説明

スピーカ一体型表示装置

【課題】薄型で、かつ大きな音声出力を得ることができるスピーカ一体型表示装置を提供する。
【解決手段】筐体22と、透明基板24を透過して表示される表示部32を有し、弾性部材20により筐体22に弾性的に支持された表示装置12と、表示装置12の表示部32の形成面側および筐体22に設けた励振装置18と上記表示装置12を振動板として構成されるスピーカとを備えている。励振装置18は可動コイル14と磁石16とを含む構成、あるいは磁歪振動子、電気歪振動子あるいは圧電振動子等を用いた構成、表示装置12を静電的に振動させる静電型でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置とスピーカとを備えた携帯電話等の電子機器に使用されるスピーカ一体型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン等を含む携帯型電子機器に代表される小型電子機器においては、高機能化と同時にさらなる小型、薄型化が要求されている。このため、これらに搭載される電子部品についても、小型、薄型化の開発が進められてきた。しかしながら、個々の電子部品を単純に小型化するだけでは、電子機器の小型、高機能化の要求に対して対応できなくなりつつあり、回路基板中に半導体チップ等の種々の電子部品を内蔵する複合化や種々の機能を1つに集積するマルチチップモジュールの開発が行われている。
【0003】
一方、これらの電子機器の多くは、使用者に対して画像による情報の伝達だけでなく、音声による情報の伝達の機能を有するものが多い。このため、これらの電子機器では、液晶ディスプレイ等の表示装置とスピーカとがそれぞれ設置されている。そして、これらは別々の位置に配置されていることから、これらを複合化することでさらなる小型化を図ることが要望されている。また、例えば携帯電話では、テレビ電話としての機能も搭載されるようになっており、画像が表示される領域と音が放射される位置とが異なると、使用者は違和感を覚えやすい。さらに、複数の人が同じ携帯電話の画面を見る場合には、より出力の大きなスピーカも要望されている。これらの要求に対して、平面型スピーカを搭載することが検討されている。
【0004】
例えば、音声入力方式の電子時計において、マイクとスピーカとを兼用する透明なスピーカを表示装置と一体とした構成が示されている。このようにスピーカとマイクとを兼用するスピーカを表示装置上に設けることで、従来腕時計本体に設けていた通常のマイクやスピーカの設置スペースを不要とすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、画像を表示する表示パネルと、表示パネルを保護するための透明パネルと、電気信号に応じて振動板を振動させることにより音を放射する電気機械音響変換器と、表示パネルと透明パネルとの間に形成された空間に電気機械音響変換器から放射された音を伝達する音響伝達部材とを備え、透明パネルが音響伝達部材により電気機械音響変換器から空間に伝達された音によって振動可能なように構成されたスピーカシステムが提案されている。このような構成とすることで、例えば液晶表示装置の表示面上にスピーカの振動部分を配置可能としている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、携帯電話等のように小型化が特に要求される電子機器では、表示装置である液晶パネルと、その保護パネルで、かつスピーカとしても機能する振動板との間に密閉状態に近い空気の層が形成されると、低域の音の励振効率が低下するという問題がある。この問題を解決するために、ケースと、このケースに保持された表示装置と、この表示装置の上方で、かつこの表示装置との間にほぼ密封された空間を形成しながら保持された透光性の保護パネルと、この保護パネルの周辺部を上記ケースに結合させる弾性結合部材と、上記保護パネルおよび上記ケースの間に設置され、この保護パネルに撓み振動を励振する励振装置とを備えたパネル型スピーカも示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−281597号公報
【特許文献2】特開2003−179988号公報
【特許文献3】特開2004−336403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記第1の例では、表示装置に対して一定の空間を設けてマイクも兼用するスピーカが配置されている。また、スピーカは透明振動板と透明固定電極板との間にも空間が設けられている。このため、スピーカと表示装置との全体の厚みが厚くなる。また、この一体型構成においては、表示装置の表示面上に設けたスピーカは、透明電極が形成された透明フィルムを透明振動板とし、同様に透明電極が形成されたガラス基板を透明固定電極板としている。このため、表示装置の表示部の光はスピーカにより吸収され、輝度が小さくなる。このため、充分な輝度を得ようとすると、例えば液晶の場合にはバックライトの輝度を大きくすることが必要になる。このために、消費電力が大きくなり、携帯電子機器への使用には適さない。
