説明

スクリーンマスクの観察装置および印刷装置

【課題】マスク開口部の形状を正確に観察することが可能なスクリーンマスクの観察装置を提供する。
【解決手段】この印刷装置100は、マスクプレート90が取り付けられたフレーム95を固定するマスク支持部31と、マスクプレート90を撮像するカメラ15と、フレーム95がマスク支持部31に固定された状態でカメラ15によりマスクプレート90の下面90aを撮像する際に、マスクプレート90の撓みを矯正する下面側矯正治具110および上面側矯正治具120を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンマスクの観察装置および印刷装置に関し、特に、スクリーンマスクを固定する固定部と、スクリーンマスクを撮像する撮像部とを備えたスクリーンマスクの観察装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーンマスクを固定する固定部と、スクリーンマスクを撮像する撮像部とを備えた印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、電子部品が実装される基板にマスクを介して半田ペーストを印刷する機構を備えたスクリーン印刷装置が開示されている。この印刷装置では、スクリーンマスクの表面を撮像するマスクスキャン動作を行うことにより、マスクが有する開口部の形状を画像データに基づいて計測することが可能である。なお、シート状のマスクは、外縁部が枠状のホルダ部材に貼り付けられており、マスクを水平に配置した状態でホルダ部材が装置本体の台座部に固定されている。そして、マスクの上方に配置されたカメラによって、マスク開口部の形状が撮像されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−79783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスクリーン印刷装置では、ホルダ部材が装置本体の台座部に固定されるため、枠状のホルダ部材に貼り付けられたマスクには、マスク自身の自重に起因して外縁部よりも内側の部分に局所的な撓みが発生する場合があると考えられる。したがって、マスクに撓みが生じた状態では、マスクが有する開口部の平面的な形状が歪むため、開口部の形状を正確に観察(計測)することができないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、マスクが有する開口部の形状を正確に観察することが可能なスクリーンマスクの観察装置および印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるスクリーンマスクの観察装置は、スクリーンマスクを固定する固定部と、スクリーンマスクを撮像する撮像部と、スクリーンマスクが固定部に固定された状態で撮像部によりスクリーンマスクの表面を撮像する際に、スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段とを備える。
【0008】
この発明の第1の局面によるスクリーンマスクの観察装置では、上記のように、スクリーンマスクが固定部に固定された状態で撮像部によりスクリーンマスクの表面を撮像する際に、スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段を備えることによって、スクリーンマスクは、矯正手段により撓む状態が回避されて撓まない状態が維持されるので、マスクが有する開口部の平面的な形状も歪まない。これにより、撮像部は、歪みが生じていないスクリーンマスクの表面を撮像することができるので、開口部の形状を正確に観察(計測)することができる。
【0009】
上記第1の局面によるスクリーンマスクの観察装置において、好ましくは、矯正手段は、スクリーンマスクの表面のうちの少なくとも撮像部により撮像される領域に生じる撓みを矯正するように構成されている。このように構成すれば、開口部の計測に際して実際に撮像される領域(撮像範囲)に生じうるスクリーンマスクの撓みを確実に防止することができる。
【0010】
上記第1の局面によるスクリーンマスクの観察装置において、好ましくは、矯正手段は、スクリーンマスクの表面のうちの下面および上面の少なくとも一方に接触することにより、スクリーンマスクの撓みを矯正するように構成されている。このように構成すれば、シート状のスクリーンマスクが撓んで表面の平坦性が失われることを容易に防止することができる。特に、矯正手段がスクリーンマスクの下面および上面の両方に接触する場合には、スクリーンマスクがいずれの方向にも容易に撓まなくなるので、スクリーンマスクの平坦性を確実に維持することができる。
【0011】
上記第1の局面によるスクリーンマスクの観察装置において、好ましくは、矯正手段は、スクリーンマスクの表面のうちの下面に面接触した状態で下面を支持することによりスクリーンマスクの下方への撓みを矯正する第1矯正部材を含む。このように構成すれば、固定部に固定されたスクリーンマスクの自重に起因してスクリーンマスクが下方に撓みやすい状態であっても、第1矯正部材がスクリーンマスクの下面と面接触した状態で下面を支持するので、スクリーンマスクが下方に撓むことを第1矯正部材によって容易に防止することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1矯正部材は、スクリーンマスクと固定部との間に配置された状態で、スクリーンマスクの下面を支持することによりスクリーンマスクの下方への撓みを矯正するように構成されている。このように構成すれば、固定部に固定されたスクリーンマスクの下面に対して、第1矯正部材を容易に面接触させることができる。
【0013】
上記矯正手段が第1矯正部材を含む構成において、好ましくは、第1矯正部材は、少なくとも撮像部が有する撮像範囲に対応する部分が透明であり、撮像部は、第1矯正部材を介してスクリーンマスクの下面を下方から撮像するように構成されている。このように構成すれば、スクリーンマスクの下面のうちの第1矯正部材が面接触して撓まない状態となった部分を、透明な第1矯正部材自身を通して確実に撮像することができる。なお、スクリーンマスクを使用して基板に半田を印刷する場合、スクリーンマスクの下方に基板が配置されるので、基板に印刷された半田のサイズは、基板に接するスクリーンマスクの下面での開口サイズに対応する。したがって、撮像部が下方から撮像することによりスクリーンマスクの下面での開口サイズを計測する方が、上面側での開口サイズを計測する場合よりも印刷される半田の形状によりよく対応した計測データを得ることができる。また、スクリーンマスクに対して第1矯正部材および撮像部を同じ側(マスクの下面側)に配置することができるので、スクリーンマスクの上面側のスペースを確保することができる。これにより、観察装置へのスクリーンマスクの固定および取り外し作業を容易に行うことができる。なお、本発明において、撮像部が有する撮像範囲とは、撮像部の視野領域(視野角または画角)に対応する範囲と、撮像部が被写体に沿って走査しながら複数の画像を順次撮像して得られる広範囲の撮像範囲とを含む広い概念である。
