説明

スパイラルスキャンによる荷物セキュリティ検査方法

スパイラルスキャンによる荷物セキュリティ検査方法は以下のステップを含む。すなわち、放射線ビームを使用して第1精度で検査対象物をスパイラルスキャンし、データ収集ユニットが検査対象物を透過する放射線ビームの透過投影データを取得すること、透過投影データにより被検領域内に疑わしい領域があるか否かを判断すること、放射線ビームを使用して第2精度で前記疑わしい領域における少なくとも一つのスライスをスキャンすることであって前記第2精度は前記第1精度よりも高いことと、前記少なくとも一つのスライスの断層撮影イメージを再構成すること、前記イメージによって危険物があるか否かを判断することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出技術に関し、特にはスパイラルスキャンによる荷物セキュリティ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反テロリズム、及び、麻薬の不正取引や密輸との戦いにおいて、セキュリティ検査は、非常に重要である。米国での9/11のテロ攻撃後、人々は民間航空のセキュリティ検査をより重要視している。麻薬の不正取引や密輸との戦いが深まるにつれて、航空コンテナや鉄道で運ばれる荷物の検査の要求が高まっている。
【0003】
現在、空港や鉄道や幹線道路輸送では、X線放射イメージ装置がセキュリティ検査装置として最も多く使用されている。放射線イメージ技術では、透視イメージが優れている。透視イメージシステムにおける最大の欠点は、放射線方向における物体のイメージの重なりの問題が解決されておらず、3次元検査を行うことができないことにある。
【0004】
例えば、プラスチック爆弾が薄いシート状に形成され、かつ分厚い物体に挟まれた状態で、そのシートが透視イメージシステムの搬送ベルトに対して平行に、すなわちX線部に対して垂直となるように置かれた場合、取得したイメージ上にシート状のものを表示することは困難である。
【0005】
技術の発展に伴って、コンピュータ断層撮影法(CT)イメージ技術は徐々に完成されたものとなり、既に手荷物検査システムに応用されている。CTシステムで荷物を検査する際には回転スキャン、及び、スキャンデータを使用して3次元イメージを再構成することが要求されている。特に、スパイラルCTシステムに関する限り、放射線源が検査対象物に対してスパイラル状の移動軌道を有するように放射線源と検査対象物との間で相対的な回転・平行移動が実行される。先行技術のスパイラルCTシステムでは、検査対象物の全てのスライスのスキャンデータ(すなわち、高精度のスキャンデータまたは完全なコンピュータスキャンデータ)を得るために、放射線源は検査対象物に対して小さいピッチでスパイラル状に移動する。この結果、従来の検査においては多大な時間を要するので、そのようなスパイラルCTシステムの検査速度は一般的に非常に遅い。しかしながら、現在では、航空、鉄道及び幹線道路輸送でのセキュリティ検査システムはオンライン・終日検査が要求されており、対象物を迅速に検査することが必要とされている。従って、先行技術のスパイラルCTシステムの検査速度は、要求された検査速度を満たしていない。確かに、スパイラルCTシステムのスキャンピッチを大きくすることによって、スキャン速度が向上し、その結果、検査速度が向上するであろう。しかしながら、前記ピッチを大きくすると、スキャン精度が低下し、その結果、再構成される3次元イメージの精度が低下し、その結果、荷物検査の精度が低下してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先行技術の上述の欠点を鑑みて、本発明の目的は、セキュリティ検査時間を短縮し、迅速かつ正確に荷物を検査する、スパイラルスキャンによる荷物セキュリティ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の技術的解決策は以下のように実行される。すなわち、荷物セキュリティ検査システムによって検査対象物を検査するための、スパイラルス
キャンによる荷物セキュリティ検査方法であって、荷物セキュリティ検査システムは、放射線ビームを発生する放射線源と、検査対象物を透過した放射線ビームの透過投影データを収集するためのデータ収集ユニットとを備える。前記方法は、
ステップA:放射線ビームを使用して第1精度で検査対象物をスパイラルスキャンし、データ収集ユニットが検査対象物を透過する放射線ビームの透過投影データを取得することと、
ステップB:透過投影データにより被検領域内に疑わしい領域があるか否かを判断し、疑わしい領域がある場合はステップCを実行し、そうでない場合は検査を終了させることと、
ステップC:放射線ビームを使用して第2精度で前記疑わしい領域における少なくとも一つのスライスをスキャンし、データ収集ユニットが前記少なくとも一つのスライスを透過する放射線ビームの透過投影データを取得することであって、前記第2精度は前記ステップAの第1精度よりも高いことと、
