説明

スルホン酸化中空粒子およびその製造法、スルホン酸化中空微粒子からなる固体酸及びプロトン伝導膜

【課題】本発明の課題は、分離・回収に中和や塩の除去といったプロセスが不要であり、不必要な副産物を生産することなく省エネルギーで目的物を製造できる工業的に有利な固体酸触媒を提供することである。且つ、プロトン伝導性が高く、耐熱性に優れた固体酸を提供することであり、さらに低コストで容易に製造できる方法を提供することである。
【解決手段】有機基の炭素原子がケイ素原子に直接結合したポリシロキサン架橋構造からなる中空粒子の有機基中の芳香環をスルホン化することにより得られる極性溶媒に不溶なスルホン酸化された中空粒子は、高い酸価および硫黄含有率の高い固体酸を提供でき、且つ、その有機シロキサン架橋構造体の構造特性より、所望の酸性度を精度よく容易に得られることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン架橋構造体から成る中空粒子を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で加熱処理し、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中の芳香族基をスルホン化することによって得られる極性溶媒に不溶な固体酸およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、固体酸触媒、プロトン伝導膜、イオン交換膜、燃料電池に使用できる触媒性能、プロトン伝導性が高く耐熱性に優れた固体酸及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギー事情、環境問題が危機的状況にある現在、少ないエネルギーで不必要な副産物を作らずに目的物のみを効率的に生産することが求められている。酸触媒は現代の化学産業に必要不可欠なものであり、薬品、石油化学工業製品、高分子製品といった様々な製品の生産に使われているが、その多くは塩酸、硫酸のような液体の酸触媒である。製造プロセスの中で液体の酸触媒は塩基による中和、そして中和によって生成した塩の除去によって生産物から分離・回収されるが、中和と塩の除去のプロセスに費やされるエネルギーは全体で使われるエネルギーのかなりの部分を占める。また回収される塩は供給過剰であり、その多くが利用性の小さい副産物としてその処理が困難であることがしばしばである。
【0003】
このような中で、固体酸触媒は分離・回収に中和や塩の除去といったプロセスが不要であり、不必要な副産物を生産することなく省エネルギーで目的物を作ることができるために早くからその研究が行われてきた。その結果、ゼオライト、シリカ−アルミナ、含水ニオブ等の固体酸触媒が化学工業で大きな成果を挙げ、社会に大きな恩恵をもたらしている。また、強酸ポリマーとしては、ポリスチレンをスルホン化した材料は固体酸と考えることができ、古くから酸性を有する陽イオン交換樹脂として使われている。また、ポリテトラフルオロエチレン骨格にスルホン基があるナフィオン(デュポン社の登録商標)も親水性を有する非常に強い固体酸(固体超強酸)であることも知られており、これらは液体酸を上回る酸強度をもつ超強酸として働くことが既に知られている。しかし、ポリマーは熱に弱く、また、工業的に利用するには高価すぎるという問題点がある。このように、性能およびコストなど面から固体酸触媒が液体の酸触媒より有利な工業的プロセスの設計は難しく、現在のところほとんどの化学産業は液体の酸触媒に依存しているといえる。このような現状において性能、コスト面で液体の酸を凌ぐ固体酸触媒の出現が望まれている。
【0004】
この様な中で、無機化合物では酸化ジルコニウム(ZrO)を硫酸処理して得られる硫酸痕ジルコニアが最も強い酸性を有する固体酸触媒である(非特許文献1)。しかしながら、表面の硫酸痕の量が多くなく、単位重量あたりの酸点の数は液体酸よりかなり少なく、前記希望を満たすには程遠い。
【0005】
一方、固体高分子型燃料電池に用いるプロトン伝導膜には、燃料電池の電極反応に関与するプロトンについて、高いプロトン伝導性が要求される。このようなプロトン伝導性材料としては、例えば、商品名ナフィオン(デュポン社製)などのスルホン酸基含有フッ素樹脂が電解質膜に多く用いられてきた。しかしながら、このパーフルオロスルホン酸系樹脂はその主鎖骨格のガス透過性が比較的高く、燃料極に供給された燃料ガスが空気極側にリークしてしまうことがあり、発電効率が低下しやすいといった問題を抱えていた。
【0006】
さらに、これらの高分子電解質材料は環境負荷の高いフッ素系の樹脂である上、合成経路が複雑であり、非常に高価であるという問題を抱えている。また、スルホン酸基含有フッ素樹脂は、ガラス転移温度が低く、耐熱性が低いため、作動温度が約80℃〜100℃と低くなってしまい効率が悪くなるという問題点も抱えている。現在、前述したNafionに代わる新たなプロトン伝導性材料の開発が進められているが未だ実用化には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3701016号
【特許文献2】特許3701017号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】表面、19巻、2号、75頁(1981年)