【0008】
また、上記第2の例では、液晶等の画像を表示する表示装置の表示面上には、透明パネルが設けられているのみであるので、光透過率が従来に比べて低下することはないが、表示装置と透明パネルとの間の空間に音響波を伝播させるための機構が複雑となる。
【0009】
さらに、上記第3の例では、液晶等の表示装置の表示面を保護するために通常設けられている透明な保護パネルを振動させるので、光透過率が従来に比べて低下することはない。しかし、この構成においては、表示装置もケースに弾性結合部材を介して結合されており、保護パネルの撓み振動と同時に表示装置も振動するように構成するため、全体の装置構成が複雑となる。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためのもので、表示装置自体または表示装置に一体的に取り付けた振動板を振動させて平面型スピーカを構成することで、さらに薄型で、かつ大きな音声出力を得ることができるスピーカ一体型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のスピーカ一体型表示装置は、筐体と、透明基板を透過して表示される表示部を有し、弾性部材により筐体に弾性的に支持された表示装置と、表示装置の表示部の形成面側および筐体に設けた励振装置と上記表示装置を振動板として構成されるスピーカとを備えている。
【0012】
また、上記構成において、励振装置は可動コイルと磁石とを含み構成され、可動コイルは表示装置の表示部の形成面側に固定され、磁石は筐体に固定されていてもよい。
【0013】
このような構成とすることにより、表示装置を振動板とすることができるので、大きな音声出力を表示装置と同じ領域から出力することが可能となる。これにより、違和感なく画像と音声を楽しむことができる。さらに、大きな音声出力が得られるので、複数の人が同時に携帯電話等で画像を楽しむこともできる。さらに、表示装置がスピーカの振動板を兼ねるので、全体を非常に薄型にすることができる。なお、励振装置としては、可動コイルと磁石とを用いた構成だけでなく、磁歪振動子、電気歪振動子あるいは圧電振動子等を用いた構成でもよい。あるいは、表示装置を静電的に振動させる静電型でもよい。
【0014】
また、上記構成において、透明保護パネルが表示装置の表示面側に、設定した空間を介してさらに筐体に固定されており、筐体または透明保護パネルには1つ以上の開口部が設けられ、開口部からスピーカの音声が出力されるようにしてもよい。
【0015】
このような構成とすることにより、このスピーカ一体型表示装置の搭載された電子機器が落下等の衝撃を受けても、透明保護パネルにより表示装置が破損することを防止できる。
【0016】
また、本発明のスピーカ一体型表示装置は、透明基板を透過して表示される表示部を有する表示装置と、表示装置の表示部の形成面側に、設定した間隔を設けて配置された振動板を含み構成されるスピーカと、スピーカの振動板に対して設定された間隔を保持して表示装置とスピーカとを収納し、かつ表示装置の外周領域に接する領域の少なくとも一部に開口部を有する筐体とを備えた構成からなる。
【0017】
このような構成とすることにより、表示装置の裏面側に設けた振動板を有するスピーカから音声を出力し、開口部から外部に出力することができる。この振動板は表示装置とほぼ同じ大きさにすることができるので、大きな音声出力を得ることができる。また、表示装置の外周領域に開口部を設けているので、画像と音声とがほぼ同じ領域から出力されるので違和感のない視聴が可能となる。
【0018】
また、上記構成において、スピーカは、固定電極層と、固定電極層に対向し、設定された間隔を保持して配置された振動電極層とにより構成され、振動電極層を振動板とし、かつ表示装置の表示部の形成面側に固定電極層が固定されていてもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、表示装置は比較的剛性の大きな透明基板を用いることができる。また、表示装置に一体的に形成された固定電極層と振動電極層とにより静電型のスピーカを構成するが、振動板となる振動電極層を非常に薄くすることができる。この結果、静電型スピーカとして、低音域から高音域までの幅広い音域を良好な応答性を有して出力させることができる。
【0020】
また、上記構成において、スピーカは、表示装置の表示部の形成面側に一定の間隔を保持して固定された圧電振動板からなる構成であってもよい。このような構成とすることにより、表示装置の裏面側に表示装置とほぼ同じ形状の圧電振動板からなるスピーカを配置することができるので、大きな音声出力を容易に得ることができる。
【0021】
また、上記構成において、透明保護パネルが表示装置の表示面側に、設定した空間を介してさらに筐体に固定されていてもよい。このような構成とすることにより、このスピーカ一体型表示装置の搭載された電子機器が落下等の衝撃を受けても、透明保護パネルにより表示装置が破損することを防止できる。
【0022】
