説明

スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液およびその製造方法

【課題】スルホン酸基の量が多いスルホン酸基含有両性水溶性高分子が水に溶解されている両性水溶性高分子水溶液を提供する。
【解決手段】本発明の両性水溶性高分子水溶液は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩が水に溶解された両性水溶性高分子水溶液であって、スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、特定の水溶性カチオン性単量体単位5〜90モル%と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位5〜50モル%と、水溶性カチオン単量体単位およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位以外の他の単量体単位5〜70モル%とを有する共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基を含有した両性水溶性高分子が水に溶解したスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水溶性高分子は、廃水処理、製紙・紙加工、化粧品・トイレタリー、あるいは塗料・インキなどの幅広い分野に利用されている。特に、水溶性高分子の中でも、分子鎖中にカチオン基とアニオン基の両方を有する、いわゆる両性高分子は、帯電防止剤、ヘアセット剤、あるいは汚泥脱水剤などの用途に利用されている。
一般に、両性水溶性高分子は水に溶解した状態で用いられるため、アニオン基を、酸性物質の存在下でその解離を抑制できるカルボキシ基等の弱酸にすることが多いが、用途によっては、スルホン酸基にすることもある。しかしながら、スルホン酸基などの強酸にすると、酸性物質の存在下においてもその解離を抑制することが困難になる。そのため、同一の分子内あるいは異なる分子同士でアニオン基とカチオン基とのイオンコンプレックスを生じて、両性水溶性高分子が水に溶解しにくくなることがあった。
【0003】
そこで、特許文献1では、スルホン酸基を導入した両性水溶性高分子をエマルジョン化し、水に分散させて、高分子凝集脱水剤として利用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3608094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の両性水溶性高分子では、スルホン酸基の導入量が0.1〜3モル%と少ない上に、形態がエマルジョンであるため、用途が限定されるという問題を有していた。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、スルホン酸基の量が多いスルホン酸基含有両性水溶性高分子が水に溶解されている両性水溶性高分子水溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩が水に溶解された両性水溶性高分子水溶液であって、
スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、下記一般式(1)で表される水溶性カチオン性単量体単位5〜90モル%と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位5〜50モル%と、水溶性カチオン単量体単位およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位以外の他の単量体単位5〜70モル%とを有する共重合体であることを特徴とする両性水溶性高分子水溶液。
(一般式(1)中、Xは酸素原子またはNHであり、YはCl,Brまたは1/2SOであり、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRは各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であり、nは1〜3のいずれかの整数である。)
【0007】
【化1】

【0008】
[2] スルホン酸基含有両性水溶性高分子を、無機塩存在下で水に溶解するスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法であって、
スルホン酸基含有両性水溶性高分子として、上記一般式(1)で表される水溶性カチオン性単量体5〜90モル%と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体5〜50モル%と、水溶性カチオン単量体およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体以外の他の単量体5〜70モル%とを共重合させた共重合体を用いることを特徴とするスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。
(一般式(1)中、Xは酸素原子またはNHであり、YはCl,Brまたは1/2SOであり、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRは各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であり、nは1〜3のいずれかの整数である。)
[3] 無機塩の添加量が、スルホン酸基含有両性水溶性高分子に対して0.1〜100質量倍であることを特徴とする[2]に記載のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。
[4] スルホン酸基含有両性水溶性高分子が粉末状であることを特徴とする[2]または[3]に記載のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の両性水溶性高分子水溶液は、スルホン酸基の量が多いスルホン酸基含有両性水溶性高分子が水に溶解されている。
本発明の両性水溶性高分子水溶液の製造方法によれば、スルホン酸基の量が多いスルホン酸基含有両性水溶性高分子を容易に水に溶解させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液)
本発明のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩が水に溶解されたものである。
【0011】
[スルホン酸基含有両性水溶性高分子]
スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、上記一般式(1)で表される水溶性カチオン性単量体単位と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位と、水溶性カチオン単量体単位およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位以外の他の単量体単位(以下、他の単量体単位と略す。)とを有する共重合体である。
【0012】
水溶性カチオン性単量体を表す一般式(1)におけるXは、酸素原子またはNHである。