【非特許文献2】野田 他1名 “Patterning Thin−Layer Material of Oriented Meso− and Macroscopic Hollow Hemispheres and Its Facile Lithography” Chem. Mater., Americian Chemical Society,2002,Vol14,pp.2348−2353.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、分離・回収に中和や塩の除去といったプロセスが不要であり、不必要な副産物を生産することなく省エネルギーで目的物を製造できる工業的に有利な固体酸触媒を提供することである。且つ、プロトン伝導性が高く、耐熱性に優れた固体酸を提供することであり、さらに低コストで容易に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中に芳香族基を持ったポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で50〜200℃の比較的低温で加熱処理し、スルホン化することによって得られる極性溶媒に不溶な固体酸が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体としては中空半球状体様を呈する特許文献1記載のポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で50〜200℃の比較的低温で加熱処理し、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中の芳香族基にスルホン化することによって得られる極性溶媒に不溶なスルホン酸化中空粒子を係る。
【0012】
または、周面に長手方向へ沿う一本の割れ目を有する全体としてはラグビーボール様を呈し、長径(L1)の平均値/短径(L2)の平均値=1.1〜3.3の範囲内にあることを特徴とする特許文献2記載のポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で50〜200℃の比較的低温で加熱処理し、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中の芳香族基にスルホン化することによって得られる極性溶媒に不溶なスルホン酸化中空粒子に係る。
【0013】
これらのスルホン酸化中空粒子は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
先ず、本発明に係る中空粒子について説明する。本発明に係る中空粒子は、ポリシロキサン架橋構造体が、シロキサン単位が3次元の網目構造を形成した構造体であり、ポリシロキサン架橋構造体を構成するシロキサン単位としては下記の式1で示されるシロキサン単位と、式2で示されるシロキサン単位および/または式3で示されるシロキサン単位から成るシロキサン単位の1種以上とから構成される有機シリコーンである。
【0015】
式1 SiO
式2 R1SiO1.5
式3 R2R3SiO
【0016】
式2,式3において、R1,R2,R3:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基。
【0017】
式2で示されるシロキサン単位において、式2中のR1は、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基であって、反応性基でない有機基又は反応性基を有しない有機基である場合と反応性基である有機基又は反応性基を有する有機基である場合および、式2中のR1が炭素骨格にスルホ基で置換された芳香族基を有する有機基である場合のものである。
【0018】
式3で示されるシロキサン単位が、式3中のR2、R3は、いずれもケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基であって、反応性基でない有機基又は反応性基を有しない有機基である場合と反応性基である有機基又は反応性基を有する有機基である場合、および式3中のR2、R3が炭素骨格にスルホ基で置換された芳香族を有する有機基である場合のものである。
【0019】
式2中のR1および式3中のR2、R3において、反応性基でない有機基又は反応性基を有しない有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等が挙げられるが、これらのうちではメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。式2中のR1がかかる有機基である場合、式2で示されるシロキサン単位のうちで好ましいシロキサン単位としては、メチルシロキサン単位、エチルシロキサン単位、プロピルシロキサン単位、ブチルシロキサン単位、フェニルシロキサン単位等が挙げられる。式3中のR2、R3がかかる有機基である場合、式3で示されるシロキサン単位のうちで好ましいシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルプロピルシロキサン単位、メチルブチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、ジエチルシロキサン単位、エチルプロピルシロキサン単位、エチルブチルシロキサン単位、エチルフェニルシロキサン単位、ジプロピルシロキサン単位、プロピルブチルシロキサン単位、ジブチルシロキサン単位、ブチルフェニルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位である。
【0020】