【0014】
上記第1の局面によるスクリーンマスクの観察装置において、好ましくは、矯正手段は、スクリーンマスクの表面のうちの上面に面接触した状態で上面を押圧することによりスクリーンマスクの上方への撓みを矯正する第2矯正部材を含む。このように構成すれば、固定部に固定されたスクリーンマスクが上方に反る部分を有していても、第2矯正部材がスクリーンマスクの上面と面接触して上面を下方に押圧するので、スクリーンマスクが上方に撓む(反る)ことを第2矯正部材によって容易に防止することができる。
【0015】
上記矯正手段が第2矯正部材を含む構成において、好ましくは、撮像部は、スクリーンマスクの表面に沿って移動可能に構成されており、第2矯正部材は、撮像部の移動に同期して移動することにより、撮像部により撮像される領域のスクリーンマスクの撓みを矯正するように構成されている。このように構成すれば、第2矯正部材は、撮像部の移動とともに移動しながら、撮像部が実際に撮像する領域を常に撓まない状態に矯正することができる。これにより、撮像部は、常に歪みが生じていないスクリーンマスクの表面を撮像することができる。また、スクリーンマスクを使用して基板に半田を印刷する際には、移動するスキージ(ヘラ部材)でスクリーンマスクの上面を押圧する状態となる。したがって、本発明のスクリーンマスクの観察装置においても、移動する第2矯正部材を用いて同様の状況を再現しながらスクリーンマスクの表面を撮像することができるので、開口部の形状をより正確に計測することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、所定の方向に移動可能なヘッド部をさらに備え、第2矯正部材は、ヘッド部に装着されている。このように構成すれば、ヘッド部の移動機能を利用して、第2矯正部材を撮像部の移動に同期させて容易に移動させることができる。
【0017】
上記矯正手段が第2矯正部材を含む構成において、好ましくは、第2矯正部材は、少なくとも撮像部が有する視野領域に対応するスクリーンマスクの上面の領域を押圧可能な大きさおよび形状を有する。このように構成すれば、第2矯正部材を、撮像部が有する視野領域(画角)に対応する領域に生じるスクリーンマスクの撓みを矯正するための最小限の大きさを有するように構成することができる。これにより、第2矯正部材の大きさおよび形状を簡素化かつ小型化することができる。
【0018】
この発明の第2の局面における印刷装置は、スクリーンマスクを固定する固定部と、スクリーンマスク上に半田を供給する半田供給部と、ヘラ部材が装着され、半田供給部により半田が供給されたスクリーンマスクに対してヘラ部材を当接させた状態で所定の方向に移動可能なヘッド部と、スクリーンマスクを撮像する撮像部と、スクリーンマスクが固定部に固定された状態で撮像部によりスクリーンマスクの表面を撮像する際に、スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段とを備える。
【0019】
この発明の第2の局面による印刷装置では、上記のように、スクリーンマスクが固定部に固定された状態で撮像部によりスクリーンマスクの表面を撮像する際に、スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段を備えることによって、スクリーンマスクは、矯正手段により撓む状態が回避されて撓まない状態が維持されるので、マスク開口部の平面的な形状も歪まない。これにより、この印刷装置では、撮像部が歪みが生じていないスクリーンマスクの表面を撮像することができるので、マスク開口部の形状を正確に観察(計測)する機能を備えた印刷装置を実現することができる。
【0020】
上記第2の局面による印刷装置において、好ましくは、矯正手段は、スクリーンマスクの表面のうちの下面に面接触した状態で下面を支持することによりスクリーンマスクの下方への撓みを矯正する第1矯正部材と、スクリーンマスクの上面に面接触した状態で上面を押圧することによりスクリーンマスクの上方への撓みを矯正する第2矯正部材との少なくとも一方を含む。このように構成すれば、固定部に固定されたスクリーンマスクの自重に起因してスクリーンマスクが下方に撓みやすい状態であっても、第1矯正部材がスクリーンマスクの下面と面接触しながら下面を支持するので、スクリーンマスクが下方に撓むことを第1矯正部材によって容易に防止することができる。また、スクリーンマスクが上方に反る部分を有していても、第2矯正部材がスクリーンマスクの上面と面接触して上面を下方に押圧するので、スクリーンマスクが上方に撓む(反る)ことを第2矯正部材によって容易に防止することができる。さらには、第1矯正部材と第2矯正部材との両方を備える場合には、スクリーンマスクがいずれの方向にも容易に撓まなくなるので、スクリーンマスクの平坦性を確実に維持することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、ヘッド部は、ヘラ部材が装着された状態からヘラ部材を取り外してヘッド部に第2矯正部材を装着することが可能に構成されており、第2矯正部材は、ヘッド部に装着された状態でスクリーンマスクの上面に面接触して上面を押圧することによりスクリーンマスクの上方への撓みを矯正するように構成されている。このように構成すれば、半田印刷時に使用されるヘッド部の機能を有効に利用して、スクリーンマスクの上方への撓み(反り)を矯正することができる。また、第2矯正部材を水平方向に移動させたり、スクリーンマスクを押圧したりする専用の機構を別途設ける必要がないので、既存の印刷装置の構成を有効に利用してスクリーンマスクの撓みを矯正する機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による印刷装置の構成を示した斜視図である。
【図2】図1における印刷装置をX1方向に沿って見た場合の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による印刷装置においてマスクスキャン動作を行う際の構成を示した側面図である。
【図4】本発明の一実施形態による印刷装置においてマスクスキャン動作を行う際の構成を示した側面図である。
【図5】本発明の一実施形態による印刷装置が通常の半田印刷動作を行う際の構成を示した側面図である。
【図6】本発明の一実施形態による印刷装置においてマスクスキャン動作を行う際の構成を示した概略的な斜視図である。
