スライドドア付き車体構造
【課題】サイドシルの剛性を確保でき、かつ、車体重量の増加を抑えるとともに組付け工数を減らすことができるスライドドア付き車体構造を提供する。
【解決手段】スライドドア付き車体構造10は、後クロスメンバー14および左フロアフレーム12の車体外側に閉断面状の左サイドシル13が延出され、左サイドシル13内にスライドドア25のガイド部材65を収納するガイド収納部91が設けられている。左サイドシル13は、車室59側に向けて膨張されたシル膨張部71を備えている。このシル膨張部71は、左フロアフレーム12に接合された頂部76と、後クロスメンバー14に接合された後傾斜前半部78と、ガイド収納部91に接合された後傾斜後半部79とを有する。
【解決手段】スライドドア付き車体構造10は、後クロスメンバー14および左フロアフレーム12の車体外側に閉断面状の左サイドシル13が延出され、左サイドシル13内にスライドドア25のガイド部材65を収納するガイド収納部91が設けられている。左サイドシル13は、車室59側に向けて膨張されたシル膨張部71を備えている。このシル膨張部71は、左フロアフレーム12に接合された頂部76と、後クロスメンバー14に接合された後傾斜前半部78と、ガイド収納部91に接合された後傾斜後半部79とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスメンバーおよびフロアフレームの車体外側にサイドシルが設けられたスライドドア付き車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドドア付き車体構造のなかには、サイドシルの車幅方向内側部に断面略コ字状の補強ガセットを設けるとともに、補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばし、この補強ガセットの開口部をサイドシルで塞いで閉断面部を形成し、この閉断面部にシートレール(以下、「シート支持脚部」という)を取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
断面略コ字状の補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばし、補強ガセットおよびサイドシルで閉断面部を形成することでサイドシルの剛性を確保することが可能である。
そして、剛性を確保したサイドシルにシート支持脚部を取り付けることで、シート支持脚部が強固に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のサイドシル構造は、サイドシルの剛性を確保するために、補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばしている。
このため、補強ガセットを大きな形状に形成する必要があり、そのことが車体重量を抑える妨げになっていた。
さらに、補強ガセットを個別に備えるために部品点数が増加し、補強ガセットをサイドシルに組み付ける工程が必要になり、そのことが組付け工数を抑える妨げになっていた。
【0006】
本発明は、サイドシルの剛性を確保でき、かつ、車体重量の増加を抑えるとともに組付け工数を減らすことができるスライドドア付き車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向けてフロアフレームが延出され、前記フロアフレームに対して交差するようにクロスメンバーが車幅方向に向けて延出され、前記クロスメンバーおよび前記フロアフレームの車体外側に前記フロアフレームに沿って閉断面状のサイドシルが延出され、前記閉断面状のサイドシル内にスライドドアのガイド部材を収納するガイド収納部が設けられたスライドドア付き車体構造において、前記サイドシルは、車室側に向けて膨張されたシル膨張部を備え、前記シル膨張部は、前記フロアフレームに接合された前部と、前記前部の車体後方側に設けられ、前記クロスメンバーに接合された中央部と、前記中央部の車体後方側に設けられ、前記ガイド収納部に接合された後部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記シル膨張部内に補強部材を備え、前記補強部材および前記クロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持し、かつ、前記補強部材にシートが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記補強部材の近傍に、給油口の開放状態において前記スライドドアが開くことを阻止可能なドアストッパ部を備え、前記ドアストッパ部は、前記シル膨張部を貫通する締結部材で前記ガイド収納部に締結されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、前記ガイド収納部および前記後部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする。
【0011】
請求項5は、前記フロアフレームおよび前記前部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする。
【0012】
請求項6は、前記補強部材のうち、前記シートを取り付けるシート取付部位が前記ガイド収納部の上方に設けられ、前記シート取付部位から溶接ボルトが上方に向けて突出されるとともに、突出した前記溶接ボルトにナットを用いて前記シートが締結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、サイドシルにシル膨張部を備え、このシル膨張部を車室側に向けて膨張させた。そして、シル膨張部の前部をフロアフレームに接合させ、中央部をクロスメンバーに接合させ、後部をガイド収納部に接合させた。
これにより、シル膨張部の前部、中央部および後部をフロアフレーム、クロスメンバーおよびガイド収納部の3部材でそれぞれ補強して、シル膨張部(すなわち、サイドシル)の剛性を確保することができる。
【0014】
さらに、シル膨張部(サイドシル)の剛性を3部材で確保することで、従来技術で説明した大きな形状の補強ガセットを不要にでき、車体重量の増加を抑えることができる。
加えて、大きな形状の補強ガセットを不要にすることで、部品点数を減らすことができる。部品点数を減らすことで、補強ガセットをサイドシルに組み付ける工程が不要になり、組付け工数を減らすことができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、シル膨張部(サイドシル)内に補強部材を備えた。そして、補強部材およびクロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持するとともに補強部材にシートを設けた。
よって、シートに作用した荷重をサイドシルや補強部材に伝えることができる。そして、シートから補強部材に作用したシート荷重を、補強部材を経てクロスメンバーに分散できる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることが可能になり、補強部材を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0016】
ここで、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」について説明する。
例えば、車両が前進走行中に衝突した場合、シートを車体前方に向けて移動させようとする前向きの慣性力が作用する。
この前向きの慣性力が、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0017】
一方、シートのなかには、リトラクタやアンカレッジ(ウェビングを支える部材)などのシートベルトシステムをシートに内蔵したシートベルト内蔵式シートがある。
シートベルト内蔵式シートを備えた車両の前進走行中に相手車両が衝突した場合、乗員をシートから浮き上がらせようとする上向きの慣性力が乗員に作用する。
この上向きの慣性力が、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0018】
すなわち、「シート荷重」として、シートから補強部材に車体前方に向けて作用する荷重や、シートから補強部材に上方に向けて作用する荷重が考えられる。
このように、シートからサイドシルや補強部材に車体前方に向けて作用するシート荷重や、シートからサイドシルや補強部材に上方に向けて作用するシート荷重を、補強部材を介してサイドシルやクロスメンバーに分散できる。
【0019】
請求項3に係る発明では、補強部材の近傍にドアストッパ部を備えるとともに、ドアストッパ部を締結部材でガイド収納部に締結した。
よって、シートから補強部材に作用した荷重を、締結部材を介してガイド収納部に分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、ガイド収納部および後部の接合部位を補強部材の近傍とした。よって、シートから補強部材に作用した荷重を、後部の接合部位を介してガイド収納部に分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、フロアフレームおよび前部の接合部位を補強部材の近傍とした。よって、シートから補強部材に作用した荷重を、前部の接合部位を介してフロアフレームに分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、補強部材のうちシートを取り付けるシート取付部位をガイド収納部の上方に設けた。よって、補強部材のシート取付部位をガイド収納部の近傍に設けることができる。
これにより、シートからシート取付部位に作用した荷重をガイド収納部に一層効率よく分散することができるので、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0023】
また、シート取付部位から溶接ボルトを上方に向けて突出させ、突出した溶接ボルトおよびナットでシートを締結した。
ここで、溶接ボルトは、頭部の座面に突起部を設け、突起部を補強部材に溶接して用いられるボルトである。
【0024】
ここで、溶接ボルトおよびナットに代えてボルトおよび溶接ナットでシートを締結する場合、溶接ナットおよびボルトのねじ部がサイドシルの上部から下方に突出する。
これに対して、請求項6では、溶接ボルトおよびナットでシートを締結することで、溶接ボルトの頭部のみがサイドシルの上部から下方に突出する。
よって、溶接ボルトおよびナットを用いることで、サイドシルの上部からの突出量をボルトおよび溶接ナットと比べて小さく抑えることができる。
【0025】
これにより、サイドシルの上部の高さを下げることができる。このサイドシルの上部に乗降用のステップが設けられている。
これにより、ガイド収納部の高さを維持した状態において、乗降用のステップ高さを低く抑えることが可能になり、乗降性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るスライドドア付き車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るスライドドア付き車体構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係るスライドドア付き車体構造の要部を示す斜視図である。
【図4】図3のスライドドア付き車体構造からシートおよびドアストッパ部を分解した状態を示す斜視図である。
【図5】図4のスライドドア付き車体構造を示す分解斜視図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図4のスライドドア付き車体構造を示す平面図である。
【図10】図4のスライドドア付き車体構造から左サイドシルを破断した状態を示す平面図である。
【図11】図10のスライドドア付き車体構造から補強部材を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係る補強部材を示す斜視図である。
【図13】図7の13部拡大図である。
【図14】図3の14−14線断面図である。
【図15】本発明に係る左サイドシルに作用する荷重を支える例を説明する図である。
【図16】本発明に係る左サイドシルに作用する荷重をガイド収納部で支える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0028】
