説明

ストレス負荷回復促進用医薬組成物及び新規マツタケ株

【課題】ストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物を提供する。
【解決手段】マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体と、薬剤学的に許容することのできる担体とを含有する、ストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物、及び新規のマツタケFERM BP−7304株を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス負荷回復促進用医薬組成物及び新規マツタケ株に関する。本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物は、医薬品として投与することができるだけでなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料を含む)、又は飼料として飲食物の形で与えることも可能である。更には、オーラル衛生用組成物、例えば、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨剤、洗口剤、チューインガム、又はうがい剤の形で与えることも、あるいは、鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。
【背景技術】
【0002】
マツタケには種々の生理活性物質が含まれていることが知られており、例えば、特公昭57−1230号公報及び特許第2767521号明細書には、マツタケに含有される各種の抗腫瘍性物質が開示されている。前記特公昭57−1230号公報には、マツタケ菌糸体の液体培養物を熱水又は希アルカリ溶液で抽出して得られる抽出液から分離精製されたエミタニン−5−A、エミタニン−5−B、エミタニン−5−C、及びエミタニン−5−Dに、サルコーマ180細胞の増殖阻止作用があることが開示されている。また、前記特許第2767521号明細書には、マツタケ子実体の水抽出物から分離精製された分子量20〜21万のタンパク質(サブユニットの分子量=10〜11万)が抗腫瘍活性を有することが開示されている。
更に、本発明者は、マツタケ熱水抽出液、マツタケのアルカリ溶液抽出液、あるいは、マツタケ熱水抽出液又はマツタケアルカリ溶液抽出液の陰イオン交換樹脂吸着画分が、免疫増強活性を有することを既に見出している(特願2000−374号)。
【0003】
ところで、ストレスは、心身症などの社会生活適応障害を引き起こすだけでなく、生活習慣病などの発症及び進行の引き金にもなりうることが知られている。ストレスに晒されたときの心身変化に対しては、対症療法的に抗不安薬(精神安定剤)や漢方薬が処方されているものの、ストレスに伴う免疫機能変化に対する有効な対処方法は現在模索中といえる。本発明者が知る限りにおいて、ストレス負荷から開放された後、自発的な免疫力の回復を促進する作用(すなわち、ストレス負荷回復促進作用)を示す食品も知られていないし、食品中に前記ストレス負荷回復促進作用を示す物質が存在することも知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、マツタケについて、既に知られている前記の抗腫瘍活性又は免疫増強活性以外の更に別の生理活性を鋭意探索したところ、マツタケには、前記ストレス負荷回復促進作用を示す活性成分が含まれていることを新たに見出した。また、本発明者が発見した新規マツタケ株の生理活性を鋭意探索したところ、前記ストレス負荷回復促進作用を強く示す活性成分を含む新規マツタケ株を新たに見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、マツタケ[Tricholoma matsutake(S.Ito & Imai)Sing.]、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体と、薬剤学的に許容することのできる担体とを含有する、ストレス負荷に対する回復促進用の医薬組成物に関する。
【0006】
また、本発明は、マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体を、それ単独で、あるいは、所望により1又はそれ以上の食品成分と共に含有する、ストレス負荷に対する回復促進用の機能性食品に関する。
また、マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体と、オーラル衛生用組成物の担体とを含有する、ストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物に関する。
また、本発明は、マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体を、ストレス負荷に対する回復促進が必要な対象に、有効量で投与することを含む、ストレス負荷に対する回復促進方法に関する。
【0007】
また、本発明は、マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体の、ストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物、ストレス負荷に対する回復促進用機能性食品、あるいは、ストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物を製造するための使用に関する。
また、本発明は、マツタケFERM BP−7304株、あるいは、その菌糸体、培養物、又は子実体に関する。
更に、本発明は、マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケFERM BP−7304株のアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物は、
(1)マツタケ[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体]、
(2)マツタケの熱水抽出液[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体の熱水抽出液]又はその乾燥体、あるいは、
(3)マツタケのアルカリ溶液抽出液[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体のアルカリ溶液抽出液]又はその乾燥体
の少なくとも1つを、有効成分として含有し、更に、薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤を含有する。
【0009】
本発明の有効成分である、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体を調製するのに用いる前記マツタケとしては、例えば、天然のマツタケの子実体若しくは菌糸体、又は培養により得られるマツタケの菌糸体(すなわち、培養菌糸体)、培養物(Broth)、若しくは子実体を挙げることができる。ストレス負荷回復促進作用を強く示す活性成分を含む点で、本発明の新規マツタケ株であるマツタケFERM BP−7304株[Tricholoma matsutake(S.Ito & Imai)Sing.CM6271]を用いることが好ましい。