ステップD:前記ステップCにおいて取得した透過投影データを使用して前記少なくとも一つのスライスの断層撮影イメージを再構成するとともに、前記疑わしい領域内に危険物があるか否かを判断するために前記再構成された断層撮影イメージを使用することと
を備える。
【0008】
好ましくは、前記ステップAで検査対象物に対する放射線ビームのスキャン軌道は検査対象物に関してスパイラル状であり、そのスパイラル状の軌道のピッチは5〜10の範囲内にある。
【0009】
好ましくは、前記荷物セキュリティ検査システムはさらに検査対象物を搬送するキャリアを備え、前記ステップAで前記キャリアは回転するとともに前記検査対象物は回転面内にて前記キャリアとともに回転し、さらに、前記放射線ビーム及び前記データ収集ユニットは検査対象物の回転面に対して垂直方向に同期して移動する。
【0010】
好ましくは、前記ステップBは、危険物検査アルゴリズムを使用して透過投影データを処理するとともに、透過投影データから疑わしい領域を検索することを含む。又は、前記ステップBは、前記検査対象物の3次元イメージを再構成するために透過投影データを使用するとともに、疑わしい領域を検索するために前記3次元イメージを使用することを含む。又は、前記ステップBは、危険物検査アルゴリズムを使用して透過投影データを処理するとともに、透過投影データから疑わしい領域を検索し、その後、その疑わしい領域の3次元イメージを再構成するために疑わしい領域内の透過投影データを使用し、それにより、疑わしい領域の3次元イメージによって疑わしい領域に対する疑いを除去する若しくは維持することを含む。
【0011】
好ましくは、前記3次元イメージは、少なくとも一つの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージである。好ましくは、前記物理パラメータ分布イメージはCT再構成アルゴリズムを使用して再構成される。
【0012】
好ましくは、放射線源は単一エネルギー放射線源若しくは2重エネルギー放射線源である。好ましくは、前記放射線源が単一エネルギー放射線ビームを発生する単一エネルギー放射線源である場合、前記少なくとも一つの物理パラメータは単一エネルギーでの検査対象物の減衰係数である。好ましくは、前記放射線源は、第1エネルギーを有する放射線ビームと、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーを有する放射線ビームとを発生する2重エネルギー放射線源であり、前記少なくとも一つの物理パラメータは、原子番号、電子密度、第1エネルギーでの検査対象物の減衰係数及び第2エネルギーでの検査対象物の減衰係数のうちの少なくとも一つである。
【0013】
好ましくは、前記ステップDで、前記断層撮影イメージはスライスの少なくとも一つの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージである。好ましくは、前記スライスの物理パラメータ分布イメージはCT再構成アルゴリズムを使用して再構成される。
【0014】
好ましくは、ステップCで、前記放射線ビームはそれぞれ閉じた円形軌道内の少なくとも一つのスライスの各々をスキャンする。
好ましくは、ステップCで、前記少なくとも一つのスライスは前記疑わしい領域内の複数のスライスである。好ましくは、ステップCで、放射線ビームはスパイラル状の軌道で前記複数のスライスのスパイラルスキャンを行う。好ましくは、ステップDでさらに、複数のスライスの断層撮影イメージを一つの3次元イメージに結合するとともに、その3次元イメージによって疑わしい領域内に危険物があるか否かを判断することを備える。
【0015】
好ましくは、断層撮影イメージ及び/又は3次元イメージを表示することをさらに備える。
本発明の基本的概念は以下のようである。すなわち、本発明では、対象物は二段階方法で検査される。二段階方法の第1段階は、低い精度を示す「概略検査」と呼ばれ、検査対象物内に危険物が存在しそうな疑わしい領域を検索することを目的としている。二段階方法の第2段階は、高い精度を示す「精密検査」であり、前記疑わしい領域内に危険物が実際にあるか否かを確かめることを目的としている。
【0016】
「概略検査」では、スパイラルスキャンが第1精度で検査対象物に対して実行される。第1精度は通常の(以下、全て同様)スパイラルCTスキャンの精度よりも低い。そのため、通常のスパイラルCTスキャンに比べて、概略検査で取得したデータは低い精度スキャンデータ又は不完全なスキャンデータである。しかしながら、概略検査は危険物が存在しそうな疑わしい領域を検索するために行われるものであるので、そのような低い精度のスキャンデータ又は不完全なスキャンデータで十分である。さらに、概略検査は低い精度で行われるので、スキャン速度が比較的速く、そのために通常のスパイラルCTスキャンに比べて検査時間が短縮される。スキャン精度はスキャンピッチで示される。例えば、通常のスパイラルCTスキャンでは、スキャンピッチは通常0.5〜1.0の範囲内であるが、本発明の概略検査では、スキャンピッチは5〜10の範囲内(ここで、ピッチ値は相対ピッチである)であって、そのためスキャン速度は明らかに速くなる。
