説明

スイッチ回路

【課題】高周波信号の伝送経路におけるインピーダンス変動の変動を抑え、高周波信号の挿入損失を向上させることができるスイッチ回路を提供すること
【解決手段】本発明にかかるスイッチ回路10は、入力端子11と出力端子12との間において信号を伝達する第1の伝送路上に設けられたFET14と、入力端子13と出力端子12との間において信号を伝達する第2の伝送路上に設けられたFET15と、入力端子13とFET15との間に一端が第2の伝送路と接続され、他端がオープンスタブ17である第3の伝送路と、第3の伝送路上に設けられたFET16と、を備え、第1の伝送路上を信号が伝達される場合、FET14及びFET16がオン状態となり、FET15がオフ状態となるように制御されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチ回路に関し、特に伝達される信号の挿入損失をシャント回路を用いて改善させるスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話と無線通信基地局との間の無線通信には、数GHz等の周波数を有する高周波信号が用いられる。そのため、携帯電話や無線通信基地局などの無線通信機器は、高周波信号を送受信するため、無線通信機器内にも高周波信号が流れる。そこで、無線通信機器内には、高周波信号の流れを制御する高周波スイッチ回路が用いられる。
【0003】
ここで、図5を用いて特許文献1に開示されている高周波スイッチ回路の構成について説明する。特許文献1に開示されている高周波スイッチ回路は、電界効果トランジスタ(FET)101及び102と、DCカットコンデンサ103と、インダクタ104〜106と、端子107及び108と、接続点109とを備えている。端子107と端子108とを結ぶ経路を伝送経路Pとし、伝送経路P上の接続点109と接地とを結ぶ経路をシャント経路Sとする。高周波信号は、端子107から端子108へ向かう方向に流れる。
【0004】
伝送経路P上には、端子107側から順に、インダクタ104、インダクタ105及びFET101が設けられる。シャント経路S上には接続点109側から順に、FET102、DCカットコンデンサ103及びインダクタ106が設けられる。FET101の制御端子には、ハイレベルとロウレベルとに切り替えられる制御信号CTRL1が印加される。FET102の制御端子には、制御信号CTRL1とは逆のレベルを有する制御信号CTRL2が印加される。これにより、伝送経路Pは、導通状態と遮断状態とに切り替えられる。シャント経路Sは、伝送経路Pが遮断状態である時に伝送経路Pを流れる高周波信号を接地へ逃がす機能を有する。
【0005】
また、特許文献2には、1つの無線端末で複数種類の無線通信方式をサポートすることができる、いわゆるマルチモード/マルチバンド端末を実現するために、各無線通信方式に対応した複数のアンテナを備え、無線信号の送受信を行うアンテナをスイッチによって切り替える構成が開示されている。具体的には、第1の端子とSPDT(Single Pole Dual Throw)スイッチの共通端子とが接続される。さらに、分岐点Aを介してSPDTの個別端子と、4個のFETとが接続される。また、分岐点Bを介してSPDTのもう一つの個別端子と、4個のFETとが接続される。また、分岐点AとそれぞれのFETとを接続する配線長を同じ長さとする。分岐点BとそれぞれのFETとの接続においても同様である。このように構成することにより、オフとされたFETが接続される配線がオープンスタブとして動作し、反射損失の影響を低減させることができる。
【0006】
また、特許文献3には、入力端子と出力端子との間に、高周波電力増幅を行う増幅素子が接続された高周波電力増幅装置の構成が開示されている。入力端子と増幅素子との間には入力回路が接続され、増幅素子と出力端子との間には出力回路が接続されている。入力回路と出力回路とはそれぞれ信号の整合を取る処理を実施している。また、入力端子と入力回路との間、及び、増幅素子と出力回路との間には、スイッチを介してオープンスタブがそれぞれ接続されている。スイッチは、CPUからの命令によってオン/オフされる。CPUからの命令によりスイッチがオンされることにより、オープンスタブが入力回路及び出力回路に接続され、入力回路、出力回路及びスイッチにおけるインピーダンスが変化する。インピーダンスが変更されることにより、効率的な増幅が行われるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−157423号公報
