説明

ズームレンズおよび撮像装置

【課題】ズームレンズにおいて、小型かつ広角に構成し、高い光学性能を保持する。
【解決手段】ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを備え、広角端から望遠端への変倍において、各レンズ群の間隔が変化する。第2レンズ群G2は、物体側から順に、負レンズL21、負レンズL22、少なくとも1面の非球面を有する正レンズL23からなる。下記条件式を満たす。
νp<23 (1)
νn−νp>17 (2)
Np≧1.9 (3)
ただし、
νp:第2レンズ群G2の正レンズL23のd線に対するアッベ数
νn:第2レンズ群G2に含まれる負レンズL21、L22のd線に対するアッベ数の平均
Np:第2レンズ群G2の正レンズL23のd線に対する屈折率

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関し、より詳しくは、デジタルカメラやビデオカメラ等に使用されるのに好適なズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの一般家庭への普及に伴い、撮影した風景や人物像等の画像情報をパーソナルコンピュータに入力することができるデジタルカメラが広く普及している。そして最近では、デジタルカメラの高機能化が進み、それに従い高倍率のズームレンズを搭載したデジタルカメラへの需要が高まってきている。
【0003】
従来、変倍比が5倍程度で、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群、負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、正の屈折力の第4レンズ群からなり、各群の間隔を変えることにより変倍を行うズームレンズとしては、下記特許文献1〜3に記載のものが知られている。また、変倍比が10倍程度の高倍率で、4つのレンズ群からなるズームレンズとしては、下記特許文献4に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2005−338740号公報
【特許文献2】特開2007−171371号公報
【特許文献3】特開2005−265914号公報
【特許文献4】特開2005−24844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年では、高倍率であるとともに、小型かつ広角であるズームレンズへの要求も高まってきている。特許文献1、2に記載のものは、レンズ枚数も少なく、コンパクトな構成であるが、広角端での画角が60度程度であり、広角という点では不十分である。特許文献3に記載のものは、広角端での画角が75度程度と広角ではあるが、第1レンズ群を3枚のレンズで構成しているため、レンズ群の光軸方向の長さが大きくなり、小型化という点では不利である。特許文献4に記載のものは、広角端での画角が60度程度であり、広角という点では不十分である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小型かつ広角に構成され、高い光学性能を保持するズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを備え、広角端から望遠端への変倍において、各レンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、第2レンズ群が、物体側から順に、負レンズ、負レンズ、少なくとも1面の非球面を有する正レンズからなり、下記条件式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするものである。
νp<23 (1)
νn−νp>17 (2)
Np≧1.9 (3)
ただし、
νp:第2レンズ群の正レンズのd線に対するアッベ数
νn:第2レンズ群に含まれる負レンズのd線に対するアッベ数の平均
Np:第2レンズ群の正レンズのd線に対する屈折率
【0007】
なお、本発明において、各「レンズ群」は、複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含むものとする。
【0008】
本発明のズームレンズにおいては、下記条件式(4)を満たすことが好ましい。
y/fw>0.70 (4)
ただし、
y:最大像高
fw:広角端における全系の焦点距離
【0009】
また、本発明のズームレンズにおいては、下記条件式(5)を満たすことが好ましい。
4.50<|f1/f2|<5.20 (5)
ただし、
f1:第1レンズ群の焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
【0010】
また、本発明のズームレンズにおいては、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群と第2レンズ群の間隔が増大し、第2レンズ群と第3レンズ群の間隔が減少し、第3レンズ群と第4レンズ群の間隔が変化するように、第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群がそれぞれ光軸方向に移動するように構成してもよい。
【0011】
また、本発明のズームレンズにおいては、第1レンズ群が、物体側から順に、負レンズ、正レンズの2枚からなるように構成してもよい。
【0012】
また、本発明のズームレンズにおいては、第3レンズ群が、物体側から順に、正レンズ、正レンズおよび負レンズの接合レンズの3枚からなるように構成してもよい。
【0013】
