説明

セフェム化合物

本発明は、新規セフェム化合物、およびその化合物の製造方法に関するものであり、その方法は発酵段階、化学的段階、および/または生体内変換段階を含む可能性がある。式(I)で表される本発明のセフェム化合物またはその塩若しくはそのエステル(式中、Rは(カルボキシメチルチオ)プロピオニル、(カルボキシエチルチオ)プロピオニル、Y−CH−CO15からなる群から選択され、式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルHOOC−X−COであり、式中、Xは(CHと定義されるか、あるいは式中、Xは(CH)P−A−(CH)qと定義され、式中、pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであり、但し、AがCH=CHまたはC≡Cのとき、p+qは2または3であり、またはAがCHB、C=O、O、SまたはNHのとき、p+qは3または4であり、あるいは式中、Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CHであり、式中、mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であり、AはCHまたはNであるか、あるいは式中、Xは(CH)p−CH=CH−CH=C−(CH)qであり、式中、pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0または1であり、かつ式中、R’は、OH、アルキルが直鎖または分枝鎖であり得るO−(アルキル1〜6C)およびアルキル基が直鎖または分枝鎖であり得るO−C(アルキル1〜6C)−O−(アルキル1〜6C)からなる群から選択される)を、とりわけ本発明による発酵技術により、特に適当なアシル−6−アミノペニシラン酸を所望の化合物に変換するのに必要な遺伝子を有するか、またはその遺伝子で形質転換された適切な微生物を用いて調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規セフ−3−エム化合物およびその化合物の製造のためのバイオプロセスに関する。
【発明の詳細な説明】
【0002】
本発明のセフ−3−エム化合物は、式(I)で特徴付けられ、
【化1】

またはその塩もしくはそのエステルであり、
式中、Rは、
a)HOOC−X−CO−
式中、Xは(CHと定義されるか、
あるいは式中、Xは(CH−A−(CHと定義され、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであり、但し、AがCH=CHまたはC≡Cであるとき、p+qは2または3であり、あるいはAがCHB、C=O、O、SまたはNHであるとき、p+qは3または4であり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CHであり、
式中、mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であり、AはCHまたはNであり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0またはであり、あるいは、
b)(カルボキシメチルチオ)プロピオニル
c)(カルボキシエチルチオ)プロピオニル
からなる群から選択され、かつ、
式中、R’は、
d)OH、
e)アルキルは直鎖または分枝鎖であり得るO−(アルキル1〜6C)および
f)アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得るO−C(アルキル1〜6C)−O−(アルキル1〜6C)
からなる群から選択される。
【0003】
このセフ−3−エム化合物(I)を、市販のセフ−3−エム抗生物質の製造における中間体として使用することができる。あるいは、このセフ−3−エム化合物(I)を別の中間体、すなわち7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸またはその塩もしくはそのエステルに変換することができる。
【0004】
このセフ−3−エム化合物(I)における特に有利な点は、セファロスポリンCに比べて、精製および/または商業上で興味が持たれているセフ−3−エム抗生物質のさらなる合成の条件下でより安定性を有している点である。このため、セファロスポリンCよりもかなり容易に、好適な化合物を単離することができる。
【0005】
市販のセフ−3−エム抗生物質の例は、セファセトリル、セファクロール、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファマンドール、セファピリン(cefapirin)、セファピリン(cefapyrin)、セファトリジン、セファゼドン(cefazedone)、セファゾリン、セフブペラゾン、セフカペンピボキシル、セフジニル、セフジトレンピボキシル、セフェピム、セフェキシム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフミノクス、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフォチアムヘキセチル、セフピラミド、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラムピボキシル、セフテゾール、セフチブテン、セフチオフル、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフゾナムである。
【0006】
セフロキシム、セフォキシチンおよびセフカペンピボキシルは、セファロスポリン抗生物質の例であり、3−カルバモイルオキシメチル基を共有し、7−ACAなどの現在入手可能なセフ−3−エム中間体から容易に製造することができない。本発明のセフ−3−エム化合物は3−カルバモイルオキシメチル基を有し、既知の手法を用いて、これらのセファロスポリン抗生物質のみならず他のセフ−3−エム抗生物質にも容易に変換することができる。
【0007】
セファゾリン、セフタジジン(ceftazidine)およびセフトリアキソンは、既知の手法により式(I)の化合物から調製することができる最も好ましいセファロスポリン抗生物質である。
【0008】
さらに、式(I)の化合物自体を抗生物質として使用することができる。
【0009】
本発明の最も好ましい化合物は、式(II)の化合物(アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸)である。
【化2】

【0010】
本発明のセフ−3−エム化合物を、当技術分野で知られた方法で化学的に、あるいは発酵により、あるいは1つまたは複数の生体内変換段階および1つまたは複数の発酵段階および/または1つまたは複数の化学的変換段階の組み合わせにより製造することができる。
【0011】
本発明は、遺伝子操作された適切な微生物由来の二次代謝産物として、セフ−3−エム化合物(I)を製造するための発酵方法をも含む。
【0012】
本発明によるセフ−3−エム化合物の発酵製造のために、好ましくは、β−ラクタムを製造するための少なくとも一部の代謝経路を本質的に有する微生物を使用することができる。例えば、ペナム系またはセフ−3−エム系β−ラクタム化合物の製造に少なくとも一部の代謝経路を有する微生物を使用することができる。この目的に適切な生物は、例えば、P.chrysogenumなどのペニシリウム(Penicillium)属、またはA.chrysogenumなどのアクレモニウム(Acremonium)属、またはA.nidulansなどのアスペルギルス(Aspergillus)属の真菌、あるいはS.clavuligerisなどのストレプトマイセス(Streptomyces)属、またはN.lactamduransなどのノカルジア(Nocardia)属、またはL.lactamgenusなどのLysobacter属の細菌である。
【0013】
微生物におけるO−カルバモイル化セフ−3−エム化合物セファマイシンCの生合成は、図1に示すスキームに従って行われると考えられる。セファロスポリンCの合成は、図2のスキームで示される。
【0014】
好ましくは、このような遺伝子操作生物を、得られたセフ−3−エム化合物で天然セフ−3−エム化合物の7位に存在するα−アミノ−アジピル側鎖が本発明による所望の側鎖に置き換えられる条件下で、培養する。この目的を達するために、この側鎖をもたらし得る組成物をin vivo酵素的変換に供する。
【0015】
適切には、このin vivo酵素的変換を、
i)3’−カルボキシメチルチオプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
ii)3,3’−チオジプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
