説明

スクリュ圧縮機

【課題】振動減衰性を向上させることができるようにする。
【解決手段】モータケーシング13には、複数の錘8が緩挿された棒状部材19が突設されている。複数の錘8の少なくとも一つは台板16に結合されているとともに、複数の錘8の少なくとも一つは台板16に結合されていない。モータケーシング13が振動すると、棒状部材19と錘8とが衝突することで振動エネルギーが消散する。また、低振幅域においても、台板16に結合された錘8aと台板に結合されていない錘8との間に相対変位が好適に生じて、両者の間に摺動摩擦が生じることで、振動エネルギーが消散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ式の圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機直結構造のスクリュ圧縮機は、駆動ベルトを介する動力伝達方式のものよりエネルギー変換効率がよい。また、インバータを用いた回転数制御方式を採用するスクリュ圧縮機においては電動機直結構造のスクリュ圧縮機が主流となっている。ここで、コスト低減・メカロス削減の目的から、モータ軸の片側に軸受を設けない片持ち方式の電動機直結型スクリュ圧縮機とされることが多い。
【0003】
片持ち方式の電動機直結型スクリュ圧縮機においては、質量の大きなモータを片持ち支持しているため、モータ軸とスクリュ軸との一体構造であるロータ軸の曲げ剛性を大きく取りにくい。このため、回転時の駆動系やモータの電磁力に起因した加振力による共振や、ロータ軸固有の不安定現象により、振動が大きくなりやすいという問題がある。
【0004】
そこで、モータケーシングに振動減衰性を付与することで、共振倍率(共振時の振動伝達率)を低減させて振幅の増大を抑制したり、不安定現象に対する不安定領域を安定領域にしたりする必要がある。
【0005】
モータケーシングの振動を低減させる方法として、例えば特許文献1に記載された方法がある。特許文献1には、モータケーシングに対して棒状体を水平方向に突設し、比較的大きな遊びを持たせた孔を有する板(質量体)をこの棒状体に挿入したことを特徴とするスクリュ圧縮機が記載されている。本構造によると、モータケーシングの振動により板(質量体)が上下方向に変位し、モータケーシングに突設した棒状体と板(質量体)とが衝突して振動エネルギーが消費されることで、モータケーシングの振動が低減される。また、複数の板(質量体)同士の間に相対変位が生じることで、両者の間に摺動摩擦が生じて、振動エネルギーが消費される。これによっても、モータケーシングの振動が低減される。
【0006】
また、モータケーシングの振動を低減させる方法として、減衰性の大きな粘弾性材のせん断変形を利用する制振機構を、モータケーシングが載置された台板とモータケーシングとの間に設ける方法がある。モータケーシングの振動により、モータケーシングに取り付けられた拘束板と台板に結合された拘束板とが相対的に移動することで、その間にある粘弾性材にせん断変形が生じ、振動エネルギーが粘弾性材の分子間の架橋内の摩擦による熱エネルギーに変換されることで、モータケーシングの振動が低減される。この制振機構の特徴は、粘弾性材によるばね特性と減衰特性とが同時に発生することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−343641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された振動低減方法では、モータケーシングの振幅がある程度まで大きくならなければ、複数の板(質量体)同士の間に摺動摩擦が効率的に生じない。よって、低振幅域においては、摺動摩擦によるモータケーシングの振動低減効果を十分に得ることができないので、低振幅域における振動減衰性が低いという問題がある。
【0009】
また、制振機構を設ける振動低減方法では、制振機構によるばね特性がマウントのばね特性に加算されることから、スクリュ圧縮機の固有振動数が高くなり、台板への振動伝達率が高くなって、振動減衰性が低下するという問題がある。
【0010】
例えば、ばね定数が6×10N/mの振動絶縁用のマウントを備えた重量100kgのスクリュ圧縮機に、せん断弾性係数が1×10N/mで、損失係数が0.5の熱可塑性の粘弾性樹脂を適用し、この粘弾性樹脂の部分を幅50mm×高さ50mm×厚さ5mmとした場合、マウントも含めた損失係数は0.1となるが、圧縮機本体の固有振動数は25Hzから54Hzとなり、圧縮機本体から台板への振動伝達率が1以下となる周波数領域は、35Hz以上から78Hz以上となって、振動減衰性が低下する。
【0011】
そこで、マウントのばね定数を下げることで、スクリュ圧縮機の固有振動数を下げることが考えられるが、上記の例の場合、マウントのばね定数を1×10N/mまで下げなければならず、スクリュ圧縮機の重量に対する許容範囲に収まらなくなるので、非現実的である。
【0012】
