説明

スクライブ装置、基板の分断方法及び、電気光学装置の製造方法

【課題】レーザスクライブするとき、生産性良く改質部が形成できるスクライブ装置、基板の分断方法及び、電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板41にレーザ光37を照射してスクライブするスクライブ装置及び基板の分断方法に係る。スクライブ装置は、レーザ光37を発光するレーザ光源と、基板41の内部にレーザ光37を集光して照射し、改質部45を形成する集光部8とを備えている。集光部8は、レーザ光37の光軸と直交する第1方向38に比べて、光軸及び前記第1方向38と直交する第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して基板41に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクライブ装置、基板の分断方法及び、電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光透過性のある基板を品質良く切断するために、レーザ光を基板に照射して基板内部に改質領域(以下、改質部と称す)を形成するレーザスクライブ方法が特許文献1に開示されている。それによると、パルス幅が1μs以下のレーザ光を出射し、集光レンズで基板内部に集光し、集光部におけるピークパワー密度を1×108(W/cm2)以上にする。これにより、加工対象物の内部に多光子吸収による改質部を形成するものである。
【0003】
また、このレーザスクライブ方法において、加工対象物の内部に形成される改質部あるいはこれを起点として形成される改質部の大きさは、集光レンズの特性と、レーザ光のピークパワー密度に依存する。例えば、上記特許文献1に示されたガラス(厚さ700μm)に対してYAGレーザを用いて切断する実施例では、集光レンズの開口数が0.55の場合、ピークパワー密度がおよそ1×1011(W/cm2)では、改質部の大きさは、およそ100μmである。また、ピークパワー密度がおよそ5×1011(W/cm2)では、およそ250μmである。基板の内部に改質部を配列して形成し、改質部を押圧することで、基板を改質部に沿って品質良く分断することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−192371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板を品質良く切断するために、基板の内部に改質部を配列して形成する。ガラスが厚いときには、改質部を厚み方向に複数段配置する必要がある。基板が大きい場合に、必要とされる改質部が多くなることから、生産性良く改質部を形成する方法が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、レーザスクライブするとき、生産性良く改質部が形成できるスクライブ装置、基板の分断方法及び、電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のスクライブ装置は、基板にレーザ光を照射してスクライブするスクライブ装置であって、レーザ光を発光するレーザ光源と、基板の内部にレーザ光を集光して照射し、改質部を形成する集光部とを備え、集光部は、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように集光して基板に照射することを特徴とする。
【0008】
ここで、基板にレーザ光を照射してスクライブする、ということは、基板にレーザ光を照射して、改質部を配列して形成し、基板が配列して形成される改質部に沿って、基板が分断され易くする製造方法のことを示す。
また、開口数は、光学系に入射あるいは射出する光束で、最も周辺の光線と光軸との成す角度の正弦値を示す。
【0009】
このスクライブ装置によれば、スクライブ装置は、レーザ光源と、集光部とを備えている。レーザ光源がレーザ光を発光する。集光部が、基板の内部にレーザ光を集光して照射する。集光部は、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように集光して基板に照射する。
【0010】
基板にレーザ光が集光される場所には、改質部が形成される。レーザ光の開口数は、第1方向に比べて、第2方向が大きいことから、形成される改質部は、第2方向に比べて、第1方向に長い形状となる。つまり、第1方向に長い改質部を形成することができる。従って、所定の長さの基板に改質部を並べて配列するとき、第1方向と第2方向とに同じ長さの改質部を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【0011】
本発明のスクライブ装置では、集光部は対物レンズを備え、対物レンズは、第1方向の焦点距離に対して、第2方向の焦点距離が短い非球面レンズを用いたことを特徴とする。
【0012】
このスクライブ装置によれば、スクライブ装置は、対物レンズを備えている。この対物レンズは非球面レンズであり、第1方向の焦点距離に対して、第2方向の焦点距離が短く形成されている。従って、この対物レンズを通過するレーザ光の開口数は、第1方向に比べて、第2方向を大きくすることができる。その結果、この対物レンズを用いてレーザ光を集光して照射する基板には、第1方向に長い改質部を形成することができる。
【0013】
本発明のスクライブ装置では、対物レンズは、柱状レンズであることを特徴とする。
【0014】
このスクライブ装置によれば、スクライブ装置は対物レンズを備え、この対物レンズは柱状レンズである。柱状レンズは、断面の一方向が曲線で形成され、別の一方向は直線で形成されている。レンズの光軸に対して、全方向を曲線で形成する場合には、全方向を研磨して曲線を形成する必要があり、レンズの形成には労力を要する。それに比べて、レンズの一方向が直線の場合には、一方向に研磨して曲線を形成すれば良いことから、形成し易いレンズと言える。従って生産性良く形成できる対物レンズを備えるスクライブ装置とすることができる。
【0015】
本発明のスクライブ装置は、集光部が、光軸を中心として、回転し、第1方向及び第2方向が変更することを特徴とする。
【0016】
このスクライブ装置によれば、スクライブ装置は集光部を備えており、集光部が、光軸を中心として、回転することにより、第1方向及び第2方向が変更される。この集光部を用いてレーザ光を集光して照射する基板には、第1方向に長い改質部を形成することができる。従って、第1方向及び第2方向を変更することにより、改質部を長く形成する第1方向を、所望の方向に設定することができる。その結果、所望の方向に長い改質部を形成することができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の基板の分断方法は、可視光を透過する基板に、集光部からレーザ光を照射し、改質部を形成し、分断する基板の分断方法であって、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように集光して基板に照射する照射工程と、基板と集光部とを第1方向に相対移動する移動工程と、基板を押圧して分断する分断工程とを有し、照射工程と、移動工程とを繰り返して、第1方向に改質部を配列してスクライブすることを特徴とする。
【0018】
この基板の分断方法によれば、可視光を透過する基板に、集光部からレーザ光を照射し、改質部を形成する照射工程と、移動工程と、分断工程とを有する。
照射工程では、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように集光して基板に照射する。移動工程では、基板と集光部とを第1方向に相対移動する。照射工程と、移動工程とを繰り返して、第1方向に改質部を配列してスクライブする。続いて、分断工程において、基板を押圧して分断する。
【0019】
照射工程において、照射するレーザ光の開口数は、第1方向に比べて、第2方向が大きいことから、形成される改質部は第2方向に比べて、第1方向に長い形状となる。つまり、第1方向に長い改質部を形成することができる。移動工程において、基板と集光部とを第1方向に相対移動する。照射工程と移動工程とを繰り返すことにより、第1方向に長い改質部を、第1方向に配列して形成することができる。従って、所定の長さの基板に改質部を並べて配列するとき、第1方向と第2方向とに同じ長さの改質部を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の製造方法は、第1基板と、第2基板との間に光学素子を挟んで接合し、形成する電気光学装置の製造方法であって、第1基板が複数行且つ複数列形成されている第1マザー基板をスクライブする第1スクライブ工程と、第2基板が複数行且つ複数列形成されている第2マザー基板をスクライブする第2スクライブ工程と、第1マザー基板と第2マザー基板とを分断する分断工程とを有し、少なくとも、第1スクライブ工程と第2スクライブ工程とのいずれか一方の工程において、第1マザー基板または、第2マザー基板に集光部からレーザ光を照射し、改質部を形成して、スクライブするスクライブ工程を有し、スクライブ工程は、照射工程と移動工程とを有し、照射工程では、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように集光して基板に照射し、移動工程では、基板と集光部とを第1方向に相対移動し、スクライブ工程では、照射工程と、移動工程とを繰り返して、第1方向に改質部を配列してスクライブすることを特徴とする。