【0010】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分として用いることのできるマツタケの菌糸体としては、培養により得られる菌糸体を使用する場合には、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち、培養菌糸体)と培地との混合物から適当な除去手段(例えば、濾過)により培地を除去しただけの状態で使用することもできるし、あるいは、培地を除去した後の菌糸体から適当な手段(例えば、凍結乾燥)で水分を除去した菌糸体乾燥物の状態で使用することもできるし、更には、前記菌糸体乾燥物を粉砕した菌糸体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。また、天然の菌糸体を使用する場合には、例えば、天然の菌糸体をそのまま使用することもできるし、あるいは、天然の菌糸体から適当な手段(例えば、凍結乾燥)で水分を除去した菌糸体乾燥物の状態で使用することもできるし、更には、前記菌糸体乾燥物を粉砕した菌糸体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0011】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分として用いることのできるマツタケの培養物(Broth)としては、例えば、培養により得られる菌糸体(すなわち、培養菌糸体)と培地との混合物の状態でそのまま使用することもできるし、あるいは、前記混合物から適当な手段(例えば、凍結乾燥)で水分を除去した培養物(Broth)乾燥物の状態で使用することもできるし、更には、前記培養物(Broth)乾燥物を粉砕した培養物(Broth)乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0012】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分として用いることのできるマツタケの子実体としては、例えば、天然の子実体又は培養により得られる子実体をそのままで、あるいは、前記子実体を破砕した状態で使用することもできるし、あるいは、前記子実体から適当な手段(例えば、凍結乾燥)で水分を除去した子実体乾燥物の状態で使用することもできるし、更には、前記子実体乾燥物を粉砕した子実体乾燥物粉末の状態で使用することもできる。
【0013】
マツタケの熱水抽出液は、例えば、天然のマツタケの子実体若しくは菌糸体、又は培養により得られるマツタケの菌糸体(すなわち、培養菌糸体)、培養物(Broth)、若しくは子実体を、熱水で抽出することにより得ることができる。
熱水抽出に用いる熱水の温度は、マツタケに含有されるストレス負荷回復促進作用を示す成分が、熱水抽出液中に充分に抽出されることのできる温度である限り、特に限定されるものではないが、60〜100℃であることが好ましく、80〜98℃であることがより好ましい。
【0014】
菌糸体又は子実体を熱水抽出に用いる場合には、抽出効率が向上するように、破砕物又は粉体の状態に加工することが好ましい。
また、抽出の際には、抽出効率が向上するように、撹拌又は振盪しながら実施することが好ましい。抽出時間は、例えば、マツタケの状態(すなわち、子実体、菌糸体、又は培養物のいずれの状態であるか、あるいは、破砕物又は粉体の状態に加工した場合にはその加工状態)、熱水の温度、又は撹拌若しくは振盪の有無若しくは条件に応じて、適宜決定することができるが、通常、1〜6時間であり、2〜3時間であることが好ましい。
【0015】
得られた熱水抽出液は、不溶物が混在する状態で、そのまま、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることもできるし、あるいは、不溶物を除去してから、あるいは、不溶物を除去し、更に、抽出液中の低分子画分を除去してから、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることもできる。例えば、不溶物が混在する熱水抽出液を遠心分離することにより不溶物を除去し、得られる上清のみを、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることができる。あるいは、不溶物が混在する熱水抽出液を遠心分離して得られる前記上清を透析し、低分子画分(好ましくは分子量3500以下の画分)を除去してから、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることができる。更には、熱水抽出液(例えば、不純物が混在する熱水抽出液、前記熱水抽出液を遠心分離して得られる上清、あるいは、前記上清の透析物などを含む)から、適当な手段(例えば、凍結乾燥)で水分を除去した乾燥体の状態で、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることができる。
【0016】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分である、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体の製法は、例えば、先に説明した、マツタケの熱水抽出液の製造方法に準じた方法により実施することができる。すなわち、熱水の代わりにアルカリ溶液を用いること以外は、マツタケの熱水抽出液の前記製造方法と同様の方法により、調製することができる。例えば、天然のマツタケの子実体若しくは菌糸体、又は培養により得られるマツタケの菌糸体(すなわち、培養菌糸体)、培養物(Broth)、若しくは子実体を、アルカリ溶液で抽出することにより得ることができる。
【0017】
アルカリ溶液抽出に用いるアルカリ溶液としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)の水酸化物、特には水酸化ナトリウムの水溶液を用いることができる。前記アルカリ溶液のpHは、8〜13であることが好ましく、9〜12であることがより好ましい。アルカリ溶液抽出は、0〜30℃で実施することが好ましく、0〜25℃で実施することがより好ましい。得られたアルカリ溶液抽出液は、中和処理を実施してから、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることもできるし、あるいは、中和処理を実施することなく、そのまま、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の有効成分として用いることもできる。
【0018】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物は、マツタケ[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体]、マツタケの熱水抽出液[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体の熱水抽出液]又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液[例えば、マツタケの菌糸体、培養物(Broth)、又は子実体のアルカリ溶液抽出液]又はその乾燥体を、薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に投与することができる。
【0019】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分である、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体は、ストレス負荷に対する回復促進活性を有する。
従って、本発明における有効成分である、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体は、それ単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、ストレス負荷に対する回復促進が必要な対象に、有効量で投与することができる。
また、本発明における有効成分である、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体は、ストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物、ストレス負荷に対する回復促進用機能性食品、あるいは、ストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物を製造するために使用することができる。
【0020】
一般に、動物に対して、単発的に、あるいは、或る期間に亘ってストレスを与えると、通常、その動物における免疫能は低下するが、前記ストレス負荷から解放されると、自発的な免疫力の回復が起こる。本明細書における「ストレス負荷に対する回復促進活性(ストレス負荷回復促進活性)」とは、ストレス負荷から開放した後、免疫力回復期における免疫力の回復を、自発的な回復よりも促進する活性を意味する。
【0021】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の投与時期は、ストレス負荷により一時的に低下した免疫力を、その投与により回復促進可能である限り、特に限定されるものではなく、例えば、ストレス負荷の前、ストレス負荷中、及び/又はストレス負荷から開放した後の免疫力回復期に投与することができる。
【0022】