実施例に係るスライドドア付き車体構造10について説明する。
図1〜図2に示すように、スライドドア付き車体構造10は、センターピラーを備えていないセンターピラーレスの車両である。
このスライドドア付き車体構造10は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム11と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11aから車体後方に向けてそれぞれ延出された左右のフロアフレーム(フロアフレーム)12と、左右のフロアフレーム12の車体外側に設けられるとともに車体前後方向に延出された左右のサイドシル(サイドシル)13とを備えている。
【0029】
また、スライドドア付き車体構造10は、左右のサイドシル13に架け渡された後クロスメンバー(クロスメンバー)14と、後クロスメンバー14の左右の端部14a(右端部14aは図示せず)から車体後方に向けて延出された左右のリヤフロアフレーム15と、後クロスメンバー14、左右のフロアフレーム12および左右のリヤフロアフレーム15に載置されたフロアパネル16と、フロアパネル16に載置されるとともに左右のサイドシル13に架け渡された前クロスメンバー17と、前クロスメンバー17および後クロスメンバー14間に設けられた燃料タンク18とを備えている。
【0030】
さらに、図3〜図4に示すように、スライドドア付き車体構造10は、左サイドシル13内に設けられた補強部材21と、補強部材21に支えられた左フロントシート22(図2参照)と、左サイドシル13内に設けられたドアガイド手段23と、ドアガイド手段23に沿ってスライド移動自在に設けられたスライドドア25(図1参照)と、フューエルリッド111(図1参照)を開いた状態においてスライドドア25の開放を阻止するドアストッパ部27を備えている。
【0031】
補強部材21は、図2に示す左フロントシート(シート)22の左後支持脚部55を支える補強ブラケットである。
スライドドア25(図1参照)は、ドアガイド手段23に沿って車体前後方向にスライド移動自在に設けられている。
このスライドドア25は、フューエルリッド111(図1参照)を閉じた状態において開閉可能に支持されている。
補強部材21の車体後方にドアストッパ部27が設けられている。
なお、補強部材21およびドアストッパ部27については後で詳しく説明する。
【0032】
図2に戻って、左右のフロントサイドフレーム11は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
左フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および左サイドシル13の前端部13aが左アウトリガー34で連結されている。
右フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および右サイドシル13の前端部13aが右アウトリガー34で連結されている。
【0033】
左右のフロアフレーム12は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
図5、図6に示すように、左フロアフレーム12は、底部36と、底部36の内外から立ち上げられた内外の側壁37とを有している。
左フロアフレーム12にはスチフナ38が接合されている。
【0034】
スチフナ38は、スチフナ底部38aと、スチフナ底部38aの内外から立ち上げられたスチフナ内側部38bおよびスチフナ外側部38bとを有している。
スチフナ内側部38bが内側壁37の上端部37aに設けられるとともに、スチフナ外側部38bが外側壁37の上端部37aに設けられている。
右フロアフレーム12(図2参照)は、左フロアフレーム12と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0035】
左右のフロアフレーム12は、後端部12aが後クロスメンバー14に設けられている。
図5、図7に示すように、後クロスメンバー14は、左右のフロアフレーム12に対して交差するように車幅方向に向けて延出されることで左右のサイドシル13(右サイドシル13は図2参照)に架け渡されている。
【0036】
後クロスメンバー14は、底部41と、底部41の内外から立ち上げられた前後の側壁42,43と、前側壁42の上辺から車体前側に折り曲げられた前フランジ42aと、後側壁43の上辺から車体後側に折り曲げられた後フランジ43aとを有している。
すなわち、後クロスメンバー14は、底部41、前後の側壁42,43および前後のフランジ42a,43aで上方に開口するように、いわゆる断面略ハット状に形成されている。
【0037】
さらに、後クロスメンバー14は、底部41から車幅方向外側に張り出された張出片41aと、前側壁42の左辺から車体前側に折り曲げられた左前フランジ42bと、後側壁43の左辺から車体後側に折り曲げられた左後フランジ43bとを有している。
張出片41a、左前フランジ42bおよび左後フランジ43bが、左サイドシル13に接合されている。
なお、左前フランジ42bおよび左後フランジ43bの左サイドシル13への接合については図10、図11で詳しく説明する。
【0038】
後クロスメンバー14の左右の端部14a(右端部14aは図示せず)から左右のリヤフロアフレーム15(右リヤフロアフレーム15は図2参照)が車体後方に向けて延出されることで、左右のリヤフロアフレーム15が車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0039】
図5、図8に示すように、左リヤフロアフレーム15は、底部46と、底部46の内外から立ち上げられた内外の側壁47と、内側壁47から車室側に折り曲げられた内フランジ47aと、外側壁47から車体外側に折り曲げられた外フランジ47aとを有している。
この左リヤフロアフレーム15は、底部46、内外の側壁47および内外のフランジ47aで上方に開口するように、いわゆる断面略ハット状に形成されている。
【0040】
図2に戻って、右リヤフロアフレーム15は、左リヤフロアフレーム15と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0041】
左右のフロアフレーム12、後クロスメンバー14および左右のリヤフロアフレーム15にフロアパネル16が載置されている。
フロアパネル16の前端部16aに前クロスメンバー17が載置され、前クロスメンバー17が左右のサイドシル13に架け渡されている。
この前クロスメンバー17は、後クロスメンバー14の車体前方に設けられている。
【0042】
前クロスメンバー17に左フロントシート22の左右の前支持脚部51が溶接ボルト52・ナット53で取り付けられている。
また、左サイドシル13(補強部材21も含む)に左フロントシート22の左後支持脚部55が溶接ボルト56・ナット57で取り付けられている(設けられている)。
【0043】
さらに、後クロスメンバー14に左フロントシート22の右後支持脚部55(図示せず)が溶接ボルト56・ナット57(ナット57は図示せず)で取り付けられている(設けられている)。
これにより、左フロントシート22が、前クロスメンバー17および後クロスメンバー14に取り付けられている。
【0044】
左フロアフレーム12および左リヤフロアフレーム15の車体外側(左外側)に左サイドシル13が設けられている。
左サイドシル13は、後クロスメンバー14および左フロアフレーム12の車体外側に左フロアフレーム12に沿って車体前後方向に延出された閉断面状の骨材である。
【0045】
また、右フロアフレーム12および右リヤフロアフレーム15(図2参照)の車体外側(右外側)に右サイドシル13が設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
右サイドシル13は、左サイドシル13と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0046】
図6〜図8に示すように、左サイドシル13は、車幅方向中心側(車室59側)に設けられた断面略コ字状のサイドシルインナ61と、車幅方向外側に設けられた断面略コ字状のサイドシルアウタ62とを備えている。
【0047】
サイドシルインナ61の上フランジ61aおよびサイドシルアウタ62の上フランジ62aが接合され、かつ、サイドシルインナ61の下フランジ61bおよびサイドシルアウタ62の下フランジ62bが接合されている。
これにより、サイドシルインナ61およびサイドシルアウタ62が接合されて閉断面状の左サイドシル13が形成されている。
【0048】
サイドシルアウタ62は、外側壁部63に開口部63aが車体前後方向に向いて延びるように形成されている(図5も参照)。
この開口部63aからスライドドア25のガイド部材65(具体的には、ロアローラ支持部材65aやロアローラ65b)がドアガイド手段23内に収納されている。
【0049】
サイドシルインナ61は、車体前後方向の略中央にシル膨張部71を備えている。
シル膨張部71は、左サイドシル13から車幅方向内側に向けて張り出される(すなわち、車室59側に向けて膨張される)ことにより、平面視において略富士山状に形成されている(図9参照)。
【0050】
シル膨張部71は、車室59側に向けて略水平に張り出された膨張上部72、膨張上部72の下方に設けられるとともに車室59側に向けて上り勾配に張り出された膨張下部73と、膨張上部72および膨張下部73の内側辺72a,73aに設けられた膨張側壁部74とを有している。
【0051】
図9に示すように、膨張上部72は、平面視において略富士山状に形成され、車体前後方向の略中央(シート取付部位72b)にボルト貫通孔81(図7も参照)が形成され、シート取付部位72bの車体後方に前後の取付部位72c,72dが設けられている。
ボルト貫通孔81に溶接ボルト56が貫通されている。溶接ボルト56は、図2に示す左フロントシート(シート)22の左後支持脚部55を締結する締結部材である。
【0052】
前後の取付部位72c,72dにドアストッパ部27が前後のボルト83(図3、図4参照)で設けられている。
前取付部位72cに前ボルト83が貫通可能な前取付孔82が形成されている。
後取付部位72dに後ボルト83が貫通可能な後取付孔82が形成されている。
【0053】
膨張側壁部74は、前クロスメンバー17近傍から左フロアフレーム12の後端部12aに向けて傾斜状に延出された前傾斜部75と、前傾斜部75の後端部から後端部12aに沿って後クロスメンバー14の左端部14aまで延出された頂部(前部)76と、頂部76の後端部から左サイドシル13に向けて車体後方へ傾斜状に延出された後傾斜部77とを有する。
【0054】
頂部76は、図6、図10に示すように、左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ38(スチフナ外側部38b)に車体外側から重ね合わされた状態においてスポット溶接で接合されている。
これにより、頂部76、左フロアフレーム12の外側壁37(上端部37a)およびスチフナ外側部38bがフレーム接合部位(接合部位)84(図10も参照)で接合されている。
【0055】
後傾斜部77は、頂部76の車体後方側に設けられた後傾斜前半部(中央部)78と、後傾斜前半部78の車体後方側に設けられた後傾斜後半部(後部)79とを有している。
後傾斜前半部78は、補強部材21(図10参照)および後クロスメンバー14に接合されている。
また、後傾斜後半部79はドアガイド手段23(図10も参照)に接合されている。
【0056】
図10〜図12に示すように、補強部材21は、シル膨張部71内に収納された(備えられた)補強用のブラケットである。
この補強部材21は、膨張側壁部74の後傾斜前半部78に接合された略矩形状の補強側壁85と、補強側壁85の上辺から車幅方向外側に向けて折り曲げられて膨張上部72に接合された略矩形状の補強上部86とを有する。
【0057】
補強側壁85は、補強前辺部85aが後傾斜前半部78の前部78aおよび左前フランジ42bにクロス前接合部位102においてスポット溶接で接合され、かつ、補強後辺部85bが後傾斜前半部78の後部78bおよび左後フランジ43bにクロス後接合部位103においてスポット溶接で接合されている。
【0058】
すなわち、補強前辺部85aおよび左前フランジ42bで後傾斜前半部78の前部78aが挟持されている。
加えて、補強後辺部85bおよび左後フランジ43bで後傾斜前半部78の後部78bが挟持されている。
【0059】
