説明

ステンレス鋼及び銀色に着色したPVD被覆

【課題】三価クロム及び六価クロムを利用しない、銀またはステンレス鋼の外観を有する、着色した金属基材の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース層10を基材12の上に析出させて、第一の被覆基材14を形成し、窒化クロム16を第一の被覆基材14の上に析出させて、被覆基材20を形成する。特徴的なことは、前記窒化クロム層は、約45原子%未満の窒素原子%を有し、前記ベース層と前記窒化クロム層は、物理蒸着によって析出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
少なくとも1つの側面において、本発明は、銀またはステンレス鋼の外観を有する被覆基材に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
装飾用途の金属部品のメタライゼーションは、様々な湿式化学技術を利用して典型的になされる。適用例には、浴室用途(蛇口など)、自動車用途などが、含まれる。これらの用途用の1つの特に有益な被覆方法には、基材表面へのクロムの塗布が含まれる。
【0003】
先行技術のクロムめっき方法は、基材の洗浄及びすすぎから開始する。典型的な方法では、基材は、クロムめっき浴中に浸し、それに続き電流を印加して、被覆方法を開始する。これに関し、三価クロム及び六価クロムの両方を使用する方法が公知である。三価クロム及び六価クロムめっき方法論は、望ましくない。なぜなら、そのような方法は、汚く、費用がかかり、そして、ひどく規制されるからである。
【0004】
したがって、三価クロム及び六価クロムを利用しない金属基材を被覆する改善された方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
少なくとも1つの形態において、本発明は、着色した被覆基材の製造方法を提供することにより、従来技術の少なくとも1つ以上の問題を解決する。当該方法は、被覆されるべき基材を提供する工程を含む。その後、ベース層を基材上に析出させて、第一の被覆基材を形成する。次に、窒化クロム層を当該第一の被覆基材上に析出させて、着色した被覆基材を形成する。特徴的なことは、当該窒化クロム層が、約45原子%未満の窒素原子%を有することである。
【0006】
別の形態では、陰極アーク析出システム中で着色した被覆基材を製造する方法を提供する。特徴的なことは、前記陰極アーク析出システムは、析出チャンバー中に配置された金属クロム含有ターゲットと、前記析出チャンバー中に配置された少なくとも1つの基材とを含むことである。当該方法は、前記析出チャンバー中に不活性ガスを導入し、その後、前記析出チャンバー中でアークを開始して、クロムを、前記金属クロム含有ターゲットから除去することを含む。当該金属を基材上に析出させ、それにより基材上にクロムベース層を形成させる。前記析出チャンバー中に窒素ガスを導入して、窒化クロムを、前記ベース層の上に析出させて、着色した被覆基材を形成させる。前記窒化クロムは、約45原子%未満の窒素原子%を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、着色した被覆基材を製造する方法を図解する概略フローチャートを提供する。
【0008】
【図2】図2は、基材を被覆するための陰極アーク被覆装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の記述
本願発明者に現在知られている本発明を実施するベストモードを構成する本発明の現在の好ましい組成、形態及び方法が、ここに詳細に参照される。図面は、必ずしも目盛り通りではない。しかし、開示された形態は、様々な及び別の形で具体化され得る発明の単なる例示であることが理解されるべきである。したがって、ここに開示された特定の詳細は、限定して解釈されるべきではなく、当業者が本発明を様々に実施するのを教示するための代表的な基礎として、及び/又は、発明のいかなる側面のための代表的な基礎として、解釈されるべきである。
【0010】
実施例や他の明示された箇所を除き、材料の量や使用及び/又は反応の条件を示すこの記載中のすべての数量は、発明の最も広い範囲を記述する上で用語「約」によって修正されていると理解すべきである。記述した数値限界内の実施は、一般的に好ましい。また、明確に反対の記述がない限り:%、「部」及び比の値は、重量であり;発明と関連して与えられた目的のための好ましいまたは適切な材料の類または集まりの記述は、当該類または集まりのいかなる2以上の部材の混合物が同等に好ましいまたは適切であることを、示唆しており;化学用語における成分の記載は、記載中で特定されたいかなる組合せへの追加の際の成分に言及し、一旦混合された混合物の成分中の化学的相互作用を必ずしも排除せず;頭文字あるいは他の略語の第一の定義は、同じ略語のすべてのそれに続くここでの使用に適用し、最初に定義された略語の通常の文法的な変化に準用し;そして、明確に反対の記述がない限り、特性の測定は、同じ特性で従来あるいは後に参照されたものと同じ技術によって、決定される。
【0011】
