説明

スポンジロール

【課題】生産性に優れたスポンジロールを提供すること。
【解決手段】軸体の外周面上にスポンジ層が設けられてなるスポンジロールにおいて、前記スポンジ層を、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、有機アゾ化合物及び酸化防止剤を含むシリコーン材料を発泡せしめてなる発泡体にて形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポンジロールに係り、特に、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ等における現像ロールや帯電ロール、転写ロール等のベースロールとして、好適に用いられ得るスポンジロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を利用した複写機やプリンタ等の画像形成装置(以下、電子写真機器という)においては、現像ロールや帯電ロール、転写ロール等の各種ロールが広く用いられている。それら電子写真機器における種々のロールとしては、その用途等に応じて、様々な構造を呈するものが提案され、使用されているのであり、例えば、導電体たる軸体(芯金)の外周面上に、弾性体層として、種々の発泡体からなるスポンジ状の層(スポンジ層)が設けられ、かかるスポンジ層の外周面上に、必要に応じて抵抗調整層や保護層等が、順次積層形成されてなる構造のものが、従来より広く用いられている。
【0003】
また、そのような構造を呈するロールの弾性体層(スポンジ層)は、従来より、発泡剤を用いて種々のゴム材料や樹脂材料を発泡成形せしめることによって形成されているが、近年、シリコーンゴムを発泡せしめてなる発泡シリコーンゴムを用いて、かかる発泡シリコーンゴムからなるスポンジ層を有するロールが開発されている。
【0004】
ここで、発泡シリコーンゴムからなるスポンジ層を有するロールとしては、先ず、未架橋シリコーンゴム(シリコーンポリマー)、発泡剤としての有機アゾ化合物、架橋剤及び触媒を含有してなるシリコーン材料(付加架橋型シリコーン材料)を調製し、かかる付加架橋型シリコーン材料を発泡成形せしめることにより、軸体の周りに発泡層(スポンジ層)が形成せしめられてなるものが知られている(特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の如き、発泡剤として有機アゾ化合物を用いる付加架橋型シリコーン材料にあっては、かかる材料中の有機アゾ化合物が常温でも分解し、ラジカルを発生するため、材料の調製後、未架橋シリコーンゴム(シリコーンポリマー)の架橋が徐々に進行してしまい、その結果、材料の可使時間が短くなるという問題があった。ここで、可使時間とは、材料の加工可能時間を意味するものであって、この可使時間が短いということは、材料の歩留まりが悪いことを意味するものである。従って、シリコーン材料の可使時間の長短は、ロールの生産性に大きく影響を与えるものである。
【0006】
また、上述の如き付加架橋型シリコーン材料においては、未加硫シリコーンゴムの架橋時間を短縮して、目的とするロールの生産性を向上させるべく、材料中への触媒の配合量を増やすことが考えられる。
【0007】
しかしながら、付加架橋型シリコーン材料において、多量の触媒を配合すると、未架橋シリコーンゴム(シリコーンポリマー)の架橋速度を速くすることが可能ならしめられるものの、未架橋シリコーンゴムの架橋が常温域でも進行するようになり、材料の可使時間が更に短くなるという問題があった。
【0008】
このような状況下、生産性に優れたロールの開発、引いてはそれを可能ならしめる付加架橋型シリコーン材料の開発が望まれているのである。
【0009】
【特許文献1】特開2005−49455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、生産性に優れたスポンジロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして、そのような課題を解決するために、本発明は、軸体の外周面上にスポンジ層が設けられてなるスポンジロールにおいて、前記スポンジ層が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、有機アゾ化合物及び酸化防止剤を含むシリコーン材料を発泡せしめてなる発泡体にて形成されていることを特徴とするスポンジロールを、その要旨とするものである。
【0012】
なお、そのような本発明に係るスポンジロールにおいては、好ましくは、前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤である。
【0013】
また、本発明のスポンジロールにおいては、より好ましくは、前記シリコーン材料中の前記酸化防止剤の配合割合が0.1〜10.0重量%である。
【0014】
さらに、本発明に従うスポンジロールにおいては、有利には、前記シリコーン材料が更に導電剤を含むものである。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明に従うスポンジロールにあっては、軸体の外周面上に設けられた弾性体層たるスポンジ層が、所定のシリコーン材料を用いて、かかるシリコーン材料を発泡せしめて得られる発泡体にて形成されているところに、大きな特徴が存するのである。即ち、本発明において、スポンジ層を形成せしめる際に用いられるシリコーン材料は、A)シリコーンポリマーたるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、B)架橋剤たるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、C)発泡剤としての有機アゾ化合物と共に、D)酸化防止剤をも含むものであることから、常温下の材料中において、酸化防止剤が、有機アゾ化合物の分解によって生ずるラジカルを効果的に捕捉し、ロール成形前の材料中におけるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの架橋の進行を、効果的に抑制するのであり、以て、本発明におけるシリコーン材料は、有機アゾ化合物を用いた従来の付加架橋型シリコーン材料と比較して、その可使時間は効果的に長くなる。従って、スポンジ層が、可使時間の長いシリコーン材料の発泡体にて形成されてなる本発明のスポンジロールにあっては、生産性の点で優れたものとなるのである。