iii)化合物pY−CH−COOHまたはその塩もしくはそのエステル
(式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルである)、
iv)一般式HOOC−X−COOHの化合物またはその塩もしくはそのエステル
(式中、Xは(CHと定義されるか、
あるいは式中、Xは(CH−A−(CHと定義され、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであり、但し、AがCH=CHまたはC≡Cであるとき、p+qは2または3であり、あるいはAがCHB、C=O、O、SまたはNHであるとき、p+qは3または4であり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CHであり、
式中、mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であり、AはCHまたはNであり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0または1である)、
からなる群から選択される側鎖前駆物質により提供することができる。
【0016】
製造のための遺伝子操作生物として、A.chrysogenumを使用する場合、イソペニシリンNアシルトランスフェラーゼをコードするpenDE(Alvarez,E.、B.Meesschaert、E.Montenegro、S.Gutierrez、B.Diez、J.L.Barredo、およびJ.F.Martin、1993年、Eur.J.Biochem.215、323〜332頁)、およびカルバモイルトランスフェラーゼをコードするcmcH(Coque,J.J.R.、F.J.Perez−Llarena、F.J.Enguita、J.L.Fuente、J.F.Martin、およびP.Liras、1995年、Gene 162、21〜27頁)を導入するべきである。さらに、少なくともDACアセチルトランスフェラーゼをコードするcefG遺伝子(Felix,H.R.、J.Neusch、およびW.Wehrli、1980年、FEMS Microbiol.Lett.8、55〜58頁;Fujisawa,Y.、およびT.Kanzaki、1975年、Agric.Biol.Chem.39、2043〜2048頁)および好ましくはIPNエピメラーゼを共にコードするcefD1およびcefD2遺伝子(Ullan RV、Casqueiro J、Banuelos O、Fernandez FJ、Gutierrez S、Martin JF、2002年、J Biol Chem 277(48)、46216〜46225頁)も、好ましくない副産物を避けるために不活性化するべきである。
【0017】
製造のための遺伝子操作生物として、N.lactamduransまたはS.clavuligerusを選択する場合、penDEの導入および発現が必要であり、好ましくはcefD遺伝子(Jayatilake,S.、J.A.Huddleston、およびE.P.Abraham、1981年、Biochem.J.195、645〜647頁;Konomi,T.、S.Herchen、J.E.Baldwin、M.Yoshida、N.A.Hunt、およびA.L.Demain、1979年、Biochem.J.184、427〜430頁)およびOCDACヒドロキシラーゼをコードするcmcI遺伝子(Xiao,X.、G.Hintermann、A.Hausler、P.J.Barker、F.Foor、A.L.Demain、およびJ.Piret、1993年、Agents Chemother.37、84〜88頁)および場合によってメチルトランスフェラーゼまたはセファマイシンC合成酵素をコードするcmcJ遺伝子(Coque,J.J.R.、F.J.Perez−Liarena、F.J.Enguita、J.L.Fuente、J.F.Martin、およびP.Liras、1995年、Gene 162、21〜27頁)をも、(後者の2つは、国際公開第WO95/29253号パンフレットに記載されるように、セファマイシン生合成を遅らせる酵素)、好ましくない副産物を避けるために、不活性化してもよい。
【0018】
宿主としてL.lactamgenusを選択する場合、少なくともpenDEおよびcmcHを導入するべきであり、好ましくはcefDを不活性化するべきである。
【0019】
本発明の化合物の製造のための遺伝子改変を備えるために、当技術分野で知られる方法で、生物に遺伝子の挿入および不活性化を行うことができる。挿入のためにゲノムDNA配列または所望に応じてcDNAを使用することができる。
【0020】
本発明の化合物の発酵製造に好ましい微生物は、遺伝子操作により本発明の化合物製造に適する酵素をコードするDNA断片を備えており、また、A.chrysogenumの場合に適当な遺伝子が不活性化されている、P.chrysogenumおよびA.chrysogenumである。
【0021】
さらに好ましくは、本発明による化合物の発酵製造を、適切な方法で遺伝子操作を受けたP.chrysogenumで行う。
【0022】
このために、イソペニシリンNを生成する能力のあるP.chrysogenum株は、以下のDNA断片セットを備えている:
1)エクスパンダーゼ(expandase)酵素をコードするDNA
2)ヒドロキシラーゼ(hydroxylase)酵素をコードするDNA
3)O−カルバモイルトランスフェラーゼ(O−carbamoyl transferase)酵素をコードするDNA。
【0023】
あるいは、二元機能のエクスパンダーゼ/ヒドロキシラーゼ酵素をコードするDNAを、エクスパンダーゼ酵素およびヒドロキシラーゼ酵素を別々にコードするDNAの代わりに導入してもよい。
【0024】
好ましい実施形態では、本発明は式(I)の化合物
【化3】

またはその塩もしくはそのエステルの発酵製造方法に関し、
(式中、Rは、
a)HOOC−X−CO−
(式中、Xは(CHと定義されるか、
あるいは式中、Xは(CH−A−(CHと定義され、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであり、但し、AがCH=CHまたはC≡Cのとき、p+qは2または3であり、またはAがCHB、C=O、O、SまたはNHのとき、p+qは3または4であり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CHであり、
式中、mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であり、AはCHまたはNであり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0またはである)、あるいは、
b)(カルボキシメチルチオ)プロピオニル、
c)(カルボキシエチルチオ)プロピオニル
d)Y−CH−CO−
(式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルである。)
からなる群から選択され、かつ、
式中、R’は、
e)OH
f)アルキルが直鎖または分枝鎖であり得るO−(アルキル1〜6C)および
g)アルキル基が直鎖または分枝鎖であり得るO−C(アルキル1〜6C)−O−(アルキル1〜6C)
からなる群から選択される)
A)イソペニシリンNを産生するP.chrysogenum株を、その生育を維持することが可能な培地で維持し、
i)3’−カルボキシメチルチオプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
ii)3,3’−チオジプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
iii)化合物pY−CH−COOHまたはその塩もしくはそのエステル
(式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルである)、
iv)一般式HOOC−X−COOHの化合物またはその塩もしくはそのエステル
(式中、Xは(CHと定義されるか、
あるいは式中、Xは(CH−A−(CHと定義され、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであり、但し、AがCH=CHまたはC≡Cのとき、p+qは2または3であり、またはAがCHB、C=O、O、SまたはNHのとき、p+qは3または4であり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CHであり、
式中、mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であり、AはCHまたはNであり、
あるいは式中、Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