また、補強側壁85は、補強中央部85cが後傾斜前半部78の中央部78cに接合されている。
さらに、補強側壁85は、補強前辺部85aおよび補強中央部85c間の膨出部位85dが、後傾斜前半部78に対して離れるように車幅方向外側に膨出されている。
【0060】
図12、図13に示すように、補強上部86は、折曲近傍部86aおよび外辺部86bが膨張上部72の裏面72eにそれぞれスポット溶接で接合されている。
具体的には、折曲近傍部86aは、膨張上部72の裏面72eに重ね合わされた状態で、膨張上部72およびフロアパネル16に接合されている。
また、外辺部86bは、折曲近傍部86aと同様に、膨張上部72の裏面72eに重ね合わされた状態で、膨張上部72およびフロアパネル16に接合されている。
なお、膨張上部72は、フロアパネル16の裏面16bに重ね合わされている。
【0061】
補強上部86は、略中央部のシート取付部位86cにボルト貫通孔88が形成されている(図11も参照)。
ボルト貫通孔88は、膨張上部72のボルト貫通孔81およびフロアパネル16のボルト貫通孔89に対して同軸上に形成されている。
シート取付部位86cのボルト貫通孔88、膨張上部72のボルト貫通孔81およびフロアパネル16のボルト貫通孔89に溶接ボルト56が下方から貫通され、溶接ボルト56の頭部58がシート取付部位86cの裏面86dに溶接されている。
【0062】
フロアパネル16のボルト貫通孔89から上方に突出した溶接ボルト56に、左後支持脚部55の取付孔55aが嵌め込まれ、溶接ボルト56にナット57がねじ結合されている。
これにより、左後支持脚部55が膨張上部72および補強上部86(シート取付部位86c)に締結されている(設けられている)。
左後支持脚部55は、左フロントシート22のスライドレール28(図2参照)を支持する部位である。
【0063】
図6〜図8に戻って、ドアガイド手段23は、左サイドシル13内に収納されたガイド収納部(ロアレール袋体)91と、ガイド収納部91内に収納されたロアレール92とを備えている。
ガイド収納部91は、閉断面状の左サイドシル13内に左サイドシル13に沿って設けられ、スライドドア25のガイド部材65(具体的には、ロアローラ支持部材65aやロアローラ65b)を収納する空間93を備えた部材である。
【0064】
具体的には、ガイド収納部91は、膨張上部72に沿って設けられたガイド天井部95と、ガイド天井部95の下方に所定間隔をおいて設けられたガイド底部96と、ガイド天井部95の外辺95aおよびガイド底部96の外辺96aを連結するガイド側壁部97とを有している。
このガイド収納部91は、ガイド天井部95、ガイド底部96およびガイド側壁部97で断面略コ字状に形成されている。
【0065】
さらに、ガイド収納部91は、上フランジ98がサイドシルインナ61の上フランジ61aおよびサイドシルアウタ62の上フランジ62aに挟持された状態で接合され、下フランジ99がサイドシルアウタ62の外側壁部63に接合されている。
加えて、ガイド収納部91は、図6に示すように、ガイド底部96が支持部材101で支えられている。支持部材101は、上端部101aがガイド底部96に接合され、下端部101bがサイドシルインナ61の下フランジ61bおよびサイドシルアウタ62の下フランジ62bに挟持された状態で接合されている。
【0066】
この状態で、ガイド収納部91の空間93が外側壁部63の開口部63aに臨むように設けられている。
さらに、ガイド収納部91は、図6に示すように、ガイド側壁部97が頂部76に対して所定間隔H1離れた位置に設けられるとともに、図7に示すように、ガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜前半部78に対して所定間隔H2離れた位置に設けられている。
さらに、ガイド収納部91は、図8に示すように、ガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜後半部79に重ね合わされた状態で、ガイド接合部位(接合部位)105においてスポット溶接により接合されている。
【0067】
図11に戻って、シル膨張部71は、頂部76が左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ外側部38bにフレーム接合部位(接合部位)84においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の頂部76が左フロアフレーム12に接合されている。
【0068】
また、シル膨張部71は、後傾斜前半部78の前部78aが左前フランジ42bにクロス前接合部位102においてスポット溶接で接合されるとともに、後傾斜前半部78の後部78bが左後フランジ43bにクロス後接合部位103においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の後傾斜前半部78が後クロスメンバー14の左端部14aに接合されている。
【0069】
さらに、シル膨張部71は、後傾斜後半部79がガイド収納部91のガイド側壁部97にガイド接合部位(接合部位)105においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の後傾斜後半部79がガイド収納部91に接合されている。
【0070】
よって、シル膨張部71の頂部76、後傾斜前半部78および後傾斜後半部79を左フロアフレーム12、後クロスメンバー14およびガイド収納部91の3部材でそれぞれ補強することができる。
これにより、シル膨張部71(すなわち、左サイドシル13)の剛性を3部材12,14,91で確保することができる。
【0071】
シル膨張部71(すなわち、左サイドシル13)の剛性を3部材12,14,91で確保することで、従来技術で説明した大きな形状の補強ガセットを不要にでき、車体重量の増加を抑えることができる。
加えて、大きな形状の補強ガセットを不要にすることで、部品点数を減らすことができる。部品点数を減らすことで、補強ガセットを左サイドシル13に組み付ける工程が不要になり、組付け工数を減らすことができる。
【0072】
ところで、補強側壁85の補強前辺部85aおよび後クロスメンバー14の左前フランジ42bで後傾斜前半部78の前部78aが挟持されている。
さらに、補強側壁85の補強後辺部85bおよび後クロスメンバー14の左後フランジ43bで後傾斜前半部78の後部78bが挟持されている。
【0073】
加えて、膨張上部72および補強上部86(シート取付部位86c)に左フロントシート22(図2参照)の左後支持脚部55が溶接ボルト56・ナット57で取り付けられている。
ここで、補強側壁85および補強上部86は補強部材21を構成する部位である。
また、膨張上部72は左サイドシル13の一部を構成する部位である。
【0074】
よって、図2に示す左フロントシート22に作用した荷重を左サイドシル13や補強部材21に伝えることができる。そして、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、補強部材21を経て後クロスメンバー14に分散できる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることが可能になり、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0075】
図10に戻って、ガイド収納部91のガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜後半部79にスポット溶接で接合されたガイド接合部位(接合部位)105は、補強部材21の車体後方近傍(近傍)に設けられている。
【0076】
よって、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、後傾斜後半部79を介してガイド収納部91に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0077】
さらに、前述したように、頂部76が左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ38(スチフナ外側部38b)に車体外側から重ね合わされた状態においてフレーム接合部位(接合部位)84がスポット溶接で接合されている。
このフレーム接合部位84は、補強部材21の車体前方近傍(近傍)に設けられている。
【0078】
よって、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、頂部76を介して左フロアフレーム12に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0079】
図6〜図8に示すように、ロアレール92は、ガイド収納部91内に収納され、ガイド天井部95に車体前後方向に沿って設けられている。
ロアレール92にロアローラ65bが摺動自在に設けられている。これにより、スライドドア25がロアレール92に沿って車体前後方向に移動可能に支持されている。
【0080】
ここで、スライドドア25を車体後方に移動させて開いた場合、フューエルリッド111(図1参照)がスライドドア25で隠れてしまう。
そこで、フューエルリッド111を開いて給油口112(図1参照)を開放した状態において、スライドドア25が開くことを阻止するドアストッパ部27(図3、図4、図14参照)を備えている。
【0081】
図14に示すように、ドアストッパ部27は、膨張上部72のうち溶接ボルト56が貫通されたボルト貫通孔81(シート取付部位72b)の車体後方に設けられている。
このドアストッパ部27は、シート取付部位72bの車体後方に前後のボルト83で設けられた取付ブラケット121と、取付ブラケット121に支軸122を介して回動自在に設けられたロック部材123と、ロック部材123をアンロック位置P1に保持するコイルばね124と、ロック部材123をコイルばね124の付勢力に抗してロック位置P2に移動可能な操作ケーブル125とを備えている。
【0082】
ドアストッパ部27によれば、フューエルリッド111を開いて給油口112(図1参照)を開放した状態において、フューエルリッド111の開放に連動して操作ケーブル125が矢印方向に牽引される。
操作ケーブル125が牽引されることで、ロック部材123がコイルばね124の付勢力に抗してロック位置P2に移動する。
ロック部材123がロック位置P2に移動することで、ロック部材123がスライドドア25(図1参照)の底部に係止する。これにより、スライドドア25が開くことをロック部材123で阻止できる。
【0083】
ここで、取付ブラケット121は前後の取付フラップ127,128を有する。
前取付フラップ127は、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bに前ボルト83・前溶接ナット87(すなわち、締結部材)で締結されている。
後取付フラップ128は、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cに後ボルト83・後溶接ナット87(すなわち、締結部材)で締結されている。
【0084】
よって、左フロントシート22(図1参照)から補強部材21に作用した荷重を、前ボルト83・前溶接ナット87を介してガイド収納部91に分散するとともに、後ボルト83・後溶接ナット87を介してガイド収納部91に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0085】
ここで、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bは、ボルト貫通孔81(シート取付部位72b)に対して車体後方の近傍に設けられた部位である。
また、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cは、ボルト貫通孔81(シート取付部位72b)に対して車体後方の近傍に設けられた部位である。
【0086】
加えて、補強上部86(シート取付部位86c)はガイド収納部91の上方に設けられている。よって、シート取付部位86cをガイド収納部91の近傍に設けることができる。
このシート取付部位86cに左後支持脚部55(左フロントシート22(図2参照))が溶接ボルト56およびナット57で締結されている。
【0087】
さらに、シート取付部位86c(すなわち、補強部材21)は、膨張側壁部74を介してガイド収納部91に連結されている。
