説明

スクリーン及びスクリーン印刷機

【課題】基板上面に凹凸があっても、その凹部及び凸部上への塗布剤の塗布作業の生産効率の向上を図ること。
【解決手段】印刷ヘッド4はスクリーン支持手段に支持されたスクリーン3上に下降してスクリーン3を上方から押圧して、支持ベース2を上昇させてスクリーン3の平板3Aの下面にその下面に凹凸を有するプリント基板Pの凸面P1上面を当接させる。このとき、間隔L1より間隔L2を僅か長くしているので、スクリーン3の凸板3Bの下面とプリント基板Pの凹面P2上面との間には、僅かな間隔L3が生じることとなる。そして、スキージ1の移動により印刷する際には、初めに前記半田ペーストHPはペースト初期接触面1Bに接触してスクリーン3の各印刷パターン孔内に挿入され、更に前記凹部1Aの内部に半田ペーストHPを溜め込みながら、且つローリングさせながらプリント基板P上に印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にスキージを移動させることにより塗布剤を塗布するためのスクリーン及びこのスクリーンを備えたスクリーン印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスクリーン印刷機は、例えば特許文献1などに開示されている。また、図6に示すように、支持ベース2により支持される基板としてのプリント基板Pの表面(印刷面側)に凹凸がある場合に、このプリント基板Pの凸面P1上にはスクリーンを介して半田ペーストHPをスキージを移動させることにより塗布すると共に、前記プリント基板Pの凹面P2上には先端部の吐出穴を介して塗布ノズル50により前記半田ペーストHPを塗布する技術が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−211108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スクリーンを利用する刷り込み方式と塗布ノズルを利用するディスペンサ方式の併用方式で、高価なものとなるばかりか、特に後者のディスペンサ方式の場合には塗布位置毎に塗布ノズルにより塗布するため、生産時間が長くなり、塗布位置が多数の場合には一層生産時間が長くなるという問題が起こる。
【0005】
そこで本発明は、基板上面に凹凸があっても、その凹部及び凸部上への塗布剤の塗布作業の生産効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このためスクリーンに係る第1の発明は、基板上にスキージを移動させることにより塗布剤を塗布するためのスクリーンにおいて、前記基板上面の凹凸形状に合わせて、その下面を凹凸形状に形成したことを特徴とする。
【0007】
スクリーンに係る第2の発明は、基板上にスキージを移動させることにより塗布剤を塗布するためのスクリーンにおいて、前記基板上面の凹部に合わせて、その下面を凸部に形成したことを特徴とする。
【0008】
第3のスクリーン印刷機に係る発明は、第1又は第2の発明に係るスクリーンを備えたことを特徴とする。
【0009】
第4のスクリーン印刷機に係る発明は、第1又は第2の発明に係るスクリーンに前記スキージを押し当てたときに、このスキージと接触する位置よりも印刷時の移動方向に対して前方に前記塗布剤が入り込む凹部を前記スキージに形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、基板上面に凹凸があっても、その凹部及び凸部上への塗布剤の塗布作業の生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】スクリーンにスキージを押し当てた状態のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【図2】スクリーンにスキージを押し当てた状態でプリント基板を支持している支持ベースを上昇させた状態のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【図3】スキージを移動させてプリント基板上の印刷し終えた状態のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【図4】印刷をし終えて支持ベースを下降させた状態のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