本発明は、特定の成分及び/又は条件がもちろん変化し得るように、以下に記載する特定の形態及び方法に限定されない、ということも、理解されるべきである。更に、ここで使用される用語は、本発明の特定の形態を記載する目的のためにのみ使用されるのであり、決して限定している意図ではない。
【0012】
明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、文脈が別のことを明確に示していない限り、単数形「1」、「1つ」及び「当該」は複数の対象を含むことにも、注目しなければならない。例えば、単数での成分への言及は、複数の成分を含む意図である。
【0013】
本発明の様々な形態において、物理蒸着(PVD)は、基材上にステンレス鋼色または銀色を形成するために使用される。そのような着色した被覆基材は、装飾及び腐食の両方に耐性のある用途に使用され、その例は、限定されないが、配管系統部品(例えば、蛇口、蛇口用取っ手、など)、自動車部品、電化製品(例えば、携帯電話)及び消費財(例えば、時計)を含む。ステンレス鋼色は、制御された量の窒素をクロムに添加して窒化クロムを製造することにより、実現される。銀色は、PVD析出中に非常に少量の窒素をクロムに添加して銀色をシミュレートすることにより、実現される。これらの被覆は、典型的に使用された六価クロムではなく電気めっきを施したニッケルに好ましくは適用される。
【0014】
図1に関して、被覆基材を製造する方法を図解する概略フローチャートが提供される。工程a)では、ベース層10を基材12の上に析出させて、第一の被覆基材14を形成する。適切なベース層の例としては、クロム、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルマイト(陽極酸化アルミ)が含まれるが、それらに限定されない。最後に、工程b)において、窒化クロム16を第一の被覆基材14の上に析出させて、被覆基材20を形成する。特徴的なことは、窒化クロム層16は、約45原子%未満の窒素原子%を有することである。
【0015】
本形態の変更において、ベース層及び窒化クロムを物理蒸着によって析出させる、有益な析出プロセスの例には、陰極アーク析出、蒸発、スパッタリングなどが含まれるが、それらに限定されない。陰極アーク析出は、本形態の方法を実施するために特に有益と考えられる。
【0016】
図2は、本発明の着色した被覆基材を析出させるために使用されるアーク析出システムの概略図である。当該アーク析出システム20の操作中、アークを当て、陰極原子及びガス(例えば、アルゴン、ヘリウムなど)の顕著なイオン化を引き起こして、それにより、プラズマを形成する。イオン化された金属陰極イオンは、上記で述べたように窒化物層あるいは金属層で被覆されている基材の方に、陰極の領域から向けられる。アーク析出システム20は、減圧室26の中に配置された陰極ターゲット22を含む。クロムターゲットは、本発明の様々な形態で使用される。アーク析出システム20は、少なくとも1つの陽極を含む。改良点では、減圧室26の壁28は、陽極である。特徴的なことは、陰極ターゲット22が、細長いデザイン(例えば、円筒型のあるいは棒状の)であることである。ターゲット22の断面は実質的にいかなる形状でもよいことも理解すべきであり、そのような形状の例には円形、三角形、四角形、五角形、六角形、楕円形または不規則な形状を含むが、それらに限定されない。アーク析出システム20は、ポート30を経たフィールドで公知のように、適切な減圧システムを経た基材の被覆の間、減圧に維持される。典型的には、操作圧力は、0.5〜50mTの間である。本発明の形態に従うと、クロムベース層は、まず、不活性ガス(例えば、アルゴン)を減圧室26の中に導入することによって、陰極ターゲット22から形成される。陰極ターゲット22から窒化クロム層を形成するために、窒素ガスをその後導入する。
【0017】
基材32は、陰極ターゲット22から距離d1にある基材ゾーン内に配置される。改良点では、システム20は、陰極ターゲット22について同軸的に取り付けられるらせん電磁石コイル38を含む。らせん電磁石コイル38は、別個のコイル電源40によって電力が供給される。電磁石コイル38は、電気的に絶縁されていてもよく、または、減圧室26に接続されてもよい。
【0018】
合計のアーク電流を実質的に一定に維持しながら、制御システム42は、陰極ターゲット22の各末端への電流入力を変えるために提供され、陰極ターゲット22の各末端への電流は、供給される合計のアーク電流の0〜100%の間で変化し得る。アーク電流は、析出速度と直接に相互関連があり、50Aと、ターゲットの冷却効率によって決定される上限である例えば2000Aとの間で制御し得る。このことは、コントローラー48と共に陰極ターゲット22の各末端に接続した別個のアーク電源44,46を使用して、別個のアーク電源44,46用の補完的な設定値シグナルを供給することにより、達成され得る。別の変更では、2つの補完的な電流出力を有する単一のアーク電源を使用できる。アークイニシエータ50を使い、アークを当てる。
【0019】