【0021】
この電気光学装置の製造方法によれば、電気光学装置は、第1基板と、第2基板との間に光学素子を挟んで接合され、形成される。電気光学装置の製造方法は、第1スクライブ工程と第2スクライブ工程と分断工程とを有している。第1スクライブ工程では、第1基板が複数行且つ複数列形成されている第1マザー基板をスクライブする。第2スクライブ工程では、第2基板が複数行且つ複数列形成されている第2マザー基板をスクライブする。分断工程では、第1マザー基板と第2マザー基板とを分断する。少なくとも、第1スクライブ工程と第2スクライブ工程とのいずれか一方の工程において、レーザ光を用いて第1マザー基板と第2マザー基板との一方または、両方の基板をスクライブする。
【0022】
そして、このレーザ光を用いるスクライブ方法は、照射工程と移動工程とを有する。照射工程では、レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、光軸及び第1方向と直交する第2方向に、前記レーザ光の開口数が大きくなるように集光して前記基板に照射する。移動工程では、基板と集光部とを第1方向に相対移動する。照射工程と、移動工程とを繰り返して、前記第1方向に前記改質部を配列して、スクライブしている。
【0023】
照射工程において、照射するレーザ光の開口数は、第1方向に比べて、第2方向が大きいことから、形成される改質部は第2方向に比べて、第1方向に長い形状となる。つまり、第1方向に長い改質部を形成することができる。移動工程において、基板と集光部とを第1方向に相対移動する。照射工程と移動工程とを繰り返すことにより、第1方向に長い改質部を、第1方向に配列して形成することができる。従って、所定の長さの基板に改質部を並べて配列するとき、第1方向と第2方向とに同じ長さの改質部を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0025】
(第1の実施形態)
本実施形態では、対物レンズに柱状レンズを有するスクライブ装置を用いて、レーザスクライブ法によってスクライブして分断する場合の例を説明する。ここで、本発明の特徴的な製造方法について説明する前にスクライブ装置について図1及び図2を用いて説明する。
【0026】
(スクライブ装置)
図1は、スクライブ装置の構成を示す模式概略図であり、図2は、集光部の構成を示す要部模式概略図である。
図1に示すように、スクライブ装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源2と、出射されたレーザ光をワークに照射する光学経路部3と、光学経路部3に対してワークを相対的に移動させるテーブル部4と、動作を制御する制御装置5を主として構成されている。
【0027】
レーザ光源2は、出射するレーザ光を加工対象物の内部に集光して多光子吸収による改質部を形成できる光源であれば良い。例えば、レーザ光源2は、本実施形態において、LD励起Nd:YAG(Nd:Y3Al512)のレーザ媒質からなり、第3高調波(波長:355nm)のQスイッチパルス発振のレーザ光を出射する発光条件を採用している。パルス幅はおよそ14ns(ナノ秒)、パルス周期は10kHz、出力はおよそ60μJ/パルスのレーザ光を出射する発光条件を採用している。
【0028】
光学経路部3はハーフミラー6を備えている。ハーフミラー6は、レーザ光源2から照射されるレーザ光の光軸7a上に配置されている。ハーフミラー6はレーザ光源2から照射されるレーザ光を反射して、光軸7aから光軸7へ進行方向を変更する。ハーフミラー6に反射したレーザ光が通過する光軸7上に集光部8が配置されている。テーブル部4には基板としてのワーク9が配置され、集光部8を通過したレーザ光がワーク9に照射されるようになっている。
【0029】
集光部8はレンズ支持部10により、レンズ移動機構11に支持されている。レンズ移動機構11は、図示しない直動機構を有し、集光部8を光軸7方向(図中Z方向)に移動させて、集光部8を通過したレーザ光が集光する位置を移動可能としている。
【0030】
直動機構は、例えばZ方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを供えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が所定のパルス信号を受けて所定のステップ単位で正逆転する図示しないZ軸モータに連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号がZ軸モータに入力されると、Z軸モータが正転又は反転して、レンズ移動機構11が同ステップ数に相当する分だけ、光軸7方向に沿って往動又は復動するようになっている。
【0031】
集光部8は、柱状の対物レンズとしての集光レンズ8aとレンズ回転機構12とを備えている。レンズ回転機構12は、集光レンズ8aを、光軸7を中心に回転可能としている。
【0032】
集光部8とハーフミラー6とを通過する光軸7の延長線上にあって、ハーフミラー6に対して集光部8と反対側には、撮像装置13を備えている。撮像装置13は、例えば、図示しない同軸落射型光源とCCD(Charge Coupled Device)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した可視光は、集光部8を透過してワーク9を照射する。撮像装置13は、集光部8とハーフミラー6とを通してワーク9を撮像することが可能となっている。
【0033】
テーブル部4は、基台15を備えている。基台15の光学経路部3側には、レール16が凸設して配置されており、レール16上にはX軸スライド17が配置されている。X軸スライド17は、図示しない直動機構を備え、レール16上のX方向に移動可能となっている。直動機構は、レンズ移動機構11が備える直動機構と同様な機構であり、所定のステップ数に相当する駆動信号に対応してX軸スライド17が同ステップ数に相当する分だけ、X方向に沿って往動又は復動するようになっている。
【0034】
X軸スライド17の光学経路部3側にはレール18が凸設して配置されており、レール18上にはY軸スライド19が配置されている。Y軸スライド19は、X軸スライド17と同様な直動機構を備え、レール18上をY方向に移動可能となっている。
【0035】
Y軸スライド19の光学経路部3側には、ステージ20が配置され、ステージ20の上面には図示しない吸引式のチャック機構が設けられている。そして、ワーク9を載置すると、チャック機構によって、ワーク9がステージ20の上面における所定の位置に位置決めされ固定されるようになっている。
【0036】
制御装置5は、メインコンピュータ24を備えている。メインコンピュータ24は内部に図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリーを備えている。CPUはメモリー内に記憶されたプログラムソフトに従って、スクライブ装置1の動作を制御するものである。
メインコンピュータ24は、図示しない入出力インターフェースを備え、入力装置25、表示装置26、レーザ制御装置27、レンズ制御装置28、画像処理装置29、ステージ制御装置30と接続されている。
【0037】
入力装置25は、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する装置であり、表示装置26はレーザ加工時の各種情報を表示する装置である。CPUは、入力される各種加工条件とプログラムソフトとに従って、レーザ加工を行い、加工状況を表示装置26に表示する。操作者が表示装置26に表示される各種情報を見て、レーザ加工状況を確認して操作するようになっている。
【0038】
レーザ制御装置27は、レーザ光源2を駆動するパルス信号のパルス幅、パルス周期、出力の開始と停止、等を制御する装置であり、メインコンピュータ24の制御信号により制御される。
【0039】
レンズ制御装置28は、レンズ移動機構11の移動、停止及び、集光レンズ8aの回転角度を制御する装置である。レンズ移動機構11には、移動距離を検出可能な図示しない位置センサが内蔵されており、レンズ制御装置28は、この位置センサの出力を検出することにより、集光部8の光軸7方向の位置を認識する。レンズ制御装置28は、レンズ移動機構11にパルス信号を送信し、レンズ移動機構11を所望の位置に移動することができるようになっている。