式中、pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0または1である)
からなる群から選択される、前記P.chrysogenum株により同化および利用されて適切なアシル−6−アミノペニシラン酸(アシル−6−APA)を生成し、それによりアシル−6−APAを生成することが可能である任意の1つまたは複数の側鎖前駆物質を含むフィードストック(feedstock)を前記培地に添加するステップと、
B)対応する遺伝子のin situ発現により以下の酵素的変換を行うステップであって、
i)アシル−6−APAを、エクスパンダーゼ酵素によりin situで環拡大して、対応するアシル−7−アミノ−デスアセトキシセファロスポラン酸(アシル−7−ADCA)を生成し、ここで、アシル−6−APAを基質として受容することができるエクパンダーゼ酵素をコードするDNAにより、P.chrysogenum株を形質転換し、その発現の結果、菌株で産生した前記アシル−6−APAもその後in situで環拡大して、対応するアシル−7−ADCAを生成する、
ii)アシル−7−ADCAの3−メチル側鎖を、ヒドロキシラーゼ酵素によりin situで水酸化して、対応するアシル−7−ADACを生成し、ここで、アシル−7−ADCAを基質として受容することができるヒドロキシラーゼ酵素をコードするDNAにより、P.chrysogenum株を形質転換し、その発現の結果、菌株で産生したアシル−7−ADCAもin situで水酸化されて、対応するアシル−7−ADACを生成し、
iii)アシル−7−ADACの3−ヒドロキシメチル側鎖を、O−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素によりin situでO−カルバモイル化し、式(I)の化合物を生成し、ここで、アシル−7−ADACを基質として受容することができるO−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAにより、P.chrysogenum株を形質転換し、その発現の結果、菌株で産生したアシル−7−ADACもin situでカルバモイル化されて、本発明の化合物を生成するステップとを含む。
【0025】
本発明による使用のために、エクスパンダーゼ酵素、ヒドロキシラーゼ酵素またはO−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAを、このDNAを含むと報告され、かつ菌株保存機関から入手することができる微生物から得ることができ、または適当な自然源から単離された微生物から得る可能性がある。
【0026】
エクスパンダーゼ酵素を含むと報告される微生物の例は、A.chrysogenum(cefEF)、S.clavuligerus(cefE)、N.lactamdurans(cefE)、L.lactamgenus(cefE)である。
【0027】
ヒドロキシラーゼ酵素を含むと報告される微生物の例は、A.chrysogenum(cefEF)、S.clavuligerus(cefE)、N.lactamdurans(cefE)、L.lactamgenus(cefE)である。
【0028】
O−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素を含むと報告される微生物の例は、放線菌目由来の種であり、とりわけストレプトマイセス属由来の種である。米国特許第4075061号明細書(US Patent No.4075061)の開示に基づき、所望のO−トランスカルバモイラーゼ活性をコードするDNAを与えるために使用する可能性のある、特に適切な種には、英国特許第1315177号明細書(British Patent No.1315177)に記載されるNRRL3585株などのS.clavuligerus、オランダ特許出願第7308948号明細書(Dutch Patent Application No.730948)に記載されるATCC21948株などのS.wadayamensis、米国特許第3914158号明細書(US Patent No.3914158)に記載されるNRRL5735などのS.albogriseolus、英国特許第1321412号明細書(British Patent No.1321412)に記載されるNRRL3802株などのS.lactamdurans、および英国特許第1387965号明細書(British Patent No.1387965)に記載されるNRRL5741株などのS.jumonjinensisなどがある。
【0029】
特許公報国際公開第95/29253号パンフレットの開示によれば、DNAをコードする所望のO−カルバモイルトランスフェラーゼのさらなる適切な生物源は、N.lactamdurans、S.lipmanil、S.panayensis、S.cattleya、S.griseus、S.todorominensis、S.filipinensis cephamiciniおよびS.heteromorphusである可能性がある。
【0030】
一般に、宿主細胞、例えばP.chrysogenumまたは他の真菌の形質転換は、PEG/Ca媒介のプロトプラスト法、エレクトロポレーション法またはパーティクルガン(particle gun)法のような様々な手段のDNAの導入、および形質転換細胞の選択により行うことができる。例えば、Applied Molecular Genetics of Fungi(Peberdy、Laten、Ogden、Bennett編)、ケンブリッジ大学出版局(1991年)のVan den HondelとPuntの「Gene and Transfer and Vector Development for Filamentous Fungi」を参照されたい。優性および非優性の選択マーカーのアプリケーションについて記載されている(上記のVan den Hondelら)。同種生物源(P.chrysogenum由来)および異種生物源(非P.chrysogenum由来)の両方の選択マーカーについて記載されている(Goukaら、J.Biotechnol. 20(1991年)、189〜200頁)。
【0031】
形質転換細胞の選択において、ベクター配列の存在下または非存在下で、選択不能のDNAに物理的に連結しているかまたは連結していない、様々な同種または異種形質転換細胞選択マーカーのアプリケーションがよく知られている。
【0032】
例えばWisconsin54−1255株(ATCCにおいて登録番号28089で寄託されている)のP.chrysogenumにおいて、エクスパンダーゼ活性、ヒドロキシラーゼ活性およびO−カルバモイルトランスフェラーゼ活性をコードするDNA配列をこのような方法で導入し、発現させる。β―ラクタム産生を改良させた、Wisconsin54−1255株の変異体を含む他のP.chrysogenum株も適する。このような高産生菌株の例は、CBS455.95株、PanlabsP2およびASP−78(Barredo JL、Alvarez E、Cantoral JM、Diez B、Martin JF、1988年、Antimicrob Agents Chemother 32(7)、1061〜1067頁)である。
【0033】
さらに、cefEおよびcefFまたはcefEFと共にcmcH遺伝子を、異種または同種制御エレメントの転写制御下および翻訳制御下、好ましくは真菌遺伝子制御エレメントの制御下に置く。これらのエレメントを、P.chrysogenumのIPNSまたはpcbC遺伝子、β−チューブリン遺伝子、A.nidulansのgpdA遺伝子、またはA.nigerのglaA遺伝子などのクローン化真菌遺伝子から得ることができる。
【0034】
完全な発酵製造の代替法として、1つまたは複数の発酵段階および1つまたは複数の生体内変換段階および/または1つまたは複数の化学的変換段階の組み合わせにより、本発明の化合物を調製することができる。
【0035】
例えば、第1の段階で、ペニシリンGまたはペニシリンVなどの適切なペニシリン誘導体、またはアジポイル−7−ADCAまたはアジポイル−7−ADACなどのセファロスポリン誘導体を発酵製造することができる。
【0036】
適切なペニシリン誘導体について、対応する7−アシル−3−メチル−セフ−3−エム化合物に変換する前に、場合によって6−アシル基を交換させてもよい。順々に後者の化合物を、対応する7−アシル−3−ヒドロキシメチル−セフ−3−エムに変換し、最後に式(I)の化合物に変換することができる。
【0037】