式2中のR1および式3中のR2、R3において、反応性基である有機基又は反応性基を有する有機基としては、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アルケニル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基、ハロアルキル基、グリセロキシ基、ウレイド基、シアノ基等が挙げられるが、なかでも2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシ基を有するアルキル基、3−メタクロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基等の(メタ)アクリロキシ基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のアルケニル基、メルカプトプロピル基、メルカプトエチル基等のメルカプトアルキル基、3−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、3−アミノプロピル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基等のアミノアルキル基が好ましい。式2中のRがかかる有機基である場合、式2で示されるシロキサン単位としては、1)3−グリシドキシプロピルシロキサン単位、3−グリシドキシプロピルシロキサン単位、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルシロキサン単位、2−グリシドキシエチルシロキサン単位等のエポキシ基を有するシロキサン単位、2)3−メタクロキシプロピルシロキサン単位、3−アクリロキシプロピルシロキサン単位等の(メタ)アクリロキシ基を有するシロキサン単位、3)ビニルシロキサン単位、アリルシロキサン単位、イソプロペニルシロキサン単位等のアルケニル基を有するシロキサン単位、4)メルカプトプロピルシロキサン単位、メルカプトエチルシロキサン単位等のメルカプトアルキル基を有するシロキサン単位、5)3−アミノプロピルシロキサン単位、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルシロキサン単位、N,N−ジメチルアミノプロピルシロキサン単位、N,N−ジエチルアミノプロピルシロキサン単位、N,N−ジメチルアミノエチルシロキサン単位等のアミノアルキル基を有するシロキサン単位、6)3−クロロプロピルシロキサン単位、トリフルオロプロピルシロキサン単位等のハロアルキル基を有するシロキサン単位、7)3−グリセロキシプロピルシロキサン単位、2−グリセロキシエチルシロキサン単位等のグリセロキシ基を有するシロキサン単位、8)3−ウレイドプロピルシロキサン単位、2−ウレイドエチルシロキサン単位等のウレイド基を有するシロキサン単位、9)シアノプロピルシロキサン単位、シアノエチルシロキサン単位等のシアノ基を有するシロキサン単位等が挙げられるが、なかでもエポキシ基を有するシロキサン単位、(メタ)アクリロキシ基を有するシロキサン単位、アルケニル基を有するシロキサン単位、メルカプトアルキル基を有するシロキサン単位、アミノアルキル基を有するシロキサン単位が好ましい。
【0021】
式2中のR1および式3中のR2、R3において、炭素骨格に芳香族を有する有機基としては、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ナフチル基、アルキルナフチル基等が挙げられるが、これらのうちでは、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基(直鎖又は分岐した)で置換されたアルキルアリール基、又は炭素数7〜9のアラルキル基が好ましい。特に好ましくは、アリール基又はアラルキル基である。これらの有機基をスルホン化して得られる炭素骨格にスルホ基で置換された芳香族を有する有機基である。
【0022】
本発明に係るスルホン酸化中空粒子の中空粒子は、以上説明したようにポリシロキサン架橋構造体から成るものであって、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈するものである。言い替えれば、中空球状体を不均等に2分割したときの小分割部側の形状を呈するものである。そして内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が0.01〜8μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が0.05〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.015〜8μmの範囲内にあるものであるが、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が0.02〜6μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が0.06〜8μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.03〜6μmの範囲内にあるものが好ましい。本発明において、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値、及び外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値はいずれも、本発明に係るスルホン酸化中空粒子の中空粒子サイズは走査電子顕微鏡像から抽出した任意の100個についてそれぞれを測定し、その平均を求めた値である。
【0023】
または、本発明に係るスルホン酸化中空粒子の中空粒子は、以上説明したようなポリシロキサン架橋構造体から成るものであって、周面に長手方向へ沿う一本の割れ目を有する全体としてはラグビーボール様を呈するものである。言い替えれば、全体としては外観が長円形の中空ボールであるラグビーボールに略々近似する形状を呈し、その周面に、平面から見て長手方向の一端部から他端部へと直線的に渡り、内側中空部と連続する割れ目が形成されたものである。そして0.02〜20μm、短径(L)の平均値が0.01〜15μm、且つ長径(L)の平均値/短径(L)の平均値=1.2〜2.5且つ長径(L)の平均値/短径(L)の平均値=1.1〜3.3の範囲内にあるものが好ましい。本発明において、長径(L)は本発明に係る中空微粒子の長手方向における最大外径を意味しており、また短径(L)は本発明に係る該中空微粒子の短手方向における最大外径を意味していて、更に長径(L)の平均値及び短径(L)の平均値は共に、本発明に係るスルホン酸化中空粒子の中空粒子サイズは走査電子顕微鏡像から抽出した任意の100個についてそれぞれを測定し、その平均を求めた値である。