本発明の目的は、振動減衰性を向上させることが可能なスクリュ圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明におけるスクリュ圧縮機は、スクリュロータと、前記スクリュロータの雄ロータと同軸で当該雄ロータに対して一体構造にされたスクリュ軸と、前記スクリュロータおよび前記スクリュ軸を収容するスクリュケーシングと、前記スクリュ軸と同軸で当該スクリュ軸に対して一体構造にされるとともにスクリュロータ側で片持ち支持されたモータ軸と、モータケーシングを備えて当該モータケーシングの内部で前記モータ軸を回転させるモータと、防振体を介して前記スクリュケーシングおよび前記モータケーシングが載置された台板と、前記モータ軸の軸方向に沿って前記モータケーシングに突設された棒状部材と、前記棒状部材に緩挿された複数の錘と、を有し、前記複数の錘の少なくとも一つが前記台板に結合されているとともに、前記複数の錘の少なくとも一つが前記台板に結合されていないことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、モータケーシングの振動に対して、棒状部材と錘とが衝突することで振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシングの振動は低減する。さらに、複数の錘の少なくとも一つを台板に結合するとともに、複数の錘の少なくとも一つを台板に結合しないことにより、低振幅域においても、台板に結合された錘と台板に結合されていない錘との間に相対変位が好適に生じて、両者の間に摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、低振幅域においても振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシングの振動は低減する。よって、振動減衰性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明におけるスクリュ圧縮機において、最も前記モータケーシング寄りの錘は、前記台板に結合されておらず、最も前記モータケーシング寄りの錘と前記モータケーシングとの間に設けられ、前記台板に結合されていない錘を前記台板に結合された錘に向かって付勢するバネを更に有していてよい。上記の構成によれば、台板に結合されていない錘をバネで台板に結合された錘に向かって付勢することで、台板に結合されていない錘は、台板に結合された錘とモータケーシングとの間において、傾くことなく安定的に保持される。その結果、モータケーシングの振動時において、台板に結合されていない錘は、棒状部材に対してふらつくことなく安定して衝突する。また、バネの付勢力によって錘同士が密接するので、台板に結合された錘と台板に結合されていない錘との間に生じた相対変位によって、錘同士の間に摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、振動減衰効果を安定的に得ることができる。
【0016】
また、本発明におけるスクリュ圧縮機において、前記複数の錘は3つ以上であって、少なくとも2つの錘が前記台板に結合されているとともに、前記台板に結合された錘同士の間に前記台板に結合されていない錘が少なくとも1つ配置されていてよい。上記の構成によれば、台板に結合された錘同士の間に、台板に結合されていない錘を少なくとも1つ配置することで、台板に結合されていない錘は、台板に結合された錘同士の間において、傾くことなく安定的に保持される。その結果、モータケーシングの振動時において、台板に結合されていない錘は、棒状部材に対してふらつくことなく安定して衝突する。また、台板に結合されていない錘が隣接する錘と軸方向に衝突することにより摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、振動減衰効果を安定的に得ることができる。
【0017】
また、本発明におけるスクリュ圧縮機においては、前記台板に結合された錘と前記台板との間に弾性体が設けられていてよい。上記の構成によれば、弾性体によって、台板に結合された錘から台板に振動が伝達するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスクリュ圧縮機によると、モータケーシングの振動に対して、棒状部材と錘とが衝突することで振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシングの振動は低減する。さらに、低振幅域においても、台板に結合された錘と台板に結合されていない錘との間に相対変位が好適に生じて、両者の間に摺動摩擦が効率的に生じるので、低振幅域においても振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシングの振動は低減する。よって、振動減衰性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機を示す側断面模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るスクリュ圧縮機を示す側断面模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るスクリュ圧縮機を示す側断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(スクリュ圧縮機の構成)
