説明

セメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物

【課題】 従来の高性能減水剤の減水率を大幅に向上させることができ、容易に高強度を得ることが可能となるセメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物を提供する。
【解決手段】 ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント混和材、石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質の一種又は二種以上を含有してなる該セメント混和材、セメントと該セメント混和材とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物、セメントと、該高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなる該セメント組成物を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントコンクリート二次製品に使用されるモルタル、コンクリートのセメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物に関する。詳しくは、大幅に減水率を高め、容易に高強度を得るためのセメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系、及び芳香族アミノスルホン酸塩系等の高性能減水剤は、リグニンスルホン酸塩、ポリオール系減水剤、及びオキシカルボン酸塩系減水剤等の一般減水剤と比較して、減水率が大きく、かつ、比較的多量に添加してもセメントの異常凝結や過遅延を生じさせず、空気連行性も少ないので土木建築構造物及びコンクリート二次製品に用いるモルタル又はコンクリートの高強度化に適すものである。さらに、高強度化に際して、高性能減水剤と、石膏類や活性シリカなどを主成分とする高強度混和材や高強度混和材とポゾラン物質を併用することも通常の手段である。
【0003】
しかしながら、これら高性能減水剤は、セメント100部に対して固形分換算で2部程度で減水率は頭打ちとなり、限界が示される。
また、高強度混和材を添加した場合の強度も、結局は水セメント比で決まることから、減水率をより高くすることができれば、より高い強度が容易に得られるばかりでなく、強度を一定とすると単位セメント量や単位高強度混和材量を少なくすることができ、経済的なコンクリートの製造が可能となる。
【0004】
高性能減水剤とアルカリ金属の重炭酸塩等との併用において、本発明者は、高性能減水剤を添加したコンクリートに、クエン酸、酒石酸、及びリンゴ酸又はそれらの塩類とアルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩を添加してスランプロスを防止するコンクリートのワーカビリティーの改良方法を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、クエン酸等とアルカリ金属の重炭酸塩等の併用系では、アルカリ金属の重炭酸塩は、スランプロス防止の助長作用には卓効を示すが、減水率の増大効果は全く示されないものである。
【0006】
また、本発明者は、高性能減水剤とベントナイトなどと、アルカリ金属の重炭酸塩等を併用したセメント混和材を提案し、高性能減水剤を添加したコンクリートの異常な粘性を改善して保水性が良くプラスチックでダレの生じない、さらにはコテ仕上げ性も改善する混和材も提案した(特許文献2参照)。
しかしながら、この場合も、アルカリ金属の重炭酸塩等は、ベントナイトのプラスチック性向上には卓効を示すが、減水率の増大効果は認められないものであり、アルカリ金属の重炭酸塩等は他の成分と併用されると全く異なった性質を示すものである。
【0007】
【特許文献1】特公平01−052342号公報
【特許文献2】特開昭64−003040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、高性能減水剤の減水率を増大させ、高強度を容易に得ることを目的として鋭意研究した結果、従来から、セメントの遅延剤や凝結促進剤として知られている特定成分を特定量、さらに、石膏類、活性シリカ、及び/又はポゾラン物質を併用することにより、高性能減水剤の減水率を増大させ、高強度を容易に得ることが達成できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント混和材であり、石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有してなる該セメント混和材であり、セメントと該セメント混和材とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物であり、セメントと、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物であり、セメント100部に対して、固形分換算で0.3〜3部の該高性能減水剤と、0.05〜0.7部のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなる該セメント組成物であり、セメント100部に対して、固形分換算で0.3〜3部の該高性能減水剤、0.05〜0.7部のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩、及びCaSO4 