説明

スパッタリングターゲットおよびその製造方法

【課題】
ZnGaIn(x+3y/2+3z/2)薄膜をDCスパッタリングで作製可能なようにInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットの比抵抗を2.0×10−2Ω・cm以下にすること。
【解決手段】スパッタリングターゲットの結晶組織をInとZnGaとの2相にすることにより低抵抗が得られる。該2相組織は1100℃以上、1250℃未満の温度で、還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成することにより達成できる。相対密度が90%を超えるような高密度範囲でも、密度の値に関わりなく安定して2.0×10−2Ω・cm以下の比抵抗が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はInとGaとZnと酸素からなる酸化物であるInGaZn薄膜を成膜するために好適なスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
InとGaとZnと酸素とからなる酸化物薄膜は半導体的な性質と可視光に対する透明性とを兼ね備えた材料として知られており、例えば特許文献1にはIn、Znに加えてGaやAlを添加した酸化物材料が導電性透明基材として有用なことが記されている。また特許文献2にはZnIn(x+3y/2+3z/2)(ここでMはAl,Gaの少なくとも一種、x/y=0.2〜12、z/y=0.4〜1.4)が該組成の酸化物をターゲットとしてスパッタリング法またはレーザーアブレーション法で成膜することにより特に透明電極材料として最適であることが記載されている。
【0003】
さらに特許文献3にはIn、Zn、Gaを含む酸化物で、相対密度が75%以上、かつ比抵抗が50Ωcm以下であるスパッタリングターゲットとその製造方法が記されている。該文献においてはその組成は原子数比がIn:Ga:Zn=1:x:m(0.1≦x≦10、m<6)のスパッタリングターゲットが請求項3に記されているが、その目的とするところはホモロガス構造と称されるInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)の薄膜を形成する点にある。従って実施例ではInGaO(ZnO)組成のスパッタリングターゲットについて、その特性が記されている。
【0004】
ところで一般的にはスパッタリングターゲットは極力高密度である必要がある。その理由はスプラッシュあるいはノジュールと称されるスパッタリングされた薄膜中に残存する異常部分を無くすためである。これら異常部分はスパッタリングターゲットに空孔が残存するとその空孔部分で急激なスパッタリングターゲットの蒸発が生じ、ひいては薄膜中の上記異常部分発生に結びつくためである。従ってスパッタリングターゲットの高密度化に関しては様々な組成のスパッタリングターゲットに関して数多くの工夫が考案されている。上記特許文献3にも高密度化が必要なことが記されており、相対密度が96.9%のスパッタリングターゲットを得たとの実施例がある。しかしどのような方法で高密度化するかの具体的な方法は何ら記載されていない。
【0005】
もう一つのスパッタリングターゲットに要求される一般的な事項は高速成膜である。スパッタリング方法は幾つかに分類されるが中でもマグネトロンスパッタリングが高速成膜に有利であり、広く採用されている。マグネトロンスパッタリングにはDCスパッタリングとRFスパッタリングがあり、その内DCスパッタリングの方が高速成膜の観点から望ましいが、スパッタリングターゲットが酸化物すなわち絶縁体であるとスパッタ放電が停止してしまうことから一般的には酸化物スパッタリングターゲットの場合にはDCスパッタリングは採用できない。そこで酸化物スパッタリングターゲットの抵抗値を下げるためにスパッタリングターゲットの焼結の際に酸素欠損を生じさせることが特許文献4に開示されている。また酸化物の中に金属粉体を分散させて低抵抗にしてDCスパッタリングが適用できるようにする試みも特許文献5に記されている。このように酸化物スパッタリングターゲットを成膜の観点から眺めると高密度化の他に低抵抗化が重要な要素であることが判る。
【特許文献1】 特開平7−235219号公報
【特許文献2】 特開2000−44236号公報
【特許文献3】 特開2007−73312号公報
【特許文献4】 特開平6−330297号公報
