説明

スタビライザ装置

【課題】応答性を向上できるようにしたスタビライザ装置を提供する。
【解決手段】スタビライザ装置1は、電動モータ25によりねじ部材22を回転駆動してプランジャ21を軸方向に変位させることにより、スタビライザバー2,3間のねじり剛性を調節する構成とする。電動モータ25を制御するコントローラ30は、プランジャ21の位置を、少なくともハード、ミディアム、ソフトの3段階に制御可能とし、車体が直進状態で路面が悪路でない場合はミディアム、車体がロール状態の場合はハード、路面が悪路の場合はソフトとするように制御する。これにより、例えば車体が直進状態からロール状態に移る際に、プランジャ21の位置をミディアムからハードに迅速に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、車体のロール運動を抑制するのに好適なスタビライザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、コーナリングなどの走行状態で、車体の姿勢を安定させるためにスタビライザ装置を備えているものがある。昨今では従前から開発されている油圧のスタビライザ装置の他に、搭載性に優れた電動スタビライザ装置の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スタビライザ装置は、車両に搭載され、車両の走行性を向上するために使用される。このようなスタビライザ装置は、路面状況、運転状況等に応じてねじり剛性(ねじりトルク)を調整できることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、路面状況、運転状況等に応じてねじり剛性(ねじりトルク)を適宜に調整できるようにしたスタビライザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のスタビライザ装置は、第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、前記可変剛性部は、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、前記直線運動を抑制する方向に前記直動機構を付勢する付勢機構と、該付勢機構を支持する支持手段と、該支持手段を任意の位置で保持力をもって保持する保持手段と、前記支持手段に力を付与することにより該支持手段の位置を変更するアクチュエータと、該アクチュエータの出力を制御する制御手段とを有し、該制御手段は、前記支持手段の位置を少なくともハード、ミディアム、ソフトの3段階に制御可能であり、前記制御手段は、車体が直進状態で路面が悪路でない場合はミディアムに制御し、前記車体がロール状態の場合はハード、車体が走行する路面が悪路の場合はソフト、とするように制御する構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スタビライザ装置の剛性(ねじりトルク)を適宜に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態によるスタビライザ装置が適用された車両を模式的に示す全体構成図である。
【図2】実施の形態によるスタビライザ装置の構造を示す縦断面図である。
【図3】図1中のコントローラによる制御内容を示す流れ図である。
【図4】操舵角と付勢機構のセット荷重とアクチュエータの電流値(モータ電流)との時間変化を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態によるスタビライザ装置を、図1ないし図4に従って詳細に説明する。
【0010】
図1はスタビライザ装置1を車両の前輪側と後輪側とに使用した場合の全体構成を示し、このスタビライザ装置1は、下記の構成を有することにより車両の横転防止、操縦安定性の向上、さらには乗り心地の向上を図るものである。
【0011】
即ち、車両が道路のコーナ部分等を旋回走行するような状態で、車両にロール方向の慣性力が作用した場合に、車両の前,後に設けられたスタビライザ装置1は、後述するコントローラ30からの制御信号に基づいてそれぞれ車両のロール運動(ローリング)を抑制するように動作し、これにより、車両の横転防止を図り、車両の操縦安定性や乗り心地を向上する。なお、車両によっては、スタビライザ装置1を車両の前後の一方に設けても良い。
【0012】
スタビライザ装置1は、長さ方向の中央部分が車両を構成する車体側にブッシュ(図示せず)を介して回転可能に取付けられ、図1に示すように、両端側が左,右の車輪側にそれぞれ接続(連結)されている。そして、スタビライザ装置1は、図1、図2に示すように、軸方向の一側に配置される第1のスタビライザバー2と、軸方向の他側に配置される第2のスタビライザバー3と、第1,第2のスタビライザバー2,3の間を連結し、スタビライザバー2,3間のねじり剛性を調整する可変剛性部5とを備えている。
【0013】
また、第2のスタビライザバー3の基端部は、図2に示す如く、延長部4となって後述するケーシング6内に装入されている。第2のスタビライザバー3の延長部4は、ケーシング6内の中心部(軸線O−O)を軸方向に延びた中空軸として形成され、その右側(軸方向の一側)に位置する一側軸部4Aは、ケーシング6の長さ方向中間部まで延びている。延長部4の他側軸部4Bは、ケーシング6に後述のアンギュラ玉軸受9を介して回転可能に支持されている。