換算で1〜15部の石膏類を含有してなる該セメント組成物であり、さらに、セメント100部に対して、1〜10部の活性シリカを含有してなる該セメント組成物であり、さらに、セメント100部に対して、1〜15部のポゾラン物質を含有してなる該セメント組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物を用いることにより、従来の高性能減水剤の減水率を大幅に向上させることができ、容易に高強度を得ることが可能となる。
従って、強度を一定とすると、高性能減水剤の使用量、単位セメント量、並びに、石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質の使用量を低減できるので経済的なセメントコンクリート二次製品の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り重量基準で示す。
また、本発明におけるセメントコンクリートとは、モルタル又はコンクリートを総称するものである。
【0012】
本発明で使用する高性能減水剤は、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上を併用したものである。
【0013】
一般に市販されている高性能減水剤を一例として示すと、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤としては、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びアントラセンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩等が挙げられ、その市販品としては、電気化学工業社製商品名「FT−500」、花王社製商品名「マイティー100」、「マイティー150」、及び「マイティ2000」シリーズなど、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」など、竹本油脂社製商品名「ポールファイン510N」など、並びに、山陽国策パルプ社製商品名「サンフローPS」などが代表的なものである。また、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤としては、藤沢薬品社製商品名「パリック200」シリーズがある。さらに、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤としては、デンカグレース社製商品名「FT−3S」、昭和電工社製商品名「モルマスター10」や「モルマスター20」などが挙げられる。
この中で、粉末状態で市販されているのは「マィティー100」、「セルフロー110P」、「モルマスター10」、及び「モルマスター20」であり、その他は液体の状態で市販されており、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤では、固形分が40%程度となっている。
【0014】
なお、リグニンスルホン酸塩系減水剤、ポリオール系減水剤、及びオキシカルボン酸塩系減水剤等の一般減水剤やポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤では、本発明のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩を併用しても減水効果が工業的に利用できないほど小さいか、逆に減水率を低下させる場合もあるので本発明には使用できないものである。
【0015】
また、本発明のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩(以下、単に重炭酸塩という)は、セメントの凝結硬化促進剤又は添加量によっては急結剤として知られており、主に吹き付けコンクリートの急結剤として利用されている。
【0016】
これら重炭酸塩は急結しない範囲又は硬化不良を起こさない範囲で、高性能減水剤と併用添加することにより大幅な減水率の向上作用を有するものであり、ナトリウムやカリウムと同じアルカリ金属であるリチウム塩の炭酸塩や重炭酸塩及び炭酸アンモニウムは減水率を向上させる効果は小さいものである。
【0017】