【0016】
また、本発明のスポンジロールにおいて、特に、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を用いた場合にあっては、上述したシリコーン材料の可使時間の延長効果に加えて、シリコーン材料の架橋時間を効果的に短縮することが出来るという効果をも享受することが可能であり、より生産性に優れたスポンジロールとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ところで、本発明に従うスポンジロールは、軸体の外周面上に、弾性体層たるスポンジ層が設けられてなるものであって、かかるスポンジ層が、所定のシリコーン材料を発泡せしめてなる発泡体にて形成されてなるものである。そのようなスポンジロールを製造するに際しては、先ず、軸体を準備すると共に、シリコーン材料を調製する。
【0018】
軸体としては、導電性を有する金属からなるものであれば、特に限定されるものではないものの、後述するように、シリコーン材料を効果的に発泡させるために軸体を加熱する場合には、加熱効率の良い金属がより有利に用いられる。そのような金属としては、例えば、鉄、ステンレス鋼(SUS)、快削鋼(SUM)等を挙げることが出来る。また、軸体には、メッキ処理等が施されていても良く、更に必要に応じて、接着剤やプライマー等が外周面に塗布されていても良い。更に、軸体の形状も、ロッド状の中実体以外にも、パイプ状の中空円筒体であっても、何等差し支えない。
【0019】
そのような軸体を準備する一方で、A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、C)有機アゾ化合物、及びD)酸化防止剤を含むシリコーン材料を調製する。以下、かかるシリコーン材料の必須成分A)〜D)について、詳述する。
【0020】
本発明において用いられるA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとは、下記一般式(I)にて表わされる単位を、分子中に少なくとも2個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。かかるA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、本発明におけるシリコーン材料のベースポリマーであって、ケイ素原子に結合したアルケニル基が、後述するB)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子と反応(ヒドロシリル化反応)することにより、架橋が進行するものである。
1a2bSiO[4-(a+b)]/2 ・・・(I)
(但し、上記式(I)中、R1 は、アルケニル基を表わし;R2 は、互いに同一でも 相異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を有しない置換又は非置換の1価の炭化 水素基を表わし;aは、1又は2の整数を表わし、bは、0〜2の整数を表わし、 a+bは、1〜3の整数である。)
【0021】
本発明においては、上記一般式(I)にて表わされる単位を、分子中に少なくとも2個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであれば、その分子構造は特に制限されるものではなく、直鎖状、環状、分岐状等のシロキサン骨格を有するものが使用され得る。特に、本発明においては、合成のし易さ、及び最終的に得られる弾性体層(スポンジ層)に優れたゴム弾性と機械的性質を付与し得る点から、直鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを用いること、或いは、直鎖状のものと分岐状のものとを併用することが、好ましい。また、本発明にて用いられるA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その平均重合度が、100〜10000であるものが好ましく、3000〜8000のものが更に好ましい。
【0022】
ここで、上記一般式(I)中のR1 (アルケニル基)は、通常、炭素原子数が2〜8、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜3のものである。具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等を例示することが出来、好ましいものとしてビニル基及びアリル基を、より好ましいものとしてビニル基を挙げることが出来る。
【0023】
また、上記一般式(I)中のR2 は、通常、炭素原子数が1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6のものである。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等を例示することが出来、それらの中でも、メチル基、フェニル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、更には、メチル基及びフェニル基がより好ましい。
【0024】
上記一般式(I)で表わされる単位は、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン分子の末端、或いは中間の何れに存在しても良いが、少なくともその一部は分子末端に、例えば、R122SiO1/2単位のような形式で存在することが好ましい。