また、本発明のズームレンズにおいては、第4レンズ群が1枚の正レンズからなるように構成してもよい。
【0014】
本発明の撮像装置は、上記記載の本発明のズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のズームレンズによれば、物体側から順に、正、負、正、正の第1〜第4レンズ群を備えたズームレンズにおいて、第2レンズ群を2枚の負レンズと1枚の正レンズで構成し、該正レンズを非球面レンズとして非球面を効果的に用いることで、少ないレンズ枚数で諸収差を良好に補正しながら、小型に構成し、なおかつ広角化も達成することができる。また、本発明のズームレンズによれば、条件式(1)、(2)を満たすことで、倍率色収差を良好に補正して高い光学性能を得ることができ、条件式(3)を満たすことで、諸収差を良好に補正しながら光軸方向の小型化を図ることができる。よって、本発明によれば、小型かつ広角に構成され、高い光学性能を保持するズームレンズおよび該ズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【0016】
さらに、本発明において、条件式(4)を満たす場合には、所定の広角化を達成することができる。またさらに、本発明において、条件式(5)を満たす場合には、コマ収差や非点収差を良好に補正して高い光学性能を実現しつつ、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるズームレンズの構成を示す断面図であり、後述の実施例1のズームレンズに対応している。また、図2〜図5はそれぞれ、後述の実施例2〜実施例5のズームレンズの構成を示す断面図である。図1〜図5に示すズームレンズの基本的な構成は同様であり、図示方法も同様であるため、以下では主に図1に示すズームレンズを例にとり説明する。
【0019】
ここでは、図1の左側を物体側、右側を像側としている。そして、図1では、上段に広角端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、下段に望遠端における無限遠合焦時のレンズ配置を示し、変倍時の各レンズ群の概略的な移動軌跡を上段と下段の間に実線の曲線で示している。
【0020】
本発明のズームレンズは、光軸Zに沿って、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とを備え、広角端から望遠端への変倍において、各レンズ群の間隔が変化するように構成されている。すなわち、本ズームレンズは、広角端から望遠端への変倍において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔が変化する。
【0021】
例えば図1に示す例のズームレンズでは、広角端から望遠端への変倍時に、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔が増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔が減少し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔が変化するように、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4の4つの群がそれぞれ光軸方向に移動する。
【0022】
図1に示す例のズームレンズでは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間に開口絞りStが配置されており、この開口絞りStは変倍時には第3レンズ群G3と一体的に移動するように構成されている。なお、図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさや形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0023】
ズームレンズを撮像装置に適用する際には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、最も像側のレンズと結像面(撮像面)の間にカバーガラスや、赤外線カットフィルタ、ローパスフィルタなどの各種フィルタ等を配置することが好ましく、図1には、第4レンズ群G4の像側に、これらを想定した平行平板状の光学部材PPが配置された例を示している。
【0024】
なお、図1に示す例では、光学部材PPの像側の面が結像面であり、結像面と光軸Zとの交点を結像位置Pimとしている。例えばこのズームレンズを撮像装置に適用する際には、この結像面に撮像素子の撮像面が位置するように配置される。
【0025】
図1のズームレンズは、各レンズ群とも物体側から順に、以下のように構成されている。第1レンズ群G1は、負レンズL11と正レンズL12の接合レンズからなる2枚構成であり、第2レンズ群G2は、負レンズL21、負レンズL22、少なくとも1面の非球面を有する正レンズL23からなる3枚構成であり、第3レンズ群G3は、正レンズL31、正レンズL32および負レンズL33の接合レンズからなる3枚構成であり、第4レンズ群G4は、正レンズL41からなる1枚構成である。
【0026】
第1レンズ群G1は2枚で構成されているため、特許文献3に記載のような第1レンズ群を3枚構成にしたものと比較して、第1レンズ群G1の厚み(光軸方向の長さ)を小さくすることができ、小型化を図ることができる。各レンズ群の厚みを短縮することで、沈胴時の小型化に貢献することができ、ひいては、ズームレンズを搭載する撮像装置の小型化に貢献することができる。また、最も物体側に配置される第1レンズ群G1は、他のレンズ群に比べてレンズ外径が大きいものとなるため、第1レンズ群G1のレンズ枚数を抑えることで、大幅な低コスト化を図ることもできる。