【0024】
このような中空微粒子は、特許文献1、2および非特許文献2に記載された方法により製造することができる。
【0025】
前記中空粒子のケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中の芳香族基を濃硫酸あるいは発煙硫酸中で加熱処理し、スルホン化を行った。該スルホン酸化中空粒子が得られた。
【0026】
前記中空粒子のスルホン化において、濃硫酸、あるいは発煙硫酸中での処理温度が50℃未満の場合、スルホン化が十分進行せず、すべての芳香環がスルホ基で置換されていないため設計された酸強度を有する固体酸が得られない。一方、処理温度が200℃を越えると、スルホン基の熱分解が起こるために、十分なスルホン基が存在する固体酸が得られない。より好ましい処理温度は60℃〜150℃である。本発明のスルホン酸化中空粒子触媒は、所望の酸強度を有する固体酸触媒として利用できる。
【0027】
本発明のスルホン酸化中空粒子は、プロトン伝導膜、固体酸触媒、イオン交換膜、膜電極接合体、燃料電池に使用できる。
【0028】
本発明で言うプロトン伝導膜とは、プロトンを伝導する能力を持つ膜のことを言う。本発明のスルホン酸化中空粒子を単独で膜化させたり、バインダー樹脂などを使用したりすることで膜化して使用される。
【0029】
本発明のスルホン酸化中空粒子は強酸基が多く、高い酸触媒機能をもつことができるため、固体酸触媒としても良好に使用できる。単独で使用しても良いが、バインダー樹脂やアルミナなどに担時することでも使用できる。
【0030】
本発明で言うイオン交換膜とは、イオンを選択的に透過する膜のことを言う。本発明のスルホン酸化中空粒子を単独で使用したり、バインダー樹脂やアルミナなどに担時することにより使用される。
【0031】
本発明のスルホン酸化中空粒子を用いて、膜電極接合体を製造する方法の一例としては、以下の方法を示すことができる。まず、本発明のスルホン酸化中空粒子を単独、またはバインダー樹脂などと混合させる。次に支持体に積層し乾燥などを行いプロトン伝導膜を形成させる。さらに必要に応じてその上に保護フィルムを積層して保存する。そして使用時、この支持体、保護フィルムを剥離させた後、プロトン伝導膜の両側にガス拡散層、触媒層を含有する電極層を形成する。これにより膜電極接合体が得られる。
【0032】
ここにセパレータや補助的な装置(ガス供給装置、冷却装置)を組み立て、単一あるいは積層することにより、燃料電池を作製することができる。
【発明の効果】
【0033】
上述べたように、本発明の極性溶媒に不溶のスルホン酸化中空粒子は、安価な原料を用いて、比較的容易な方法により製造することができる点で、工業的に有利であるという優れた効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る特許請求項1、2および3記載のスルホン酸化中空粒子を略示する拡大正面図
【図2】本発明に係る特許請求項1、4および5記載のスルホン酸化中空粒子を略示する拡大正面図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例によって、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、部は全て重量部を表す。
【実施例】
【0036】
合成例1{中空粒子(S−1)の合成}
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを添加して水溶液とした。この水溶液にフェニルトリエトキシラン144.2g(0.6モル)及びテトラエトキシラン83.3g(0.4モル)を添加し、温度を13〜15℃に保ちながら1時間加水分解反応を行い、更に10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、同温度で3時間加水分解反応を行なった。約4時間でシラノール化合物を含有する透明な反応物を得た。次いで得られた反応物の温度を30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行って、中空粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径5μmのアドバンテック社製のメンブランフィルターに通した後、通過液状部を遠心分離機に供して白色粒子を分離した。分離した白色粒子を水洗し、ウエットケーキ状を乾燥後、白色粉末を得た。その白色粉末をジェットミルで解砕し、単一粒子の中空粒子60.1gを得た。
【0037】
中空粒子(S−1)について、以下の走査型電子顕微鏡による観察、元素分析、ICP発光分光分析、FT−IRスペクトル分析を行ったところ、この中空粒子(S−1)は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が2.64μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が3.02μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が1.43μmの中空有機シリコーン微粒子であった。
【0038】
実施例1{スルホン酸化中空粒子(PI−1)の合成}