【0017】
「精密検査」では、スパイラルスキャンは第2精度で検査対象物に対して実行される。精密検査は疑わしい領域内に危険物が実際にあるか否かを確かめるために行われるものであるので、第2精度は概略検査の第1精度よりも高い。例えば、第2精度は、高い精度のスキャンデータ又は完全なスキャンデータを取得するために通常のCTスキャン又はスパイラルCTスキャンと実質的に同一である。例えば、精密検査は円形軌道スキャン又は微小ピッチスパイラルスキャン(例えば、0.5〜1.0の範囲のピッチ)を利用することができる。
【0018】
本発明の有利な効果は以下の通りである。
1.検査対象物を完全スキャン及び再構成する方法と比較して、本発明の方法は、検査対象物はまず低い精度で迅速にスパイラルスキャンされ、その後、疑わしい領域にのみ高精度コンピュータ断層撮影スキャンが行われるので、実質的に検査対象物をスキャンする時間が短く、かつ迅速で正確に荷物の検査が実現する。
【0019】
2.検査対象物の通常の透視イメージと比較して、本発明は疑わしい領域のコンピュータ断層撮影スキャンを実行し、疑わしい領域の断層撮影イメージを再構成するので、本発明により、荷物の中に意図的に隠されたプラスチック爆弾のような危険物を見つけ出すことができ、物体の透視イメージの重なりの問題が効果的に解決される。
【0020】
3.本発明では、従来の荷物セキュリティ検査システムのハードウエアを変更する必要はないので、コストが掛からずかつ本発明を容易に広めて、広く適用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の技術的解決策を明確にするために実施形態及び図面を参照しつつ本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の方法を具体化した荷物セキュリティ検査システムの一例を示しており、該システムは、放射線源1、キャリア4、データ収集ユニット3及び主制御/データ処理コンピュータ(図示せず)を備えている。放射線源1は、単一エネルギー放射線源または2重エネルギー放射線源であってもよく、例えば、X線加速器またはアイソトープ源である。単一エネルギー放射線源に関しては、一般的な6MeVの放射線ビームを発生する。単一エネルギー放射線源を使用することによって、物体の減衰係数がスキャン工程で取得できる。2重エネルギー放射線源に関しては、高周波数の異なる2種類のエネルギーの放射線ビーム、すなわち、第1エネルギー放射線ビームと第2エネルギー放射線ビームとを発生するものであってもよい。一般に、第1エネルギー放射線ビームは3MeVであり、第2エネルギー放射線ビームは6MeVである。2重エネルギー放射線源を使用することによって、原子番号、電子密度、第1エネルギー放射線ビームの減衰係数及び第2エネルギー放射線ビームの減衰係数といった物体の物理パラメータがスキャン工程で得られる。2重エネルギー放射線源の方が好ましく、システムが取得した上記物理パラメータを使用することによって荷物セキュリティ検査率が向上され、荷物セキュリティ検査の誤結果率が低減され、荷物セキュリティ検査の速度及び信頼性が実質的に向上する。
【0022】
キャリア4は水平方向内で回転し、検査対象物2を搬送するのに使用される。検査対象物2はキャリア4に固定され該キャリア4に対して相対的に移動しない。
一般にデータ収集ユニット3は、放射線源1と反対に位置する検知器アレイである。放射線源1で発生した円錐状ビームの中心の放射線が検知器アレイの中心を透過し、コーン状の放射線光の範囲は検知器アレイ全体の表面を覆っている。
【0023】
迅速で正確な検査を行うために、データ収集ユニット3はさらに、システムパラメータを正確に測定またはキャリブレーションするための手段を備えている。すなわち、システムパラメータとは、放射線源からキャリアの中心までの距離、放射線源から検出器の中心までの距離、キャリアの回転速度、放射線源及び検知器の垂直移動速度、放射線ビームエネルギー、検知器のサンプリング期間、検知器の物理的な大きさ等である。検知器の物理的な大きさとは、各検知器の要素の物理的大きさ及び検知器アレイの物理的大きさを含んでいる。測定またはキャリブレーションするための前記手段は、公知の技術であって、ここでは、詳述しない。
【0024】
主制御/データ処理コンピュータは、スキャン制御ユニットとデータ処理装置とを含んでいる。主制御/データ処理コンピュータは、単一のコンピュータ、又は、複数のコンピュータを含んだコンピュータ群やワークステーションであってもよい。前記コンピュータは、一般的に、高性能PCである。スキャン制御ユニットは、キャリア4の一定の回転速度を制御し、放射線源1と検知器アレイ3との垂直方向における同期運動を制御する。