【0027】
また、本実施形態のように、第1レンズ群G1が負レンズL11と正レンズL12を含むように構成することで、第1レンズ群単独における色収差の補正に有利となる。ズームレンズは各レンズ群単独で色消しを行うことが好ましいと考えられており、本実施形態の第1レンズ群G1はこの考えに沿った構成となっている。そして、負レンズL11と正レンズL12を接合レンズとすることで、負レンズL11と正レンズL12の空気間隔を0にすることができ、第1レンズ群G1の厚みの縮小に寄与できる。
【0028】
なお、小型化のためには変倍時に第1レンズ群G1が移動するように構成することが好ましく、この場合には、第1レンズ群G1のレンズ径を小さくすることができるため、さらなる小型化を図ることができる。
【0029】
第2レンズ群G2は2枚の負レンズと1枚の正レンズで構成されていることから、第2レンズ群G2に必要とされる負の屈折力を確保しながら諸収差の良好な補正が容易となる。
【0030】
また、第2レンズ群G2においては、最も像側のレンズである正レンズL23を非球面レンズとして、非球面を効果的に用いることにより、広角化の際の良好な補正が可能となり、少ないレンズ枚数で小型に構成しつつ、広角で高い光学性能を有するズームレンズを実現することができる。
【0031】
図1に示す例のように、第2レンズ群G2が全て単レンズからなる場合には、接合レンズを含むように構成した場合に比べて、空気接触面が多くなり、広角化の際の収差補正に有利となる。
【0032】
第3レンズ群G3は正レンズと負レンズの貼り合わせによる接合レンズを含む3枚構成とすることにより、色収差およびその他の諸収差を良好に補正することができる。
【0033】
第4レンズ群G4は1枚構成とすることにより、小型に構成できる。また、軽量に構成できるため、第4レンズ群G4でフォーカシングを行う場合には、迅速なフォーカシングが容易となる。
【0034】
本実施形態のズームレンズは、下記条件式(1)〜(3)を満たすように構成されている。
νp<23 (1)
νn−νp>17 (2)
Np≧1.9 (3)
ただし、
νp:第2レンズ群G2の正レンズL23のd線に対するアッベ数
νn:第2レンズ群G2に含まれる2つの負レンズL21、L22のd線に対するアッベ数の平均
Np:第2レンズ群G2の正レンズL23のd線に対する屈折率
【0035】
さらに本実施形態のズームレンズは、下記条件式(4)、(5)を満たすことが好ましい。なお、好ましい態様としては、条件式(4)、(5)のいずれか一方を満たすものでもよく、あるいは両方を満たすものでもよい。
y/fw>0.70 (4)
4.50<|f1/f2|<5.20 (5)
ただし、
y:最大像高
fw:広角端における全系の焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
【0036】
条件式(1)は、第2レンズ群G2に含まれる正レンズL23のアッベ数の好適な範囲を規定するものである。条件式(1)を満たすように正レンズL23の材料を選択することで、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0037】
条件式(2)は、第2レンズ群G2を構成する負レンズと正レンズのアッベ数に関するものである。条件式(2)を満たすように負レンズL21、L22、および正レンズL23の材料を選択することで、倍率色収差を良好に補正することができる。
【0038】
上述したように、ズームレンズは各レンズ群単独で色消しを行うことが好ましいため、色収差補正を考える上で、使用するレンズ材料の選択は重要である。特に、図1に示す例のように、第2レンズ群G2が接合レンズを用いず、全て単レンズからなる場合は、色収差補正を考慮したレンズ材料の選択はより重要となる。
【0039】
条件式(3)は、第2レンズ群G2に含まれる正レンズL23の屈折率の好適な範囲を規定するものである。条件式(3)を満たすように高屈折率の材料を選択することで、所望の屈折力を得るようにレンズ形状を決める際に、条件式(3)を満たさない場合に比べて、曲率半径を大きくすることができる。仮に曲率半径が小さい場合には、レンズの縁肉を確保するためにレンズの厚みを厚くする必要があり、そのために光軸方向の長さが長くなってしまうが、条件式(3)を満たすことで、正レンズL23の厚みを薄くすることができ、小型化に貢献できる。
【0040】
条件式(4)は、最大像高と広角端における全系の焦点距離の比を規定するものである。条件式(4)を満たすことにより、広角化を達成することができる。
【0041】
条件式(5)は、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の焦点距離の比に関するものであり、いわば第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の屈折力の大きさを規定するものである。条件式(5)の上限を上回ると、第2レンズ群G2の屈折力が強くなりすぎてコマ収差や非点収差の補正が困難となる。条件式(5)の下限を下回ると、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなりすぎて、変倍時に第2レンズ群G2が移動する場合は、第2レンズ群G2の移動量が大きくなり、小型化が困難になる。
【0042】
なお、本ズームレンズにおいて、最も物体側に配置される材料としては、具体的にはガラスを用いることが好ましく、あるいは透明なセラミックスを用いてもよい。
【0043】