【図5】第2の実施形態のスクリーンにスキージを押し当てた状態のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【図6】従来のスクリーン印刷機の要部の簡略縦側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、基板としてのプリント基板P上(詳細にはプリント基板Pの電極パッド上)に塗布剤である半田ペーストHPをスキージ1を移動させることにより塗布するスクリーン印刷機について、図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0013】
先ず、前記プリント基板Pは、基板支持装置を構成する支持ベース2により支持される裏面(被支持面)は平面であるが、表面(印刷面側)に凹凸があり、周囲に位置する凸面P1と中間位置に位置する凹面P2が形成されている。そして、前記プリント基板Pの前記凸面P1及び凹面P2上に、半田ペーストHPが印刷される。
【0014】
前記スクリーン印刷機は、基台上に設置され支持ベース2を備えた基板支持装置と、この基板支持装置の上方に配置されたスクリーン支持手段と、前記基板支持装置とスクリーン支持手段の間に配置され前記基板支持装置によって支持されたプリント基板Pに付された基板認識マークを撮像する第1撮像手段と、前記スクリーン支持手段に支持されたスクリーン3に付されたスクリーン認識マークを撮像する第2撮像手段と、スクリーン3の上方に配置された印刷ヘッド4等を備えている。
【0015】
前記基板支持装置は、前記支持ベース2をX方向移動駆動機構、Y方向移動駆動機構によりXY方向(平面方向)に、また回転駆動機構により回転方向に、更に上下方向移動機構によりZ方向(上下方向)に移動できる構成である。
【0016】
前記印刷ヘッド4は、下端部にスキージ1が取り付けられており、Y方向移動機構によってY軸方向(スクリーン印刷機の前後方向)に移動すると共に垂直移動機構によってZ軸方向(上下方向)に移動する。そして、印刷ヘッド4が図1の右方向へ移動する際には、印刷ヘッド4が下降してスキージ1が前記スクリーン支持手段により支持されたスクリーン3上を摺動し、印刷動作が行われる。
【0017】
前記スクリーン3は、その上面は水平面であるが、下面は前記プリント基板Pの上面に倣って形成されている。即ち、平面形状の平板3Aとこの平板3Aの下面に貼り合わされた凸板3Bとから構成された前記スクリーン3の下面形状は、前記プリント基板Pの上面形状に合わせて凹凸が形成される。即ち、前記凸板3Bの下面はスクリーン3下面の凸面を形成し、前記凸板3Bが貼り合わされていない平板3Aの下面は同じくスクリーン3下面の凹面を形成して、このスクリーン3下面は前記プリント基板Pの上面の凹凸に倣って凸凹に形成される。
【0018】
そして、前記平板3Aに前記凸板3Bを貼り合わした状態において、穴加工して、前記平板3Aに印刷パターン孔3C1を、また前記凸板3Bに印刷パターン孔3Dとを形成する。従って、前記凸板3Bが貼り合わされていない平板3Aの印刷パターン孔3C2の深さより、前記凸板3Bが貼り合わされた部分の印刷パターン孔の深さ(印刷パターン孔3C1の深さと3Dの深さとの合計の深さ)がより深く構成される。
【0019】
この場合、前記スクリーン支持手段にスクリーン3が支持され、且つプリント基板Pを支持している支持ベース2が下降している状態において、支持されたスクリーン3の凸板3Bが貼り合わされていない平板3Aの下面とプリント基板Pの凸面P1上面との間隔L1と、同じく支持されたスクリーン3の平板3Aに貼り合わされた凸板3Bの下面とプリント基板Pの凹面P2上面との間隔L2とが同寸法とするか又は間隔L1より間隔L2を僅か長くなるように形成する。
【0020】
即ち、印刷を行うべくプリント基板Pを支持している支持ベース2を上昇させた際に、前者のような前記間隔L1とL2とを同じ寸法に形成すると、スクリーン3の平板3Aの下面とプリント基板Pの凸面P1上面とが当接すると共に前記スクリーン3の凸板3Bの下面とプリント基板Pの凹面P2上面とが当接する。また、後者のような間隔L1より間隔L2を僅か長くすると、スクリーン3の平板3Aの下面とプリント基板Pの凸面P1上面とが当接するが前記スクリーン3の凸板3Bの下面とプリント基板Pの凹面P2上面との間には、僅かな間隔L3が生じることとなる(図2参照)。
【0021】