更に図2に関し、陰極ターゲット中のアーク電流の自己磁界に起因して、合計電流入力のより大きなフラクションを受けている陰極ターゲット22のどちらの末端に向けても、アークは引かれる傾向がある。陰極ターゲット22に沿った1つの方向にアークが動くスピードは、陰極ターゲット22の各末端の中に流れ込んでいる電流間の不均衡の程度によって部分的に決定される。したがって、アークスポットは、振動のやり方で陰極ターゲット22の2つの末端間の電流の分割を変えることによって、陰極ターゲット22に沿って前後にスキャンされ得る。したがって、陰極ターゲット22は均一に浸食され得るのであり、従来技術に教示されているように繰り返しリスタックされるのではなく、アークは、陰極表面上に連続的に維持され得る。陰極ターゲット22の全体表面に沿ってアークスポットの自動的なスキャニングとなる、電流分割が逆転し得る時に、アークスポットが陰極ターゲット22の蒸発可能な表面の一末端に到着した時にシグナルを提供するために、陰極ターゲット12の蒸発可能な表面の各末端に、センサーを都合よく配置しても良い。
【0020】
電磁石コイル38は、アーク電源44,46と直列に接続されることができ、それにより、アーク電流は、軸方向電界を発生させるために電磁石コイル38を通して流れる。当該コイルは、陽極とアーク電源44,46の正の出力との間に接続されるので、そして、合計アーク電流は一定であるので、電磁石コイル38への電流の入力は、陰極ターゲット22の2つの末端への電流の変化に影響されない。この配置は、電磁石コイル38に電源を入れるための別個の電源の必要性を排除するが、電磁石コイル38のピッチの選択を通すことを除き、印加された電界の強度の独立した調整性を犠牲にする。
【0021】
本形態の変更では、被覆基材は、L*=85.3(±2.0)、a*=-0.10(±0.50)、及びb*=0.20(±1.0)のLab色空間座標を有する銀色を有することにより、特徴付けられる。典型的には、窒化クロム層中の窒素原子%が約3〜8%である。改良では、窒化クロム層中の窒素原子%が約2〜7%である。更に、窒化クロム層は、典型的に、約0.05〜0.15ミクロンの厚さを有する。
【0022】
別の変更では、当該被覆基材が、L*=75.0(±3.0)、a*=0.50(±0.50)、及びb*=1.80(±1.0)のLab色空間座標を有するステンレス鋼色を有する。この変更では、窒素原子%が約30〜45%である。この変更の改良では、窒素原子%が約32〜43%である。この変更の別の改良では、窒化クロム層が、約0.05〜0.15ミクロンの厚さを有する。
【0023】
更に別の変更では、当該ベース層が、クロムまたはニッケルを含む。この変更の1つの改良では、ベース層は、約0.05〜0.5ミクロンの厚さを有する。
【0024】
以下の実施例は、本発明の様々な形態を例証する。当業者は、特許請求の範囲の範囲及び本発明の本質内の多くの変更を認識するであろう。
【実施例1】
【0025】
実施例I
ステンレス鋼の時計ケースを磨き、グリットブラスト法によってマット仕上げの風合いを出し、公知の方法によって洗浄する。風合いが出された時計ケースは、陰極アーク蒸発めっき槽内に配置される。当該槽は、一般的に、ポンプの手段によって排出されるように適合される減圧室を含む円柱状の囲いである。アルゴン及び窒素ガスの源は、当該室中への窒素及びアルゴンの流れ速度を変化させるための加減弁によって、当該室に接続される。
【0026】
円柱状の陰極は、当該室の中央に取り付けられ、可変D.C.電源の負の出力に接続される。電源の正の側は、当該室の壁に接続される。陰極材料は、クロムを含む。
【0027】
当該ケースは、陰極の外側の周りのリング上に取り付けられているスピンドルの上に、取り付けられている。リング全体は、陰極の周りを回転し、一方、各スピンドルは、それ自身の軸の周りをも回転し、その結果、各スピンドルの周りに取り付けられた複数の部品のための陰極への均一な露出を提供するいわゆる惑星運動となる。リングは、典型的には、数rpmで回転し、一方、各スピンドルは、リングの回転当り数回転となる。スピンドルは、当該室からは電気的に絶縁されており、そして、被覆中にバイアス電圧が基材に印加され得るように、回転可能な接点を具備する。当該減圧室は、約10-5〜10-7Torrの圧力に排気され、約150℃に加熱される。
【0028】
その後、当該時計ケースは、高バイアスアークプラズマクリーニングにかけ、そこでは、約-600ボルトの(負の)バイアス電圧を部品に印加し一方で約500アンペアのアークを当てて陰極上に持続する。クリーニング時間は、約5分である。
【0029】
アルゴンガスを、約1〜5ミリトールの圧力を維持するのに十分な速度で、導入する。約0.10μmの平均厚さを有するクロムの層を、3分間、当該時計ケース上に析出させる。陰極アーク析出プロセスは、D.C.電力を陰極に印加して約500アンペアの電流の流れを実現し、アルゴンガスを当該槽に導入して当該槽中の圧力を約1〜5ミリトール、基材バイアスを-50ボルトに維持し、そして、上述の惑星のやり方で部品を回転することを、含む。
【0030】