また、上記構成において、表示装置の表示部は自発光素子からなるものであってもよい。この場合に、自発光素子はEL素子としてもよい。あるいは、表示装置の表示部は反射型液晶からなる構成としてもよい。
【0023】
このような構成とすることにより、表示装置の表示部が形成されている面上には、励振装置の一部や振動板を配置することができる。また、透過型液晶表示装置のようなバックライトが不要であることから、全体を薄型にすることができる。さらに、EL素子とした場合には、表示装置全体をより軽量化することもできる。これにより、表示装置を振動板としても低音域から高音域までの幅広い音域を応答性よく出力することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスピーカ一体型表示装置によれば、表示装置とスピーカとを一体化することで、従来の構成に比べて薄型化が可能となり、かつ表示装置の表示部と同じ領域から音声を出力することができるので、より自然で違和感のない画像表示が可能となるという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付しており説明を省略する場合がある。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるスピーカ一体型表示装置の構成を説明する図である。本実施の形態では、携帯電話を例として、この携帯電話に搭載した場合について説明する。図1において、(a)は携帯電話1の概要を示す斜視図、(b)は本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10の断面図、(c)は表示装置12の構成を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、携帯電話1のケース2には、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10、キーボード4およびマイクロホン6や、さらに図示しないカメラ機能等が搭載されている。また、ケース2の内部には、上記装置を制御する制御回路や通信回路等を含む種々の電子回路が内蔵されている。そして、ケース2は、ヒンジ8により折り曲げる構成となっている。本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10が搭載された携帯電話1は、このスピーカ一体型表示装置10以外については、一般的な構成と同じとしてもよいので詳細な説明は省略する。
【0028】
携帯電話1に搭載されている本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10は、図1(b)に示すような構成からなる。すなわち、スピーカ一体型表示装置10は、筐体22と、透明基板24を透過して表示される表示部32を有し、弾性部材20により筐体22に弾性的に支持された表示装置12と、表示装置12の表示部32の形成面側および筐体22に設けた励振装置18と表示装置12を振動板として構成されるスピーカとを備えている。
【0029】
さらに、本実施の形態では、励振装置18は可動コイル14と磁石16とを含み構成されている。そして、可動コイル14は表示装置12の表示部32の形成面側に固定され、磁石16は筐体22に固定されている。
【0030】
さらに、図1(b)、(c)を用いて詳細に説明する。表示装置12は、図1(b)に示すように弾性部材20により、その全周が筐体22に対して弾性支持されている。この弾性部材20は、本実施の形態ではダンパーとしても作用する。励振装置18は、可動コイル14と磁石16とで構成される励振方式であり、可動コイル14は表示装置12に固定されている。また、磁石16は筐体22に固定されている。この励振装置18は、表示装置12の少なくとも対向する2辺に設けて同時に駆動させるように設定されている。なお、全周にわたって設けてもよい。
【0031】
また、表示装置12の表示部32に電気信号を与えるためのフレキシブル配線(図示せず)が表示装置12から引き出されており、携帯電話1の制御回路(図示せず)に接続されている。さらに、励振装置18の可動コイル14に電気信号を与えるためのフレキシブル配線(図示せず)も、同様に制御回路に接続されている。
【0032】
図1(c)の表示装置12の構成を示す断面図からわかるように、本実施の形態では透明基板24の一方の面上に表示部32が形成されている。この表示部32は、本実施の形態では、例えば有機EL素子からなり、透明基板24面上に、透明導電層26、有機EL層28および裏面側電極層30が積層され、かつそれぞれについて所定のパターン形状に加工されている。このような加工を行った表示部32に制御回路(図示せず)からフレキシブル配線(図示せず)を介して電気信号を入力すれば、画像表示あるいは文字表示を行うことができる。さらに、表示部32を湿度から保護するための保護膜34が、表示部32を覆うように形成されている。なお、この保護膜34は、絶縁性で、かつ耐湿性の良好な樹脂材料や無機材料を印刷方式や蒸着方式等を用いて形成することにより作製できる。あるいは、樹脂シートを接着剤により接着してもよい。さらには、これらを複合した構成としてもよい。