【特許文献5】 特開平7−166340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べたようにZnGaIn(x+3y/2+3z/2)が透明性を有する半導体材料として有用であることが知れているが、その薄膜としての製法の多くはスパッタリングによる。上記に述べたスパッタリングの際にスパッタリングターゲットとして重要な要素は低抵抗化である。特にZnGaIn(x+3y/2+3z/2)スパッタリングターゲットの低抵抗化に関してはあまり例が無く特許文献3に僅かな記載が見られるのみである。該文献ではターゲットの密度と比抵抗の間に反比例的な相関関係があるとしており実施例では相対密度を96.9%にした際に比抵抗が1.3×10−2Ω・cmになると記載されている。但しどのような方法や手段で高密度化したかの説明は無く、ただ単に酸化物原料を混合して焼成したとのみ記載されている。
【0007】
高速成膜を実現するためにDCスパッタリングを適用しようとするとスパッタリングターゲットの抵抗を小さくしておく必要がある。経験的にはスパッタリングターゲットの比抵抗が10−2Ω・cmの桁、望ましくは2.0×10−2Ω・cm以下であれば安定して放電が可能であることが知れている。2.0×10−2Ω・cmを上回り、7.0×10−2Ω・cmまでの範囲の比抵抗の値であればDCスパッタリングが不可能ではないが放電が不安定であり、しばしば放電が停止するという不具合を生じる。従って本発明の課題はInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットで安定してDCスパッタリングが可能となるように、比抵抗が2.0×10−2Ω・cm以下となるスパッタリングターゲットを得ることにある。
【0008】
また本発明においてはターゲットの比抵抗が必ずしも密度と相関を持たない製造方法で作製することを特徴とする。原理的にきわめて密度の低い範囲、例えば理論密度に対する相対密度が90%以下のような範囲であれば密度と比抵抗はある程度の相関があると思われるが、90%を超える程度に高密度化されていればそれ以上に高密度化しても比抵抗を小さくする効果が乏しい。従って本発明では相対密度が90%を超えるような高密度範囲でも、密度の値に関わりなく安定して2.0×10−2Ω・cm以下の比抵抗が得られる製造方法を考案し、それによりDCスパッタリングが安定して可能なInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の第一の発明はInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットの結晶組織をInとGaとZnと酸素とからなる単一の相とするのではなくて2相からなる組織とすることにある。具体的にはInとZnGaとの2相からなる。この2相組織とすることでInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットの比抵抗を2.0×10−2Ω・cm以下とし、安定した放電のDCスパッタリングが可能となる。
【0010】
また本発明の第二の発明はInとGaとZnの各々の酸化物または焼成によりこれら酸化物となる化合物を所望の比率で混合し、還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成することにある。InとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットを還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で1100℃以上の温度で焼成することにより結晶組織をInとZnGaとの2相にすることが可能である。ここで言う還元性雰囲気とは酸素分圧が1体積%の雰囲気である。また実質的に酸素が流入しない閉空間とは実施例で示すように容器内に焼成体を封入して該容器に蓋を載せたような閉じた空間を指す。該還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間での焼成は焼成体の密度をさらに一層向上させるような方法にすることもできる。以下にその詳細を記す。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られたスパッタリングターゲットを用いることによりInとGaとZnと酸素とからなる薄膜を安定した放電のDCスパッタリングで成膜することが可能となり成膜速度を高めるのに著しい効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のスパッタリングターゲットは粉末冶金法で作製される酸化物ターゲットであり、本発明が特徴とする点以外は粉末冶金法に関する特許や文献に開示された方法が採用できる。