【0025】
検査前に、検査対象物2は、まず垂直なキャリア4上に配置される。検査対象物2は、搬送ベルトやローラコンベアを介してキャリア4上に移動する。さらに、検査中に検査対象物2がキャリア4に対して相対移動しないように、検査対象物2に接触するキャリア4の表面は粗くなっているかまたは固定手段が付加的に設けられている。
【0026】
上述の準備作業が完了すると、荷物セキュリティ検査システム全体は、検査対象物のセキュリティ検査を開始する。
図2は、本発明の荷物セキュリティ検査方法の技術的解決策を実行するための工程図である。図2に示すように、ステップ101において、検査対象物は透過投影データを取得するために第1精度で迅速にスパイラルスキャンされる。ステップ102では、検査対象物に疑わしい領域があるかどうか判断される。ステップ102において、疑わしい領域があればステップ103が実行され、疑わしい領域がなければ処理が終了する。ステップ103では、疑わしい領域に対して断層撮影スキャンが第2精度で実行され、該第2精度は第1精度よりも高い。ステップ104では、疑わしい領域の断層撮影スキャンが再構成される。
【0027】
ステップ101では、単一または2重エネルギー放射線ビームが第1精度で検査対象物に対して迅速にスパイラルスキャンを行い、データ収集ユニットは検査対象物を透過した放射線ビームの透過投影データを取得する。ステップ101が実行されると、荷物セキュリティ検査システムが開始され、主制御/データ処理コンピュータは、一定の速度で検査対象物が回転するようにキャリアを制御する。放射線源及びデータ収集ユニットは垂直方向に同期して移動し、それと同時に、放射線源で発生した放射線がキャリアによって搬送された検査対象物を透過し、検査対象物を透過した透過投影データをデータ収集ユニットが受信する。検査対象物上の放射線スキャンの軌道は検査対象物に関してスパイラル状である。ステップ101において、第1精度は通常のスパイラルCTの精度に比べて低い。たとえば、一実施例として、スパイラル状の軌道のピッチは5〜10の範囲内であって、明らかに、通常のスパイラルCTのピッチに比べて大きい。スパイラルスキャン中は、スキャン領域内の位置情報及び収集された透過投影データは常に主制御/データ処理コンピュータに送信される。
【0028】
ステップ102において、ステップ101で取得した透過投影データに応じて検査対象領域内に疑わしい領域があるか否かについての判断がなされる。疑わしい領域があるかどうかの判断に関して次の3つの方法がある。
【0029】
1)公知の危険物検査アルゴリズムを使用して透過投影データを処理し、その透過投影データから疑わしい領域を検索することである。主制御/データ処理コンピュータは投影データから危険物が存在しそうな疑わしい領域を検索する危険物検査アルゴリズムを実行する。疑わしい領域があれば、その疑わしい領域の位置が記録される。
【0030】
2)主制御/データ処理コンピュータは検査対象物の3次元イメージを再構成する透過投影データ及び疑わしい領域を検索する3次元イメージを使用する。疑わしい領域があれば、その疑わしい領域の位置が記録される。第1の方法と比べてこの方法の方が信頼性を有する。
【0031】
3)第1の方法と第2の方法とを組み合わせた方法である。まず、透過投影データが危険物検査アルゴリズムを使用して処理され、透過投影データから疑わしい領域が検索される。その後、この疑わしい領域内の透過投影データを使用して疑わしい領域の3次元イメージが再構成され、疑わしい領域の3次元イメージに応じて疑わしい領域に対する疑いを解除若しくは維持する。この方法がより好ましく、特に、第1の方法が疑わしい領域を十分に正確に確認できない場合に好適である。
【0032】
上述の第2及び第3の方法では、検査対象物の再構成された3次元イメージ及び疑わしい領域の再構成された3次元イメージは、少なくとも一つの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージである。物理パラメータは、ここでは放射線源の種類に関連している。上述したように、放射線源が単一エネルギー放射線源である場合、物理パラメー
タは検査対象物の減衰係数となる。放射線源が2重エネルギー放射線源の場合、物理パラメータは、原子番号、電子密度、第1エネルギーでの検査対象物の減衰係数及び第2エネルギーでの検査対象物の減衰係数のうちの一つまたは二以上のものを含む。3次元イメージは各物理パラメータについて再構成される。この3次元イメージが再構成されるとき、データ収集ユニットは主制御/データ処理コンピュータに透過投影データを送信し、主制御/データ処理コンピュータはCT再構成アルゴリズムを使用して物理パラメータ分布イメージとしてこれら透過投影データを再構成する。放射線源が2重エネルギー放射線源の場合、3次元イメージは2重エネルギーCT再構成アルゴリズムを使用して再構成される。