【0033】
透明基板24は、透明なプラスチック基板であってもよいし、ガラス基板であってもよい。ただし、できるだけ軽量にするために、その板厚は、例えば0.05mm〜0.3mm程度とすることが望ましい。なお、この表示装置12においては、透明基板24を介して表示部32の画像を見ることができる。
【0034】
以上のような構成とすることにより、表示装置12で表示を行いながら、同時にこの表示装置12を振動板として可動コイル14と磁石16とから構成される励振装置18により振動させることで音声も出力することができる。したがって、画像の表示と音声出力とが同じ領域から出力されるので、違和感なく画像を楽しむことができる。さらに、平面型のスピーカであるので大きな音声出力を得ることができるので、複数の人が同時に音声と画像とを視聴することができる。
【0035】
なお、表示装置12で表示のみ、あるいは表示しないで音声のみ出力することも当然可能である。
【0036】
さらに、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10は、表示装置12の表示部32としてEL素子を用いているので、全体に薄型で、かつ軽量にすることができる。この結果、低音域から高音域まで幅広く音声を出力することができる。さらに、音声出力の応答性も良好であるので、音の歪等の少ない良好な音質を得ることができる。
【0037】
なお、表示部32の有機EL層28は低分子タイプであってもよいし、高分子タイプであってもよい。さらに、無機ELであってもよい。また、透明導電層26は、ITO膜を用いることが好ましいが、透明で、かつ抵抗の小さな材料であれば同様に使用可能である。さらに、裏面側電極層30は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属薄膜を用いることが好ましいが、ITO膜等の透明導電膜を用いることもできる。
【0038】
図2は、本実施の形態の第1の変形例のスピーカ一体型表示装置36の構成を示す断面図である。この第1の変形例のスピーカ一体型表示装置36は、励振装置18を表示装置12の中央領域に配置したことが特徴である。すなわち、励振装置18は、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10と同じ構造で、表示装置12に可動コイル14が固定されており、磁石16は筐体22に固定されている。ただし、この励振装置18を表示装置12のほぼ中央領域に配置している。
【0039】
このように配置することにより、励振装置18を小型にすることが可能となる。なお、励振装置18は、1つのみでなくてもよい。例えば、2箇所以上に配置して、それぞれを同期させて励振させるようにしてもよい。このような励振を行うことで、より音域を広げることができるだけでなく、大きな音声出力を得ることもできる。なお、弾性部材20を励振装置18の近傍に配置してもよい。
【0040】
図3は、本実施の形態の第2の変形例のスピーカ一体型表示装置42の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)はA−A線に沿って切断した断面図である。この第2の変形例のスピーカ一体型表示装置42は、表示面側に設定した空間を介して透明保護パネル48が、さらに筐体46に固定されており、透明保護パネル48には1つ以上の開口部48aが設けられており、開口部48aからスピーカの音声が出力される。
【0041】
この第2の変形例のスピーカ一体型表示装置42では、表示装置12と励振装置18については、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置10と同じであるが、表示装置12の表示面側に一定の間隔を有して透明保護パネル48を設けている点に特徴がある。透明保護パネル48には、開口部48aが設けられているので、表示装置12より大きくなる。このために、筐体46も透明保護パネル48の形状に合せて大きくしている。さらに、表示装置12を弾性的に保持する弾性部材44を表示装置とほぼ平行に配置している。なお、弾性部材44は必ずしも平行に配置する必要はなく、図1(b)に示すような配置としてもよい。
【0042】
このような構成とすることにより、表示装置12が直接露出することがないため、携帯電話等に搭載されて落下等の衝撃を受けても表示装置12の破損を防止できる。また、音声は、例えば、図3(a)に示すように2箇所に設けた開口部48aから出力するようにすれば、より大きな音声出力を得ることができる。
【0043】
なお、この第2の変形例のスピーカ一体型表示装置42においても、第1の変形例のスピーカ一体型表示装置36と同様の構成とすることができる。さらに、開口部48aを表示装置12の外周領域となる透明保護パネル48に設けているが、表示装置12の表示面となる領域に設けてもよい。
【0044】