図1に示すように、スクリュ圧縮機1は、スクリュ本体部2とモータ部30(モータ)とを具備してなる電動機直結構造のスクリュ圧縮機である。
【0022】
(スクリュ本体部)
スクリュ本体部2は、雌雄一対のスクリュロータ4と、スクリュロータ4の雄ロータ4aと同軸で雄ロータ4aに対して一体構造にされたスクリュ軸3と、スクリュロータ4およびスクリュ軸3を収容するスクリュケーシング12と、を有する。スクリュ軸3は、軸受14および軸受15で両持ち支持されている。
【0023】
スクリュロータ4の雄ロータ4aとスクリュ軸3とは、1本の鋼材からの削り出し加工などで製作される。なお、雄ロータ4aとスクリュ軸3とをそれぞれ別に製作したのち剛結(一体に連結)してもよい。また、スクリュ軸3と後述するモータ軸7とも1本の鋼材からの削り出し加工などで製作されて一体構造となっている。相互に一体構造にされたスクリュ軸3とモータ軸7とで回転するロータ軸11を構成する。なお、スクリュ軸3とモータ軸7とをそれぞれ別に製作したのち剛結(一体に連結)してもよい。剛結(一体構造化)の方法としてはフランジ連結などがある。
【0024】
(モータ部)
モータ部30(モータ)は、ロータ軸11を回転させるための駆動源であって、モータ軸7の外周に固定された回転子5と、回転子5の外側に配置された固定子6と、回転子5および固定子6を収容するモータケーシング13と、を有する。モータ軸7は、スクリュ軸3と同軸でスクリュ軸3に対して一体構造にされるとともにスクリュロータ4側で片持ち支持されている。具体的には、スクリュロータ4側の軸受14(および軸受15)でモータ軸7は片持ち支持されている。
【0025】
モータ軸7のモータ側端面7aは、回転子5のモータ側端面5aよりもスクリュロータ4側に位置している。回転子5のモータ側端面5aには円板状のエンド部材10がボルト(不図示)などで固定されている。エンド部材10の中心には孔が開けられている。エンド部材10はモータ軸7と同軸にされている。モータ軸7のモータ側端面7aには、モータ軸7と同軸で(モータ軸7の回転中心に)ボルト9が固定されている。ボルト9は、エンド部材10の中心に形成された孔を貫通している。
【0026】
スクリュケーシング12とモータケーシング13とは、マウント(防振体)17を介して台板16上に載置されている。マウント17は、所定のばね特性を有することで、振動絶縁性能を有している。即ち、マウント17は、スクリュケーシング12およびモータケーシング13から台板16に伝達する振動を低減させている。
【0027】
(棒状部材および錘)
モータケーシング13の下部には、スクリュロータ4側とは反対側において、モータ軸7の軸方向に沿った棒状部材19が突設されている。この棒状部材19には、複数の環状の錘8が緩挿されている。本実施形態では錘8の数を3つとしているが、3つに限られることはなく、1つであってもよい。
【0028】
棒状部材19の断面形状は円形であるが必ずしも円形である必要はなく、例えば、四角形などであってもよい。錘8の中心に形成された孔も同様であって、円形ではなく、例えば、四角形などであってもよい。錘8の中心に形成された孔の形状は、棒状部材19の断面形状と合わされる。
【0029】
また、3つの錘8のうち、最もモータケーシング13から離れている錘8aは、防振ゴム(弾性体)20を介して台板16に結合されているとともに、他の2つの錘8は、台板16に結合されていない。台板16に結合された錘8aによって、台板16に結合された錘8aとモータケーシング13との間に位置して台板16に結合されていない2つの錘8が棒状部材19の端から飛び出して脱落してしまわないようにされている。また、台板16に結合された錘8aの中心に形成された孔の上下方向の中心は、モータケーシング13の上下方向の振動の中心に一致されている。なお、錘8aは、スポンジやばねを介して台板16に結合されていてもよい。
【0030】
棒状部材19の軸径をd1mm、錘8の内径をd2mmとすると、錘8の軸直交方向(上下方向)変位可能量は、(d2−d1)となる。モータケーシング13が振動すると、台板16に結合されていない2つの錘8は、棒状部材19とともに上下方向に変位し、棒状部材19と衝突する。また、台板16に結合された錘8aは、軸方向および軸直交方向(上下方向)への移動が抑制されているので、モータケーシング13が振動すると、錘8aの中心に形成された孔の中で、棒状部材19が上下方向に変位する。これによっても、錘8aが棒状部材19と衝突する。
【0031】