【特許文献2】特開2010−74025号公報
【特許文献3】特開平5−175757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示されているスイッチ回路の構成は、信号を伝送する伝送路に対して直接シャント経路が接続されている。さらに、特許文献2及び3に開示されているスイッチ回路においても、信号を伝送する伝送路に対して直接オープンスタブが接続されている。これにより、伝送経路において高周波信号を伝達する際に、伝送経路のインピーダンスに変動が生じ、伝送経路における挿入損失が悪化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかるスイッチ回路は、第1の端子と第2の端子との間において信号を伝達する第1の伝送路上に設けられた第1のスイッチ部と、第3の端子と前記第2の端子との間において信号を伝達する第2の伝送路上に設けられた第2のスイッチ部と、前記第3の端子と前記第2のスイッチ部との間に一端が前記第2の伝送路と接続され、他端がオープンスタブである第3の伝送路と、前記第3の伝送路上に設けられた第3のスイッチ部と、を備え、前記第1の伝送路上を前記信号が伝達される場合、前記第1のスイッチ部及び前記第3のスイッチ部がオン状態となり、前記第2のスイッチ部がオフ状態となるように制御されるものである。
【0010】
このようなスイッチ回路を用いることにより、第1の伝送路と、一端がオープンスタブである第3の経路とが直接接続されることはない。そのため、第1の伝送路上を信号が伝達される場合に、第3のスイッチ部をオン状態とした場合においても、第1の伝送路上のインピーダンスが変動することはなく、第1の伝送路上を伝達される信号の挿入損失が小さくなるように改善される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、高周波信号の伝送経路におけるインピーダンス変動の変動を抑え、高周波信号の挿入損失を向上させることができるスイッチ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかる高周波スイッチ回路の構成図である。
【図2】実施の形態1にかかる挿入損失とインピーダンスとの関係を示す図である。
【図3】実施の形態2にかかる高周波スイッチ回路の構成図である。
【図4】実施の形態3にかかる高周波スイッチ回路の構成図である。
【図5】特許文献1にかかる高周波スイッチ回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1を用いて本発明の実施の形態1にかかる高周波スイッチ回路10の構成例について説明する。高周波スイッチ回路10は、入力端子(RFin)11と、出力端子(RFout)12と、RFin13と、FET14〜16と、オープンスタブ17と、ノード18及び19と、を備えている。
【0014】
RFin11とRFout12との間の伝送経路を伝送経路Hとする。RFin13とRFout12との間の伝送経路を伝送経路Lとする。また、伝送経路L上のノード19とオープンスタブ17との間の伝送路をシャント経路Sとする。伝送経路H上には、FET14が接続されている。FET14の一方の端子は、RFin11と接続され、FET14のもう一方の端子は、ノード18と接続されている。ノード18は、伝送経路Hと伝送経路Lとの接続点であり、FET14とRFout12との間に配置されている。伝送経路L上には、FET15が接続されている。FET15の一方の端子は、ノード19と接続され、FET15のもう一方の端子は、ノード18に接続されている。ノード19は、伝送経路Lとシャント経路Sとの接続点であり、RFin13とFET15との間に配置されている。
【0015】
シャント経路S上には、FET16が接続されている。FET16の一方の端子は、ノード19と接続されている。FET16のもう一方の端子に接続されている配線の先端は、開放端となっており、オープンスタブを形成している。オープンスタブは、先端に回路素子等が接続されていない配線により形成される。オープンスタブは、チップ内、モジュール上又は実装基板上のいずれに配置されてもよい。
【0016】