この中空粒子(S−1)の白色粉末100gを仕込み80℃に加熱した。この中空粒子に発煙硫酸200gを添加して、攪拌しながら80℃から100℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−1)が得られた。得られた黄色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−1)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた黄色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0039】
・合成例2{中空有機シリコーン粒子(S−2)の合成}
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.6g及びα−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20%水溶液0.25gを添加し、よく攪拌して均一な溶液とした。この水溶液の温度を14℃に保ち、この水溶液にフェニルトリエトキシラン96.2g(0.4モル)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン49.7g(0.2モル)及びテトラエトキシシラン83.3g(0.4モル)の混合モノマーを水溶液とモノマー層が混ざらないように徐々に滴下し、滴下終了後、双方の層を維持した層流状態でゆっくり攪拌した。1時間後、10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを添加し、更に3時間、14℃で同様にゆっくり攪拌した。そして、更に30〜80℃で5時間縮合反応を行って有機シリコーン粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径2μmのアドバンテック社製のメンブランフィルターに通した後、通過液状部を遠心分離機に供して白色粒子のウエットケーキを分離した。分離したウエットケーキ状の白色粒子を水洗し、乾燥後、白色粉末を得た。その白色粉末をジェットミルで解砕し、単一粒子の白色粒子60.1gを得た。
【0040】
合成例1と同様の測定及び分析等を行ったところ、この中空粒子(S−2)は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が1.05μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が1.86μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.99μmの中空粒子であった。
【0041】
実施例2{スルホン酸化中空粒子(PI−2)の合成}
この中空粒子(S−2)の白色粉末100gを仕込み60℃に加熱した。この中空粒子に濃硫酸200gを添加して、攪拌しながら60℃から80℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−2)が得られた。得られた黄色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−2)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた黄色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0042】
・合成例3{中空有機シリコーン粒子(S−3)の合成}
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.2gを添加して水溶液とした。この水溶液にフェニルトリメトキシシラン120.2g(0.5モル)及びテトラエトキシシラン104.2g(0.4モル)を添加し、温度を13〜15℃に保ちながら4時間加水分解反応を行い、シラノール化合物を含有する透明な反応物を得た。次いでこの反応物の温度を30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行って、有機シリコーン粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径10μmのアドバンテック社製のメンブランフィルターに通した後、通過液状部を遠心分離機に供して白色粒子のウエットケーキを分離し、120℃で乾燥した。その白色粉末をジェットミルで解砕し、単一粒子の白色粒子を得た。
【0043】
この中空粒子(S−3)について、合成例1と同様に測定及び分析等を行ったところ、この中空粒子(S−3)は、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が7.01μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が8.12μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が6.50μmの中空粒子であった。
【0044】
実施例3{スルホン酸化中空粒子(PI−3)の合成}
この中空粒子(S−3)の白色粉末100gを仕込み100℃に加熱した。この中空粒子に発煙硫酸200gを添加して、攪拌しながら100℃から110℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−3)が得られた。得られた褐色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−3)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた褐色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0045】