高性能減水剤と重炭酸塩の配合割合は、セメント100部に対して、高性能減水剤は固形分換算で0.3〜3部、重炭酸塩は0.05〜0.7部が好ましく、セメント100部に対して、高性能減水剤は固形分換算で0.4〜2部、重炭酸塩は0.1〜0.5部がより好ましい。
重炭酸塩の配合量が適量で有れば高性能減水剤量が多いほど減水率も向上するが、セメント100部に対して、高性能減水剤が0.3部未満では重炭酸塩が適量配合されていても添加効果は小さく、高性能減水剤が3部を超えて配合される場合は、重炭酸塩が適量であっても減水率の向上は頭打ちとなるものである。
【0018】
また、セメント100部に対して、重炭酸塩が0.05部未満では高性能減水剤が適量でも減水率の向上作用は小さく、0.7部を超えて添加されると、高性能減水剤の添加量に関係なく減水率が低下するようになったり、急結が生ずる場合や過遅延となる場合があり好ましくない。
【0019】
本発明において各種石膏やII型無水石膏を主成分とする高強度混和材(以下、石膏類という)を配合することが好ましい。
石膏類は本発明の減水率の向上に対して、助長作用を有し、同一配合のコンクリートではより高い強度が容易に得られ、強度を一定にすると石膏類の添加量は少なくできるものである。
【0020】
本発明の石膏類とは、二水石膏、半水石膏、III 型無水石膏、及びII型無水石膏、並びに、II型無水石膏を主成分とする高強度混和材であり、その高強度混和材の市販品としては、電気化学工業社製商品名「デンカΣ1000」、住友大阪セメント社製商品名「ノンクレーブ」、日本セメント社製商品名「スーパーミックス」、昭和鉱業社製商品名「アルサム」や「ダイミックス」などが挙げられる。
【0021】
石膏類の配合割合は、CaSO4 換算で、セメント100部に対して、1〜15部が好ましく、3〜12部がより好ましい。1部未満では養生方法に拘らず強度の増進効果や減水率の助長作用は小さく、また、15部を超えて添加しても強度の延びや減水率の助長作用は停滞するので好ましくない。
【0022】
本発明で使用する活性シリカとは、シリカフューム、ケイ化木の焼成灰、メタカオリン、及びアエロジルなどであり、シリカフュームは、金属シリコンやシリコン合金を電気炉で製造するときに発生する非晶質SiO2の超微粉であり、ケイ化木の焼成灰とは、籾殻、稲藁、葦、及び竹等のケイ化木の焼成灰、メタカオリンは、カオリナイト、デッカイト、及びハロイサイトなどのカオリン鉱物を焼成した非晶質のアルミノケイ酸化合物、並びに、アエロジルは合成された非晶質SiO2の超微粉である。
【0023】
活性シリカの配合割合は、セメント100部に対して、1〜10部が好ましく、強度を増大させるが、8部以下がより好ましく、2〜6部が最も好ましい。1部未満では強度を増大させる効果は小さく、10部を超えて添加しても重炭酸塩との併用で減水率を低下させ偽凝結を生じさせ、強度も低下させるので好ましくない。
【0024】
また、本発明で使用するポゾラン物質とは、酸性白土、活性白土、パイロフェライト、ゼオライト、及びカオリン鉱物等のアルミナケイ酸質の粘土鉱物(但し、ベントナイトは除く)、また、それらの焼成物(但し、メタカオリンを除く)、フライアッシュ、高炉スラグ粉末(潜在水硬性物質でもある)、並びに、ケイソウ土等を示し、重炭酸塩と併用することにより、活性的となりより高い強度が得られるようになる。但し、活性シリカのように偽凝結等の弊害は起さない。
【0025】
ポゾラン物質の配合割合は、セメント100部に対して、1〜15部が好ましく、2〜12部がより好ましく、4〜10部が最も好ましい。1部未満では添加効果が小さく、15部を超えて配合してもそれ以上の強度の増大効果は停滞するものであり、経済的にも好ましくない。
【0026】
石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質は、それぞれ単独配合で得られる強度的効果に対して、任意に併用した場合は相乗的に高い強度が得られるものである。
【0027】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、白色、中庸熱、及び低発熱(ビーライトセメント)などの各種ポルトランドセメント、さらに、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカ粉末を配合した各種混合セメント、並びに、スラグをJIS規格値以上に配合したスラグ主体のセメントなどが挙げられる。
【0028】
本発明のセメントコンクリート二次製品用セメント混和材は、モルタル又はコンクリートを練り混ぜるときにミキサーに他のセメントコンクリート材料と一緒に添加するものであり、その練り混ぜ方法も通常行われている方法で良く、また、その添加方法も特に限定はされない。
【0029】
従って、それぞれの成分を固体状、液体状を問わずモルタル又はコンクリートを練り混ぜるときに別々に添加しても良く、粉末高性能減水剤を使用する場合は、あらかじめ粉末状態で他の成分と混合して一括して添加しても良い。