クロム層を析出させた後、窒化クロムベース層をクロム層の上に析出させる。窒素流を減圧室内に導入し、一方、-50ボルトの基材バイアス及び約500アンペアでアーク放電を続ける。被覆の硬度を修正するために、窒素は、合計ガス流の50〜75%の量で存在する。このベース層の厚さは、0.20〜0.50μmの間である。その後、窒素流を、合計流の約2〜3%に顕著に低減して、x=0.5〜0.15であるCrNxの最終色層を析出させる。この最終層の厚さは、0.05〜0.15μmの間である。アークを消し、減圧室をガス抜きし、被覆物品を除去する。被覆の得られた色は、アルミニウムあるいは銀の白色金属外観を有する、L*=85.3(±2.0)、a*=-0.10(±0.50)、及びb*=0.20(±1.0)(CIELAB、D65、10°観測者)である。
【実施例2】
【0031】
実施例II
真鍮の蛇口を、約10分間、180-200°Fの温度及び8.9-9.2のpHで維持されている、標準的で周知の石鹸、洗剤、解こう剤などを含む従来の浸透洗浄剤浴の中に配置する。その後、当該真鍮の蛇口を、従来の超音波アルカリ洗浄剤浴中に配置する。当該超音波洗浄剤浴は、8.9-9.2のpHを有し、約160-180°Fの温度に維持され、従来の周知の石鹸、洗剤、解こう剤などを含む。超音波洗浄後、当該蛇口をすすぎ、従来のアルカリエレクトロ洗浄剤浴の中に配置する。
【0032】
当該エレクトロ洗浄剤浴は、約140-180°Fの温度、約10.5-11.5のpHに維持され、標準的で周知の洗剤を含む。その後、当該蛇口を2回すすぎ、従来の酸活性化剤浴の中に配置する。当該酸活性化剤浴は、約2.0-3.0のpHを有し、周囲温度にあり、フッ化ナトリウムベースの酸性塩を含む。その後、当該蛇口を2回すすぎ、明るいニッケルめっき浴の中に約12分間配置する。当該明るいニッケル浴は、NiSO4、NiCl2、ホウ酸及び光沢剤を含み、約4.0のpH、約130-150°Fの温度に維持されている、一般的に従来の浴である。約10μmの平均厚さの明るいニッケル層を、当該蛇口表面の上に析出させる。その後、ニッケルめっき蛇口を、研摩砥ぎ車を使用して風合いを出し、すべての表面上に指向性毛羽仕上げの風合い与える。減圧室を、約10-5〜10-7Torrの圧力に排気し、約150℃に加熱する。
【0033】
その後、電気メッキを施した蛇口を、高バイアスアークプラズマクリーニングにかけ、そこでは、約-600ボルトの(負の)バイアス電圧が電気メッキを施した蛇口に印加され、一方、約500アンペアのアークが当てられて陰極上に持続されている。クリーニング時間は約5分である。
【0034】
アルゴンガスを、約1〜5ミリトールの圧力を維持するのに十分な速度で、導入する。約0.20μmの平均厚さを有するクロムの層を、3分間の間、当該ニッケルめっき蛇口の上に、析出させる。陰極アーク析出プロセスは、陰極にD.C.電源を印加して約500アンペアの電流の流れを実現し、アルゴンガスを当該槽の中に導入して当該槽中の圧力を約1〜5ミリトール及び-50ボルトの基材バイアスを維持し、上述の惑星のやり方で当該蛇口を回転させることを含む。
【0035】
クロム層を析出させた後、窒化クロムカラー層を、クロム層の上に析出させる。窒素の流れを減圧室の中に導入し、一方、アーク放電を約500アンペア及び-50ボルトの基材バイアスで続ける。被覆の色を修正するために、窒素が、合計ガス流の50〜75%の量で存在する。このカラー層の厚さは、0.10〜0.25μmの間にある。アークを消し、減圧室をガス抜きし、被覆物品を除去する。被覆の得られた色は、ステンレス鋼の外観を有する、L*=75.0(±3.0)、a*=0.50(± 0.50)、及びb*=1.80(±1.0)(CIELAB、D65、10°観測者)である。
【0036】
発明の形態を例証し記載したが、これらの形態が発明のすべての可能な形を例証し記載していることは、意図されない。むしろ、明細書中で使用されている用語は、限定用語ではなく記述用語であり、本発明の範囲及び本質から離れることなく様々な変更がなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を被覆して、着色した被覆基材を形成する方法であって、以下の工程:
a)前記基材の上にベース層を析出させて、第一の被覆基材を形成し;そして
b)前記第一の被覆基材の上に窒化クロム層を析出させて、着色した被覆基材を形成する、
工程を含み、
しかも、前記窒化クロム層は、約45原子%未満の窒素原子%を有し、前記ベース層と前記窒化クロム層は、物理蒸着によって析出させる、前記方法。
【請求項2】
