説明

セラミックスヒーターおよびヒーター給電部品

【課題】被加熱物を均一に加熱でき加熱効率も高く、ヒーター本体が大型化せずコンパクトであり、不純物等の飛散が少なく長寿命で安価なセラミックスヒーターを提供する。
【解決手段】貫通孔13が形成された絶縁性の板状部材12と、導電性の導電層19と、絶縁性の被覆層21とを備えたセラミックスヒーター11であって、貫通孔に導電性の接続部材14が挿入され、一端面16が板状部材の主面15と同一平面をなし導電層が被覆されて板状部材に固定され、反対側は突出部18が被覆層の形成されていない端子を構成するものであり、一端に接続部材の突出部18が挿入される凹部25を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材22とその外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層24とを有する別体のヒーター給電部品30を具備し、接続部材14が接続される一端の端面23の最外部27から凹部までが3mm以上有するセラミックスヒーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造工程における半導体ウエハの加熱や、化学気相蒸着法、スパッタ法等によって薄膜を形成する際の基材の加熱に使用されるセラミックスヒーターおよびヒーター給電部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程における半導体ウエハの加熱や、化学気相蒸着法、スパッタ法によって薄膜を形成する際の基材の加熱に使用されるセラミックスヒーターには、窒化珪素や窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの焼結体からなる支持基材に、金属の箔や巻回線からなる発熱体や、金属粒子または導電性セラミック粒子を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することによって形成された発熱体を埋設した構造のヒーターが用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかしスクリーン印刷によりヒーターパターンを形成した場合、発熱層の膜厚が不均一となりやすく、均熱性の良いヒーターとならないことがある。また、スクリーン印刷に用いられるペーストに含まれる有機物や、セラミック焼結体に含まれる焼結助剤成分が、不純物の発生源となる可能性がある。
【0004】
これに対し、化学気相蒸着法によって生成された熱分解窒化ホウ素からなる支持基材上に、化学気相蒸着法によって熱分解グラファイトからなる導電層を成膜し、これに機械加工を施して所望のヒーターパターンを形成し、さらに化学気相蒸着法によって熱分解窒化ホウ素からなる被覆層でヒーターパターンを覆ったものは、均一な膜厚の導電層を得やすく、均熱性の良いセラミックスヒーターとすることができる(特許文献3参照)。
また、支持基材、導電層、被覆層のすべてが化学気相蒸着法で製造されるので、焼結法によって製造されたものより高純度で半導体ウエハが不純物によって汚染されにくいという利点があり、加熱プロセスでは有利である。
【0005】
この化学気相蒸着法によって生成された熱分解窒化ホウ素からなる支持基材上に、化学気相蒸着法によって熱分解グラファイトからなる導電層を成膜し、これに機械加工を施して所望のヒーターパターンを形成し、さらに化学気相蒸着法によって熱分解窒化ホウ素からなる被覆層でヒーターパターンを覆ってなるヒーターは、ヒーターパターンの両端に貫通孔を設けると共に、貫通孔の周囲の被覆層を除去して導電層を露出させ、この導電層露出部分に電源からの導線を金属、またはグラファイトや炭素/炭素複合材料などの炭素材料からなるボルト、ナットで固定することによって電源と接続される。
【0006】
しかし、上記接続方法では、炭素と反応性のある雰囲気では電源接続部分で露出している導電層が消耗して異常発熱を起こし、さらに消耗が進むと放電が起こりヒーターが破損してしまうため、ヒーターの使用条件(加熱温度、雰囲気)が制限されるという問題がある。また、グラファイトや炭素/炭素複合材料などからなるボルト、ナットを使用した場合、これがパーティクルの発生源となる。また、金属製のボルトやナットを使用した場合、使用開始からある程度の期間は、グラファイトや炭素/炭素複合材料などからなるボルト、ナットを使用した場合よりもパーティクルは発生し難い。しかし長期間使用し続けると、例え金属製のボルトやナットであっても熱で劣化してしまい、やはりパーティクルの発生源となるという問題がある。また、処理する半導体ウエハを金属汚染する危険もある。
【0007】
これらの問題を解決するものとして、特許文献4に記載のセラミックスヒーターが挙げられる。これは、熱分解窒化ホウ素からなる基材に、熱分解グラファイトからなるヒーターパターンを設けたものをヒーター本体とし、ヒーターパターンの両端に位置する接触端に貫通孔を設け、グラファイトネジを用い、貫通孔を介して所定の長さのグラファイト棒状部材をヒーターパターンとは反対側の面に位置するように固定した後、ヒーター本体、グラファイトネジ、グラファイト棒状部材を一体的に熱分解窒化ホウ素からなる被覆層で覆った構造のセラミックスヒーターである。
【0008】
そして、グラファイトネジおよびグラファイト棒状部材の取り付けを機械的および電気的に強固にするために、フレキシブルグラファイトワッシャーがグラファイトネジ〜ヒーター本体間およびヒーター本体〜グラファイト棒状部材間に配置されている。グラファイト棒状部材の、グラファイトネジによってヒーター本体に固定されている一端とは反対側の他端には、熱分解窒化ホウ素からなる被覆層が形成されておらず、この部分に電源からの導線が接続される。
【0009】
この特許文献4に記載のヒーターであれば、ヒーターパターンを形成する熱分解グラファイトからなる導電層や、グラファイトネジ、グラファイト棒状部材など炭素材料からなる部材が、ほぼ完全に熱分解窒化ホウ素からなる被覆層で覆われているので、炭素と反応性のある雰囲気でも使用可能なヒーターとなり、またグラファイトネジ、グラファイト棒状部材などからのパーティクルの発生も抑えられる。
【0010】
さらに、グラファイト棒状部材の、グラファイトネジによってヒーター本体に固定されている一端とは反対側の他端は、熱分解窒化ホウ素からなる被覆層が形成されておらず、この部分に電源からの導線が接続されているが、この部分は所定の長さを持つグラファイト棒状部材の分だけヒーターパターンから距離が離れているため、温度が低く抑えられている。よって炭素と反応性がある雰囲気で使用しても、消耗はある程度小さい。また、導線の接続に金属製のネジを使用しても、温度が低いので、金属製のネジが熱で劣化してパーティクルの発生源になることも少ない。
【0011】
ここで、セラミックスヒーターによって半導体ウエハを加熱する主な方法は、半導体ウエハとヒーターを接触させず、ヒーターからの輻射光によって加熱する方法と、半導体ウエハをヒーター上に直置きし、熱伝導により加熱する方法とがある。