また、液体状の高性能減水剤に重炭酸塩を溶解して、他の固体の成分とは別に添加しても良いし、さらに混和材全体を練り混ぜ水の一部又は全量で懸濁してミキサーに添加しても良いものである。
全ての成分を混合(高性能減水剤も粉末を使用)した混和材をモルタルやコンクリートと練り混ぜるとき添加する方法が最も好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、実施例で使用した各種材料を一括して示す。
【0031】
<使用材料>
セメント :電気化学工業社製、普通ポルトランドセメント
砕石 :新潟県姫川産砕石
砂 :新潟県姫川産天然川砂
水 :地下水
高性能減水剤A:ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」、粉末状
高性能減水剤B:メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、昭和電工社製商品名「モルマスター10」、粉末状
重炭酸塩a:重炭酸ナトリウム、試薬1級
重炭酸塩b:重炭酸カリウム、試薬1級
石膏類イ :II型無水石膏、フッ酸発生副成石膏、ブレーン比表面積6,000cm2/g
石膏類ロ :二水石膏、工業用、ブレーン比表面積6,500cm2/g
石膏類ハ :半水石膏、石膏類ロを140℃で熱処理、ブレーン比表面積10,000cm2/g以上
石膏類ニ :III型無水石膏、可溶性、石膏類ハを200℃で熱処理、ブレーン比表面積10,000cm2/g以上
活性シリカα:シリカフューム、エジプトエファコ社産、BET比表面積19.2m2/g
活性シリカβ:ケイ化木(稲藁)の焼却灰、BET比表面積1.0m2/g
活性シリカγ:メタカオリン、関東ベントナイト鉱業社製商品名「SEMクレー」を700℃で焼成し、ブレーン比表面積8,150cm2/gに粉砕したもの
活性シリカε:アエロジル、日本アエロジル社製、BET比表面積160m2/g
ポゾラン物質I:カオリン、関東ベントナイト鉱業社製商品名「SEMクレー」をブレーン比表面積8,050cm2/gに粉砕したもの
ポゾラン物質II:酸性白土の熱処理品、関東ベントナイト鉱業社酸性白土を1,000℃で焼成しブレーン比表面積5,500cm2/gに粉砕したもの
ポゾラン物質III:ゼオライトの熱処理品、関東ベントナイト鉱業社ゼオライトG35品を1,000℃で焼成し、ブレーン比表面積6,500cm2/gに粉砕したもの
ポゾラン物質IV:フライアッシュ、東北発電社フライアッシュ(ブレーン比表面積3,500cm2/g)をブレーン比表面積6,400cm2/gに粉砕したもの
ポゾラン物質V:ケイソウ土、関東ベントナイト鉱業社商品名「CeliteFC」をブレーン比表面積7,000cm2/gに粉砕したもの
ポゾラン物質VI:高炉スラグ粉末、新日鉄化学社製、ブレーン比表面積4,500cm2/g
【0032】
実験例1
セメント100部、砂135部、及び水28部のモルタル配合を使用して、粉末の高性能減水剤Aと重炭酸塩の配合率と添加量を変えて、練混ぜ直後のモルタルフローを測定した。その結果を表1に示す。
なお、モルタルの練混ぜは、練り鉢に砂の一部と練混ぜ水と高性能減水剤を投入して低速で撹拌しながら溶解し、その後、セメントと重炭酸塩を軽く混合したものを30秒間内に投入して、次いで砂を30秒間のうちに投入する。
さらに、60秒間練り混ぜを継続した後、一度、撹拌を止めてスパチラで鉢に付着したものを掻き落としてから高速で90秒間練り混ぜた。
また、モルタルフローの測定は、底辺の直径が12cm、上辺の直径が7cm、高さが10cmのコーンを使用して、ガラス板の上でフローコーンを抜き上げたときのモルタルの広がりを練混ぜ直後に測定した。試験室内温度は20±3℃である。
【0033】
【表1】

【0034】
表1より、単に、高性能減水剤を添加した場合のフロー値(例えば、実験No.1-10、比較例)に対して、高性能減水剤と適量の重炭酸ナトリウムを併用添加した場合(実験No.1- 2〜実験No.1- 9、実施例)は、高性能減水剤の添加量が多くなるほどフローが増大し、高性能減水剤が、セメント100部に対して、0.3部以上で顕著な効果が示されるようになり、0.4部以上でより好ましいことが示される。また、高性能減水剤量が3部を超えるとフローの増大効果が頭打ちになる。
高性能減水剤量を一定として重炭酸ナトリウムの添加量を変えた場合(例えば、実験No.1-11〜実験No.1-19、実施例)では、重炭酸ナトリウムの添加量が増加するほどフローも向上するが、セメント100部に対して、重炭酸ナトリウムが0.05部以上で顕著となり、最も好ましくは0.1部以上である。また、0.7部以上ではフローの増大効果が小さくなる傾向を示すと同時に、練り混ぜ20分後程度で偽凝結(但し、再練りしてもフローは回復しない)を示す場合もあることが示され、最も好ましい上限は、0.5部である。また、重炭酸ナトウムを重炭酸カリウムに変えた場合でも同様の効果が示される(例えば、実験No.1-20〜実験No.1-27、実施例)。