ここで、オープンスタブの長さ(オープンスタブ長)について、挿入損失とインピーダンスとの関係を示す図2を用いて説明する。図2の縦軸は、伝送経路Hにおける高周波信号の挿入損失を示している。図2の横軸は、ノード19からRFin13の終端抵抗及びシャント経路Sにおけるインピーダンスを示している。図2には、伝送経路Hにおける高周波信号の挿入損失が、ノード19から先の終端抵抗、つまり、ノード19とRFin13との終端抵抗及びシャント経路Sとの間のインピーダンスが50Ωの場合に、最も大きくなることを示している。横軸が50Ωよりも大きくなるにつれて又は小さくなるにつれて、挿入損失は小さくなる。高周波スイッチ回路10は、RFin13の終端抵抗が例えば50Ωであり、伝送経路Lに並列に接続されているシャント経路Sを用いてインピーダンス調整を行う。つまり、高周波スイッチ回路10は、シャント経路Sにおけるオープンスタブ17のオープンスタブ長を調整し、インピーダンス調整を行う。
【0017】
オープンスタブ長は、伝送経路Hを流れる高周波信号の1/4波長もしくは1/4波長の奇数倍とすることにより、50Ωよりショート側、つまり、図2において50Ωよりも小さい方向へインピーダンスが調整され、ノード18から見て、RFin13側が全反射に近づく。これにより、伝送経路Hにおける挿入損失が小さくなる。
【0018】
FET14〜16は、スイッチ素子として動作し、FET14の制御端子には、ハイレベルとロウレベルとに切り替えられる制御信号CTRL_aが印加される。また、FET15の制御端子には、制御信号CTRL_bが印加され、FET16の制御端子には、制御信号CTRL_cが印加される。CTRL_a及びCTRL_cは、同じ真理値を出力しFET14及びFET16のオン/オフを制御する。CTRL_bは、CTRL_a及びCTRL_cと異なる真理値を出力し、FET15のオン/オフを制御する。
【0019】
RFin11は、高周波信号を受け取り、伝送経路Hへ出力する。高周波信号とは例えば、数GHz帯の周波数を有する信号である。ただし、高周波信号は、伝送経路Lにおいて伝達される信号と比較して相対的に高い周波数帯の信号であればよく、周波数帯は制限されない。また、RFin13は低周波信号を受けとり、伝送経路Lへ出力する。低周波信号とは例えば、数百MHz帯の周波数を有する信号である。ただし、低周波信号は、伝送経路Hにおいて伝達される信号と比較して相対的に低い周波数帯の信号であればよく、周波数帯は制限されない。
【0020】
ここで、図1における高周波スイッチ回路10の動作について説明する。伝送経路Hにおいて高周波信号を伝達する場合、FET14は、ハイレベルのCTRL_aが印加されることによりオン状態となる。また、FET16も同様にオン状態となる。FET15は、ロウレベルのCTRL_bが印加されることによりオフ状態となる。これにより、RFin11からRFout12に対して高周波信号が伝達される。この場合、ノード18から見てRFin13側は、全反射に近づいているため、伝送経路H上の高周波信号がRFin13側に流れ込む量は少なくなり、伝送路H上の高周波信号の挿入損失は小さくなる。
【0021】
次に、伝送経路Lにおいて低周波信号を伝達する場合、FET15はハイレベルのCTRL_bが印加されることによりオン状態となる。FET14及びFET16は、ロウレベルのCTRL_cが印加されることによりオフ状態となる。これにより、伝送経路L上において低周波信号が伝達される。また、伝送経路Lには、FET16及びオープンスタブ17が直接接続され、つまり、伝送経路Lとシャント経路とが並列に接続される。そのため、FET16がオフ状態になっている場合においても、FET16のオフ容量の影響により、伝送経路Lにおける低周波信号の挿入損失が若干悪化する。
【0022】
しかし、伝送経路L上を流れる信号は低周波信号であるため、伝送経路H上を流れる高周波信号と比較して、低周波信号がFET16へ流れ込む量は少ない。そのため、伝送経路Lにシャント経路が並列に接続されている場合においても、伝送経路Lは低周波信号を伝達する経路として用いられることにより、高周波信号を伝達する経路として伝送経路Lが用いられる場合と比較して、挿入損失が悪化する影響を減少させることができる。
【0023】