減圧下で輻射加熱を行う場合、使用時間が長くなるにつれて、プロセスガスの回り込みに起因する膜付着や、周囲部材からの飛散物の付着によりヒーター表面が汚れ、このため輻射率が変化し、同じ電力でも半導体ウエハを同じように加熱できなくなることがある。このような現象は、特に1000℃以上の高温プロセスで顕著である。
直置き加熱の場合にはこのような問題が無い。また直置き加熱の方が輻射加熱よりも加熱効率がよいため、高温のプロセスでは直置き加熱がコスト的にも適している。
【0012】
しかし、特許文献4に記載のヒーターでは、グラファイト棒状部材を固定するグラファイトネジの頭がヒーターの加熱面に突出している。従って、被加熱物をヒーターの上に直接載せて加熱を行う場合は、図5に示すように、グラファイト棒状部材の取り付け位置(棒状部材の螺子頭2)はヒーター上の被加熱物が載置される領域1よりも必ず外側にしなければならず、このためヒーターが大型化するという問題がある。また、特許文献3に記載のヒーターも同様な問題があり、電源からの導線を固定するためのネジやナットがセラミックスヒーターの加熱面上に突出するため、被加熱物をヒーターの上に直接載せて加熱を行う場合は、電源からの導線の取り付け位置はヒーター上の被加熱物が載置される領域よりも必ず外側にしなければならず、やはりヒーターが大型化してしまう。
【0013】
また、特許文献4に記載のヒーターのように、ヒーター本体、グラファイトネジ、グラファイト棒状部材を一体的に熱分解窒化ホウ素からなる被覆層で覆った構造のヒーターでは、グラファイト棒状部材またはグラファイト棒状部材を被覆している熱分解窒化ホウ素の被覆層等を破損した場合、ヒーター本体自体には全く異常が無く、正常に加熱できる状態であっても、ヒーター全体を交換しなければならないという問題がある。よって、半導体その他の量産機に本構造のヒーターを搭載することは、著しいコストアップの要因となっている。
【0014】
【特許文献1】特開2004−220966号公報
【特許文献2】特開2004−253799号公報
【特許文献3】特許第3560456号公報
【特許文献4】特許第2702609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、セラミックスヒーター上に直接載置された被加熱物を均一に加熱でき、加熱効率も高く、ヒーター本体が大型化せずコンパクトであり、不純物やパーティクルの飛散が少なく寿命の長い安価のセラミックスヒーターおよびヒーター給電部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも、一対以上の貫通孔が形成された絶縁性セラミックスからなる板状部材と、該板状部材上に形成された導電性セラミックスからなる導電層と、該導電層上に形成された絶縁性セラミックスからなる被覆層とを備えたセラミックスヒーターであって、前記板状部材の貫通孔に導電性セラミックスからなる接続部材が挿入され、該接続部材の貫通孔に挿入された端面が前記板状部材の導電層が形成される主面と同一平面をなし、前記接続部材は前記導電層が被覆されて板状部材に固定されるとともに、前記板状部材の主面上に形成されたヒーターパターンを有する前記導電層と接続され、前記接続部材の前記板状部材の貫通孔に挿入された側と反対側は前記板状部材から突出するとともに該突出部は前記被覆層が形成されていない端子を構成するものであり、該接続部材の突出部に接続される前記接続部材とは別体のヒーター給電部品を具備し、該ヒーター給電部品は、一端に前記接続部材の突出部が挿入され接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有し、前記接続部材が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものであることを特徴とするセラミックスヒーターが提供される(請求項1)。
【0017】
このように、接続部材の一端面が、板状部材の主面と同一平面をなし、板状部材の主面上に形成されたヒーターパターンを有する導電層と接続されたものとすれば、接続部材の取り付け位置を板状部材上の被加熱物が載置される領域より外側にする必要がなく、ヒーター本体が大型化せずコンパクトな構造であり、前記同一平面上に形成されたヒーターパターンによって、平坦なヒーター上に直接載置された被加熱物を、高い加熱効率で均一に加熱できるセラミックスヒーターとすることができる。
【0018】
さらに、接続部材は板状部材から突出するとともに、該突出部は前記被覆層が形成されていない端子を構成するものとすることにより、該接続部材の突出部に接続される前記接続部材とは別体のヒーター給電部品を具備することにより、破損し難いものとなる。例えば、該ヒーター給電部品、特にこれに設けられた前記保護層が破損したとしても当該部品のみを交換することが可能で、ヒーターの寿命を長くし、製造コストも低減することができる。
また、接続部材は導電層が被覆されて板状部材に固定されるため、ヒーター熱およびヒーター重量により破損し易いネジ(螺子)等を用いることなく、導電層と接続部材の接触が良好で耐久性が高くなり、ヒーター寿命が長くなる。
【0019】
さらに、前記ヒーター給電部品は、一端に前記接続部材の突出部が挿入され接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有するものであることにより、前記導電性セラミックスからなる導電部材が絶縁性セラミックスからなる保護層によりプロセスガスから保護される。
そして、前記導電部材が、棒状であることによって、導線等との接続部である電源端子とヒーター本体との間に十分な距離をとることができるので、前記導線等との接続部での温度が低く、該接続に使用される圧着端子、ボルト、螺子、ナット等の部材のヒーター熱による劣化や、これに起因するパーティクルの飛散を抑えることができる。
【0020】
さらに、前記ヒーター給電部品の前記接続部材が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものとすることにより、プロセスガスに導電性セラミックスと高温で反応するガスを使用した場合にも、前記ヒーター給電部品の前記接続部材が接続される一端の端面上の保護層とセラミックスヒーター本体の前記被覆層とを密着するように接続することで、プロセスガスが、前記突出部および凹部の導電性セラミックスに到達し難くなり、前記突出部および凹部の導電性セラミックスの消耗を防止することができる。
【0021】
また、本発明のヒーター給電部品は、必ずしも上記のようなセラミックスヒーターに接続するものに限定されず、本発明によれば、少なくとも、一端にセラミックスヒーター本体の接続端子が挿入されて接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有するヒーター給電部品であって、前記接続端子が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものであることを特徴とするヒーター給電部品が提供される(請求項6)。
【0022】
このように、前記ヒーター給電部品は、一端にセラミックスヒーター本体の接続端子が挿入されて接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有するものであることにより、前記導電性セラミックスからなる導電部材が絶縁性セラミックスからなる保護層によりプロセスガスから保護される。