この変換のために、必要な酵素(penDE、cefE、cefFおよびcmcH遺伝子あるいはpenDE、cefEFおよびcmcH遺伝子がそれぞれコードする、アシルトランスフェラーゼ、エクスパンダーゼ、ヒドロキシラーゼおよびカルバモイルトランスフェラーゼ、あるいは代わりにアシルトランスフェラーゼ、エクスパンダーゼ・ヒドロキシラーゼおよびカルバモイルトランスフェラーゼ)を任意の適切な宿主で別々に製造することができる。好ましくは、当技術分野で知られる方法に従って、大腸菌(Escherichia coli)でこれを行う。酵素を精製し、必要であれば固定化し、あるいは全細胞の生体内変換または粗製の無細胞抽出液において、単回および連続反応容器、またはワンポット反応で利用し、式(I)の化合物を製造することができる。
【0038】
この複数段階経路(例えば、ペニシリンG→アシル−6−APA→アシル−7−ADCA→アシル−7−ADAC→化合物(I))の1段階を、発酵的変換または化学的変換段階に変えることができる。例えば、cefEで形質転換したP.chrysogenumで生成したアジポイル−7−ADCAを(例えば、EP0523341で記載される方法により)使用する場合、第1の段階を省くことができ、あるいは、代わりに(例えば、EP0540210で記載される方法により)cefEおよびcefFで形質転換したP.chrysogenumで生成したアシル−7−ADACから開始することにより最初の2段階を省くことができる。代替方法として、当技術分野で知られる各段階の化学的変換を応用することができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1 エクスパンダーゼ、ヒドロキシラーゼおよび3’−ヒドロキメチルセフェムO−カルバモイルトランスフェラーゼ活性をコードする遺伝子を用いたP.chrysogenumの形質転換)
本願では、遺伝子クローニング法に使用される一般的な手法を用いる。これらの手法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、合成オリゴヌクレオチドの合成、DNAのヌクレオチド配列分析、DNAの酵素的ライゲーションおよび制限(restriction)、大腸菌(E.coli)ベクターのサブクローニング、形質転換および形質転換細胞の選択、DNAの単離および精製、サザンブロット分析によるDNAの特徴付けなどがある。これらの手法は全て、当技術分野で非常によく知られており、多くの参考文献に適切に記載されている。
【0040】
P.chrysogenum株のWisconsin54−1255(ATTC28089)を用いて形質転換を行った。P.chrysogenumに導入された全てのコンストラクトは、P.chrysogenumのIPNSプロモーターおよびATターミネーターの制御下にある。β−ラクタムの産生が改良されたWisconsin54−1255株の変異体を含む、他のP.chrysogenum株も適する。このような菌株の例は、CBS455.95である。
【0041】
形質転換に使用するプロトプラストの生成のために、YPD培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、2%グルコース)でP.chrysogenumの培養を行う。プロトプラスト処理および再生手順は、使用されるP.chrysogenumの個々の菌株および実施される形質転換細胞選択法次第で若干異なる可能性がある。
【0042】
S.clavuligerus ATCC27064を、tryptic soy broth(Difco)で培養する。この菌株の染色体DNAをPCRによるcefE遺伝子の単離に使用する。公表されているS.clavuligerusのCefE配列(Kovacevic S、Weigel BJ、Tobin MB、Ingolia TD、Miller JR、J Bacteriol(1989)171(2)、754〜760頁;Ingoliaら、米国特許第5070020号明細書)を用いて、5’正方向プライマー4363:5’−GAT CAG TGA CAG TTG CAT ATG GAC ACG ACG GTG CCC ACC TTC AGC CTG−3’(配列番号1)および3’逆方向プライマー4364:5’−CCC GGG TCT AGA TCT AGA CTA TGC CTT GGA TGT GCG GCG GAT GTT−3’(配列番号2)を設計した。
【0043】
得られたPCR産物をNdeIおよびXbaIで切断し、この0.9kb断片を同様にNdeIおよびXbaIで切断したpMcTNdeI(断片:3.9kb)と連結しpMcTSEを得た。pMCTNdeIはpMC−5の誘導体であり(Stanssensら、NAR(1989)17、4441頁)、リボソーム結合配列(RBS)部位およびNdeIクローニング部位の前に、tacプロモーターをコードする断片を挿入することにより作成する(E.P.Pat.No.0351029も参照されたい)。
【0044】
最初に、エクスパンダーゼ遺伝子の前でATプロモーターをクローニングした。P.chrysogenumの染色体DNAにおいて、プライマー4488:5’−AGA ACG GAT TAG TTA GTC TGA ATT CAA CAA GAA CGG CCA GAC−3’(配列番号3)および4489:5’−GAC AGA GGA TGT GAA GCA TAT GTG CTG CGG GTC GGA AGA TGG−3’(配列番号4)を用いて、PCRによりATプロモーターを得た。これらのオリゴは、Barredoら(1989年)のGene 83、572〜576頁、およびDiezらのMol.Gen.Genet.(1989年)218、572〜576頁で公表されている、P.chrysogenumのpenDE遺伝子配列に基づく。この産物をEcoRIおよびNdeIで消化し、1.5kb断片を得た。この断片を、3.0kbのpBluescript(ストラタジーン)EcoRI−XbaI断片およびS.clavuligerusのエクスパンダーゼ遺伝子を含む0.9kbのpMcTSE NdeI−XbaI断片と連結した。これにより、ATプロモーターの後ろにエクスパンダーゼ遺伝子を含むプラスミドpASEが生じる。
【0045】
pASEプラスミドにおいて、エクスパンダーゼ遺伝子の後ろで(ATをコードする)penDEターミネーターをクローニングした。従って、5’正方向プライマー4579:5’−TTC GAT GTC AGC CTG GAC GGC GAG ACC GCC ACG TTC CAG GAT TGG ATC GGG GGC AAC TAC GTG AAC ATC CGC CGC ACA TCC AAG GCA TGA AGG CTC TTC ATG ACG−3’(配列番号6)および3’逆方向プライマー4507:5’−GGA CTA GTG TCG ACC CTG TCC ATC CTG AAA GAG TTG(配列番号5)を用いて、ATターミネーターのPCRに、P.chrysogenumの染色体DNAを鋳型として使用した。この断片を、BglI−SpeIで消化し、この0.6kb産物を、SpeIおよびBglIで消化したプラスミドpASEと連結し、pASEWAを生成した。
【0046】
最後に、エクスパンダーゼ遺伝子を、P.chrysogenumのIPNSプロモーターの後ろに入れた(IPNSプロモーターがATプロモーターに取って代わる)。P.chrysogenumの染色体DNAを鋳型として用いて、5’オリゴ4923:5’−CGA GGG GAA TTC CTT ATA CTG GGC TG CTG CAT TGG TCT G(配列番号7)(Diez,B.、Gutierrez,S.、Barredo,J.L.、van Solingen,P.、van der Voort,L.H.とMartin,J.F.(1990年)、J.Biol.Chem.265(27)、16358〜16365頁で公表される配列を使用)および3’オリゴ4924:5’−CCC GGG CAT ATG CAT ATG GGT GTC TAG AAA AAT AAT GGT GAA AAC(配列番号8)(Carr LG、Skatrud PL、Scheetz ME 2nd、Queener SW、Ingolia TD.(1986年)、Gene 48(2−3)、257〜266頁で公表される配列を使用)で、IPNSプロモーターを増幅した。pASEWAをEcoRIおよびNdeIで消化し、エクスパンダーゼ遺伝子を有する4.6kb断片を生成し、EcoRI−NdeIで消化した0.9kbのIPNSプロモーターPCR産物とATターミネーターを連結した。これによりpISEWAが生じる。IPNSプロモーターおよびATターミネーターを有するcefE遺伝子を、NotI消化によりpISEWAnから得た(図3)。
【0047】
ヒドロキシラーゼ遺伝子(cefF)をS.clavuligerus(ATCC27064)から単離した。この菌株の染色体DNAを、PCRによるcefF遺伝子の単離に用い、その遺伝子の上流にNdeI部位、下流にNsiI部位を導入した。このコンストラクトをIPNSプロモーターの後とATターミネーターの前に連結し、pISFWAを生成した。P.chrysogenumの形質転換のために、NotIによる切断後に、cefF遺伝子とIPNSプロモーターおよびATターミネーターを含むコンストラクトをpISFWAから単離した(図4)。