なお、本発明における前記「ストレス負荷回復促進活性」は、本発明者が先に見出した前記の単なる「免疫増強活性」とは異なる。すなわち、「免疫増強活性」とは、そのような活性を有する有効成分を投与した場合に、投与前の状態(ストレスの負荷がなく、免疫力が通常の状態であることもできるし、あるいは、ストレス負荷により、免疫力が低下している状態であることもできる)と比較して、免疫力の向上がみられる活性を一般に意味し、従って、免疫力それ自体を向上させる活性である。一方、本発明における「ストレス負荷回復促進活性」とは、前述のように、免疫力回復期における免疫力の回復を促進する活性であって、従って、免疫力の回復速度を向上させる活性である。本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物を投与すると、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物を投与しない場合と比較して、免疫力の回復速度が上昇する。
【0023】
更には、「免疫増強活性」においては、そのような活性を有する有効成分を投与すると、直接的に、免疫力の向上がみられるのに対して、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物における有効成分である、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体を、予め、ストレスを負荷する前に対象動物に投与しておくと、ストレス負荷中及び免疫力回復期中に、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体を投与しなくても、免疫力回復期において免疫力の回復が促進される。この点においても、「免疫増強活性」と本発明における「ストレス負荷回復促進活性」とは、異なる活性である。
【0024】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がなく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの非経口剤を挙げることができる。
【0025】
これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0026】
非経口投与方法としては、注射(皮下、静脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなかで、注射剤が最も好適に用いられる。
例えば、注射剤の調製においては、有効成分の他に、例えば、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを任意に用いることができる。
また、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物は、徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて投与してもよい。例えば、本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ませて、このペレットを治療又は予防すべき組織中に外科的に移植することができる。
【0027】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物は、これに限定されるものではないが、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体を、0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜80重量%の量で含有することができる。
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物を用いる場合の投与量は、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、症状の程度、又は投与方法などに応じて適宜決定することができ、経口的に又は非経口的に投与することが可能である。
【0028】
また、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料を含む)、又は飼料として飲食物の形で与えることも可能である。更には、オーラル衛生用組成物、例えば、口中に一時的に含むものの、そのほとんどを口中より吐き出す形態、例えば、歯磨剤、洗口剤、チューインガム、又はうがい剤の形で与えることも、あるいは、鼻から吸引させる吸入剤の形で与えることも可能である。例えば、マツタケ、マツタケの熱水抽出液又はその乾燥体、あるいは、マツタケのアルカリ溶液抽出液又はその乾燥体を、添加剤(例えば、食品添加剤)として、所望の食品(飲料を含む)、飼料、歯磨剤、洗口剤、チューインガム、又はうがい剤等に添加することができる。
【0029】
本発明のマツタケFERM BP−7304株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター[(旧)工業技術院生命工学工業技術研究所(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)]に平成12年9月14日より寄託しているものである。このマツタケFERM BP−7304株は、京都府亀岡市で採取したマツタケCM6271株から子実体組織を切り出し、試験管内で培養することにより、菌糸体継代株を得たものであり、呉羽化学工業株式会社生物医学研究所で維持している。
【0030】
本発明のマツタケFERM BP−7304株の子実体の形態は、今関六也・本郷次雄編の「原色日本新菌類図鑑(I)」、保育社(大阪)、昭和62年発行、プレート(Plate)15及び77頁記載のマツタケ子実体に合致するものであった。本発明のマツタケFERM BP−7304株の継代は、エビオス寒天斜面培地で実施することができる。前記菌株の菌糸体を大量培養する場合には、液体培地に摂取し、例えば、静置培養、振とう培養、又はタンク培養により実施することができる。
【0031】
本発明のマツタケFERM BP−7304株の菌糸体をエビオス寒天平板培地に接種すると、白色の菌糸が放射状に密に生育し、大きなコロニーを形成する。走査型電子顕微鏡で観察すると、太さ1〜2μmの枝状の菌糸体が無数に存在し、菌糸体側部に数μm程の突起物が時々みられる。なお、マツタケFERM BP−7304株は、もっぱら菌糸体の形状で継代維持又は培養することが可能であるが、子実体の形状となることもある。
【0032】
以下、本発明のマツタケFERM BP−7304株の菌学的性質について説明する。
(1)麦芽エキス寒天培地における培養的・形態的性質
本発明のマツタケFERM BP−7304株は、麦芽エキス寒天培地においては、白色の菌糸が放射状に密に生育してコロニーを形成する。接種30日目のコロニー径は約4cmである。
【0033】
(2)ポテト・グルコース寒天培地、ツアペック寒天培地、サブロー寒天培地、オートミール寒天培地、合成ムコール寒天培地、及びフェノールオキシダーゼ反応検定用培地における培養的・形態的性質
本発明のマツタケFERM BP−7304株は、ポテト・グルコース寒天培地、ツアペック寒天培地、サブロー寒天培地、オートミール寒天培地、合成ムコール寒天培地、又はフェノールオキシダーゼ反応検定用培地のいずれの培地においても、接種1ヶ月経過しても菌糸の発育はほとんど見られない。
【0034】
(3)YpSs寒天培地における培養的・形態的性質
本発明のマツタケFERM BP−7304株は、YpSs寒天培地においては、白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約5mmである。
【0035】
(4)グルコース・ドライイースト寒天培地における培養的・形態的性質
本発明のマツタケFERM BP−7304株は、グルコース・ドライイースト寒天培地においては、白色の光沢を有し、マット状に生育する。接種30日目の生育距離は約2mmである。
【0036】
(5)最適生育温度及び生育の範囲
滅菌処理した液体培地(3%グルコース,0.3%酵母エキス;pH7.0)10mLの入った100mL容三角フラスコに、本発明のマツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、5〜35℃の種々の温度でそれぞれ培養し、28日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、重量を測定した。その結果、菌体重量は5〜15℃の範囲で直線的に増加し、15〜25℃の範囲で緩やかに増加した。27.5℃以上ではほとんど増殖しなかった。最適生育温度は15〜25℃である。