そして、該導電部材が、棒状であることによって、導線等との接続部である電源端子とヒーター本体との間に十分な距離をとることができるので、前記導線等との接続部での温度が低く、該接続に使用される圧着端子、ボルト、螺子、ナット等の部材のヒーター熱による劣化や、これに起因するパーティクルの飛散を抑えることができる。
【0023】
さらに、前記接続端子が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものとすれば、プロセスガスに導電性セラミックスと高温で反応するガスを使用した場合にも、前記接続端子が接続される前記ヒーター給電部品の一端の端面上の保護層とセラミックスヒーター本体の被覆層とを密着するように接続することで、プロセスガスが、前記突出部および凹部の導電性セラミックスに到達し難くなり、前記凹部の導電性セラミックスを消耗させることが無い。
また、前記ヒーター給電部品は、ヒーター本体と別体の部品であるため、該ヒーター給電部品、特にこれに設けられた前記保護層が損傷した場合は、当該部品のみを交換すればよいため、ヒーターの寿命を長くし、製造コストも低減することができるものとすることができる。
【0024】
このとき、前記ヒーター給電部品は、前記接続部材あるいは前記接続端子が接続される一端につば部を有することが好ましい(請求項2,7)。
このように、前記ヒーター給電部品の導電部材は、前記接続部材あるいは前記接続端子が接続される一端につば部を有することにより、容易に前記接続部材あるいは前記接続端子が接続される一端の端面を広げることができ、該端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものとすることができる。また、このようなつば部の存在により、プロセスガスとの遮断効果も一層向上する。
また、つば部以外の前記電源端子を有する部分を細い棒状とすることにより、ヒーターから、前記ヒーター給電部品を経て外部へ流出する熱量を少なくできるので、ヒーターの均熱性を向上させることができる。
【0025】
さらに、前記ヒーター給電部品の導電部材は、グラファイト、炭化ケイ素焼結体、炭化ホウ素焼結体のいずれかからなることが好ましい(請求項3,8)。
このように、導電部材は、グラファイト、炭化ケイ素焼結体、炭化ホウ素焼結体のいずれかからなるものであることにより、耐熱性に優れたものとなる上に、外面に保護層が被覆されるので、プロセスガスにより侵食されることや、不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも安定に対応できるヒーターとなる。特に、グラファイトは、比較的安価で加工も容易であるためさらに好ましい。
【0026】
また、前記ヒーター給電部品の保護層は、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなることが好ましい(請求項4,9)。
このように、保護層は、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなるものであることによって、導電部材をプロセスガスの侵食から保護することができ、また、化学気相蒸着法により容易に製造することができ、高温での使用でも安定で不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できるヒーターとなる。
ここで前記保護層は、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素である場合は、炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウムの含有量が大きくなるにつれて抵抗率は小さくなる。そのため、炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウム含有量は、給電部品と周囲部材との間の絶縁を保ち得る量に抑えられる必要がある。
【0027】
さらに、前記ヒーター給電部品の凹部は、雌螺子が形成されたものであることが好ましく(請求項5、10)、前記接続部材の突出部に雄螺子が形成され、該雄螺子が前記雌螺子に螺合されることによって前記接続部材に接続されたものであることが好ましい(請求項5)。
このように、ヒーター本体と前記ヒーター給電部品との接続は、前記ヒーター給電部品の凹部に雌螺子が形成され、前記接続部材の突出部あるいは前記接続端子に雄螺子が形成され、該雄螺子を前記雌螺子に螺合することにより行われたものとすることによって、前記雌螺子および前記雄螺子部分は、直接反応性雰囲気に曝されて劣化することはない。また、該ヒーター給電部品、特にこれに設けられた前記保護層が破損したとしても当該部品のみを交換することが可能で、ヒーターの寿命を長くし、製造コストも低減することができる。
さらに、組立ても容易なので、保管や輸送時には空間を取らず利便性が高いヒーターとすることができる。
【発明の効果】
【0028】
このように、本発明により、セラミックスヒーター上に直接載置された被加熱物を均一に加熱でき、加熱効率も高く、ヒーター本体が大型化せずコンパクトであり、不純物やパーティクルの飛散が少なく寿命の長い安価なセラミックスヒーターが実現した。
特に、ヒーター給電部品は、接続端子が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものなので、該ヒーター給電部品の一端の端面上の保護層とセラミックスヒーター本体の被覆層とを密着するように接続することで、保護層と被覆層間の隙間を完全にプロセスガスから遮断することができ、プロセスガスの侵入による、接続端子および凹部の導電性セラミックスを消耗させることが無く、ヒーター寿命が非常に長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
従来、加熱時に不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスに対応する耐久性が高いヒーターを製造する場合、グラファイト棒状部材のネジ(螺子)による取り付け位置をヒーター上の被加熱物が載置される領域よりも外側にしなければならないためヒーターが大型化し、また、ヒーター本体、グラファイトネジ、グラファイト棒状部材を一体的に絶縁性セラミックスからなる被覆層で覆った構造のヒーターは、グラファイト棒状部材またはこれを被覆している被覆層等を破損した場合、ヒーター全体を交換しなければならずヒーター寿命が短くなる上に高コストであるという問題があった。
さらに、セラミックスヒーター本体と、電源に接続する電源端子を有するヒーター給電部品を別体のものとしたとき、ヒーター本体とヒーター給電部品との接続部において、導電性セラミックスの消耗が進み、接続部の抵抗の上昇による異常発熱、さらには、放電が発生して、接続部が消失して通電不可能な状態が生じる場合があった。