【0033】
ステップ102を実行すると、データ収集ユニットは主制御/データ処理コンピュータに透過投影データを送信する。上記3つの方法のうちの一つによって検査対象物に疑わしい領域があるか否かを主制御/データ処理コンピュータが判断する。
【0034】
特に、ステップ101とステップ102とは同期して実行され、スキャンが終了すると直ちに危険物の疑わしい領域があるか否かが判断される。荷物セキュリティ検査システムは検査対象物全体を迅速にスパイラルスキャンする。すなわち、スキャンが検査対象物の底部から始まり上頂部まで到達すると、キャリア4は回転を停止し、2重エネルギー放射線源1及び検知器アレイ3は上昇・起動を停止し、主制御/データ処理コンピュータは疑わしい領域があるか否かを表示する。
【0035】
ステップ102において、疑わしい領域が見つからなかった場合、検査対象物は搬送手段を介して退避し、システムの全ての部位が次の検査のために原点位置に戻る。ステップ102において疑わしい領域が見つかった場合、ステップ103が実行される。
【0036】
ステップ103において、放射線ビームを使用して前記疑わしい領域の少なくとも一枚のスライスを第2精度でスキャンし、データ収集ユニットは前記少なくとも一枚のスライスを透過する放射線ビームの透過投影データを取得する。第2精度は実質的に通常のCTスキャン又はスパイラルCTスキャンの精度と同一である。前記少なくとも一枚のスライスは疑わしい領域内の一つ又はそれ以上の典型的なスライスであり、これらスライスは部分的に連続または不連続である。ステップ103においてスキャンは疑わしい領域のみに対して実行されるので、スキャンに要する時間は明らかに検査対象物全体を通常のCTスキャン又はスパイラルCTスキャンするのに要する時間に比べて短い。
【0037】
ステップ103を実行すると、放射線ビームはそれぞれ閉じた円形軌道内の全てのスライスをスキャンする。これらの場合、放射線源及びデータ収集ユニットは垂直方向に同期して移動し、検査すべきスライスの垂直位置に到達すると停止する。そして、主制御/データ処理コンピュータは一定の回転速度で検査対象物が回転するようにキャリアを制御する。放射線源はスライスを透過する放射線ビームを発生し、データ収集ユニットは透過投影データを受信する。疑わしい領域の複数のスライスをスキャンする場合、上述した工程を繰り返して行う。
【0038】
ステップ103が実行されるときに、スキャンする必要がある疑わしい領域に複数のスライスがあり、かつこれらのスライスが空間的に連続している場合、放射線ビームは、スパイラル状の軌道内において前記複数のスライスをスパイラルスキャンする。この場合、放射線源及びデータ収集ユニットは複数のスライスのうち最も下方のスライスが位置する垂直位置へ垂直方向に同期して移動する。その後、主制御/データ処理コンピュータは検査対象物が一定の回転速度で回転するようにキャリッジを制御し、放射線源及びデータ収集ユニットは複数のスライスのうち最も上方のスライスに到達するまで垂直方向に同期して上方向に移動する。この工程中、放射線源はこれらスライスを透過する放射線ビームを
発生し、データ収集ユニットは透過投影データを受信する。この場合、スパイラルスキャンは実質的に通常のスパイラルCTスキャンと同一である。たとえば、スパイラルスキャンのピッチは0.5〜1.0の範囲内である。
【0039】
ステップ104において、各スライスの断層撮影イメージがステップ103における透過投影データを使用して再構成され、再構成された断層撮影イメージは疑わしい領域内に危険物があるか否かの判断に利用される。断層撮影イメージは、スライスの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージである。ここで、物理パラメータと放射線源の種類との関係は上述の関連した内容と同じであるので、ここでその詳細な説明はしない。ステップ104において、データ収集ユニットはスライスの透過投影データを主制御/データ処理コンピュータに送信し、主制御/データ処理コンピュータはCT再構成アルゴリズムを使用して物理パラメータ分布イメージとしての透過投影データを再構成する。放射線源が2重エネルギー放射線源である場合、全てのスライスの断層撮影イメージが2重エネルギーCT再構成アルゴリズムを使用して再構成される。これらのスライスが空間的に連続である場合、複数の断層撮影イメージが一つの3次元イメージに結合され、該3次元イメージは疑わしい領域内に危険物があるか否かを判断するのに利用される。主制御/データ処理コンピュータは、セキュリティ検査人が観察するために、断層撮影イメージ及び/又は3次元イメージを表示する。
【0040】
ステップ104の後において、疑わしい領域に危険物が無いと判断されると、搬送手段は検査対象物を退避するように使用され、荷物セキュリティ検査システムは次の検査のために位置を戻す。
【0041】