・合成例4{中空粒子(S−4)の合成}
反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.6g及びα−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(オキシエチレン単位の数が10)の20%水溶液0.30gを添加し、よく攪拌して均一な溶液とした。この水溶液の温度を14℃に保ち、この水溶液にフェニルトリエトキシシラン96.2g(0.4モル)、p−スチリルトリメトキシシラン44.8g(0.2モル)及びテトラエトキシラン83.3g(0.4モル)の混合モノマーを水溶液とモノマー層が混ざらないように徐々に滴下し、滴下終了後、双方の層を維持した層流状態で3時間ゆっくり攪拌して加水分解した。次いで反応系の温度を30〜80℃とし、5時間縮合反応を行って有機シリコーン粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液から遠心分離機により白色粒子を分離した。
【0046】
合成例1と同様の測定及び分析等を行ったところ、この有機シリコーン粒子(S−4)は、全体として中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が1.00μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が1.20μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.55μmの中空粒子であった。
【0047】
実施例4{スルホン酸化中空粒子(PI−4)の合成}
この中空粒子(S−4)の白色粉末100gを仕込み100℃に加熱した。この中空粒子に発煙硫酸200gを添加して、攪拌しながら60℃から80℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−4)が得られた。得られた黄色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−4)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた黄色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0048】
・合成例5{中空有機シリコーン微粒子(S−5)の合成}
反応容器にイオン交換水100g、酢酸0.02g、ラウリルスルホン酸ナトリウム0.83g及びポリオキシエチレン(14モル)ノニルフェニルエーテル0.09gを仕込み、均一な水溶液とした。この水溶液にフェニルトリエトキシラン108.2g(0.45モル)、ジメチルジメトキシラン18.0g(0.15モル)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン11.6g(0.05モル)及びテトラエトキシシラン72.9g(0.35モル)を加え、温度を30℃に保ちながら加水分解を行なった。約30分間でシラノール化合物を含有する透明な反応液を得た。次に、別の反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを加えて均一な水溶液とした。この水溶液に前記の反応液を徐々に添加し、温度を13〜15℃に保ちながら5時間縮合反応を行い、更に30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行なって、有機シリコーン粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径3μmの高分子メンブランフィルター(アドバンテック社製)に通した後、遠心分離機を用いて白色粒子を分離した。分離した白色粒子を水洗し、150℃で5時間熱風乾燥を行って有機シリコーン粒子57.2gを得た。有機シリコーン粒子について、反応例1と同様の観察、測定及び分析を行なった。この有機シリコーン粒子は、周面に長手方向へ沿う一本の割れ目を有する全体としてはラグビーボール様を呈し、長径(L)の平均値が0.51μm、短径(L)の平均値が0.24μm、且つ長径(L)の平均値/短径(L)の平均値=2.1であった。
【0049】
実施例5{スルホン酸化中空粒子(PI−5)の合成}
この中空粒子(S−5)の白色粉末100gを仕込み100℃に加熱した。この中空粒子に発煙硫酸200gを添加して、攪拌しながら60℃から80℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−5)が得られた。得られた黄色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−5)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた黄色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0050】
・合成例6{中空有機シリコーン微粒子(S−6)の合成}