【0040】
集光部8は、集光レンズ8aの回転角度を検出可能な図示しない角度センサが内蔵されており、レンズ制御装置28は、この角度センサの出力を検出することにより、集光レンズ8aの角度を認識する。レンズ制御装置28は、レンズ回転機構12に駆動信号を送信し、集光レンズ8aを所望の角度に回転し、停止することが可能となっている。
【0041】
画像処理装置29は、撮像装置13から出力される画像データを演算する機能を備えている。ステージ20にワーク9を配置し、撮像装置13で撮像した画像を観察するとき、レンズ移動機構11を操作して、集光部8とワーク9との距離を変えることにより画像が鮮明になるときとぼやけるときが存在する。集光部8を移動して、ワーク9のステージ20側の面に焦点が合うときと、ワーク9の光学経路部3側の面に焦点が合うときに、撮像される画像が鮮明になる。一方、焦点が合っていないとき、撮像される画像は、ぼやけた画像となる。
【0042】
集光部8を光軸7の方向に移動して、撮像装置13が撮像する画像が鮮明になる集光部8の位置を、内蔵する位置センサで検出することにより、ワーク9の厚みを測定することが可能となる。
【0043】
撮像装置13で撮像するときに焦点が合う合焦点位置と、レーザ光を照射したときに、集光部8により集光される集光位置との差の距離を計測することで、合焦点位置と集光位置の差の距離であるオフセット距離を知ることができる。例えば、透明な2枚の基板を重ねた物をワーク9としてステージ20に設置し、2枚の基板の接触部に撮像装置13の焦点が合うように集光部8を移動する。次に、レーザ光を照射して改質部を形成する。2枚の基板の接触部と改質部の距離を計測することでオフセット距離を設定することができる。
【0044】
集光部8を光軸7方向(図中Z方向)に移動して、ワーク9の光学経路部3側の面に撮像装置13の焦点を合わせる。レーザ光を照射したい位置とオフセット距離とのデータを用いて、集光部8の移動距離を演算し、演算した移動距離に対応する距離分、集光部8を移動させる。この方法でワーク9における所定の深さにレーザ光を集光することが可能となる。
【0045】
ステージ制御装置30は、X軸スライド17とY軸スライド19との位置情報の取得と移動制御を行う。X軸スライド17とY軸スライド19とには図示しない位置センサが内蔵されており、ステージ制御装置30は位置センサの出力を検出することにより、X軸スライド17とY軸スライド19との位置を検出する。ステージ制御装置30は、X軸スライド17とY軸スライド19との位置情報を取得し、メインコンピュータ24から指示される位置情報とを比較し、差に相当する距離に対応して、X軸スライド17とY軸スライド19とを駆動して移動する。ステージ制御装置30はX軸スライド17とY軸スライド19とを駆動して、所望の位置にワーク9を移動することが可能となっている。
【0046】
レーザ制御装置27がレーザ光源2を制御しレーザ光を発光させる。画像処理装置29がワーク9の面における光軸7方向の位置を検出する。レンズ制御装置28がレーザ光を集光する光軸7方向の位置を制御する。ステージ制御装置30がワーク9をXY方向に移動して、ワーク9にレーザ光が照射される位置を制御する。上述した制御を行い所望の位置にレーザ光を集光して照射することが可能となっている。
【0047】
ここで、多光子吸収による改質部の形成について説明する。集光部8によって集光されたレーザ光は、ワーク9に入射する。そして、ワーク9がレーザ光を透過する材料であっても、材料の吸収バンドギャップよりも光子のエネルギーが非常に大きいとき、ワーク9は光子エネルギーを吸収する。これを多光子吸収と言い、レーザ光のパルス幅を極めて短くすることでエネルギーを高めて、多光子吸収をワーク9の内部に起こさせると、多光子吸収のエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、永続的な構造変化が誘起された領域が形成される。
【0048】
本実施形態では、この構造変化領域を改質部と呼ぶ。改質部のうち、大きく構造変化した結果複数のクラックが形成された領域をクラック部と呼ぶ。尚、材料の種類によっては、例えば石英などの場合には、クラック部は複数のクラックにならず、空洞が形成される場合もある。
【0049】
このような改質部を形成するためのレーザ光の照射条件は、加工対象物ごとにレーザ光の出力やパルス幅、パルス周期、レーザスキャン速度等の設定が必要になる。特に、レーザ光源2が照射するレーザ光の出力は、ハーフミラー6や集光部8のような光軸7上に配置される透過性物質による吸収で減衰することを考慮する必要がある。従って、実際の加工対象物を用いた予備試験を実施して、最適な照射条件を導くことが望ましい。
【0050】
図2(a)は、集光部8を示す要部模式平面図である。図2(b)は、図2(a)におけるA−A’線の要部模式断面図であり、図2(c)は、図2(a)におけるB−B’線の要部模式断面図である。
【0051】
図2(a)に示すように、集光部8は、レンズ支持部10と接続して円筒状の固定管31を備えている。固定管31の内側にはボール32を介して、移動管33が配置されている。固定管31、ボール32、移動管33によりボールベアリングが形成され、移動管33が回転可能となっている。
【0052】
移動管33の内側には、矩形の孔が形成された支持板34が配置されている。矩形の孔には、矩形に形成された集光レンズ8aが配置されている。集光レンズ8aの中心と、移動管33の中心と光軸7とが重なるように、集光レンズ8a及び移動管33が配置されている。これにより、矩形に形成されている集光レンズ8aは、矩形の中心が光軸7と重なり、光軸7を回転中心にして回転するようになっている。
【0053】
レンズ支持部10には、駆動軸35aが所定のパルス信号を受けて所定のステップ単位で正逆転するレンズ回転モータ35が配置されている。駆動軸35aには、歯車36が配置され、歯車36の外周部36aが移動管33の外周部33aと接するようになっている。また、移動管33の外周部33aには歯が形成され、歯車36の外周部36aに形成されている歯とかみ合っている。そのため、歯車36が回転するとき、歯車36の動力が移動管33に伝わり移動管33が回転するようになっている。
【0054】
そして、所定のステップ数に相当する駆動信号がレンズ回転モータ35に入力されると、レンズ回転モータ35の駆動軸35aが正転又は反転する。レンズ回転モータ35の駆動軸35aの回転が歯車36を介して移動管33に伝わり、移動管33が回転する。移動管33には、支持板34を介して集光レンズ8aが配置されていることから、移動管33が回転すると、集光レンズ8aが回転する。つまり、レンズ回転モータ35の駆動軸35aが回転すると、駆動軸35aの回転角度に応じて、集光レンズ8aが光軸7を中心として回転するようになっている。
【0055】
図2(b)及び図2(c)に示すように、集光レンズ8aは、A−A’方向から見るときには、矩形であり、B−B’方向から見るときには、凸レンズの形態をした柱状レンズとなっている。レーザ光37をZ方向から集光レンズ8aに照射するとき、X方向には集光せず、Y方向には集光するようになっている。そのため、レーザ光37が集光する集光場所37aは、X方向に長い線状となる。
【0056】
集光レンズ8aの断面が矩形となる方向(X方向)を第1方向38とし、集光レンズ8aの断面が凸レンズとなる方向(Y方向)を第2方向39とする。集光レンズ8aを通過したレーザ光37は、第1方向38には集光しないことから、集光レンズ8aの第1方向38に対する開口数は、ゼロに近い値となる。一方、集光レンズ8aを通過したレーザ光37は、第2方向39に集光することから、集光レンズ8aの第2方向39に対する開口数は、第1方向38に対する開口数に比べて、大きくなっている。
【0057】
また、集光レンズ8aを通過したレーザ光37は、第1方向38には集光しないことから、集光レンズ8aの第1方向38に対する焦点距離は、無限大の値となる。一方、集光レンズ8aを通過したレーザ光37は、第2方向39に集光することから、集光レンズ8aの第2方向39に対する焦点距離は、有限の値となる。従って、集光レンズ8aは、第1方向38に対する焦点距離に比べて、第2方向39に対する焦点距離が短い非球面レンズとなっている。
【0058】
(基板の分断方法)
次に本発明の基板の分断方法について図3〜図9にて説明する。図3は、基板の分断方法のフローチャートであり、図4〜図9は基板の分断方法を説明する図である。
