説明

ステアリング装置

【課題】 簡易な構成で第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性を高めることができ、しかも、第1及び第2の連結板部の接触面積を減少できるようにする。
【解決手段】 操舵軸を支持するハウジング2の下端部に取着され、第1の連結板部3a,3aを有する第1ブラケット3と、第1の連結板部3a,3aと対向する第2の連結板部5a,5aを有する第2ブラケット5と、第2の連結板部5a,5aを第1の連結板部3a,3aに枢支する枢軸4,4とを備え、第1の連結板部3a,3a及び第2の連結板部5a,5aの一方に、枢軸4,4の周り、及び枢軸4,4と離隔した位置で第1の連結板部3a,3a及び第2の連結板部5a,5aの他方と接触する第1の凸部32,32、第2の凸部33,33を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵軸を支持するハウジングの下端部を揺動の中心として、該ハウジングを車体に揺動可能に枢支するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置としては、例えば操舵輪の運転席に対する上下位置を調節することができるようにしたチルト機構を有するチルトタイプが知られている。
【0003】
チルトタイプのステアリング装置は、操舵輪に繋がる操舵軸を回転可能に収納支持する円筒状のハウジングの下端部に、ハウジングの長手方向と交差する方向へ離隔する2つの第1の連結板部を有する第1ブラケットが取着されており、該第1ブラケットに枢軸を介して第2ブラケットが枢支されており、また、前記ハウジングの長手方向中央部に第3ブラケット及びチルト調節用の調節レバーが設けられている。第2ブラケットは車体に取着されるものであり、第1の連結板部と対向する第2の連結板部を有しており、第1及び第2の連結板部を貫通する貫通孔に前記枢軸を嵌入することにより第1ブラケットに枢支されている(例えば、特許文献1。)。
【0004】
ところで、第1ブラケットを第2ブラケットに枢支してなるステアリング装置にあっては、第1及び第2の連結板部が接触し、チルト調節を行うときの揺動抵抗が大きくなるため、特徴文献1では第2の連結板部の枢軸周りに、第1の連結板部に接触する凸部を設け、チルト調節を行うときの揺動抵抗を低減するように構成されている。
【特許文献1】実公平7−6059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特徴文献1のように第2の連結板部の枢軸周りに凸部を設けた構成にあっては、第1及び第2の連結板部の接触面積が少なく、第2ブラケットに対して第1ブラケットが枢軸の軸長方向へ振れ易くなり、第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性が低下すると言う問題があり、また、枢軸周りでの接触面積を多くした場合は、チルト調節を行うときの揺動抵抗が増加し、チルト調節の操作性が悪くなり、改善策が要望されていた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性を高めることができ、しかも、第1及び第2の連結板部の接触面積を比較的少なくすることができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係るステアリング装置は、操舵軸を支持するハウジングの下端部に取付され、第1の連結板部を有する第1ブラケットと、第1の連結板部と対向する第2の連結板部を有する第2ブラケットと、第2の連結板部を第1の連結板部に枢支する枢軸とを備えたステアリング装置において、第1及び第2の連結板部の少なくとも一方は、前記枢軸と離隔した位置で第1及び第2の連結板部の他方と接触する第1の凸部を有することを特徴とする。
【0008】
第1発明にあっては、枢軸と離隔した位置で第1及び第2の連結板部が凸部により接触しているため、第1ブラケットが第2ブラケットに対して枢軸の軸長方向へ振れるのを抑制でき、第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性を高めることができる。しかも、第1及び第2の連結板部の枢軸周りでの接触面積を多くすることなく、枢軸と離隔した位置に凸部を設けるため、第1及び第2の連結板部の接触面積を比較的少なくすることができ、チルト調節を行うときの揺動抵抗を低減できる。
【0009】
第2発明に係るステアリング装置は、第1及び第2の連結板部の少なくとも一方は、前記枢軸の周りで第1及び第2の連結板部の他方と接触する第2の凸部を有することを特徴とする。
【0010】
