向上量の請求項1に記載の組成物を取り込む工程を包含する、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物と、濃縮物形成量の潤滑粘性のあるオイルとを含有する、濃縮物。
【請求項19】
カルボン酸誘導体組成物を調製する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)(i)イソブチレン−ジエン共重合体と、(ii)カルボン酸官能基またはその反応性等価物を有するα,β−不飽和カルボン酸化合物とを反応させる工程であって、該イソブチレン−ジエン共重合体は、約1000〜約150,000の
【数4】

を有し、そして該重合体の
【数5】

の各1000単位あたり、平均して、約0.1〜約2単位の反応性炭素−炭素二重結合を有する、工程;および
(b)(a)の生成物と、アミン成分とを反応させる工程であって、該アミン成分は、該カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも1個のN−H基を含有する少なくとも1種の芳香族アミンを含む、工程、
を包含する、方法。
【請求項20】
前記α,β−不飽和カルボン酸化合物が、実質的に塩素の非存在下で、熱的反応によって、前記イソブチレン−ジエン重合体と反応される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記α,β−不飽和カルボン酸化合物が、ラジカル反応によって、前記イソブチレン−ジエン重合体と反応される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
(b)の前記アミン成分が、さらに、前記カルボン酸官能基と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンを含む、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2007−528435(P2007−528435A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502924(P2007−502924)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/007544
【国際公開番号】WO2005/087821
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】