先ず原料としてはIn、GaおよびZnの酸化物粉末あるいはこれら金属の炭酸塩、塩化物、硫酸塩等を用いることも出来る。この内、酸化物粉末の方が焼成時に分解生成物を生じないので好ましい。InCO、GaCl、ZnSO等の化合物を用いる場合は焼成時にこれら化合物が低温度で分解する際に発生するガスのため焼成体に空孔を生じやすいので、焼成に先立ち700〜1000℃で仮焼きを施すほうが好ましい。仮焼きの後は多量の分解生成物を生じることが無く高密度化を阻害しないので、次の段階である焼成を行うことが出来る。
【0013】
原料として酸化物粉末を使用する場合にも上記とは異なる観点から800〜1100℃の範囲で仮焼きを施しても良い。この場合仮焼き段階で混合されたIn、Ga、ZnOはその70〜95%が化合してInとGaとZnと酸素との単一相を生成する。残りの5〜30%の酸化物原料は焼成の際に焼結活性化の役目を果たすので高密度化に寄与する。従って酸化物粉末を原料とする場合には仮焼きが施される。但し該仮焼き工程を省略しても次の焼成工程において支障はない。
【0014】
酸化物原料を用いる場合その粒度は通常の粉末冶金法の教えるところに従って選定すれば良い。該粒度は平均50μm以下、好ましくは20μm以下であればよい。原料を所定の比率で秤量した後に混合を施す際に原料酸化物は粉砕されるので、結果として混合粉末は10μm程度以下の粒度になる。
【0015】
原料の純度はおよそ99%以上であれば後に示す2相分離に影響を与えないので該純度であれば構わない。1%程度の不純物が残存していてもInとZnGaとの2相分離になることを妨げない。むしろ原料純度に関してはデバイス側からの要求に従ってデバイスの障害となる不純物を減らすために、原料の中の分純物や製造工程での不純物の混入を避ける必要がある。
【0016】
上記仮焼きを施した粉末あるいは仮焼きを省略した混合粉末は一旦酸素を含む雰囲気で1100℃以上、1250℃未満の温度で焼成しても良い。酸素を含む雰囲気としては大気が簡便で望ましい。該酸素を含む雰囲気での焼成後の試料の結晶組織はInとGaとZnと酸素とからなる単一相となる。しかしこの時点での焼成後の試料の比抵抗は100kΩ・cm以上であり、とうていDCスパッタリングに供せられるような高導電率のものではない。
【0017】
上記の酸素を含む雰囲気で焼成した場合、その焼成体の比抵抗は高いので、次に還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成することにより比抵抗を2.0×10−2Ω・cm以下にすることが出来る。この場合重要なのは該焼成段階で、焼成体の結晶組織をInとZnGaとの2相とに分解することである。特許文献4には還元性雰囲気あるいは真空雰囲気のような酸素不足の雰囲気下で焼成することにより酸化物を酸素不足の状態にして低抵抗を得ることが示されている。実際に該公報では誘電体酸化物材料を例にして還元性雰囲気下の焼成で2〜60×10−2Ω・cmの比抵抗のスパッタリングターゲットが得られることが実施例に開示されている。ここで言う酸素不足とは単一相の酸化物でその酸素含有量がストイキオメトリックな値より僅か少ない状態を指す。しかしながら発明者が実験した限りではInとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットを作製するに当って、例えば還元性のアルゴンガス中で1050℃の温度で焼成してもその比抵抗は1kΩ・cmに留まりDCスパッタリングに供することが出来ない大きな比抵抗であった。その理由について該焼成体をX線回折で調べたところその結晶組織はInとGaとZnと酸素とからなる単一相であり、このことが比抵抗が大きいことと何らかの関連があるのではないかと推測された。
【0018】
そこで鋭意検討したところ還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で、かつ焼成温度を1100℃以上に高めたところ結晶組織がInとZnGaとの2相に分離し、そのような2相分離した焼成体の比抵抗は2.0×10−2Ω・cm以下の値へと小さくなることを見出した。
【0019】