第2発明にあっては、枢軸周りと、枢軸と離隔した位置とで第1及び第2の連結板部が凸部により接触しているため、第1ブラケットが第2ブラケットに対して枢軸の軸長方向へ振れるのを防ぐことができ、第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、枢軸と離隔した位置に凸部を突設するだけの簡易な構成で第1ブラケットが第2ブラケットに対して枢軸の軸長方向へ振れるのを抑制でき、第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性を高めることができる。しかも、枢軸と離隔した位置に凸部が突設されているため、第1及び第2の連結板部の接触面積を減少でき、チルト調節の操作性を向上できる。
【0012】
第2発明によれば、第1ブラケットが第2ブラケットに対して枢軸の軸長方向へ振れるのを防ぐことができ、第1ブラケット及び枢軸によるハウジングの支持剛性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1はステアリング装置の構成を示す正面図、図2はステアリング装置の下端部の構成を示す拡大平面図、図3は第1ブラケット及び第2ブラケット部分だけの構成を示す拡大正面図、図4は第1ブラケット及び第2ブラケット部分だけの構成を示す拡大側面図、図5は図3のV −V 線の拡大断面図である。
【0014】
チルトタイプのステアリング装置は、舵取りのための操舵輪に繋がる操舵軸1と、該操舵軸1を収納して回転自在に支持する円筒状のハウジング2と、該ハウジング2の下端部に取着された第1ブラケット3と、該第1ブラケット3に枢軸4により枢支された第2ブラケット5と、ハウジング2の長手方向中央部にレバー台6を介して枢支されたチルト調節用の調節レバー7と、サポートブラケット6にハウジング2の揺動方向への相対移動を可能に支持された第3ブラケット8とを備えている。また、ハウジング2の下端部には操舵補助用の電動モータ9が取着されており、該電動モータ9の回転力を操舵軸1に伝動する減速歯車機構(図示せず)がハウジング2内に収容支持されている。
【0015】
ハウジング2は操舵軸1を収容する小径筒部2aと、減速歯車機構及びトルクセンサを収容する大径筒部2bとを有しており、大径筒部2bの下端部に第1ブラケット3が取着されている。尚、トルクセンサは操舵輪に加わる操舵トルクを検出するものであり、トルクセンサが検出したトルク等に基づいて電動モータ9が駆動制御されるように構成されている。
【0016】
第1ブラケット3は大径筒部2bの下端部でハウジング2の長手方向と交差する方向へ離隔し、平行に対向する2つの第1の連結板部3a,3aと、第1の連結板部3a,3aを連結し、大径筒部2bに取着される被取着板部3bとを有する断面略コ字形に形成されており、被取着板部3bに穿設された3つの貫通孔に挿入するボルトにより大径筒部2bの端面に取着されている。
【0017】
第1の連結板部3a,3aの先端部、換言すれば被取着板部3bと反対側部分には板厚方向に貫通する軸孔31,31と、該軸孔31,31の周りで板厚方向へ突出し、第2ブラケット5の後記する第2の連結板部5a,5aと接触する環状の第1の凸部32,32とが設けられており、さらに、第1の連結板部3a,3aの軸孔31,31と被取着板部3bとの間、換言すれば軸孔31,31とハウジング2との間には、板厚方向へ突出し、第2の連結板部5a,5aと接触する第2の凸部33,33が設けられている。第1及び第2の凸部32,33の先端は平坦になっている。
【0018】
第2ブラケット5は第1の連結板部3a,3aと対向する2つの第2の連結板部5a,5aと、第2の連結板部5a,5aを連結した第3の連結板部5bと、第3の連結板部5bに連なり、車体に取着される被取着板部5cとを有しており、被取着板部5cに穿設された凹形孔51,51に挿入するボルトにより車体に取着されるように構成されている。
【0019】
第2の連結板部5a,5aには、板厚方向に貫通する軸孔52,52が設けられており、2つの枢軸4,4を軸孔31,52に嵌入することにより第2ブラケット5を第1ブラケット3に枢支してある。また、一方の連結板部5aには軸孔52と離隔した位置で第1の連結板部3a側へ突設されたストッパ53が設けられており、第2ブラケット5の第1ブラケット3に対する揺動範囲を制限している。
【0020】
サポートブラケット6は略U字形に形成されており、その両端部がハウジング2の外周部下面に溶接により固定されている。このサポートブラケット6の対向する2つの側片に軸孔(図示せず)が設けられており、この軸孔に、調節レバー7に繋がるレバー軸10が挿入支持されている。
【0021】
以上のように構成されたチルトタイプのステアリング装置は、第2ブラケット5及び第3ブラケット8がボルト等の取着手段により車体Aに取着される。
【0022】
車体Aに取着されたステアリング装置は、ハウジング2の下端部が第1ブラケット3及び枢軸4により第2ブラケット5に支持され、ハウジング2の中央部がサポートブラケット6、レバー軸10及び第3ブラケット8を介して車体Aに支持される。