【0048】
PCRにより、A.chrysogenum(=Cephalosporium acremonium)のエクスパンダーゼ/ヒドロキシラーゼ遺伝子(cefEF)を染色体DNAから得た。設計された正方向オリゴはNdeI部位を導入し、逆方向オリゴはNsiI部位を導入した。NdeIおよびNsiIによる消化後に、この遺伝子をペニシリウム発現ベクターに入れることができ、pICEFWAを生成した(図5)。ペニシリウムの形質転換のために、IPNSプロモーターおよびATターミネーターを用いて、NotI消化により、A.chrysogenum由来cefEFをpICEFWAから単離した。
【0049】
正方向プライマー:AB12586(5’−ACA GAC CAT ATG CTC GTC GTT GCA TTC AAG−3’(配列番号9))および逆方向プライマー:5’−AB12587(GAC GGC ATG CAT TCA GGA ACC GGC TAT TCG C−3’(配列番号10))を用いて、染色体DNAのPCRにより、cmcH遺伝子をS.clavuligerusから得て、NdeI、NsiIで切断し、pISEWANのNdeI、NsiI断片に連結する(エクスパンダーゼ遺伝子をcmcH遺伝子に置換する)ことにより、pIScCTWAが生じた(図6)。NotI消化により、IPNSプロモーターおよびATターミネーターを含むcmcH遺伝子をpIScCTWAから単離した。
【0050】
HindIIIによる消化により、HelYに隣接するAmdS断片をpHELY−A1から単離した(図7)。
【0051】
amdS選択マーカーを用いた同時形質転換により、cefEFコンストラクトまたはcefEおよびcefFコンストラクトを有するcmcHを、P.chrysogenum ATCC28089に導入した。amdSマーカーの組込みにより、P.chrysogenum形質転換体は、唯一の窒素源としてアセトアミドを含む選択培地で生育することが可能となる。
【0052】
P.chrysogenumのプロトプラストへのDNAの移入に関する手法は、当技術分野でよく知られており、FinkelsteinとBall(編)、Biotechnology of filamentous fungi,technology and products、Butterworth−Heinemann(1992年);BennettとLasure(編)、More Gene Manipulations in fungi、Academic Press(1991年);Turner(Puhler)(編)、Biotechnology、second completely revised edition、VHC(1992年)などの多くの参考文献に記載されている。Ca−PEG媒介プロトプラスト形質転換は、EP635574に記載される通りに使用する。
【0053】
(実施例2 アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の発酵製造
実施例1で得られたP.chrysogenum形質転換体を、米国特許第20020039758号明細書のペニシリンV産生試験で記載される通り、培地上に2×10分生子/mlで接種したが、フェノキシ酢酸カリウムの代わりに、側鎖前駆物質としてアジピン酸ナトリウム0.5〜10mg/mlを補った(滅菌前のpHは5.5〜6.0)。25℃、毎分280回転で144〜169時間培養した。
【0054】
十分に培養した培養液のろ液を、アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の生成についてHPLCおよびNMRで分析した。NMRスペクトルは、所望の化合物に特徴的なピークを示す(図9参照)。
【0055】
(実施例3 アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の化学合成)
(フェニルアセチル−7−アミノ−3−ヒドロキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸−ベンズヒドリルエステル(式(IV))の調製)
【化4】

【0056】
撹拌した7−アミノ−セファロスポラン酸(5g、18.3mmol)水溶液(20ml)に、0℃で20%NaOH溶液8.5mlを滴下した。5分間撹拌した後、酢酸でpHを8.5に調整し、その溶液をアセトン(20ml)で希釈した。その後、NaOH水溶液の添加によりpHを7.5と8.5の間に保持しながら、塩化フェニルアセチル(2.9ml、22mmol)アセトン溶液(3ml)を滴下し、この溶液を0℃で1時間撹拌した。その後、アセトンを減圧除去し、酢酸エチル(70ml)を添加して、水相を希塩酸でpH3まで酸化した。有機相を分離し、さらなる酢酸エチルで水相を再抽出した。有機相を合わせてブライン(MgSO)で洗浄し、ろ過した。その後、この溶液に、撹拌しながらジフェニルジアゾメタン(5g、25.8mmol)酢酸エチル溶液(5ml)を添加した。この溶液を約40mlまで減圧濃縮し、4℃で一晩静置した。その結果生じた沈殿物をろ過により集め、酢酸エチルで洗浄し、白色粉末の生成物(3.83g、40%)を得た。δ((CDSO、300MHz)3.54 & 3.63(2H、ABq、J 13.9、PhC)、3.65(2H、s、SCH)、4.25(2H、s、COH)、5.15(1H、d、J 4.7、CHCS)、5.76(1H、dd、J 4.7、8.2、NHC)、6.94(1H、s、CPh)7.2〜7.6(15H、m、PhCH、PhCH)、9.17(1H、d、J 8.2、NCH)。M/z(ES+)537(M+Na、100%)。
【0057】
(トリクロロアセチル−フェニルアセチル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸−ベンズヒドリルエステル(式(V))の調製)
【化5】

【0058】
イソシアン酸トリクロロアセチル(0.23ml、1.9mmol)を撹拌した式(IV)(600mg、1.2mmol)のアセトン溶液(20ml)に添加した。2時間の撹拌後に白色の沈殿物をろ過により集め、アセトンで洗浄し、乾燥した(811mg、99%)。δ((CDSO、300MHz)3.54 & 3.62(2H、ABq、J 13.9、PhC)、3.66 & 3.76(2H、ABq、J 18.5、SC)、4.90 & 5.02(2H、ABq、J 12.8、CO)、5.20(1H、d、J 4.8、CHCS)、5.82(1H、dd、J 4.8、8.1、NHCCH)、6.96(1H、s、CPh)、7.2〜7.6(15H、m、CHPhPhCH)、9.17(1H、d、J 8.1、NCH)、12.0(1H、s、CONCO)。M/z(ES−)702(M−1、100%)。
【0059】
(トリクロロアセチル−GOフェニルアセチル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸RCO(式(VI))の調製)
【化6】

【0060】
式(V)(5.15g、7.33mmol)をトリフルオロ酢酸(35ml)とアニソール(4ml)の冷却(0℃)混合液に溶解させた。2時間の撹拌後、この溶液を減圧濃縮し、オイルを得て石油エーテル(40〜60℃画分)を用いて粉砕し、酢酸エチル(30ml)に溶解させ、炭で脱色化した。ろ過後、この溶液を減圧濃縮し、さらに精製することなく次の段階で使用する黄色のオイルを得た。δ((CDSO、300MHz)3.50〜3.75(4H、m、PhC、SC)、4.94(1H、一部ABq、J 12.5、CHO)、5.14(2H、m、一部ABq CO、CHCHS)、5.72(1H、m、NHCCH)、7.0〜7.4(5H、m、PhCH)、9.12(1H、d、J 8.2、NCH)、11.95(1H、s、CONHCO)。M/z(ES−)536(M−1、67%)。
【0061】
(フェニルアセチル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(式(VII))の調製)
【化7】

【0062】
10%NaHCO溶液を添加して、pHが約9に達するまで、前段階で得た黄色のオイルを注意深く溶解させた後、この溶液を一晩撹拌した。その後、希塩酸を用いて、沈殿が発生する2までpHを下げた。沈殿をろ過により取り除き、エーテルで洗浄し、淡黄色の固体(2段階越しで1.81g、63.3%)を得た。δ((CDSO、300MHz)3.4〜3.65(ピークがHOのピークでマスク)、4.63 & 4.91(2H、ABq、J 12.8、CHO)、5.10(1H、d、J 4.5、CHCHS)、5.68(1H、dd、J 4.5、8.2、NHCCH)、7.28(5H、m、PhCH)、9.11(1H、d、J 8.2、NCH)。δ((CDSO+DO、300MHz)3.52(4H、m、PhC、SC)、4.63 & 4.88(2H、ABq、J 12.9、CO)、5.05(1H、d、J 4.8、CHCS)、5.65(1H、d、J 4.7、NHCCH)、7.28(5H、m、PhCH)。M/z(ES−)390(M−1、20%)。
