説明

スライド回転ヒンジ

【課題】携帯電話機などの表示部筐体と操作部筐体をスライド動作と回転動作でつなぐ一軸回転型のスライド回転ヒンジの強度を高める。
【解決手段】表示部筐体にスライダープレート1が固定されている。操作部筐体に回転プレート14が固定されている。中間プレート13は、スライダープレート1にスライド可能に取り付けられて、回転プレート14に回転軸9で回転可能に取り付けられている。筐体を開くときは、表示部筐体を操作部筐体に対してスライドさせて伸張させる。TV視聴のときは、伸張状態で、表示部筐体を操作部筐体に対して90度まで面内回転させる。中間プレート13に補強ピン3を設ける。スライダープレート1からの回転方向の荷重を補強ピン3で受けることにより、スライダープレート1のガイドレール2が中間プレート13の端部を押して変形させることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド回転ヒンジに関し、特に、携帯電話機やPDAや携帯ゲーム機などの携帯電子機器の表示部をスライドさせて回転させるスライド回転ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示部筐体を操作部筐体に対してスライドさせて伸長状態にするスライド機構と、表示部筐体を縦長状態から横長状態に回転する回転機構を備えた携帯電話機がある。携帯電話機でTVを視聴する場合などに、表示部筐体を90度回転させて横長状態にする。以下に、表示部のスライド回転機構に関連する従来技術の例をいくつかあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「携帯通信端末」は、TV受信などで画面を横長とするときに、画面中央部の下側に操作部を位置させて、操作性をよくしたものである。操作部を有する第1の筐体部に対して表示画面部を有する第2の筐体部を回転操作可能に支持する支軸は、第2の筐体部に対して、この支軸にほぼ直交する方向に移動操作可能となされている。
【0004】
特許文献2に開示された「携帯電話機」は、表示部の向きを変えることができるものである。本体部は、表示部を回転可能に支持している。表示部を回転して向きを変えると、操作部がスライド移動して、本体部から突出する。表示部を回転して向きを元に戻すと、操作部が本体部内に収納される。
【0005】
特許文献3に開示された「スライド装置」は、操作部に対して表示部がスムーズにスライドして回転し、所定位置でクリック係合して位置決めされるものである。操作部と表示部とをスライド自在に連結するスライド装置である。表示部にガイドレールを設け、ガイドレールに案内されてスライドするスライド部を、操作部に設ける。ガイドレールの所定位置に、クリック係合部を設ける。クリック係合部に係合する係合ピンを、スライド部に設ける。係合ピンを、ピン弾圧部で弾性的に押圧する。
【0006】
特許文献4に開示された「ヒンジ機構」は、液晶画面を縦長状態と横長状態とに変化させることができるものである。表示部筐体と操作部筐体とが重なる部分に、表示部筐体と操作部筐体とを接続するヒンジ機構を設ける。表示部筐体に、スライドレールを固定する。中間体が、スライドレールに係合してスライドレール上をスライド移動する。操作部筐体に、固定部を固定する。回転接続部で、固定部を中間体に回転可能に接続する。
【0007】
これら従来のスライド回転ヒンジは、スライド動作中に回転を阻止し、回転中にスライド動作を阻止するロック機構が複雑であり、ヒンジ装置を薄くすることができない。そこで、本発明者は、ヒンジ装置のロック機構を単純化して薄くしたスライド回転ヒンジを、特許文献5で提案した。このスライド回転ヒンジでは、スライド回転ヒンジのスライダープレートに、スライド動作中の回転動作を阻止するように回転軸の直線状側面に当たる直線状凸部と、回転動作中のスライド動作を阻止するように回転軸に当たる傾斜状凸部とを備えている。
【0008】
表示部筐体を操作部筐体に重ねた状態(全閉状態)は、図5(a)に示すようになる。表示部筐体を操作部筐体に対してスライドさせて、最大伸張状態にすると、図5(b)に示すようになる。この状態で、表示部筐体を90度だけ面内回転させると、図5(c)に示すようになる。図5(d)、(e)に示すスライダープレート1は、表示部筐体に固定されている。スライダープレート1に複数設けられた貫通穴へネジ等を通して、スライダープレート1を表示部筐体へ取り付けて固定する。中間プレート13のスライド動作を案内するガイドレール2が、スライダープレート1に固定されている。