【図7】図1に示した印刷装置の構成を示したブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態の第1変形例による下面側矯正治具の構成を示した斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態の第2変形例による下面側矯正治具および昇降テーブルの構成を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による印刷装置100の構造について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による印刷装置100は、図1および図2に示すように、基台10と、基台10上に設けられ、プリント基板(配線基板)150を搬送する基板搬送部20と、基板搬送部20の上方(Z1側)に設けられ、プリント基板150に対して半田の印刷を行う印刷部30とを備えている。
【0026】
基板搬送部20は、印刷前のプリント基板150の搬入を行う一対のコンベア21と、印刷後のプリント基板150の搬出を行う一対のコンベア22と、コンベア21および22の間に設けられた基板位置決め昇降装置70とを含んでいる。基板位置決め昇降装置70は、プリント基板150を保持した状態のコンベア75を昇降する機能と、プリント基板150をマスクプレート90の下面90aに当接する印刷位置P(図2参照)に配置する機能とを有している。また、コンベア21および22は、基台10上を基板搬送方向(X方向)に延びるように設けられている。なお、マスクプレート90は、本発明の「スクリーンマスク」の一例であり、下面90aは、本発明の「スクリーンマスクの表面」の一例である。
【0027】
また、基板位置決め昇降装置70は、Y軸テーブル71と、X軸テーブル72と、R軸テーブル73と、Z軸テーブル74とを含んでいる。これにより、プリント基板150は、基板搬送方向(X方向)、印刷方向(Y方向)、上下方向(Z方向)および水平面内(X−Y平面)での回転方向(R方向)に自在に移動されるように構成されている。
【0028】
また、図2に示すように、基台10上にはY方向に延びるレール71aが設けられている。また、Y軸テーブル71は、レール71aに対してスライド可能に取り付けられているので、Y軸テーブル71は、図示しないサーボモータおよびボールネジ機構によってレール71a上をY方向に移動可能に構成されている。また、Y軸テーブル71上には、X方向に延びるレール72aが設けられている。そして、X軸テーブル72は、レール72aにスライド可能に取り付けられているので、X軸テーブル72は、図示しないサーボモータおよびボールネジ機構によってY軸テーブル71に対してレール72a上をX方向に移動可能に構成されている。
【0029】
X軸テーブル72上には支持機構73aが設けられている。そして、R軸テーブル73は、支持機構73aにより水平面内で回転可能に支持されているので、R軸テーブル73は、図示しないサーボモータおよびボールネジ機構によってX軸テーブル72上で回転駆動されるように構成されている。また、R軸テーブル73には、Z軸テーブル74に固定されたZ方向に延びる複数のガイド軸74aが挿入されている。そして、Z軸テーブル74は、図示しないサーボモータおよびボールネジ機構74bによってR軸テーブル73に対してZ方向に昇降可能に構成されている。
【0030】
また、Z軸テーブル74上には一方向(X方向)に延びる一対のコンベア75が配置されている。コンベア75は、図1に示すように、Z軸テーブル74が下降した状態で、上面がコンベア21および22と同じ高さ位置で接続される。これにより、コンベア21上をX1方向に移動する印刷前のプリント基板150が、コンベア75まで搬入されるとともに、印刷後のプリント基板150は、コンベア75からコンベア22に移動されて印刷装置100外に搬出することが可能に構成されている。
【0031】
また、Z軸テーブル74には、一対のコンベア75に挟まれた領域に配置されZ方向に昇降可能な昇降テーブル76(図2参照)と、コンベア75上のプリント基板150を一時的に保持するクランプ片77aおよび77bとが設けられている。また、昇降テーブル76の上面(Z1側)には、プリント基板150を下方から支える複数のピン(図示せず)が配置されている。昇降テーブル76は、Z方向に延びるスライド軸76aを介してZ軸テーブル74に対してZ方向にスライド可能に取り付けられているので、昇降テーブル76は、図示しないサーボモータおよびラック・ピニオン機構によってZ方向に昇降可能に構成されている。
【0032】
昇降テーブル76が駆動されることにより、コンベア75上に載置されたプリント基板150が上昇してクランプ片77aおよび77bと同一の高さ位置まで移動される。そして、プリント基板150は、クランプ片77aおよび77bにより保持されるとともに、プリント基板150の下面が図示しないピンにより支持される。また、印刷後には、クランプ片77aおよび77bによる保持が解除された後、昇降テーブル76が下降することにより、印刷済みのプリント基板150は、コンベア75上に戻されて、搬出動作に移行される。なお、プリント基板150がコンベア75上に載置された後は、昇降テーブル76は、搬出入されるプリント基板150とは干渉しない位置までさらに下降される。
【0033】
なお、クランプ片77aはZ軸テーブル74に対して固定的に設けられている一方、クランプ片77bはY方向に移動可能に設けられている。これにより、コンベア75上では、クランプ片77bがプリント基板150のY1側の側端面をY2方向に押圧しながらクランプ片77bをY2方向に移動させることにより、プリント基板150のY2側の側端面がクランプ片77aに当接される。このようにして、クランプ片77aおよび77bにより、プリント基板150が挟み込まれて印刷方向(Y方向)の位置決めが行われるように構成されている。
【0034】
印刷部30は、図1に示すように、半田印刷に用いられるマスクプレート90を支持するマスク支持部31と、マスクプレート90を介してプリント基板150に半田を印刷する印刷ユニット40と、印刷時に印刷ユニット40を印刷方向(Y方向)に駆動する駆動部80とを含んでいる。ここで、マスクプレート90は、約20μm以上約150μm以下の厚みを有する板状(シート状)の部材からなり、複数の開口部91(図3参照)がパターニングされた開口領域92を有している。このようにシート状のマスクプレート90は屈曲性を有するため、マスクプレート90は、周囲が剛性の高い部材からなるフレーム95に固定されている。フレーム95は、最大で約750mm角(縦×横)の大きさを有しており、マスクプレート90のサイズに応じて、フレーム95のサイズも適宜決定される。なお、マスク支持部31は、本発明の「固定部」の一例である。また、マスクプレート90が固定されたフレーム95は、本発明の「スクリーンマスク」の一例である。