また、第1の変形例および第2の変形例を含む本実施の形態のスピーカ一体型表示装置では、励振装置を可動コイルと磁石とによる電磁方式として説明したが、例えば静電型としてもよい。静電型方式の場合には、表示装置の表示部の形成面側に第1の電極層を設け、この第1の電極層に対向し、一定の間隔を保持して第2の電極層を設ける。そして、この第2の電極層を筐体に固定して固定電極層とし、第1の電極層が設けられている表示装置を振動板とするように電圧を印加すれば、静電型のスピーカを構成することができる。なお、第2の電極層は筐体に直接設けてもよい。表示装置を、例えば薄い透明なプラスチック基板上に有機EL素子を形成した場合等では、軽量化も可能であるので静電型の振動板とすることもできる。
【0045】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態にかかるスピーカ一体型表示装置50の構成を説明する図である。本実施の形態においても、携帯電話を例として、この携帯電話に搭載した場合について説明する。図4において、(a)スピーカ一体型表示装置50の平面図、(b)はそのB−B線に沿って切断した断面図、(c)はスピーカ52を一体化した表示装置12の構成を示す断面図である。
【0046】
本実施の形態のスピーカ一体型表示装置50は、透明基板24を透過して表示される表示部32を有する表示装置12と、表示装置12の表示部32の形成面側に、設定した間隔を設けて配置された振動板58を含み構成されるスピーカ52と、スピーカ52の振動板58に対して設定された間隔を保持して表示装置12とスピーカ52とを収納し、かつ表示装置12の外周領域に接する領域の少なくとも一部に開口部62aを有する筐体62とを備えている。
【0047】
さらに、スピーカ52は、固定電極層54と、固定電極層54に対向し、設定された間隔を保持して配置された振動電極層とにより構成され、この振動電極層を振動板58とし、かつ表示装置12の表示部32の形成面側に固定電極層54が固定されている。
【0048】
さらに、図4を用いて詳細に説明する。スピーカ52と一体で構成される表示装置12は、図4(b)に示すように筐体62に固定されている。表示装置12の外周領域に接する領域の筐体62には、開口部62aが複数形成されている。スピーカ52および表示装置12は、振動板58が筐体62に対して一定の間隔を有するようにして取り付けられている。
【0049】
なお、表示装置12の表示部32に電気信号を与えるためのフレキシブル配線(図示せず)が表示装置12から引き出されており、携帯電話の制御回路(図示せず)に接続されている。さらに、スピーカ52を構成する固定電極層54と振動板(振動電極層)58に対して、電気信号を与えるためのフレキシブル配線(図示せず)も、同様に制御回路に接続されている。
【0050】
つぎに、図4(c)を用いてスピーカ52と表示装置12との一体構成について説明する。本実施の形態においても、表示装置12は第1の実施の形態で説明した表示装置と同じ構成である。すなわち、透明基板24の一方の面上に表示部32が形成されている。この表示部32は、本実施の形態でも、例えば有機EL素子からなり、透明基板24面上に、透明導電層26、有機EL層28および裏面側電極層30が積層され、かつそれぞれについて所定のパターン形状に加工されている。このような加工を行った表示部32に制御回路(図示せず)からフレキシブル配線(図示せず)を介して電気信号を入力すれば、画像表示あるいは文字表示を行うことができる。さらに、表示部32を湿度から保護するための保護膜34が、表示部32を覆うように形成されている。なお、この保護膜34は、絶縁性で、かつ耐湿性の良好な樹脂材料や無機材料を印刷方式や蒸着方式等により形成することができる。あるいは、樹脂シートを接着剤により接着してもよい。さらには、これらを複合した構成としてもよい。
【0051】
透明基板24は、透明なプラスチック基板であってもよいし、ガラス基板であってもよい。本実施の形態では、表示装置12を振動させる構成ではないため、その板厚については特に制約はない。ただし、携帯型電子機器に使用するために、できるだけ軽量で、かつ薄型とすることが望ましい。なお、この表示装置12においては、透明基板24を介して表示部32の画像を見ることができる。
【0052】
さらに、本実施の形態の場合には、表示装置12の絶縁性の保護膜34上にスピーカ52が一体的に固定されている。このスピーカ52は、表面に導電層56が形成された固定電極層54と振動板58である振動電極層とがスペーサ60により固定された構造からなる。そして、このスピーカ52は、表示装置12に接着剤等により固定されている。
【0053】
固定電極層54は、樹脂シートの表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等をスパッタリングにより形成した導電層56からなる。しかし、このような構成に限定されない。例えば、ステンレスや銅(Cu)等の金属シートでもよい。振動板58についても同様で、例えば表面に電極膜が形成された樹脂シートでもよいし、あるいは金属シートでもよい。ただし、電圧を印加したときに応答性よく振動することが要求されるので、軽量で、かつ薄く、しかもヤング率の大きな材料を用いることが望ましい。例えば、2μm〜10μmの厚みのチタン(Ti)やボロン(B)からなるシートや、2μmの厚みを有するポリイミドシート上に50nm程度の厚みでアルミニウム(Al)膜を形成したものを用いてもよい。