前記の着色した被覆基材が、L=85.3(±2.0)、a=−0.10(±0.50)、及びb=0.20(±1.0)のLab色空間座標を有する銀色を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が約3〜8%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が約2〜7%である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記窒化クロム層が、約0.05〜0.15ミクロンの厚さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記の着色した被覆基材が、L=75.0(±3.0)、a=0.50(±0.50)、及びb=1.80(±1.0)のLab色空間座標を有するステンレス鋼色を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が約30〜45%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が約32〜43%である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記窒化クロム層が、約0.10〜0.25ミクロンの厚さを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ベース層が、クロム、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルマイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース層が、約0.05〜0.5ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
陰極アーク析出システム中で着色した被覆基材を製造する方法であって、
前記陰極アーク析出システムは、析出チャンバー中に配置された金属クロム含有ターゲットと、前記析出チャンバー中に配置された少なくとも1つの基材とを含み、
前記方法は、以下の工程:
a)前記析出チャンバー中に不活性ガスを導入し;
b)前記析出チャンバー中でアークを開始して、クロムを、前記金属クロム含有ターゲットから除去して、基材上に析出させ、それにより基材上にクロムベース層を形成させ;そして
c)前記析出チャンバー中に窒素ガスを導入して、窒化クロム層を、前記ベース層の上に析出させて、着色した被覆基材を形成させる、
工程を含み、
しかも、前記窒化クロム層は、約45原子%未満の窒素原子%を有する、前記方法。
【請求項13】
前記の着色した被覆基材が、L=85.3(±2.0)、a=−0.10(±0.50)、及びb=0.20(±1.0)のLab色空間座標を有する銀色を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が、約3〜8%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記窒化クロム層が、約0.05〜0.15ミクロンの厚さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記の着色した被覆基材が、L=75.0(±3.0)、a=0.50(±0.50)、及びb=1.80(±1.0)のLab色空間座標を有するステンレス鋼色を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が、約30〜45%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記窒化クロム層が、約0.1〜0.25ミクロンの厚さを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
基材;
前記基材の上に配置されたクロムベース層;及び
前記ベース層の上に配置された窒化クロム層、
を含む着色した被覆基材であって、
前記窒化クロム層は、約45原子%未満の窒素原子%を有する、前記着色した被覆基材。
【請求項20】
前記の着色した被覆基材が、L=85.3(±2.0)、a=−0.10(±0.50)、及びb=0.20(±1.0)のLab色空間座標を有する銀色を有する、請求項19に記載の着色した被覆基材。
【請求項21】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が、約3〜8%である、請求項20に記載の着色した被覆基材。
【請求項22】
前記窒化クロム層が、約0.05〜0.15ミクロンの厚さを有する、請求項21に記載の着色した被覆基材。
【請求項23】
前記の着色した被覆基材が、L=75.0(±3.0)、a=0.50(±0.50)、及びb=1.80(±1.0)のLab色空間座標を有するステンレス鋼色を有する、請求項19に記載の着色した被覆基材。
【請求項24】
前記窒化クロム層中の窒素原子%が、約30〜45%である、請求項23に記載の着色した被覆基材。
【請求項25】
前記窒化クロム層が、約0.1〜0.25ミクロンの厚さを有する、請求項23に記載の着色した被覆基材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76165(P2013−76165A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−215776(P2012−215776)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(599006524)ベイパー テクノロジーズ、インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】