【0035】
X方向の両側に設けられたマスク支持部31は、基板位置決め昇降装置70の上方(Z1側)において基台10のフレーム部材11および12を介して固定的に設置されている。また、各々のマスク支持部31は、フレーム95の外縁部を下方(Z2側)から支持する支持板31aと、支持板31a上に載置されたフレーム95の上面を上方から押圧するクランプ片31b(4箇所)とを有している。なお、フレーム95がマスク支持部31を介して固定されることにより、マスクプレート90の下面90aは、印刷位置P(図2参照)に配置されるように構成されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、基板搬送部20と印刷部30との間に、マスクプレート90を観察するためのカメラ15が設けられている。具体的には、印刷部30は、マスク支持部31の下面側に設けられ、Y方向に沿って移動可能に取り付けられたビーム部材16を備えている。また、カメラヘッド部17が、ビーム部材16に対してX方向(図1参照)に移動可能に取り付けられている。そして、カメラ15は、レンズを上向き(Z1方向)の状態にしてカメラヘッド部17のY1側の側面に固定されている。これにより、カメラ15は、コンベア75および昇降テーブル76がカメラ15よりも下方(Z2側)に位置した状態で、X−Y平面内の任意の位置に移動することが可能に構成されている。
【0037】
印刷装置100では、プリント基板150への半田印刷機能に加えて、マスクプレート90の下面90aを撮像して、複数の開口部91を有する開口領域92の画像データを得ることが可能に構成されている。この下面90aの観察は、マスクスキャン動作と呼ばれる。通常、マスクプレート90が有する開口部91(図3参照)の大きさや形成位置などを含む元データ(ガーバデータ)がマスク製造元より提供されるので、この元データに基づいて印刷後の検査が行われる。一方、マスクの元データが製造元より供給されない場合には、マスクプレート90を直接観察して開口部91の大きさや形成位置を取得するマスクスキャン動作を行う必要がある。したがって、カメラ15は、このマスクスキャン動作を行う場合に使用される。そして、このマスクスキャン動作により取得した開口部91の大きさや形成位置などのデータに基づいて、半田印刷後の検査が行われる。なお、カメラ15は、本発明の「撮像部」の一例であり、印刷装置100は、本発明の「スクリーンマスクの観察装置」の一例である。
【0038】
また、本実施形態では、図3に示すように、一対のマスク支持部31は、透明な材料からなる平板状の下面側矯正治具110が取り付け可能に構成されている。これにより、マスクスキャン動作を行う際には、下面側矯正治具110の上面110a上にマスクプレート90を載置した状態で下面90aを撮像することが可能に構成されている。
【0039】
詳細に説明すると、下面側矯正治具110は、約2mm以上約5mm以下の厚みを有するガラス板からなり、X方向に対向する一対のマスク支持部31間に架橋された状態でマスク支持部31上に固定されている。下面側矯正治具110は、マスク支持部31上に固定された状態では、上面110aが印刷装置100のX−Y平面に対して平行に配置されている。ここで、各々の支持板31aの上面には下面側矯正治具110の厚みと略同じ深さを有する段差部31cがY方向(紙面に垂直な方向)に延びて形成されており、下面側矯正治具110のX方向の端部が各々の段差部31cに嵌め込まれている。したがって、支持板31aの上面と、下面側矯正治具110の平坦な上面110aとが同一面上に揃えられている。下面側矯正治具110には、窓ガラスなどに使用されるフロートガラス(透明ガラス)を用いてもよいし、合成石英ガラスを用いてもよい。
【0040】
また、図6に示すように、下面側矯正治具110の平面積は、マスクプレート90の開口領域92が有する平面積以上の大きさであればよい。ただし、ガラス板の厚み(Z方向)に応じて下面側矯正治具110の最大サイズが規格化されている。より大きなサイズで下面側矯正治具110を構成する場合、より厚いガラス板を適用するのが好ましい。なお、下面側矯正治具110は、本発明の「矯正手段」および「第1矯正部材」の一例である。また、開口領域92は、本発明の「撮像部により撮像される領域」の一例である。
【0041】
これにより、図3に示すように、シート状のマスクプレート90は、下面90aが下面側矯正治具110の上面110aに対して面接触した状態で下面側矯正治具110上に載置されるので、マスクスキャン動作中は、マスクプレート90の下方(Z2方向)への撓みが矯正されて撓まない状態が維持されるように構成されている。なお、図5に示す通常の半田印刷時には、下面側矯正治具110は、マスク支持部31から取り外されている。
【0042】
また、図1および図2に示すように、印刷ユニット40は、マスクプレート90の上面90bに対して半田を押圧しながら摺動するスキージユニット50と、マスクプレート90の上面90b上に半田を供給する半田供給部60と、スキージユニット50および半田供給部60を支持するように構成され、印刷方向(Y方向)に往復移動可能な支持部材41とを含んでいる。スキージユニット50は、マスクプレート90に形成された開口部91を介して半田をプリント基板150上に押し出す機能を有している。これにより、半田がプリント基板150に印刷される。
【0043】
スキージユニット50は、図5に示すように、支持部材41のY1側の側面に設けられている。また、スキージユニット50は、通常の印刷時に昇降テーブル76により支持されたプリント基板150がマスクプレート90の下面90aに接した状態でマスクプレート90の上面90bを摺動するスキージ51と、スキージ51を上下方向に移動させるとともに、印刷時に下方への印圧荷重をスキージ51に付加する昇降機構部52と、X方向に延びる回動軸53bを中心にスキージ51を回動させる回動機構部53とを含んでいる。
【0044】
印刷時には、昇降機構部52によりスキージ51をZ2方向に下降させてマスクプレート90の上面90bに当接させるとともに、印刷方向を転換する場合には、昇降機構部52によりスキージ51を一時的に上昇させた状態でスキージ51が回動機構部53により回動される。回動機構部53は、Y1方向への印刷時には半田押圧面51aがY1側を向くようにスキージ51を回動し、Y2方向への印刷時には半田押圧面51aがY2側を向くようにスキージ51を回動するように構成されている。回動機構部53によってスキージ51の傾斜角度を交互に切り替えることにより、1つのスキージ51によりY1方向の印刷動作とY2方向の印刷動作とが行われる。なお、スキージ51および昇降機構部52は、それぞれ、本発明の「ヘラ部材」および「ヘッド部」の一例である。
【0045】