【0009】
回転プレート14は、操作部筐体に固定されている。中間プレート13は、スライダープレート1に摺動可能に組み合わされており、スライダープレート1に対してスライド移動可能である。中間プレート13は、回転プレート14に固定された回転軸9に回転可能に結合されており、回転プレート14に対して回転可能である。回転動作の軸である回転軸9は、中間プレート13を貫通し、回転プレート14にカシメ等で固定されている。
【0010】
回転案内ピン7は、中間プレート13の溝に揺動可能に保持されており、回転プレート14の曲線溝19と回転用ばね15とスリーブ17をこの順で貫通して、スリーブ17を介して回転用ばね15の一端に連結されている。回転用ばね15の他端は、ばね留ピン16で回転プレート14に固定されている。回転案内ピン7は、中間プレート13の溝に沿って動きながら、回転プレート14の曲線溝19に沿って動き、中間プレート13の回転を案内する。曲線溝19の形状に応じて、回転用ばね15のたわみ量が変わる。回転案内ピン7が曲線溝19の両端にあるときは、回転用ばね15が回転案内ピン7を曲線溝19の端に押し付けているので、安定に保持される。回転案内ピン7が曲線溝19の中央部にあるときは、回転用ばね15が圧縮されていて、回転案内ピン7を曲線溝19のいずれかの端の方向に押す作用を果たし、回転操作を援ける。
【0011】
組ばね4の一端は、スライダープレート1にばね留ピン5によりかしめ等で固定されている。組ばね4の他端は、中間プレート13にばね留ピン6でカシメ等により固定されている。全閉状態と伸張状態にあるときは、組ばね4が中間プレート13をスライダープレート1の端に押し付けているので、安定に保持される。中間プレート13がスライダープレート1の中央部にあるときは、組ばね4が圧縮されていて、中間プレート13をスライダープレート1のいずれかの端の方向に押す作用を果たし、スライド操作を援ける。
【0012】
スライド動作中は、回転軸9と直線状凸部21により回転動作が阻止されているが、最大伸張状態となるスライド位置で回転可能となる。回転動作中は、回転軸9と傾斜状凸部22によりスライド動作が阻止されているが、縦長状態となる回転位置でスライド可能となる。
【0013】
図6(a)に示す全閉状態では、組ばね4が開いた状態にあり、中間プレート13をスライダープレート1の上方に押し付けている。したがって、表示部筐体と操作部筐体は、安定に閉じた状態を維持している。このとき、スライダープレート1の凸部が回転軸9と接した状態にあるので、スライダープレート1は回転できない状態にある。
【0014】
表示部筐体と操作部筐体に力を加えてスライドさせると、図6(b)に示すように、スライダープレート1が図の上方に移動し、組ばね4が少し閉じられる。したがって、表示部筐体と操作部筐体をさらにスライドさせるためには、さらに力を加える必要がある。このときも、スライダープレート1の凸部が回転軸と接した状態にあるので、スライダープレート1は回転できない状態にある。
【0015】
スライド操作を続けて、スライドストロークの中間部を越えると、組ばね4が開く方向に変わるので、組ばね4はスライド操作を援ける方向に力を加える。弱い力を加えるだけで、あるいは力を加えなくても、スライド操作ができて、図6(c)に示す伸張状態になる。組ばね4が開いた状態になり、中間プレート13をスライダープレート1の下方に押し付けている。したがって、表示部筐体と操作部筐体は、安定に開いた状態を維持する。このとき、スライダープレート1の直線状凸部21が回転軸9に当たらなくなるので、中間プレート13の回転動作が可能となる。
【0016】
図6(d)の断面図に示すように、全閉状態とスライド途中では、スライダープレート1の直線状凸部21の縁に回転軸12が接している。この状態で回転させようとすると、回転軸9に直線状凸部21の縁がぶつかってしまうので、回転動作が阻止される。図6(e)の断面図に示すように、伸張状態では、スライダープレート1の直線状凸部21の縁も傾斜状凸部22の縁も回転軸9から離れているので、回転動作もスライド動作も可能となる。また、回転途中の状態では、スライダープレート1の傾斜状凸部22の縁が回転軸9に接しているので、スライド動作が阻止される。
【0017】