【0014】
さらに、延長部4の外周には、一側軸部4Aと他側軸部4Bとの間に位置して後述するボールアンドランプ機構11の回転側ランププレート12が一体的に設けられている。このボールアンドランプ機構11は、スタビライザバー2,3間の相対回転(ねじり運動)をねじり剛性をもって互いに伝達するものである。
【0015】
第1,第2のスタビライザバー2,3は、図2に示す如く、軸線O−O上に配置され、車体側に対し軸線O−Oを中心にしてねじられる方向に回動自在となるように支持されている。第1,第2のスタビライザバー2,3の間を連結する可変剛性部5は、後述のケーシング6、ボールアンドランプ機構11、付勢機構17、延長部支持部材18、付勢力調整機構20、電動モータ25、コントローラ30等により構成されている。
【0016】
可変剛性部5の外形をなすケーシング6は、第1,第2のスタビライザバー2,3間に亘って軸方向に延びる略円筒状の容器として形成されている。そして、ケーシング6は、高い剛性をもった金属材料等により形成され軸線O−Oに沿って軸方向(左,右方向)に延びた略有底円筒状の筒体7と、該筒体7の左側を閉塞した蓋体8と、後述のギヤケース10とを含んで構成されている。
【0017】
ここで、筒体7は、左側の開口部にフランジ部7Aを有し、右側が蓋部7Bによって閉塞されている。また、筒体7の蓋部7Bには、第1のスタビライザバー2の基端側が例えばスプライン結合等の廻止め手段を用いて一体的に接続されている。これにより、ケーシング6は、第1のスタビライザバー2と一体的に回動し、第2のスタビライザバー3に対しては相対回転するものである。
【0018】
一方、筒体7の軸方向他側(図2中の左側)に位置する蓋体8は、高い剛性を有する金属材料等により段付円筒状に形成され、筒体7の左側端部を閉塞している。蓋体8の内周側には、後述する一対のアンギュラ玉軸受9が設けられ、該各アンギュラ玉軸受9は、第2のスタビライザバー3を延長部4の位置で回転可能に支持している。
【0019】
筒体7の外周側には、軸方向の右側寄りに位置してギヤケース10が設けられている。このギヤケース10は、軸線O−Oに直交する方向に延びた円筒体からなり、ギヤケース10内には、後述する減速機24のウォームギヤ24B等が収容されている。また、ギヤケース10の長さ方向の中間部には、軸線O−Oとほぼ平行に右側に延びるモータ取付筒部10Aが設けられている。この場合、可変剛性部5のケーシング6は、ボールアンドランプ機構11や付勢機構17等を内部に収納するだけではなく、ケーシング6自体がねじり力、即ちねじりトルクを伝えるための伝達部材としても機能する。
【0020】
直動機構としてのボールアンドランプ機構11は、筒体7の軸方向他側となる左側寄りに位置してケーシング6内に収容されている。ボールアンドランプ機構11は、軸方向他側に位置してケーシング6と相対回転可能な回転側ランププレート12と、該回転側ランププレート12の軸方向一側に対向して筒体7内に設けられ、ケーシング6に対し回転方向に固定された直動側ランププレート13と、各ランププレート12,13間で相対的に転動するように移動可能に設けられた剛体からなる転動体としてのボール14とにより大略構成されている。なお、ボール14として球状体のものを図示しているが、各ランププレート12,13間で転動するものであれば、円錐ころ等の他の転動体でもよい。
【0021】
ここで、ボールアンドランプ機構11は、第1のスタビライザバー2が接続(連結)されたケーシング6と第2のスタビライザバー3との相対回転運動に応じて軸線O−Oに沿った軸方向(図2中の矢示A,B方向)に直線運動するものである。そして、ボールアンドランプ機構11は、後述するランプ溝12A,13Bの形状に従ってトルクの伝達係数が調整され、これによりスタビライザ装置1は、そのねじり剛性が調整されるものである。
【0022】
即ち、ボールアンドランプ機構11は、第2のスタビライザバー3とケーシング6とが相対回転したときの角度によって、直動側ランププレート13の軸方向のストロークを変化させることができる。その際、ランプ溝12A,13Bの形状により相対回転角度に対するストローク量を調整することができる。また、直動側ランププレート13のストローク量により付勢機構17の反力が決まり、それが可変剛性部5のねじりトルクとなる。その際、ランプ溝12A,13Bのリード角の設定によりトルクを調整することができる。
【0023】
ここで、直動側ランププレート13は、内周側の案内筒部13Aが延長部4の外周にすべり軸受16を介して支持されている。また、直動側ランププレート13の外周側は、後述の転がり直動ガイド15により回転方向の変位が拘束されるが、軸方向の移動に対しては拘束されていない。これにより、直動側ランププレート13は、内周側のすべり軸受16により延長部4に沿って軸方向に円滑に移動することができる。
【0024】
回転側ランププレート12と直動側ランププレート13には、後述の付勢機構17による推力が作用しており、この推力によってボール14は、回転側ランププレート12と直動側ランププレート13にそれぞれ形成されたランプ溝12A,13Bに押付けられる。そして、ボールアンドランプ機構11は、前記推力とランプ溝12A,13Bの形状とに基づきトルクを伝達する。