昇降機構部52は、支持部材41の側面に固定された固定部52aと、固定部52aのX方向の側方に設けられたサーボモータ52b(図1参照)と、ボールネジ軸52cと、サーボモータ52bのモータ軸の回転をボールネジ軸52cに伝達するベルト52dとを含んでいる。ボールネジ軸52cは回転可能に固定部52aに固定されている。また、固定部52aの側面には固定部52aに対して上下方向に移動可能な可動部52eが設けられている。可動部52eはボールネジ軸52cと螺合しており、サーボモータ52bによりベルト52dを介してボールネジ軸52cを回転させることによって、可動部52eを上下方向に移動させることが可能である。なお、可動部52eは、固定部52aに図示しない圧縮コイルばねを介して取り付けられており、サーボモータ52bの駆動力は、ベルト52d、ボールネジ軸52cおよび圧縮コイルばねを介して可動部52eに伝えられる。また、サーボモータ52bの駆動力は、昇降テーブル76によりプリント基板150がマスクプレート90の下面90aに当接した状態において、スキージ51が上方からマスクプレート90の上面90bを押圧する際の荷重となるように構成されている。
【0046】
回動機構部53は、昇降機構部52の可動部52e内に設けられたサーボモータ53aと、スキージ51が固定される回動軸53bと、回動軸53bが収納されたハウジング53cとを含んでいる。サーボモータ53aのモータ軸の回転は、図示しない複数のギアにより回動軸53bに伝達されるように構成されている。
【0047】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、昇降機構部52は、回動機構部53にスキージ51(図5参照)が装着された状態からスキージ51を取り外して上面側矯正治具120を装着することが可能に構成されている。これにより、通常の半田印刷時とは異なるマスクスキャン動作では、上述した下面側矯正治具110に加えて上面側矯正治具120を使用してマスクプレート90の撓みをさらに矯正することが可能に構成されている。なお、上面側矯正治具120は、本発明の「矯正手段」および「第2矯正部材」の一例である。
【0048】
詳細に説明すると、上面側矯正治具120は、図4に示すように、X1方向に見た断面が逆さT字形状を有するステンレス製の部材からなり、回動機構部53のハウジング53cに下方から取り付けられる取付部120aと、取付部120aの下端に接続されX方向に短冊状に延びる押圧部120bとを含んでいる。押圧部120bは、約5mm程度の厚みを有するとともに、平坦な下面120cを有している。また、上面側矯正治具120は、押圧部120bを常に真下(Z2方向)に向けることにより、下面120cがマスクプレート90の上面90bに対して略平行となる状態でハウジング53cに取り付けられており回動しない。また、押圧部120bの大きさおよび形状は、カメラ15が有する視野領域(視野角)に対応するマスクプレート90の上面90bの領域を押圧可能な大きさおよび形状を有していればよい。この場合、Y方向における押圧部120bの幅が、カメラ15のY方向に沿った視野領域以上の長さが確保されていればよい。
【0049】
これにより、マスクプレート90は、上面90bが上面側矯正治具120の下面120cに対して面接触した状態で、上面側矯正治具120の押圧部120bにより下方に押圧されるので、撮像中は、マスクプレート90の上方(Z1方向)への反り(撓み)が矯正されて反らない状態が維持されるように構成されている。
【0050】
また、本実施形態では、カメラ15がX−Y平面内を移動する際、スキージユニット50は、カメラ15のY方向の移動に同期して、上面側矯正治具120が固定された昇降機構部52をY方向に移動させることが可能に構成されている。したがって、X−Y平面におけるカメラ15の光軸15a上に、常に上面側矯正治具120の押圧部120bが配置された状態で、上面90bが押圧部120bにより押圧されるように構成されている。また、撮像と共に上面側矯正治具120がY方向に移動されるので、マスクプレート90に対して通常の印刷時と同様の状況を再現しながらマスクスキャンが行われる。なお、押圧状態での上面側矯正治具120のY方向への移動を考慮して、押圧部120bのY方向の両端部に、面取り加工が施されているのが好ましい。なお、X方向へのスキャニングについては、図6に示すように、カメラ15がX方向に延びる押圧部120bに沿ってX方向に移動して、押圧部120bに押圧された領域の下面90aの撮像を順次行う。
【0051】
また、図1および図2に示すように、半田供給部60は、半田が収容されたシリンジ61と、シリンジ61を支持するとともに支持部材41のY1側の側面に固定されたアーム62とを含んでいる。アーム62により支持されたシリンジ61は、上面側矯正治具120のX方向の略中央部に対してY1側に所定の間隔を隔てて配置されている。また、シリンジ61の下部には半田を吐出する供給口61a(図2参照)が設けられている。シリンジ61にはピストン(図示せず)が内蔵されているとともに、支持部材41に取り付けられた吐出バルブ63を用いてシリンジ61内のピストンに対して加圧することによって供給口61aから半田が吐出されるように構成されている。また、シリンジ61の側方には静電容量型のセンサ64が設けられている。このセンサ64によりシリンジ61内の半田が所定量以下であることを検知することが可能である。
【0052】
駆動部80は、図1に示すように、支持部材41をY方向に移動可能に支持する一対のガイドレール81と、Y方向に延びるボールネジ軸82と、ボールネジ軸82を回転させるサーボモータ83とを含んでいる。また、支持部材41にはボールネジ軸82が螺合されるボールナット42が設けられている。支持部材41は、サーボモータ83によりボールネジ軸82が回転されることによってY方向に移動するように構成されている。また、スキージユニット50と半田供給部60とが支持部材41に支持された状態で支持部材41を駆動部80により駆動することによって、スキージユニット50の上面側矯正治具120と半田供給部60のシリンジ61とが一体的に駆動されるように構成されている。
【0053】
また、図7に示すように、この印刷装置100には、CPUと基板回路とにより構成された制御部85が内蔵されている。制御部85は、駆動部80に設けられたサーボモータ83、スキージ51または上面側矯正治具120(図4参照)を昇降させるためのサーボモータ52b、スキージ51を回動させるためのサーボモータ53a、半田を吐出するための吐出バルブ63などの駆動制御を行うように構成されている。また、制御部85は、マスクスキャン動作時には、カメラ15(図6参照)をX−Y平面に沿って移動させる制御を行うように構成されている。この際、カメラ15の位置制御とともに、駆動部80およびサーボモータ52bを制御して上面側矯正治具120(図6参照)の位置をカメラ15の動きに追従させるように構成されている。また、印刷装置100の外部には表示部101が設けられており、印刷装置100の動作状態などが表示されるように構成されている。このようにして、印刷装置100は構成されている。