これにより、左フロントシート22からシート取付部位86cに溶接ボルト56を経て作用した荷重を、膨張側壁部74を経てガイド収納部91に一層効率よく分散させて、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0088】
図13、図14に戻って、シート取付部位86cから溶接ボルト56を上方に向けて突出させ、突出した溶接ボルト56にナット57をねじ結合することで、図2に示す左フロントシート22の左後支持脚部55を締結した。
ここで、溶接ボルト56は、頭部58の座面に複数の突起部(図示せず)を設け、複数の突起部を補強上部86の裏面86dに溶接して用いられるボルトである。
【0089】
ここで、溶接ボルト56・ナット57に代えてボルト・溶接ナットで左後支持脚部55を締結する場合、溶接ナットおよびボルトのねじ部がガイド収納部91側に向けて突出する。
これに対して、実施例では、左後支持脚部55を溶接ボルト56・ナット57でねじ結合することで、溶接ボルト56の頭部58のみがガイド収納部91側に向けて突出する。
よって、溶接ボルト56・ナット57を用いることで、ガイド収納部91側への突出量をボルト・溶接ナットと比べて小さく抑えることができる。
【0090】
これにより、左後支持脚部55を設ける左サイドシル13の膨張上部72の高さH3(図14参照)を下げることができる。
この左サイドシル13の膨張上部72に乗降用のステップが設けられている。これにより、ガイド収納部91の高さを維持した状態において、乗降用のステップ高さを低く抑えることが可能になり、乗降性を確保することができる。
【0091】
つぎに、左フロントシート22(図2参照)から左サイドシル13に作用する荷重を支える例を図15〜図16に基づいて詳しく説明する。
【0092】
図15(a)に示すように、スライドドア付き車体構造10に相手車両が前方右側からオフセット衝突した場合、左フロントシート22(図2も参照)を車体前方に向けて移動させようとする慣性力が前右方向に向けて作用する。
この慣性力が溶接ボルト56を経て「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重F1」として左サイドシル13や補強部材21(図15(b)参照)に前右方向に向けて作用する。
【0093】
図15(b)に示すように、左サイドシル13や補強部材21に作用したシート荷重F1は、車幅方向に荷重F2として分岐されるとともに、車体前方向に荷重F3として分岐される。
ここで、補強部材21の補強側壁85が左サイドシル13の後傾斜前半部78(図11参照)を介して後クロスメンバー14に連結されている。
よって、車幅方向に分岐された荷重F2を後クロスメンバー14に伝え、伝えられた荷重F2を後クロスメンバー14で支えることができる。
【0094】
一方、左サイドシル13の頂部76が左フロアフレーム12にフレーム接合部位84で接合されている。
また、左サイドシル13の後傾斜後半部79がガイド収納部91のガイド側壁部97にガイド接合部位105で接合されている。
【0095】
よって、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、左サイドシル13およびフレーム接合部位84を経て左フロアフレーム12に荷重F4として伝え、伝えられた荷重F4を左フロアフレーム12で支えることができる。
【0096】
また、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、左サイドシル13およびガイド接合部位105を経てガイド収納部91に荷重F5として伝え、伝えられた荷重F5をガイド収納部91で支えることができる。
【0097】
このように、車幅方向に分岐された荷重F2を後クロスメンバー14で支え、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を左フロアフレーム12やガイド収納部91で支えることで、補強部材21の剛性を抑えることができる。
これにより、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0098】
ここで、フレーム接合部位84は、溶接ボルト56に対して車体前方に設けられている。よって、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位に座屈荷重(圧縮荷重)が作用する。
一般に、板材の板厚が比較的薄い場合に座屈変形が生じやすい。このため、座屈荷重を小さくすることが好ましい。
【0099】
そこで、溶接ボルト56に対して車体後方にガイド接合部位105を設けた。
よって、溶接ボルト56から車体前方向に伝えられた荷重F3の一部を、ガイド接合部位105を経てガイド収納部91で引張荷重F5として支えることができる。
【0100】
これにより、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位に座屈荷重として作用する荷重F4を小さく抑えることができる。
荷重F4を小さく抑えることで、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位が座屈変形することを抑え、荷重F4を左フロアフレーム12に伝えて左フロアフレーム12で確実に支えることができる。
【0101】
加えて、前述したように、板材の板厚が比較的薄い場合に座屈変形が生じやすいため、作用した荷重を引張荷重として支えることが好ましい。
よって、溶接ボルト56から車体前方向に伝えられた荷重F3の一部を、ガイド接合部位105に引張荷重F5として作用させることで、引張荷重F5をガイド接合部位105を経てガイド収納部91で効率よく支えることができる。
【0102】
図16に示すように、ドアストッパ部27の前取付フラップ127は、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bに前ボルト83・前溶接ナット87で締結されている。
また、ドアストッパ部27の後取付フラップ128は、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cに後ボルト83・後溶接ナット87で締結されている。
【0103】
よって、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、前ボルト83・前溶接ナット87を介してガイド収納部91に荷重F6として伝え、伝えられた荷重F6をガイド収納部91で支えることができる。
さらに、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、後ボルト83・後溶接ナット87を介してガイド収納部91に荷重F7として伝え、伝えられた荷重F7をガイド収納部91で支えることができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0104】
ここで、図2に示す左フロントシート22のなかには、リトラクタやアンカレッジなどのシートベルトシステムをシートに内蔵したシートベルト内蔵式シートがある。
シートベルト内蔵式シートを備えた車両の前進走行中に相手車両が衝突した場合、乗員をシートから浮き上がらせようとする上向きの慣性力が乗員に作用する。
この上向きの慣性力が、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0105】
このように、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」が上方に向けて作用する場合でも、図15〜図16に示すシート荷重F1と同様に、後クロスメンバー14、左フロアフレーム12やガイド収納部91で支えることができる。
これにより、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」が上方に向けて作用する場合でも、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0106】
なお、本発明に係るスライドドア付き車体構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、本発明をセンターピラーを備えていないセンターピラーレスの車両に適用した例について説明したが、これに限らないで、センターピラーを備えた車両に本発明を適用することも可能である。
【0107】
また、前記実施例では、本発明を左サイドシル13に適用した例について説明したが、これに限らないで、本発明を右サイドシル13に適用することも可能である。
【0108】
さらに、前記実施例では、ドアストッパ部27を取り付ける締結部材として前ボルト83・前溶接ナット87、後ボルト83・後溶接ナット87を例示したが、これに限らないで、リベットなどの他の締結部材を使用することも可能である。
【0109】
また、前記実施例では、シート荷重F1が車体前方(具体的には、前右方向)に向けて作用した例について説明したが、これに限らないで、シート荷重F1が車体後方に向けて作用する場合も同様の効果を得ることができる。
【0110】
さらに、前記実施例では、左フロントシート22の左後支持脚部55を溶接ボルト56・ナット57で取り付ける例について説明したが、これに限らないで、左後支持脚部55をボルト・溶接ナットで取り付けるように構成してもよい。
【0111】
また、前記実施例で示した左右のフロアフレーム12、後クロスメンバー14、左右のサイドシル13、補強部材21、左フロントシート22、スライドドア25、ドアストッパ部27、左後支持脚部55、ガイド部材65、シル膨張部71、頂部76、後傾斜前半部78、後傾斜後半部79、シート取付部位86c、ガイド収納部91および給油口112などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、クロスメンバーおよびフロアフレームの車体外側にサイドシルが設けられたスライドドア付き車体構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0113】
10…スライドドア付き車体構造、12…左右のフロアフレーム(フロアフレーム)、13…左右のサイドシル(サイドシル)、14…後クロスメンバー(クロスメンバー)、21…補強部材、22…左フロントシート(シート)、25…スライドドア、27…ドアストッパ部、55…左後支持脚部、56…溶接ボルト、57…ナット、59…車室、65…ガイド部材、71…シル膨張部、76…頂部(前部)、78…後傾斜前半部(中央部)、79…後傾斜後半部(後部)、83,87…前ボルト・前溶接ナット、後ボルト・後溶接ナット(締結部材)、84…フレーム接合部位(接合部位)、86c…シート取付部位、91…ガイド収納部、105…ガイド接合部位(接合部位)、112…給油口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスメンバーおよびフロアフレームの車体外側にサイドシルが設けられたスライドドア付き車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドドア付き車体構造のなかには、サイドシルの車幅方向内側部に断面略コ字状の補強ガセットを設けるとともに、補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばし、この補強ガセットの開口部をサイドシルで塞いで閉断面部を形成し、この閉断面部にシートレール(以下、「シート支持脚部」という)を取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
断面略コ字状の補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばし、補強ガセットおよびサイドシルで閉断面部を形成することでサイドシルの剛性を確保することが可能である。
そして、剛性を確保したサイドシルにシート支持脚部を取り付けることで、シート支持脚部が強固に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−13129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のサイドシル構造は、サイドシルの剛性を確保するために、補強ガセットをサイドシルの長手方向に沿って前クロスメンバーから後クロスメンバーまで延ばしている。
このため、補強ガセットを大きな形状に形成する必要があり、そのことが車体重量を抑える妨げになっていた。