【0030】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を重ね、少なくとも、一対以上の貫通孔が形成された絶縁性セラミックスからなる板状部材と、該板状部材上に形成された導電性セラミックスからなる導電層と、該導電層上に形成された絶縁性セラミックスからなる被覆層とを備えたセラミックスヒーターであって、前記板状部材の貫通孔に導電性セラミックスからなる接続部材が挿入され、該接続部材の貫通孔に挿入された端面が前記板状部材の導電層が形成される主面と同一平面をなし、前記接続部材は前記導電層が被覆されて板状部材に固定されるとともに、前記板状部材の主面上に形成されたヒーターパターンを有する前記導電層と接続され、前記接続部材の前記板状部材の貫通孔に挿入された側と反対側は前記板状部材から突出するとともに該突出部は前記被覆層が形成されていない端子を構成するものであり、該接続部材の突出部に接続される前記接続部材とは別体のヒーター給電部品を具備し、該ヒーター給電部品は、一端に前記接続部材の突出部が挿入され接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有し、前記接続部材が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものであるセラミックスヒーターとすることにより、該ヒーター上に直接載置された被加熱物を均一に加熱でき、加熱効率も高く、ヒーター本体が大型化せずコンパクトであり、不純物やパーティクルの飛散が少なく寿命の長い安価なものとなることに想到し、本発明を完成させた。
【0031】
特に、前記接続部材の突出部が接続されるヒーター給電部品の一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものとすることにより、該ヒーター給電部品の一端の端面上の保護層とセラミックスヒーター本体の被覆層とを密着するように接続することで、保護層と被覆層間の隙間を完全に無くし、プロセスガスの遮断効果を十分に大きくすることができ、プロセスガスの侵入による、前記突出部および凹部の導電性セラミックスを消耗させることが無く、さらにヒーター寿命が長くなった。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明のセラミックスヒーターの一例を示す断面図である。図2は、本発明のセラミックスヒーターの本体の一例を示す断面図である。図3は、本発明のヒーター給電部品の一例を示す断面図である。
【0033】
本発明のセラミックスヒーター10は、一対以上の貫通孔13が形成された絶縁性セラミックスからなる板状部材12と、該板状部材12上に形成された導電性セラミックスからなる導電層19と、該導電層19上に形成された絶縁性セラミックスからなる被覆層21とを備えたセラミックスヒーター本体11を有し、板状部材12の貫通孔13に導電性セラミックスからなる接続部材14が挿入され、該接続部材14の貫通孔13に挿入された端面16が板状部材12の導電層19が形成される主面15と同一平面をなし、接続部材14は導電層19が被覆されて板状部材12に固定されるとともに、板状部材12の主面15上に形成されたヒーターパターン20を有する導電層19と接続され、接続部材14の板状部材12の貫通孔13に挿入された側と反対側は板状部材12から突出するとともに該突出部18は被覆層21が形成されていない端子を構成するものであり、該接続部材14の突出部に接続される接続部材14とは別体のヒーター給電部品30を具備し、該ヒーター給電部品30は、一端に前記接続部材の突出部18が挿入され接続される凹部25を有し他端に電源に接続される電源端子26を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材22と、該導電部材22の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層24とを有し、前記接続部材14が接続される一端の端面23の最外部27から凹部25までの距離dが3mm以上有するものである。
【0034】
このように、接続部材の一端面16が板状部材12の主面と同一平面をなすものとし、板状部材12の主面15上に形成されたヒーターパターン20を有する導電層19と接続されたものとすれば、接続部材14の取り付け位置を板状部材12上の被加熱物が載置される領域より外側にする必要がなく、該領域の内側で任意の位置に設置できるので、従来のものより小型のセラミックスヒーターであってヒーターの加熱面に突起物のない平坦なヒーターとすることができる。
その上、前記同一平面上に形成されたヒーターパターン20によって、平坦なヒーター上に直接載置された被加熱物を高い加熱効率で均一に加熱できるセラミックスヒーターとすることができる。また、より均熱化を図るため、図1のように、接続部材の一端面16上にもヒーターパターン20が形成されている。
【0035】
また、接続部材14は板状部材12から突出するとともに、該突出部18は被覆層21が形成されていない端子を構成するものとすることにより、該接続部材14の突出部18に接続される前記接続部材14とは別体のヒーター給電部品30を具備することにより、破損し難いものとなる。例えば、該ヒーター給電部品30、特にこれに設けられた保護層24が破損したとしても当該部品のみを交換することが可能で、ヒーターの寿命を長くし、製造コストも低減することができる。
【0036】
さらに、接続部材14は導電層19が被覆されて板状部材12に固定されるため、ヒーター熱およびヒーター重量等により破損し易いネジ(螺子)等を用いることなく、導電層19と接続部材14の接触が良好で耐久性が高く、ヒーター寿命が長いものとすることができる。
【0037】
さらに、ヒーター給電部品30は、一端に接続部材の突出部18が挿入され接続される凹部25を有し他端に電源に接続される電源端子26を有する導電性セラミックスからなる導電部材22と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層24とを有するものであることにより、前記導電性セラミックスからなる導電部材22が絶縁性セラミックスからなる保護層によりプロセスガスから保護される。
【0038】
そして、ヒーター給電部品30の導電部材22が、棒状であることによって、導線等との接続部である電源端子26とヒーター本体11との間に十分な距離をとることができるので、前記導線等との接続部での温度が低く、該接続に使用される圧着端子、ボルト、螺子、ナット等の部材のヒーター熱による劣化や、これに起因するパーティクルの飛散を抑えることができる。
【0039】
ここで、ヒーター給電部品として、図6のような一端面23aに接続部材の突出部が挿入され接続される凹部25aを有し他端に電源端子26aを有する導電性セラミックスからなる導電部材22aと、該導電部材22aの外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層24aとを有する棒状の給電部品30aを使用した場合、ヒーター本体とヒーター給電部品30aとの接続部である突出部および凹部25aにおいて、導電性セラミックスの消耗が進み、接続部の抵抗の上昇による異常発熱、さらには、放電が発生して、接続部が消失して通電不可能な状態が生じることがあった。
これは、接続部におけるヒーター本体の被覆層21と給電部品の保護層24aが、接触している長さが短く、完全に隙間無く密着してプロセスガスと遮断されておらず、微小な隙間が存在するため、酸素、水素、アンモニアなど、高温でグラファイト等の導電性セラミックスを消耗させるプロセスガス雰囲気下でヒーターを使用する場合、これらのガスが微小な隙間を通り、接続部である接触部材の突出部および給電部品の凹部25aに到達し、導電性セラミックスを消耗させるためと考えられた。