【0037】
(6)最適生育pH及び生育の範囲
液体培地(3%グルコース,0.3%酵母エキス)のpHを1mol/L塩酸又は1mol/L水酸化カリウムで調製して、pHが3.0〜8.0の範囲の種々の培地を調製して生育pH値を調べた。各培地をフィルター滅菌し、培地10mLを滅菌済100mL容三角フラスコに分注した。本発明のマツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種後、22℃で培養し、28日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、重量を測定した。その結果、菌体の生育限界はpH3.0〜7.0の範囲にあり、最適生育pHは4.0〜6.0であった。
【0038】
(7)対峙培養による帯線形成の有無
エビオス寒天平板培地に、本発明のマツタケFERM BP−7304株のブロック(約3mm×3mm×3mm)と、後述の表1に示す13種類のマツタケ株の各ブロック(約3mm×3mm×3mm)とを、約2cm間隔に対峙して植菌し、22℃で3週間培養した後、両コロニー境界部に帯線が生じるか否かを判定した。
その結果、本発明のマツタケFERM BP−7304株は、表1に示す13種類のマツタケ株のいずれの株に対しても、明確な帯線を形成しなかった。なお、マツタケでは、異株間対峙培養で帯線は生じないとされており、表1に示す13種類のマツタケ株間についても、明確な帯線を形成した組み合わせはなかった。
【0039】
(8)栄養要求性
滅菌処理した菌根菌用合成培地(Ohtaら,Trans.Mycol.Soc.Jpn.,31,323,1990)10mLの入った100mL容三角フラスコに、本発明のマツタケFERM BP−7304株の種菌約2mgを接種し、22℃で培養し、42日目にフラスコから菌体を取り出し、蒸留水でよく洗浄した後に乾燥させ、重量を測定したところ、菌体441mgが得られた。
【0040】
前記菌根菌用合成培地中の炭素(C)源であるグルコースの代わりに、28種類の糖質関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、本発明のマツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体重量を測定した。
その結果、菌体重量が多かった糖質関連物質から菌体重量が少なかった糖質関連物質を順に示せば、以下のとおりである:
小麦デンプン>トウモロコシデンプン>デキストリン>メチルβグルコシド>セロビオース>マンノース>フラクトース>アラビノース>ソルビトール>グルコース>ラクトース>グリコーゲン>マンニトール>リボース>マルトース>トレハロース>ガラクトース>ラフィノース>メリビオース>N−アセチルグルコサミン。
なお、セルロース、ダルチトール、シュークロース、キシロース、メチルαグルコシド、イヌリン、イノシトール、又はソルボースでは菌の発育はほとんどみられなかった。
【0041】
次に、前記菌根菌用合成培地中の窒素(N)源である酒石酸アンモニウムの代わりに、15種類の窒素関連物質のいずれか1つを加えた各培地に、本発明のマツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体重量を測定した。
その結果、菌体重量が多かった窒素関連物質から菌体重量が少なかった窒素関連物質を順に示せば、以下のとおりである:
コーンステイープリカー>大豆ペプトン>ミルクペプトン>硝酸アンモニウム>硫酸アンモニウム>酒石酸アンモニウム>炭酸アンモニウム>アスパラギン>リン酸アンモニウム>塩化アンモニウム>硝酸ナトリウム>肉エキス>酵母エキス>カザミノ酸>クロレラ>トリプトーン>硝酸カリウム。
【0042】
更に、前記合成培地中のミネラル及びビタミン類の内、特定一成分を除去した培地に、本発明のマツタケFERM BP−7304株を接種して培養し、培養終了後、菌体重量を測定した。
その結果、塩化カルシウム・ニ水和物、硫酸マンガン(II)・五水和物、硫酸亜鉛・七水和物、硫酸コバルト・七水和物、硫酸銅・五水和物、硫酸ニッケル・六水和物、塩酸チアミン、ニコチン酸、葉酸、ビオチン、塩酸ピリドキシン、塩化カーニチン、アデニン硫酸・二水和物、又は塩酸コリンのいずれか1つの欠損によっては、菌体重量にはほとんど影響なかった。一方、硫酸マグネシウム・七水和物、塩化鉄(II)、又はリン酸二水素カリウムのいずれか1つを培地から除くと、菌体重量は顕著に減少した。すなわち、マグネシウム、鉄、リン、及びカリウムは、本発明のマツタケFERM BP−7304株の増殖に必須と考えられる。
【0043】
(9)DNAの塩基組成(GC含量)
本発明のマツタケFERM BP−7304株のGC含量は、49.9%である(後述の分析例2参照)。
【0044】
(10)RAPD法により生成するDNAパターン
6種類の異なるPCR(polymerase chain reaction)用プライマー(10mer;具体的な塩基配列については、後述の分析例1を参照のこと)をそれぞれ単独で用いるRAPD(random amplified polymorphic DNA)法により生成するDNAパターンについて、本発明のマツタケFERM BP−7304株と、44種類のマツタケ株(具体的な菌株名については、後述の分析例1を参照のこと)とを比較したところ、本発明のマツタケFERM BP−7304株は、44種類のマツタケ株のいずれとも異なるDNAパターンを示した。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:マツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末の調製》
マツタケFERM BP−7304株菌糸体を、滅菌処理した培地(3%グルコース,0.3%酵母エキス,pH6.0)100mLの入った500mL容三角フラスコ10本に接種し、22℃で250rpmの振盪培養機で4週間培養を行なった。得られた培養物を濾布濾過し、菌糸体を分離した後、蒸留水で充分に洗浄した。−60℃に凍結した後、凍結乾燥機(MINIFAST MOD.DO.5;Edwards社)を用いて凍結乾燥することにより、乾燥菌糸体10.1gを得た。得られた菌糸体を、ホモブレンダー(Wonder Blender;大阪ケミカル社)を用いて粉砕することにより、乾燥物粉末9.8gを得た。
【0046】
《実施例2:マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液及びアルカリ溶液抽出液の各乾燥物粉末の調製》
前記実施例1と同様の手順により調製したマツタケFERM BP−7304株菌糸体の乾燥物粉末15gを、1L容のビーカーに移し、純水600mLを加えた後、スターラー撹拌下、93〜98℃のウオーターバス中で3時間抽出した。抽出終了後、室温まで冷却し、遠心分離(12000rpm,20分間)により、上清を得た。
沈殿部には純水300mLを加え、前記と同様の処理を行なった。この操作を計3回行ない、全ての上清を合わせて、透析膜(Spectra/Por3 Membrane,分子量3500分画)に入れ、水道水の流水中で2日間透析した。透析膜内液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥を行ない、熱水抽出液の乾燥物粉末3.2gを得た。
【0047】
熱水抽出を実施した後に残った沈澱部に、0.5mol/L水酸化ナトリウム溶液400mLを加えた後、スターラー撹拌下、25℃で1時間抽出した。抽出終了後、遠心分離(12000rpm,20分間)により、上清を得た。
沈殿部には1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液400mLを加え、前記と同様の処理を行なった。2つの上清を合わせ、1.0mol/L塩酸にてpHを7.0に調整した後、透析膜(Spectra/Por3 Membrane,分子量3500分画)に入れ、水道水の流水中で2日間透析した。透析膜内液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥を行ない、アルカリ溶液抽出液の乾燥物粉末5.1gを得た。
【0048】
《実施例3:岩手県産マツタケ子実体の乾燥物粉末の調製》