【0054】
なお、固定電極層54と振動板58との間隔は、5μm〜100μm程度の範囲で、かつ全面にわたって均一な間隔とすることが要求される。したがって、固定電極層54と振動板58とをスペーサ60に対して取り付ける場合には、特に振動板58に撓みやたるみ等が生じないようにすることが要求される。
【0055】
このような構成のスピーカ52を表示装置12に、例えば接着剤により接着して固定すれば、スピーカ52を表示装置12と一体的に構成することができる。
【0056】
なお、表示装置12の保護膜34上に直接固定電極層となる導電層を、例えばスパッタリング等により形成してもよい。この場合には、保護膜34上に形成した導電層が固定電極層となる。導電層を形成後、スペーサを取り付け、さらに振動板となる振動電極層をスペーサに固定すれば、スピーカ52が表示装置12と一体的に形成された構成が得られる。
【0057】
本実施の形態では、図4(b)からわかるように、表示装置12は振動せず、スピーカ52の振動板58が振動する。このために、筐体62と振動板58との間には、一定の間隔を設けている。さらに、この空間から開口部62aに向けて、振動により発生した音響波が伝わり、開口部62aから外部に出力される。
【0058】
以上のような構成とすることにより、表示装置12で表示を行いながら、同時にスピーカ52により音声を出力することができる。したがって、画像の表示と音声出力とが同じ領域から出力されるので、違和感なく画像を楽しむことができる。さらに、平面型のスピーカであり、大きな音声出力を得ることができるので、複数の人が同時に音声と画像とを視聴することができる。
【0059】
なお、表示装置12で表示のみ、あるいは表示しないで音声のみ出力することも当然可能である。
【0060】
さらに、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置50は、表示装置12の表示部32としてEL素子を用いているので、全体に薄型で、かつ軽量にすることができる。また、スピーカ52の振動板58は非常に薄くすることが可能であるので、低音域から高音域まで幅広く音声を出力することができる。さらに、音声出力の応答性も良好であるので、音の歪等の少ない良好な音質を得ることができる。
【0061】
なお、表示部32の有機EL層28は低分子タイプであってもよいし、高分子タイプであってもよい。さらに、無機ELであってもよい。また、透明導電層26は、ITO膜を用いることが好ましいが、透明で、かつ抵抗の小さな材料であれば同様に使用可能である。さらに、裏面側電極層30は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の金属薄膜を用いることが好ましいが、ITO膜等の透明導電膜を用いることもできる。
【0062】
なお、本実施の形態では静電型のスピーカを用いた構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すような圧電型スピーカを用いてもよい。図5は、本実施の形態の変形例のスピーカ一体型表示装置における表示装置12とスピーカ64の構成を示す断面図である。
【0063】
図5において、表示装置12の構成は本実施の形態の表示装置12と同じであるので説明を省略する。この変形例のスピーカ一体型表示装置のスピーカ64は、表示装置12の表示部32の形成面側に一定の間隔を保持して固定された圧電振動板66からなる。この圧電振動板66は、スペーサ68により表示装置12の表示部32の形成面側に固定されている。さらに、圧電振動板66は、例えばバイモルフ構造であってもよい。圧電振動板66に対して電気信号を与えるためのフレキシブル配線(図示せず)が引き出され、例えば携帯電話の制御回路に接続されている。また、筐体等については、本実施の形態のスピーカ一体型表示装置50と同じであるので説明を省略する。このような圧電型のスピーカ64を用いることで、より大きな音声出力を得ることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、表示装置12が直接露出する構成としたが、第1の実施の形態の第2の変形例で示すように、表示装置12の面上に透明保護パネルを配置して、この透明保護パネルまたは筐体に開口部を設ける構成としてもよい。このような構成とすれば、表示装置を衝撃等に対して保護することができる。
【0065】
なお、第1の実施の形態と第2の実施の形態では、表示装置の表示部が有機EL素子の場合を例として説明したが、無機EL素子でもよい。さらに、反射型液晶でもよい。反射型液晶を用いた場合でも同様の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のスピーカ一体型表示装置は、表示装置とスピーカ機能とを一体化しているので、全体を非常に薄くすることができる。また、平面型スピーカであることから大きな音声出力と表示部領域と同じ領域から音を出力することができるので、動画像等も表示する携帯電話等の携帯電子機器分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるスピーカ一体型表示装置の構成を説明する図で、(a)は携帯電話の概要を示す斜視図、(b)はスピーカ一体型表示装置の断面図、(c)は表示装置の構成を示す断面図