【0059】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1は基板設置工程に相当し、基板をスクライブ装置に設置して、スクライブ装置の初期設定をする工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、照射工程に相当し、基板にレーザ光を照射して改質部を形成する工程である。このとき、集光レンズは柱状レンズであり、集光レンズの第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように照射する。次にステップS3に移行する。ステップS3は予定の領域総てに照射したかを判断する工程に相当し、スクライブする予定の領域とスクライブした領域とを比較し、スクライブする予定の領域で、まだスクライブしていない領域を検索する工程である。スクライブする予定の領域で、まだスクライブしていない領域があるとき(NOのとき)、ステップS4に移行する。スクライブする予定の領域で、スクライブしていない領域がないとき(YESのとき)、ステップS5に移行する。ステップS4は、移動工程に相当し、集光レンズの第1方向において、次にスクライブする領域へ集光レンズとテーブル部とを相対移動する工程である。次にステップS2に移行する。
【0060】
ステップS5は、回転工程に相当し、集光レンズを回転し、基板に対して、集光レンズの第1方向及び第2方向を変更する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は、移動工程に相当し、ステップS2において、スクライブした方向と異なる方向にスクライブする領域に移動する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は、照射工程に相当し、基板にレーザ光を照射して改質部を形成する工程である。このとき、集光レンズは柱状レンズであり、集光レンズの第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるように照射する。次にステップS8に移行する。ステップS8は予定の領域総てに照射したかを判断する工程に相当し、スクライブする予定の領域とスクライブした領域とを比較し、スクライブする予定の領域で、まだスクライブしていない領域を検索する工程である。スクライブする予定の領域で、まだスクライブしていない領域があるとき(NOのとき)、ステップS9に移行する。スクライブする予定の領域で、スクライブしていない領域がないとき(YESのとき)、ステップS10に移行する。ステップS9は、移動工程に相当し、集光レンズの第1方向において、次にスクライブする領域へ集光レンズ8aとテーブル部4とを相対移動する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS1〜ステップS9をまとめてステップS11とする。ステップS11は、スクライブ工程に相当する。
【0061】
ステップS10は、分断工程に相当し、基板のスクライブした場所を押圧して、基板を分断する工程である。以上の工程により基板を分断する工程が完了する。
【0062】
次に、図4〜図9を用いて、図3に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図4(a)は、本実施形態で分断する基板の模式平面図である。図4(b)は、図4(a)に示す接合基板のC−C’線から見た模式側面図である。図4(a)及び図4(b)に示す様に、基板41は矩形の板で構成されている。基板41は、レーザ光に透過性のある材質からなり本実施形態では、例えば、石英ガラスを採用している。
【0063】
基板41の平面方向において、基板41の長尺方向をX方向とし、X方向と直交する方向をY方向とする。また、基板41の厚さ方向をZ方向とする。基板41において、X方向の中心線を通る厚さ方向(Z方向)の面を第1切断予定面42とする。同じく基板41において、Y方向の中心線を通る厚さ方向(Z方向)の面を第2切断予定面43とする。第1切断予定面42は、ステップS2〜ステップS4において、スクライブする面であり第2切断予定面43は、ステップS7〜ステップS9において、スクライブする面である。
【0064】
図4(c)及び図5(a)はステップS1に対応する図である。図4(c)に示す様に、基板41を図1に示すスクライブ装置1のテーブル部4に載置する。基板41は吸引式のチャック機構により、ステージ20に固定される。スクライブ装置1は、第1切断予定面42において、基板41の端となる場所42aに、レーザ光37を照射可能となる場所に、集光部8を移動する。また、このステップにおいて、操作者は、レーザ光37を照射するレーザ光源2の発光条件の設定を行う。
【0065】
図5(a)に示す様に、集光レンズ8aの断面が矩形となる第1方向38が、第1切断予定面42と同じ方向なるように配置する。従って、集光レンズ8aの断面が凸レンズとなる第2方向39は、第1切断予定面42と直交する方向となる。
【0066】
図5(b)及び図5(c)はステップS2に対応する図である。図5(b)及び図5(c)に示す様に、集光部8から基板41の内部にレーザ光37をY方向に集光して照射する。レーザ光37が集光されて照射された集光場所37aには、改質部45が形成され、改質部45の中央には、クラック部46が形成される。本実施形態においては、基板41に石英ガラスを用いていることから、クラック部46には、空洞が形成される。
【0067】
第1方向38に比べて、第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して基板41に照射する。つまり、集光レンズ8aは、レーザ光37を、第1方向38には集光せず、第2方向39に集光するため、改質部45は、第1方向38に長く、第2方向39に短い形状に形成される。
【0068】
第1方向38が、第1切断予定面42の方向に配置されていることから、改質部45は、第1切断予定面42に沿って長く、Y方向に短い形状に形成される。
【0069】
ステップS2において、レーザ光37を照射した後、ステップS3に移行する。ステップS3において、メインコンピュータ24は、第1切断予定面42の総てに、改質部45を形成したかを判断する。メインコンピュータ24は、記憶部を備えている。記憶部には、第1切断予定面42において、改質部45を形成する予定の場所と、既に改質部45を形成した場所のデータが格納されている。ステップS2において、メインコンピュータ24は、改質部45を形成する毎に、記憶部に形成した場所のデータを記憶する。改質部45を形成する予定の場所であって、改質部45が形成されていない場所の有無を判断する。改質部45が形成されていない場所が有るとき、続いて、ステップS4で、その場所へ移動する。
【0070】
図6(a)はステップS4に対応する図である。図6(a)に示す様に、基板41と集光部8とを第1方向38に相対移動する。移動距離は、改質部45を形成する間隔とし、本実施形態では、例えば、改質部45の第1方向38の幅より、少し短い距離とする。改質部45を形成する間隔は、ステップS10にて、品質良く分断可能に改質部45が配列される間隔であれば良く、試行して間隔を設定するのが、望ましい。
【0071】
図6(b)及び図6(c)はステップS2に対応する図である。図6(b)に示す様に、集光部8から基板41の内部にレーザ光37をY方向に集光して照射する。レーザ光37が集光されて照射された集光場所37aには、改質部45が形成され、改質部45の中央には、クラック部46が形成される。その結果、改質部45が配列して形成される。
【0072】
図6(c)に示す様に、改質部45を配列して形成し、1段目の改質部45aを形成する。続いて、1段目の改質部45aに対して、Z方向に隣接する場所に、改質部45を配列して形成し、2段目の改質部45bを形成する。この様に、改質部45を多段に配列して形成し、第1切断予定面42総てに、改質部45が形成された第1スクライブ面47を形成する。
【0073】
図7(a)はステップS5及びステップS6に対応する図である。図7(a)に示す様に、ステップS5において、スクライブ装置1は、集光レンズ8aの光軸7を中心として、集光レンズ8aを回転する。集光部8における第1方向38を、第1切断予定面42の方向から第2切断予定面43の方向に変更する。
【0074】
ステップS6において、スクライブ装置1は、第2切断予定面43において、基板41の端となる場所43aに、レーザ光37を照射可能となる場所に、集光部8を移動する。
【0075】
図7(b)及び図7(c)はステップS7に対応する図である。図7(b)及び図7(c)に示す様に、集光部8から基板41の内部にレーザ光37をX方向に集光して照射する。レーザ光37が集光されて照射された集光場所37aには、改質部45が形成され、改質部45の中央には、クラック部46が形成される。
【0076】
第1方向38に比べて、第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して基板41に照射する。つまり、集光レンズ8aは、レーザ光37を、第1方向38には集光せず、第2方向39に集光するため、改質部45は、第1方向38に長く、第2方向39に短い形状に形成される。