【0025】
回転側ランププレート12の右端面(表面)には、ランプ溝12Aが円周方向に延びて複数個(例えば3個)設けられている(1個のみ図示)。ここで、各ランプ溝12Aは、例えば周方向で円弧状に湾曲して形成されている。そして、各ランプ溝12Aは、長さ方向の中央部が最深部となり、この最深部から両端側に向けて所望の曲率で浅くなる円弧状溝として形成されている。
【0026】
また、回転側ランププレート12に対面する直動側ランププレート13の左端面(表面)には、ランプ溝13Bが3個設けられている。この3個のランプ溝13Bは、ランプ溝12Aとほぼ同様に、円弧状に湾曲して形成され、長さ方向の中央部が最深部となり、この最深部から両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成されている。
【0027】
さらに、直動側ランププレート13の外周側には、各ランプ溝13B間に位置して例えば3個(1個のみ図示)のガイド溝13Cが半径方向に延びて形成され、該各ガイド溝13Cには、転がり直動ガイド15が配置されている。この3個の転がり直動ガイド15は、直動側ランププレート13がケーシング6に対して相対回転するのを規制し、筒体7の軸方向に相対変位(直動)するのを許すものである。
【0028】
そして、転がり直動ガイド15は、ガイド溝13Cの溝底側に挿嵌された内側ガイド片15Aと、該内側ガイド片15Aと半径方向で対向するようにガイド溝13C内に軸方向に移動可能に配置された外側ガイド片15Bと、各ガイド片15A,15B間に軸方向に転動可能に設けられた球体15Cとにより大略構成されている。また、外側ガイド片15Bは、筒体7の内周面にボルト止め、圧入、溶接等の手段を用いて固定されている。
【0029】
これにより、各転がり直動ガイド15は、直動側ランププレート13側に固定された内側ガイド片15Aとケーシング6側に固定された外側ガイド片15Bとの間で球体15Cを転動させることにより、ケーシング6と直動側ランププレート13との相対回転を規制しつつ、ケーシング6に対して直動側ランププレート13を軸方向に円滑に移動させることができる。
【0030】
また、第2のスタビライザバー3の延長部4には、一側軸部4Aの外周を覆うようにすべり軸受16が設けられている。このすべり軸受16は、ケーシング6に対して直動側ランププレート13を軸方向に円滑に移動させるもので、案内筒部13Aの内周面に対し、がたつかないように十分に小さな隙間をもってすべり接触するようになっている。
【0031】
このように構成された直動機構としてのボールアンドランプ機構11は、後述する付勢機構17の付勢力を用いて回転側ランププレート12と直動側ランププレート13とを互いに接近する方向に押付けることにより、通常はボール14が両者のランプ溝12A,13Bの最深部に配置される。これによって、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とは、付勢機構17の付勢力で常に初期角度(車両が左,右方向で傾斜してない角度)になるように付勢される。
【0032】
一方、第1のスタビライザバー2(ケーシング6)と第2のスタビライザバー3とが軸線O−Oを中心にして相対回転した場合には、ランプ溝12Aとランプ溝13Bとが周方向で相対的に位置ずれするから、各ボール14は、各ランプ溝12A,13Bの中央部から端部側に移動する。これにより、各ランププレート12,13は、各ランプ溝12A,13Bの傾斜に従って互いに軸方向に離間する方向に相対変位する。このため、ランプ溝13Bをランプ溝12Aに向け押付けている付勢機構17の付勢力は大きくなり、このときのねじり剛性を大きくすることができる。
【0033】
付勢機構17は、直動側ランププレート13の右側に位置して筒体7内に設けられている。この付勢機構17は、ボールアンドランプ機構11の軸方向一側(右側)に位置して延長部4の外周に設けられている。付勢機構17は、直動側ランププレート13の直線運動を抑制する方向に該直動側ランププレート13を付勢するもので、回転側ランププレート12に向けて直動側ランププレート13を押付ける押付力を発生する弾性部材により構成されている。
【0034】
即ち、付勢機構17を構成する弾性部材には、図2に示すように複数枚(例えば7枚)の皿ばねを互い違いに重ね合わせて配置したものが用いられている。皿ばねを連ねてなる付勢機構17は、その一端側が直動側ランププレート13に当接し、他端側が後述のプランジャ21に当接するように配置されている。そして、付勢機構17は、ボールアンドランプ機構11の直動側ランププレート13に対し矢示A方向の付勢力(推力)を与えるものである。
【0035】
筒体7内には、付勢機構17の一端側となる右側に位置して延長部支持部材18が設けられている。この延長部支持部材18は、ケーシング6を構成する筒体7の中心部(軸線O−O)側で第2のスタビライザバー3の延長部4を支持するものである。また、延長部支持部材18は、小径な有底円筒状の支持筒18Aと、該支持筒18Aの周方向の例えば3箇所(1箇所のみ図示)に位置して外周面から突出した扇状突起18Bと、該各扇状突起18Bの外周面から径方向の外向きに延びた脚部18Cとにより大略構成されている。
【0036】