ステップ104の後においても、疑わしい領域内に危険物がある疑いが除去されない場合、検査対象物はさらにマニュアル検査で確認するためにセキュリティ検査人に送られ、荷物セキュリティ検査システムは次の検査のために位置を戻す。
【0042】
本発明の荷物セキュリティ検査システムでは、危険物の範囲や様々な危険物の警告閾値を予め決めておく必要があり、それらは航空及び関連する部門と協議して、検査状況の変化及びセキュリティランクの変化に応じて調整されるべきであろう。検査システム全体において、機械的及び電気的制御、データ通信、イメージ再構成、データ処理及び危険物の自動検査は全てコンピュータによって行われる。図3にシステムの制御信号及びデータの流れ方向を示す。図3において、実線は制御信号を示し、点線はデータ情報を示す。操作/検査サブシステムソフトウエアは投影データ及び位置情報を取得するワークステーションで操作される。すなわち、危険物自動検査アルゴリズムは判断結果を出力し、かつ制御命令を送信することを実行する。様々なイメージがセキュリティ検査人のチェック及び操作のためにディスプレイに表示される。必要であれば、セキュリティ検査人は危険物検査を行う際に検査アルゴリズムをアシストするために手動でコンピュータを操作することができる。
【0043】
上記は本発明の一実施形態であって、本発明を限定するものではない。本発明で開示された内容によれば、当業者であれば、本発明の保護範囲の全てが含まれる同一及び代替の技術を容易に想到できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を具体化した荷物セキュリティ検査の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の荷物セキュリティ検査の全体的な技術的解決策の実行を示す工程図である。
【図3】本発明の荷物セキュリティ検査の制御信号及びデータの流れ方向を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物セキュリティ検査システムによって検査対象物を検査するための、スパイラルスキャンによる荷物セキュリティ検査方法であって、荷物セキュリティ検査システムは、放射線ビームを発生する放射線源と、検査対象物を透過した放射線ビームの透過投影データを収集するためのデータ収集ユニットとを備え、前記方法は、
ステップA:放射線ビームを使用して第1精度で検査対象物をスパイラルスキャンし、データ収集ユニットが検査対象物を透過する放射線ビームの透過投影データを取得することと、
ステップB:透過投影データにより被検領域内に疑わしい領域があるか否かを判断し、疑わしい領域がある場合はステップCを実行し、そうでない場合は検査を終了させることと、
ステップC:放射線ビームを使用して第2精度で前記疑わしい領域における少なくとも一つのスライスをスキャンし、データ収集ユニットが前記少なくとも一つのスライスを透過する放射線ビームの透過投影データを取得することであって、前記第2精度は前記ステップAの第1精度よりも高いことと、
ステップD:前記ステップCにおいて取得した透過投影データを使用して前記少なくとも一つのスライスの断層撮影イメージを再構成するとともに、前記疑わしい領域内に危険物があるか否かを判断するために前記再構成された断層撮影イメージを使用することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ステップAで検査対象物に対する放射線ビームのスキャン軌道は検査対象物に関してスパイラル状であり、そのスパイラル状の軌道のピッチは5〜10の範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記荷物セキュリティ検査システムはさらに検査対象物を搬送するキャリアを備え、前記ステップAで前記キャリアは回転するとともに前記検査対象物は回転面内にて前記キャリアとともに回転し、さらに、前記放射線ビーム及び前記データ収集ユニットは検査対象物の回転面に対して垂直方向に同期して移動することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記ステップBは、危険物検査アルゴリズムを使用して透過投影データを処理するとともに、透過投影データから疑わしい領域を検索することを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記ステップBは、前記検査対象物の3次元イメージを再構成するために透過投影データを使用するとともに、疑わしい領域を検索するために前記3次元イメージを使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記ステップBは、危険物検査アルゴリズムを使用して透過投影データを処理するとともに、透過投影データから疑わしい領域を検索し、その後、その疑わしい領域の3次元イメージを再構成するために