以上説明したように、高周波信号を伝達する伝達経路Hに、低周波信号を伝達する伝送経路L及び伝達経路Lにシャント経路を設けることにより、高周波信号を伝達する際の挿入損失を低く抑えることができる。つまり、伝送経路Hに低周波信号を伝達する伝送経路Lを接続し、さらに伝送経路Lにシャント経路S接続する。これにより、シャント経路のFET16をオンにした場合においても、伝送経路Hとシャント経路Sとの間に伝送経路Lが配置されているため、伝送経路Hにおけるインピーダンス変動を防止することができる。また、シャント経路の先端は、オープンスタブが形成されていることにより、シャント経路の先端に容量素子を設ける場合と比較して、ESD耐性を向上させることができる。
【0024】
また、オープンスタブは、配線のみを用いて形成される。そのため、オープンスタブが、チップ内、モジュール又は実装基板上のいずれに配置された場合においても新たな工程や部品を増やすことなく制作することができる。これにより、部品増加によるコストの増大を防止することができ、さらに、高周波スイッチ回路の製造工程も単純化される。
【0025】
また、インピーダンスの調整は、配線の長さを調整することにより行われる。配線の長さは、プリント基板を形成する工程において容易に調整することができる。また、オープンスタブではなく容量素子を用いた場合、インピーダンスの調整は、容量素子の面積を大きくする等の調整が必要である。そのため、シャント経路Sにオープンスタブを用いた構成においては、高周波スイッチ回路の製造工程をさらに単純化することができる。
【0026】
(実施の形態2)
続いて、図3を用いて本発明の実施の形態2にかかる高周波スイッチ回路20の構成例について説明する。高周波スイッチ回路20は、RFin21と、RFout22と、RFin23〜24と、FET25〜29と、オープンスタブ30と、ノード31〜35とを備えている。
【0027】
RFin21とRFout22との間の伝送経路を伝送経路H1とする。RFin23とRFout22との間の伝送経路を伝送経路L1とする。RFin24とRFout22との間の伝送経路を伝送経路L2とする。また、伝送経路L1上のノード32とオープンスタブ30との間の伝送経路をシャント経路S1とする。伝送経路L2上のノード34とオープンスタブ30との間の伝送経路をシャント経路S2とする。
【0028】
伝送経路H1上には、FET25が接続されている。FET25の一方の端子は、RFin21と接続され、FET25のもう一方の端子は、ノード31と接続されている。ノード31は、伝送経路H1と、伝送経路L1及びL2との接続点である。伝送経路L1上には、FET26が接続されている。FET26の一方の端子は、ノード32と接続され、FET26のもう一方の端子は、ノード33と接続されている。ノード32は、伝送経路L1とシャント経路S1との接続点である。ノード33は、伝送経路L1と伝送経路L2との接続点である。伝送経路L2上には、FET27が接続されている。FET27の一方の端子は、ノード34と接続され、FET27のもう一方の端子は、ノード33と接続されている。ノード34は、伝送経路L2とシャント経路S2との接続点である。
【0029】
シャント経路S1上には、FET28が接続されている。FET28の一方の端子は、ノード32と接続され、FET28のもう一方の端子は、ノード35と接続されている。ノード35は、シャント経路S1と、シャント経路S2と、オープンスタブ30との接続点である。シャント経路S2上には、FET29が接続されている。FET29の一方の端子はノード34と接続され、FET29のもう一方の端子は、ノード35と接続されている。
【0030】
FET25〜29は、スイッチ素子として動作し、FET25〜29のそれぞれの制御端子には、それぞれハイレベルとロウレベルとに切り替えられる制御信号CTRL_d〜hが印加される。
【0031】
伝送経路H1は、高周波信号を伝達する。また、伝送経路L1及びL2は、低周波信号を伝達する。ここで、高周波信号は、実施の形態1と同様、伝送経路L1及びL2において伝達される信号と比較して相対的に高い信号を高周波信号とする。また、低周波信号は、伝送経路H1において伝達される信号と比較して相対的に低い信号を低周波信号とする。
【0032】
ここで、図3における高周波スイッチ回路20の動作について説明する。伝送経路H1において高周波信号を伝達する場合、FET25は、ハイレベルのCTRL_dが印加されることによりオン状態となる。また、FET28及び29も同様にオン状態となる。これに対して、FET26及び27は、ロウレベルのCTRL_e及びfが印加されることによりオフ状態となる。これにより、RFin21からRFout22に対して高周波信号が伝達される。この場合、ノード31から見てRF23及び24側は、全反射に近づいている。そのため、伝送経路H1上の高周波信号がRFin23及びRFin24側に流れ込む量は少なくなり、伝送経路H1上の高周波信号の挿入損失は小さくなる。ここで、オープンスタブ30のオープンスタブ長は、実施の形態1と同様、高周波信号の波長の1/4又は1/4の奇数倍に調整されている。