【0040】
そこで、ヒーター給電部品30は、接続部材14が接続される一端の端面23の最外部27から凹部25までの距離dが3mm以上有するものとすることにより、プロセスガスに導電性セラミックスと高温で反応するガスを使用した場合にも、ヒーター給電部品30の接続部材14が接続される一端の端面23上の保護層24とセラミックスヒーター本体11の被覆層21とを密着するように接続することで、保護層24と被覆層21間の隙間をほぼ完全に無くすことができ、プロセスガスを遮断して、プロセスガスの侵入による、突出部18および凹部25の導電性セラミックスの消耗を防止することができる。さらにこれにより、接続部における異常発熱、さらには、放電の発生を防止して、接続部の通電を確実にすることができる。
【0041】
特に、距離dを6mm以上とすることが好ましく、10mm以上とするとより完全にプロセスガスが進入する隙間を無くすことができるので、さらに好ましい。また、20mm以下であれば、部材の材料の無駄もなく低コストであるので好ましい。
【0042】
ヒーター給電部品30は、接続部材14が接続される一端につば部28を有することが好ましい。これにより、容易に接続部材14が接続される一端の端面23を広げることができ、該端面23の最外部27から凹部25までの距離dが3mm以上有するものとすることができる。
また、つば部28以外の電源端子26を有する部分を細い棒状とすることにより、ヒーターからヒーター給電部品30を経て外部へ流出する熱量を少なくできるので、ヒーターの均熱性を向上させることができる。例えば、つば部28の径を10mm以上50mm以下として、つば部28以外の棒状の部分の径を7mm以上20mm以下とすることができる。
【0043】
ヒーター給電部品30の凹部25は、接続部材の突出部18との電気的な接続のために、保護層24が形成されていない露出部が設けてあり、凹部25の寸法は、接続部材の突出部18を挿入して接続することができる寸法であることを要する。例えば、凹部25の寸法は、2〜5mmとすることができる。
【0044】
ヒーター給電部品30の導電部材22は、導電性セラミックスからなるものであればよいが、グラファイト、炭化ケイ素焼結体、炭化ホウ素焼結体のいずれかからなることが好ましい。これにより、導電性が高い上に融点も高いので耐熱性に優れたものとなる上に、不純物の飛散が少なく高純度が要求される1000℃以上の加熱プロセスにも安定して対応できるヒーターとなる。特に、グラファイトは、比較的安価で加工も容易であるためさらに好ましい。
【0045】
また、ヒーター給電部品30の保護層24は、絶縁性セラミックスからなるものであれば、ヒーター給電部品30からの不純物やパーティクルの飛散が抑制されるとともに、ヒーター給電部品30は周囲の部材から絶縁されるヒーターとなるので、ヒーター給電部品30と周囲の部材との間の放電を防ぐことができる。
【0046】
そして、前記保護層24が、凹部25と銅線等に接続する電源端子26を除く全体に形成され、前記保護層24がヒーター本体の絶縁性セラミックスからなる被覆層21に密着するように凹部25と突出部18が接続されることによって、接続部材14やヒーター給電部品30の導電部材22と反応性のあるプロセスガス下でヒーターを使用することも可能となり、反応性雰囲気に侵食されることに起因する放電、ヒーター破損や不純物・パーティクルの飛散を効果的に抑制することができる。
【0047】
このような保護層24の材質として、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなることが好ましい。これにより、導電部材22をプロセスガスの侵食から保護することができ、また、化学気相蒸着法により容易に製造することができ、1500℃付近の高温プロセスで、しかも100℃/min以上の急速な昇降温でも安定して使用でき、不純物の飛散が少なく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できるヒーターとなる。
保護層24の厚さは、特に限定されないが、20〜300μm、特に50〜200μmとすることが望ましい。20μm以上であれば絶縁破壊を起こす危険もなく、300μm以下であれば剥離するようなこともなくなる。
【0048】
ここで保護層24は、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素である場合は、炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウムの含有量が大きくなるにつれて抵抗率は小さくなる。そのため、炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウム含有量は、給電部品と周囲部材との間の絶縁を保ち得る量に抑えられる必要がある。
【0049】
前記ヒーター給電部品30の凹部25は、該凹部に雌螺子が形成され、接続部材14の突出部18に雄螺子が形成され、該雄螺子が前記雌螺子に螺合されることによって前記接続部材に接続されたものであることが好ましい。これによって、前記雌螺子および前記雄螺子部分が、直接反応性雰囲気に曝されて劣化することがなく、電気的接触を確実なものとすることができるとともに、ヒーター給電部品30、特にこれに設けられた保護層24が破損したとしても部品交換が容易であり、ヒーターの寿命を長くし、製造コストも低減することができる。
さらに、組立ても容易なので、保管や輸送時には空間を取らず利便性が高いヒーターとすることができる。しかも、保護層24と被覆層21とを強固に密着させることができ、プロセスガスの遮断効果も高い。
【0050】
以上のようなヒーター給電部品30に接続される接続部材14は、板状部材12の貫通孔13に圧入されたものであることが好ましい。これにより、板状部材と接続部材の接続に、ヒーター熱の大きさおよびヒーター重量にかかる負担が大きい等による破断の不具合の原因となるネジを使用しないため、導電層と接続部材の接触を長期間に渡って良好に保ち、安定して使用できる長寿命のセラミックスヒーターとすることができる。
【0051】
さらに、接続部材14は、板状部材12の貫通孔13に圧入されたものとすることにより、ネジ山部分の不具合を防ぐ目的で部材を太いものにする必要も無いので、接続部材14の断面積を小さくすることができ、外部へ流出する熱量を小さく抑えることができて被加熱物をより高い加熱効率で均一に加熱できる。なお、パーティクルの発生源となるボルトとナットを使用する必要もないため、不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できる。さらにこの場合、接続部材の一端面16と板状部材の主面15とがより正確に同一平面となるようにするために、圧入した後主面を平面研削する等により平面加工するのが好ましい。
【0052】
接続部材14の突出部18は、上記のように、突出部18に雄螺子が形成され、ヒーター給電部品30の凹部25に雌螺子が形成され、雄螺子が雌螺子に螺合されることによって給電部品に接続されたものであることが好ましい。