【0054】
本実施形態では、上記のように、フレーム95がマスク支持部31(支持板31a)に固定された状態でカメラ15によりマスクプレート90の下面90aを撮像する際に、マスクプレート90の撓みを矯正する下面側矯正治具110および上面側矯正治具120を備えることによって、マスクプレート90は、下面側矯正治具110と上面側矯正治具120とによって撓む状態が回避されて撓まない状態が維持されるので、マスクが有する開口部91の平面的な形状も歪まない。これにより、カメラ15は、歪みが生じていないマスクプレート90の下面90aを撮像することができるので、開口部91の形状を正確に観察(計測)することができる。
【0055】
また、本実施形態では、ガラス板からなる下面側矯正治具110は、マスクプレート90の下面90aのうちの少なくともカメラ15により撮像される開口領域92に生じる撓みを矯正するように構成されている。これにより、開口部91の計測に際して実際に撮像される開口領域92に生じうるマスクプレート90の撓みを確実に防止することができる。
【0056】
また、本実施形態では、下面側矯正治具110は、マスクプレート90の下面90aに面接触した状態で下面90aを支持することによりマスクプレート90の下方への撓みを矯正するように構成されている。これにより、マスク支持部31(支持板31a)に固定されたマスクプレート90の自重に起因してマスクプレート90が下方に撓みやすい状態であっても、下面側矯正治具110がマスクプレート90の下面90aと面接触した状態で下面90aを支持するので、マスクプレート90が下方に撓むことを下面側矯正治具110によって容易に防止することができる。
【0057】
また、本実施形態では、下面側矯正治具110は、マスクプレート90とマスク支持部31との間に配置された状態で、マスクプレート90の下面90aを支持することによりマスクプレート90の下方への撓みを矯正するように構成されている。これにより、マスク支持部31に固定されたマスクプレート90の下面90aに対して、下面側矯正治具110の平坦な上面110aを容易に面接触させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、下面側矯正治具110は、少なくともカメラ15が有する撮像範囲に対応する部分が透明であり、カメラ15は、下面側矯正治具110を介してマスクプレート90の下面90aを下方から撮像するように構成されている。これにより、下面90aのうちの下面側矯正治具110が面接触して撓まない状態となった部分を、透明な下面側矯正治具110自身を通して確実に撮像することができる。なお、半田印刷時には、マスクプレート90の下方にプリント基板150が配置されるので、プリント基板150に印刷された半田のサイズは、プリント基板150に接するマスクプレート90の下面90aでの開口部91のサイズに対応する。したがって、カメラ15が下方から撮像することにより下面90aでの開口サイズを計測する方が、上面90b側での開口サイズを計測する場合よりも印刷される半田の形状によりよく対応した計測データを得ることができる。また、マスクプレート90に対して下面側矯正治具110およびカメラ15を同じ側(マスクの下面90aの下方)に配置することができるので、マスクプレート90の上面90b側のスペースを確保することができる。これにより、印刷装置100へのマスクプレート90の固定および取り外し作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では、上面側矯正治具120は、マスクプレート90の上面90bに面接触した状態で上面90bを押圧することによりマスクプレート90の上方への撓みを矯正するように構成されている。これにより、マスク支持部31に固定されたマスクプレート90が上方に反る部分を有していても、上面側矯正治具120がマスクプレート90の上面90bと面接触して上面90bを下方に押圧するので、マスクプレート90が上方に撓む(反る)ことを上面側矯正治具120によって容易に防止することができる。
【0060】
また、本実施形態では、カメラ15は、マスクプレート90の下面90aに沿って移動可能に構成されており、上面側矯正治具120は、カメラ15の移動に同期して移動することにより、カメラ15により撮像される領域のマスクプレート90の撓みを矯正するように構成されている。これにより、上面側矯正治具120は、カメラ15の移動とともに移動しながら、カメラ15が実際に撮像する領域を常に撓まない状態に矯正することができる。これにより、カメラ15は、常に歪みが生じていないマスクプレート90の下面90aを撮像することができる。また、マスクプレート90を使用してプリント基板150に半田を印刷する際には、移動するスキージ51で上面90bを押圧する状態となる。したがって、マスクスキャン動作の際も、Y方向に移動する上面側矯正治具120を用いて同様の状況を再現しながらマスクプレート90の下面90aを撮像することができるので、開口部91の形状をより正確に捉えることができる。
【0061】
また、本実施形態では、上面側矯正治具120は、少なくともカメラ15が有する視野領域に対応するマスクプレート90の上面90bの領域を押圧可能な大きさおよび形状を有する。これにより、上面側矯正治具120では、カメラ15が有する視野領域(画角)に対応する領域に生じるマスクプレート90の撓みを矯正するための最小限の平面積を有するように押圧部120bを構成することができる。したがって、上面側矯正治具120の大きさおよび形状を簡素化かつ小型化することができる。
【0062】
また、本実施形態では、昇降機構部52は、スキージ51が装着された状態からスキージ51を取り外して回動機構部53のハウジング53cに上面側矯正治具120を装着することが可能に構成されている。そして、上面側矯正治具120がハウジング53cに装着された状態でマスクプレート90の上面90bに面接触して上面90bを押圧することによりマスクプレート90の上方への撓みを矯正するように構成されている。これにより、半田印刷時に使用される昇降機構部52の機能を有効に利用して、マスクプレート90の上方への撓み(反り)を矯正することができる。また、昇降機構部52がスキージユニット50に設けられているので、上面側矯正治具120を水平方向(Y方向)に移動させたり、マスクプレート90を押圧したりする専用の機構を別途設ける必要がないので、既存の印刷装置100の構成を有効に利用してマスクプレート90の撓みを矯正する機能を得ることができる。
【0063】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