延長部支持部材18を構成する支持筒18A内には、延長部4の一側軸部4Aがすべり軸受16を介して回転自在に挿嵌されている。一方、半径方向に延びた3本の脚部18Cの先端は、筒体7の内周面にボルト止め、圧入、溶接等の手段を用いて固定されている。これにより、延長部支持部材18は、延長部4の一側軸部4Aを軸線O−Oの位置で回転可能に支持することができ、他側軸部4Bを支持するアンギュラ玉軸受9との間で延長部4を両持ち状態で支持することができる。
【0037】
このように延長部4は両持ち状態で筒体7に支持されるため、該筒体7の軸線O−Oに位置決めでき、曲げ応力等に抗して規定された位置で回転させることができる。また、延長部4の一側軸部4Aに直動側ランププレート13がすべり軸受16を介して摺動支持されているため、延長部4に設けられた回転側ランププレート12と直動側ランププレート13とを平行状態に保つことができる。これにより、各ランププレート12,13は、同軸度を保ったまま相対的に回転運動、直動運動することができ、走行状態に対応するための要求特性を正確に得ることができる。
【0038】
延長部支持部材18の支持筒18A内には玉軸受19が設けられ、延長部支持部材18は、玉軸受19を介して後述するねじ部材22の小径部22Bを軸線O−O上で回転可能に支持している。
【0039】
さらに、延長部支持部材18は、隣合う扇状突起18B、脚部18Cの間が軸方向に貫通した切欠き部18Dとなり、これらの切欠き部18D内には、後述するプランジャ21の押し爪21Bが挿通される。これにより、ケーシング6に固定された延長部支持部材18は、プランジャ21の軸方向の移動を許可しつつプランジャ21の回転を規制する廻止め部材として機能している。
【0040】
付勢機構17の一端側となる右側に位置して筒体7内に付勢力調整機構20が設けられ、該付勢力調整機構20は、軸方向(矢示A,B方向)に移動することにより付勢機構17の付勢力を調整するものである。付勢力調整機構20は、後述するプランジャ21の各押し爪21Bが延長部4の外周に配置されている。また、付勢力調整機構20は、例えば付勢機構17の伸縮方向に任意の大きさのセット荷重(初期荷重)を付与するものである。
【0041】
付勢力調整機構20は、筒体7内を軸方向に移動可能なプランジャ21、ねじ部材22等により構成されている。ここで、プランジャ21は、ベースとなる円板部21Aを有し、この円板部21Aの表面(左側面)には、延長部支持部材18の各切欠き部18Dを貫通して付勢機構17側に延びる3個の押し爪21Bが設けられている。そして、プランジャ21は、各押し爪21Bが直動側ランププレート13との間で付勢機構17をプリセット状態(セット荷重を付与した状態)で挟むように、直動側ランププレート13に軸方向で対向して設けられている。プランジャ21は、付勢機構17(皿ばね)の付勢力を受承して支持する支持手段を構成している。
【0042】
さらに、円板部21Aの中心部にはねじ孔21Cが設けられ、該ねじ孔21Cは、例えば台形ねじとして形成されている。そして、プランジャ21のねじ孔21Cは、後述するねじ部材22の雄ねじ22Cと共に、後述の電動モータ25による回転運動をプランジャ21の直線運動に変換するねじ機構を構成すると共に、支持手段としてのプランジャ21に摩擦力による保持力を与え、プランジャ21を任意の位置で保持する外部からのエネルギーを必要としない保持手段を構成している。
【0043】
このように、プランジャ21は、台形ねじからなる保持手段(即ち、ねじ孔21Cと雄ねじ22C)を介してねじ部材22に螺合しているため、後述の電動モータ25を用いてねじ部材22を回転駆動しない限りは、図2中の矢示A,B方向のいずれにも変位することはなく、付勢機構17の付勢力によってプランジャ21が軸方向に動くことはない。逆に言えば、プランジャ21を変位させるとき以外は、台形ねじからなる保持手段(ねじ孔21Cと雄ねじ22C)の摩擦力によりプランジャ21がその位置に保持されるため、付勢機構17の付勢力(セット荷重)を変更するとき以外は、電動モータ25の動力を消費しないようにできる。
【0044】
プランジャ21の内周側から軸方向に延びたねじ部材22は、中空な段付軸として形成され、軸線O−Oを中心として回転するものである。即ち、ねじ部材22は、軸方向一側(右側)の大径部22Aと軸方向他側(左側)の小径部22Bとからなり、両者の間には後述のウォームホイール24Aが一体に形成されている。ねじ部材22は、大径部22Aの先端が筒体7の蓋部7Bにスラスト玉軸受23を介して回転可能に支持され、小径部22Bの先端が延長部支持部材18に対し玉軸受19を介して回転可能に支持されている。
【0045】
ねじ部材22の小径部22Bの外周側には、プランジャ21のねじ孔21Cに螺合する台形ねじからなる雄ねじ22Cが形成され、該雄ねじ22Cは、ねじ孔21Cと一緒にプランジャ21を軸方向に変位させるねじ機構を構成すると共に前記保持手段を構成している。また、ねじ部材22の外周側には、小径部22Bと大径部22Aとの間に位置して後述する減速機24のウォームホイール24Aが一体的に設けられている。
【0046】
ここで、ねじ部材22は、大径部22Aが筒体7の蓋部7B内にスラスト玉軸受23を介して回転可能に支持されている。このため、ねじ部材22に作用する軸方向のスラスト荷重は、このスラスト玉軸受23を介して筒部7により受承され、後述の電動モータ25にスラスト荷重が作用するのを抑えることができる。