このように接続部材14が、使用時にヒーター熱が大きくヒーター重量がかかる負担も大きい板状部材と接続する部分を圧入によることとして、螺子(ネジ)を使用せず、破断等の不具合や不純物やパーティクルの飛散を防止することができ、その一方で、接続部材の給電部品との接続を螺子による螺合とすることで、破損し難いものとできるとともに、万が一、給電部品30やこれに形成した保護層24が破損した場合の部材交換を容易にし、組立ても容易で保管や輸送時には空間を取らず利便性が高いセラミックスヒーターとすることができる。
【0053】
接続部材14の材質は、ヒーター給電部品30と同様の導電性セラミックスからなるものであればよく、接続部材14の形状は、図1、図2に示すように円柱形状を有するボルト状のものであることが好ましいが、これに限定されず、貫通孔13に挿入して固定できる形状であればよい。接続部材14の直径は特に限定されないが、貫通孔13に挿入される部分の直径は、3〜20mm、より好ましくは8〜14mmとすればよい。直径が3mmより大きいと折れ難く、直径が20mmより小さいと、接続部材14から外部への熱の流出が小さく、ヒーターの温度分布が均一になる。
【0054】
また、板状部材12は、一対以上の貫通孔13が形成された絶縁性セラミックスからなるものであって、ヒーターパターン20が形成される支持基材として機能するものであればよいが、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなるものであることが好ましい。これにより、板状部材12は、化学気相蒸着法により製造することができ、高い絶縁性を有し、高温での使用による不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応できる。
【0055】
特に、1500℃付近の高温プロセスで、しかも100℃/min以上の急速な昇降温でも安定して使用することができる。板状部材12の厚さは、1〜5mmとするのが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。板状部材12の厚さが1mmより厚ければ、部材に反りが発生することがない。また、5mmよりも薄ければ、板状部材12の厚さ方向の熱膨張と、接続部材14との熱膨張量の差が大きくなり過ぎることなく、圧入部分で導電性セラミックスからなる導電層19や被覆層21にクラックや剥離が発生することもない。
【0056】
なお、板状部材12が炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素である場合は、炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウムの含有量が大きくなるにつれて板状部材の抵抗率は小さくなる。炭素含有量または珪素含有量またはアルミニウム含有量は、ヒーターパターン間の絶縁を保ち得る量に抑えられる必要がある。
また、板状部材12の形状は、被加熱物として円形の半導体ウエハを支持するため、図4のように円盤状が好ましいが、必要に応じて多角形の板状であってもよい。また、貫通孔13は、1対のみ形成されてよいが、2対以上形成されてもよい。例えば、ヒーターパターンの領域を2ゾーンに分けた2ゾーン式のヒーターの場合は2対形成され、ヒーターパターンの領域を分けたゾーン数に応じた数の対が形成される。貫通孔13の形状は、接続部材14を挿入して固定できる形状であれば、特に限定されないが、円柱状の接続部材14を圧入して固定可能な円形形状であることが好ましい。
【0057】
さらに、導電層19は、導電性セラミックスからなるものであり、板状部材12およびその貫通孔13に挿入された接続部材14を被覆して固定するものである。これにより、接続部材14と板状部材12を固定することができるとともに、導電層と接続部材の電気的接触を良好にすることができる。
【0058】
導電層19は、熱分解グラファイト、ホウ素および/または炭化ホウ素を含有する熱分解グラファイトのいずれかからなるものとすることが好ましい。これにより、高温まで安定して使用することができるし、金属の箔や巻回線よりも加工が容易なためヒーターパターンを蛇行パターンとして、その幅や厚さを変えることにより、任意の温度傾斜をつけたり、熱環境に応じた発熱分布をもたせて均熱化したりすることが容易となる。さらに、化学気相蒸着法を用いれば、導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布する手法よりも厚さを均一にできる。
導電層19の厚さは、特に限定されないが、10〜300μm、特に30〜150μmとすることが望ましい。ヒーター温度を目的の温度に到達させ、かつ均熱化させるために、電源容量やヒーターパターン20の形状との兼ね合いをよく考慮し、適切な厚さを選択すればよい。
【0059】
ヒーターパターン20は、例えば機械加工により形成することができるが、図1のように、接続部材14の突出部18を有する側と反対側の一端面16と板状部材の主面15がなす同一平面の板状部材の主面15上にヒーターパターン20を有するものとすることができ、この場合、前述のように接続部材の端面16上にもヒーターパターンを形成することができ、このようなヒーターパターン20とすれば、被加熱物を高い加熱効率で均一に加熱することができる。
このとき、ヒーターパターン20は、前記板状部材の主面15上に限らず、該主面と反対側の主面17上に形成してもよく、主面15上および主面17上の両方に形成してもよく、被加熱物を載置する平坦度や必要な熱量等に応じて設計することができる。
【0060】
以上のような本発明のセラミックスヒーターは、接続部材14の一端面16が板状部材12の主面15と同一平面をなすヒーターパターン20が形成された面側に、半導体ウエハ等の被加熱物を直置きにして、電源からリード線等をネジ等により取り付けられた電源端子26から電力を供給することによって、ヒーター本体が大型化せずコンパクトな構造でありながら、被加熱物を高い加熱効率で均一に加熱することができ、不純物やパーティクルの飛散が少ないため、被加熱物への汚染が小さい上に、ヒーター寿命が長い。
【0061】
特に、ヒーター給電部品30は、接続部材14の突出部18が接続される一端の端面23の最外部27から凹部25までが3mm以上有するものなので、該ヒーター給電部品30の一端の端面23上の保護層24とセラミックスヒーター本体11の被覆層21とを密着するように接続することで、プロセスガスが突出部18および凹部25の導電性セラミックスに到達し難くなり、突出部18および凹部25の導電性セラミックスを消耗させることが無く、ヒーター寿命が非常に長い。
【0062】
以上のように、本発明のヒーター給電部品30は、本発明のセラミックスヒーター本体11に接続する場合を説明してきたが、必ずしもセラミックスヒーター本体11の接続部材14の突出部18に接続するものに限定されず、一般のセラミックスヒーター本体の接続端子に接続するものであってもよく、接続部が侵されにくい給電部品とすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、アンモニア4SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力6Torr(800Pa)、温度1850℃で反応させて直径310mm、厚さ2.5mmの熱分解窒化ホウ素製の板状部材を作製した。この板状部材の中心から半径130mm上の2箇所に直径12mmの貫通孔を設けた。