たとえば、上記実施形態では、マスクプレート90と略同じ大きさ(平面積)を有する下面側矯正治具110を全て透明なガラス板により構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、下面側矯正治具は、実際の観察範囲となるマスクプレート90の開口領域92に対応する部分が透明であればよく、これ以外の部分は透明でなくてもよい。すなわち、図8に示す第1変形例のような下面側矯正治具を用いてもよい。
【0065】
図8において、下面側矯正治具115は、開口115bを有する枠状のフレーム部115aと、開口115bを塞ぐ窓部115cとを備えている。窓部115cにガラスなどの透明な材料を用いるとともに、フレーム部115aにはガラスよりも安価な部材を用いることが可能である。窓部115cの開口115bへの取付方法としては、接着剤を用いて開口115bの内側面と窓部115cの外周面とを接合してもよいし、図3に示した下面側矯正治具110のマスク支持部31への取付方法を適用して、窓部115cを段差加工が施された開口115bに嵌め込むようにして固定してもよい。また、カメラ15によりマスクプレート90の開口部91(図3参照)と開口部91以外の部分とが判別可能な撮像データが取得可能であるのならば、窓部115cは、所定の色を有する色付きガラス板であってもよい。なお、下面側矯正治具115は、本発明の「矯正手段」および「第1矯正部材」の一例である。
【0066】
また、上記実施形態では、マスクプレート90のマスクスキャン動作を行う際、マスクプレート90の開口領域92よりも広い平面積を有する下面側矯正治具110をマスク支持部31上に固定して下方からカメラ15による下面90aの撮像を行うように構成した例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図9に示す第2変形例のように構成してもよい。
【0067】
具体的には、下面側矯正治具110よりも小さな平面積を有するガラス製の下面側矯正治具116を昇降テーブル76上に固定し、昇降テーブル76の昇降機能を利用して、下面側矯正治具116の上面をマスクプレート90の下面90a(図3参照)に面接触させてもよい。この場合、昇降テーブル76を開口76gを有する枠体として構成するとともに、平面的に見て、開口76g内に露出する位置にカメラ15を上向きに配置すればよい。たとえば、開口76gの真下(紙面奥側)のZ軸テーブル74上にカメラ15を固定することが可能である。そして、基板位置決め昇降装置70が有するX軸テーブル72およびY軸テーブル71(図2参照)の移動機能を利用して、カメラ15と下面側矯正治具116とをX−Y平面内で一体的に移動させることにより、マスクプレート90の開口領域92をスキャニングすることが可能である。なお、X−Y平面内での移動時には、昇降テーブル76を若干下げて下面側矯正治具116を下面90a(図3参照)から一時的に離間させるのが好ましい。なお、下面側矯正治具116は、本発明の「矯正手段」および「第1矯正部材」の一例である。この第2変形例のように構成すれば、下面側矯正治具116は、撮像される領域(開口領域92)のみのマスクの撓みを矯正することができるので、下面側矯正治具116をより小型化することができる。また、基板位置決め昇降装置70を用いて下面側矯正治具116をマスクプレート90の下面90aに押し当てることができるので、印刷装置100が有する機構を有効に利用して、撮像時のマスクの撓みを矯正することができる。
【0068】
また、上記第2変形例では、下面側矯正治具116の全体がガラス製である例について示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、上記第2変形例における下面側矯正治具116を、上記第1変形例(図8参照)と同様の趣旨で構成してもよい。下面側矯正治具116のうち、少なくともカメラ15が有する視野領域に対応する部分が透明であればよい。この場合、下面側矯正治具116自体がX−Y平面内で移動可能であり、カメラ15の視野領域(画角)と下面側矯正治具116の透明部分との位置関係は変化しない。したがって、下面側矯正治具116の透明部分の大きさ(平面積)を、撮像可能な最小限のサイズにまで小さくすることができる。
【0069】
また、上記実施形態では、上面側矯正治具120の押圧部120bが平坦な下面120cを有する例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、下面120cに、Y方向に延びるとともにX方向に複数並べられたストライプ状(細長状)の溝部を形成してもよい。これにより、下面120cの溝部とは反対側の凸状の頂面のみをマスクプレート90の上面90bに接触させながら上面側矯正治具120をY方向に移動させることができる。押圧により撓みを矯正しつつ、完全な平坦面からなる下面120cと上面90bとが接触する場合よりも摩擦抵抗を低減させた状態で上面側矯正治具120を容易に移動させることができる。また、摺動に伴う上面90bへのキズ発生なども抑制することができる。あるいは、下面120c側にエンボス加工を施してもよい。摩擦抵抗を低減しつつ、マスクプレート90の上面90bを、複数の島状の凸部で押圧することが可能である。
【0070】
また、上記実施形態では、ステンレス製の上面側矯正治具120を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、上面側矯正治具120をウレタン樹脂やフッ素系樹脂などの樹脂材料を用いて形成してもよい。特に、フッ素系樹脂は他の部材(上面90b)との接触時に摺動性を発揮する。
【0071】
また、上記実施形態では、下面側矯正治具110および上面側矯正治具120を用いてマスクプレート90を上下から挟み込んで撓みを矯正した状態でマスクスキャン動作を行わせる例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、下面側矯正治具110のみを用いて撓みを矯正した状態で下面90aの観察を行ってもよい。あるいは、上面側矯正治具120のみを用いて撓み(反り)を矯正した状態で下面90aの観察を行ってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、カメラ15によってマスクプレート90の下面90a(プリント面)を下面側矯正治具110を介して撮像した例について示したが、本発明はこれに限られない。カメラをマスクプレート90の上方に配置して、マスクプレート90の上面90b(スキージ面)を撮像するように構成してもよい。この場合、上面側矯正治具120は不要となるが、下面側矯正治具110によりマスクプレート90の撓みが矯正されているので、開口部91の正確な形状データを得ることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、印刷装置100が有する諸機能を利用するとともに印刷装置100に下面側矯正治具110、上面側矯正治具120およびカメラ15を組み込んでマスクプレート90のマスクスキャン動作を担わせる例について示したが、本発明はこれに限られない。スクリーンマスク90のスキャン動作を行う専用の観察装置に、本発明を適用してもよい。すなわち、マスクプレート90を固定する固定部と、マスクプレート90を撮像するカメラ15と、マスクプレート90が固定部に固定された状態でマスクプレート90の下面90aを撮像する際にマスクの撓みを矯正する矯正手段(矯正治具)とを備えたスクリーンマスクの観察装置を、印刷装置100とは別に単体で構成してもよい。印刷装置におけるマスクスキャン動作は、印刷動作と比較した場合にもその使用頻度が低い傾向にある。したがって、上記構成を備えた専用の観察装置を実現することにより、印刷装置への矯正治具の着脱作業などが省かれて、オペレータの負担が軽減される。