疑わしい領域内の透過投影データを使用し、それにより、疑わしい領域の3次元イメージによって疑わしい領域に対する疑いを除去する若しくは維持することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の方法において、前記3次元イメージは、少なくとも一つの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記物理パラメータ分布イメージはCT再構成アルゴリズムを使用して再構成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、放射線源は単一エネルギー放射線源若しくは2重エネルギー放射線源であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、前記放射線源は単一エネルギー放射線ビームを発生する単一エネルギー放射線源であり、前記少なくとも一つの物理パラメータは単一エネルギーでの検査対象物の減衰係数であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、前記放射線源は、第1エネルギーを有する放射線ビームと、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーを有する放射線ビームとを発生する2重エネルギー放射線源であり、前記少なくとも一つの物理パラメータは、原子番号、電子密度、第1エネルギーでの検査対象物の減衰係数及び第2エネルギーでの検査対象物の減衰係数のうちの少なくとも一つであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記ステップDで、前記断層撮影イメージはスライスの少なくとも一つの物理パラメータについての物理パラメータ分布イメージであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記スライスの物理パラメータ分布イメージはCT再構成アルゴリズムを使用して再構成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記放射線源は単一エネルギー放射線ビームを発生する単一エネルギー放射線源であり、前記少なくとも一つの物理パラメータは単一エネルギーでの検査対象物の減衰係数であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法において、前記放射線源は、第1エネルギーを有する放射線ビームと、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーを有する放射線ビームとを発生する2重エネルギー放射線源であり、前記少なくとも一つの物理パラメータは、原子番号、電子密度、第1エネルギーでの検査対象物の減衰係数及び第2エネルギーでの検査対象物の減衰係数のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、ステップCで、前記放射線ビームはそれぞれ閉じた円形軌道内の少なくとも一つのスライスの各々をスキャンすることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、ステップCで、前記少なくとも一つのスライスは前記疑わしい領域内の複数のスライスであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、ステップCで、放射線ビームはスパイラル状の軌道で前記複数のスライスのスパイラルスキャンを行うことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、ステップDでさらに、複数のスライスの断層撮影イメージを一つの3次元イメージに結合するとともに、その3次元イメージによって疑わしい領域内に危険物があるか否かを判断することを備えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1又は19に記載の方法において、断層撮影イメージ及び/又は3次元イメージを表示することをさらに備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−536322(P2009−536322A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508094(P2009−508094)
【出願日】平成19年4月29日(2007.4.29)
【国際出願番号】PCT/CN2007/001459
【国際公開番号】WO2007/131432
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(502192546)清華大学 (20)
【出願人】(503414751)同方威視技術股▲分▼有限公司 (18)
【Fターム(参考)】