Yは、Cl,Brまたは1/2SOである。
は、水素原子またはメチル基である。
およびRは、各々独立して、水素原子、メチル基またはエチル基である。
は、水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基である。
nは1〜3のいずれかの整数である。
【0013】
このような水溶性カチオン性単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩などの3級塩や、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル付加物などのハロゲン化アリール付加物などの4級塩;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩などの3級塩や、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル付加物などのハロゲン化アリール付加物などの4級塩などが挙げられる。これらの中でも、汎用性が高く、比較的安価であることから、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩化メチル4級塩が好ましい。これら水溶性カチオン性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子における水溶性カチオン性単量体単位の含有量は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を100モル%とした際の5〜90モル%であり、40〜70モル%であることが好ましい。水溶性カチオン性単量体単位の含有量が5モル%未満であると、水溶性カチオン性単量体単位を有することによる効果が発揮されにくくなって、用途が限定される。水溶性カチオン性単量体単位の含有量が95モル%を超えると、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位の含有量が5モル%未満になるため、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位を有することによる効果が発揮されにくくなる。
【0015】
スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体としては、例えば、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単量体および/またはその塩、ビニルスルホン酸および/またはその塩、スチレンスルホン酸および/またはその塩などが挙げられる。これらの中でも、汎用性が高く、比較的安価であることから、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸単量体および/またはその塩が好ましい。これらスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子におけるスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位の含有量は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を100モル%とした際の5〜50モル%であり、10〜40モル%であることが好ましい。スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位の含有量が5モル%未満であると、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位の含有量が5モル%未満になるため、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位を有することによる効果が発揮されにくくなる。スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位の含有量が50モル%を超えると、水溶性カチオン性単量体のカチオン基とイオンコンプレックスを形成するため、スルホン酸基含有両性水溶性高分子が溶解されにくくなる。
【0017】
他の単量体としては、水に溶解する成分であれば特に限定されないが、用途がより広がることから、水溶性非イオン性単量体である(メタ)アクリルアミド単量体、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体以外の水溶性アニオン性単量体である(メタ)アクリル酸単量体および/またはその塩が好ましい。これら他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
他の単量体単位の含有量は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を100モル%とした際の5〜70モル%であり、10〜50モル%であることが好ましい。他の単量体単位の含有量が5モル%未満であると、スルホン酸基含有両性水溶性高分子の分子量が低くなり、特に高分子量を要する高分子凝集剤用途で充分な凝集脱水性能が得られないことがある。他の単量体単位の含有量が70モル%を超えると、水溶性カチオン性単量体およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体の含有量が少なくなるため、両性水溶性高分子の用途が限定される。
【0019】
[スルホン酸基含有両性水溶性高分子の製造方法]
上記スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、水溶性カチオン性単量体とスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体と他の単量体とを共重合させることにより得られる。
共重合の方法としては、例えば、共重合させる単量体を含む単量体反応液を調製し、レドックス開始剤およびアゾ系開始剤などの熱によりラジカルを発生させる開始剤を用いて、単量体反応液を共重合する水溶液断熱重合方法が挙げられる。また、重合開始前の単量体反応液を均一にシート状にし、光開始剤を用いて可視光あるいは紫外光を照射して共重合を行う水溶液光重合方法が挙げられる。これらの中でも、水溶液光重合方法が好ましい。水溶液光重合方法では、通常、共重合が終了すると、含水ゲル状の共重合体(すなわち、スルホン酸基含有両性水溶性高分子化合物の含水物)が得られる。
【0020】
光開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ(Ciba)社製、ダロキュア(DAROCUR)1173)などが挙げられる。
光開始剤の添加量は、単量体反応液100質量部に対して0.001〜0.1質量部であることが好ましい。光開始剤の添加量が0.001質量部以上であれば、充分な共重合速度および共重合率を確保でき、生産性および品質を向上させることができる。また、光開始剤の添加量が0.1質量部以下であれば、共重合反応の暴走および共重合体の品質低下を防止できる。
【0021】