【0035】
実験例2
表2に示す高性能減水剤と重炭酸塩を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0036】
【表2】

【0037】
表2より、高性能減水剤の種類を変えた場合においても、単に、高性能減水剤の添加した場合のフロー値(実験No.2- 1、比較例)に対して、高性能減水剤と適量の重炭酸ナトリウムを併用添加した場合(実験No.2- 2〜実験No.2-10、実施例)は、高性能減水剤の添加量が多くなるほどフローが増大し、高性能減水剤が、セメント100部に対して、0.3部以上で顕著な効果が示されるようになり、0.4部以上でより好ましいことが示される。また、高性能減水剤が3部を超える場合はフローの増大効果が頭打ちになる傾向が認められ、高性能減水剤の種類を変えても同様の効果が示される。
【0038】
実験例3
表3のコンクリート基本配合を用いて、表4に示す石膏類を、セメント100部に対して外割りで添加した。
なお、コンクリートはスランプが一定となるように、練混ぜ水量を調節して40リットル分のコンクリートを練り混ぜた。このとき、使用した練混ぜ水量を記録して水セメント比に換算すると共に、φ10×20cmの供試体を作製し、標準養生28日材齢の圧縮強度と蒸気養生後の材齢1日強度を測定した。その結果を表4に併記する。
なお、コンクリートの練混ぜは、20±3℃の室内で遊星型強制練りミキサーで行い、砕石、砂、及びセメント(石膏類を添加する場合はセメントに軽く混合した)を投入した後、高性能減水剤又は高性能減水剤と重炭酸カリウムを練混ぜ水全量に溶解したものを投入して2分間練り混ぜた。
蒸気養生は4時間前置き後、3時間で75℃まで昇温し、そのまま4時間保持した後、蒸気バルブを止めて翌日まで養生槽中で冷却した。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表4より、単にII型無水石膏の添加量を変えた場合の比較例(実験No.3- 1〜3- 9)では、II型無水石膏の添加量が多くなるほど、同一スランプとするのに僅かづつ水量が増大するが、添加量の増加に伴って相応の強度増進が示される。
高性能減水剤に重炭酸カリウムを配合し、II型無水石膏を0〜15部併用した実施例(実験No.3-13〜3-21)では、II型無水石膏の添加量が多くなるほど、同一スランプとするのに水量は少なくて済み、水セメント比が減少する。そして、II型無水石膏の添加量の増加に伴って、II型無水石膏の強度増進効果と、少なくてもセメント水比が低下する分、より高い強度の増加が示され、1部以上で効果が認められるようになり、15部でほぼ強度増加は頭打ちとなることが示される。したがって、石膏類の添加量は1〜15部が好ましく、好ましい範囲は3〜12部である。
石膏類の種類を変えた比較例(実験No.3-10〜3-12)と実施例(実験No.3-22〜3-24)でも同様の傾向が示される。
【0042】
実験例4
表3のコンクリート基本配合を用いて、表5に示す活性シリカを、セメント100部に対して外割りで添加したこと以外は実験例3と同様に行った。その結果を表5に併記する。
【0043】
【表5】

【0044】
表5より、単に活性シリカ(メタカオリン)の添加量を変えた場合の比較例(実験No.4- 1〜4- 6)では、活性シリカの添加量が多くなるほど、同一スランプとするのに僅かづつ水量が増大するが、添加量の増加に伴って相応の強度増進が示される。
高性能減水剤に重炭酸カリウムを配合し、活性シリカを1〜10部併用した実施例(実験No.4-10〜4-15)では、活性シリカの添加量が多くなるにしたがって、同一スランプとするのに水量は僅かに多くなるが、比較例よりは3%前後は小さくなるので、その分、より高い強度の増加が示され、1部以上から効果が認められるようになり、10部では水量の増加とポゾラン活性による強度増加が拮抗することが示される。したがって、活性シリカの添加量は1〜10部が好ましく、8部以下がより好ましく、2〜6部が最も好ましい。
活性シリカの種類を変えた比較例(実験No.4- 7〜4- 9)と実施例(実験No.4-16〜4-18)でも同様の傾向が示される。
【0045】
実験例5
表3のコンクリート基本配合を用いて、表6に示すポゾラン物質を、セメント100部に対して外割りで添加したこと以外は実験例3と同様に行った。その結果を表6に併記する。
【0046】
【表6】

【0047】
表6より、単にポゾラン物質(酸性白土の熱処理・粉砕品)の添加量を変えた場合の比較例(実験No.5- 1〜5- 8)では、ポゾラン物質の添加量が多くなるほど、同一スランプとするのに水量は変わらなく、添加量の増加に伴って相応の強度増進が示される。