【0025】
A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン中の上記一般式(I)で表わされる単位以外のシロキサン単位において、ケイ素原子に結合した有機基は、互いに同一でも相異なっていてもよく、R2 として先に例示したものと同様の1価の置換又は非置換の炭化水素基を例示することが出来る。それらの中でも、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。本発明におけるA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、特に、メチル基が、全有機基(即ち、ケイ素原子に結合する、非置換又は置換の1価炭化水素基の合計)中の40モル%以上を占めるものが好ましく、40〜98モル%を占めるものがより好ましい。一方、フェニル基を含有する場合には、かかるフェニル基の全有機基に占める割合が15〜40モル%、特に20〜40モル%のものが好ましい。
【0026】
本発明において用いられるB)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとは、下記一般式(II)にて表わされる単位を、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。上述したように、かかるB)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子中のケイ素原子に結合した水素原子が、上述したA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基と反応(ヒドロシリル化反応)することから、架橋剤として作用するものである。
3cdSiO[4-(c+d)]/2 ・・・(II)
(但し、上記式(II)中、互いに同一でも相異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合 を有しない置換又は非置換の1価の炭化水素基を表わし;cは、0〜2の整数を表 わし、dは、1又は2の整数を表わし、c+dは、1〜3の整数である。)
【0027】
本発明においては、上記一般式(II)にて表わされる単位を、分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、その分子構造は特に制限されるものではなく、直鎖状、環状、分岐状等のシロキサン骨格を有するものが使用され得る。特に、本発明においては、合成のし易さから、直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが有利に用いられる。
【0028】
ここで、上記一般式(II)中のR3 は、互いに同一でも相異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を有しない置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、通常、炭素原子数が1〜12、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6のものである。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等を例示することが出来、それらの中でも、メチル基、フェニル基、及び3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、更には、メチル基及びフェニル基がより好ましい。
【0029】
また、B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の、上記一般式(II)で表わされる単位以外のシロキサン単位において、ケイ素原子に結合した有機基は、互いに同一でも相異なっていてもよく、R3 として先に例示したものと同様の1価の置換又は非置換の炭化水素基を例示することが出来る。それらの中でも、メチル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0030】
本発明において用いられるB)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位、メチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位[H(CH32SiO0.5単位 ]とSiO2 単位とからなる共重合体、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等を、例示することが出来る。
【0031】
架橋剤であるB)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和基(アルケニル基)に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となるような量的割合において、用いられることが望ましい。
【0032】
さらに、発泡剤たるC)有機アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルメタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を、例示することが出来る。本発明において、かかる有機アゾ化合物の配合量は、用いる有機アゾ化合物の種類に応じて適宜、決定されることとなるが、通常、上述したA)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合において、好ましくは0.5〜10重量部の割合において配合されて、シリコーン材料が調製される。発泡剤たる有機アゾ化合物の配合量が少なすぎると、充分に発泡しない恐れがあり、その一方、配合量が多すぎると、発泡体として形状を維持することが困難となり、発泡体における機械的強度の低下を招く恐れがあるからである。