さらに、補強ガセットを個別に備えるために部品点数が増加し、補強ガセットをサイドシルに組み付ける工程が必要になり、そのことが組付け工数を抑える妨げになっていた。
【0006】
本発明は、サイドシルの剛性を確保でき、かつ、車体重量の増加を抑えるとともに組付け工数を減らすことができるスライドドア付き車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向けてフロアフレームが延出され、前記フロアフレームに対して交差するようにクロスメンバーが車幅方向に向けて延出され、前記クロスメンバーおよび前記フロアフレームの車体外側に前記フロアフレームに沿って閉断面状のサイドシルが延出され、前記閉断面状のサイドシル内にスライドドアのガイド部材を収納するガイド収納部が設けられたスライドドア付き車体構造において、前記サイドシルは、車室側に向けて膨張されたシル膨張部を備え、前記シル膨張部は、前記フロアフレームに接合された前部と、前記前部の車体後方側に設けられ、前記クロスメンバーに接合された中央部と、前記中央部の車体後方側に設けられ、前記ガイド収納部に接合された後部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記シル膨張部内に補強部材を備え、前記補強部材および前記クロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持し、かつ、前記補強部材にシートが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項3は、前記補強部材の近傍に、給油口の開放状態において前記スライドドアが開くことを阻止可能なドアストッパ部を備え、前記ドアストッパ部は、前記シル膨張部を貫通する締結部材で前記ガイド収納部に締結されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4は、前記ガイド収納部および前記後部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする。
【0011】
請求項5は、前記フロアフレームおよび前記前部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする。
【0012】
請求項6は、前記補強部材のうち、前記シートを取り付けるシート取付部位が前記ガイド収納部の上方に設けられ、前記シート取付部位から溶接ボルトが上方に向けて突出されるとともに、突出した前記溶接ボルトにナットを用いて前記シートが締結されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、サイドシルにシル膨張部を備え、このシル膨張部を車室側に向けて膨張させた。そして、シル膨張部の前部をフロアフレームに接合させ、中央部をクロスメンバーに接合させ、後部をガイド収納部に接合させた。
これにより、シル膨張部の前部、中央部および後部をフロアフレーム、クロスメンバーおよびガイド収納部の3部材でそれぞれ補強して、シル膨張部(すなわち、サイドシル)の剛性を確保することができる。
【0014】
さらに、シル膨張部(サイドシル)の剛性を3部材で確保することで、従来技術で説明した大きな形状の補強ガセットを不要にでき、車体重量の増加を抑えることができる。
加えて、大きな形状の補強ガセットを不要にすることで、部品点数を減らすことができる。部品点数を減らすことで、補強ガセットをサイドシルに組み付ける工程が不要になり、組付け工数を減らすことができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、シル膨張部(サイドシル)内に補強部材を備えた。そして、補強部材およびクロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持するとともに補強部材にシートを設けた。
よって、シートに作用した荷重をサイドシルや補強部材に伝えることができる。そして、シートから補強部材に作用したシート荷重を、補強部材を経てクロスメンバーに分散できる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることが可能になり、補強部材を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0016】
ここで、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」について説明する。
例えば、車両が前進走行中に衝突した場合、シートを車体前方に向けて移動させようとする前向きの慣性力が作用する。
この前向きの慣性力が、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0017】
一方、シートのなかには、リトラクタやアンカレッジ(ウェビングを支える部材)などのシートベルトシステムをシートに内蔵したシートベルト内蔵式シートがある。
シートベルト内蔵式シートを備えた車両の前進走行中に相手車両が衝突した場合、乗員をシートから浮き上がらせようとする上向きの慣性力が乗員に作用する。
この上向きの慣性力が、「シートからサイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0018】
すなわち、「シート荷重」として、シートから補強部材に車体前方に向けて作用する荷重や、シートから補強部材に上方に向けて作用する荷重が考えられる。
このように、シートからサイドシルや補強部材に車体前方に向けて作用するシート荷重や、シートからサイドシルや補強部材に上方に向けて作用するシート荷重を、補強部材を介してサイドシルやクロスメンバーに分散できる。
【0019】
請求項3に係る発明では、補強部材の近傍にドアストッパ部を備えるとともに、ドアストッパ部を締結部材でガイド収納部に締結した。
よって、シートから補強部材に作用した荷重を、締結部材を介してガイド収納部に分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、ガイド収納部および後部の接合部位を補強部材の近傍とした。よって、シートから補強部材に作用した荷重を、後部の接合部位を介してガイド収納部に分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、フロアフレームおよび前部の接合部位を補強部材の近傍とした。よって、シートから補強部材に作用した荷重を、前部の接合部位を介してフロアフレームに分散することができる。
これにより、補強部材の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0022】
請求項6に係る発明では、補強部材のうちシートを取り付けるシート取付部位をガイド収納部の上方に設けた。よって、補強部材のシート取付部位をガイド収納部の近傍に設けることができる。
これにより、シートからシート取付部位に作用した荷重をガイド収納部に一層効率よく分散することができるので、補強部材のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0023】
また、シート取付部位から溶接ボルトを上方に向けて突出させ、突出した溶接ボルトおよびナットでシートを締結した。
ここで、溶接ボルトは、頭部の座面に突起部を設け、突起部を補強部材に溶接して用いられるボルトである。
【0024】
ここで、溶接ボルトおよびナットに代えてボルトおよび溶接ナットでシートを締結する場合、溶接ナットおよびボルトのねじ部がサイドシルの上部から下方に突出する。
これに対して、請求項6では、溶接ボルトおよびナットでシートを締結することで、溶接ボルトの頭部のみがサイドシルの上部から下方に突出する。
よって、溶接ボルトおよびナットを用いることで、サイドシルの上部からの突出量をボルトおよび溶接ナットと比べて小さく抑えることができる。
【0025】
これにより、サイドシルの上部の高さを下げることができる。このサイドシルの上部に乗降用のステップが設けられている。
これにより、ガイド収納部の高さを維持した状態において、乗降用のステップ高さを低く抑えることが可能になり、乗降性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るスライドドア付き車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るスライドドア付き車体構造を示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係るスライドドア付き車体構造の要部を示す斜視図である。
【図4】図3のスライドドア付き車体構造からシートおよびドアストッパ部を分解した状態を示す斜視図である。
【図5】図4のスライドドア付き車体構造を示す分解斜視図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】図4のスライドドア付き車体構造を示す平面図である。
【図10】図4のスライドドア付き車体構造から左サイドシルを破断した状態を示す平面図である。
【図11】図10のスライドドア付き車体構造から補強部材を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係る補強部材を示す斜視図である。
【図13】図7の13部拡大図である。
【図14】図3の14−14線断面図である。
【図15】本発明に係る左サイドシルに作用する荷重を支える例を説明する図である。
【図16】本発明に係る左サイドシルに作用する荷重をガイド収納部で支える例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【実施例】
【0028】
実施例に係るスライドドア付き車体構造10について説明する。
図1〜図2に示すように、スライドドア付き車体構造10は、センターピラーを備えていないセンターピラーレスの車両である。
このスライドドア付き車体構造10は、車体前後方向に延出された左右のフロントサイドフレーム11と、左右のフロントサイドフレーム11の後端部11aから車体後方に向けてそれぞれ延出された左右のフロアフレーム(フロアフレーム)12と、左右のフロアフレーム12の車体外側に設けられるとともに車体前後方向に延出された左右のサイドシル(サイドシル)13とを備えている。
【0029】
また、スライドドア付き車体構造10は、左右のサイドシル13に架け渡された後クロスメンバー(クロスメンバー)14と、後クロスメンバー14の左右の端部14a(右端部14aは図示せず)から車体後方に向けて延出された左右のリヤフロアフレーム15と、後クロスメンバー14、左右のフロアフレーム12および左右のリヤフロアフレーム15に載置されたフロアパネル16と、フロアパネル16に載置されるとともに左右のサイドシル13に架け渡された前クロスメンバー17と、前クロスメンバー17および後クロスメンバー14間に設けられた燃料タンク18とを備えている。
【0030】
さらに、図3〜図4に示すように、スライドドア付き車体構造10は、左サイドシル13内に設けられた補強部材21と、補強部材21に支えられた左フロントシート22(図2参照)と、左サイドシル13内に設けられたドアガイド手段23と、ドアガイド手段23に沿ってスライド移動自在に設けられたスライドドア25(図1参照)と、フューエルリッド111(図1参照)を開いた状態においてスライドドア25の開放を阻止するドアストッパ部27を備えている。
【0031】
補強部材21は、図2に示す左フロントシート(シート)22の左後支持脚部55を支える補強ブラケットである。
スライドドア25(図1参照)は、ドアガイド手段23に沿って車体前後方向にスライド移動自在に設けられている。
このスライドドア25は、フューエルリッド111(図1参照)を閉じた状態において開閉可能に支持されている。
補強部材21の車体後方にドアストッパ部27が設けられている。
なお、補強部材21およびドアストッパ部27については後で詳しく説明する。
【0032】
図2に戻って、左右のフロントサイドフレーム11は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
左フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および左サイドシル13の前端部13aが左アウトリガー34で連結されている。
右フロントサイドフレーム11の後端部11a近傍および右サイドシル13の前端部13aが右アウトリガー34で連結されている。