また、共重合を行う際には、必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸、ホスホン酸などが挙げられる。これらの中でも、連鎖移動させやすいことから、ホスホン酸が好ましい。連鎖移動剤の添加量は、単量体反応液100質量部に対して、0.001〜1質量部が好ましい。連鎖移動剤の添加量が0.001質量部以上であれば、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を水に溶かした際に水に不溶性の架橋した共重合体の発生を抑制できる。また、連鎖移動剤の添加量が1質量部以下であれば、充分な分子量を確保できるため、特に高分子量を必要とする高分子凝集剤用途において充分な凝集脱水性が得られる。
なお、水に不溶性の架橋した共重合体の発生量は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液を、例えば、直径20cm、80メッシュの篩で濾過し、篩の上に残った不溶解分を定量することにより求めることができる。
【0022】
[無機塩]
無機塩は、水溶性の無機塩であり、炭素を含まない酸と塩基の中和反応によって生じる化合物、および、炭酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩のような炭素を含んだ単純構造の炭素化合物である。
具体的な無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウムなどの典型金属元素塩、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛などの遷移金属元素塩、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩を含む塩酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどの典型金属元素塩、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛などの遷移金属元素塩、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を含む硫酸塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウムなどの典型金属元素塩、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸亜鉛などの遷移金属元素塩、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を含む硝酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどの典型金属元素塩、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄などの遷移金属元素塩、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を含むリン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミニウムなどの典型金属元素塩、炭酸第一鉄などの遷移金属元素塩、炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を含む炭酸塩などが挙げられる。これらの中でも、少量添加かつ比較的安価である塩化ナトリウムが好ましい。これら無機塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液には、pHが2〜13の範囲になるように、pHコントロール剤として、スルファミン酸などの酸性物質あるいは水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質が含まれてもよい。
【0024】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、濃度0.5質量%で水中に溶解した水溶液(以下、スルホン酸基含有両性水溶性高分子の水溶液を「ポリマー水溶液」という。)とした際の塩粘度で、通常、5〜200mPa・s、好ましくは10〜100mPa・sである。0.5質量%ポリマー水溶液とした際の塩粘度が5mPa・s以上であれば、特に高粘度を必要とする高分子凝集剤用途において充分な凝集性が得られる。また、0.5質量%ポリマー水溶液とした際の塩粘度が200mPa・s以下であれば、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を水に溶かした際の水に不溶性の架橋した共重合体の発生を抑制できる。
ここで、塩粘度とは、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を、スルホン酸基含有両性水溶性高分子に対して0.1〜100質量倍の無機塩を含む水溶液に溶解させて0.5質量%ポリマー水溶液とした際の、B型粘度計にて測定した、25℃における粘度のことである。なお、スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩を水に溶解する順番に特に制限はなく、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を先に水に溶解してもよいし、無機塩を先に水に溶解してもよい。あるいは、スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩を同時に水に溶解してもよい。さらに、簡便性からスルホン酸基含有両性水溶性高分子が粉末状の場合は、あらかじめ無機塩と粉体同士で混合し、水に溶解してもよい。
【0025】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子の塩粘度は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子の分子量、イオン性の割合、分子量分布、製造方法、組成分布、親水性・疎水性度合いなどの調整によって制御できる。
例えば、分子量を高くする程、イオン性の割合を低くする程、塩粘度の値が増加する傾向にある。一方、分子量を低くする程、イオン性の割合を高くする程、塩粘度の値が減少する傾向にある。
【0026】
(スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法)
本発明のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子を、無機塩存在下で水に溶解する方法である。
その際に使用するスルホン酸基含有両性水溶性高分子は、水への溶解性が向上することから、粉末状であることが好ましい。
【0027】
無機塩の添加量は、スルホン酸基含有両性水溶性高分子に対して0.1〜100質量倍であり、1〜50質量倍であることが好ましい。無機塩の添加量が0.1質量倍以上であれば、スルホン酸基含有両性水溶性高分子が水により溶解しやすくなり、100質量倍以下であれば、スルホン酸基含有両性水溶性高分子の水溶液の塩粘度が適度なものとなる。
【0028】
本発明では、スルホン酸基含有両性水溶性高分子のスルホン酸基の量が5モル%以上と多いにもかかわらず、無機塩が存在することによって、スルホン酸基含有両性水溶性高分子が水に容易に溶解するようになっている。