【0033】
そして、本発明のスポンジロールを製造する際に用いられるシリコーン材料には、上述したA)〜C)の3種類の成分に加えて、更にD)酸化防止剤が配合せしめられるところに大きな特徴を有するのである。即ち、通常、シリコーン材料は、所定の成分が配合され、混練された後は常温下において保管等されるところ、本発明において用いられるシリコーン材料においては、常温下、酸化防止剤が、有機アゾ化合物の分解によって生ずるラジカルを効果的に捕捉し、ロール成形前の材料中におけるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの架橋の進行を、効果的に抑制する。このため、本発明におけるシリコーン材料は、有機アゾ化合物を用いた従来の付加架橋型シリコーン材料と比較して、その可使時間は効果的に長くなるのであり、以て、そのようなシリコーン材料を用いて形成されてなるスポンジ層を有する本発明のスポンジロールにあっては、生産性の点で優れたものとなるのである。
【0034】
本発明において用いられるD)酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等を挙げることが出来る。
【0035】
具体的には、フェノール系酸化防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、モノ(又はジ又はトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリス−[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン−1,1−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−4ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物等を、例示することが出来る。
【0036】
また、アミン系酸化防止剤としては、N−(1,3−ジメチル−ブチル)−N’−フェニル−P−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−P−フェニレンジアミン、メチル化ジフェニルアミン、エチル化ジフェニルアミン、ブチル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ラウリル化ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、p−イソプロポキシ・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル・エチレンジアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N−フェニル−N’−[3−(メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル]−P−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−P−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミンとその誘導体、N,N’−ジフェニル−P−フェニレンジアミン、N,N’−ジアリル−P−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−P−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec −ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン−2,4−ジオン等を、例示することが出来る。
【0037】
本発明においては、上述の如き酸化防止剤の中でも、特に、フェノール系酸化防止剤が有利に用いられる。フェノール系酸化防止剤を用いると、上述したシリコーン材料の可使時間の延長効果に加えて、シリコーン材料の架橋時間を効果的に短縮することが出来るという効果をも享受することが可能であり、そのようなフェノール系酸化防止剤を用いることにより、より優れた生産性にてスポンジロールを製造することが可能である。
【0038】
また、本発明において用いられるシリコーン材料を調製するに際して、上述した酸化防止剤は、シリコーン材料中における配合割合(重量%)が、好ましくは0.1〜10.0重量%となるように、より好ましくは0.5〜10.0重量%となるように、シリコーン材料に配合される。配合割合が0.1重量%未満では、シリコーン材料の可使時間が効果的に延長されない恐れがあり、その一方、配合割合が10.0重量%を超えると、スポンジ層の表面に酸化防止剤がブルームする恐れがあるからである。
【0039】
上述した4種類の必須成分からなるシリコーン材料には、A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとB)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの間の付加架橋(付加反応)を効果的に進行させるべく、有利には、白金触媒が更に配合せしめられる。本発明において用いられ得る白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金を白金黒、アルミナ、シリカ又はカーボン等の固体触媒に担持させたもの、白金とオレフィン、エチレン、アルコール又はビニルシロキサンとの各錯体、塩化白金酸とオレフィン、エチレン、アルコール又はビニルシロキサンとの各錯体等を、挙げることが出来る。そのような白金触媒は、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、その使用効果が得られるような使用量が適宜に決定されることとなる。
【0040】