市販の岩手県産マツタケ子実体[黒潮市場(東京都新宿区北新宿)にて購入]250gを、凍結乾燥機(MINIFAST MOD.DO.5;Edwards社)を用いて乾燥した後、ホモブレンダー(Wonder Blender;大阪ケミカル社)を用いて粉砕することにより、乾燥物粉末35gを得た。
【0049】
《実施例4:岩手県産マツタケの熱水抽出液及びアルカリ溶液抽出液の各乾燥物粉末の調製》
前記実施例3と同様の手順により調製した市販の岩手県産マツタケ子実体の乾燥物粉末20gを、1L容のビーカーに移し、純水800mLを加えた後、スターラー撹拌下、93〜98℃のウオーターバス中で3時間抽出した。抽出終了後、室温まで冷却し、遠心分離(12000rpm,20分間)により、上清を得た。
沈殿部には純水500mLを加え、前記と同様の処理を行なった。この操作を計3回行ない、全ての上清を合わせて、透析膜(Spectra/Por3 Membrane,分子量3500分画)に入れ、水道水の流水中で2日間透析した。透析膜内液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥を行ない、熱水抽出液の乾燥物粉末1.0gを得た。
【0050】
熱水抽出を実施した後に残った沈澱部に、0.5mol/L水酸化ナトリウム溶液500mLを加えた後、スターラー撹拌下、25℃で1時間抽出した。抽出終了後、遠心分離(12000rpm,20分間)により、上清を得た。
沈殿部には1.0mol/L水酸化ナトリウム溶液500mLを加え、前記と同様の処理を行なった。2つの上清を合わせ、1.0mol/L塩酸にてpHを7.0に調整した後、透析膜(Spectra/Por3 Membrane,分子量3500分画)に入れ、水道水の流水中で2日間透析した。透析膜内液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥を行ない、アルカリ溶液抽出液の乾燥物粉末5.1gを得た。
【0051】
《実施例5:長野県産マツタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末の調製》
岩手県産マツタケ子実体の代わりに、長野県産マツタケ子実体を用いたこと以外は、前記実施例4の手順をそのまま繰り返すことにより、マツタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末1.5gを得た。
【0052】
《比較例1:アガリクス・ブラゼイ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末の調製》
岩手県産マツタケ子実体の代わりに、市販のアガリクス・ブラゼイ(Agaricus blazei)子実体を用いたこと以外は、前記実施例4の手順をそのまま繰り返すことにより、アガリクス・ブラゼイ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末3.6gを得た。
【0053】
《比較例2:霊芝子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末の調製》
岩手県産マツタケ子実体の代わりに、市販の霊芝子実体[Ganoderma lucidum(Fr.)Karst]を用いたこと以外は、前記実施例4の手順をそのまま繰り返すことにより、霊芝子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末2.4gを得た。
【0054】
《比較例3:シイタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末の調製》
岩手県産マツタケ子実体の代わりに、市販のシイタケ子実体[Lentinus edodes(Berk.)Sing.]を用いたこと以外は、前記実施例4の手順をそのまま繰り返すことにより、シイタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末1.4gを得た。
【0055】
《分析例1:マツタケFERM BP−7304株のRAPD法による同定》
本分析例では、6種類の異なるPCR(polymerase chain reaction)用プライマー(10mer)をそれぞれ単独で用いるRAPD(random amplified polymorphic DNA)法によりそれぞれ生成する本発明のマツタケFERM BP−7304株のDNAパターンを、複数の公知マツタケ株の各DNAパターンと比較した。
【0056】
比較用の公知マツタケ株としては、表1に示す13種類を使用した。前記実施例1と同様にして、乾燥菌糸体を得、更にそれを粉砕することにより、乾燥物粉末を得た。各マツタケ株の菌糸体収量(培地100mL当たりの乾燥菌体重量,10本の平均値)と、各マツタケ株の由来(樹立施設)についても、併せて表1に示す。
【0057】
《表1》
菌番号 菌株名 収量(g) 由来(樹立施設)
1 IFO 6915 0.67 (財)発酵研究所
2 IFO 6925 0.50 (財)発酵研究所
3 IFO 6930 0.72 (財)発酵研究所
4 IFO 6935 0.65 (財)発酵研究所
5 CM 627−2 0.79 呉羽化学工業(株)
6 CM 627−4 0.80 呉羽化学工業(株)
7 IFO 30604 0.49 (財)発酵研究所
8 IFO 30605 0.71 (財)発酵研究所
9 IFO 30606 0.35 (財)発酵研究所
10 MAFF 460039 0.56 農林水産省
農業生物資源研究所
11 KT 001 0.68 呉羽化学工業(株)
12 IFO 6920 0.72 (財)発酵研究所
13 IFO 6933 0.56 (財)発酵研究所
【0058】
前記PCR用プライマーとしては、
プライマーRAPD1(配列表の配列番号1で表される塩基配列:TGGTCACCGA);
プライマーRAPD2(配列表の配列番号2で表される塩基配列:AGCGCCATTG);
プライマーRAPD3(配列表の配列番号3で表される塩基配列:TTCGAGCCAG);
プライマーRAPD4(配列表の配列番号4で表される塩基配列:TGCGTGCTTG);
プライマーRAPD5(配列表の配列番号5で表される塩基配列:GACTAGCCTC);及び
プライマーRAPD6(配列表の配列番号6で表される塩基配列:CTCACCGTCC)
を化学合成により調製し、使用した。
【0059】
RAPD法に使用するDNAは、市販のDNA調製キット(Dneasy Plant Mini Kit;QIAGEN社)を用いて、その取り扱い説明書[Dneasy Plant Mini Handbook for DNA isolation from plant tissue(March,1999,QIAGEN,K.K.,東京)]に準じて、以下の手順により調製した。
すなわち、余分な水分を除去した各マツタケ菌株の菌糸体(約100mg)をチューブに入れた後、液体窒素で凍結し、使用時まで−80℃で保存した。サンプルの入ったチューブを解凍した後、緩衝液AP1(400μL)とRNアーゼAストック溶液(RNase A stock solution)4μLとを加え、ボルテックスミキサーを用いて内容物を充分に混和させた。次いで、前記チューブを65℃のウオーターバスに入れ、10分間インキュベートした。なお、前記インキュベーション中、チューブを2〜3回反転させて混和させた。反応終了後、前記反応物に緩衝液AP2(130μL)を加え、氷冷下で5分間放置した。次いで、チューブ内容物をカラム(QIAshredder spin column)に装入し、前記カラムを2mL容の試験管に入れて、15000rpmで2分間遠心分離した。遠心分離後、カラムを通過して試験管底にたまった溶液を別の試験管に移し、液量を測定した。この際、試験管底にある細胞片には絶対触れないようにした。
【0060】
続いて、カラム通過液と同量の100%エチルアルコールと、半分量の緩衝液AP3とを試験管に加え、よく混和させた。前記溶液650μLを別のカラム(DNeasy mini spin column)に装入し、前記カラムを2mL容の試験管に入れて、8000rpmで1分間遠心分離した。遠心分離後のカラムに緩衝液AW(500μL)を装入し、前記カラムを2mL容の試験管に入れて、8000rpmで1分間遠心分離し、試験管底の溶液を廃棄した。前記カラムに緩衝液AW(500μL)を装入し、前記カラムを2mL容の試験管に入れて、15000rpmで2分間遠心分離し、試験管底の溶液を廃棄した。次に、新しい試験管を用意し、前記洗浄処理したカラムをセットし、65℃に保温した緩衝液AE(100μL)を装入し、室温で5分間おいた後、8000rpmで1分間遠心分離し、試験管底のDNA溶液を回収した。同じ操作をもう一度繰り返し、合計約200μLのDNA溶液を回収した。得られたDNAの内、20μLを1%アガロースゲル電気泳動にかけ、DNAの回収量及び純度を確認した。