【0033】
次に、伝送経路L1において低周波信号を伝達する場合、FET26はハイレベルのCTRL_eが印加されることによりオン状態となる。これに対して、FET25及び27〜29はロウレベルのCTRL_d及びf〜hが印加されることによりオフ状態となる。これにより、RFin23からRFout22に対して低周波信号が伝達される。また、図1における高周波スイッチ回路10と同様に、伝送経路L1と、シャント経路S1とが並列に接続される。そのため、FET28がオフ状態になっている場合においても、FET28のオフ容量の影響により、伝送経路Lにおける低周波信号の挿入損失が若干悪化する。
【0034】
しかし、伝送経路L1上を流れる信号は低周波信号であるため、伝送経路H1上を流れる高周波信号と比較して、低周波信号がFET28へ流れ込む量は少ない。そのため、伝送経路L1にシャント経路S1が並列に接続されている場合においても、伝送経路L1は、低周波信号を伝達する経路として用いられることにより、伝送経路L1が高周波信号を伝達する経路として用いられる場合と比較して、挿入損失が悪化する影響を減少させることができる。
【0035】
次に、伝送経路L2において低周波信号を伝達する場合、FET27はハイレベルのCTRL_fが印加されることによりオン状態となる。これに対して、FET25〜26及び28〜29はロウレベルのCTRL_d〜e及びg〜hが印加されることによりオフ状態となる。これにより、RFin24からRFout22に対して低周波信号が伝達される。シャント経路S2による、伝送経路L2における挿入損失については、シャント経路S1による伝送経路L1における挿入損失と同様であるため、説明を省略する。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施の形態2にかかる高周波スイッチ回路20においては、高周波信号を伝達する伝送経路H1から見て、低周波信号を伝達する伝送経路が冗長化されている。そのため、伝送経路L1又はL2のいずれかに障害が発生した場合においても、ノード31からRFin23側又はRFin24側は全反射に近づけることができる。また、RFin21からRFout22へ伝達される高周波信号の挿入損失は、図1における高周波スイッチ回路10と同様に小さくなる。
【0037】
また、シャント経路にオープンスタブを用いることにより、実施の形態1と同様、高周波スイッチ回路20の低コスト化及び製造工程の単純化を図ることができる。
【0038】
(実施の形態3)
続いて、図4を用いて本発明の実施の形態3にかかる高周波スイッチ回路40の構成例について説明する。高周波スイッチ回路40は、RFin41と、RFout42と、RFin43〜44と、FET45〜49と、オープンスタブ50と、ノード51〜53と、を備えている。
【0039】
RFin41とRFout42との間の伝送経路を伝送経路H2とする。RFin43とRFout42との間の伝送経路を伝送経路R1とする。RFin44とRFout42との間の伝送経路を伝送経路R2とする。また、伝送経路R1及びR2上のノード53とオープンスタブ50との間の伝送経路をシャント経路S3とする。
【0040】
伝送経路H2上には、FET45が接続されている。FET45の一方の端子は、RFin41と接続され、FET45のもう一方の端子は、ノード51と接続されている。ノード51は、伝送経路H2と、伝送経路R1又はR2との接続点である。伝送路R1上には、FET46が接続されている。FET46の一方の端子は、RFin43と接続され、FET46のもう一方の端子は、ノード52と接続されている。ノード52は、伝送経路R1と伝送経路R2との接続点である。伝送経路R2上には、FET47が接続されている。FET47の一方の端子は、RFin44と接続され、FET47のもう一方の端子は、ノード52と接続されている。また、ノード52とノード51との間には、FET48が接続されている。FET48の一方の端子は、ノード51と接続され、FET48のもう一方の端子は、ノード53と接続されている。ノード53は、ノード52とFET48との間における、シャント経路S3との接続点である。