また、本発明におけるシリコーン材料には、通常、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物(例えば、導電性酸化錫、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛)等の従来から公知の各種導電剤が、従来と同様な配合割合で配合されて、スポンジ層が所定の体積抵抗率(一般に、103 〜108 Ωcm程度)に調整され得るようになっており、この導電剤によって、スポンジ層(弾性体層)が効果的に導電性を発現することとなり、導電性を有するスポンジロール(導電性ロール)となる。
【0041】
なお、上述の如き白金触媒や導電剤以外にも、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの硬化と発泡のタイミングを調整するための遅延剤、シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤や、軟化剤等の各種添加剤が、必要に応じて適宜に選択され、適量において配合、混合される。そして、このようなシリコーン材料を発泡及び硬化(架橋)せしめることによって、本発明のスポンジロールにおけるスポンジ層が形成されることとなるのである。なお、かかるスポンジ層は、その厚さが、一般に0.5〜10mm程度となるように、形成される。
【0042】
以上の如くして調整されたシリコーン材料を用いて、本発明に従うスポンジロールが製造されることとなるが、その製造方法としては、従来より公知の各種手法の何れをも採用可能であるが、より有利には、以下の如き手順に従って製造される。
【0043】
先ず、軸体の外周面上にシリコーン材料を被覆して、未架橋且つ未発泡のシリコーンゴム層を形成する。この際、軸体へのシリコーン材料の被覆には、例えば、クロスヘッド押出装置が有利に用いられるのであり、押出装置のヘッド部に軸体をセットして、かかる軸体の外周面上に、直接、円筒状のシリコーン材料を押し出すことにより、軸体の外周面がシリコーン材料からなる所定厚さの押出成形体にて被覆された未架橋未発泡ロールを作製する。なお、押出方法は、連続押出でも、バッチ押出でも良く、また、押出速度も、一般的な速度が採用される。
【0044】
次いで、得られた未架橋未発泡ロールを加熱することにより、シリコーン材料からなる押出成形体を架橋及び発泡せしめる。なお、かかる未架橋未発泡ロールの加熱方法としては、所定の成形キャビティを有する金型内に未架橋未発泡ロールを配置して、その状態にて金型を加熱する方法のみならず、本発明者等が共同発明者となっている先の特許出願(特願2008−52053)において示しているように、先ず軸体のみを加熱することにより、シリコーン材料からなる押出成形体における軸体側の部分から架橋及び発泡を進行せしめ、軸体の表面温度が所定温度にまで達したら、直ちに金型内に配置して、かかる金型に対して通常の加熱操作を施すことからなる方法も、採用可能である。
【0045】
そして、上述の如くして製造されたスポンジロールは、スポンジ層が、従来のものと比較して可使時間の長いシリコーン材料にて形成されてなるものであるところから、生産性において優れたものとなっているのである。
【0046】
また、本発明のスポンジロールは、スポンジ層が低硬度であり、且つ耐ヘタリ性にも優れているところから、電子写真機器において用いられる現像ロールや帯電ロール、転写ロールを製造する際のベースロールとして、有利に用いられ得るものである。なお、本発明のスポンジロールを用いて現像ロール等を製造する場合には、先ず、上述した手法に従って本発明のスポンジロールを製造した後、そのスポンジ層の外側に、必要に応じて抵抗調整層や保護層が、従来より公知の各種手法に従って作製され、目的とする現像ロール等とされることとなる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0048】
先ず、下記表1に示す配合組成に従い、10種類のシリコーン材料(試料1〜試料10)を調製した。なお、調製の際に用いた各成分は、以下の通りである。
・アルケニル基含有オルガノポリシロキサン導電性コンパウンド
:XE-23-A4706 (品番、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
・オルガノハイドロジェンポリシロキサンコンパウンド
:TC-25D(品番、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
・有機アゾ化合物A:アゾビスイソブチロニトリル
・有機アゾ化合物B:1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)
・有機アゾ化合物C
:ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)
・白金触媒:ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物
・アミン系酸化防止剤
:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
・フェノール系酸化防止剤A:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
・フェノール系酸化防止剤B
:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
・フェノール系酸化防止剤C:2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン
【0049】
調製した10種類のシリコーン材料(試料1〜試料10)については、その一部を、以下に示す架橋速度の評価[tc(90)の測定]及びスポンジロール(導電性ロール)の作製に用い、残りのシリコーン材料については、それぞれ23℃×55%RHの環境下に放置し、可使時間の評価(コンパウンド寿命の評価)に供した。
【0050】
−架橋速度の評価[tc(90)の測定]−