非球面形状が形成されるレンズの材料としては、ガラスを使用してもよいし、プラスチックを用いることも可能である。プラスチックを用いる場合には、軽量化および低コスト化を図ることが可能となる。
【0044】
また、本ズームレンズには、保護用の多層膜コートが施されることが好ましい。さらに、保護用コート以外にも、使用時のゴースト光低減等のための反射防止コート膜を施すようにしてもよい。
【0045】
図1に示す例では、レンズ系と結像面との間に光学部材PPを配置した例を示したが、ローパスフィルタや特定の波長域をカットするような各種フィルタ等を配置する代わりに、各レンズの間にこれらの各種フィルタを配置してもよく、あるいは、いずれかのレンズのレンズ面に、各種フィルタと同様の作用を有するコートを施してもよい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態のズームレンズによれば、要求される仕様等に応じて、上記した好ましい構成を適宜採用することで、少ないレンズ枚数で小型に構成し、広角化を達成しつつ、高い光学性能を保持することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明のズームレンズの数値実施例について説明する。実施例1〜5のズームレンズのレンズ断面図はそれぞれ図1〜図5に示したものである。
【0048】
実施例1にかかるズームレンズのレンズデータを表1に、非球面データを表2に、変倍データを表3に示す。同様に、実施例2〜5にかかるズームレンズのレンズデータ、非球面データ、変倍データを表4〜表15に示す。以下では、表中の記号の意味について、実施例1を例にとり説明するが、実施例2〜5のものについても基本的に同様である。
【0049】
表1のレンズデータにおいて、Siは最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riはi番目の面の曲率半径を示し、Diはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示している。なお、面間隔の最下欄は表中の最終面と結像面との面間隔を示している。また、表1のレンズデータにおいて、Ndjは最も物体側のレンズを1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdjはj番目の光学要素のd線に対するアッベ数を示している。なお、レンズデータには、開口絞りStおよび光学部材PPも含めて示している。開口絞りStに相当する面の曲率半径の欄には(開口絞り)と記載している。レンズデータの曲率半径は物体側に凸の場合を正、像側に凸の場合を負としている。
【0050】
表1のレンズデータにおいて、変倍時に間隔が変化する、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔、第2レンズ群G2と開口絞りStの間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔、第4レンズ群G4と光学部材PPの間隔に相当する面間隔の欄にはそれぞれ、D3(可変)、D9(可変)、D15(可変)、D17(可変)と記載している。
【0051】
表1の欄外下方には、広角端および望遠端の各位置における焦点距離f、FナンバーFno.および全画角2ωの値を示す。
【0052】
表1のレンズデータでは、非球面の面番号に*印を付しており、非球面の曲率半径として近軸の曲率半径の数値を示している。表2の非球面データには、非球面の面番号Siと、これら非球面に関する非球面係数を示す。非球面係数は、以下の式(6)で表される非球面式における各係数KA、Am(m=3、4、5、…20)の値である。
Zd=C・h/{1+(1−KA・C・h1/2}+ΣAm・h … (6)
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数(m=3、4、5、…20)
【0053】
表3の変倍データには、広角端、中間、望遠端における全系の焦点距離fと、各面間隔D3、D9、D15、D17の値を示す。
【0054】
表1のRi、Di、fの単位、表3のf、D3、D9、D15、D17の単位、(A)式のZd、hの単位としては、「mm」を用いることができる。しかし、光学系は比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、単位は「mm」に限定されることはなく、他の適当な単位を用いることもできる。表1の全画角2ωの単位は度である。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
実施例1のズームレンズにおいて、第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL11と物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL12の接合レンズからなる2枚構成であり、第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL21と、両凹形状の負レンズL22と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL23とからなる3枚構成であり、第3レンズ群G3は、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と両凹形状の負レンズL33の接合レンズからなる3枚構成であり、第4レンズ群G4は両凸形状の正レンズL41の1枚構成である。なお、ここで述べた形状は、非球面レンズについては、近軸領域におけるものである。実施例1における非球面は、負レンズL21の両面、正レンズL23の両面、正レンズL31の両面に設けられている。非球面が設けられたレンズは各レンズ群の最も物体側あるいは最も像側のレンズであり、このように効果的に非球面を採用することにより、変倍に伴う収差補正を良好に行うことができる。