【0064】
次に、この貫通孔にグラファイト(東洋炭素(株)、IG−110)からなる円柱状の接続部材(直径:12+0.005〜0.015mm)を圧入した後、接続部材の一端面が板状部材と同一平面を成すように平面加工を施した。また、円柱の他端は板状部材から20mmの部分で切断し、M5のネジ加工を施して雄螺子を形成した。
【0065】
次に、このようにして形成した板状部材と接続部材に対して、メタン3SLMと三塩化ホウ素0.1SLMとを圧力5Torr(667Pa)、温度1750℃で熱分解させて厚さ50μmの炭化ホウ素を含有する熱分解グラファイトからなる導電層を設け、これに機械加工を施して、1ゾーン式のセラミックスヒーターとした。そして、裏面に形成された導電層は、接続部材の周囲に部分的に機械加工を施して除去し、電気的に短絡しないようにした。
【0066】
さらにこのセラミックスヒーター上にアンモニア5SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力10Torr(1333Pa)、温度1890℃の条件で反応させて、板状部材、接続部材、および導電層を、接続部材14の突出部18を除いて熱分解窒化ホウ素の絶縁膜で一体的に被覆し、図2に示すようなセラミックスヒーター本体を完成させた。
【0067】
さらに、図3のように、直径10mm、長さ100mmであり、一端のみ端面から3mmの範囲内において直径30mmのつば部を有するグラファイト(東洋炭素(株)、IG−110)からなる棒状の導電部材上に、アンモニア5SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力5Torr(667Pa)、温度1890℃の条件で反応させて、厚さ200μmの熱分解窒化ホウ素からなる保護層を形成した。その後、一端にM5の雌螺子を形成し、他端には電源からの導線に接続するために、同様にM5の雌螺子を形成してヒーター給電部品を完成した。このとき直径が30mmの端面の最外部から雌螺子を形成した凹部までの距離dは、約12.5mmであった。
【0068】
このヒーター給電部品を図2の本発明のセラミックスヒーター本体に接続して図1に示すヒーターを完成し、これをチャンバーにセットし、ヒーターに温度測定用の熱電対を取り付け、直径300mmのシリコンウェーハをヒーター上に載置した後、チャンバー内に6Vol%H/Arを流量200ml/minで供給した。
【0069】
チャンバー内の雰囲気が置換された後、このヒーターに通電し、1100℃に加熱したところ、ウェーハ全面を均一に加熱することができた。また、同様の条件で、1100℃、500時間のヒーターの連続加熱試験を行ったところ、途中で放電、断線は発生せず、500時間の連続加熱試験を問題なく行うことができた。
さらに、加熱試験後、ヒーター給電部品を取り外して、ヒーター給電部品の凹部及び突出部の接続端子部分を確認したが、螺子に外観異常は観察されなかった。
【0070】
このように、本発明のセラミックスヒーターであれば、接続部材の取り付け位置を板状部材上の半導体ウエハが載置される領域より外側にする必要がないので、ヒーター本体が大型化せずコンパクトな構造のヒーターで、被加熱物を高い加熱効率で均一に加熱することができ、加熱時に不純物の飛散がなく高純度が要求される加熱プロセスにも対応することが可能となった。
【0071】
さらに、実施時にヒーター給電部品を破損させる事故があったが、予備のヒーター給電部品に容易に交換することができて、スムーズに加熱処理を再開することができ、ヒーター寿命も長いことが確認された。
【0072】
(実施例2〜4)
グラファイト(東洋炭素(株)、IG−110)からなる棒状の導電部材として、直径11mm(実施例2)、直径15mm(実施例3)、直径25mm(実施例4)のつば部を有するものを用い、それぞれ距離dが、約3mm、約5mm、約10mmとなるようにヒーター給電部品を作製した。そして、実施例1と同様に図2の本発明のセラミックスヒーター本体に接続して図1に示すセラミックスヒーターを完成し、1100℃、500時間のヒーターの連続加熱試験を行ったところ、途中で放電、断線は発生せず、500時間の連続加熱試験を問題なく行うことができた。
さらに、加熱試験後、ヒーター給電部品を取り外して、ヒーター給電部品の凹部及び突出部の接続端子部分を確認したところ、実施例1と同様に螺子に外観異常は観察されなかった。
【0073】
(比較例1)
まず、アンモニア4SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力6Torr(800Pa)、温度1850℃で反応させて、実施例よりも大きい直径350mm、厚さ2.5mmの熱分解窒化ホウ素製の板状部材を作製した。そして、板状部材上にメタン3SMLと三塩化ホウ素、0.1SLMとを圧力5Torr(667Pa)、温度1750℃で熱分解させて厚さ50μmの炭化ホウ素を含有する熱分解グラファイトからなる導電層を設けて、これに機械加工を施してヒーターパターンを形成した。
【0074】
そして、図5のように板状部材の外周部に直径10mmの貫通孔を2箇所設け、該貫通孔に、M5のグラファイト(東洋炭素(株)、IG−110)ネジによって、直径10mm、長さ60mmの円柱状のグラファイト棒状部材を固定した。この際、グラファイトネジ〜ヒーター本体間およびヒーター本体〜グラファイト円柱間にグラファイトワッシャーを挟み込んだ。
【0075】
さらに、このセラミックスヒーター上にアンモニア5SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力5Torr(667Pa)、温度1890℃の条件で反応させて、板状部材、グラファイト棒状部材、グラファイトネジを熱分解窒化ホウ素の絶縁膜で一体的に被覆し、セラミックスヒーターを完成させた。
【0076】
しかし、このヒーターは、ハンドリングが困難で、このヒーターをチャンバーにセットする前に、グラファイト棒状部材を誤って破損させることがあった。この場合、ヒーター本体自体は無傷であるにもかかわらずグラファイト棒状部材がヒーター本体と一体的に被膜されているために、破損したグラファイト円柱を交換することができず、チャンバーへ取り付けることができなかったため、加熱試験を行うことができなかった。
【0077】
また、上記のようにグラファイト棒状部材をグラファイトネジで接続する場合、ネジによって表面が平坦にならないので、その外周部に接続部を形成しなければならず、これはコストアップの原因になった。
【0078】
(比較例2)
実施例1と同様に、図2に示すようなセラミックスヒーター本体を完成させた。
次に、図6のように、直径10mm、長さ100mmであり、グラファイト(東洋炭素(株)、IG−110)からなるグラファイト棒状部材上に、アンモニア5SLMと三塩化ホウ素2SLMを圧力5Torr(667Pa)、温度1890℃の条件で反応させて、厚さ200μmの熱分解窒化ホウ素からなる保護層を形成して図6のようなヒーター給電部品を完成した。ここで、接続部材が接続される端面の最外部から雌螺子を形成した凹部までの距離dは、約2.5mmであった。その後、グラファイト棒状部材の一端にM5の雌螺子を形成し、他端には電源からの導線に接続するために、同様にM5の雌螺子を形成した。