【0061】
PCRは、表2に示す反応溶液(全容量=25μL)中において、94℃の変性工程(30秒間)、36℃の結合工程(1分間)、及び72℃の伸長工程(2分間)からなるサイクルを45サイクル実施する条件[但し、第1回目のサイクルの前に、94℃の予備的な変性工程(2分間)を実施し、更に、最後の第45回目のサイクルの後に、最終的な伸長工程(2分間)を実施する]で行なった。なお、表2に示す反応溶液は、Ex TaqTMバッファー、TaKaRa Ex TaqTM、及びTaq Start抗体を混合して2〜3秒後に、蒸留水、10×Ex TaqTMバッファー、dNTP、及びプライマーを添加し、最後にDNA溶液を添加することにより調製した。
【0062】
《表2》
反応溶液(1チューブ当たり)
Ex TaqTMバッファー(宝酒造) 0.8μL
TaKaRa Ex TaqTM(宝酒造) 0.2μL
Taq Start抗体(宝酒造) 0.2μL
蒸留水 8.3μL
10×Ex TaqTMバッファー(宝酒造) 2.5μL
dNTP 2.0μL
プライマー 1.0μL
DNA 10 μL
【0063】
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動法により分離して得られるDNAパターンを、図1〜図4に示す。図1は、表1における菌番号1〜6で表される比較用菌株のDNAパターンを示し、図2は、表1における菌番号7〜11で表される比較用菌株のDNAパターンを示し、図3は、表1における菌番号12〜13で表される比較用菌株のDNAパターンと、本発明のマツタケFERM BP−7304株のDNAパターンとを示し、図4は、本発明のマツタケFERM BP−7304株のDNAパターンを示す。
【0064】
図1における丸付き数字「1」〜「6」、図2における丸付き数字「7」〜「11」、及び図3における丸付き数字「12」〜「13」は、表1における菌番号1〜13に、それぞれ対応する。例えば、図1における丸付き数字「1」で示すレーンは、表1における菌番号1の菌株、すなわち、IFO 6915株の結果を示す。また、図3における丸付き数字「14」で示すレーンは、本発明のマツタケFERM BP−7304株の結果を示す。
図1〜図3における記号「RAPD1」〜「RAPD6」は、プライマーRAPD1〜RAPD6を意味する。
図4における各レーン1〜6は、それぞれ、各プライマーRAPD1〜RAPD6を用いた場合の本発明のマツタケFERM BP−7304株の結果を示す。
【0065】
また、図1〜図4における記号「M」は、DNA分子量マーカーを意味する。前記の各電気泳動では、同じDNA分子量マーカー(1kb DNA ladder,カタログ番号15415−018,Life Technologies社,GIBCO−BRL,米国)を用いた。図4において、矢印Aで示すバンドは4072bpのDNA断片であり、矢印Bで示すバンドは3054bpのDNA断片であり、矢印Cで示すバンドは2036bpのDNA断片と1636bpのDNA断片とが重なっているものであり、矢印Dで示すバンドは1018bpのDNA断片であり、矢印Eで示すバンドは、517bp、506bp、396bp、344bp、及び298bpの各DNA断片が重なっているものである。
【0066】
図1〜図4に示すように、本発明のマツタケFERM BP−7304株は、表1に示す13種類の比較用マツタケ株のいずれとも異なるDNAパターンを示した。
【0067】
また、具体的なDNAパターンは図示しないが、本発明のマツタケFERM BP−7304株は、表1に示す13種類の比較用マツタケ株以外の31種類のマツタケ株、すなわち、MAFF 460031、MAFF 460033、MAFF 460034、MAFF 460035、MAFF 460036、MAFF 460037、MAFF 460038、MAFF 460040、MAFF 460041、MAFF 460042、MAFF 460046、MAFF 460050、及びMAFF 460096(以上、農林水産省農業生物資源研究所)、CM 627−3、CM 627−5、CM 627−6、及びCM 627−7[以上、呉羽化学工業(株)]、並びにIFO 6929、IFO 6931、IFO 6932、IFO 6934、IFO 6916、IFO 6917、IFO 6918、IFO 6919、IFO 6921、IFO 6922、IFO 6923、IFO 6924、IFO 6926、及びIFO 6928[以上、(財)発酵研究所]のDNAパターンとも異なっていた。
【0068】
《分析例2:マツタケFERM BP−7304株のGC含量
前記実施例1と同様にして得られたマツタケFERM BP−7304株の菌糸体(湿重量=1.0g)の入った50mL容の三角フラスコに、1mg/mLプロテイナーゼK(メルク社,ドイツ)のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(pH7.4)溶液20mLを加え、ときどき振盪しながら、65℃で2時間反応させた。100℃で10分間の熱処理により酵素を失活させた後、37℃まで冷却し、ザイモリアーゼ(生化学工業)を適当量(約1mg)加え、更に、37℃で4時間反応させた。次いで、Tris−ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)緩衝液40mLを加え、60℃で溶菌処理してDNA抽出液を調製した。
【0069】
前記抽出液に等量のフェノールを添加して撹拌した後、遠心分離してフェノール層を除去した。得られた上清から、エチルアルコール沈澱法により粗DNAを回収した後、70〜90%エチルアルコールで洗浄した。得られた沈澱をクエン酸緩衝液5mLに再溶解し、RNアーゼ処理を実施した。次に、RNアーゼ処理溶液にフェノールを少量添加し、撹拌した後、遠心分離にてフェノール層を除去した。上清から再度、エチルアルコール沈澱法により粗DNAを回収し、70〜90%エチルアルコールで洗浄した後、2回目のRNアーゼ処理を実施した。RNアーゼ処理後、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)含有酢酸緩衝液0.5mLを添加し、イソプロパノールにてDNAを沈澱させ、遠心分離にて回収した。これを再度、70〜90%エチルアルコールで洗浄し、最終的にクエン酸緩衝液1mLに溶解し、精製DNA溶液とした。
【0070】
得られた精製DNA溶液100μLを100℃で10分間熱処理した後、氷冷し、ヌクレアーゼP1により50℃で1時間処理し、ヌクレオチドに分解した。GC含量は、高速液体クロマトグラム(LC−6A;島津製作所)により定量した。標準品として、GCキット(ヤマサ醤油)を使用し、カラムとして、YMC−Pack AQ−312(直径=6.0mm,長さ=150mm)を使用し、移動相として、0.2mol/Lリン酸アンモニウム溶液(pH約4.5)を使用した。注入量は10μLとし、検出は、波長270nmで実施し、ピーク同定は、絶対保持時間法により行なった。定量法としては、修正百分率法を使用した。
マツタケFERM BP−7304株のGC含量は、49.9%であった。
【0071】
《評価例1:ストレス負荷に対する回復促進活性の評価
(1)マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液及びアルカリ溶液抽出液の評価
本評価例では、前記実施例2でそれぞれ調製したマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末とを3.2:5.1の比率で混合した混合物を評価用サンプルとし、この評価用サンプルをマウスに4週間経口投与した後、拘束ストレスを18時間負荷し、ストレス解放後のナチュラルキラー(NK)細胞活性を測定することにより、前記サンプルの影響を検討した。
【0072】