【0041】
シャント経路S3上には、FET49が接続されている。FET49の一方の端子は、ノード53と接続され、FET49のもう一方の端子は、オープンスタブ50を形成している。
【0042】
オープンスタブ50のオープンスタブ長は、図1におけるオープンスタ17と同様、伝送経路H2を流れる高周波信号の1/4波長もしくは1/4波長の奇数倍とする。これにより、インピーダンスが小さくなる方向へ調整され、ノード51から見て、RFin43及びRFin44側が全反射に近づく。これにより、伝送経路H2を流れる高周波信号が、ノード51を介してRFin43又はRFin44へ流れ込むことを防止することができる。これにより、伝送経路H2を流れる高周波信号の挿入損失が小さくなる。
【0043】
FET45〜49は、スイッチ素子として動作し、FET45〜49のそれぞれの制御端子には、それぞれハイレベルとロウレベルとに切り替えられる制御信号CTRL_i〜mが印加される。
【0044】
ここで、伝送経路H2において伝達された高周波信号は、アンテナ(図示せず)を介して外部装置等へ送信される。具体的には、RFin41に入力された高周波信号は、RFout42へ出力される。RFout42にはアンテナ(図示せず)が接続され、高周波信号は、RFout42からアンテナを介して外部装置等へ送信される。
【0045】
伝送経路R1は、アンテナを介して受信された高周波信号を伝達する。具体的には、アンテナを介してRFout42に入力された高周波信号は、RFin43へ出力される。もしくは、アンテナを介して受信された高周波信号は、伝送経路R2において伝達されてもよい。つまり、アンテナを介してRFout42に入力された高周波信号は、RFin44へ出力されてもよい。RFin43又は44に入力された高周波信号は、内部回路(図示せず)等へ出力される。
【0046】
ここで、図4の高周波スイッチ40における高周波信号の送信処理について説明する。伝送経路H2において、RFin41からRFout42に対して高周波信号を伝達する場合、FET45は、ハイレベルのCTRL_iが印加されることによりオン状態となる。また、FET49も同様に、ハイレベルのCTRL_mが印加されることによりオン状態となる。これに対して、FET46〜48は、ロウレベルのCTRL_j〜lが印加されることによりオフ状態となる。
【0047】
ここで、FET48の機能について説明する。伝送経路H2において伝達される高周波信号は、アンテナを介して外部装置等へ送信される送信信号である。また、伝達経路R1及びR2において伝達される高周波信号は、アンテナを介して受信される受信信号である。一般的に、受信信号の信号強度(レベル)は、送信信号のレベルと比較して小さい。そのため、RFin41からRFout42に対して出力される送信信号が、RFin43及びRFin44へ流れ込んだ場合、レベルの小さい受信信号を適切に復調等できなくなる。このような現象を防止するために、FET48は、伝送経路H2において高周波信号が伝達される場合、オフ状態となり、伝送経路H2から、伝送経路R1及びR2に対して高周波信号が流れ込むことを防止する。
【0048】
また、ノード51からみてRFin43及びRFin44側は、シャント経路S3上にオープンスタブ50を設けたことにより、全反射に近づいている。そのため、伝送経路H2上の高周波信号がRFin43及びRFin44側に流れ込む量は少なくなり、伝送経路H2上の高周波信号の挿入損失は小さくなる。ここで、オープンスタブ50のオープンスタブ長は、実施の形態1と同様、高周波信号の波長の1/4又は1/4の奇数倍に調整されている。
【0049】
次に、図4の高周波スイッチ40における高周波信号の受信処理について説明する。伝送経路R1において、RFout42からRFin43に対して高周波信号を伝達する場合、FET46及びFET48は、ハイレベルのCTRL_j及びlが印加されることによりオン状態となる。これに対して、FET45、47及び49は、ロウレベルのCTRL_i、k及びmが印加されることによりオフ状態となる。これにより、RFout42からRFin43に対して、高周波信号が伝達される。また、伝送経路R2において、RFout42からRFin44に対して高周波信号を伝達する場合、FET47及びFET48は、ハイレベルのCTRL_k及びlが印加されることによりオン状態となる。これに対して、FET45、46及び49は、ロウレベルのCTRL_i、j及びmが印加されることによりオフ状態となる。