伸張状態において、表示部筐体を操作部筐体に対して面内回転させるように力を加えると、図7(a)に示すように、スライダープレート1と中間プレート13は、回転プレート14に対して回転する。回転案内ピン7は、回転プレート14の曲線溝19をたどって移動する。このとき、図7(b)に示すように、スライダープレート1の傾斜状凸部22の縁が回転軸9に当たるので、スライド動作はできない。回転案内ピン7が曲線溝19の中央部にあるときは、回転用ばねが圧縮されていて、回転案内ピン7を曲線溝19のいずれかの端の方向に押して、回転操作を援ける。表示部筐体をさらに回転させると、図7(c)に示すように、横長状態になる。回転案内ピン7が曲線溝19の端にくると、回転用ばねが回転案内ピン7を曲線溝19の端に押し付けるので、安定に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005-109971号公報
【特許文献2】特開2006-080713号公報
【特許文献3】特開2007-088746号公報
【特許文献4】特開2008-092264号公報
【特許文献5】特願2008-200800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、先に提案したスライド回転ヒンジでは、次のような問題がある。表示部筐体を回転させる際に、スライダープレートに回転方向の力をかけると、スライダープレートの端部のガイドレールから、スライドシューと中間プレートに荷重がかかる。スライド途中では回転しないように規制されているが、回転軸の直線状側面とスライダープレートの直線状凸部の間にクリアランスがあり、回転軸の直線状側面の長さが短いので、わずかに回転する。このとき、無理に回転させようとすると、スライダープレートと中間プレートと回転軸との間に回転を止めようとする方向の強い力が働き、特に、回転軸と直線状凸部との間と、ガイドレールと中間プレート端部との間に大きな荷重がかかる。
【0020】
図8(a)に示すような中間プレートにガイドシューを設けたヒンジの場合では、図8(b)、(c)に示すように荷重がかかる。すると、図8(d)に示すように、ガイドシュー端部付近に荷重が集中し、ガイドシューが変形し破損するおそれがある。また、図8(e)に示すように、中間プレートの曲げ部に繰り返し荷重がかかり、曲げ部が変形して折れるおそれがある。図9(a)に示すようなスライドプレートにガイドシューを設けたヒンジの場合でも同様に、図9(b)、(c)に示すように荷重がかかる。図9(d)に示すように、ガイドシュー端部付近に荷重が集中し、ガイドシューが変形し破損するおそれがある。また、図9(e)に示すように、中間プレートの曲げ部に繰り返し荷重がかかり、曲げ部が変形して折れるおそれがある。伸張状態において、表示部筐体を操作部筐体に対して面内回転させるように力を加えて回転させる場合は、回転に対する抵抗は小さいので、荷重は小さくて変形もわずかである。中間プレートの板を厚くすれば強度は上がるが、厚くした分だけ中間プレートが厚くなってしまい、スライド回転ヒンジの薄型化が困難になる。
【0021】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、携帯電話機などの表示部筐体と操作部筐体をスライド動作と回転動作でつなぐ一軸回転型のスライド回転ヒンジを薄型にしながら、全閉状態とスライド途中における回転操作に対して、ガイドシューと中間プレートが損傷を受けないように強度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明では、第1筐体に固定されたスライダープレートと、第2筐体に固定された回転プレートと、スライダープレートにスライド可能に取り付けられて回転プレートに回転軸で回転可能に取り付けられた中間プレートとを具備し、第1筐体を第2筐体に対してスライド可能に保持するとともに、第1筐体を第2筐体に対して所定角度まで面内回転可能とするスライド回転ヒンジのスライダープレートに、スライド動作中の回転動作を阻止するように回転軸に当たる直線状凸部と、回転動作中のスライド動作を阻止するように回転軸に当たる傾斜状凸部とを備え、中間プレートに、スライダープレートからの回転方向の荷重を受ける補強部を備える構成とした。補強部は、1個または2個の補強ピンか、2個の補強ピンを1つにした一体化補強ピンか、中間プレートの一部をプレスにより凸状に形成した1つまたは2つのハーフパンチ部または1つの一体型ハーフパンチ部のいずれか、中間プレートの一部を切り起して形成した1つまたは2つの切り起し部または1つの一体型切り起し部のいずれかである。