株式会社東洋精機製作所製のロータレス・レオメータ(品番:RLR-3 )を用いて、JIS−K−6300-2:2001「未加硫ゴム−物理特性− 第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠して、試験温度:150℃、振幅角度:±3°、振動数:毎分100回の条件にて加硫試験を行ない、得られた加硫曲線から、各シリコーン材料(試料)の90%加硫時間:tc(90)[分]を算出した。各シリコーン材料(試料)のtc(90)を、下記表1に併せて示す。なお、tc(90)が短いことは、架橋速度が速いことを意味するものであり、tc(90)が短い試料を用いると、優れた生産性において、換言すれば効率良く、ロールを製造することが可能である。
【0051】
−ロールの作製−
調製したシリコーン材料(試料)を用いて、クロスヘッド押出装置により、予め所定の導電性接着剤が塗布されたSUS製の軸体(外径:6mm)の外周面上に、直接、押出成形することにより、軸体の外周面を、シリコーン材料からなる押出成形体にて被覆した。10種類のシリコーン材料を各々、用いることにより、軸体の外周面上に、未架橋且つ未発泡のシリコーンゴム層が形成せしめられたロール(未架橋未発泡ロール)を10種類、作製した。なお、未架橋未発泡ロールの外径は10mm(シリコーンゴム層厚さ:2mm)とした。
【0052】
得られた未架橋未発泡ロールを、誘導加熱装置に入れて、2.0Aの出力で、30秒だけ誘導加熱装置のスイッチをONの状態にすることにより、誘導加熱で軸体を加熱した。なお、誘導加熱装置としては、30mmφの円筒状のエポキシガラスの外周面にリッツ線を巻回してなるコイルが、IH用インバータに接続された装置(富士電機機器制御株式会社製)を用いた。
【0053】
そのような誘導加熱が実施された未架橋未発泡ロールを、直ちに所定の金型の成形キャビティ内にセットし、200℃で60分間、オーブンで加熱することにより、シリコーンゴム層の架橋及び発泡を完了させた。その後、脱型することにより、軸体の外周面上に厚さ:3mmのスポンジ層が一体的に形成されてなるスポンジロール(導電性ロール)を得た。
【0054】
−ロールにおけるブルーム性の評価−
各シリコーン材料(試料)を用いて得られた10種類のスポンジロール(導電性ロール)について、−20℃の環境下に6時間放置した後、50℃の環境下に6時間放置することを1サイクルとするヒートサイクル試験を120時間(10サイクル)、実施した。その後、ロールの表面(導電性弾性体層の表面)を目視で観察し、酸化防止剤のブルームの有無を確認した。酸化防止剤のブルームが認められないものを「○」と、認められるものを「×」と評価した。各ロールについての評価を、そのスポンジ層の形成に用いたシリコーン材料毎に、「ブルーム性の評価」として下記表1に示す。
【0055】
−可使時間の評価−
23℃×55%RHの環境下に一定時間、放置した各シリコーン材料(試料)を用いて、上述したものと同様の手法に従ってスポンジロールを作製し、得られたスポンジロールの状態を目視で観察した。23℃×55%RHの環境下に24時間以上放置しても、所望とする形状が得られるシリコーン材料を「◎」と、12時間以上24時間未満の放置により、発泡倍率が低下し、所望とする形状が得られないシリコーン材料を「○」と、6時間以上12時間未満の放置により、発泡倍率が低下し、所望とする形状が得られないシリコーン材料を「△」と、6時間未満の放置により、所望とする形状が得られないシリコーン材料を「×」と、それぞれ評価した。各シリコーン材料(試料)を用いて作製されたスポンジロールの評価を、用いたシリコーン材料(試料)に応じて、「可使時間の評価」として下記表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
かかる表1の結果からも明らかなように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、有機アゾ化合物及び酸化防止剤を含むシリコーン材料(試料1〜試料8)にあっては、酸化防止剤を含まないシリコーン材料(試料9、試料10)と比較して、可使時間が長いことが確認された。また、フェノール系酸化防止剤を用いたシリコーン材料であって、特に、材料中のフェノール系酸化防止剤の配合割合(重量%)が1.0〜10.0重量%とされたもの(試料2〜試料6、試料8)は、可使時間が長いことに加えて、tc(90)が小さく、架橋速度も速いことが確認された。従って、そのような優れた特性を発揮するシリコーン材料を用いて形成されたスポンジ層を有する本発明のスポンジロールにあっては、生産性に優れていることが認められるのである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面上にスポンジ層が設けられてなるスポンジロールにおいて、
前記スポンジ層が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、有機アゾ化合物及び酸化防止剤を含むシリコーン材料を発泡せしめてなる発泡体にて形成されていることを特徴とするスポンジロール。
【請求項2】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤である請求項1に記載のスポンジロール。
【請求項3】
前記シリコーン材料中の前記酸化防止剤の配合割合が0.1〜10.0重量%である請求項1又は請求項2に記載のスポンジロール。
【請求項4】
前記シリコーン材料が更に導電剤を含む請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のスポンジロール。


【公開番号】特開2010−97110(P2010−97110A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269576(P2008−269576)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】