【符号の説明】
【0074】
15 カメラ(撮像部)
31 マスク支持部(固定部)
51 スキージ(ヘラ部材)
52 昇降機構部(ヘッド部)
60 半田供給部
90 マスクプレート(スクリーンマスク)
90a 下面(スクリーンマスクの表面)
90b 上面
92 開口領域(撮像部により撮像される領域)
95 フレーム(スクリーンマスク)
100 印刷装置(スクリーンマスクの観察装置)
110、115、116 下面側矯正治具(矯正手段、第1矯正部材)
120 上面側矯正治具(矯正手段、第2矯正部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンマスクを固定する固定部と、
前記スクリーンマスクを撮像する撮像部と、
前記スクリーンマスクが前記固定部に固定された状態で前記撮像部により前記スクリーンマスクの表面を撮像する際に、前記スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段とを備える、スクリーンマスクの観察装置。
【請求項2】
前記矯正手段は、前記スクリーンマスクの前記表面のうちの少なくとも前記撮像部により撮像される領域に生じる撓みを矯正するように構成されている、請求項1に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項3】
前記矯正手段は、前記スクリーンマスクの前記表面のうちの下面および上面の少なくとも一方に接触することにより、前記スクリーンマスクの撓みを矯正するように構成されている、請求項1または2に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項4】
前記矯正手段は、前記スクリーンマスクの前記表面のうちの下面に面接触した状態で前記下面を支持することにより前記スクリーンマスクの下方への撓みを矯正する第1矯正部材を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項5】
前記第1矯正部材は、前記スクリーンマスクと前記固定部との間に配置された状態で、前記スクリーンマスクの前記下面を支持することにより前記スクリーンマスクの下方への撓みを矯正するように構成されている、請求項4に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項6】
前記第1矯正部材は、少なくとも前記撮像部が有する撮像範囲に対応する部分が透明であり、
前記撮像部は、前記第1矯正部材を介して前記スクリーンマスクの前記下面を下方から撮像するように構成されている、請求項4または5に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項7】
前記矯正手段は、前記スクリーンマスクの前記表面のうちの上面に面接触した状態で前記上面を押圧することにより前記スクリーンマスクの上方への撓みを矯正する第2矯正部材を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項8】
前記撮像部は、前記スクリーンマスクの前記表面に沿って移動可能に構成されており、
前記第2矯正部材は、前記撮像部の移動に同期して移動することにより、前記撮像部により撮像される領域の前記スクリーンマスクの撓みを矯正するように構成されている、請求項7に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項9】
所定の方向に移動可能なヘッド部をさらに備え、
前記第2矯正部材は、前記ヘッド部に装着されている、請求項8に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項10】
前記第2矯正部材は、少なくとも前記撮像部が有する視野領域に対応する前記スクリーンマスクの前記上面の領域を押圧可能な大きさおよび形状を有する、請求項7〜9のいずれか1項に記載のスクリーンマスクの観察装置。
【請求項11】
スクリーンマスクを固定する固定部と、
前記スクリーンマスク上に半田を供給する半田供給部と、
ヘラ部材が装着され、前記半田供給部により半田が供給された前記スクリーンマスクに対して前記ヘラ部材を当接させた状態で所定の方向に移動可能なヘッド部と、
前記スクリーンマスクを撮像する撮像部と、
前記スクリーンマスクが前記固定部に固定された状態で前記撮像部により前記スクリーンマスクの表面を撮像する際に、前記スクリーンマスクの撓みを矯正する矯正手段とを備える、印刷装置。
【請求項12】
前記矯正手段は、前記スクリーンマスクの前記表面のうちの下面に面接触した状態で前記下面を支持することにより前記スクリーンマスクの下方への撓みを矯正する第1矯正部材と、前記スクリーンマスクの上面に面接触した状態で前記上面を押圧することにより前記スクリーンマスクの上方への撓みを矯正する第2矯正部材との少なくとも一方を含む、請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記ヘッド部は、前記ヘラ部材が装着された状態から前記ヘラ部材を取り外して前記ヘッド部に前記第2矯正部材を装着することが可能に構成されており、
前記第2矯正部材は、前記ヘッド部に装着された状態で前記スクリーンマスクの前記上面に面接触して前記上面を押圧することにより前記スクリーンマスクの上方への撓みを矯正するように構成されている、請求項12に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−101406(P2012−101406A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250622(P2010−250622)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】