【発明の効果】
【0023】
上記のように構成したことにより、スライド回転ヒンジを薄型にしながら、全閉状態とスライド途中における回転操作に対して中間プレートが変形しないように強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例におけるスライド回転ヒンジの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例におけるスライド回転ヒンジの平面図と断面図である。
【図3】本発明の実施例におけるスライド回転ヒンジの中間プレートの平面図である。
【図4】本発明の実施例におけるスライド回転ヒンジの中間プレートの斜視図である。
【図5】従来のスライド回転ヒンジの分解斜視図である。
【図6】従来のスライド回転ヒンジのスライド動作説明図である。
【図7】従来のスライド回転ヒンジの回転動作説明図である。
【図8】従来のスライド回転ヒンジでの回転荷重による変形の説明図である。
【図9】従来のスライド回転ヒンジでの回転荷重による変形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のスライド回転ヒンジを実施するための最良の形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例は、表示部筐体に固定されたスライダープレートに、中間プレートをスライド可能に取り付け、操作部筐体に固定された回転プレートに、中間プレートを回転軸で回転可能に取り付け、スライダープレートからの回転方向の荷重を受ける補強部を中間プレートに設けたスライド回転ヒンジである。
【0027】
図1に、スライド回転ヒンジの分解斜視図を示す。図2に、スライド回転ヒンジのスライダープレートと中間プレートの概略平面図と要部断面図を示す。図3に、スライド回転ヒンジの中間プレートの補強部の平面図を示す。図4に、スライド回転ヒンジの中間プレートの補強部の斜視図を示す。図1〜図4において、スライダープレート1は、表示部筐体(第1筐体)に固定される基板である。ガイドレール2は、中間プレートの両サイドに固定されている案内部材である。補強ピン3は、スライダープレートの力を受けるために中間プレート上に設けた補強部である。組ばね4は、スライダープレートと中間プレートをつなぐ1組の捻りばねである。ばね留ピン5は、スライダープレートに組ばねの一端を回転可能に固定するピンである。ばね留ピン6は、中間プレートに組ばねの他端を回転可能に固定するピンである。回転案内ピン7は、中間プレートの溝に可動的に保持されていて回転プレートの溝に案内されるピンである。
【0028】
ガイドシュー8は、中間プレートとガイドレールの間に設けた抵抗軽減部材である。回転軸9は、中間プレートを貫通して回転プレートに固定されている回転動作の回転軸である。スライド動作中の回転を阻止するために、円の一部分が直線状にカットされた直線状側面がある不完全円盤状をしている。中心部には、ケーブルを通す貫通孔がある。直線状側面10は、回転軸の円周部分の側面を一部削って直線状にした部分である。一体化補強ピン11は、2つの補強ピンと同等の機能を果たすように、1つの長い部材を補強部としたものである。一体型切り起し部12は、2つの補強ピンと同等の機能を果たすように、1つの長い切り起し部を補強部としたものである。中間プレート13は、回転プレートとスライダープレートをスライド動作と回転動作でつなぐ部材である。回転プレート14は、操作部筐体(第2筐体)に固定されている基板である。第1筐体と第2筐体は逆でもよい。
【0029】
回転用ばね15は、一端が回転プレートに回転可能に固定されており、他端が中間プレートに回転可能に固定されていて、回転動作を援けるばねである。ばね留ピン16は、回転用ばねを回転プレートに固定しているピンである。スリーブ17は、回転案内ピンを通す筒である。タップピン18は、回転プレートに固定されているねじ穴である。曲線溝19は、回転案内ピンを案内するために回転プレートに設けた溝である。切り起し部20は、中間プレートの一部を切り起して補強部としたものである。
【0030】