【0047】
このように構成された付勢力調整機構20は、電動モータ25によってねじ部材22を正,逆方向に回転駆動し、プランジャ21の各押し爪21Bを直動側ランププレート13に接近させる図2中の矢示A方向と、該直動側ランププレート13から離間させる矢示B方向とに直線的に変位させる。これにより、付勢機構17の各皿ばねは、直動側ランププレート13とプランジャ21の各押し爪21Bとの間で軸方向に撓み変形し、両者の間隔(離間寸法)に応じてボールアンドランプ機構11に対する付勢力、即ちばね荷重(セット荷重)が可変に調整される。
【0048】
従って、付勢力調整機構20は、電動モータ25によりねじ部材22を回転駆動してプランジャ21を軸方向に変位させ、ボールアンドランプ機構11に対する付勢機構17の付勢力(セット荷重、初期荷重)を調整する。例えば、図2中にSで示す位置にプランジャ21が位置する場合は、セット荷重(初期荷重)がソフト(弱)に、図2中のMで示す位置にプランジャ21が位置する場合には、セット荷重がミディアム(中)に、図2中のHで示す位置にプランジャ21が位置する場合には、セット荷重がハード(強)に調整される。これにより、スタビライザ装置1は、各スタビライザバー2,3間のねじれ角に対するねじり剛性としてのねじりトルクを、車両の直進走行時、コーナリング走行時等の走行状態に応じてソフトからハードまで可変に調整することができる。
【0049】
ギヤケース10の位置に設けられた減速機24は、ねじ部材22の外周側に一体的に設けられたウォームホイール24Aと、ギヤケース10内に設けられ該ウォームホイール24Aに噛合したウォームギヤ24Bと、該ウォームギヤ24Bと一体に回転する回転軸24Cとを含んで構成されている。減速機24は、ウォームギヤ24Bの回転をウォームホイール24Aで減速し、大きな回転トルクをねじ部材22に発生させるものである。
【0050】
減速機24を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ25は、ケーシング6に一体形成されたギヤケース10のモータ取付筒部10A内に収納して設けられている。この電動モータ25は、その回転出力が減速機24により減速されてねじ部材22に伝えられるため、出力トルクが相対的に小さい小型のモータを用いることができる。電動モータ25は、各スタビライザバー2,3間で大きなトルクを伝達する部位、付勢機構17による大きな軸力が作用する部位から離れた位置に配置しているから、雨水、飛石等から内部を保護できる程度の強度を有していればよく、軽量なケース等を用いることができる。
【0051】
電動モータ25は、支持手段としてのプランジャ21に力(回転力)を付与することにより該プランジャ21の位置(軸方向位置)を変更するものである。電動モータ25は、制御手段を構成する後述のコントローラ30に電気的に接続され、電動モータ25の回転がコントローラ30によって制御される。
【0052】
コントローラ30の入力側には、図1に示すように、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ26、車両の走行速度を検出する車速センサ27、車体の横加速度を検出する横加速度センサ28、車体の上,下方向の振動加速度を検出する上,下加速度センサ29、その他、カーナビからの道路情報、車載カメラの画像から処理した情報等が接続され、出力側にはスタビライザ装置1のアクチュエータである電動モータ25が接続されている。
【0053】
マイクロコンピュータ等により構成されるコントローラ30は、電動モータ25の出力を制御する制御手段を構成すると共に、例えば車両がロールしやすい状況で走行している状態(ロール状態)か否かを判定するロール判定手段、車両が悪路を走行しているか否(舗装路等の普通路を走行している)かを判定する路面判定手段を構成するものである。
【0054】
ここで、ロール判定手段は、例えば車両がロール挙動する道路を走行しているかを判断するものであり、曲道等で横加速度センサ28の値が所定以上増加傾向にある場合、車速センサ27と操舵角センサ26の値からロール量を推定して所定以上のロールが推定される場合、カーナビで道路のコーナ部分を走行する場合や、車載カメラで飛び出しや前方車両に急接近を検知してステアリング操作により回避操舵が予測される場合等もロールする道路を走行していると判断する。また、単に100キロ以上の高速で走行している場合も、小さなステアリング操作でロールが発生するので、このような条件でもロールしやすい状況で走行していると判断する。また、路面判定手段は、スタビライザが悪さするような状況、すなわち、左右輪が異なった位相で上下方向に変位するような路面を低速で走行している場合等に悪路と判定する。なお、直進路は、ロール路以外の道路、即ち、車両がロール挙動しない道路である。
【0055】
そして、コントローラ30は、電動モータ25の回転を制御することによりプランジャ21の位置を、図2に示すように、少なくともハード(H)、ミディアム(M)、ソフト(S)の3段階に調節できる構成としている。この場合に、コントローラ30は、例えば、走行する道路がカーブの多いロール路の場合はハード、路面が悪路の場合はソフト、その他の路面すなわち、直進路で普通路の場合等はミディアムとするように制御する。