このようなスルホン酸基含有両性水溶性高分子は、廃水処理、製紙・紙加工、化粧品・トイレタリー、あるいは塗料・インキなどの分野に好適に利用できる。中でも、より高い分子量が要求される汚泥の凝集脱水処理剤として特に適している。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、また、例中の「%」は、特に断らない限り、質量%を示す。また、得られるスルホン酸基含有両性水溶性高分子を「水溶性高分子」と略す場合がある。
【0030】
以下の実施例および比較例において、下記に示す0.5%塩粘度、および0.5%不溶解分量の測定には、スルホン酸基含有両性水溶性高分子が粉末状のものを用いた。
【0031】
(0.5%塩粘度の測定)
試料2.38gをスルホン酸基含有両性水溶性高分子に対して4.2〜42.0質量倍の無機塩を含む水溶液に溶解し、0.5%ポリマー水溶液500gを調製した。そして、B型粘度計(東機産業社製)を用い、温度25℃、回転速度60rpmの条件で、5分後のポリマー水溶液の塩粘度を測定した。
【0032】
(0.5%不溶解分量の測定)
上記の方法により得られた0.5%ポリマー水溶液の全量(500g)を、直径20cm、80メッシュの篩で濾過し、篩上の残留物(不溶解分)の水分を拭き取り、その質量を測定した。
【0033】
<製造例1>
水溶性カチオン性単量体としてジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩(以下、「DMC」と略す。)(大阪有機化学工業社製、純度80%)288.8gおよびジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(以下、「DME」と略す。)(大阪有機化学工業社製、純度80%)288.8g、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体としてアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と略す。)(東亞合成社製、純度50%)264.0g、他の単量体としてアクリルアミド(以下、「AAM」と略す。)(ダイヤニトリックス社製、純度50%)132.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが4.5になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM=28.8:30.8:16.4:24.0(モル%))を調製した。
さらに、光開始剤としてDAROCUR 1173(以下、「D−1173」と略す。)(Ciba社製)および連鎖移動剤としてホスホン酸(以下、「PA」と略す。)(関東化学社製)を、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ200ppmおよび1500ppmとなるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながら溶液温度を16℃に調節した。その後、単量体反応液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から17℃の水を噴霧しながら、表面温度計が30℃になるまでケミカルランプを5W/mの照射強度で照射した。表面温度計が30℃に到達した後は、2W/mの照射強度で45分間照射した。さらに単量体の残存量を低減させるために照射強度を50W/mにして10分間照射して、共重合を行った。これにより、含水ゲル状の共重合体を得た。
この含水ゲル状の共重合体を容器から取り出し、小型ミートチョッパーを使用して解砕した。これを温度60℃で16時間乾燥後、粉砕して粉末状の水溶性高分子(A−1)を得た。
【0034】
<製造例2>
DMC288.8g、DME288.8g、AMPS132.0g、AAM264.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが4.5になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM=24.8:26.6:7.1:41.5(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ150ppmおよび1200ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(A−2)を得た。
【0035】
<製造例3>
DMC165.0g、DME206.3g、AMPS660.0g、AAM66.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが4.5になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM=17.9:24.0:45.0:13.1(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ250ppmおよび2000ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(A−3)を得た。
【0036】
<製造例4>
DMC288.8g、DME288.8g、AMPS264.0g、AAM66.0g、およびその他単量体としてアクリル酸(以下、「AA」と略す。)(三菱化学社製、純度50%)66.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが2.6になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM:AA=28.8:30.9:16.5:12.0:11.8(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ250ppmおよび2000ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(A−4)を得た。
【0037】
<製造例5>
DMC288.8g、DME288.8g、AMPS132.0g、AAM198.0g、AA66.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが2.6になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM:AA=24.9:26.7:7.1:31.1:10.2(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ150ppmおよび1200ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(A−5)を得た。
【0038】
<製造例6>
DMC165.0g、DME165.0g、AMPS660.0g、AAM66.0g、AA66.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが2.6になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM:AA=16.6:17.8:41.5:12.1:12.0(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ250ppmおよび2000ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(A−6)を得た。