【0033】
左右のフロアフレーム12は、車幅方向に所定間隔をおいて設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
図5、図6に示すように、左フロアフレーム12は、底部36と、底部36の内外から立ち上げられた内外の側壁37とを有している。
左フロアフレーム12にはスチフナ38が接合されている。
【0034】
スチフナ38は、スチフナ底部38aと、スチフナ底部38aの内外から立ち上げられたスチフナ内側部38bおよびスチフナ外側部38bとを有している。
スチフナ内側部38bが内側壁37の上端部37aに設けられるとともに、スチフナ外側部38bが外側壁37の上端部37aに設けられている。
右フロアフレーム12(図2参照)は、左フロアフレーム12と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0035】
左右のフロアフレーム12は、後端部12aが後クロスメンバー14に設けられている。
図5、図7に示すように、後クロスメンバー14は、左右のフロアフレーム12に対して交差するように車幅方向に向けて延出されることで左右のサイドシル13(右サイドシル13は図2参照)に架け渡されている。
【0036】
後クロスメンバー14は、底部41と、底部41の内外から立ち上げられた前後の側壁42,43と、前側壁42の上辺から車体前側に折り曲げられた前フランジ42aと、後側壁43の上辺から車体後側に折り曲げられた後フランジ43aとを有している。
すなわち、後クロスメンバー14は、底部41、前後の側壁42,43および前後のフランジ42a,43aで上方に開口するように、いわゆる断面略ハット状に形成されている。
【0037】
さらに、後クロスメンバー14は、底部41から車幅方向外側に張り出された張出片41aと、前側壁42の左辺から車体前側に折り曲げられた左前フランジ42bと、後側壁43の左辺から車体後側に折り曲げられた左後フランジ43bとを有している。
張出片41a、左前フランジ42bおよび左後フランジ43bが、左サイドシル13に接合されている。
なお、左前フランジ42bおよび左後フランジ43bの左サイドシル13への接合については図10、図11で詳しく説明する。
【0038】
後クロスメンバー14の左右の端部14a(右端部14aは図示せず)から左右のリヤフロアフレーム15(右リヤフロアフレーム15は図2参照)が車体後方に向けて延出されることで、左右のリヤフロアフレーム15が車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0039】
図5、図8に示すように、左リヤフロアフレーム15は、底部46と、底部46の内外から立ち上げられた内外の側壁47と、内側壁47から車室側に折り曲げられた内フランジ47aと、外側壁47から車体外側に折り曲げられた外フランジ47aとを有している。
この左リヤフロアフレーム15は、底部46、内外の側壁47および内外のフランジ47aで上方に開口するように、いわゆる断面略ハット状に形成されている。
【0040】
図2に戻って、右リヤフロアフレーム15は、左リヤフロアフレーム15と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0041】
左右のフロアフレーム12、後クロスメンバー14および左右のリヤフロアフレーム15にフロアパネル16が載置されている。
フロアパネル16の前端部16aに前クロスメンバー17が載置され、前クロスメンバー17が左右のサイドシル13に架け渡されている。
この前クロスメンバー17は、後クロスメンバー14の車体前方に設けられている。
【0042】
前クロスメンバー17に左フロントシート22の左右の前支持脚部51が溶接ボルト52・ナット53で取り付けられている。
また、左サイドシル13(補強部材21も含む)に左フロントシート22の左後支持脚部55が溶接ボルト56・ナット57で取り付けられている(設けられている)。
【0043】
さらに、後クロスメンバー14に左フロントシート22の右後支持脚部55(図示せず)が溶接ボルト56・ナット57(ナット57は図示せず)で取り付けられている(設けられている)。
これにより、左フロントシート22が、前クロスメンバー17および後クロスメンバー14に取り付けられている。
【0044】
左フロアフレーム12および左リヤフロアフレーム15の車体外側(左外側)に左サイドシル13が設けられている。
左サイドシル13は、後クロスメンバー14および左フロアフレーム12の車体外側に左フロアフレーム12に沿って車体前後方向に延出された閉断面状の骨材である。
【0045】
また、右フロアフレーム12および右リヤフロアフレーム15(図2参照)の車体外側(右外側)に右サイドシル13が設けられるとともに、車体前後方向に向けて延出されている。
右サイドシル13は、左サイドシル13と左右対称に形成された部材であり、詳しい説明を省略する。
【0046】
図6〜図8に示すように、左サイドシル13は、車幅方向中心側(車室59側)に設けられた断面略コ字状のサイドシルインナ61と、車幅方向外側に設けられた断面略コ字状のサイドシルアウタ62とを備えている。
【0047】
サイドシルインナ61の上フランジ61aおよびサイドシルアウタ62の上フランジ62aが接合され、かつ、サイドシルインナ61の下フランジ61bおよびサイドシルアウタ62の下フランジ62bが接合されている。
これにより、サイドシルインナ61およびサイドシルアウタ62が接合されて閉断面状の左サイドシル13が形成されている。
【0048】
サイドシルアウタ62は、外側壁部63に開口部63aが車体前後方向に向いて延びるように形成されている(図5も参照)。
この開口部63aからスライドドア25のガイド部材65(具体的には、ロアローラ支持部材65aやロアローラ65b)がドアガイド手段23内に収納されている。
【0049】
サイドシルインナ61は、車体前後方向の略中央にシル膨張部71を備えている。
シル膨張部71は、左サイドシル13から車幅方向内側に向けて張り出される(すなわち、車室59側に向けて膨張される)ことにより、平面視において略富士山状に形成されている(図9参照)。
【0050】
シル膨張部71は、車室59側に向けて略水平に張り出された膨張上部72、膨張上部72の下方に設けられるとともに車室59側に向けて上り勾配に張り出された膨張下部73と、膨張上部72および膨張下部73の内側辺72a,73aに設けられた膨張側壁部74とを有している。
【0051】
図9に示すように、膨張上部72は、平面視において略富士山状に形成され、車体前後方向の略中央(シート取付部位72b)にボルト貫通孔81(図7も参照)が形成され、シート取付部位72bの車体後方に前後の取付部位72c,72dが設けられている。
ボルト貫通孔81に溶接ボルト56が貫通されている。溶接ボルト56は、図2に示す左フロントシート(シート)22の左後支持脚部55を締結する締結部材である。
【0052】
前後の取付部位72c,72dにドアストッパ部27が前後のボルト83(図3、図4参照)で設けられている。
前取付部位72cに前ボルト83が貫通可能な前取付孔82が形成されている。
後取付部位72dに後ボルト83が貫通可能な後取付孔82が形成されている。
【0053】
膨張側壁部74は、前クロスメンバー17近傍から左フロアフレーム12の後端部12aに向けて傾斜状に延出された前傾斜部75と、前傾斜部75の後端部から後端部12aに沿って後クロスメンバー14の左端部14aまで延出された頂部(前部)76と、頂部76の後端部から左サイドシル13に向けて車体後方へ傾斜状に延出された後傾斜部77とを有する。
【0054】
頂部76は、図6、図10に示すように、左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ38(スチフナ外側部38b)に車体外側から重ね合わされた状態においてスポット溶接で接合されている。
これにより、頂部76、左フロアフレーム12の外側壁37(上端部37a)およびスチフナ外側部38bがフレーム接合部位(接合部位)84(図10も参照)で接合されている。
【0055】
後傾斜部77は、頂部76の車体後方側に設けられた後傾斜前半部(中央部)78と、後傾斜前半部78の車体後方側に設けられた後傾斜後半部(後部)79とを有している。
後傾斜前半部78は、補強部材21(図10参照)および後クロスメンバー14に接合されている。
また、後傾斜後半部79はドアガイド手段23(図10も参照)に接合されている。
【0056】
図10〜図12に示すように、補強部材21は、シル膨張部71内に収納された(備えられた)補強用のブラケットである。
この補強部材21は、膨張側壁部74の後傾斜前半部78に接合された略矩形状の補強側壁85と、補強側壁85の上辺から車幅方向外側に向けて折り曲げられて膨張上部72に接合された略矩形状の補強上部86とを有する。
【0057】
補強側壁85は、補強前辺部85aが後傾斜前半部78の前部78aおよび左前フランジ42bにクロス前接合部位102においてスポット溶接で接合され、かつ、補強後辺部85bが後傾斜前半部78の後部78bおよび左後フランジ43bにクロス後接合部位103においてスポット溶接で接合されている。
【0058】
すなわち、補強前辺部85aおよび左前フランジ42bで後傾斜前半部78の前部78aが挟持されている。
加えて、補強後辺部85bおよび左後フランジ43bで後傾斜前半部78の後部78bが挟持されている。
【0059】
また、補強側壁85は、補強中央部85cが後傾斜前半部78の中央部78cに接合されている。
さらに、補強側壁85は、補強前辺部85aおよび補強中央部85c間の膨出部位85dが、後傾斜前半部78に対して離れるように車幅方向外側に膨出されている。
【0060】
図12、図13に示すように、補強上部86は、折曲近傍部86aおよび外辺部86bが膨張上部72の裏面72eにそれぞれスポット溶接で接合されている。
具体的には、折曲近傍部86aは、膨張上部72の裏面72eに重ね合わされた状態で、膨張上部72およびフロアパネル16に接合されている。
また、外辺部86bは、折曲近傍部86aと同様に、膨張上部72の裏面72eに重ね合わされた状態で、膨張上部72およびフロアパネル16に接合されている。
なお、膨張上部72は、フロアパネル16の裏面16bに重ね合わされている。
【0061】
補強上部86は、略中央部のシート取付部位86cにボルト貫通孔88が形成されている(図11も参照)。
ボルト貫通孔88は、膨張上部72のボルト貫通孔81およびフロアパネル16のボルト貫通孔89に対して同軸上に形成されている。
シート取付部位86cのボルト貫通孔88、膨張上部72のボルト貫通孔81およびフロアパネル16のボルト貫通孔89に溶接ボルト56が下方から貫通され、溶接ボルト56の頭部58がシート取付部位86cの裏面86dに溶接されている。
【0062】
フロアパネル16のボルト貫通孔89から上方に突出した溶接ボルト56に、左後支持脚部55の取付孔55aが嵌め込まれ、溶接ボルト56にナット57がねじ結合されている。
これにより、左後支持脚部55が膨張上部72および補強上部86(シート取付部位86c)に締結されている(設けられている)。
左後支持脚部55は、左フロントシート22のスライドレール28(図2参照)を支持する部位である。
【0063】
図6〜図8に戻って、ドアガイド手段23は、左サイドシル13内に収納されたガイド収納部(ロアレール袋体)91と、ガイド収納部91内に収納されたロアレール92とを備えている。
ガイド収納部91は、閉断面状の左サイドシル13内に左サイドシル13に沿って設けられ、スライドドア25のガイド部材65(具体的には、ロアローラ支持部材65aやロアローラ65b)を収納する空間93を備えた部材である。
【0064】
具体的には、ガイド収納部91は、膨張上部72に沿って設けられたガイド天井部95と、ガイド天井部95の下方に所定間隔をおいて設けられたガイド底部96と、ガイド天井部95の外辺95aおよびガイド底部96の外辺96aを連結するガイド側壁部97とを有している。
このガイド収納部91は、ガイド天井部95、ガイド底部96およびガイド側壁部97で断面略コ字状に形成されている。
【0065】
さらに、ガイド収納部91は、上フランジ98がサイドシルインナ61の上フランジ61aおよびサイドシルアウタ62の上フランジ62aに挟持された状態で接合され、下フランジ99がサイドシルアウタ62の外側壁部63に接合されている。