【0077】
第1方向38が、第2切断予定面43の方向に配置されていることから、改質部45は、第2切断予定面43に沿って長く、X方向に短く形状に形成される。
【0078】
ステップS7において、レーザ光37を照射した後、ステップS8に移行する。ステップS8において、メインコンピュータ24は、第2切断予定面43の総てに、改質部45を形成したかを判断する。メインコンピュータ24の記憶部には、第2切断予定面43において、改質部45を形成する予定の場所と、既に改質部45を形成した場所のデータが格納されている。ステップS7において、メインコンピュータ24は、改質部45を形成する毎に、記憶部に形成した場所のデータを記憶する。改質部45を形成する予定の場所であって、改質部45が形成されていない場所の有無を判断する。改質部45が形成されていない場所が有るとき、続いて、ステップS9で、その場所へ移動する。
【0079】
図8(a)はステップS9に対応する図である。図8(a)に示す様に、基板41と集光部8とを第1方向38に相対移動する。移動距離は、例えば、本実施例では、改質部45の第1方向38の幅より、少し短い距離とする。
【0080】
図8(b)及び図8(c)はステップS7に対応する図である。図8(b)に示す様に、集光部8から基板41の内部にレーザ光37をX方向に集光して照射する。レーザ光37が集光されて照射された集光場所37aには、改質部45が形成され、改質部45の中央には、クラック部46が形成される。その結果、改質部45が配列して形成される。
【0081】
図8(c)に示す様に、改質部45を配列して形成し、1段目の改質部45cを形成する。続いて、1段目の改質部45cに対して、Z方向に隣接する場所に、改質部45を配列して形成し、2段目の改質部45dを形成する。この様に、改質部45を多段に配列して形成し、第2切断予定面43総てに、改質部45が形成された第2スクライブ面48を形成する。
【0082】
図9(a)及び図9(b)はステップS10に対応する図である。図9(a)に示す様に、基板41を弾性材より少なくともなる台49の上に配置する。第1切断予定面42に形成された第1スクライブ面47と対向する場所を、加圧部材50を用いて押圧する。基板41は台49に沈み込み、クラック部46に張力が作用する。基板41は、台49と接する面に近いクラック部46を起点として破断が進行し、分断する。
【0083】
図9(b)に示す様に、同様に、第2切断予定面43に形成された第2スクライブ面48と対向する場所を、加圧部材50を用いて押圧する。基板41は台49に沈み込み、クラック部46に張力が作用する。基板41は、台49と接する面に近いクラック部46を起点として破断が進行し、分断する。
【0084】
その結果、図4(a)に示す、基板41が第1切断予定面42及び第2切断予定面43で分断され、4分割される。
【0085】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、スクライブ装置1は、レーザ光源2と、集光部8とを備えている。レーザ光源2がレーザ光37を発光する。集光部8が、基板41の内部にレーザ光37を集光して照射する。集光部8は、レーザ光37の光軸7と直交する第1方向38に比べて、光軸7及び第1方向38と直交する第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して基板41に照射している。
【0086】
基板41にレーザ光37が集光される集光場所37aには、改質部45が形成される。レーザ光37の開口数は、第1方向38に比べて、第2方向39が大きいことから、形成される改質部45は、第2方向39に比べて、第1方向38に長い形状となる。つまり、第1方向38に長い改質部45を形成することができる。従って、所定の長さの基板41に改質部45を並べて配列するとき、第1方向38と第2方向39とに同じ長さの改質部45を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部45を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【0087】
(2)本実施形態によれば、スクライブ装置1は、集光レンズ8aを備えている。この集光レンズ8aは非球面レンズであり、第1方向38の焦点距離に対して、第2方向39の焦点距離が短く形成されている。従って、この集光レンズ8aを通過するレーザ光37の開口数は、第1方向38に比べて、第2方向39が大きく形成されている。その結果、この集光レンズ8aを用いてレーザ光37を集光して照射する基板41には、第1方向38に長い改質部45を形成することができる。
【0088】
(3)本実施形態によれば、スクライブ装置1は集光レンズ8aを備え、この集光レンズ8aは柱状レンズとなっている。柱状レンズは、断面の一方向が曲線で形成され、別の一方向は直線で形成されている。集光レンズ8aの光軸7に対して、全方向を曲線で形成する場合には、全方向を研磨して曲線を形成する必要があり、レンズの形成には労力を要する。それに比べて、レンズの一方向が直線の場合には、一方向に研磨して曲線を形成すれば良いことから、形成し易いレンズと言える。従って生産性良く形成できる集光レンズ8aを備えるスクライブ装置とすることができる。
【0089】
(4)本実施形態によれば、スクライブ装置1は集光部8を備えており、集光部8は、集光レンズ8aが、光軸7を中心として、回転することにより、第1方向38及び第2方向39が変更される。この集光部8を用いてレーザ光37を集光して照射する基板41には、第1方向38に長い改質部45を形成することができる。従って、第1方向38及び第2方向39を変更することにより、改質部45を長く形成する第1方向38を、所望の方向に設定することができる。その結果、所望の方向に長い改質部45を形成することができる。
【0090】
(5)本実施形態によれば、基板41に、集光部8からレーザ光37を照射し、改質部45を形成するステップS2及びステップS7の照射工程と、ステップS4及びステップS9の移動工程とを有している。照射工程では、レーザ光37の光軸7と直交する第1方向38に比べて、第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して基板41に照射する。移動工程では、基板41と集光部8とを第1方向38に相対移動する。そして、照射工程と、移動工程とを繰り返して、第1方向38に改質部45を配列してスクライブしている。続いて、分断工程において、基板を押圧して分断している。
【0091】
照射工程において、照射するレーザ光37の開口数は、第1方向38に比べて、第2方向39が大きいことから、形成される改質部45は第2方向39に比べて、第1方向38に長い形状となる。つまり、第1方向38に長い改質部45を形成することができる。移動工程において、基板41と集光部8とを第1方向38に相対移動する。照射工程と移動工程とを繰り返すことにより、第1方向38に長い改質部45を、第1方向38に配列して形成することができる。従って、所定の長さの基板41に改質部45を並べて配列するとき、第1方向38と第2方向39とに同じ長さの改質部45を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部45を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【0092】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した液晶表示装置の製造方法の一実施形態について図10〜図14を用いて説明する。
本実施形態では、本発明の基板を分断方法を用いて液晶表示装置を製造する場合の例を説明する。ここで、本発明の特徴的な製造方法について説明する前に、液晶表示装置について順次説明する。
【0093】
(液晶表示装置)
まず、液晶表示装置について説明する。図10(a)は、液晶表示装置の模式平面図であり、図10(b)は、図10(a)の液晶表示装置のD−D’線に沿う模式断面図である。
【0094】
図10(a)及び図10(b)において、本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置55は、対をなす第2基板としてのTFTアレイ基板56と第1基板としての対向基板57とが熱硬化性の封止材であるシール材によって貼り合わされて形成されている。このシール材が固化したシール58によって、区画される領域内に封入された光学素子としての液晶59より少なくともなる液晶層を備えている。シール58は、基板面内の領域において閉ざされた枠形状に形成されている。
【0095】