上記2相分離は1080℃近傍から開始されるが完全に分離が完了するには1100℃以上の温度であることが望ましい。さらに高温であることが望ましいが、焼成温度が1250℃に達するとInが溶解し、酸化物ではなくてIn金属相としてスパッタリングターゲット中に析出し始める。従って好ましい焼成温度は1100℃以上、1250℃未満、すなわち概ね1100〜1240℃の範囲である。還元性雰囲気としては窒素、アルゴン、ヘリウム等の雰囲気が適用出来る。また真空雰囲気であっても構わない。この場合重要なのは雰囲気中の残留酸素量を1体積%以下にしておくことである。
【0020】
酸素が流入しない閉空間に焼成体を封入する方法も様々な方法を適用出来る。最も簡便な方法は加工が容易なカーボンあるいはグラファイトで出来た容器内に被焼成体を設置してさらに容器の上をカーボンあるいはグラファイトの蓋で覆い、被焼成体に容器外からの酸素が触れないようにして焼成することである。該容器および蓋は上記材料の他にアルミナやジルコニウム等の1100℃以上の高温に耐える材料であれば構わない。容器と蓋との間を接着剤を使用して隙間無く完全に密閉する必要はない。蓋を載せただけで焼成時に容器内の内圧が多少高くなるので容器外から気体が流入してくる懸念はない。該焼成が完了した後に所定の外径加工、および厚さ加工を経てスパッタリングターゲットが完了する。
【0021】
以上には一旦酸素を含む雰囲気で焼成した後に還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成する場合について述べたが、酸素を含む雰囲気での焼成は省略しても構わない。In、Ga、Znの原料を混合してその後に、還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間に封入して1100℃以上、1250℃未満の温度で焼成してもInとZnGaとの2相分離を生じて低抵抗になる。この場合にはターゲットを高密度にするために仮焼きは施しておくほうが好ましい。この場合好適な製造方法はホットプレスである。ホットプレスで焼結することにより一層の高密度化を図ることができる。ホットプレスの場合、被焼成体を平板の上に設置して焼成する場合は雰囲気を還元性のもの例えば窒素やアルゴンにする必要がある。しかしカーボンあるいはグラファイトの容器内に設置して蓋をして焼成する場合は容器周囲の雰囲気は大気で構わない。
【0022】
以上は混合時にIn、GaおよびZnの比率が所望の比率になるように秤量してから焼成する場合について述べたが、最初に秤量して焼成する原料は上記3種類でなくても構わない。その場合不足の種類の原料を後から加えて焼成することで所望の比率にすることが出来る、具体的には例えばGaとZnOを混合して一旦大気中で焼成して適度な大きさに粉砕しておく。その後Inを秤量し上記GaとZn酸化物の焼成粉と混合する。しかる後に該混合体を還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成することにより最終的に所望のIn、Ga、Zn比率でかつInとZnGaとの2相分離を生じた低抵抗のスパッタリングターゲットが得られる。以下に実施例を示すが本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
(比較例)
比較例として平均粒径が各々15、25、7μmで純度が各々99.8、99.7、99.9wt%のIn、Ga、ZnO粉末をIn:Ga:Zn=2:2:1の比率になるように秤量し、スラリー濃度66%の条件で有機溶剤を媒体としてボールミル中にて4時間混合した。混合スラリーを乾燥機に入れて有機溶剤を蒸発させた後、該乾燥粉を大気中、900℃で2時間の仮焼きを施した。その後、混合に用いたのと同じボールミルでスラリー濃度50%にて8時間の粉砕を行い、乾燥機にて有機溶剤を除去した。この後に粉砕粉100重量部に対して10重量部のポリビニルアルコール溶液(濃度10%)を加えてニーダーで混練して造粒を行った。該造粒した粉を64メッシュの篩を通して分級し、最終的に造粒粉を得た。上記で得た造粒粉を直径125mmの金型中に充填して油圧プレスで1.0トン/cmの圧力で成形をしてアルミナの平板の上に設置して大気中1200℃で焼成して外形加工と厚さ加工を施して直径100mm、厚さ5mmのスパッタリングターゲットを得た。該スパッタリングターゲットの相対密度はスパッタリングターゲットの一部を切り出して鏡面研磨し空孔の面積を測定して求めた。そのようにして求めた相対密度は89.9%であった。また比抵抗を4端子法で測定したところ100kΩ・cmと大きな値であった。さらにX線回折法で相を同定した結果図2に示すようにInGaZnOの単一相であった。