【0050】
以上説明したように、送信処理と受信処理とを実行する高周波スイッチ回路40においても、図1における高周波スイッチ回路10と同様に、伝送経路H2を伝達される高周波信号の挿入損失を小さくすることができる。
【0051】
また、シャント経路にオープンスタブを用いることにより、実施の形態1及び2と同様、高周波スイッチ回路40の低コスト化及び製造工程の単純化を図ることができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10、20、40 高周波スイッチ回路
11、13、21、23、24、41、43、44 RFin
12、22、42 RFout
14〜16、25〜29、45〜49 FET
17、30、50 オープンスタブ
18、19、31〜35、51〜53 ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と第2の端子との間において信号を伝達する第1の伝送路上に設けられた第1のスイッチ部と、
第3の端子と前記第2の端子との間において信号を伝達する第2の伝送路上に設けられた第2のスイッチ部と、
前記第3の端子と前記第2のスイッチ部との間に一端が前記第2の伝送路と接続され、他端がオープンスタブである第3の伝送路と、
前記第3の伝送路上に設けられた第3のスイッチ部と、を備え、
前記第1の伝送路上を前記信号が伝達される場合、
前記第1のスイッチ部及び前記第3のスイッチ部がオン状態となり、前記第2のスイッチ部がオフ状態となるように制御される、スイッチ回路。
【請求項2】
前記第3の伝送路は、前記第2の伝送路と並列に接続され、前記オープンスタブの長さが変更されることにより、前記第2の伝送路及び前記第3の伝送路におけるインピーダンスが調整される、請求項1記載のスイッチ回路。
【請求項3】
前記オープンスタブは、前記第1の伝送路において伝達される信号の波長のn×1/4(nは奇数)の長さである、請求項1又は2記載のスイッチ回路。
【請求項4】
第4の端子と前記第2の端子との間において信号を伝達する第4の伝送路と、
前記第4の伝送路上に設けられた第4のスイッチ部と、
前記第4の端子と前記第4のスイッチ部との間に一端が前記第4の伝送路と接続され、他端がオープンスタブである第5の伝送路と、
前記第5の伝送路上に設けられた第5のスイッチ部と、をさらに備え、
前記第1の伝送路上を前記信号が伝達される場合、
前記第1のスイッチ部、前記第3のスイッチ部及び前記第5のスイッチ部がオン状態となり、前記第2のスイッチ部及び前記第4のスイッチ部がオフ状態となるように制御される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチ回路。
【請求項5】
前記第1の伝送路は、
前記第1の端子から前記第2の端子に対して、前記第2の伝送路において伝達される信号よりも高い周波数を有する高周波信号を伝達し、
前記第2の伝送路は、
前記第3の端子から前記第2の端子に対して、前記高周波信号よりも低い周波数を有する低周波信号を伝達する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチ回路。
【請求項6】
前記第1の伝送路は、
外部装置へ送信する送信信号を前記第1の端子から前記第2の端子へ伝達し、
前記第2の伝送路は、
前記外部装置から受信した受信信号を前記第2の端子から前記第3の端子へ伝達する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチ回路。
【請求項7】
前記オープンスタブは、
基板上の配線の一端を開放端にすることにより形成される請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスイッチ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186757(P2012−186757A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50112(P2011−50112)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】