説明

スケールの目盛保護構造

【課題】カバーガラスを目盛部に接着する接着剤の厚さむらに起因するエンコーダの出力変動を防止できるようにする。
【解決手段】スケール基板12上に形成された目盛部14が、その上面側に配されたカバーガラス16で保護されたスケールの目盛保護構造において、前記カバーガラスが、前記目盛部の周囲に配設された高さ規定部30を介して、前記スケール基板上に支持され、前記高さ規定部が、前記カバーガラスの下面に、前記目盛部の周囲に対応するパターンに予め形成され、且つ、その下端が前記スケール基板の上面に当接され、更に、前記スケール基板と前記カバーガラスとが、前記高さ規定部の周囲に配置した接着剤で接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールの目盛保護構造に係り、特にスケールに起因してリニアエンコーダ、円弧エンコーダ及びロータリーエンコーダ等に発生する出力変動を低減する際に適用して好適なスケールの目盛保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばリニアエンコーダは、図1にその概要を示すように、スケール10と、これに対向配置された検出器20とを備えており、該スケール10を両矢印で示す測定方向に移動させることによりスケール10と検出器20の相対変位を検出している。
【0003】
このようなエンコーダを構成する従来のスケール10は、ガラス製のスケール基板12の一主面に成膜技術により目盛部14がパターン形成されている。
【0004】
このように、主にガラスでできたスケール10に検出器20を対面させて使用するエンコーダには、スケール10上の目盛部14をキズや汚れから保護するために、図示されているようにカバーガラス16を、該スケール10に接着して一体化したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のようにカバーガラス16をスケール10に接着して一体化させるために、図2に模式的に示すように、カバーガラス16を目盛部14の上面部に形成した接着層(剤)18の上に配置して接着する場合、図中幅方向とは直交する前記測定(移動)方向に存在する接着剤の厚さのむらにより、検出器20から検出値として出力されるエンコーダ出力の変動の原因となるという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1には、基板上にパターン形成したスケール電極(目盛部)の上にコーティング層を形成することにより、有害なクーラントや油等がスケール電極側へ浸入することを防止する技術が開示されているが、このスケール構造でもコーティング層とカバーガラスに対応するスケールカバーとの接合には接着剤を使用しているため、同様の問題が存在する。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、カバーガラスを目盛部に接着する接着剤の厚さむらに起因するエンコーダの出力変動を防止することができるスケールの目盛保護構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スケール基板上に形成された目盛部が、その上面側に配されたカバーガラスで保護されたスケールの目盛保護構造において、前記カバーガラスが、前記目盛部の周囲に配設された高さ規定部を介して、前記スケール基板上に支持され、前記高さ規定部が、前記カバーガラスの下面に、前記目盛部の周囲に対応するパターンに予め形成され、且つ、その下端が前記スケール基板の上面に当接され、更に、前記スケール基板と前記カバーガラスとが、前記高さ規定部の周囲に配置した接着剤で接合されているようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明は、前記高さ規定部を、前記カバーガラスの下面に成膜形成することができ、又、前記高さ規定部を、前記目盛部の全周囲に対応する前記カバーガラスの下面に、連続した同一厚さに形成することができ、更に、前記高さ規定部を、クロム、銅又はアルミニウムからなる金属で形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カバーガラスを、その下面に形成した高さ規定部を介してスケール基板上に支持するようにしたので、目盛部とカバーガラスとの間から接着剤(層)を除外できることから、接着剤の厚さむらに起因する目盛部とスケールカバーとの間の隙間(間隔)のばらつきを排除できるため、該隙間を一定にすることが可能となり、エンコーダ出力を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のエンコーダの概要を示す概略断面図
【図2】従来のエンコーダに使用されるスケール構造を模式的に示す横断面図
【図3】本発明に係る一実施形態のスケール構造を模式的に示す横断面図
【図4】前記実施形態のスケール構造の製造工程の特徴を示す、図3に対応する断面図
【図5】前記実施形態のスケール構造を模式的に示す、途中を省略した平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図3は、本発明に係る一実施形態のスケール構造を模式的に示す、前記図2に相当する横断面図であり、図4はその製造工程の特徴を示す対応断面図である。
【0015】
本実施形態のスケール10は、前記図2に示した従来のものと同様に、ガラス製のスケール基板12上にスパッタリングやめっき等の通常の成膜技術によりパターン形成された目盛部14と、該目盛部14を保護するためにその上面(表面)側に配設されたカバーガラス16とを備えている。
【0016】