具体的には、日本SLCから購入した8週齢雄性C57BL/6マウス(各群=5〜10匹)に、評価用サンプルの水溶液(前記実施例2でそれぞれ調製したマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末とを3.2:5.1の比率で混合した後、蒸留水に溶解した溶液)を4週間に亘って、通常の飼育用ケージ中で経口投与(50mg/kg/day)した。続いて、マウスを前記飼育ケージから取り出し、空気抜けの穴を開けた50mL容のキャップ付きポリプロピレン製遠心用チューブ(カタログ番号2341−050;テクノグラス社)にマウスを1匹ずつ閉じ込めた。このチューブ中に閉じ込められたマウスは、身動きができない状態となった。次に、それらのチューブを飼育用ケージに戻し、18時間その状態で放置することにより、拘束ストレスを与えた。18時間のストレス負荷の後、チューブからマウスを取り出し、飼育用ケージに戻し、普通の環境下で飼育した。
【0073】
前記拘束ストレスを開放してから、所定日数[0日(解放直後)、1日、3日、5日、7日、及び14日]経過後に、マウスを屠殺し、以下の手順に従って、試験管内でNK感受性の腫瘍細胞株YAC−1に対するリンパ節細胞の細胞傷害活性を測定することにより、ナチュラルキラー(NK)細胞活性を評価した。
すなわち、マウスから脾臓及び腸間膜リンパ節を無菌的に取り出し、ハンクス平衡塩類溶液(Hanks Balanced Salt Solution)を入れた無菌シャーレに移した。はさみとピンセットとでリンパ節をほぐした後、メッシュを通してリンパ球の単細胞液を調製した。10%牛胎児血清(56℃で30分間の熱処理を実施)添加RPMI1640培地で細胞を3回洗浄した後、10%牛胎児血清(56℃で30分間の熱処理を実施)、20mmol/Lの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸、及び30μg/mLゲンタマイシンをそれぞれ添加したRPMI1640培地で、細胞濃度を5×10個/mLに調整して得た細胞懸濁液をエフェクター細胞として用いた。
【0074】
一方、標的細胞として用いたYAC−1細胞は、10%牛胎児血清(56℃で30分間の熱処理を実施)添加RPMI1640培地中で、呉羽化学工業株式会社生物医学研究所で継代維持したものである。前記YAC−1細胞に放射性クロム酸ナトリウム(アマーシャムジャパン)を加え、37℃で20分間反応させた。未結合の放射性クロム酸ナトリウムを、10%牛胎児血清(56℃で30分間の熱処理を実施)添加RPMI1640培地で3回洗浄することにより除去し、放射性クロム標識腫瘍細胞を5×10個/mLに調整した。
【0075】
先に調整した前記エフェクター細胞懸濁液又はその2倍希釈系列と、前記放射性クロム標識腫瘍細胞懸濁液とを、それぞれ0.1mLずつ試験管に加え、37℃の5%炭酸ガス培養器中で4時間反応させた。なお、この際、後述する特異的傷害率を算出するために、放射性クロム標識腫瘍細胞と培地とを試験管に加えた懸濁液、そして、放射性クロム標識腫瘍細胞と界面活性剤(トリトン;最終濃度=0.05%)とを試験管に加えた懸濁液についても、37℃の5%炭酸ガス培養器中で4時間反応させた。反応終了後、10%牛胎児血清(56℃で30分間の熱処理を実施)添加RPMI1640培地1.5mLを試験管に更に加え、ミキサーで充分に混合した後、遠心分離(12000rpm,5分間,4℃)することにより、上清を得た。得られた上清の放射能活性をガンマカウンターを用いて測定した。
【0076】
特異的傷害率(S.L.:Specific Lysis)を、式:
[S.L.]={(B−B)/(Bmax−B)}×100
[式中、S.L.は、特異的傷害率(単位=%)であり、Bは、実験群における上清の放射能活性(単位=Bq)であり、Bは、自然遊離群(すなわち、放射性クロム標識腫瘍細胞単独培養群)における上清の放射能活性(単位=Bq)であり、Bmaxは、最大遊離群(すなわち、トリトン処置した放射性クロム標識腫瘍細胞群)における上清の放射能活性(単位=Bq)である]
から算出し、エフェクター細胞10個当たり30%の腫瘍細胞を傷害する細胞数、すなわち、「30%傷害単位(Lytic Units 30%;LU30)」でNK細胞活性を表示した。
【0077】
結果を図5に示す。なお、対照(健常群)試験として、評価用サンプル水溶液の代わりに、蒸留水を4週間に亘って経口投与したこと、そして、18時間の拘束ストレスを与えなかったこと以外は、前記操作をそのまま繰り返した。また、比較試験として、評価用サンプル水溶液の代わりに、蒸留水を4週間に亘って経口投与したこと以外は、前記操作をそのまま繰り返した。
【0078】
図5において、折れ線a(白四角)は、対象(健常群)試験(非ストレス)の結果を示し、折れ線b(黒丸)は、本発明による評価用サンプル(マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との3.2:5.1の比率の混合物)水溶液を投与した場合の結果を示し、折れ線c(黒三角)は、比較試験(蒸留水投与及びストレス負荷)の結果を示す。また、図5において、折れ線bにおける前記黒丸の肩に示す記号「+」は、p<0.01(折れ線cにおける黒三角で示される結果に対して)であることを示し、折れ線cにおける前記黒三角の肩に示す記号「*」は、p<0.01(折れ線aにおける白四角で示される結果に対して)であることを示す。
【0079】
図5の折れ線b,cに示すように、拘束ストレスを負荷すると、NK細胞活性は顕著に低下する。折れ線cに示すように、拘束ストレス解放後、そのまま放置してもNK細胞活性は緩やかに回復するが、折れ線bに示すように、マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との3.2:5.1の比率の混合物を添加しておくことにより、NK細胞活性の回復が有意に早まった。
【0080】
(2)マツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末、岩手県産マツタケ子実体の乾燥物粉末、及び岩手県産マツタケ子実体の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との混合物の評価
マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との3.2:5.1の比率の混合物の代わりに、前記実施例1で調製したマツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末(50mg/kg/day)、実施例3で調製した市販の岩手県産マツタケ子実体の乾燥物粉末(50mg/kg/day)、及び前記実施例4で調製した市販の岩手県産マツタケ子実体の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との1.0:5.1の比率の混合物(25mg/kg/day)を使用したこと以外は、前記評価例1(1)の手順を繰り返した。
結果を表3に示す。表3において、記号「*」は、p<0.01(蒸留水投与に対して)であることを示す。
【0081】
《表3》
NK細胞活性(LU30)
0日 1日 3日 5日 7日 14日
対照試験 49 47 48 50 48 48
(ストレス負荷なし)
比較試験 7 9 11 22 30 42
(蒸留水投与及びストレス負荷)
実施例1 10 21* 35* 46* 48* 50
実施例3 10 20* 31* 37* 49* 51*
実施例4 11 22* 37* 41* 46* 48
【0082】
(3)各種マツタケ株の乾燥物粉末の評価
マツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との3.2:5.1の比率の混合物の代わりに、前記実施例1で調製したマツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末(50mg/kg/day)と、前記分析例1で使用した表1に示す13種類のマツタケ株の乾燥物粉末(50mg/kg/day)とを使用したこと以外は、前記評価例1(1)の手順を繰り返した。
【0083】
結果を表4及び図6〜図9に示す。
表4において、記号「*」は、p<0.01(蒸留水投与に対して)であることを示す。
図6〜図9において、折れ線a(黒四角)は、対照試験(ストレス負荷なし)の結果を示し、折れ線b(白四角)は、比較試験(蒸留水投与及びストレス負荷)の結果を示す。
図6において、折れ線c(黒三角)は、本発明のマツタケFERM BP−7304株の結果を示し、折れ線d(黒菱形)は、マツタケ株IFO 6915の結果を示し、折れ線e(黒丸)は、マツタケ株IFO 6925の結果を示す。