シール58の内側で対向基板57の液晶59側の面には、遮光性材料で配線を隠すための周辺見切り60が形成されている。シール58の外側の場所には、データ線駆動回路61及び電極端子62がTFTアレイ基板56の辺56a(図10(a)中下側の辺)に沿って形成されており、この辺56aに隣接する辺56b及び辺56c(図10(a)中左右の辺)に沿って走査線駆動回路63が形成されている。データ線駆動回路61、電極端子62及び走査線駆動回路63は光透過性の導電膜である配線64aにより電気的に接続されている。TFTアレイ基板56の残る辺56d(図10(a)中上側の辺)には、2つの走査線駆動回路63の間を接続するための光透過性の導電膜である配線64bが設けられている。また、対向基板57のコーナー部の4箇所においては、TFTアレイ基板56と対向基板57との間で電気的導通をとるための基板間導通材65が配設されている。
【0096】
また、液晶表示装置55はカラー表示用として構成しており、対向基板57において、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ66R,66G,66Bが保護膜とともに形成されている。カラーフィルタ66R,66G,66Bの各フィルタ素子の間には、遮光膜67が形成されており、カラーフィルタ66R,66G,66Bを通過しない光は遮光膜67が遮断するようになっている。さらに、カラーフィルタ66R,66G,66Bの保護膜のTFTアレイ基板56側には対向電極68と配向膜69とが配置されている。
【0097】
液晶は、該液晶を挟持する電極に電圧を印加すると液晶分子の液晶の傾き角度が変化する性質を持っており、TFTのスイッチング動作により、液晶にかける電圧をコントロールして液晶の傾き角度を制御し、画素毎に光を透過させたり遮ったりする動作を行う。それにより、透過した光は、画素毎に相対して設置される赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色フィルタを有するカラーフィルタを透過することで、画素毎に対応する各色フィルタの色を色光として透過する。尚、光が液晶により遮られた画素に対応する色フィルタには当然光は入射しないため、黒色となる。このようにTFTのスイッチング動作により、液晶をシャッタとして動作させることにより、画素毎に光の透過をコントロールし、画素を明滅させることにより、カラー映像を表示させることができる。
【0098】
このような構造を有する液晶表示装置55の画像を表示する領域には、複数の画素がm行n列のマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素の各々には、画素信号をスイッチングするスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)が形成されている。画素信号を供給するデータ線(ソース配線)がTFTのソース電極に電気的に接続され、走査信号を供給する走査線(ゲート配線)がTFTのゲート電極に電気的に接続され、TFTのドレイン電極に画素電極70が電気的に接続されている。画素電極70はカラーフィルタ66R,66G,66Bの各フィルタ素子と対向する場所に形成されている。走査線が接続されるTFTのゲート電極には、所定のタイミングで、走査線からパルス信号の走査信号が供給される。
【0099】
画素電極70は、TFTのドレイン電極に電気的に接続されており、TFTを一定期間だけオン状態とすることにより、データ線から供給される画素信号が各画素の画素電極70に所定のタイミングで供給される。このようにして画素電極70に供給された所定レベルの画素信号の電圧レベルは、図10(b)に示す対向基板57の対向電極68との間で保持され、画素信号の電圧レベルに応じて、液晶59の光透過量が変化する。液晶表示装置55はカラーフィルタを備えており、カラーフィルタ66R,66G,66Bを透過する光を液晶59より少なくともなる液晶層を挟持する電極に印加する画像信号により制御することで、液晶表示装置55はカラー画像を表示することができる。
【0100】
画素電極70の対向基板57側には配向膜71が配置されている。配向膜69と配向膜71とにはその表面に溝状の凹凸が形成されており、配向膜69と配向膜71との間に充填された液晶59は、溝状の凹凸に沿って配列して形成される。
【0101】
TFTアレイ基板56及び対向基板57において、液晶59と反対側の面には、偏光シート72,73が配置され、偏光シート72,73及び液晶59の作用により、液晶表示装置55を透過する光透過量が変化するようになっている。
【0102】
(液晶表示装置の製造方法)
次に、上述した液晶表示装置55における基板の分断方法について図11〜図14にて説明する。図11は、液晶表示装置の製造方法のフローチャートであり、図12は、液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す模式図である。図13及び図14は液晶表示装置の製造方法を説明する図である。
【0103】
図11のフローチャートにおいて、ステップS11は対向マザー基板の第1スクライブ工程に相当し、対向マザー基板の一方向にスクライブする工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は対向マザー基板の第2スクライブ工程に相当し、対向マザー基板において、ステップS11でスクライブした方向と直交する方向にスクライブする工程である。ステップS11とステップS12とを合わせてステップS21とする。ステップS21は、第1スクライブ工程に相当する。次にステップS13に移行する。
【0104】
ステップS13はTFTアレイマザー基板の第1スクライブ工程に相当し、TFTアレイマザー基板の一方向にスクライブする工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14はTFTアレイマザー基板の第2スクライブ工程に相当し、TFTアレイマザー基板において、ステップS13でスクライブした方向と直交する方向にスクライブする工程である。ステップS13とステップS14とを合わせてステップS22とする。ステップS22は、第2スクライブ工程に相当する。次にステップS15に移行する。
【0105】
ステップS15はTFTアレイマザー基板の第1分断工程に相当し、TFTアレイマザー基板の一方向を分断する工程である。次にステップS16に移行する。ステップS16はTFTアレイマザー基板の第2分断工程に相当し、TFTアレイマザー基板において、ステップS15で分断した方向と直交する方向を分断する工程である。次にステップS17に移行する。ステップS17は対向マザー基板の第1分断工程に相当し、対向マザー基板の一方向を分断する工程である。次にステップS18に移行する。ステップS18は対向マザー基板の第2分断工程に相当し、対向マザー基板において、ステップS17で分断した方向と直交する方向を分断する工程である。ステップS15〜ステップS18とを合わせてステップS23とする。ステップS23は、分断工程に相当する。以上の工程により、液晶表示装置55が形成される。
【0106】
次に、図12〜図14を用いて、図11に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図12(a)は、液晶表示装置が区画形成されたマザー基板を示す模式図である。図12(b)は、図12(a)のE−E’線に沿った模式断面図である。
【0107】
図12(a)及び図12(b)に示すように、第1マザー基板としての対向マザー基板80と第2マザー基板としてのTFTアレイマザー基板76とがシール材79により接着され、マザー基板82が形成されている。対向マザー基板80及びTFTアレイマザー基板76の製造方法と、対向マザー基板80及びTFTアレイマザー基板76の組立て方法は公知であり、説明を省略する。尚、TFTアレイマザー基板76を構成する基板77及び対向マザー基板80を構成する基板81は、石英ガラスにより形成されている。
【0108】
図10に示す液晶表示装置55を形成するために、対向マザー基板80を分断する予定の面をH対向切断面83、V対向切断面84とし、TFTアレイマザー基板76を分断する予定の面をH素子切断面85、V素子切断面86と表記する。
H対向切断面83は、一点鎖線で示した対向マザー基板80の切断面であり、図12(a)のX軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、83a,83b,83c,83d,83eは、それぞれH対向切断面83である。
【0109】
V対向切断面84は、一点鎖線で示した対向マザー基板80の切断面であり、図12(a)のY軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、84a,84b,84cは、それぞれV対向切断面84である。
【0110】