【0063】
(7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(式(VIII))の調製)
【化8】

【0064】
式(VII)(760mg、1.95mmol)をリン酸カリウムバッファー(20ml、0.5M、pH7)中で撹拌し、NaOH水溶液の添加によりpHをpH7.8まで上昇させた。ペニシリンアミダーゼ・アクリルビーズ(グルコース安定化剤を取り除くための洗浄後の約375mg)を添加し、その結果生じた懸濁液を2.5時間撹拌した。その後、このビーズをろ過により取り除き、希塩酸の添加により溶液のpHを3まで下げた。この溶液を4℃で一晩冷却後、ろ過して淡黄色の粉末の生成物を得た(334mg、63%)δ((CDSO+DO、300MHz)3.36 & 3.53(2H、ABq、J 18.1、SCH)、4.60 & 4.82(2H、ABq、J 12.8、CHO)、4.74(1H、d、J 4.9、CHCS)、4.94(1H、d、J 4.9、HNCCH)。
【0065】
(環状無水アジピン酸(式(IX))の調製)
【化9】

【0066】
アジピン酸(5g、34mmol)および無水酢酸の混合物(15ml)を4時間加熱還流した。その後、この溶液を減圧濃縮し、その残渣を減圧蒸留し、無色のオイル(湿気に暴露されると重合化を起こす)を得た。δ(CDCl、300MHz)2.0(4H、m、CHCH)、2.76(4H、t、J 6.6、OCCHCHO)。
【0067】
(アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(式(X))の調製)
【化10】

【0068】
NaOH水溶液を注意深く添加して、式(VIII)(100mg、0.37mmol)のアセトン水溶液(10ml、1:1v/v)をpH8.5に調整した。0℃で、NaOH水溶液の添加によりpHを7.5と8.5の間に保持しながら、この溶液に式(IX)(80mg、0.625mmol)のアセトン溶液(2ml)を滴下した。その結果生じた溶液を、0℃で2時間撹拌した後、アセトンを減圧除去し、HCl水溶液の添加によりpHを2に調整した。この溶液をシクロヘキサノン(2×20ml)で抽出し、集めた有機相を数mlにまで濃縮した。濃縮したシクロヘキサノン溶液をシクロヘキサン(200ml)に注ぎ、ろ過により集めた沈殿物を得た(61mg、41%)。δ((CDSO、300MHz)1.50(4H、m、CHCH)、2.22(4H、m、CCHCH、3.45 & 3.59(2H、ABq、J 18.1、SCH)、4.62 & 4.90(2H、ABq、J 12.9、CHO)、5.10(1H、d、J 4.8、CHCS)、5.67(1H、dd、J 4.8、8.2、NHCCH)、8.82(1H、d、J 8.2、NCH)。M/z(ES−)801(2M−1、17%)、400(M−1、35%)(図10)。
【0069】
実施例4 生物変換を用いたアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸のin vitro製造
(無細胞抽出液の調製)
プラスミドpGK105(図11)を用いて、lacプロモーターの制御下でStreptomyces clavuligerusのcmcH遺伝子を大腸菌(E.coli)XL1−Blueで発現させた。cmcH遺伝子の発現のために、クロラムフェニコール含有LB培養培地5mlにXL1−Blue:pGK105の単一コロニーを接種し、37℃で16時間、250rpmで振とう培養した。この培養液を用いて、クロラムフェニコールを補足した滅菌LB培地100mlを含むフラスコに1%接種した後、27℃、250rpmで振とう培養し、OD600が0.4〜0.6に達するまでよく通気させた。その後、IPTGを、最終濃度の0.3mMまで培養液に添加し、さらに16時間培養を続けた。遠心分離(4000g、20分、4℃)により細胞を集め、細胞ペレットを5mlのバッファー(20mM トリスHCl、200mM NaCl、1mM EDTA、pH7)に再懸濁し、−80℃で1時間または−20℃で一晩冷凍した。氷水浴で解凍した後、細胞懸濁液をソニケート(MSE Soniprep150)した。10秒の超音波処理と10秒の冷却時間を15〜20サイクル行えば、完全に溶菌し、ブラッドフォード法で可溶性タンパク質の放出を測定するのに十分であった。細胞デブリ、つまり不溶性タンパク質および溶菌されない細胞を遠心分離(4000g、60分、4℃)により沈殿化した。上清をクラブラン酸カリウム(5mgml−1)で27℃で1時間処理し、染色体にコードされるβ−ラクタマーゼを全て不活性化した。PD−10脱塩カラムを用いて、Sephadex G−25(登録商標)によるゲルろ過により過剰量のクラブラン酸塩を除去し、生じた酵素溶液を直ちに使用するか、または必要時まで−20℃で貯蔵した。
【0070】
(カルバモイルトランスフェラーゼアッセイ)
28℃で4時間アッセイ(100μl)を行い、pH6.75〜7でアジポイル−デアセチルセファロスポラン酸(1〜5mM)、MgSO(0.8mM)、MnCl(1mM)、イミダゾール(100mM)、ATP(5.4mM)、リン酸カルバモイル(9.8mM)を含んだ。使用されたタンパク質量は10μgから250μgの範囲であった。この酵素溶液を氷上で解凍し、加熱ブロックで28℃にさせた反応混合液に添加した。氷冷メタノール(100μl)を添加することにより、この反応を終了させ、混合した後、沈殿したタンパク質をペレット化した。100℃で5分間の加熱処理により変性させた可溶性タンパク質をコントロール反応に使用し、常に通常のアッセイと一緒に試験した。
【0071】
(HPLC/MS分析)
バッファーAとして0.1Mリン酸二水素ナトリウム、およびバッファーBとして0.05Mリン酸二水素ナトリウム/50%アセトニトリルからなる移動相、1ml/min−1の流速のGilsonHPLCシステムを用い、254nmでモニターして、室温でSpherisorb分析C18カラム(250×4.6mm)上で反応成分を分離した。この条件を用いて、セファロスポリウムの出発物質および生成物の信頼のおける標準品におけるリテンションタイムは、それぞれ19分および22.5分であった。いくつかの分析ランの生成物ピークをためておき、pH1.8にまで酸性化し、シクロヘキサノンで抽出した。その後、二相抽出混合物のpHを7に調整し、途中で断続的に振とうしながら、有機相を水で逆抽出した。水相を凍結乾燥し、再び水に溶かし、エレクトロスプレー(陰イオンモード)イオン化MSで分析し、カルバモイル化セファロスポリン生成物を特徴的な(M−H)により特定した(図12)。
【0072】
(結論)
本実験により、生物変換を用いて、アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の製造が可能であると結論することができる。
【0073】
実施例5 アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の細胞外搬出
実施例2に従って調製した試料を、ろ液のバイオマス分離によりさらに詳細に分析した。25℃、毎分280回転で168時間培養後、この十分に培養した培養液のろ液を、ろ過によりバイオマスから分離し、NMRで分析した。このバイオマスを、氷冷生理食塩水(0.9mM NaCl)で2度洗浄し、液体窒素中で冷凍し、凍結乾燥し、再び水に溶かしてNMRで分析した。
【0074】
アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の他に、この菌株は、中間体、それぞれIPN、6APA、ad6APA、ad7ADCAおよびadAHCA(=adADAC)も生成する。しかし、アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸がもっぱら分泌される唯一のβ−ラクタムである。
【0075】
これらの実験の結果を図13(AおよびB)にまとめる。
【0076】
実施例6 フェノキシアセトイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の発酵製造
実施例1で得られたP.chrysogenum形質転換体を、実施例2で記載した産生試験培地に接種したが、酢酸ナトリウムの代わりに、産生試験のための側鎖前駆物質としてフェノキシ酢酸5mg/mlを補った(ろ過前のpHが6.0)。培養時間は、25℃、毎分280回転で168時間であった。
【0077】