直線状凸部21は、スライダープレートに設けた凸部のうち、縁がスライドレールに平行な直線状の部分であり、スライド動作中に縁が回転軸の直線状側面に当たって回転を阻止するための部分である。傾斜状凸部22は、スライダープレートに設けた凸部のうち、縁がスライドレールに対して斜めになっている部分であり、回転動作中に縁に回転軸が当たらないように逃げになっている部分である。ハーフパンチ部23は、中間プレートの一部をプレスにより凸形状にして、補強部としたものである。一体型ハーフパンチ部24は、2つの補強ピンと同等の機能を果たすように、1つの長いハーフパンチ部を補強部としたものである。
【0031】
上記のように構成された本発明の実施例におけるスライド回転ヒンジの機能と動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、スライド回転ヒンジの機能の概要を説明する。表示部筐体に固定されたスライダープレート1は、中間プレート13に対してスライドできる。操作部筐体に固定された回転プレート14に対して、中間プレート13が回転軸9を中心として、所定角度(90度)まで面内回転できる。スライド動作中は、スライダープレート1の直線状凸部21が回転軸9に当たって、回転動作を阻止する。回転動作中は、傾斜状凸部22が回転軸9に当たって、スライド動作を阻止する。
【0032】
中間プレート13に補強ピン3を設け、全閉状態とスライド途中で表示部筐体に回転方向の力がかかったときは、中間プレート13の補強ピン3でスライダープレート1からの荷重を受ける。補強ピン3(A)により、反時計回転方向の回転モーメントによる荷重に対して補強する。補強ピン3(B)により、時計回転方向の回転モーメントによる荷重に対して補強する。補強ピン3(A)、(B)両方により、両方向の回転モーメントによる荷重に対して補強する。補強ピン3(A)、(B)をつないで一体化してもよい。補強ピン3の代わりに、中間プレート13に、切り起こしやハーフパンチによる突起を設けてもよい。
【0033】
次に、図2を参照しながら、補強ピンの機能を説明する。全閉状態から完全伸張状態までの表示部筐体を回転できない範囲において、表示部筐体に反時計回転方向の力がかかったとき、図2(a)に示すように、中間プレート13の右側に設けた補強ピン3(A)により、スライダープレート1からの荷重を受ける。表示部筐体に時計回転方向の力がかかったとき、中間プレート13の右側に設けた補強ピン3(B)により、スライダープレート1からの荷重を受ける。補強ピン3は、図2(b)に示すように、中間プレート13にピンをカシメにより固定する。圧入やねじ止めで固定してもよい。
【0034】
図2(c)に示すように、中間プレート13の一部を切り起して、補強ピン3の機能をもたせてもよい。また、図2(d)に示すように、中間プレート13の一部をプレスして凸部を形成し、補強ピン3の機能をもたせてもよい。中間プレート13を切り起こす場合でも、ハーフパンチの場合でも、一体化してもよい。いずれの補強ピン3でも、スライダープレート1に回転方向の力が加えられた場合、スライダープレート1の段差部に補強ピン3が当接して、補強ピン3が荷重を受ける。補強ピン3が荷重を受けることにより、反対側のガイドシュー8と中間プレート13の端の曲げ部にかかる荷重を軽減し、ガイドシュー8と中間プレート13の端部の変形や破損を防止する。
【0035】
次に、図3を参照しながら、一体化補強ピンについて説明する。図3に示すように、2つの補強ピン3(A)、(B)を設けるかわりに、1つの長い一体化補強ピン11を設けてもよい。反時計回転方向の回転モーメントによる荷重は、一体化補強ピン11の上方端部で受ける。時計回転方向の回転モーメントによる荷重は、一体化補強ピン11の下方端部で受ける。一方の荷重を一体化補強ピン11全体で受けることになるので、補強部としての機能が向上する。
【0036】
次に、図4を参照しながら、補強ピンの変形例について説明する。図4(a)に示すように、1つの長い一体化補強ピン11を中間プレート13に取り付ける。あるいは、図4(b)に示すように、中間プレート13の一部をプレスして1つの長い凸部を形成し、一体型ハーフパンチ部24として、補強ピン3の機能をもたせてもよい。また、図4(c)に示すように、中間プレート13の一部を切り欠いて1つの長い切り起し部を形成して、一体型切り起し部12として、補強ピン3の機能をもたせてもよい。中間プレート13にガイドシュー8を取り付けた場合を説明したが、スライダープレート1にガイドシュー8を取り付けている場合でも、同様の効果が得られる。
【0037】