H素子切断面85は、一点鎖線で示したTFTアレイマザー基板76の切断面であり、図12(a)のX軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、85a,85b,85cは、それぞれH素子切断面85である。
【0111】
V素子切断面86は、一点鎖線で示したTFTアレイマザー基板76の切断面であり、図12(a)のY軸方向に延在する切断面である。V素子切断面86は、V対向切断面84と対向する場所に位置し、図12(a)に示した、86a,86b,86cは、それぞれV素子切断面86である。
【0112】
図13(a)〜図13(b)はステップS11に対応する図である。図13(a)に示す様に、ステップS11において、基板81のV対向切断面84に沿ってレーザ光37を照射する照射工程と、次に照射する場所へ移動する移動工程とを繰り返して、スクライブを行う。
【0113】
まず、マザー基板82をスクライブ装置1のステージ20に配置する。続いて、照射工程において、対向マザー基板80の基板81の内部に、集光部8の集光レンズ8aでレーザ光37を集光して照射する。
【0114】
図5(a)に示す集光レンズ8aの断面が矩形となる第1方向38が、V対向切断面84と同じ方向なるように、集光レンズ8aを配置する。従って、集光レンズ8aの断面が凸レンズとなる第2方向39は、V対向切断面84と直交する方向となる。
【0115】
図5(b)及び図5(c)と同様に、集光部8から基板81の内部にレーザ光37をX方向に集光して照射する。レーザ光37が集光されて照射された集光場所37aには、Y方向に長い改質部45が形成され、改質部45の中央には、クラック部46が形成される。本実施形態においては、基板81に石英ガラスを用いていることから、クラック部46には、空洞が形成される。
【0116】
続いて、移動工程では、次にレーザ光37を照射する場所と対向する場所に集光レンズ8aが位置する様に、集光部8と基板81とを、第1方向38へ相対的に移動する。続いて、照射工程において、レーザ光37を照射し、改質部45を配列して形成する。まず、基板81において、TFTアレイマザー基板76側の面81aの近くに改質部45を配列して1段目の改質部45eを、基板81のV対向切断面84に沿って形成する。続いて、1段目と隣接する場所に改質部45を配列して2段目の改質部45fを形成する。3段目以降についても、同様の方法で、改質部45を配列して形成する。
【0117】
図13(b)に示す様に、その結果、基板81のV対向切断面84総てに改質部45が配列して形成され、改質部45の中央にはクラック部46が形成される。
【0118】
ステップS12においては、基板81のH対向切断面83に沿ってレーザ光37を照射し、スクライブを行う。続いて、ステップS13において、マザー基板82を反転し、基板77のV素子切断面86に沿ってレーザ光37を照射して、スクライブを行う。続いて、ステップS14において、基板77のH素子切断面85に沿ってレーザ光37を照射し、スクライブを行う。スクライブ方法については、ステップS11と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0119】
図14(a)〜図14(b)はステップS15に対応する図である。図14(a)に示す様に、マザー基板82を弾性材より少なくともなる台49の上に配置する。マザー基板82のTFTアレイマザー基板76が台49と接する様に配置し、対向マザー基板80において、H素子切断面85に配列して形成されているクラック部46と対向する場所を、加圧部材50を用いて押圧する。TFTアレイマザー基板76は台49に沈み込み、クラック部46に張力が作用する。TFTアレイマザー基板76は、台49と接する面に近いクラック部46を起点として破断が進行し、分断する。
図14(b)に示す様に、その結果、TFTアレイマザー基板76は、H素子切断面85で分断される。
【0120】
ステップS16においては、TFTアレイマザー基板76のV素子切断面86に沿って形成されているクラック部46を分断する。続いて、ステップS17において、マザー基板82を反転し、対向マザー基板80のH対向切断面83に沿って形成されているクラック部46を分断する。続いて、ステップS17において、対向マザー基板80のV対向切断面84に沿って形成されているクラック部46を分断する。分断方法については、ステップS15と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0121】
以上の工程により、マザー基板82が分割されて、図10(a)に示す液晶表示装置55の形状に形成され、図10(b)に示す偏光シート72,73を接着して液晶表示装置55が完成する。
【0122】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、電気光学装置の製造方法は、第1スクライブ工程と第2スクライブ工程と分断工程とを有し、レーザ光37を照射して、TFTアレイマザー基板76と対向マザー基板80とをスクライブする。
【0123】
そして、このレーザ光37を用いるスクライブ方法では、照射工程と移動工程とを有する。照射工程では、レーザ光の光軸と直交する第1方向38に比べて、第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光してTFTアレイマザー基板76と対向マザー基板80とに照射する。移動工程では、TFTアレイマザー基板76及び対向マザー基板80と集光部8とを第1方向38に相対移動する。照射工程と、移動工程とを繰り返して、第1方向38に改質部45を配列して、スクライブしている。
【0124】
照射工程において、照射するレーザ光37の開口数は、第1方向38に比べて、第2方向39が大きいことから、形成される改質部45は第2方向39に比べて、第1方向38に長い形状となる。つまり、第1方向38に長い改質部45を形成することができる。移動工程において、TFTアレイマザー基板76及び対向マザー基板80と集光部8とを第1方向38に相対移動する。照射工程と移動工程とを繰り返すことにより、第1方向38に長い改質部45を、第1方向38に配列して形成することができる。従って、所定の長さのTFTアレイマザー基板76及び対向マザー基板80に改質部45を並べて配列するとき、第1方向38と第2方向39とに同じ長さの改質部45を形成する場合に比べて、少ない照射数で改質部45を配列することができる。その結果、生産性良くスクライブすることができる。
【0125】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態及び第2の実施形態において、集光レンズ8aは、第1方向38の断面が矩形であり、第2方向39の断面が凸レンズの柱状レンズを採用している。これに限らず、第1方向の断面が、凸レンズ、または凹レンズでも良い。このとき、第2方向に、レーザ光の開口数が大きくなるようなレンズにして、集光する場所に改質部45が形成される様なレンズであれば良い。
【0126】
図15に集光レンズの例を示す。この図において、X方向が第1方向38、Y方向が第2方向39を示す。例えば、図15(a)に示す対物レンズとしての集光レンズ90は、YZ方向の断面が蒲鉾型をしている柱状レンズである。図15(b)に示す対物レンズとしての集光レンズ91は、XZ方向の断面が凹レンズであり、YZ方向の断面が凸レンズとなっている。図15(c)に示す対物レンズとしての集光レンズ92は、XZ方向の断面が凹レンズであり、YZ方向の断面が凸レンズとなっている。また、Z方向の逆方向の面が平面となっている。
【0127】
図15(d)に示す対物レンズとしての集光レンズ93は、YZ方向の断面が凸レンズとなっており、XZ方向の断面が、湾曲した柱状となっている。図15(e)の対物レンズとしての集光レンズ94は、図15(c)の集光レンズ92の変形である。YZ方向の断面が凸レンズとなっており、Z方向の逆方向の面が凸状となっている。図15(f)の対物レンズとしての集光レンズ95は、楕円球の重心を通るXY平面で、分断した形状をした凸レンズである。図15(g)の対物レンズとしての集光レンズ96は、ラグビーボール状のレンズである。いずれの場合にも、X方向に比べて、Y方向にレーザ光の開口数が大きくなるレンズとして採用することができる。
【0128】
(変形例2)
前記第1の実施形態及び第2の実施形態において、集光部8に集光レンズ8aを用いたが、集光レンズ8aに換えて、凹面鏡を用いても良い。図16に示すように、凹面鏡97の断面形状において、第1方向38と第2方向39とで、曲率の異なる凹面鏡97としても良い。この凹面鏡97に、鏡98を介してレーザ光37を照射することにより、第1方向38に比べて、第2方向39の開口数が大きなレーザ光を集光して基板に照射することにより改質部45を形成しても良い。第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