【0056】
このために、コントローラ30は、記憶部30Aを有し、該記憶部30Aには、例えば図3に示す処理プログラム(路面状況に応じてセット荷重を調整する処理プログラム)が格納されている。そして、コントローラ30は、車両が走行する路面状況に応じて、電動モータ25によりプランジャ21の位置をハード(H)、ミディアム(M)、ソフト(S)のうちの何れかに調整することにより、付勢機構17の付勢力(セット荷重)、即ち、第1,第2のスタビライザ2,3間のねじり剛性(ねじりトルク)を調整する。
【0057】
本実施の形態によるスタビライザ装置1は、上述のように構成されるもので、次に、コントローラ30を用いてスタビライザ装置1のねじり剛性を可変に制御する処理について説明する。
【0058】
例えばエンジン始動に伴う電力供給を受けて、図3に示す処理プログラムがスタートすると、コントローラ30は、ステップ1で、車両がロール状態であるか否かを判定する。この判定は、例えば、横加速度センサ28から直接検出される車体側の横加速度に基づいて、或いは、操舵角センサ26が検出する操舵角と車速センサ27が検出する走行速度とから推定される車体側の横加速度に基づいて行うことができる。具体的には、横加速度が予め設定された閾値を超えた場合に、車両がロール状態であると判定し、予め設定された閾値以下の場合に、車両がロール状態でない(直進状態である)と判定することができる。
【0059】
このようなステップ1で、車両がロール状態である、即ち、運転者がステアリングを操作して道路のコーナ部分等を走行していると判定された場合には、車体が外側へロールするのを抑える必要がある。そこで、ステップ2に進み、電動モータ25によりプランジャ21の位置をハード(H)の位置に調整する。
【0060】
即ち、電動モータ25によってねじ部材22を回転させ、直動側ランププレート13とプランジャ21の押し爪21Bとの離間寸法を小さくして接近させる。これにより、付勢機構17に付加されるセット荷重(初期荷重)が大きくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要なねじり力となるねじりトルクも大きくなる。従って、スタビライザ装置1は、各スタビライザバー2,3間のねじり剛性を高めることで、車体が外側にロールするのを抑えることができ、コーナリング時の走行姿勢を安定させることができる。
【0061】
一方、ステップ1で、車両がロール状態でない(例えば直進状態である)と判定された場合には、ステップ3に進み、路面が悪路であるか否(普通路である)かを判定する。この判定は、例えば、車体側の上,下方向の振動加速度を検出する上,下加速度センサ29の検出信号に基づいて行うことができる。具体的には、振動加速度が予め設定された閾値を所定時間内に複数回超えた場合に、路面が悪路であると判定し、予め設定された閾値以下の場合に、悪路でない(普通路である)と判定することができる。なお、悪路の判断基準は、絶対的なものではなく、スポーツカー、高級乗用車、SUV、オフロード用の車両によって異なり、また、スタビライザの硬さのセッティングによっても異なる。
【0062】
このようなステップ3で、路面が悪路である、即ち、例えば未舗装路等の凹凸路を走行していると判定された場合には、路面の凹凸を吸収して安定した走行姿勢を確保する必要がある。そこで、ステップ4に進み、電動モータ25によりプランジャ21の位置をソフト(S)の位置に調整する。
【0063】
即ち、電動モータ25によってねじ部材22を回転させ、直動側ランププレート13とプランジャ21の押し爪21Bとの離間寸法を大きくする。これにより、付勢機構17に付加されるセット荷重(初期荷重)が小さくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要なねじり力となるねじりトルクも小さくなる。従って、スタビライザ装置1のねじり剛性を小さくできるから、左,右の車輪は、路面の凹凸に合わせて独立してストロークすることができ(例えば、一方の車輪が凹部に落ちることがあってもこの一方の車輪だけをストロークさせることができ)、安定した走行姿勢、良好な乗り心地を得ることができる。
【0064】
一方、ステップ3で、路面が悪路でない(普通路である)と判定された場合には、ステップ5に進み、電動モータ25によりプランジャ21の位置をミディアム(M)の位置に調整する。即ち、電動モータ25によってねじ部材22を回転させ、直動側ランププレート13とプランジャ21の押し爪21Bとの離間寸法を中程度(ハードとソフトとの間)にする。
【0065】
これにより、付勢機構17に付加されるセット荷重(初期荷重)をソフトよりも大きくし、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要なねじり力となるねじりトルクを、例えば車両の走行速度、横加速度等から求められる乗り心地が悪化しない程度に大きくする。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、通常走行時(略直進状態で路面が普通路の走行時)におけるスタビライザ装置1のねじり剛性(セット荷重)をミディアム(M)に設定しているので、通常走行からロール状態や悪路の走行に移ったときに、ねじり剛性をミディアム(M)からソフト(S)またはミディアム(M)からハード(H)に迅速に調整することができる。即ち、例えば通常走行時のねじり剛性をソフトに設定した従来技術に比べ、通常走行からロール路走行に移る際に、電動モータ25によりプランジャ21を移動させる量(変位量)を小さくすることができ、スタビライザ装置1の応答性を向上することができる。