前者のように、前記間隔L1とL2とを同じ寸法に形成することは、製作を現実的に行うことは困難であり、前記間隔L1とL2とを同じ寸法にしようとして誤って間隔L1が間隔L2より僅か長くなるように製作されると、スキージ1による塗布圧(印刷パターン孔の下面出口より吐出される半田ペーストHPの圧力)は印刷パターン孔の深さが浅い方が深い方より大きいので、塗布圧はスクリーン3の平板3Aの方が凸板3Bより大きく、特に印刷パターン孔3C1の深さと3Dの深さとの合計の深さが相当長ある場合には、印刷パターン孔3Dよりも印刷パターン孔3C2からより多くの半田ペーストHPが、しかも印刷パターン孔3Dの開口出口より横方向に漏れ広がってプリント基板P上に塗布されることとなって、好ましくないからである。
【0022】
後者のようにすると、間隔L1より間隔L2を僅かに長くしても、スキージ1による塗布圧はスクリーン3の凸板3Bの方が平板3Aより小さいので、特に印刷パターン孔3C1の深さと3Dの深さとの合計の深さが相当長ある場合には、印刷パターン孔3Dを介する半田ペーストHPの塗布量と、印刷パターン孔3C1及び3C2を介する半田ペーストHPの塗布量とが、塗布された単位面積当たりで印刷パターン孔3C1、3C2を介する方が少ないものの、前者の場合よりは同等量に近づき、しかも印刷パターン孔3Dの開口出口より漏れ広がることはなくなる。
【0023】
図1に示すように、前記スキージ1をスクリーン3に押し当てたときに、このスキージ1と接触する位置よりも印刷時の移動方向に対して前方に前記半田ペーストHPが入り込む円弧状の凹部1A及びスキージ1の取り付け面と垂直なペースト初期接触面1B(前記凹部1Aの上部に連通して形成される。)とが前記スキージ1の下端部に形成されている。
【0024】
従って、前記スキージ1の移動により印刷する際には、初めに前記半田ペーストHPはペースト初期接触面1Bに接触してスクリーン3の各印刷パターン孔内に挿入され、更に前記凹部1Aの内部に半田ペーストHPを溜め込みながら、且つローリングさせながらプリント基板P上に印刷するように構成される。即ち、スキージ1に形成された凹部1A及びペースト初期接触面1Bとにより、半田ペーストHPのローリングを促進し、スクリーン3の各印刷パターン孔内への半田ペーストHPの充填が促進され、プリント基板Pへの半田ペーストHPの転写印刷が良好となる。
【0025】
次に、スクリーン印刷動作について、図1乃至図4に基づいて説明する。先ず、前記印刷ヘッド4は垂直移動機構によって前記スクリーン支持手段により支持されたスクリーン3上に下降してスクリーン3を上方から押し当てる(図1参照)。
【0026】
そして、前記基板支持装置の上下方向移動機構により前記支持ベース2を上昇させ、スクリーン3の平板3Aの下面にプリント基板Pの凸面P1上面を当接させる(図2参照)。このとき、間隔L1より間隔L2を僅か長くしているので、前記スクリーン3の凸板3Bの下面とプリント基板Pの凹面P2上面との間には、僅かな間隔L3が生じることとなる。
【0027】
そして、図3に示すように、印刷ヘッド4を右方向へ移動させ、スキージ1がスクリーン3上を摺動し、印刷動作が行われる。このスキージ1の移動により印刷する際には、初めに前記半田ペーストHPはペースト初期接触面1Bに接触してスクリーン3の各印刷パターン孔内に挿入され、更に前記凹部1Aの内部に半田ペーストHPを溜め込みながら、且つローリングさせながらプリント基板P上に印刷する。従って、スキージ1に形成された凹部1A及びペースト初期接触面1Bとにより、半田ペーストHPのローリングを促進し、スクリーン3の各印刷パターン孔内への半田ペーストHPの充填が促進され、プリント基板Pへの半田ペーストHPの転写印刷が良好となる。
【0028】
また、前記スクリーン3の下面形状は、前記プリント基板Pの上面形状に合わせて凹凸が形成されているので、スクリーン3の凸板3Bを貼り合わしていない領域の平板3Aに形成された印刷パターン孔3C2を介してプリント基板Pの凸面P1上に半田ペーストHPが塗布されると共に、スクリーン3の前記平板3Aに前記凸板3Bを貼り合わした領域では印刷パターン孔3C1及び3Dを介してプリント基板Pの凹面P2上に半田ペーストHPが塗布される
従って、前記プリント基板Pの印刷面である上面に凹凸が形成されていても、確実にこのプリント基板Pの凸面P1及び凹面P2上に、半田ペーストHPを塗布することができる。
【0029】