【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
実施例2のズームレンズの基本構成、および非球面を施した面は、上記した実施例1のものと同じである。
【0063】
【表7】

【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
実施例3のズームレンズは、負レンズL21が近軸領域において平凹形状である点が実施例1のものと異なるが、その他の基本構成、および非球面を施した面は、上記した実施例1のものと同じである。
【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
【表12】

【0070】
実施例4のズームレンズは、負レンズL21が近軸領域において平凹形状であり、正レンズL23が両凸形状である点が実施例1のものと異なるが、その他の基本構成、および非球面を施した面は、上記した実施例1のものと同じである。
【0071】
【表13】

【0072】
【表14】

【0073】
【表15】

【0074】
実施例5のズームレンズの基本構成、および非球面を施した面は、上記した実施例1のものと同じである。
【0075】
表16に、実施例1〜5における条件式(1)〜(5)に対応する値を示す。表16からわかるように、実施例1〜5は全て条件式(1)〜(5)を満足している。
【0076】
【表16】

【0077】
図6(A)〜図6(D)に実施例1のズームレンズの広角端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示し、図6(E)〜図6(H)に実施例1のズームレンズの変倍の中間領域における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示し、図6(I)〜図6(L)に実施例1のズームレンズの望遠端における、球面収差、非点収差、ディストーション(歪曲収差)、倍率色収差の各収差図を示す。
【0078】
各収差図には、d線(波長587.6nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図および倍率色収差図にはd線、波長460.0nm、波長615.0nmについての収差をそれぞれ実線、一点鎖線、二点鎖線で示す。非点収差図にはサジタル方向、タンジェンシャル方向の収差をそれぞれ実線と破線で示す。球面収差図のFno.はFナンバー、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0079】
同様に、実施例2のズームレンズの広角端、中間、望遠端における各収差を図7(A)〜図7(L)に示し、実施例3のズームレンズの広角端、中間、望遠端における各収差を図8(A)〜図8(L)に示し、実施例4のズームレンズの広角端、中間、望遠端における各収差を図9(A)〜図9(L)に示し、実施例5のズームレンズの広角端、中間、望遠端における各収差を図10(A)〜図10(L)に示す。
【0080】
以上のデータから、実施例1〜5のズームレンズは、約5倍の高倍率を有し、少ないレンズ枚数で小型に構成され、広角端での全画角が約80度と広角化が達成され、広角端から望遠端にわたって各収差が良好に補正されて可視域において高い光学性能を有することがわかる。
【0081】
次に、本発明の撮像装置の実施形態について説明する。図11A、図11Bはそれぞれ、本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラ10の正面側斜視図、背面側斜視図である。
【0082】
図11Aに示すように、デジタルカメラ10は、カメラボディ11の正面に、本発明の実施形態にかかるズームレンズ12と、ファインダの対物窓13aと、被写体に閃光を発光するための閃光発光装置14とが設けられている。また、カメラボディ11の上面にはシャッタボタン15が設けられ、カメラボディ11の内部にはズームレンズ12によって結像された被写体の像を撮像するCCDやCMOS等の撮像素子16が設けられている。
【0083】
また、図11Bに示すように、カメラボディ11の背面には、画像や各種設定画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)17と、ファインダの観察窓13bと、ズームレンズ12の変倍を行うためのズームレバー18と、各種設定を行うための操作ボタン19とが設けられている。なお、本デジタルカメラ10では、正面側のファインダの対物窓13aを経由して導かれる被写体光が、背面側のファインダの観察窓13bで視認可能な構成になっている。
【0084】
ズームレンズ12は、その光軸方向がカメラボディ11の厚み方向に一致するように配設されている。上述したように、本実施形態のズームレンズ12はレンズ枚数を極力抑えて小型化を図っているため、カメラボディ11本体にズームレンズ12を沈胴収納したときの光学系の光軸方向の全長は短くなり、デジタルカメラ10の厚みを薄く構成することができる。また、本実施形態のズームレンズ12は広角で高い光学性能を有するものであるから、デジタルカメラ10は広い画角での撮影が可能であり、良好な画像を得ることができる。
【0085】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数等の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