【0039】
<比較製造例1>
DMC123.8g、DME123.8g、AMPS858.0g、AAM66.0gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが4.5になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM=13.5:14.5:58.8:13.2(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ250ppmおよび2000ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(B−1)を得た。
【0040】
<比較製造例2>
DMC123.8g、DME123.8g、AMPS858.0g、AAM26.4g、AA39.6gを、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、全単量体濃度55%、総質量1200gになるように蒸留水を加え、pHが2.6になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DMC:DME:AMPS:AAM:AA=13.5:14.5:58.9:5.3:7.8(モル%))を調製した。
さらに、D−1173およびPAを、単量体反応液の総質量に対して、それぞれ250ppmおよび2000ppmとなるように投入した。以下、製造例1と同様の操作を行い、水溶性高分子(B−2)を得た。
【0041】
<実施例1〜5、比較例1,2>
製造例1〜6、比較製造例1〜2で得られた水溶性高分子を、各々、水に溶解し、さらに無機塩(塩化ナトリウム[実施例1]、硝酸ナトリウム[実施例2]、硫酸ナトリウム[実施例3]、炭酸ナトリウム[実施例4]、およびリン酸ナトリウム[実施例5]のいずれか)を所定量添加して、スルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液を得た。
得られたスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液について、0.5%塩粘度および0.5%不溶解分量を測定した。塩粘度の測定結果については表1〜表5に、不溶解分量については表6〜10に示す。
なお、無機塩添加後でもポリマー水溶液が未溶解の場合は、未測定とした。なお、未溶解とは、0.5%不溶解分量で100g以上の量のことである。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
【表10】

【0052】
請求項1に規定した組成のスルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩が水に溶解された実施例の水溶性高分子水溶液では、塩粘度が適度なものとなり、不溶解分量が少なかった。
これに対し、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位が50モル%を超えていた比較例1,2では、無機塩存在下で水溶性高分子が全く溶解しないか、溶解量が少なかった。すなわち、不溶解量が多かった。
【0053】
さらには、表6〜表10より、無機塩量により各水溶性高分子の0.5%塩粘度値は異なり、その添加量が多いほどその値は小さくなる傾向にあることが分かった。また、無機塩の種類によらず、添加量が同じであれば、0.5%塩粘度の値はほぼ同じであった。
表6〜表10より、無機塩量により各水溶性高分子の0.5%不溶解分量は異なり、その添加量が多いほどその量は小さくなる傾向にあることが分かった。また、無機塩の種類によって0.5%不溶解分量は異なり、塩化ナトリウムを用いたときに不溶解分量が最も少ないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子および無機塩が水に溶解された両性水溶性高分子水溶液であって、
スルホン酸基含有両性水溶性高分子は、下記一般式(1)で表される水溶性カチオン性単量体単位5〜90モル%と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位5〜50モル%と、水溶性カチオン単量体単位およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体単位以外の他の単量体単位5〜70モル%とを有する共重合体であることを特徴とする両性水溶性高分子水溶液。
【化1】

(一般式(1)中、Xは酸素原子またはNHであり、YはCl,Brまたは1/2SOであり、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRは各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であり、nは1〜3のいずれかの整数である。)
【請求項2】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子を、無機塩存在下で水に溶解するスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法であって、
スルホン酸基含有両性水溶性高分子として、下記一般式(1)で表される水溶性カチオン性単量体5〜90モル%と、スルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体5〜50モル%と、水溶性カチオン単量体およびスルホン酸基含有水溶性アニオン性単量体以外の他の単量体5〜70モル%とを共重合させた共重合体を用いることを特徴とするスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。
【化2】

(一般式(1)中、Xは酸素原子またはNHであり、YはCl,Brまたは1/2SOであり、Rは水素原子またはメチル基であり、RおよびRは各々独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、Rは水素原子、メチル基、エチル基またはベンジル基であり、nは1〜3のいずれかの整数である。)
【請求項3】
無機塩の添加量が、スルホン酸基含有両性水溶性高分子に対して0.1〜100質量倍であることを特徴とする請求項2に記載のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。
【請求項4】
スルホン酸基含有両性水溶性高分子が粉末状であることを特徴とする請求項2または3に記載のスルホン酸基含有両性水溶性高分子水溶液の製造方法。

【公開番号】特開2010−155956(P2010−155956A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−421(P2009−421)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】