十分に培養した培養液のろ液をバイオマスから分離し、NMRで分析した。このバイオマスを、氷冷生理食塩水(0.9mM NaCl)で2度洗浄し、液体窒素中で冷凍し、凍結乾燥し、再び水に溶かしてNMRで分析した。菌糸体画分でフェノキシアセトイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得た。
【0078】
実施例7 トランスヒドロムコノイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の発酵製造
実施例1で得られたP.chrysogenum形質転換体を、実施例2で記載した産生試験培地に接種したが、酢酸ナトリウムの代わりに、産生試験のための側鎖前駆物質としてトランスヒドロムコン酸4mg/mlを補った(ろ過前のpHが6.0)。培養時間は、25℃、毎分280回転で168時間であった。
【0079】
十分に培養した培養液のろ液をバイオマスから分離し、NMRで分析した。このバイオマスを、氷冷生理食塩水(0.9mM NaCl)で2度洗浄し、液体窒素中で冷凍し、凍結乾燥し、再び水に溶かしてNMRで分析した。菌糸体画分でトランスヒドロムコノイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得た。
【0080】
実施例8 アミノアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の発酵製造
実施例1で得られたP.chrysogenum形質転換体を、実施例2で記載した産生試験培地に接種したが、何も側鎖前駆物質を添加しなかった。培養時間は、25℃、毎分280回転で168時間であった。
【0081】
十分に培養した培養液のろ液をバイオマスから分離し、NMRで分析した。このバイオマスを、氷冷生理食塩水(0.9mM NaCl)で2度洗浄し、液体窒素中で冷凍し、凍結乾燥し、再び水に溶かしてNMRで分析した。両画分でアミノアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得た。
【0082】
実施例9 アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の生物活性
実施例3に従って調製したアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を用いて、様々な細菌に対するその活性を評価した。使用した細菌は、大腸菌(Escherichia coli)ESS(xxxref komt nogxx)、Micrococcus luteus DSM348(Andrate,A.C.、Van Nisteirooy,J.G.M.、Peery,R.B.、Skatrud,P.L.、De Waard,M.A.、2000年、The role of ABC transporters from Aspergillus nidulans in protection against cytotoxic agents and in antibiotic production)および枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC6633(xxxref komt nogxx)であった。2×TY液体培地(xxxref komt nogxx)中で、細菌を37℃、毎分280回転で一晩培養し、その後、新鮮培地で1000倍に希釈した。この希釈細菌培養液1mlを、2ml深底ウェルmicrotiterプレートに接種し、様々な濃度のアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(アジポイル−ACCAまたはAd−ACCA)を個々のウェルに添加した。コントロールとして、数種の他の活性β−ラクタムおよび活性の低いβ−ラクタム、つまり6−APA、アジポイル−6−APA、7−ADCA、アジポイル−7−ADCA、7−ACA、セファロスポリンCおよびセフロキシムを用いた。このmicrotiterプレートを、25℃、毎分550回転で2日間培養した。
【0083】
アジポイル−7−ADCA、アジポイル−ACCAおよびセフロキシムによる増殖阻害結果を図14(枯草菌(B.subtilis))、図15(大腸菌(E.coli))および図16(M.luteus)にまとめる。
【0084】
枯草菌(B.subtilis)ATCC6633、大腸菌(E.coli)ESSおよびM.luteus DSM348に対するアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の最小阻害濃度は、それぞれ4μM、7μMおよび7μMであった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】S.clavuligerusにおけるセファマイシンCの発酵製造の略図である。
【図2】A.chrysogenumにおけるセファロスポリンCの発酵製造の略図である。
【図3】cefE遺伝子のクローニングおよびWisconsin54−1225の形質転換に使用するプラスミドを示す図である。
【図4】cefF遺伝子のクローニングおよびWisconsin54−1225の形質転換に使用するプラスミドを示す図である。
【図5】cefEF遺伝子のクローニングおよびWisconsin54−1225の形質転換に使用するプラスミドを示す図である。
【図6】cmcH遺伝子のクローニングおよびWisconsin54−1225の形質転換に使用するプラスミドを示す図である。
【図7】amdS遺伝子のクローニングおよびWisconsin54−1225の形質転換に使用するプラスミドを示す図である。
【図8】本発明の発酵方法の略図である。
【図9】アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸のNMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例3に従って調製された、アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸のNMRスペクトルを示す図である。
【図11】プラスミドpGK105を示す図である。
【図12】アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を生じる、カルバモイルトランスフェラーゼによる生物変換産物のHPLC/MS分析を示す図である。
【図13】実施例2に従って形質転換したP.chrysogenumにおけるアジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸および他のβ−ラクタムの細胞内(A)および細胞外(B)分布を示す図である(mmol)。
【図14】アジポイル−7−ADCA、アジポイル−ACCAおよびセフロキシムによる枯草菌(B.subtilis)の増殖阻害を示す図である。
【図15】アジポイル−7−ADCA、アジポイル−ACCAおよびセフロキシムによる大腸菌(E.coli)の増殖阻害を示す図である。
【図16】アジポイル−7−ADCA、アジポイル−ACCAおよびセフロキシムによるM.luteusの増殖阻害を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で特徴付けられるセフ−3−エム化合物、またはその塩若しくはそのエステル。
【化1】

〔式中、Rは、
a)HOOC−X−CO−
ここで、
Xは(CHと定義されるか、
あるいは
Xは(CH−A−(CHと定義され、
pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、
C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または
硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシ
ル、または置換されてもよいメチルであり、但し、
AがCH=CHまたはC≡Cであるとき、p+qは2または3であり、あるいは
AがCHB、C=O、O、SまたはNHであるとき、p+qは3または4であり、
あるいは
Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CH
であり、
mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であ
り、AはCHまたはNであり、
あるいは
Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0またはである、
あるいは、
b)(カルボキシメチルチオ)プロピオニル
c)(カルボキシエチルチオ)プロピオニル
からなる群から選択され、かつ、
式中、R’は、
d)OH、
e)O−(アルキル1〜6C)(前記アルキルは直鎖または分枝鎖であり得る)および