【0079】
このヒーター給電部品を図2と同様のセラミックスヒーター本体に接続してヒーターを完成し、これをチャンバーにセットし、ヒーターに温度測定用の熱電対を取り付け、直径300mmのシリコンウェーハをヒーター上に載置した後、チャンバー内に6Vol%H/Arを流量200ml/minで供給した。
【0080】
チャンバー内の雰囲気が置換された後、このヒーターに通電し、1100℃、500時間のヒーターの連続加熱試験を行ったところ、途中で放電、断線は発生せず、500時間の連続加熱試験を問題なく行うことができた。しかし、加熱試験後、ヒーター給電部品を取り外して、ヒーター給電部品の凹部及び突出部の接続端子部分を確認したところ、螺子の付け根付近に消耗が観察された。
さらに繰り返し使用した場合、ヒーター本体とヒーター給電部品との接続部において、接続部の抵抗の上昇による異常発熱、さらには、放電が発生して、接続部が消失して通電不可能な状態が生じる場合があった。これは、ヒーター本体の被覆層とヒーター給電部品の保護層が、完全にプロセスガスを遮断している訳ではなく微小な隙間が存在するため、プロセスガスがこれらの微小な隙間を通り、導電性セラミックスを消耗させるためと考えられた。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のセラミックスヒーターの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のセラミックスヒーターの本体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のヒーター給電部品の一例を示す断面図である。
【図4】本発明のセラミックスヒーター本体の板状部材および接続部材の一例を示す平面図である。
【図5】従来技術のセラミックスヒーター本体の板状部材および棒状部材の一例を示す平面図である。
【図6】従来技術のヒーター給電部品の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1…被加熱物の載置位置、 2…棒状部材の螺子頭、
10…セラミックスヒーター、 11…セラミックスヒーター本体、
12…板状部材、 13…貫通孔、 14…接続部材、
15、17…板状部材の主面、 16…接続部材の一端面、
18…突出部(接続端子)、 19…導電層、 20…ヒーターパターン、
21…被覆層、 22、22a…導電部材、
23、23a…ヒーター給電部品の一端面、 24、24a…保護層、
25、25a…凹部、 26、26a…電源端子、
27、27a…ヒーター給電部品の一端面の最外部、
28…つば部、 30、30a…ヒーター給電部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一対以上の貫通孔が形成された絶縁性セラミックスからなる板状部材と、該板状部材上に形成された導電性セラミックスからなる導電層と、該導電層上に形成された絶縁性セラミックスからなる被覆層とを備えたセラミックスヒーターであって、前記板状部材の貫通孔に導電性セラミックスからなる接続部材が挿入され、該接続部材の貫通孔に挿入された端面が前記板状部材の導電層が形成される主面と同一平面をなし、前記接続部材は前記導電層が被覆されて板状部材に固定されるとともに、前記板状部材の主面上に形成されたヒーターパターンを有する前記導電層と接続され、前記接続部材の前記板状部材の貫通孔に挿入された側と反対側は前記板状部材から突出するとともに該突出部は前記被覆層が形成されていない端子を構成するものであり、該接続部材の突出部に接続される前記接続部材とは別体のヒーター給電部品を具備し、該ヒーター給電部品は、一端に前記接続部材の突出部が挿入され接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有し、前記接続部材が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものであることを特徴とするセラミックスヒーター。
【請求項2】
前記ヒーター給電部品は、前記接続部材が接続される一端につば部を有することを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒーター。
【請求項3】
前記ヒーター給電部品の導電部材は、グラファイト、炭化ケイ素焼結体、炭化ホウ素焼結体のいずれかからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックスヒーター。
【請求項4】
前記ヒーター給電部品の保護層は、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のセラミックスヒーター。
【請求項5】
前記ヒーター給電部品の凹部は、該凹部に雌螺子が形成され、前記接続部材の突出部に雄螺子が形成され、該雄螺子が前記雌螺子に螺合されることによって前記接続部材に接続されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のセラミックスヒーター。
【請求項6】
少なくとも、一端にセラミックスヒーター本体の接続端子が挿入されて接続される凹部を有し他端に電源に接続される電源端子を有する導電性セラミックスからなる棒状の導電部材と、該導電部材の外表面に設けられた絶縁性セラミックスからなる保護層とを有するヒーター給電部品であって、前記接続端子が接続される一端の端面の最外部から凹部までが3mm以上有するものであることを特徴とするヒーター給電部品。
【請求項7】
前記ヒーター給電部品は、前記接続端子が接続される一端につば部を有することを特徴とする請求項6に記載のヒーター給電部品。
【請求項8】
前記導電部材は、グラファイト、炭化ケイ素焼結体、炭化ホウ素焼結体のいずれかからなることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のヒーター給電部品。
【請求項9】
前記保護層は、熱分解窒化ホウ素、炭素を含有する熱分解窒化ホウ素、珪素を含有する熱分解窒化ホウ素、アルミニウムを含有する熱分解窒化ホウ素のいずれかからなることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載のヒーター給電部品。
【請求項10】
前記凹部は、雌螺子が形成されたものであることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載のヒーター給電部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−250403(P2007−250403A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73790(P2006−73790)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】