なお、全閉状態とスライド途中において、スライダープレート1に回転方向の力を加えると、回転軸9の直線状側面10の端部から直線状凸部21に対して、強い力がかかる。このとき、限界以上の力で、直線状凸部21が変形したり損傷されたりするおそれがある。それを避けるために、一定以上の力が回転軸9から直線状凸部21に加えられた場合、直線状凸部21が回転軸9を乗り越えて、回転軸9が直線状凸部21の下(図6(d)参照)に逃げるようにして、直線状凸部21の変形や損傷を防止する。回転軸9が直線状凸部21の下に入り込んだ状態になると、スライド回転ヒンジは正常に機能しなくなるが、逆方向の力を加えることにより元に戻るようにしておけば、再び正常に機能するようになる。
【0038】
上記のように、本発明の実施例では、スライド回転ヒンジを、表示部筐体に固定されたスライダープレートに、中間プレートをスライド可能に取り付け、操作部筐体に固定された回転プレートに、中間プレートを回転軸で回転可能に取り付け、スライダープレートからの回転方向の荷重を受ける補強部を中間プレートに設けたので、全閉状態とスライド途中における回転操作があっても、スライダープレートの縁のガイドレールが中間プレートの端部を押す力が小さくなり、中間プレートの端部の変形や損傷を防止できて、薄型にしても強度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のスライド回転ヒンジは、携帯電話機やPDAや携帯ゲーム機などの携帯電子機器の表示部をスライドさせて回転させるヒンジとして最適である。
【符号の説明】
【0040】
1 スライダープレート
2 ガイドレール
3 補強ピン
4 組ばね
5 ばね留ピン
6 ばね留ピン
7 回転案内ピン
8 ガイドシュー
9 回転軸
10 直線状側面
11 一体化補強ピン
12 一体型切り起し部
13 中間プレート
14 回転プレート
15 回転用ばね
16 ばね留ピン
17 スリーブ
18 タップピン
19 曲線溝
20 切り起し部
21 直線状凸部
22 傾斜状凸部
23 ハーフパンチ部
24 一体型ハーフパンチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体に固定されたスライダープレートと、第2筐体に固定された回転プレートと、前記スライダープレートにスライド可能に取り付けられて前記回転プレートに回転軸で回転可能に取り付けられた中間プレートとを具備し、前記第1筐体を前記第2筐体に対してスライド可能に保持するとともに、前記第1筐体を前記第2筐体に対して所定角度まで面内回転可能とするスライド回転ヒンジにおいて、前記スライダープレートは、スライド動作中の回転動作を阻止するように前記回転軸に当たる直線状凸部と、回転動作中のスライド動作を阻止するように前記回転軸に当たる傾斜状凸部とを備え、前記中間プレートは、前記スライダープレートからの回転方向の荷重を受ける補強部を備えることを特徴とするスライド回転ヒンジ。
【請求項2】
前記補強部は、1個または2個の補強ピンであることを特徴とする請求項1記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項3】
前記補強部は、2個の補強ピンを1つにした一体化補強ピンであることを特徴とする請求項1記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項4】
前記補強部は、前記中間プレートの一部をプレスにより凸状に形成した1つまたは2つのハーフパンチ部または1つの一体型ハーフパンチ部のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のスライド回転ヒンジ。
【請求項5】
前記補強部は、前記中間プレートの一部を切り起して形成した1つまたは2つの切り起し部または1つの一体型切り起し部のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のスライド回転ヒンジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−226267(P2010−226267A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69289(P2009−69289)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(592245432)スタッフ株式会社 (31)
【Fターム(参考)】