【図2】同実施の形態の第1の変形例のスピーカ一体型表示装置の構成を示す断面図
【図3】同実施の形態の第2の変形例のスピーカ一体型表示装置の構成を示す図で、(a)は平面図、(b)はA−A線に沿って切断した断面図
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかるスピーカ一体型表示装置の構成を説明する図で、(a)スピーカ一体型表示装置の平面図、(b)はB−B線に沿って切断した断面図、(c)はスピーカを一体化した表示装置の構成を示す断面図
【図5】同実施の形態の変形例のスピーカ一体型表示装置における表示装置とスピーカの構成を示す断面図
【符号の説明】
【0068】
1 携帯電話
2 ケース
4 キーボード
6 マイクロホン
8 ヒンジ
10,36,42,50 スピーカ一体型表示装置
12 表示装置
14 可動コイル
16 磁石
18 励振装置
20,44 弾性部材
22,46,62 筐体
24 透明基板
26 透明導電層
28 有機EL層
30 裏面側電極層
32 表示部
34 保護膜
48 透明保護パネル
48a,62a 開口部
52,64 スピーカ
54 固定電極層
56 導電層
58 振動板(振動電極層)
60,68 スペーサ
66 圧電振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
透明基板を透過して表示される表示部を有し、弾性部材により前記筐体に弾性的に支持された表示装置と、
前記表示装置の前記表示部の形成面側および前記筐体に設けた励振装置と前記表示装置を振動板として構成されるスピーカとを備えたことを特徴とするスピーカ一体型表示装置。
【請求項2】
前記励振装置は可動コイルと磁石とを含み構成され、
前記可動コイルは前記表示装置の前記表示部の形成面側に固定され、前記磁石は前記筐体に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項3】
透明保護パネルが、前記表示装置の表示面側に、設定した空間を介してさらに前記筐体に固定されており、
前記筐体または前記透明保護パネルには1つ以上の開口部が設けられ、前記開口部から前記スピーカの音声が出力されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項4】
透明基板を透過して表示される表示部を有する表示装置と、
前記表示装置の前記表示部の形成面側に、設定した間隔を設けて配置された振動板を含み構成されるスピーカと、
前記スピーカの前記振動板に対して設定された間隔を保持して前記表示装置と前記スピーカとを収納し、かつ前記表示装置の外周領域に接する領域の少なくとも一部に開口部を有する筐体とを備えたことを特徴とするスピーカ一体型表示装置。
【請求項5】
前記スピーカは、固定電極層と、前記固定電極層に対向し、設定された間隔を保持して配置された振動電極層とにより構成され、前記振動電極層を前記振動板とし、かつ前記表示装置の前記表示部の形成面側に前記固定電極層が固定されていることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項6】
前記スピーカは、前記表示装置の前記表示部の形成面側に一定の間隔を保持して固定された圧電振動板からなることを特徴とする請求項4に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項7】
透明保護パネルが、前記表示装置の表示面側に、設定した空間を介してさらに前記筐体に固定されていることを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項8】
前記表示装置の前記表示部は、自発光素子からなることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項にスピーカ一体型表示装置。
【請求項9】
前記自発光素子は、EL素子からなることを特徴とする請求項8に記載のスピーカ一体型表示装置。
【請求項10】
前記表示装置の前記表示部は、反射型液晶からなることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項にスピーカ一体型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−110382(P2007−110382A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298625(P2005−298625)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】