この塗布印刷後は、前記基板支持装置の上下方向移動機構により前記支持ベース2を下降させ(図4参照)、プリント基板Pを下降させる。そして、スキージを上昇させ、前記支持ベース2上のプリント基板Pを搬送機構(図示せず)により下流装置に搬送し、次のプリント基板Pの印刷に備える。
【0030】
なお、前記プリント基板Pの凹凸のある上面形状に合わせて前記スクリーン3の下面形状を凹凸に形成する構造は、先の実施形態のように、平面形状の平板3Aとこの平板3Aの下面に貼り合わされた凸板3Bとから構成する場合に限らず、図5に示すような他の実施形態でもよい。
【0031】
即ち、貼り合わせる構造に限らず、例えばフォトエッチングにおいて、素材板の両面から同一パターン形状を化学腐食させてエッチングするのではなく、意図的にそれぞれの面のエッチングバランスを制御することによって任意の形状に加工したり、素材板の片面だけを厚みの途中までエッチングするようなハーフエッチング工法などにより当初より一体化した構造としてもよく、この場合、スクリーン3の厚さを薄い部分3Eと厚い部分3Fとで凹凸を形成する。また、これらのスクリーン3の製造方法は種々考えられ、その方法は問わない。
【0032】
この場合、薄い部分3Eには深さの浅い印刷パターン孔3H1を、厚い部分3Fには深い印刷パターン孔3H2を形成する。
【0033】
なお、本発明のスクリーン3下面の凹凸形状は、プリント基板Pの上面の凹凸形状に合わせて形成するもので、上記いずれの実施形態も、プリント基板Pの凸面P1が1つ、凹面P2が1つに対応してスクリーン3の厚さが異なる領域は薄い領域と厚い領域とが各1領域であったが、プリント基板Pの凸面P1、凹面P2とスクリーン3の厚さが薄い領域、厚い領域はそれぞれ、1つに限らず、複数でも、本発明は適用できる。即ち、プリント基板Pの凹面P2又は凸面P1が離れた位置に複数ある場合には、これに対応してスクリーン3の厚さが厚い領域又は薄い領域を複数の凹面P2又は凸面P1に対応した位置に複数形成することにより対応できる。
【0034】
更には、プリント基板P上面の凹面及び凸面の領域及びこれに対応するスクリーン3下面の凸面及び凹面の領域の位置についても、それぞれの周縁部、中間部でもよく、その形成される位置は問わない。
【0035】
従来のように、スクリーンを利用する刷り込み方式と塗布ノズルを利用するディスペンサ方式の併用方式では、高価なものとなるばかりか、特に後者のディスペンサ方式の場合には生産時間が長くなるという問題があったが、本発明によれば、基板上面に凹凸があっても、その凹部及び凸部上への塗布剤の塗布作業の生産効率の向上を図ることができる。
【0036】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0037】
1 スキージ
1A 凹部
2 支持ベース
3 スクリーン
3A スクリーンの平板
3B スクリーンの凸板
P プリント基板
P1 プリント基板の凸面
P2 プリント基板の凹面
HP 半田ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にスキージを移動させることにより塗布剤を塗布するためのスクリーンにおいて、前記基板上面の凹凸形状に合わせて、その下面を凹凸形状に形成したことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
基板上にスキージを移動させることにより塗布剤を塗布するためのスクリーンにおいて、前記基板上面の凹部に合わせて、その下面を凸部に形成したことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンを備えたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンに前記スキージを押し当てたときに、このスキージと接触する位置よりも印刷時の移動方向に対して前方に前記塗布剤が入り込む凹部を前記スキージに形成したことを特徴とするスクリーン印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201024(P2012−201024A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68665(P2011−68665)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】