【0086】
また、本発明のズームレンズにおいては、変倍時に移動するレンズ群やその方向は必ずしも上記例に限定されるものではなく、開口絞りの位置やその移動の有無も上記例に限定されるものではなく、例えば開口絞りは変倍時に固定されていてもよく、あるいは、レンズ群とは個別に移動するものでもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、撮像装置としてデジタルカメラを例にとり説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ビデオカメラや監視カメラ等の他の撮像装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図2】本発明の実施例2にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図3】本発明の実施例3にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図4】本発明の実施例4にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図5】本発明の実施例5にかかるズームレンズのレンズ構成を示す断面図
【図6】図6(A)〜図6(L)は本発明の実施例1にかかるズームレンズの各収差図
【図7】図7(A)〜図7(L)は本発明の実施例2にかかるズームレンズの各収差図
【図8】図8(A)〜図8(L)は本発明の実施例3にかかるズームレンズの各収差図
【図9】図9(A)〜図9(L)は本発明の実施例4にかかるズームレンズの各収差図
【図10】図10(A)〜図10(L)は本発明の実施例5にかかるズームレンズの各収差図
【図11A】本発明の実施形態にかかる撮像装置の正面側斜視図
【図11B】本発明の実施形態にかかる撮像装置の背面側斜視図
【符号の説明】
【0089】
10 デジタルカメラ
11 カメラボディ
12 ズームレンズ
13a 対物窓
13b 観察窓
14 閃光発光装置
15 シャッタボタン
16 撮像素子
17 LCD
18 ズームレバー
19 操作ボタン
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
Pim 結像位置
PP 光学部材
St 開口絞り
Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを備え、広角端から望遠端への変倍において、前記各レンズ群の間隔が変化するズームレンズであって、
前記第2レンズ群が、物体側から順に、負レンズ、負レンズ、少なくとも1面の非球面を有する正レンズからなり、下記条件式(1)〜(3)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
νp<23 (1)
νn−νp>17 (2)
Np≧1.9 (3)
ただし、
νp:前記第2レンズ群の前記正レンズのd線に対するアッベ数
νn:前記第2レンズ群に含まれる前記負レンズのd線に対するアッベ数の平均
Np:前記第2レンズ群の前記正レンズのd線に対する屈折率
【請求項2】
下記条件式(4)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
y/fw>0.70 (4)
ただし、
y:最大像高
fw:広角端における全系の焦点距離
【請求項3】
下記条件式(5)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ。
4.50<|f1/f2|<5.20 (5)
ただし、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【請求項4】
広角端から望遠端への変倍時に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間隔が増大し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の間隔が減少し、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群の間隔が変化するように、前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群、前記第4レンズ群がそれぞれ光軸方向に移動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1レンズ群が、物体側から順に、負レンズ、正レンズの2枚からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第3レンズ群が、物体側から順に、正レンズ、正レンズおよび負レンズの接合レンズの3枚からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記第4レンズ群が1枚の正レンズからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のズームレンズを備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate


【公開番号】特開2010−96886(P2010−96886A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266110(P2008−266110)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】