【0023】
チルト調節を行う場合、調節レバー7を操作してハウジング2の第3ブラケット8への固定を解除し、これに伴いハウジング2を枢軸4を支点としてチルト調節域で上下に揺動させることができ、チルト調節を行うことができる。この場合、第1ブラケット3の第1の連結板部3a,3aには、枢軸4と離隔した位置に第1の凸部32,32が設けられており、枢軸4周りに第2の凸部33,33が設けられており、第1及び第2の凸部32,33が第2ブラケット5の第2の連結板部5a,5aに接触しているため、第1及び第2の連結板部3a,5aの接触面積を減少でき、チルト調節を容易に行うことができ、しかも、第1ブラケット3が第2ブラケット5に対して枢軸4の軸長方向へ振れるのを抑制でき、第1ブラケット3及び枢軸4によるハウジング2の支持剛性を高めることができる。また、第1の凸部32,32の枢軸4に対する離隔距離を長くすることにより第1ブラケット3の第2ブラケット5に対する振れをより一層抑制でき、第1ブラケット3及び枢軸4によるハウジング2の支持剛性をより一層高めることができる。
【0024】
尚、以上説明した実施の形態では、第1ブラケット3の第1の連結板部3a,3aに第1の凸部32,32及び第2の凸部33,33を設けたが、その他、第1及び第2の凸部32,33は第2ブラケット5の第2の連結板部5a,5aに第1の連結板部3a,3aと接触するように設けた構成としてもよいし、また、第1及び第2の連結板部3a,3a、5a,5aの両方に互いに接触するように設けた構成としてもよい。第1及び第2の凸部32,33を第2の連結板部5a,5aに設ける場合、第2の凸部33,33は枢軸4の周りに設け、第1の凸部32,32は枢軸4に対してハウジング2側へ離隔した位置に設ける。
【0025】
また、以上説明した実施の形態では、枢軸4の周りと、枢軸4と離隔した位置とに第1及び第2の凸部32,33を設けたが、その他、第2の凸部33,33をなくし、枢軸4の周りで、第1及び第2の連結板部3a,3a、5a,5aの間に板体を設け、枢軸4とハウジング2側へ離隔した位置に第1の凸部32,32を設けた構成としてもよい。また、第1の凸部32は、第1の連結板部3a又は第2の連結板部5aに1つ設けた構成とする他、複数個設けた構成としてもよい。
【0026】
また、実施の形態は操舵補助用の電動モータを備えた電動パワーステアリング装置であるが、その他、マニュアルタイプのステアリング装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るステアリング装置の構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係るステアリング装置の下端部の構成を示す拡大平面図である。
【図3】本発明に係るステアリング装置の第1ブラケット及び第2ブラケット部分だけの構成を示す拡大正面図である。
【図4】本発明に係るステアリング装置の第1ブラケット及び第2ブラケット部分だけの構成を示す拡大側面図である。
【図5】図3のV −V 線の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 操舵軸
2 ハウジング
3 第1ブラケット
3a 第1の連結板部
32 第1の凸部
33 第2の凸部
4 枢軸
5 第2ブラケット
5a 第2の連結板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵軸を支持するハウジングの下端部に取着され、第1の連結板部を有する第1ブラケットと、第1の連結板部と対向する第2の連結板部を有する第2ブラケットと、第2の連結板部を第1の連結板部に枢支する枢軸とを備えたステアリング装置において、第1及び第2の連結板部の少なくとも一方は、前記枢軸と離隔した位置で第1及び第2の連結板部の他方と接触する第1の凸部を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
第1及び第2の連結板部の少なくとも一方は、前記枢軸の周りで第1及び第2の連結板部の他方と接触する第2の凸部を有する請求項1記載のステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−56430(P2006−56430A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241506(P2004−241506)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000001247)光洋精工株式会社 (7,053)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】