反応容器にイオン交換水100g、酢酸0.02g、10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液3gを仕込み、均一な水溶液とした。この水溶液にフェニルトリエトキシシラン132.2g(0.55モル)、ジフェニルジエトキシラン49.0g(0.18モル)及びテトラエトキシシラン56.2g(0.27モル)を加え、温度を30℃に保ちながら加水分解を行なった。約30分間でシラノール化合物を含有する透明な反応液を得た。次に、別の反応容器にイオン交換水700gを仕込み、48%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを加えて均一な水溶液とした。この水溶液に前記の反応液を徐々に添加し、温度を13〜15℃に保ちながら5時間縮合反応を行い、更に温度を30〜80℃に保ちながら5時間縮合反応を行なって、有機シリコーン粒子を含有する水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を孔径5μmの高分子メンブランフィルター(アドバンテック社製)に通した後、遠心分離機を用いて白色粒子を分離した。分離した白色粒子を水洗し、150℃で5時間熱風乾燥を行なって有機シリコーン粒子60.1gを得た。有機シリコーン粒子について、以下の走査型電子顕微鏡による観察及び測定を行なったところ、この有機シリコーン粒子は、周面に長手方向へ沿う一本の割れ目を有する全体としてはラグビーボール様を呈し、長径(L)の平均値が2.5μm、短径(L)の平均値が1.2μm、且つ長径(L)の平均値/短径(L)の平均値=2.1であった。
【0051】
実施例6{スルホン酸化中空粒子(PI−6)の合成}
この中空粒子(S−6)の白色粉末100gを仕込み100℃に加熱した。この中空粒子に発煙硫酸200gを添加して、攪拌しながら80℃から100℃で3時間反応した。この溶液をデカンテーションにより、上澄み液から黄色ウエットケーキを分離し、数回水で洗浄した後、100℃で乾燥した。スルホン酸化中空粒子(PI−6)が得られた。得られた褐色粒子を、電子顕微鏡で観察したところ中空粒子(S−6)の粒子形状および粒子径を保持していた。得られた黄色粉末のX線回折パターンから、非晶性シリコーンピークを確認することができ、この材料はアモルファスであることがわかった。
【0052】
<スルホン酸化中空粒子の結晶系測定>
試料を粉末X線回折計(理学社製 RINT Ultima+2200/PC)によって、CuKα線のブラック角度2θを3°から70°まで測定し、その結晶性を測定した。
【0053】
<スルホン酸化中空粒子のSi/S重量比>
試料を波長分散型X線蛍光分析機(理学社製 ZSX101e)によって測定し、そのスペクトルより、それぞれの原子の重量比を算出した。
【0054】
<スルホン酸化中空粒子の比表面積、細孔径>
試料を容積測定装置(ベル社製 ベルソープミニ)によって、77絶対温度で窒素吸着脱離等温線を測定し、粒子の比表面積を算出した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
試験区分1
<固体酸触媒性能評価法>
実施例1〜3で得られた固体酸および比較例1で得られた固体酸各0.2gを触媒としてアルゴン雰囲気下の酢酸0.1モルとエチルアルコール1モルの混合溶液に添加し、70℃で6時間撹拌し、反応中に酸触媒反応によって生成する酢酸エチルの1時間後の生成量 (mol)をガスクロマトグラフで調べた。これらの結果は、表4に纏められている。
【0059】
比較例1
球状シリカ(アドマファイン社製SO−C6、平均直径:2.2μm、比表面積:1.9m/g)の100g(1.7モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液の0.5gをイオン交換水500mlに添加して、ホモミキサーを使用してよく分散させた後、フェニルトリエトキシラン30g(0.12モル)を添加して、70℃で3時間反応させた。得られたフェニル変性球状シリカを含有した分散液から、デカンテーションにより白色粉末を分離し、数回洗浄後、120℃で乾燥した。得られた白色粉末50gを反応容器に仕込み、80℃に加温し、発煙硫酸100gを添加し、4時間攪拌した。得られた黄色粉体をデカンテーションにより分離・洗浄した後、乾燥した。得られた黄色粉末は、スルホン酸化シリカ粒子であった。
【0060】
比較例2
球状シリカ(アドマファイン社製SO−C1、平均直径:0.25μm、比表面積:17.4m/g)の100g(1.7モル)と48%水酸化ナトリウム水溶液の0.5gをイオン交換水500mlに添加して、ホモミキサーを使用してよく分散させた後、フェニルトリエトキシラン30g(0.12モル)を添加して、70℃で3時間反応させた。得られたフェニル変性球状シリカを含有した分散液から、デカンテーションにより白色粉末を分離し、数回洗浄後、120℃で乾燥した。得られた白色粉末50gを反応容器に仕込み、80℃に加温し、発煙硫酸100gを添加し、4時間攪拌した。得られた黄色粉体をデカンテーションにより分離・洗浄した後、乾燥した。得られた黄色粉末は、スルホン酸化シリカ粒子であった。
【0061】
【表4】

【0062】
実施例1〜6で得られた固体酸の固体酸触媒性能を調査したところ、従来に比べ高い触媒性能を示し、高い性能の固体酸触媒を提供できることが判った。これは、主に固体酸の比表面積の差によるものと思われる。
【0063】
試験区分2
<固体酸のプロトン伝導度評価法>
スルホン酸化中空粒子粉末を加圧成型(日本分光社製、10mm錠剤成型器、成型条件:400kg/cm、室温、1分)することによって、厚さ0.7mm、直径10mmのディスクを作製し、ディスクの片面に金を蒸着した後、インピーダンスアナライザー(HYP4192A)を用いて交流インピーダンス法によってプロトン伝導度を測定した。
周波数5〜13MHz、印加電圧12mV、温度80℃、湿度100%にてセルのインピーダンスの絶対値と位相角を測定した。得られたデータは、コンピュータを用いて発振レベル12mVにて複素インピーダンス測定を行った。これらの結果は、表5に纏められている。
【0064】
【表5】

【0065】