また、モータケーシング13が振動すると、錘8同士の間に相対変位が生じることで、両者の間に摺動摩擦が生じる。特に、最もモータケーシング13から離れている錘8aは台板16に結合されているので、モータケーシング13における振動の振幅がある程度大きい場合のみならず、低振幅域においても、台板16に結合された錘8aと台板16に結合されていない錘8との間に相対変位が好適に生じて、両者の間に摺動摩擦が効率的に生じる。
【0032】
(効果)
本実施形態のスクリュ圧縮機1によると、モータケーシング13の振動に対して、棒状部材19と錘8とが衝突することで振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシング13の振動は低減する。
【0033】
また、本実施形態のスクリュ圧縮機1では、3つの錘8のうち、最もモータケーシング13から離れている錘8aを台板16に結合し、他の2つの錘8を台板16に結合していない。仮に、3つの錘8のいずれもが台板16に結合されていなければ、低振幅域において錘8同士の間に生じる摺動摩擦は限定的となり、その結果、低振幅域においては、摺動摩擦によるモータケーシング13の振動低減効果を十分に得ることができない。しかし、本実施形態のように、台板16に結合された錘8aと台板16に結合されていない錘8とを設けることにより、低振幅域においても、台板16に結合された錘8aと台板16に結合されていない錘8との間に相対変位が好適に生じて、両者の間に摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、低振幅域においても振動エネルギーが消散し、その結果、モータケーシング13の振動は低減する。よって、スクリュ圧縮機1の振動減衰性を向上させることができる。
【0034】
また、防振ゴム20によって、台板16に結合された錘8aから台板16に振動が伝達するのを抑制することができる。
【0035】
(変形例)
なお、最もモータケーシング13寄りの錘8とモータケーシング13との間の隙間にスペーサを設けて、錘8同士を軸方向に近接あるいは密接させることで、錘8同士の間に摺動摩擦が生じ易くしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、モータケーシング13のスクリュロータ4側とは反対側に棒状部材19を突設しているが、モータケーシング13のスクリュロータ4側に棒状部材19を突設してもよい。この場合、スクリュ圧縮機1全体をコンパクトにすることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るスクリュ圧縮機101を説明する。第1実施形態のスクリュ圧縮機1と、本実施形態のスクリュ圧縮機101との主な相違点は、図2に示すように、本実施形態のスクリュ圧縮機101が、コイル状のバネ21を具備してなる点である。
【0038】
(バネ)
バネ21は、最もモータケーシング13寄りであって台板16に結合されていない錘8と、モータケーシング13との間に設けられている。そして、バネ21は、最もモータケーシング13から離れて台板16に結合された錘8aと、モータケーシング13との間に位置して、台板16に結合されていない2つの錘8を、台板16に結合された錘8aに向かってそれぞれ付勢している。このバネ21により、錘8同士が密接し、台板16に結合されていない2つの錘8の各々は、台板16に結合された錘8aとモータケーシング13との間において、傾くことなく安定的に保持される。
【0039】
(効果)
最もモータケーシング13寄りの錘8とモータケーシング13との間に隙間があれば、台板16に結合されていない2つの錘8の各々は傾いてしまい、その結果、モータケーシング13の振動時に、棒状部材19に対して安定して衝突しなくなるだけでなく、錘8同士の相対変位による摺動摩擦も生じにくくなる。そこで、本実施形態のスクリュ圧縮機101では、台板16に結合されていない2つの錘8をバネ21で台板16に結合された錘8aに向かって付勢している。これにより、台板16に結合されていない2つの錘8の各々は、台板16に結合された錘8aとモータケーシング13との間において、傾くことなく安定的に保持される。その結果、モータケーシング13の振動時において、台板16に結合されていない2つの錘8の各々は、棒状部材19に対してふらつくことなく安定して衝突する。また、バネ21の付勢力によって錘8同士が密接するので、台板16に結合された錘8aと台板16に結合されていない錘8との間に生じた相対変位によって、錘8同士の間に摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、振動減衰効果を安定的に得ることができる。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るスクリュ圧縮機201を説明する。第1実施形態のスクリュ圧縮機1と、本実施形態のスクリュ圧縮機201との主な相違点は、図3に示すように、台板16に結合された錘8a,8b同士の間に、台板16に結合されていない錘8が配置されている点である。