【0024】
(実施例1)
比較例1で得たスパッタリングターゲットをさらにカーボンの容器内に設置して、同じくカーボンで作製した蓋をしてホットプレス装置に入れ、雰囲気を大気として1200℃、2時間のホットプレス焼成を追加した。該カーボン容器内ホットプレスを終えたスパッタリングターゲットの密度を比較例と同様の方法で求めたところ96.4%の相対密度であった。また比抵抗を比較例と同じ4端子法で測定したところ8×10−3と極めて小さな値であった。さらに該スパッタリングターゲットの相を同定した結果、図1に示すようにInOとZnGaとの2相に分離していることが判明した。
【0025】
(実施例2)
比較例に用いたのと同じIn、Ga、ZnO原料をIn:Ga:Zn=2:2:1の比率になるように秤量し比較例と同様の混合を行った。乾燥の後、該混合粉を比較例と同様の成形をして該成形体を直接カーボンの容器内に設置して、カーボンで作製した蓋をしてから大気中1200℃、2時間のホットプレスを施した。該ホットプレス後のスパッタリングターゲットの相対密度は99.7%であり、また比抵抗は1×10−2Ω・cmと小さな値であった。さらにX線回折で求めた相はInOとZnGaとの2相であった。
【0026】
(実施例3)
比較例と同じGa、ZnO粉末をGaとZnの比率がGa:Zn=1:2になるように秤量して混合、乾燥して一旦900℃大気中で仮焼きし、該仮焼粉を比較例と同様の粉砕、造粒、成形を施し1230℃大気中で焼成した。ついで該焼成粉をボールミル中、スラリー濃度50%で24時間粉砕した後、該粉砕粉にInを加えた。この場合In:Ga:Zn=2:2:1の比率になるようにIn量を調整した。Inを加えた後、ボールミル中で混合し乾燥粉を比較例と同様の成形を施してから、カーボンの容器内に設置して、カーボンで作製した蓋をしてから大気中1200℃、2時間のホットプレスを施した。該ホットプレス体の相対密度は93.6%であり、また比抵抗は1×10−2Ω・cmであった。さらにX線回折測定による相はInOとZnGaとの2相であった。以上説明したように本発明の方法により作製されたスパッタリングターゲットはInOとZnGaとの2相であり比抵抗が2×10−2Ω・cm以下のDCスパッタリングに最適な値を示す。さらに相対密度と比抵抗が必ずしも反比例の関係にはなく、相対密度が90%を超えるような高密度範囲でも、密度の値に関わりなく安定して2.0×10−2Ω・cm以下の比抵抗が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】は本発明の方法により焼成したスパッタリングターゲットのX線回折図。
【図2】は従来の酸素を含む雰囲気で焼成したスパッタリングターゲットのX線回折図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットであって、その結晶組織がInとZnGaとの2相からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
InとGaとZnと酸素とからなるスパッタリングターゲットであって、その結晶組織がInとZnGaとの2相からなり、かつ比抵抗が1.0×10−2Ω・cm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
InとGaとZnの各々の酸化物または焼成によりこれら酸化物となる化合物を所望の比率で混合し、1100℃以上、1250℃未満の温度で還元性雰囲気あるいは実質的に酸素が流入しない閉空間で焼成することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
上記実質的に酸素が流入しない閉空間がカーボンあるいはグラファイトの型内であることを特徴とする請求項3に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
請求項3および請求項4に記載の製造方法により得られるスパッタリングターゲット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−47829(P2010−47829A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238650(P2008−238650)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(593163449)株式会社豊島製作所 (15)
【Fターム(参考)】