加えて、ガイド収納部91は、図6に示すように、ガイド底部96が支持部材101で支えられている。支持部材101は、上端部101aがガイド底部96に接合され、下端部101bがサイドシルインナ61の下フランジ61bおよびサイドシルアウタ62の下フランジ62bに挟持された状態で接合されている。
【0066】
この状態で、ガイド収納部91の空間93が外側壁部63の開口部63aに臨むように設けられている。
さらに、ガイド収納部91は、図6に示すように、ガイド側壁部97が頂部76に対して所定間隔H1離れた位置に設けられるとともに、図7に示すように、ガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜前半部78に対して所定間隔H2離れた位置に設けられている。
さらに、ガイド収納部91は、図8に示すように、ガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜後半部79に重ね合わされた状態で、ガイド接合部位(接合部位)105においてスポット溶接により接合されている。
【0067】
図11に戻って、シル膨張部71は、頂部76が左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ外側部38bにフレーム接合部位(接合部位)84においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の頂部76が左フロアフレーム12に接合されている。
【0068】
また、シル膨張部71は、後傾斜前半部78の前部78aが左前フランジ42bにクロス前接合部位102においてスポット溶接で接合されるとともに、後傾斜前半部78の後部78bが左後フランジ43bにクロス後接合部位103においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の後傾斜前半部78が後クロスメンバー14の左端部14aに接合されている。
【0069】
さらに、シル膨張部71は、後傾斜後半部79がガイド収納部91のガイド側壁部97にガイド接合部位(接合部位)105においてスポット溶接で接合されている。
すなわち、シル膨張部71(左サイドシル13)の後傾斜後半部79がガイド収納部91に接合されている。
【0070】
よって、シル膨張部71の頂部76、後傾斜前半部78および後傾斜後半部79を左フロアフレーム12、後クロスメンバー14およびガイド収納部91の3部材でそれぞれ補強することができる。
これにより、シル膨張部71(すなわち、左サイドシル13)の剛性を3部材12,14,91で確保することができる。
【0071】
シル膨張部71(すなわち、左サイドシル13)の剛性を3部材12,14,91で確保することで、従来技術で説明した大きな形状の補強ガセットを不要にでき、車体重量の増加を抑えることができる。
加えて、大きな形状の補強ガセットを不要にすることで、部品点数を減らすことができる。部品点数を減らすことで、補強ガセットを左サイドシル13に組み付ける工程が不要になり、組付け工数を減らすことができる。
【0072】
ところで、補強側壁85の補強前辺部85aおよび後クロスメンバー14の左前フランジ42bで後傾斜前半部78の前部78aが挟持されている。
さらに、補強側壁85の補強後辺部85bおよび後クロスメンバー14の左後フランジ43bで後傾斜前半部78の後部78bが挟持されている。
【0073】
加えて、膨張上部72および補強上部86(シート取付部位86c)に左フロントシート22(図2参照)の左後支持脚部55が溶接ボルト56・ナット57で取り付けられている。
ここで、補強側壁85および補強上部86は補強部材21を構成する部位である。
また、膨張上部72は左サイドシル13の一部を構成する部位である。
【0074】
よって、図2に示す左フロントシート22に作用した荷重を左サイドシル13や補強部材21に伝えることができる。そして、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、補強部材21を経て後クロスメンバー14に分散できる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることが可能になり、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0075】
図10に戻って、ガイド収納部91のガイド側壁部97が後傾斜部77の後傾斜後半部79にスポット溶接で接合されたガイド接合部位(接合部位)105は、補強部材21の車体後方近傍(近傍)に設けられている。
【0076】
よって、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、後傾斜後半部79を介してガイド収納部91に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0077】
さらに、前述したように、頂部76が左フロアフレーム12(外側壁37の上端部37a)およびスチフナ38(スチフナ外側部38b)に車体外側から重ね合わされた状態においてフレーム接合部位(接合部位)84がスポット溶接で接合されている。
このフレーム接合部位84は、補強部材21の車体前方近傍(近傍)に設けられている。
【0078】
よって、左フロントシート22から補強部材21に作用した荷重を、頂部76を介して左フロアフレーム12に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0079】
図6〜図8に示すように、ロアレール92は、ガイド収納部91内に収納され、ガイド天井部95に車体前後方向に沿って設けられている。
ロアレール92にロアローラ65bが摺動自在に設けられている。これにより、スライドドア25がロアレール92に沿って車体前後方向に移動可能に支持されている。
【0080】
ここで、スライドドア25を車体後方に移動させて開いた場合、フューエルリッド111(図1参照)がスライドドア25で隠れてしまう。
そこで、フューエルリッド111を開いて給油口112(図1参照)を開放した状態において、スライドドア25が開くことを阻止するドアストッパ部27(図3、図4、図14参照)を備えている。
【0081】
図14に示すように、ドアストッパ部27は、膨張上部72のうち溶接ボルト56が貫通されたボルト貫通孔81(シート取付部位72b)の車体後方に設けられている。
このドアストッパ部27は、シート取付部位72bの車体後方に前後のボルト83で設けられた取付ブラケット121と、取付ブラケット121に支軸122を介して回動自在に設けられたロック部材123と、ロック部材123をアンロック位置P1に保持するコイルばね124と、ロック部材123をコイルばね124の付勢力に抗してロック位置P2に移動可能な操作ケーブル125とを備えている。
【0082】
ドアストッパ部27によれば、フューエルリッド111を開いて給油口112(図1参照)を開放した状態において、フューエルリッド111の開放に連動して操作ケーブル125が矢印方向に牽引される。
操作ケーブル125が牽引されることで、ロック部材123がコイルばね124の付勢力に抗してロック位置P2に移動する。
ロック部材123がロック位置P2に移動することで、ロック部材123がスライドドア25(図1参照)の底部に係止する。これにより、スライドドア25が開くことをロック部材123で阻止できる。
【0083】
ここで、取付ブラケット121は前後の取付フラップ127,128を有する。
前取付フラップ127は、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bに前ボルト83・前溶接ナット87(すなわち、締結部材)で締結されている。
後取付フラップ128は、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cに後ボルト83・後溶接ナット87(すなわち、締結部材)で締結されている。
【0084】
よって、左フロントシート22(図1参照)から補強部材21に作用した荷重を、前ボルト83・前溶接ナット87を介してガイド収納部91に分散するとともに、後ボルト83・後溶接ナット87を介してガイド収納部91に分散することができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0085】
ここで、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bは、ボルト貫通孔81(シート取付部位72b)に対して車体後方の近傍に設けられた部位である。
また、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cは、ボルト貫通孔81(シート取付部位72b)に対して車体後方の近傍に設けられた部位である。
【0086】
加えて、補強上部86(シート取付部位86c)はガイド収納部91の上方に設けられている。よって、シート取付部位86cをガイド収納部91の近傍に設けることができる。
このシート取付部位86cに左後支持脚部55(左フロントシート22(図2参照))が溶接ボルト56およびナット57で締結されている。
【0087】
さらに、シート取付部位86c(すなわち、補強部材21)は、膨張側壁部74を介してガイド収納部91に連結されている。
これにより、左フロントシート22からシート取付部位86cに溶接ボルト56を経て作用した荷重を、膨張側壁部74を経てガイド収納部91に一層効率よく分散させて、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0088】
図13、図14に戻って、シート取付部位86cから溶接ボルト56を上方に向けて突出させ、突出した溶接ボルト56にナット57をねじ結合することで、図2に示す左フロントシート22の左後支持脚部55を締結した。
ここで、溶接ボルト56は、頭部58の座面に複数の突起部(図示せず)を設け、複数の突起部を補強上部86の裏面86dに溶接して用いられるボルトである。
【0089】
ここで、溶接ボルト56・ナット57に代えてボルト・溶接ナットで左後支持脚部55を締結する場合、溶接ナットおよびボルトのねじ部がガイド収納部91側に向けて突出する。
これに対して、実施例では、左後支持脚部55を溶接ボルト56・ナット57でねじ結合することで、溶接ボルト56の頭部58のみがガイド収納部91側に向けて突出する。
よって、溶接ボルト56・ナット57を用いることで、ガイド収納部91側への突出量をボルト・溶接ナットと比べて小さく抑えることができる。
【0090】
これにより、左後支持脚部55を設ける左サイドシル13の膨張上部72の高さH3(図14参照)を下げることができる。
この左サイドシル13の膨張上部72に乗降用のステップが設けられている。これにより、ガイド収納部91の高さを維持した状態において、乗降用のステップ高さを低く抑えることが可能になり、乗降性を確保することができる。
【0091】
つぎに、左フロントシート22(図2参照)から左サイドシル13に作用する荷重を支える例を図15〜図16に基づいて詳しく説明する。
【0092】
図15(a)に示すように、スライドドア付き車体構造10に相手車両が前方右側からオフセット衝突した場合、左フロントシート22(図2も参照)を車体前方に向けて移動させようとする慣性力が前右方向に向けて作用する。
この慣性力が溶接ボルト56を経て「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重F1」として左サイドシル13や補強部材21(図15(b)参照)に前右方向に向けて作用する。
【0093】
図15(b)に示すように、左サイドシル13や補強部材21に作用したシート荷重F1は、車幅方向に荷重F2として分岐されるとともに、車体前方向に荷重F3として分岐される。
ここで、補強部材21の補強側壁85が左サイドシル13の後傾斜前半部78(図11参照)を介して後クロスメンバー14に連結されている。
よって、車幅方向に分岐された荷重F2を後クロスメンバー14に伝え、伝えられた荷重F2を後クロスメンバー14で支えることができる。
【0094】
一方、左サイドシル13の頂部76が左フロアフレーム12にフレーム接合部位84で接合されている。
また、左サイドシル13の後傾斜後半部79がガイド収納部91のガイド側壁部97にガイド接合部位105で接合されている。
【0095】