【0041】
(棒状部材および錘)
本実施形態においても、錘8の数は3つであり、そのうち、最もモータケーシング13から離れている錘8aと、最もモータケーシング13寄りの錘8bとが、錘1個分よりも若干大きな間隔をあけて、それぞれ台板16に結合されており、その間に、台板16に結合されていない錘8が配置されている。このように、台板16に結合された錘8a,8b同士の間に、台板16に結合されていない錘8を配置することで、錘8同士が近接するとともに、台板16に結合されていない錘8は、台板16に結合された錘8a,8b同士の間において、傾くことなく安定的に保持される。
【0042】
なお、最もモータケーシング13から離れている錘8aと、最もモータケーシング13寄りの錘8bとの間隔を錘1個分として、錘8同士を軸方向に密接させることで、錘8同士の間に摺動摩擦が生じ易くしてもよい。
【0043】
(効果)
最もモータケーシング13寄りの錘8bとモータケーシング13との間に隙間があり、最もモータケーシング13寄りの錘8bが台板16に結合されていなければ、台板16に結合されていない2つの錘8の各々は傾いてしまい、その結果、モータケーシング13の振動時に、棒状部材19に対して安定して衝突しなくなるだけでなく、錘8同士の相対変位による摺動摩擦も生じにくくなる。そこで、本実施形態のスクリュ圧縮機201では、最もモータケーシング13から離れている錘8aと、最もモータケーシング13寄りの錘8bとを台板16にそれぞれ結合し、台板16に結合された錘8a,8b同士の間に、台板16に結合されていない錘8を配置している。これにより、台板16に結合されていない錘8は、台板16に結合された錘8a,8b同士の間において、傾くことなく安定的に保持される。その結果、モータケーシング13の振動時において、台板16に結合されていない錘8は、棒状部材19に対してふらつくことなく安定して衝突する。また、台板16に結合されていない錘8が隣接する錘8a,8bと軸方向に衝突することにより摺動摩擦が効率的に生じる。これにより、振動減衰効果を安定的に得ることができる。
【0044】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0045】
例えば、図1〜図3に示した実施の形態を適宜、組み合せて実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,101,201 スクリュ圧縮機
2 スクリュ本体部
3 スクリュ軸
4 スクリュロータ
5 回転子
6 固定子
7 モータ軸
8,8a,8b 錘
9 ボルト
10 エンド部材
11 ロータ軸
12 スクリュケーシング
13 モータケーシング
14,15 軸受
16 台板
17 マウント(防振体)
19 棒状部材
20 防振ゴム(弾性体)
21 バネ
30 モータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュロータと、
前記スクリュロータの雄ロータと同軸で当該雄ロータに対して一体構造にされたスクリュ軸と、
前記スクリュロータおよび前記スクリュ軸を収容するスクリュケーシングと、
前記スクリュ軸と同軸で当該スクリュ軸に対して一体構造にされるとともにスクリュロータ側で片持ち支持されたモータ軸と、
モータケーシングを備えて当該モータケーシングの内部で前記モータ軸を回転させるモータと、
防振体を介して前記スクリュケーシングおよび前記モータケーシングが載置された台板と、
前記モータ軸の軸方向に沿って前記モータケーシングに突設された棒状部材と、
前記棒状部材に緩挿された複数の錘と、
を有し、
前記複数の錘の少なくとも一つが前記台板に結合されているとともに、前記複数の錘の少なくとも一つが前記台板に結合されていないことを特徴とするスクリュ圧縮機。
【請求項2】
最も前記モータケーシング寄りの錘は、前記台板に結合されておらず、
最も前記モータケーシング寄りの錘と前記モータケーシングとの間に設けられ、前記台板に結合されていない錘を前記台板に結合された錘に向かって付勢するバネを更に有することを特徴とする請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記複数の錘は3つ以上であって、少なくとも2つの錘が前記台板に結合されているとともに、前記台板に結合された錘同士の間に前記台板に結合されていない錘が少なくとも1つ配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記台板に結合された錘と前記台板との間に弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−256973(P2011−256973A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133619(P2010−133619)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】