f)O−C(アルキル1〜6C)−O−(アルキル1〜6C)(前記アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得る)
からなる群から選択される〕
【請求項2】
前記R’基はOHであり、前記R基はアジポイル、フェノキシアセチルおよびテトラゾールアセチルから選択される、請求項1に記載の化合物またはその塩もしくはそのエステル。
【請求項3】
アジポイル−7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸またはその塩もしくはそのエステル。
【請求項4】
式(I)で特徴付けられるセフ−3−エム化合物またはその塩もしくはそのエステルの発酵製造のためのバイオプロセスであり、
【化2】

〔式中、Rは、
a.HOOC−X−CO−
ここで、
Xは(CHと定義されるか、
あるいは
Xは(CH−A−(CHと定義され、
pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、AはCH=CH、
C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換されてもよく、または
硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、C1−3アルコキシ、ヒドロキシ
ル、または置換されてもよいメチルであり、但し、
AがCH=CHまたはC≡Cであるとき、p+qは2または3であり、あるいは
AがCHB、C=O、O、SまたはNHであるとき、p+qは3または4であり、
あるいは、
Xは(CH−CH=A−(CHまたは(CH−C≡C−(CH
であり、
mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または3であ
り、AはCHまたはNであり、
あるいは、
Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0またはである、
あるいは、
b.(カルボキシメチルチオ)プロピオニル
c.(カルボキシエチルチオ)プロピオニル
d.Y−CH−CO−(式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルである)
からなる群から選択され、かつ、
式中、R’は、
e.OH
f.O−(アルキル1〜6C)(前記アルキルが直鎖または分枝鎖であり得る)および
g.O−C(アルキル1〜6C)−O−(アルキル1〜6C)(前記アルキル基が直鎖または分枝鎖であり得る)からなる群から選択される〕
A)イソペニシリンNを産生するP.chrysogenum株を、その生育を維持することが可能な培地で維持し、
・3’−カルボキシメチルチオプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
・3,3’−チオジプロピオン酸またはその塩もしくはそのエステル、
・Y−CH−COOHまたはその塩もしくはそのエステル
(式中、Yはフェニル、フェノキシまたはテトラゾリルである)、
・一般式HOOC−X−COOHの化合物またはその塩もしくはそのエステル
(式中、Xは(CHと定義されるか、
あるいは
Xは(CH−A−(CHと定義され、
pおよびqはそれぞれ個別に0、1、2、3または4であり、Aは
CH=CH、C≡C、CHB、C=O、O、S、NHであり、窒素は置換
されてもよく、または硫黄は酸化されてもよく、Bは水素、ハロゲン、
1−3アルコキシ、ヒドロキシル、または置換されてもよいメチルであ
り、但し、
AがCH=CHまたはC≡Cであるとき、p+qは2または3であり、ある
いは、AがCHB、C=O、O、SまたはNHであるとき、p+qは3また
は4であり、
あるいは
Xは(CH−CH=A−(CHまたは
(CH−C≡C−(CHであり、
mおよびnはそれぞれ個別に0、1、2または3であり、m+n=2または
3であり、AはCHまたはNであり、
あるいは
Xは(CH−CH=CH−CH=C−(CHであり、
pおよびqはそれぞれ個別に0または1であり、p+q=0または1であ
る)
からなる群から選択される、
前記P.chrysogenum株により同化および利用されて、対応するアシル−6−アミノペニシラン酸(アシル−6−APA)を生成し、それにより前記アシル−6−APAを生成することが可能である、
任意の1つまたは複数の側鎖前駆物質を含むフィードストック(feedstock)を前記培地に添加するステップと、
B)対応する遺伝子のin situ発現により酵素的変換を行うステップであって、
i)前記アシル−6−APAを、エクスパンダーゼ(expandase)酵素により
in situで環拡大して、対応するアシル−7−アミノ−デスアセトキシ
セファロスポラン酸(アジポイル−7−ADCA)を生成し、ここで、前記アシル
−6−APAを基質として受容することができるエクパンダーゼ酵素をコードする
DNAにより、前記P.chrysogenum株を形質転換し、その発現の結
果、前記菌株で産生された前記アシル−6−APAもその後in situで環拡
大して、対応するアシル−7−ADCAを生成し、
ii)前記アシル−7−ADCAの3−メチル側鎖を、ヒドロキシラーゼ(hydro
xylase)酵素によりin situで水酸化して、対応するアシル−7−ア
ミノ−デスアルキルセファロスポラン酸(アシル−7−ADAC)を生成し、ここ
で、前記アシル−7−ADCAを基質として受容することができるヒドロキシラー
ゼ酵素をコードするDNAにより、前記P.chrysogenum株を形質転換
し、その発現の結果、前記菌株で産生した前記アシル−7−ADCAもin si
tuで水酸化されて、対応するアシル−7−ADACを生成し、
iii)前記アシル−7−ADACの3−ヒドロキシメチル側鎖を、O−カルバモイル
トランスフェラーゼ(O−carbamoyl transferase)酵素に
よりin situでO−カルバモイル化して、式(I)の化合物を生成し、ここ
で、前記アシル−7−ADACを基質として受容することができるO−カルバモイ
ルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNAにより、前記P.chrysoge
num株を形質転換し、その発現の結果、前記菌株で産生した前記アシル−7−A
DACもin situでカルバモイル化されて、本発明の化合物を製造する
ステップとを
含むバイオプロセス。
【請求項5】
セフ−3−エム抗生物質の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項6】
3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム抗生物質の製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項7】
前記3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム抗生物質は
a.セフロキシム
b.セフォキシチン
c.セフカペンピボキシル
からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
7−アミノ−3−カルバモイルオキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸またはその塩もしくはそのエステルの製造における、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項9】
イソペニシリンNを産生する能力のあるP.chrysogenum株の微生物であり、
a.エクスパンダーゼ酵素
b.ヒドロキシラーゼ酵素
c.O−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素
をコードするDNA断片を備えている微生物。
【請求項10】
イソペニシリンNを産生する能力のあるP.chrysogenum株の微生物であり、
a.結合したエクスパンダーゼ/ヒドロキシラーゼ酵素
b.O−カルバモイルトランスフェラーゼ酵素
をコードするDNA断片を備えている微生物。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−528970(P2006−528970A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532131(P2006−532131)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000367
【国際公開番号】WO2004/106347
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505074311)
【Fターム(参考)】