【0067】
図4は、通常走行から車両がロール状態に移る際の操舵角とセット荷重(=プランジャ21の位置)と電動モータ25の電流値との時間変化を示す特性線図を示している。なお、図4中のセット荷重とモータ電流は、本実施の形態による特性線を実線31を用いて示し、従来技術による特性線を二点鎖線32を用いて示している。また、運転者がステアリングホイールの操作を開始した時点をT1とし、プランジャ21の移動が開始された時点をT2とし、本実施の形態によるプランジャ21の移動が終了した時点をT3とし、従来技術によるプランジャの移動が終了した時点をT4としている。
【0068】
このような図4から明らかなように、通常走行時(直進路で普通路の走行時)のセット荷重をミディアム(M)に設定した本実施の形態によれば、通常走行時のセット荷重をソフト(S)に設定した従来技術に比べ、プランジャ21をハード(H)に移動させるまでの距離および時間を短縮することができ、その分、応答性を向上することができる。これにより、例えば緊急操舵時等の急なステアリング操作が行われるような場合にも、セット荷重を迅速にハード(H)に調整することができる。このため、緊急操舵時にも、車体のロールを安定して抑制することができ、車両を安定して旋回させることができる。なお、本発明での直進路(直進状態)とは、直線道路を走行している場合のみを指すものではなく、ロール状態にない場合をいい、低速でカーブを曲がる場合等も含む。
【0069】
また、本実施の形態の場合は、通常走行時のセット荷重をミディアム(M)に設定しているため、図4のモータ電流の特性線に示されるように、セット荷重をハード(H)に調整する際の起動電流I1が、通常走行時のセット荷重をソフト(S)に設定した従来技術の場合の起動電流I2に比べて大きくなる。ただし、セット荷重がハード(H)に調整されるまでの時間(プランジャ21がハードの位置まで移動する時間、即ち電動モータ25の駆動時間)を短くできる分、従来技術に比べてトータル消費動力を小さくすることができる。なお、プランジャ21が目標位置(ハード)に到達した後は、台形ねじからなる保持手段(ねじ孔21Cと雄ねじ22C)の保持力(摩擦力)によりプランジャ21がその位置に保持される(電動モータ25の電流は消費されずにプランジャ21の位置を保持できる)。
【0070】
また、従来技術に比べて応答性を向上できるため、例えば応答性に余裕ができる分、減速機24の減速比を大きくしても、従来技術と同様の応答性を確保することができる。このように減速比を大きくした場合には、電動モータ25の最大電流を下げることができ、電動モータ25の更なる小型化、電動モータ25に電力を供給するハーネスの細線化を図ることができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態では、図3に示すステップ1の処理がロール判定手段の具体例を示し、ステップ3の処理が路面判定手段の具体例を示している。
【0072】
上述した実施の形態では、ロール判定手段が行う判定(ロール状態であるか否かの判定)を、横加速度センサ28が検出する(操舵角センサ26の操舵角と車速センサ27の走行速度とから推定される)横加速度情報に基づいて行う場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、サスペンション装置の伸縮量等、他の情報を用いてロール状態であるか否かを判定してもよい。要するに、車両がロール挙動しているか否かを判定することができれば、何れの情報(状態量)を用いてもよい。
【0073】
上述した実施の形態では、路面判定手段が行う判定(悪路であるか否かの判定)を、上,下加速度センサ29が検出する上,下方向の振動加速度情報に基づいて行う場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、前述のようにカーナビゲーションシステムからの情報(例えばGPS情報)、横加速度センサから検出される車体の横加速度情報、車載カメラからの路面情報等に基づいて、悪路を走行しているか否かを判定してもよい。
【0074】
スタビライザ装置1は、横加速度低減効果が大きいので、悪路か否かの判定は、上,下加速度情報に基づいて行う場合に比べ、例えばGPS情報や横加速度情報等に基づいて行うことが好ましい。何れの場合も、悪路を走行していると判定された場合には、セット荷重をソフト(S)に調整することにより、良好な乗り心地を得ることができる。
【0075】
上述した実施の形態では、路面判定手段により路面が悪路であると判定された場合にセット荷重をソフト(S)に調整する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、速度判定手段により走行速度が低速(極端に低い速度、例えば20Km以下、より好ましくは10Km以下)であると判定された場合にセット荷重をソフト(S)に調整するようにしてもよい。
【0076】