実施例1〜6で得られたスルホン酸化中空粒子のプロトン伝導度を測定したところ、従来に比べ高い性能を示し、高い性能の膜電極接合体および燃料電池を提供できることが判る。この結果は、上記スルホン酸化中空粒子の大きな比表面積と高い酸密度によるものと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、現代の化学産業に必要不可欠な、薬品、石油化学工業製品、高分子製品といった様々な製品の生産に使われている塩酸、硫酸のような液体の酸触媒に替わるスルホン酸化中空粒子触媒に関する。さらに、製造プロセスの中で中和し、中和によって生成した塩を生産物から分離・回収する必要がなく、また副産物が生じないような繰り返し使用が可能なスルホン酸化中空粒子に関する。本発明は、全体として中空半球状体様を呈する特定形状の有機シリコーン粒子をスルホン化することによって得られるスルホン酸化中空粒子に関する。
【符号の説明】
【0067】
10 スルホン酸化中空粒子
11 内側小劣弧
21 外側大劣弧
31 稜線
内側小劣弧の端部間の幅
外側大劣弧の端部間の幅
H 外側大劣弧の高さ
1 スルホン酸化中空粒子
2 割れ目
長径
短径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中にスルホ基が結合したポリシロキサン架橋構造体から成るスルホン酸化中空粒子。
【請求項2】
特許請求項1記載のスルホン酸化中空粒子の中空微粒子が、ポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子であって、縦断面で見て内側小劣弧(11)とこれを覆う外側大劣弧(21)と双方の端部間に渡る稜線(31)とで形成された、全体としては中空半球状体様を呈し、内側小劣弧(11)の端部間の幅(W1)の平均値が0.005〜8μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W2)の平均値が0.01〜10μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.005〜8μmの範囲内にあることを特徴とする。
【請求項3】
特許請求項2記載のスルホン酸化中空微粒子の内側小劣弧(11)の端部間の幅(W)の平均値が0.01〜15μm、外側大劣弧(21)の端部間の幅(W)の平均値が0.02〜20μm、且つ外側大劣弧(21)の高さ(H)の平均値が0.01〜15μmの範囲内にある特許請求項1記載のスルホン酸化中空粒子。
【請求項4】
特許請求項1記載のスルホン酸化中空粒子の中空微粒子が、ポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子は、周面に長手方向へ沿う一本の割れ目を有する全体としてはラグビーボール様を呈し、長径(L1)の平均値/短径(L2)の平均値=1.1〜3.3の範囲内にあることを特徴とする。
【請求項5】
特許請求項4記載のスルホン酸化中空微粒子の長径(L)の平均値が0.02〜20μm、短径(L)の平均値が0.01〜15μm、且つ長径(L)の平均値/短径(L)の平均値=1.2〜2.5の範囲内にある特許請求項1記載のスルホン酸化中空粒子。
【請求項6】
ポリシロキサン架橋構造体が、下記の式1、式2および式3で示されるシロキサン単位から構成されたものである請求項1記載のスルホン酸化中空粒子。
式1 SiO
式2 R1SiO1.5(式2において、R1:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基)
式3 R2R3SiO(式3において、R2、R3:ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基)
【請求項7】
式2で示されるシロキサン単位において、式2中のR1は、ケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基であって、反応性基でない有機基又は反応性基を有しない有機基である場合と、式2中のR1が炭素骨格にスルホ基で置換された芳香族基を有する有機基である場合のものである請求項6記載のスルホン酸化中空粒子。
【請求項8】
式3で示されるシロキサン単位が、式3中のR2、R3は、いずれもケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基であって、反応性基でない有機基又は反応性基を有しない有機基である場合と、式3中のR2、R3が炭素骨格にスルホ基で置換された芳香族を有する有機基である場合のものである請求項6記載のスルホン酸化中空粒子。
【請求項9】
ポリシロキサン架橋構造体から成る中空微粒子のケイ素原子に直結した炭素原子を有する有機基中の芳香族基をスルホン酸化することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のスルホン酸化中空粒子の製造方法。
【請求項10】
スルホン酸化剤が、濃硫酸あるいは発煙硫酸であることを特徴とする請求項9記載のスルホン酸化中空粒子の製造方法。
【請求項11】
加熱処理温度が、50〜200℃であることを特徴とする請求項9あるいは請求項10記載のスルホン酸化中空粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のスルホン酸化中空粒子を用いてなることを特徴とする固体酸触媒。
【請求項13】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のスルホン酸化中空粒子を用いてなることを特徴とするプロトン伝導膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196010(P2010−196010A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45659(P2009−45659)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(307046224)
【Fターム(参考)】