図7において、折れ線f(黒三角)は、マツタケ株IFO 6930の結果を示し、折れ線g(黒菱形)は、マツタケ株IFO 6935の結果を示し、折れ線h(黒丸)は、マツタケ株CM 627−2の結果を示し、折れ線i(白丸)は、マツタケ株CM 627−4の結果を示す。
図8において、折れ線j(黒三角)は、マツタケ株IFO 30604の結果を示し、折れ線k(黒菱形)は、マツタケ株IFO 30605の結果を示し、折れ線l(黒丸)は、マツタケ株IFO 30606の結果を示し、折れ線m(白丸)は、マツタケ株MAFF 460039の結果を示す。
図9において、折れ線n(黒三角)は、マツタケ株KT 001の結果を示し、折れ線p(黒菱形)は、マツタケ株IFO 6920の結果を示し、折れ線q(黒丸)は、マツタケ株IFO 6933の結果を示す。
【0084】
《表4》
NK細胞活性(LU30)
菌株名 0日 1日 3日 5日 7日 14日
対照試験 48 47 46 46 47 46
(ストレス負荷なし)
比較試験 6 8 14 21 28 43
(蒸留水投与及びストレス負荷)
[実施例]
FERM BP−7304 11 25* 42* 47* 50* 48
IFO 6915 7 15 18 31 38 45
IFO 6925 9 17 19 37 41 43
IFO 6930 8 10 18 29 36 45
IFO 6935 8 13 21 32 39 42
CM 627−2 7 14 20 33 44 44
CM 627−4 8 13 19 35 41 46
IFO 30604 6 11 20 35 39 40
IFO 30605 6 14 18 36 38 45
IFO 30606 6 14 18 30 36 44
MAFF 460039 8 13 19 29 37 45
KT 001 7 15 21 34 42 41
IFO 6920 7 11 19 33 40 40
IFO 6933 7 10 17 30 37 42
【0085】
表4に示すように、マツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末、及び表1に示す13種類のマツタケ株の乾燥物粉末のいずれも、NK細胞活性の回復を促進したが、中でも、マツタケFERM BP−7304株の乾燥物粉末が、最も優れた回復促進活性を示した。
【0086】
また、表1に示す13種類のマツタケ株以外の31種類のマツタケ株、すなわち、MAFF 460031、MAFF 460033、MAFF 460034、MAFF 460035、MAFF 460036、MAFF 460037、MAFF 460038、MAFF 460040、MAFF 460041、MAFF 460042、MAFF 460046、MAFF 460050、及びMAFF 460096(以上、農林水産省農業生物資源研究所)、CM 627−3、CM 627−5、CM 627−6、及びCM 627−7[以上、呉羽化学工業(株)]、並びにIFO 6929、IFO 6931、IFO 6932、IFO 6934、IFO 6916、IFO 6917、IFO 6918、IFO 6919、IFO 6921、IFO 6922、IFO 6923、IFO 6924、IFO 6926、及びIFO 6928[以上、(財)発酵研究所]の乾燥物粉末(50mg/kg/day)を使用したこと以外は、前記評価例1(1)の手順を繰り返したところ、これらのマツタケ株においても、NK細胞活性の回復が確認されたが、本発明のマツタケFERM BP−7304株の回復促進活性を越えるものはなかった。
【0087】
(4)長野県産マツタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末、及び各種キノコの熱水抽出液乾燥物粉末の評価
前記実施例5で調製した長野県産マツタケ子実体の熱水抽出液の乾燥物粉末、あるいは、前記比較例1〜3でそれぞれ調製したアガリクス・ブラゼイ子実体、霊芝子実体、又はシイタケ子実体の各熱水抽出液乾燥物を評価用サンプルとしたこと以外は、前記評価例1(1)の操作をそのまま繰り返した。なお、投与量は、いずれも、250mg/kg/dayであった。
結果を表5に示す。表5において、記号「*」は、p<0.01(蒸留水投与に対して)であることを示す。
【0088】
《表5》
NK細胞活性(LU30)
0日 1日 3日 5日 7日 14日
対照試験 47 48 48 49 46 47
(ストレス負荷なし)
比較試験 6 8 13 26 29 44
(蒸留水投与及びストレス負荷)
実施例5 10 14* 22* 34* 37* 47
比較例1 5 7 15 27 30 37
比較例2 3 8 11 24 28 36
比較例3 4 9 10 27 29 40
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のストレス負荷回復促進用医薬組成物によれば、ストレス負荷に対する回復を促進することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1〜配列番号6の配列で表される塩基配列からなる各オリゴヌクレオチドは、プライマーRAPD1〜プライマーRAPD6である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】表1に記載の菌番号1〜6で表される公知のマツタケ株に関して、RAPD法により得られたPCR産物の電気泳動の結果を示す写真である。
【図2】表1に記載の菌番号7〜11で表される公知のマツタケ株に関して、RAPD法により得られたPCR産物の電気泳動の結果を示す写真である。
【図3】表1に記載の菌番号12〜13で表される公知のマツタケ株及び本発明のマツタケFERM BP−7304株に関して、RAPD法により得られたPCR産物の電気泳動の結果を示す写真である。
【図4】本発明のマツタケFERM BP−7304株に関して、RAPD法により得られたPCR産物の電気泳動の結果を示す写真である。
【図5】本発明のマツタケFERM BP−7304株の熱水抽出液乾燥物粉末とアルカリ溶液抽出液乾燥物粉末との3.2:5.1の比率の混合物におけるストレス負荷回復促進活性を示すグラフである。
【図6】本発明のマツタケFERM BP−7304株及び各種マツタケ株の各乾燥物粉末におけるストレス負荷回復促進活性を示すグラフである。
【図7】別の各種マツタケ株の各乾燥物粉末におけるストレス負荷回復促進活性を示すグラフである。
【図8】更に別の各種マツタケ株の各乾燥物粉末におけるストレス負荷回復促進活性を示すグラフである。
【図9】更に別の各種マツタケ株の各乾燥物粉末におけるストレス負荷回復促進活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体と、薬剤学的に許容することのできる担体とを含有する、ストレス負荷に対する回復促進用の医薬組成物。
【請求項2】
前記マツタケが、マツタケFERM BP−7304株である、請求項1に記載のストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物。
【請求項3】
前記マツタケが、菌糸体、培養物、又は子実体である、請求項1又は2に記載のストレス負荷に対する回復促進用医薬組成物。
【請求項4】
マツタケ、マツタケの熱水抽出液若しくはその乾燥体、又はマツタケのアルカリ溶液抽出液若しくはその乾燥体と、オーラル衛生用組成物の担体とを含有する、ストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物。
【請求項5】
前記マツタケが、マツタケFERM BP−7304株である、請求項4に記載のストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物。
【請求項6】
前記マツタケが、菌糸体、培養物、又は子実体である、請求項4又は5に記載のストレス負荷に対する回復促進用のオーラル衛生用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−84288(P2009−84288A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287620(P2008−287620)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【分割の表示】特願2002−533880(P2002−533880)の分割
【原出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】