上述した実施の形態では、路面状況に応じてセット荷重(プランジャ21の位置)をハード、ミディアム、ソフトの3段階に制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、4段階以上の複数段やリニアに制御してもよい。即ち、車両の走行状況、路面状況を更に細かく判定し、それに応じて、セット荷重(支持手段の位置)をより細かく制御することができる。なお、本発明のミディアムとは、ハードとソフトの間の値で有り、車の仕様によりハードに近く設定してもよく、ソフトに近く設定しても良い。
【0077】
上述した実施の形態では、ロール判定手段と路面判定手段とを用いて判定し、その判定結果に応じてセット荷重(プランジャ21の位置)を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ロール判定手段や路面判定手段の他、走行速度判定手段等の他の判定手段を用いてセット荷重(支持手段の位置)を調整してもよい。
【0078】
上述した実施の形態では、付勢機構17を複数枚の皿ばねにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばコイルばね等の他の弾性部材を皿ばねに代えて用いる構成としてもよい。
【0079】
さらに、上述した実施の形態では、プランジャ21の位置を保持する保持手段を台形ねじ(ねじ孔21Cと雄ねじ22C)により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ラチェット機構やトルクダイオード等により保持手段を構成してもよい。
【0080】
以上の実施の形態によれば、通常走行時(略直進状態で路面が普通路の走行時)のねじり剛性(ロール剛性)をミディアムに設定しているので、通常走行からロール状態や悪路の走行に移ったときに、ねじり剛性をミディアムからソフトまたはミディアムからハードに迅速に(少ない動力で)調整することができ、スタビライザ装置の応答性を向上することができる。
【0081】
これにより、例えば車両が悪路を走行している場合等には、ねじり剛性がソフトに調整され、安定した走行姿勢、良好な乗り心地を得ることができる。また、普通路等に移行した場合には、ねじり剛性がミディアムに調整され、ロール状態に移る際や緊急操舵が行われる際に、ねじり剛性をハードに迅速に調整することができる。このため、路面状況(走行状況)に応じた適切なねじり剛性を確保することができる。
【0082】
なお、上記実施の形態では、ロール状態を優先して判断したものを示したが、車の仕様、スタビライザの仕様により、路面判定を優先するように制御しても良い。また、悪路かつロール状態の場合は、ミディアムを維持するようにしてもよい。
【0083】
また、従来技術に比べて応答性を向上できるため、例えば応答性に余裕ができる分、減速機の減速比を大きくして、アクチュエータの省電力化、小型化、ハーネスの細線化を図ることができる。換言すれば、通常走行時のねじり剛性をミディアムに設定することにより、応答性を向上させるか、減速比を大きくして最大電流を低減させるかを選択することができ、設計自由度を高めることができる。
【0084】
さらに、実施の形態によれば、保持手段を外部からのエネルギーを必要としない構成としているので、支持手段を任意の位置で保持するときに、アクチュエータ(例えば電動モータ)の動力を消費しないようにすることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 スタビライザ装置
2 第1のスタビライザバー
3 第2のスタビライザバー
5 可変剛性部
11 ボールアンドランプ機構(直動機構)
17 付勢機構
21 プランジャ(支持手段)
21C ねじ孔(保持手段)
22 ねじ部材
22C 雄ねじ(保持手段)
25 電動モータ(アクチュエータ)
30 コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、
前記可変剛性部は、
前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、
前記直線運動を抑制する方向に前記直動機構を付勢する付勢機構と、
該付勢機構を支持する支持手段と、
該支持手段を任意の位置で保持力をもって保持する保持手段と、
前記支持手段に力を付与することにより該支持手段の位置を変更するアクチュエータと、
該アクチュエータの出力を制御する制御手段とを有し、
該制御手段は、前記支持手段の位置を少なくともハード、ミディアム、ソフトの3段階に制御可能であり、
前記制御手段は、車体が直進状態で路面が悪路でない場合はミディアムに制御し、前記車体がロール状態の場合はハード、車体が走行する路面が悪路の場合はソフト、とするように制御する構成としてなるスタビライザ装置。
【請求項2】
前記保持手段は、外部からのエネルギーを必要としないことを特徴とする請求項1に記載のスタビライザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76513(P2012−76513A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221511(P2010−221511)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】