高性能減水剤に重炭酸カリウムを配合し、ポゾラン物質を1〜15部併用した実施例(実験No.5-14〜5-21)では、ポゾラン物質の添加量が多くなるにしたがって、重炭酸カリウムの減水作用とポゾラン反応促進作用によって、比較例よりも、より高い強度の増加が示される。そして1部以上から効果が認められるようになり、15部では強度増加は頭打ちとなる傾向が認められる。したがって、好ましいポゾラン物質の量は2〜12部であり、より好ましい範囲は4〜10部である。
ポゾラン物質の種類を変えた比較例(実験No.5- 9〜5-13)と実施例(実験No.5-22〜5-26)でも同様の傾向が示される。
【0048】
実験例6
表3のコンクリート基本配合を用いて、表7に示す石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質を、セメント100部に対して外割りで添加したこと以外は実験例3と同様に行った。その結果を表7に併記する。
【0049】
【表7】

【0050】
表7より、単に石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質を任意に配合した比較例(実験No.6-1〜6-4)では、その組み合わせに相当する強度増進が示される。
高性能減水剤に重炭酸カリウムを配合し、石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質を任意に配合した実施例(実験No.6- 5〜6- 8)では、水セメント比が3〜4%低下した分の強度、約10N/mm2前後のより高い強度が示される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のセメントコンクリート二次製品用セメント混和材及びそれを使用したセメントコンクリート二次製品用セメント組成物を用いることにより、従来の高性能減水剤の減水率を大幅に向上させることができ、容易に高強度を得ることが可能となる。
従って、強度を一定とすると、高性能減水剤の使用量、単位セメント量、並びに、石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質の使用量を低減できるので経済的なセメントコンクリート二次製品の製造が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント混和材。
【請求項2】
石膏類、活性シリカ、及びポゾラン物質からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有してなる請求項1に記載のセメントコンクリート二次製品用セメント混和材。
【請求項3】
セメントと、請求項1又は請求項2に記載のセメントコンクリート二次製品用セメント混和材とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。
【請求項4】
セメントと、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤、及び芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤の一種又は二種以上の高性能減水剤と、ナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。
【請求項5】
セメント100部に対して、固形分換算で0.3〜3部の該高性能減水剤と、0.05〜0.7部のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩とを含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。
【請求項6】
セメント100部に対して、固形分換算で0.3〜3部の該高性能減水剤、0.05〜0.7部のナトリウム又はカリウムの重炭酸塩、及びCaSO4 換算で1〜15部の石膏類を含有してなるセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。
【請求項7】
さらに、セメント100部に対して、1〜10部の活性シリカを含有してなる請求項5又は請求項6に記載のセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。
【請求項8】
さらに、セメント100部に対して、1〜15部のポゾラン物質を含有してなる請求項5〜請求項7のうちのいずれか一項に記載のセメントコンクリート二次製品用セメント組成物。

【公開番号】特開2006−347879(P2006−347879A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238469(P2006−238469)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【分割の表示】特願平9−228004の分割
【原出願日】平成9年8月25日(1997.8.25)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】