(変形例3)
前記第1の実施形態及び第2の実施形態において、基板41、基板77、基板81は石英ガラスを用いているが、他のガラスでも良い。光透過性があり、前記第2の実施形態では、液晶表示装置55を構成できる脆性材料であれば良い。例えば、石英ガラスの他に、ソーダ石灰ガラス、パイレックス(登録商標)等のホウ珪酸ガラス、OA−10(日本電気硝子社製)等の無アルカリガラス、ネオセラム(登録商標)等の耐熱結晶化ガラス、光学ガラス、水晶等を挙げることができる。
【0130】
(変形例4)
前記第2の実施形態では、液晶表示装置55に本発明の基板の分断方法を用いたが、液晶表示装置55以外の電気光学装置にも用いることができる。基板を備えた電気光学装置として、例えば、プラズマディスプレイ、有機EL(ELECTROLUMINESCENCE)ディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等における基板の分断手段として好適に用いることができる。いずれの場合でも、基板にレーザ光37を照射してスクライブする工程において、第1方向38に比べて、第2方向39に、レーザ光37の開口数が大きくなるように集光して改質部45を形成することにより生産性良くスクライブすることができる。
【0131】
(変形例5)
前記第1の実施形態及び第2の実施形態では、レーザ光源2にYAGレーザを用いたが、フェムト秒レーザを用いても良い。出射するレーザ光を加工対象物の内部に集光して多光子吸収による改質部45を形成できる光源であれば良い。例えば、チタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザを採用しても良い。発光条件及び集光レンズの条件の例としては、パルスレーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ20nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、パルス周期は1kHz、出力はおよそ700mWである。集光レンズは、この場合においても、第1方向38と第2方向39とでレーザ光37の開口数が異なるレンズを採用する。
【0132】
(変形例6)
前記第2の実施形態では、H対向切断面83、V対向切断面84、H素子切断面85、V素子切断面86の断面において、レーザ光37を照射してスクライブしている。加工条件によっては、切断面の幾つかにおいて、レーザ光37を照射してスクライブし、他の切断面において、他の方法を用いて切断しても良い。例えば、ダイヤモンドホイールまたは、超硬ホイールを備えたガラスカッターを用いて、スクライブし、切断しても良い。他の方法として、ダイヤモンドブレード等のブレードを回転して切断するダイシング方法を用いて切断しても良い。
【0133】
(変形例7)
前記第2の実施形態では、ステップS21の第1スクライブ工程において、基板81のV対向切断面84及び、H対向切断面83に沿ってレーザ光37を照射し、スクライブを行っている。続いて、ステップS22の第2スクライブ工程において、基板77のV素子切断面86及び、H素子切断面85に沿ってレーザ光37を照射し、スクライブを行っている。この工程順には、限定されず変更してもよい。例えば、V対向切断面84、V素子切断面86、H対向切断面83、H素子切断面85の順にスクライブを行っても良い。このとき、第1スクライブ工程、第2スクライブ工程、第1スクライブ工程、第2スクライブ工程となる。この場合においても、前記第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】第1の実施形態に係るスクライブ装置の構成を示す模式概略図。
【図2】集光部の構成を示す要部模式概略図。
【図3】基板の分断方法のフローチャート。
【図4】基板の分断方法を説明する図。
【図5】基板の分断方法を説明する図。
【図6】基板の分断方法を説明する図。
【図7】基板の分断方法を説明する図。
【図8】基板の分断方法を説明する図。
【図9】基板の分断方法を説明する図。
【図10】第2の実施形態に係る液晶表示装置の模式図。
【図11】液晶表示装置の製造方法のフローチャート。
【図12】液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す模式図。
【図13】液晶表示装置の製造方法を説明する図。
【図14】液晶表示装置の製造方法を説明する図。
【図15】変形例1に係る集光レンズを示す要部模式概略図。
【図16】変形例2に係る集光部を示す要部模式概略図。
【符号の説明】
【0135】
1…スクライブ装置、2…レーザ光源、7,7a…光軸、8a,90,91,92,93,94,95,96…対物レンズとしての集光レンズ、8…集光部、9…基板としてのワーク、38…第1方向、39…第2方向、41…基板、45e…1段目の改質部、55…電気光学装置としての液晶表示装置、56…第2基板としてのTFTアレイ基板、57…第1基板としての対向基板、59…光学素子としての液晶、76…第2マザー基板としてのTFTアレイマザー基板、80…第1マザー基板としての対向マザー基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にレーザ光を照射してスクライブするスクライブ装置であって、
前記レーザ光を発光するレーザ光源と、
前記基板の内部に前記レーザ光を集光して照射し、改質部を形成する集光部とを備え、
前記集光部は、前記レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、前記光軸及び前記第1方向と直交する第2方向に、前記レーザ光の開口数が大きくなるように集光して前記基板に照射することを特徴とするスクライブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスクライブ装置であって、
前記集光部は対物レンズを備え、
前記対物レンズは、前記第1方向の焦点距離に対して、前記第2方向の焦点距離が短い非球面レンズを用いたことを特徴とするスクライブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスクライブ装置であって、
前記対物レンズは、柱状レンズであることを特徴とするスクライブ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスクライブ装置であって、
前記集光部が、前記光軸を中心として、回転し、前記第1方向及び前記第2方向が変更することを特徴とするスクライブ装置。
【請求項5】
可視光を透過する基板に、集光部からレーザ光を照射し、改質部を形成して、スクライブし、分断する基板の分断方法であって、
前記レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、前記光軸及び前記第1方向と直交する第2方向に、前記レーザ光の開口数が大きくなるように集光して前記基板に照射する照射工程と、
前記基板と前記集光部とを前記第1方向に相対移動する移動工程と、
前記基板を押圧して分断する分断工程とを有し、
前記照射工程と、移動工程とを繰り返して、前記第1方向に前記改質部を配列してスクライブすることを特徴とする基板の分断方法。
【請求項6】
第1基板と、第2基板との間に光学素子を挟んで接合し、形成する電気光学装置の製造方法であって、
前記第1基板が複数行且つ複数列形成されている第1マザー基板をスクライブする第1スクライブ工程と、
前記第2基板が複数行且つ複数列形成されている第2マザー基板をスクライブする第2スクライブ工程と、
前記第1マザー基板と前記第2マザー基板とを分断する分断工程とを有し、
少なくとも、前記第1スクライブ工程と前記第2スクライブ工程とのいずれか一方の工程において、
前記第1マザー基板または、前記第2マザー基板に集光部からレーザ光を照射し、改質部を形成して、スクライブするスクライブ工程を有し、
前記スクライブ工程は、照射工程と移動工程とを有し、
前記照射工程では、前記レーザ光の光軸と直交する第1方向に比べて、前記光軸及び前記第1方向と直交する第2方向に、前記レーザ光の開口数が大きくなるように集光して前記基板に照射し、
前記移動工程では、前記基板と前記集光部とを前記第1方向に相対移動し、
前記スクライブ工程では、前記照射工程と、前記移動工程とを繰り返して、前記第1方向に前記改質部を配列してスクライブすることを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−100257(P2008−100257A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284690(P2006−284690)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】