本実施形態においては、前記高さ規定部30は、支持前の状態を図4に示すように、前記カバーガラス16の図中下面に、前記目盛部14の周囲に対応するパターンに予め成膜形成されている。次いで、この状態のカバーガラス16を矢印方向に下降させ、高さ規定部30の下端をスケール基板12の上面に当接させた該カバーガラス16を、前記目盛部14の周囲に配設された高さ規定部30を介して前記スケール基板12上に支持させる。その後、更に、前記スケール基板12と前記カバーガラス16とを、前記高さ規定部30の全周囲に接着剤を封止して形成した接着層32により接合する。
【0017】
前記高さ規定部30は、測定方向の途中を省略した図5の平面図に示すように、前記目盛部14を取り囲む全周囲に対応する前記カバーガラス16の下面に、連続した形状で、且つ、図示は省略するが同一高さ(厚さ)に形成されている。このように連続した同一高さにすることにより、目盛部14に対する高い密着性を確保することができる。従って、その周囲の接着剤の封止を容易に行うことができる。但し、接着剤で封止する際に注意を要するが、間欠した形状であってもよい。
【0018】
この高さ規定部30は、前記目盛部14が主にクロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等を成膜することで形成されている場合には、該目盛部14を保護するための前記カバーガラス16にも、それぞれ同種のクロム、銅、アルミニウム等の金属で、目盛部14を若干超える厚さの成膜パターンを形成し、前記のような所定位置に配置した形状にすることが、温度変化に対する安定性を確保するうえでも有効である。
【0019】
ここで、前記目盛部14の好適な厚さとしては100nm〜30μmを、前記高さ規定部30の好適な厚さとしては、カバーガラス16と目盛部14との隙間が、30nm〜0.1mm程度となる厚さを、それぞれ挙げることができる。但し、それぞれ適用するエンコーダの特性により異なる。
【0020】
このように、スケール基板12やカバーガラス16に形成する成膜パターンの厚みむらは、一般的に10nm〜50nm程度であることから、目盛部14はもとより高さ規定部30も非常に安定した厚さで形成することができる。しかも、高さ規定部30をスケール基板12上に支持するために、スケール基板12と高さ規定部30の間及び高さ規定部30とカバーガラス16の間のいずれにも接着剤を使用していない。従って、測定(移動)方向における目盛部14とカバーガラス16との隙間のばらつきを大きく低減でき、しかも両者間から前記図2の接着層18を排除できることから、その厚さのむらに起因するエンコーダ出力の変動を確実に防止することが可能となる。
【0021】
また、前記のように接着層32を高さ規定部30の全周囲に配設して封止することにより、目盛部14に対する異物侵入を防止できることから信頼性を確保するうえで好ましいが、そこまでの必要性が無い場合には、該接着層32を周囲に部分的に配設するようにしてもよい。また、この接着層32を形成する接着剤としては、通常のアクリル製やエポキシ製等を使用できるが、特に高さ規定部30の全周囲を封止する場合には、更に信頼性を高めるために、水分やガス分等の目盛劣化成分の浸透を阻害するガラス、セラミック又は金属等の粉末材料を混合した接着剤を使用してもよい。
【0022】
なお、前記実施形態では、スケール基板12がガラス製である場合を示したが、これに限定されず、例えば反射型の光電式スケール等の場合はセラミック製や金属製であってもよい。
【0023】
また、目盛部14が直線的な移動を検出するリニアエンコーダ用のスケールを例に説明したが、これに限定されず、円弧上の移動を検出する円弧エンコーダ用、回転の移動を検出するロータリーエンコーダ用のいずれの目盛部が形成されているスケールであってもよい。また、光透過型の光電式スケールのみではなく、前記のように反射型であってもよく、更には静電容量式や磁気式、電磁誘導式などの各種スケールにも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
10…スケール
12…スケール基板
14…目盛部
16…カバーガラス
18…接着層(剤)
20…検出器
30…高さ規定部
32…接着層(剤)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール基板上に形成された目盛部が、その上面側に配されたカバーガラスで保護されたスケールの目盛保護構造において、
前記カバーガラスが、前記目盛部の周囲に配設された高さ規定部を介して、前記スケール基板上に支持され、
前記高さ規定部が、前記カバーガラスの下面に、前記目盛部の周囲に対応するパターンに予め形成され、且つ、その下端が前記スケール基板の上面に当接され、
更に、前記スケール基板と前記カバーガラスとが、前記高さ規定部の周囲に配置した接着剤で接合されていることを特徴とするスケールの目盛保護構造。
【請求項2】
前記高さ規定部が、前記カバーガラスの下面に成膜形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスケールの目盛保護構造。
【請求項3】
前記高さ規定部が、前記目盛部の全周囲に対応する前記カバーガラスの下面に、連続した同一厚さに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスケールの目盛保護構造。
【請求項4】
前記高さ規定部が、クロム、銅又はアルミニウムからなる金属で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスケールの目盛保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−7676(P2013−7676A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141011(P2011−141011)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】