よって、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、左サイドシル13およびフレーム接合部位84を経て左フロアフレーム12に荷重F4として伝え、伝えられた荷重F4を左フロアフレーム12で支えることができる。
【0096】
また、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、左サイドシル13およびガイド接合部位105を経てガイド収納部91に荷重F5として伝え、伝えられた荷重F5をガイド収納部91で支えることができる。
【0097】
このように、車幅方向に分岐された荷重F2を後クロスメンバー14で支え、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を左フロアフレーム12やガイド収納部91で支えることで、補強部材21の剛性を抑えることができる。
これにより、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0098】
ここで、フレーム接合部位84は、溶接ボルト56に対して車体前方に設けられている。よって、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位に座屈荷重(圧縮荷重)が作用する。
一般に、板材の板厚が比較的薄い場合に座屈変形が生じやすい。このため、座屈荷重を小さくすることが好ましい。
【0099】
そこで、溶接ボルト56に対して車体後方にガイド接合部位105を設けた。
よって、溶接ボルト56から車体前方向に伝えられた荷重F3の一部を、ガイド接合部位105を経てガイド収納部91で引張荷重F5として支えることができる。
【0100】
これにより、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位に座屈荷重として作用する荷重F4を小さく抑えることができる。
荷重F4を小さく抑えることで、膨張側壁部74のうち溶接ボルト56およびガイド接合部位84間の部位が座屈変形することを抑え、荷重F4を左フロアフレーム12に伝えて左フロアフレーム12で確実に支えることができる。
【0101】
加えて、前述したように、板材の板厚が比較的薄い場合に座屈変形が生じやすいため、作用した荷重を引張荷重として支えることが好ましい。
よって、溶接ボルト56から車体前方向に伝えられた荷重F3の一部を、ガイド接合部位105に引張荷重F5として作用させることで、引張荷重F5をガイド接合部位105を経てガイド収納部91で効率よく支えることができる。
【0102】
図16に示すように、ドアストッパ部27の前取付フラップ127は、膨張上部72の前取付部位72cおよびガイド天井部95の前取付部位95bに前ボルト83・前溶接ナット87で締結されている。
また、ドアストッパ部27の後取付フラップ128は、膨張上部72の後取付部位72dおよびガイド天井部95の後取付部95cに後ボルト83・後溶接ナット87で締結されている。
【0103】
よって、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、前ボルト83・前溶接ナット87を介してガイド収納部91に荷重F6として伝え、伝えられた荷重F6をガイド収納部91で支えることができる。
さらに、車体前方向に分岐された荷重F3の一部を、後ボルト83・後溶接ナット87を介してガイド収納部91に荷重F7として伝え、伝えられた荷重F7をガイド収納部91で支えることができる。
これにより、補強部材21の剛性を抑えることがさらに可能になり、補強部材21のコンパクト化や軽量化を一層図ることができる。
【0104】
ここで、図2に示す左フロントシート22のなかには、リトラクタやアンカレッジなどのシートベルトシステムをシートに内蔵したシートベルト内蔵式シートがある。
シートベルト内蔵式シートを備えた車両の前進走行中に相手車両が衝突した場合、乗員をシートから浮き上がらせようとする上向きの慣性力が乗員に作用する。
この上向きの慣性力が、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」となる。
【0105】
このように、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」が上方に向けて作用する場合でも、図15〜図16に示すシート荷重F1と同様に、後クロスメンバー14、左フロアフレーム12やガイド収納部91で支えることができる。
これにより、「シートから左サイドシルや補強部材に作用するシート荷重」が上方に向けて作用する場合でも、補強部材21を必要以上に大きな形状にする必要がなく、補強部材21のコンパクト化や軽量化を図ることができる。
【0106】
なお、本発明に係るスライドドア付き車体構造10は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、本発明をセンターピラーを備えていないセンターピラーレスの車両に適用した例について説明したが、これに限らないで、センターピラーを備えた車両に本発明を適用することも可能である。
【0107】
また、前記実施例では、本発明を左サイドシル13に適用した例について説明したが、これに限らないで、本発明を右サイドシル13に適用することも可能である。
【0108】
さらに、前記実施例では、ドアストッパ部27を取り付ける締結部材として前ボルト83・前溶接ナット87、後ボルト83・後溶接ナット87を例示したが、これに限らないで、リベットなどの他の締結部材を使用することも可能である。
【0109】
また、前記実施例では、シート荷重F1が車体前方(具体的には、前右方向)に向けて作用した例について説明したが、これに限らないで、シート荷重F1が車体後方に向けて作用する場合も同様の効果を得ることができる。
【0110】
さらに、前記実施例では、左フロントシート22の左後支持脚部55を溶接ボルト56・ナット57で取り付ける例について説明したが、これに限らないで、左後支持脚部55をボルト・溶接ナットで取り付けるように構成してもよい。
【0111】
また、前記実施例で示した左右のフロアフレーム12、後クロスメンバー14、左右のサイドシル13、補強部材21、左フロントシート22、スライドドア25、ドアストッパ部27、左後支持脚部55、ガイド部材65、シル膨張部71、頂部76、後傾斜前半部78、後傾斜後半部79、シート取付部位86c、ガイド収納部91および給油口112などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、クロスメンバーおよびフロアフレームの車体外側にサイドシルが設けられたスライドドア付き車体構造を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0113】
10…スライドドア付き車体構造、12…左右のフロアフレーム(フロアフレーム)、13…左右のサイドシル(サイドシル)、14…後クロスメンバー(クロスメンバー)、21…補強部材、22…左フロントシート(シート)、25…スライドドア、27…ドアストッパ部、55…左後支持脚部、56…溶接ボルト、57…ナット、59…車室、65…ガイド部材、71…シル膨張部、76…頂部(前部)、78…後傾斜前半部(中央部)、79…後傾斜後半部(後部)、83,87…前ボルト・前溶接ナット、後ボルト・後溶接ナット(締結部材)、84…フレーム接合部位(接合部位)、86c…シート取付部位、91…ガイド収納部、105…ガイド接合部位(接合部位)、112…給油口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向けてフロアフレームが延出され、前記フロアフレームに対して交差するようにクロスメンバーが車幅方向に向けて延出され、前記クロスメンバーおよび前記フロアフレームの車体外側に前記フロアフレームに沿って閉断面状のサイドシルが延出され、前記閉断面状のサイドシル内にスライドドアのガイド部材を収納するガイド収納部が設けられたスライドドア付き車体構造において、
前記サイドシルは、
車室側に向けて膨張されたシル膨張部を備え、
前記シル膨張部は、
前記フロアフレームに接合された前部と、
前記前部の車体後方側に設けられ、前記クロスメンバーに接合された中央部と、
前記中央部の車体後方側に設けられ、前記ガイド収納部に接合された後部と、
を有することを特徴とするスライドドア付き車体構造。
【請求項2】
前記シル膨張部内に補強部材を備え、
前記補強部材および前記クロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持し、かつ、前記補強部材にシートが設けられたことを特徴とする請求項1記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項3】
前記補強部材の近傍に、給油口の開放状態において前記スライドドアが開くことを阻止可能なドアストッパ部を備え、
前記ドアストッパ部は、前記シル膨張部を貫通する締結部材で前記ガイド収納部に締結されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項4】
前記ガイド収納部および前記後部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項5】
前記フロアフレームおよび前記前部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項6】
前記補強部材のうち、前記シートを取り付けるシート取付部位が前記ガイド収納部の上方に設けられ、
前記シート取付部位から溶接ボルトが上方に向けて突出されるとともに、突出した前記溶接ボルトにナットを用いて前記シートが締結されたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項1】
車体前後方向に向けてフロアフレームが延出され、前記フロアフレームに対して交差するようにクロスメンバーが車幅方向に向けて延出され、前記クロスメンバーおよび前記フロアフレームの車体外側に前記フロアフレームに沿って閉断面状のサイドシルが延出され、前記閉断面状のサイドシル内にスライドドアのガイド部材を収納するガイド収納部が設けられたスライドドア付き車体構造において、
前記サイドシルは、
車室側に向けて膨張されたシル膨張部を備え、
前記シル膨張部は、
前記フロアフレームに接合された前部と、
前記前部の車体後方側に設けられ、前記クロスメンバーに接合された中央部と、
前記中央部の車体後方側に設けられ、前記ガイド収納部に接合された後部と、
を有することを特徴とするスライドドア付き車体構造。
【請求項2】
前記シル膨張部内に補強部材を備え、
前記補強部材および前記クロスメンバーで前記シル膨張部の中央部を挟持し、かつ、前記補強部材にシートが設けられたことを特徴とする請求項1記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項3】
前記補強部材の近傍に、給油口の開放状態において前記スライドドアが開くことを阻止可能なドアストッパ部を備え、
前記ドアストッパ部は、前記シル膨張部を貫通する締結部材で前記ガイド収納部に締結されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項4】
前記ガイド収納部および前記後部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項5】
前記フロアフレームおよび前記前部が接合された接合部位は前記補強部材の近傍であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【請求項6】
前記補強部材のうち、前記シートを取り付けるシート取付部位が前記ガイド収納部の上方に設けられ、
前記シート取付部位から溶接ボルトが上方に向けて突出されるとともに、突出した前記溶接ボルトにナットを用いて前記シートが締結されたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のスライドドア付き車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−31766(P2011−31766A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180814(P2009−180814)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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